高級ブランドのシャネルは、2021年に続いて2022年も順調な販売拡大を記録し、モード、香水・化粧品、時計、ジュエリーの全部門、および世界の全地域で、コロナ禍前の2019年の水準を上回った。総売上高は172億2000万ユーロと、前年比で17%増(有機的成長率)を記録。特に、全体の27%を占める欧州でほぼ30%の増収を記録した。2022年には、ロシアの店舗閉鎖とシャネル財団への投資増強の影響で、営業利益(57億ユーロ)の伸び率は増収率に及ばなかったが、営業利益率は33%を超える水準を維持した。2022年11月以降、米国での販売に景気低迷の影響が出ているが、欧州とアジアでの販売好調がこれを十二分に補っているという。
高級ブランドセクターのアナリストによると、ルイ・ヴィトンとディオール(いずれもLVMH傘下)、エルメス、そしてシャネルの4ブランドは、クリエーティブなイメージ維持に成功したことでグッチ等の他の高級ブランド群に水を空け、世界のトップ4を形成している。これらトップブランドの基本戦略の一つは価格設定で、通常からの超高級路線のおかげで、インフレ亢進下でも一層の値上げをする余地があることが大きい。シャネルの場合、2022年の増収の半分は平均価格の上昇によって確保されており、2023年3月にも新たに8%の値上げを実施した。また、ブランドイメージ維持のための流通網の厳格なコントロールも基本戦略であり、販路を限定することで顧客との特権的な関係を維持し、経済の動向に左右されない強い販売構造になっているという。シャネルは2022年にモードと時計部門で3店舗、香水・化粧品部門で39店舗を新たに開設し、2023年に入ってからもビバリーヒルズにある米国最大規模の店舗をリニューアルオープンした。なお、シャネルは従来EC販売には慎重な姿勢を保ってきたが、現在、香水・化粧品部門の販売の20%はEC販売で上げている。