アフリカのお面を競売にて高値で転売した古物商を相手取ってもとの所有者が訴えていた件で、アレス地裁(ガール県)は19日、原告の訴えを退ける判決を下した。古物商が価値を偽って購入した証拠はないと認定した。
この事件では、引退前に裁判所書記を営んでいた88才の男性とその妻の81才の女性が、古物商を相手取り、売買契約の取り消しと、競売により得られた利益の支払いを求めて裁判所に訴えた。この夫妻は、別荘の物置にあったアフリカ製のお面などの古物を、古物商を呼んで買い取らせた。古物商は150ユーロにて買い取ったが、その後に、お面が現在のガボンで作られたファン族の面であることが判明。もとの所有者の先祖が植民地総督を務めていた際に持ち帰ったものと考えられ、現存のものは少なく、貴重な美術品であることがわかった。競売では、30万-40万ユーロの評価額に対して、420万ユーロの高値にて落札されたが、もとの所有者夫妻は、欺瞞による取引であると主張して、取引の無効化を請求。ガボン政府もこの訴えに加わり、取引の無効化とお面の返還を請求していた。
裁判所は、もとの所有者が、何らの鑑定も依頼せずに取引を手配したことを挙げて、無効化を請求する資格はないと判断した。古物商については、アフリカ美術品の専門的知識を有していたわけではなく、その時点で知り得た材料で判断したに過ぎず、不当性は認められないとした。ガボン政府の請求については、裁判所が受理できる内容ではないとして、門前払いとした。