子どもへの体罰で起訴された父親が、控訴審で無罪判決を得た。検察と被害者の子ども及び母親はただちに上告した。
メッス高裁が19日に下した判決内容が22日に公表された。イブ・ミラ被告人は、国境警察に所属した元警察官で、起訴当時に9才と12才だった子ども2人に、2016年から2022年にかけて、暴力を振るったとして起訴された。被害者の証言によれば、平手打ちや、壁に押し付けて息ができないようにするなどの粗暴な行為を繰り返しており、汚い言葉での罵倒に加えて、「シリアにつれていって置き去りにしてやる」などの脅迫的な言葉も発していた。被告人は、2023年7月に第1審で執行猶予付き禁固18ヵ月と親権停止の有罪判決を受けていたが、メッス高裁は一転して無罪判決を言い渡した。高裁は、暴力の事実を認めた上で、子どもが犯した過ちに照らして相応の規模であり、子どもに損害を及ぼしておらず、また侮辱的な性質のものでない限りで、子どもを矯正する権利が親にはあり、刑事裁判所はこれに依拠して被告人への懲罰を見合わせることができるとの理由を挙げて、無罪判決を言い渡した。本件については、子どもが言うことを聞かなかったり、悪いことをしたことが矯正の理由であったとし、被告人が自ら子どもの頃に厳しい教育を受けていたことにも酌量の余地を認めた。
フランスでは、2019年にいわゆる「体罰禁止法案」が制定され、民法典を改正する形で、「子どもの教育においては体罰を用いない」旨が親の義務として定められた。今回の判決については、「矯正の権利」という概念は法令ではなく判例に由来するもので、現行の法令の枠組みの中でその正当性を失っているという議論が出されている。最高裁がどのような判決を下すかが注目される。