英国が欧州連合(EU)から正式に離脱した2020年1月31日から5年がたった。複数の世論調査によると、ブレグジット(英国のEU離脱)に対する英国民の評価は否定的な傾向が強い。YouGovの調査によると、ブレグジットは正しかったと考える回答者は過去最低の30%に落ち込んだ。55%は離脱が間違いだったと判断している。ちなみに、2016年の国民投票では52%が離脱を支持していた。当時の離脱支持者のうちでも、18%が今では離脱は間違いだったと判断している(66%は正しかったと判断)。国民投票時のEU残留支持者のうち、現在は離脱が正しかったと考えるのは7%に過ぎない(88%は離脱は間違いだったと判断)。
2016年の国民投票で投票できなかった若年層でもブレグジットへの支持は低い。18-24才の75%が離脱は間違いだったと判断し、離脱が正しかったと考えるのは10%に過ぎない。
またRedfield & Wiltonによる別の調査では、EUへの再加盟に関する国民投票が今実施された場合には、56%が再加盟に賛成すると回答した。しかしEUとの関係が英国の最重要問題の一つだと考える回答者の割合は14%に過ぎず(2019年には73%)、英国民の大多数はEU離脱をすでに過去の既成事実と受け止めて、今さら後戻りすることを本気で望んではいない模様。
ブレグジットの最大の動機は国境検査の強化による移民流入の制限にあったとされるが、NatCen Opinion Paneによる調査では、国民投票時の離脱支持者の56%が、移民流入は離脱以後にいっそう増えたと判断している。実際、離脱によって確かにEU加盟国(特に中東欧諸国)からの移民は減ったが、それにかわってナイジェリアなどのアフリカ諸国、インドやパキスタンをはじめとするアジア諸国からの移民が増加していることが指摘されている。
離脱は経済に悪影響を及ぼしたが、一部で懸念されたような大打撃とはなっていない。キングスカレッジのジョナサン・ポルテス教授は「ネガティブな影響は明らかで、非EU諸国との貿易協定締結やEUとの規制分断が、離脱による貿易や資本の流れの鈍化を補うとは誰も考えていない」としたうえで、例えるなら「自動車事故というより、むしろ緩やかなパンク」に近いと説明している。