S&Pグローバルコモディティインサイツの統計によると、フランスの電力貿易は2023年に50.1TWhの出超を記録した。欧州諸国中で最大の電力輸出国となった。
出超幅は、スウェーデン(28.6TWh)とノルウェー(17.3TWh)を大きく上回った。これら2ヵ国は水力発電が盛んで、電力輸出国として常に上位にあるが、フランスは両国を抜いてトップに立った。4位はスペイン(13.9TWh)で、同国の場合は、再生可能エネルギー(風力及び太陽光)の好調に加えて、電力価格抑制に関する欧州連合(EU)の合意により、価格引き下げをもたらす特例措置を認められたことで、価格競争力が高まったことも追い風になった。
フランスの場合は、原子力発電の回復の効果が大きい。国内の多くの原子炉に故障が見つかったことで、原子力発電量は2022年には279TWhと極めて低い水準に下がっていたが、修理が進み、2023年には320.4TWhまで回復した。これに加えて、再生可能エネルギーの成長も貢献。12月に1日間の電力輸出が最高記録を更新した時には、風力発電が17GW超の稼働と過去最大に達していた。
電力需要が全般的に優れない中で、だぶついた電力が近隣諸国に輸出されているという側面もある。原子力廃止に踏み切ったドイツでは、電力貿易が2023年に10TWhの入超と、2002年以来で初の入超に転じた。S&Pによると、フランスの電力輸出は、2024年から2025年にかけて、6-8TWh程度増えることが予想される。ただ、こうした市況が今後も続くなら、電力の余剰が価格を押し下げる効果を及ぼし、再生可能エネルギー等への投資意欲を削ぐ要因になる懸念もある。S&Pは、2030年時点で電力価格が1MWh当たり50-60ユーロ程度となり、フランスの出超幅は現在の2倍の100TWh超に達すると予測している。