ニジェールでクーデターが発生した件で、マクロン仏大統領は7月29日、国防・治安評議会を招集して対応を協議した。政府はこの機会に、バズム大統領の下で憲法に依拠した秩序の回復を直ちに実現するようニジェールに対して求めることを決定。さしあたり、ニジェールに対する開発援助と予算支援を一切中断すると発表した。
ニジェールでは、26日に軍人らのグループがバズム大統領を拘束するクーデターを実行。28日になり、チアニ将軍が「救国国家評議会」を率いて権限を掌握する旨の発表を行った。チアニ将軍はイスフ大統領(2011年から2021年まで在任)に近く、バズム大統領との関係は悪かったという。特に最近はチアニ将軍が率いる大統領親衛隊の再編が検討されていたと言われ、チアニ将軍が先手を打ってクーデターを起こした可能性がある。軍は表向きはクーデターを支持しているが、チアニ将軍に対して批判的な勢力も多いとされ、一枚岩ではない。今後の状況はまだ流動的とみられる。
サヘル地方では、フランスの旧植民地諸国においてクーデターが相次いでおり、ブルキナファソとマリに続いて、ニジェールにもクーデターの動きが広がった。ブルキナファソとマリでは、反仏の動きと共に、ロシアとその傭兵派遣会社ワグナーが勢力を伸ばしており、本国ロシアでプーチン大統領とワグナーの対立が表面化する中ではあるが、今回のニジェールのクーデターにもロシアの影が感じられる。「クーデター支持」のデモでは、ロシアの旗を振る者たちも参加。30日にはフランス軍の撤退などを要求する反仏デモが行われ、フランス大使館の表札が破壊されるなどの逸脱行為も発生した。仏政府はこれに対して、フランス国家や軍、フランス市民に対する攻撃があれば、直ちに厳しく対処すると発表してけん制した。また、憲法に基づいた体制への復帰を目的とする地域のあらゆるイニシアチブを支援するとも発表し、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が準備する調停作業などへの期待を表明した。フランスは、マリの軍事政権がテロ対策作戦のフランス軍の駐留を拒否して以来、ニジェールに1500人の兵員を配備している。また、ニジェールには仏国籍人500-600人程度が居住している。