ユダヤ人虐殺の戦犯探しで知られる弁護士のセルジュ・クラルスフェルト氏(88)が今回の総選挙で極右RNの支持を表明し、物議を醸している。自らもユダヤ人である同氏は16日、テレビ局とのインタビューの機会に、左派連合とRNの一騎打ちとなった場合に、「反ユダヤの党と親ユダヤの党との間なら、私は親ユダヤの党に投票する」と言明した。同氏は、パレスチナ支持を前面に打ち出す左翼「不服従のフランス(LFI)」を念頭に、左派連合を反ユダヤの党に分類したと考えられる。
RNの前身であるFN(国民戦線)を率いたジャンマリー・ルペン氏(現在のRNを率いるマリーヌ・ルペン氏の父親)は、修正主義的な発言の数々で知られ、ナチスドイツに協力したペタン政権を再三にわたり支持してきた。マリーヌ・ルペン氏は、RNを「普通の党」にするという戦略の下で、父親の反ユダヤ路線からの軌道修正を進めており、外国人排斥の標的をイスラム過激派に見定め、いわば「敵の敵」であるユダヤ人コミュニティとの和解を進めてきた。クラルスフェルト氏は2022年の大統領選においては、決選投票に進んだマリーヌ・ルペン氏を「人種差別と反ユダヤ主義の娘」と位置付けて、その当選に反対する論陣を敷いていたが、その後、マリーヌ・ルペン氏は去る2月にクラルスフェルト氏の自宅を訪問するなどして接近と和解を進めた。
今回のクラルスフェルト氏の発言は、RNにとって権威のお墨付きを得るという象徴的な意義があるが、アウシュビッツ・ビルケナウ収容所の生き残りとして証言を続けているジネット・コリンカさん(99)は、「極右が我々を守るとは信じられない」と述べて、過激主義はなんであっても危険だとコメントしている。ユダヤ人コミュニティの中にも、クラルスフェルト氏の発言を疑問視する声がある。