仏エネルギー大手エンジーは11月12日、2050年までの欧州の脱炭素化の展望を発表した。2030年までに温室効果ガス排出量を55%削減するという目標は達成可能だが、2050年をめどにカーボンニュートラルを実現するためには削減努力を倍増しなければならないとの見通しを明らかにした。温室効果ガス排出量は2010年から2020年までに年間2%のペースで削減されたが、4%ペースでの削減が必要になる。
エンジーによると、2030年目標の達成は、太陽光・風力発電、電気自動車などの成熟した技術をもとに、これをいかに展開するかにかかっている。一方で、2050年目標の達成には、海運・航空輸送・重工業の脱炭素化など産業レベルでの実証が行われていない技術に多くを負うことになるため、実現可能性が不確かな部分が多い。
エンジーはまた、欧州は主権と競争力を維持するためにエネルギー移行を加速し、エネルギーシステム全体を抜本的に変革しなければならないとした上で、そのためには欧州レベルでの取り組みが必要不可欠であると強調。エネルギー移行を成功させるための指標として、▽エネルギー最終需要の30%削減と年間1.3%のGDP成長、▽エネルギーの対外依存の65%削減(輸入量)、▽電化および再生可能エネルギー生産能力の5.5倍増(太陽光・風力)、▽グリッドの柔軟性確保のための容量の4.5倍増(うち4分の3を需要調整により達成)、▽メタンガスの脱炭素化および需要の45%減、▽水素需要の7倍増(航空、海運、重工業など)と100%低炭素化、を挙げた。
エネルギー移行には多額の投資が必要になるが、それは化石燃料の輸入が減ることによって徐々に補われる。エンジーの試算によると、化石燃料の輸入減分を加味した欧州の脱炭素化コストは2025年から2030年に対GDP比で1.8%、2031年から2040年に1.5%、2041年から2050年に1%となる。エンジーでは、欧州経済にはこれだけの投資を行う力があり、気温が1度上昇するたびに対GDP比で約10%のコストが生じることを考えると、投資しないわけにはいかないとしている。