マクロン大統領は28日、モロッコの公式訪問を開始した。30日まで国賓待遇で訪問する。
モロッコとフランスの関係は2021年夏以来、様々な問題が生じて冷え込んでいた。イスラエル製スパイウェアをモロッコが用いてフランスで情報活動を展開していたことが発覚する一方で、モロッコ側は、フランス側が査証発給を制限しているとみて反発、それ以外にも様々な事案があり、関係は悪化していた。しかし、フランス政府が今年の7月に、西サハラ問題でモロッコ寄りの姿勢を打ち出したことで、風向きは大きく変わった。マクロン大統領は、7月30日付でモロッコ国王モハメド6世に送った書簡の中で、西サハラにおけるモロッコの主権を認め、モロッコ政府が示した自治プランを、将来の交渉による解決に向けた唯一の基盤であるとの認識を示した。この見解は、西サハラを巡るモロッコとアルジェリアの間の係争で、モロッコに明確に肩入れをするものであり、モロッコ側はこれを外交努力の勝利と見据えて歓迎、今回のマクロン大統領の公式訪問の実現に至った。
アルジェリア政府は予想通りにフランス政府の軌道修正を強く批判。アルジェリア政府は、この秋に予定していたマクロン大統領の国賓待遇での公式訪問を取りやめた。ルモンド紙によれば、仏政府がこうした反応を見越してもモロッコ寄りの姿勢を示したのは、アルジェリア政府のこれまでの対応への失望感があったという。マクロン大統領は就任以来で、過去の植民地問題などを含めて、アルジェリアとの関係正常化に熱意をもって取り組んできたが、アルジェリア政府の側の歩み寄りは得られなかったと判断し、どのみち成果がないならモロッコとの関係を改善するほうが得策だという意見が政府部内で大勢を占めたのだという。