パリ五輪の開会式の際に、見物者が集まった民家のベランダが崩落するリスクがある。専門家が29日付の日刊紙ルパリジャンに対して明らかにした。
7月26日に開催されるパリ五輪の開会式は、セーヌ川を船舶がパレードするという斬新な企画で行われる予定だが、セーヌ川を見下ろせる建物には見物の人々が多数集まることが予想される。しかし、特に古い建物の場合は、脆弱になっているところも多く、極端な荷重に耐えられない恐れもある。トゥールーズ大学の教員で専門家のブシュージュ氏は、この機会に複数の物件を点検したが、ひび割れや苔(防水性に欠陥があることを示す兆候)などが見受けられるものが多く、手摺がぐらついているなどの危険な兆候もあったと説明。開会式のことが気にかかって仕方がない、と話している。
パリの代表的な「オスマン風」建物は、現在のパリの基調を作った19世紀後半の都市計画に由来しており、ベランダが3階と6階に設置されている。かつては、1階に商店があり、2階には商店主が住み、そして3階には富裕者が住む(当時はエレベーターがなかったため、階が低い方が好まれた)という構成が通例で、富裕者向けにベランダが設置された。6階は屋根裏部屋の一つ手前の階で、ここにベランダがある理由ははっきりしていない。作業用の足場のような用途が想定されていたのかもしれない。いずれにしても、街並みに統一感を与えることに貢献している。こうした建物のベランダは、そもそも大きな荷重を想定していないし、建設から長い年月を経過しているため、あまり頑丈であるとはいえない。それにイナバの物置くらい人が乗ったら、確かにひとたまりもないかもしれない。区分所有建物の管理組合の連合組織はこの機会に啓蒙のための文書を準備。「飛び跳ねたり動き回ったりすると余分な負荷がかかるのでやめましょう」、「専門家に鑑定をしてもらいましょう」などのアドバイスを盛り込んでいるが、鑑定を依頼する入居者は多くないという。