仏製薬大手サノフィは10日夜、大衆薬事業を束ねた子会社Opellaの過半数株式の譲渡に向けて、米CD&R(ファンド)との独占交渉を開始すると発表した。この件では、仏ファンドのPAIも外国のファンド数社と結んで買収案を提示していたが、サノフィはこれを退けて、CD&Rを選んだ。
CD&Rは、評価額を155億ユーロに設定して、過半数株式を取得するという。報道によれば、PAIもサノフィからの要請に応じて、評価額をCD&R並みに引き上げたというが、サノフィはPAIを選ばなかった。その理由としては、フランス勢による買収を後押しするフランス政界に対する独立性を示すためではないかという観測もあるが、資金力のあるCD&Rの方が、今後の成長戦略をよりよく支えることができるという判断が働いたとの見方もある。
Opellaは、Doliprane(アセトアミノフェン)をはじめとする大衆薬事業の子会社で、サノフィ全社の売上高の12%を占め、従業員数は1万1000人に上る。最近では、セルビエ社が後発医薬品子会社ビオガランをインド企業に買収することを検討したが、政府の反対もあって断念したという事例もあり、政府がこの問題でどのような姿勢を示すかが注目されている。Opellaの場合は、世界13工場のうち仏工場は2ヵ所のみで、外国事業の比重も大きいということがあり、政府としては、本社機能や国内の生産事業・雇用の維持などの条件をつけて、外国資本による買収に応じるものとみられている。ただ、超党派の議員グループが外資による買収に難色を示し、政府に反対の念を表明する書簡を共同で送付した。