総選挙の決選投票が7日に行われた。極右RN(国民連合)の阻止を目的とする与党連合と左派連合の協力が効果を発揮し、RNは獲得議席数では躍進ができなかった。最終的な獲得議席数では左派連合がトップ、与党連合が2位となり、RNは3位にとどまった。投票率は66.63%と高く、有権者の関心の高さをうかがわせた。
総選挙は小選挙区制・2回投票制で行われ、第1回投票で過半数候補がなかった選挙区では、一定以上の得票率を確保した候補らによる決選投票が行われる。3人以上の候補が出場権を得た選挙区において、与党連合と左派連合は、優勢な候補に道を譲って立候補を取り下げるという形での極右阻止の選挙協力を決めた。その効果があり、RNは、投票前の予測とは異なり、第1党の地位を得ることができなかった。決選投票における得票率は、RNが32.05%で最も高く、これに左派連合が25.68%、与党連合が23.15%で続いた(ただし、進出候補の数がRNでは多いため、決選投票における得票率の比較は支持の状況を正確に反映したものとはならない)。獲得議席数では、与党連合が148議席で最も多く、これに左派連合が146議席で続いた。RNは提携先を含めて104議席(RNのみでは88議席)で第3位にとどまり、予想されたほどは伸びなかった。
第1回投票で当選を決めた候補者を含めた改選後の各勢力の議席数をみると、全議席577議席のうち、左派連合は180議席を獲得し、最大勢力となった。与党連合は163議席で第2の勢力となった。極右RNは、提携先(保守野党の共和党を割って出たシオティ党首派)を含めて143議席(うちRNは125議席)となり、改選前から比べて勢力を伸ばしたものの、第3の勢力にとどまり、念願の単独過半数はもとより、最大勢力になることもできなかった。このほか、共和党は、提携先を含めて66議席(共和党のみだと39議席)を獲得した。
与党連合と左派連合は、極右による政権獲得を阻止することはできたものの、今後の政権樹立の展望は開かれておらず、趨勢を見極めるにはまだ時間が必要とみられている。単純計算では、左派連合と与党連合が手を組めば、過半数(289議席)を確保できるが、特に左派連合主軸の左翼政党「不服従のフランス(LFI)」と与党連合の間の対立点は極めて大きく、折り合いをつけるのは難しい。左派連合の中間層から右派までを取り込むという再編型の新政権発足という展望もなくはないが、切り崩しができるとは限らず、また、両端では立場がかなり異なる勢力の糾合が可能なのか、疑問は多い。与党連合は改選前の最大勢力の座を譲り渡したわけで、主導権を発揮できる立場でもなくなった。アタル首相は総選挙後の通例として辞表を提出。次期政権が固まるまで、職務執行内閣を率いて首相の座にとどまることになる。
なお、選挙に出馬した閣僚のうち、ゲリニ公務員相はパリ市内の選挙区で、環境派候補に敗れて落選。エルアイリ家族担当相は、ロワール・アトランティック県の選挙区で、三つ巴戦の末に、社会党候補に敗れて落選した。それ以外の出馬候補は、アタル首相やダルマナン内相など主要閣僚を含めて当選した。このほか、注目の選挙区では、ボルヌ前首相と改選前のプロンピベ下院議長が当選。ベラン元保健相は三つ巴戦を経て、左翼LFIの候補に敗れて落選した。オランド前大統領は地元のコレーズ県の選挙区で当選。LFIの人気政治家フランソワ・リュファン候補は、与党連合の立候補取り下げのおかげで極右RNの候補を抑えて再選を果たした。極右RNを率いるマリーヌ・ルペン氏の姉に当たるマリーカロリーヌ・ルペン候補はLFIの候補に敗れて落選。共和党党首でRNとの協力に転じたシオティ候補は、地元ニースの選挙区で再選を果たした。極右小政党を率いるデュポンテニャン候補はエソンヌ県の選挙区で落選し、27年に渡り務めた議員職を失った。