フランスでも、採用面接時に個人情報をみだりに候補者に質問してはならないという規定がある。就職差別を防止するために法令により定められている。基本的に、生活状況(独身・既婚、離婚歴、子どもの有無など)に関する質問は禁止対象であり、健康状態や年齢、障がいの有無を尋ねることも禁止されている。原則として、就業が予定される職種に直接の関係がある情報のみを質問することができる旨が定められており、その限りで、例えば重量物を運搬する運送業の従業員の採用面接において、職務の遂行に足る健康状態を備えているかを質問することはできる。
労働法典は、特に採用差別を排除する目的で、差別につながるリスクがある情報を列挙し、正当な場合を除いてそれに関する質問を禁止する旨を明確に定めている。その中には、年齢、居住地、健康状態、性的傾向、政治的信条、組合活動などが含まれる。
実際上は、面接官が法令で禁止されている内容の質問をする場合も見受けられる。法令の規定を熟知していない経営者も少なくない。法令の規定を挙げて回答を拒否することはできるが、喧嘩腰になるのを避けるため、回答を控える旨のみを伝えた方が得策だと、労務関連の弁護士は説明している。
欧州連合(EU)の法令に基づき、2026年までに、現在及び過去の給与水準に関する質問をすることも禁止されることになっている。多くの会社はこの質問をして、それに基づいて賃金水準を交渉しようとするが、その手は基本的に使えなくなる。専門の弁護士は、それでもこの質問をしようとする企業はなくならないだろうが、もとの勤め先に照会する手段は法律的に封じられるので、志願者が防御のために嘘をつくことはより容易になると説明している。