下院は11日、移民法案の本会議審議に先立ち、環境派が提出した法案一括否決の決議案の投票を行った。左翼から極右までの野党勢力が揃って決議案に賛成票を投じ、決議案は賛成270、反対265で採択された。マクロン政権と与党にとって深刻な打撃となった。
移民法案はダルマナン内相が準備。上院先議で、上院を通過後に下院に送られ、小委員会審議を経て11日より本会議審議が始まる予定だった。法案は、不法滞在者の国外退去処分の強化といった措置を含み、同時に、人手不足の業種における不法滞在の就労者に滞在許可証発行の道を開くといった措置も盛り込まれていた。保守勢力が過半数を握る上院は、制限強化の方向で修正した上で法案を採択。下院小委員会では、政府案に戻す形で一部修正がなされ、本会議で審議される予定だった。
マクロン政権は下院で過半数を失っており、法案を通すには、野党勢力の一部の協力を得る必要がある。このほかに、「49-3」と呼ばれる採択強制措置(内閣不信任案が採択されない限りは、法案を採決なしに採択できる)もあるが、こちらは予算法案以外の法案については発動に縛りがあり(1会期につき1法案まで)、政府は、移民法案では「49-3」には頼らず、保守勢力の一部の賛成を得て法案を採択させる目算だった。しかし、一括否決の決議には、保守「共和党」の議員団も賛成に回り、野党の大同団結が実現した形となった。政府の国会運営の戦略にほころびが生じたことになる。
法案を準備したダルマナン内相は同日中に、マクロン大統領に辞表を提出したが、大統領はこれを受け入れず、ボルヌ内閣に対して、法案の可決成立に向けてしかるべき手段を講じるよう指示した。ただ、可能な方法は限られている。12日朝の時点で、両院協議会を招集して妥協案を協議させるのが有力なプランとなっているが、多数派を擁立しようとするなら、保守勢力に大幅な譲歩をするのが不可避となる。内閣改造論も浮上しているが、改造をしたところで、多数派が確保できるわけではなく、解決法にはなりえない。解散総選挙以外に道はないという見方もあるが、政府与党の不人気を考えると、さらに厳しい結果になりかねない。