仏再保険大手スコールのドニ・ケスレール会長が病死した。71才だった。9日に発表された。
ケスレール会長は、研究・教育部門から金融業界に転身し、1998年から2002年まで経営者団体MEDEF(就任時にはCNPF)の副会長を務めた。自由主義的な立場で知られ、この頃に、ジョスパン左派内閣が導入した週35時間労働制に強く反対し、抵抗する姿勢を示して広く知られるようになった。2002年には、米同時テロ(2001年9月)の影響で経営難に陥ったスコールの会長兼CEOとなり、同社の立て直しに手腕を振るった。2021年6月にCEO職から退き、会長専任となったが、コロナ危機を経て同社が再び経営難に陥る中で、後任のCEOが3度も交代するという混乱を招き、経営の行方に懸念が集まっていた。その一方で病状も悪化し、後任の人選が決まらないまま在職中に死去した。
会長死去の報を受けて、スコールの株価は9日終値で6.13%の大幅上昇を記録した。ケスレール会長はスコールの身売りを拒否し、激しい戦いの末に、仏保険大手コベアと「停戦条約」(コベアは2024年まで出資率を10%未満にとどめると約束)を結んでいたが、会長の死去に伴い、スコールが買収の標的になる可能性が再浮上すると市場は見ている。スコールの株価は24.93ユーロと、このところ回復はしてきたが、株式時価総額は45億ユーロ弱で、世界最大手のミュンヘン再保険と比べると10分の1に過ぎず、買収の手頃な標的となりうる。経営のかじ取りは今後、5月1日に就任したばかりのティエリー・レジェCEO(同業スイス・リー出身)に委ねられる。会長職は、次期会長が選任されるまで、ドロマネ副会長が臨時に務める。後任の人選は7月中にも決まるとの報道もあるが、スコールはこれを確認していない。