フランスで書籍のテレビ広告を2年にわたって試験的に許可する政令が4月5日付で官報に公示された。720社が加盟するフランス全国出版社協会(SNE)は、ベストセラー作品が有利になり出版業界の弱体化と文学創作の衰退に繋がりかねないとして反発し、政令の廃止を求めている。フランス書店協会(SLF)、著作家の代表組織である作家評議会(CPE)、約400の出版社が加盟する独立出版連盟(Fedei)なども、テレビ広告に反対の立場を表明している。
広告許可の目的は読者層の拡大にある。メトロや街中の本のポスターに目を留めず、新聞や雑誌なども読まない層にも、テレビ広告なら訴求力があるとの期待から、規制緩和が決まった。これまでのところ、出版社の広告出稿は、政令公示の1週間後にXO出版がBFMTV局でスポット広告を流したのみにとどまっている。大手出版社エディティス傘下のXOは、以前より大衆向けの宣伝に積極的で、かつてラジオ広告を通じてギヨーム・ミュッソの作品をベストセラーに押し上げたことで知られる。全国テレビ広告協会(SNPTV)も、2020年夏に試験導入された映画のテレビ広告が映画業界全体にとってプラスだったとして、今回の解禁でも、若者層の読書を増やすなどの貢献ができるとの見方を示している。