欧州連合(EU)はこのほど、口座間の即時送金サービスに関する新たな法令案について合意した。ユーロ建ての即時送金を無料で提供することを事実上義務付ける内容となった。
即時送金サービスは2017年に導入されたが、その本格的な普及は遅れている。2022年初頭の時点で、送金の11%を占めているに過ぎない。欧州委は、サービスの利用拡大と不正行為の排除を目的に新たな法令案をまとめ、このほどEUレベルで合意に至った。
法令案によると、2024年半ばに新規則が施行される予定で、施行から9ヵ月後には、銀行はすべての顧客(法人・個人とも)に、即時送金の受け取りを可能にすることが義務付けられる。さらに、施行から18ヵ月後には、通常の送金と、即時送金の手数料に格差を設けることが禁止される。通常の送金は無料で提供されることがほとんどであるため、この規則は、即時送金が無料化されることを意味する。さらに、口座番号と名義人の名前が一致していることを確認し、不一致の場合には警告を出すサービスの導入も義務付けられる。これも無料での提供が求められる。この点について、銀行業界の側では、その実現とGDPR(EU一般データ保護規則)のコンプライアンスとの両立は困難であり、追加投資が必要になると問題視している。加盟国には、これらの規則について、違反の場合に年商10%以上の金額を最高額とする罰金処分を適用できるよう、制度を整えることが義務付けられる。