政府は27日、2024年予算法案を閣議決定した。
予算法案は2024年の経済成長率を1.4%に設定。この数字はかなり高めで、楽観的過ぎるという批判の声も聞かれる。
税制面では、マクロン政権が2017年の発足時より重視してきた減税が小休止したのが目立った。法人向けでは、付加価値を課税標準とする地方税CVAEの段階的な撤廃のペースが鈍化。2024年の減税額は10億ユーロと、全廃の場合と比べて4分の1の規模に縮小した。最高税率は0.375%から0.28%へ引き下げられる。その一方で、農業機械等と建機等向けの軽油の優遇税制の縮小により、通年で1億7000万ユーロの税収増を確保。また、高速道路と空港を対象にしたインフラ課税の導入(6億ユーロ)が盛り込まれた。これらは、気候変動対策を口実になされ、税収は対策費用に充当される建前となっている。この措置については、高速道路使用料等の増額を通じて、家計に負担が転嫁されることを懸念する声もある。家計向けでは、中流家庭を念頭に置いた20億ユーロの減税措置が2025年に延期された。半面、所得税課税最低限等のインフレ率並み改定が実施され、物価上昇に伴う賃上げが課税強化を招かないよう配慮がなされる。これによる国の負担分は年間60億ユーロに上る。他方、物価上昇に連動する形で、付加価値税(VAT)税収は前年比で100億ユーロ増えて2190億ユーロとなる。インフレで国が太っているとの批判の声に対して、ルメール経済相は、所得税課税最低限等のインフレ率並み改定に加えて、年金を含む各種の社会給付の支給額の増額による国の負担増が、VAT増収の2倍を超える規模に達していると指摘し、儲け過ぎという批判は当たらないと反論している。
支出面では、大幅な節減は見送られた。財政赤字の対GDP比は、2023年の4.9%(予定)に対して、2024年には4.4%まで縮小し、支出の増加率は実質(物価変動の影響を除外)で0.5%増にとどまる。ただし、エネルギー価格の抑制措置等の特別措置を除外して比較すると、支出は実質で2.2%の増加を記録しており、支出を十分に絞り込んでいないとする批判の声が内外で聞かれる。ちなみに、エネルギー価格の抑制措置の段階的な廃止だけで、2024年中の支出削減効果は150億ユーロに上るという。他方、支出項目をみると、気候変動対策関連で70億ユーロ、教育省予算(教職員の待遇改善など)で39億ユーロ、国家主権にかかわる省庁(法務省、軍隊省、内務省)で50億ユーロの増額が認められるなど、予算増の項目も多い。また、金利上昇に伴い、国債費は100億ユーロから480億ユーロへ膨張する。国家公務員の数は、2023年の1万790人増に続いて、2024年にも8273人の増加を記録する見込みで、構造的な改革努力の効果は薄い。