幼児性愛の性的暴行事件で有罪判決が確定しているジョエル・ルスクアルネック受刑者(74)を被告人とする新たな裁判が24日、バンヌ市にあるモルビアン県重罪裁判所で始まった。被害者が299人という空前の規模の裁判となる。
ルスクアルネック被告人は消化器系の外科医を務めていた。1994年に同県内の私立病院の医師となり、その後、同じ西部地方の2病院に勤務した。勤務医として、定年直前だった2017年まで、男女の子どもの患者に性的暴行及び強姦を働いた疑いで新たに起訴された。特定された被害者は299人に上る。
被告人は2017年に、隣人宅の6歳の少女にいたずらしたのが発端となり逮捕された。被告人の犯罪は、1985年に8歳の姪に性的暴行を働いたのが初めで、これら親戚・知人関係の犯罪について起訴され、2020年に禁固15年の実刑判決が確定していた。被告人は、逮捕された2017年まで、ノートに詳細に犯行についてメモしており、これが299人の被害者特定の決め手になった。被害者は事件当時に平均11歳で、被告人は、医者の立場を利用して、病院で被害者が一人のところを見計らって体に触るなどした。また、手術中に、他のスタッフの目を盗んで、麻酔下にある患者に性的な接触等を行っていた。
犯行は20年以上の長期にわたり病院を舞台に繰り広げられた。その間、被告人に関する疑いがまったくなかったわけではない。米連邦捜査局(FBI)の通報により、インターネット上で幼児性愛コンテンツの購入に被告人のクレジットカードが使用されていたことが判明し、被告人は2005年11月に執行猶予付き禁固4ヵ月の有罪判決を受けた。ただ、この判決が病院などに通知されることはなく、被告人はカンペルレ公立病院に転職。同病院では、上記の事件の際に被告人の鑑定を行った精神科医師からの通報があり、監査機関が任命を問題視する手続きを開始したものの、当局諸機関の間で請求がたらい回しになるなどして進まず、医師不足も手伝ってそのうちにうやむやとなり、被告人は勤務を続けたという。被告人の責任追及に加えて、今回の裁判の直接の対象ではないが、関連当局や諸機関の対応のあり方も問われている。