下院で9月29日、ボルヌ内閣の不信任案の投票がなされた。不信任案の可決には過半数の289票以上が必要だが、賛成は193票にとどまり、予想通りに否決された。
ボルヌ首相は、下院で審議中の中期財政計画法案(LPFP)について、採決なしに法案の採択を可能にする憲法上の措置(憲法の条文の名前をとって、俗に「49.3」と呼ばれる)を発動。この発動の場合に、続いて提出された内閣不信任案が可決されれば、法案の採択は白紙に戻るという規定があり、その規定に沿って左派連合NUPESが不信任案を提出した。不信任案には、NUPESのほかに極右RNが賛成票を投じたが、保守野党「共和党」は、左翼勢力と同調するのを拒否し、投票を棄権した。このため、過半数の賛成は得られなかった。
マクロン大統領は2022年の再選後、下院で過半数を失っており、国会運営で困難が続いている。「49.3」は、予算関連の法案については無制限で行使できるが、それ以外の法案では1会期について1回のみ行使できる。LPFPは、2023-27年の財政運営の展望について定めるもので、財政健全化の道筋を示す文書という位置づけであり、欧州連合(EU)からの補助金を受け取るための前提条件となる。2022年中の可決を目指したが野党側の抵抗を受けて審議を断念したという経緯があり、今回の審議では、野党側を説得する道を探ったが成果が出せず、結局、「49.3」の行使に踏み切った。国会ではこれから予算関連法案の審議が続くが、そこでも「49..3」の行使が続く見通しであることを政府は認めている。