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CMA CGM、BFM TVグループを買収へ

仏海運大手CMA CGMは、アルティス・フランスからBFM TVグループの買収に向けた独占交渉を開始した。評価額を15億5000万ユーロに設定して100%株式を買い取る。15日に両社が発表した。

BFM TVグループは、ニュース専門地デジ局BFM TVと民放ラジオRMCを核にした民放グループで、フランスでは第3位。RMC傘下の地デジ局・有料局も含まれ、テレビ・ラジオの視聴者・聴取者数は1日当たりで1500万人超に上る。CMA CGMが80%、同社のロドルフ・サーデCEOをはじめとするサーデ一族の持ち株会社が20%株式をそれぞれ取得する計画で、買収額はEBITDA倍率では14とかなり高い。CMA CGMは、コロナ危機後の運賃大幅上昇で得た潤沢な資金を用いてメディア資産の買収に力を入れており、子会社のホワイノット・メディアを通じて、地方紙のラプロバンスとコルスマタン、経済紙のラトリビューンを保有、民放大手M6にも出資している。BFM TVグループの買収が実現すると規模が格段に大きくなる。

アルティスを率いる仏・イスラエル系の実業家パトリック・ドライ氏は、2015年にBFM TVグループを7億ユーロで買収した。アルティス・グループは、全体で600億ユーロ近くの債務を抱えており(アルティス・インターナショナルとアルティスUSA含む)、アルティス・フランスに限っても債務額は240億ユーロに上る。金利上昇を経て債務のリファイナンスが苦しくなっており、BFM TVグループの売却により、2025年に償還期限が来る債務14億ユーロの全体と、2026年に償還期限が来る債務13億ユーロの一部について、返済のめどをつけた。ただ、2027年には55億ユーロ、2028年には94億ユーロの債務の期限がくることになっており、同社は金利低下によりリファイナンスの条件はより良好になると期待している。主要資産であるSFR(通信)を売却する構想もあるが、SFRの業績が優れないこともあり、適正価格での売却はより困難になるとみられる。

KSM News and Research