パリ市内のエッフェル塔近くで12月2日夜、通行人が刃物で相次いで襲撃される事件が発生した。1人が死亡、2人が負傷した。犯人は警官隊により現場付近で逮捕された。当局はテロ容疑で捜査を開始した。
事件は22時頃に発生。グルネル河岸(15区)の路上で、通行人が刃物とハンマーで襲撃され、ドイツ・フィリピンの二重国籍の男性が死亡した。犯人はビルアケム橋を渡って右岸(16区)に移動し、家族と共に通りかかった英国籍の男性観光客が、ケネディ大統領通りで襲撃を受けて負傷した。このほかに1人が負傷した。その直後に警官隊が犯人を追い詰め、テーザー銃(電撃を与えるスタンガンの一種)を使って身柄を取り押さえた。逮捕の際に犯人は「アラー・アクバル」と叫んだといわれる。
警察の発表によると、逮捕されたアルマン・ラジャブプールミヤンドアブ容疑者は、フランスで1997年に生まれ、フランス国籍を持つイラン系の男性で、過激派を網羅する通称「Sファイル」に登録され、当局による監視下に置かれていた。2016年には、暴力行為を準備していた罪で禁固4年の有罪判決を受け、2020年に出所していた。精神障害で治療も受けており、最近では、パレスチナ・ガザ地区の情勢に触発され、フランスをイスラエルの共犯者と見据えて、殉教者として死ぬことを望んでいたという。「イスラム国」に対して忠誠を誓う動画も発見されている。
犯行を抑止できなかったことで政府に対する批判の声が高まっている。2024年のパリ五輪を控えて、十全な警備体制を確保できるのか、懸念する声も上がっている。