欧州委員会は5月24日、個人投資家の保護に関する欧州連合(EU)法令案を公表した。法令案は今後、EU理事会と欧州議会において審議される。
EUでは、家計資産の17%のみが証券投資となっており、この割合は米国の43%と比べて低い。欧州委は、証券投資の振興につながる個人投資家の信頼感醸成を目的として、今回の法令案を策定した。個人投資家への情報開示の徹底や不適切な商行為の排除などを目的とする一連の措置が盛り込まれた。
このうち、金融商品を製造する運用会社に金融商品を販売する販売業者が支払う手数料については、助言が伴わない販売方法による場合にのみ禁止の対象となる。この手数料については、販売業者にとって儲けが大きいが、投資家にとってはむしろ不利な商品の販売が優先されるという弊害を招くことが問題視されていたが、全面禁止は業界に大きな影響をもたらすことに配慮し、制限付きでの禁止に落ち着いた。この手数料額に関する開示義務もあわせて導入される。それと並行して、投資家にとって利益が小さすぎる商品の排除に関する各国の規制機関の権限も強化される。このほかインフルエンサーによる金融商品の宣伝についても規制を強化し、違反行為があった場合に、インフルエンサーに依頼を行った業者に対しても罰金処分を科すことができるように法令が改正される。
法令の施行から3年後に、欧州委は影響調査を行った上で、より厳しい規制の導入の是非について検討する。