アタル首相は21日朝に記者会見を開き、農業部門向けの追加支援策を発表した。パリ農業見本市が24日に開幕し、マクロン大統領が会場を訪れることになっているが、これを前に、農民の不満を和らげる狙いがある。
アタル首相は、今後に提出される農業基本法案の中に食糧主権の目標を明文化すると約束。治安や防衛と同様の国の基本的利益として農業を位置付ける考えを示した。この法案には、農地を区切る生垣に関する規制など、複雑すぎる規制を簡素化し、農民の無用な負担を減らすための措置も盛り込むと説明した。首相はまた、季節労働力不足の解消を目的に、外国人季節労働者への査証発給を容易にする措置を講じると約束。農薬については、その削減義務の尺度として、フランスで用いられている「Nodu」と呼ばれる規格を廃止し、欧州連合(EU)の標準的な規格の適用に切り替えると発表した。Noduについては、農民団体のうちFNSEAと、農薬業界が、以前から廃止を求めており、環境派と対立していた。
首相はまた、農民の適正収入の確保を目的として、通称EGALIM諸法令の定める措置を強化する目的で法案を今夏までに提出すると予告。小売業者や食品メーカーとの交渉で、農民に十分な収入が確保されるように制度を改めると説明した。公共部門や自治体によるオーガニック食品の調達拡大等の措置についても予告した。また、この機会に、ルメール経済相は、農作物の原産地表示の義務の遵守状況を調べるため、小売業者等1000ヵ所でこれまでに調査を実施し、372件の義務違反を発見したと説明。法令の遵守を徹底するために厳しい姿勢で臨む方針を示した。アタル首相はまた、農民の抗議行動の収拾に当たり約束した各種の緊急支援について、CAP(欧州共通農政)関係の補助金については99%強の支給が完了しており、3月15日までにすべての支給完了を目指すと説明した。
農民団体の側では、一部にまだ不満がくすぶっており、事態が鎮静化に向かうかどうかは微妙な情勢。