欧州議会選挙の投開票がフランスでは6月9日に行われた。事前の予想通り、極右政党RNが勝利した。マクロン大統領は同日夜、「国民に選択の可能性を与える」ために、解散総選挙を行うと予告した。6月30日に第1回投票、7月7日に決選投票が行われる。
欧州議会選挙は全国統一選挙区による比例代表制で争われ、5%を超える得票率の候補リストに議席が配分される。10日未明の開票速報によると、極右RNが31.50%の得票率を達成し、マクロン大統領派の14.50%を大きく引き離してトップに立った。3位は社会党系の左派グループで14.00%の得票率を達成して健闘した。4位が左翼政党「不服従のフランス(LFI)」で10.10%、5位が保守野党「共和党」で7.2%、6位が環境派で5.50%、7位が極右「ルコンケット」で5.30%となり、以上7リストが議席を獲得した。議席数では、RNが30、マクロン大統領派と社会党が共に13、LFIが9、共和党が6、環境派と「ルコンケット」が共に5となった。
極右RNは、前2回の欧州議会選挙でトップとなっていたが、これほどの大差で勝利したことはかつてなかった。前回の選挙では、RNとマクロン大統領派の差はかなり小さかったが、今回の選挙では、それぞれ7ポイント程度上昇と下降を記録して、15ポイント以上の差が開いた。それだけでなく、極右新党「ルコンケット」も5%ラインをクリアし、極右は合計で37%近くの得票率を達成したことになる。マクロン大統領への批判と欧州批判をナショナリズムが吸い上げて成長していることが明確になった。
マクロン大統領は9日の午後9時頃、選挙速報が発表されてから1時間後というタイミングで、短い国民向けのメッセージを公表。解散総選挙を決めたことを明らかにした。大統領は、安定した政策運営のために国は明確な過半数を必要としていると述べて、国民に選択の余地を与えることを決めたと説明した。解散総選挙という決断は予想外で、国民に驚きを与えた。これより前、RNの筆頭候補を務めたバルデラ党首は、マクロン大統領に解散総選挙を迫っており、RNの要求に大統領が屈した感もある。第3位となった社会党の筆頭候補グリュックスマン氏と、環境派はそれぞれ、RNの要求に屈したとしてマクロン大統領の解散総選挙の決定を批判。逆に、共和党と、左翼政党LFIは解散総選挙を歓迎している。なお、過去に解散総選挙は、シラク大統領(故人)が1997年に決めた例があるが、大統領の保守勢力は選挙で惨敗し、ジョスパン左派内閣との「コアビタシオン」を招いたという経緯がある。その後、大統領選挙・総選挙の制度改正(ともに任期を5年間に揃えた)もあり、大統領が解散を決めるのはこれが初めてとなった。マクロン大統領は2022年の総選挙で下院における過半数を失っており、巻き返しの必要はあったが、このタイミングで解散を決めて、危険な賭けに打って出たことになる。