格付け会社大手のムーディーズは11日夜、フランスの長期債務格付けをAA3に据え置いた。格付け見通しも「安定」のまま維持した。
ムーディーズは12月半ばに、フランスの格付けを1段階引き下げ、AA3としていた。当時は、2025年予算法案を成立させるめどがつかない状況だったが、現在では予算法の成立を経て、当時に比べると政局の展望は開けている。ただ、国際的な情勢の緊張化に伴い、経済や財政運営の行方は混とんとしており、ムーディーズがどのような判断を示すかが注目されていた。ムーディーズは結局、多角化され規模の大きい国民経済や、人口増加の勢いが比較的に良好であること、行政機構がしっかりしていることなど、フランス経済の利点を再確認して、格付け維持の理由とした。3大格付け会社のうち、フィッチは去る10月に、S&Pも去る2月に、フランスの格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げたが、ムーディーズは「安定」という見通しを維持しており、これもフランス政府にとっては朗報となった。
とはいえ、フランスの経済と財政を取り巻く環境は一段と厳しくなり、また見極めも難しくなっている。政府は2025年の経済成長率予測を0.9%から0.7%へ下方修正しており、トランプ米政権と中国の関税戦争の影響は予測が難しい。財政赤字の対GDP比は2024年に5.8%となり、政府は今年に5.4%まで圧縮する目標を変えていないが、経済成長率の減速に伴い50億ユーロの追加節減の実施を予告した。
また、ロンバール経済相は13日、BFM TVとのインタビューの中で、2026年予算法案の準備について、400億ユーロの追加節減が必要になると言及した。政府は同年に財政赤字の対GDP比を4.6%まで圧縮するとの目標を掲げている。必要な節減額については、「400億ユーロから500億ユーロ」という数字も取りざたされており(プリマ政府報道官の13日談話)、厳しい節減努力が必要になる。バイルー首相は15日に関連閣僚らを集めた会議を開き、この問題を協議する。政府に対しては右派などからの突き上げも強まっており、政局運営を巡る政治的な環境も厳しい。