憲法評議会は25日、先に国会で可決された移民法案の違憲審査の結果を公表した。右派の要求で法案に追加された措置のほとんどについて削除を命じた。
政府が準備した移民法案は、不法滞在者の国外退去処分の執行を容易にすることを目的としており、その一方で、就労する不法移民への滞在許可証の発行による移民の受け入れ拡大措置も含んでいた。下院で与党が過半数を失っていることから審議は難航し、右派勢力の賛成を取り付ける目的で、各種の措置を追加した上で法案は可決された。採決では保守野党の共和党だけでなく、極右政党RNも賛成票を投じて物議を醸した。マクロン大統領は法案全体の違憲審査を憲法評議会に請求。憲法評議会は、追加条項のほぼすべてを削除し、政府案に近い形に戻した上で法案を承認した。
憲法評議会は、全86条項のうち、35条項の削除を命令。うち32条項は、法案の本来の趣旨と関係がない条項であるという理由を挙げて却下した。具体的には、一連の社会給付について、外国人に待期期間を設定する条項が、社会保障会計予算法案に盛り込まれるべき条項であることを理由に削除された。また、外国人留学生に対する保証金納付義務の導入、移民の家族呼び寄せの制限、フランスで生まれた子どもの国籍取得の申請制度の導入、国外退去処分を言い渡された者に対する住居斡旋の廃止、外国人への医療援助の制限、外国人受け入れ上限設定に関する年次国会審議の実施、などに関する条項がやはり削除を命じられた。
ダルマナン内相は憲法評議会の決定を歓迎。移民法を迅速に施行し、不法滞在者の国外退去の加速に取り組むと言明した。法案修正を後押しした共和党と極右RNは、憲法評議会の決定を、政治的な意図が込められたものだと批判。移民に関する憲法改正を問う国民投票の実施を要求する声などが上がっている。