仏内務省は22日、反フランスの説法を行っていたことを理由に、南仏ガール県在住のイスラム教導師マジュブ・マジュビ氏を本国のチュニジアに送還した。先に施行された移民法の規定を利用した最初の送還となった。
マジュビ氏は、三色旗を悪魔の旗であるなどとして、神の下にいかなる価値もないと糾弾していた。この件で、マジュビ氏は、「三色旗」というのは「多色旗」の言い間違いであり、先に開催されたサッカーアフリカネイションズカップに寄せて、国家間の対立に終止符を打ち、神の国の到来を祈念するための言葉だったなどと釈明していたが、地元ガール県のボネ県知事(地方における国の代表者)は、マジュビ氏の発言は三色旗関係にとどまらず、女性蔑視やユダヤ人排斥主義を称揚するなど、共和国の価値を著しく毀損するものだったとして、国外退去処分を正当化した。
マジュビ氏は22日にガール県の自宅で逮捕され、パリの入管施設に送られ、そこから同日中にチュニジアに送還された。マジュビ氏は1980年代よりフランスに居住し、仏国籍の女性と結婚し、仏国籍の4人の子どもの父親となっている。2029年まで有効の滞在許可証を所有していた。このため、従来の制度なら、国外退去処分の執行は事実上不可能だったが、先に施行された移民法は、「共和国の諸原則に意図的かつ重大なやり方で違反する」外国人を国外退去処分とすることを認めており、この規定を利用した初めての事例となった。ダルマナン内相はこの件について、移民法の制定により迅速な送還が可能になったとして、政府の施策の成果を強調した。政府はまた、国外退去処分とは別に、マジュビ氏を「テロ称揚」の容疑で検察当局に提訴した。これに対して、マジュビ氏の弁護士は、退去処分の取り消しを求める行政訴訟を起こすと予告した。