仏中銀は3月22日、近年の仏生産性の低下は主に「雇用に有利な公共政策に要因がある」との見方を示した。2023年4-6月期の名目労働生産性(付加価値を労働者数で割った数字)は、2019年末と比べて5.2%低い水準に下がっており、コロナ危機前の標準的な水準と比べると8.5%低くなっている。中銀はその原因を分析した。
中銀は、生産性の低下が、専ら分母となる労働者数の相対的な増加に由来しており、富の創造が減退したわけではないと指摘。中銀は、8.5%の減退分のうち5ポイント分についてその要因を特定。特定分の3分の1は一時的な要因に、残りの3分の2は長期的な要因に由来すると指摘した。中銀は、非特定分でも、この1対2という比率は同じだと想定している。
一時的要因とは、企業がコロナ危機脱却時に雇用調整を手控えて、雇用数を維持したことを指す。企業は採用難に直面し、事業が減退する中でも雇用をあえて維持したが、中銀によると、そのために、輸送機器製造、建設、宿泊・飲食、情報通信の4部門を中心に36万人の余剰雇用が生じた。中銀は、この余剰は徐々に解消し、3年後には元に戻ると予想。つまり、失われた生産性の3分の1はその時までに回復することになる。
長期的な要因としては、政府が雇用政策の柱とする見習い研修生の増加をあげた。労働生産性の後退幅8.5%のうち、1.2ポイント分がこの増加に由来するとの推計を示した。中銀はこれについて、労働者の能力向上に伴い将来的には生産性改善の要因に転じるとも指摘している。中銀はこのほか、コロナ危機後の求人難を背景に、企業が、就業から遠ざかっていた人材にまで採用を広げ、生産性が低い労働力が増大したことに伴う効果を1.4ポイント分と試算している。また、コロナの影響で就労形態が見直されたことの効果を0.4ポイント分と試算した。
特定されていない要因として、中銀は、新型コロナ後の倒産件数の低さや、危機前と比較した人件費の低さに由来する効果を、可能性として示唆した。