最高裁は24日、フィヨン元首相らを被告人とする架空雇用事件の上告審判決を言い渡した。3人の被告人の有罪判決を支持したが、フィヨン元首相の量刑と、元首相夫妻に命じられた被害者への返済額について、改めて決定する必要があるとして、その点について高等裁判所に裁判のやり直しを命じた。元首相の有罪がこれで確定した。
フィヨン元首相は、下院議員時代に、夫人を議員秘書の名目で雇用し、下院にその給与を支払わせていた。これが内実のない架空雇用である疑いが浮上し、元首相夫妻と、元首相の代行議員(議員と閣僚職の兼務が禁止されていることに伴う制度で、閣僚に就任した議員の在任期間中の代行を務める議員)の3人が公金横領などの容疑で起訴された。元首相は、この疑惑が浮上した当時、大統領選挙への出馬を準備していたが、疑惑の中で出馬を維持し、2012年の第1回投票にて落選。その後に政界から退いた。
上告審では、訴訟手続きの欠陥を理由に元首相が起こした訴えの取り扱いが焦点の一つとなった。元首相は、訴訟の手続きに欠陥があったと主張し、手続き上の欠陥を理由とする訴訟無効の訴えを起訴後には起こすことができないとする刑事訴訟法典の規定は憲法違反だとして、憲法評議会による違憲審査を請求した。憲法評議会はこの言い分を認めて、政府に法律の改正を命令(2024年10月1日付で同規定の廃止が決定済み)。評議会はその一方で、現行の係争については、欠陥の存在を被告人が起訴前には知り得なかったことが証明され、さらに、訴訟無効の訴えを禁止する規定を根拠として裁判所が無効請求を却下した場合に限り、被告人が違憲状態を自らの利益にできるとする条件を付けていた。最高裁はこの点について、下級審は、元首相が提起した訴訟無効の訴えについて、禁止規定を援用して却下したものの、それにとどまらず、内容を吟味した上で理由を挙げて却下していたと認定。本件において被告人が違憲状態を自らの利益とすることは認められないとの判断を示した。
最高裁はその一方で、元首相夫人と代行議員の執行猶予付き禁固刑を追認したが、元首相の実刑部分が伴う量刑(禁固4年、うち1年間が実刑部分)については、執行猶予の伴わない刑罰を下す要件を満たしていることの根拠を下級審が示していない、との理由を挙げてこれを破棄し、裁判をやり直して元首相の量刑を決定するよう命じた。また、元首相夫妻に対して、80万ユーロの賠償金を被害者である下院に支払うよう命じた下級審の判決について、元首相夫人に与えられた報酬は明らかに法外ではあったが、元夫人がまったく秘書としての仕事をしていなかったとはいえないとし、根拠を挙げて適正な金額を設定するべきだとの判断を示し、この点についても、やり直し裁判にて決定するよう命じた。