マクロン大統領は11日、大統領府に産業界代表や議員らを集めて会合を開き、国内工業部門の振興策を公表した。グリーン経済振興の流れの中で、環境配慮の製品でも対外依存に陥らないようにすることを目的に、国内生産を奨励する枠組みを整えると約束した。米国のインフレ抑制法(IRA)や中国の攻勢を明確に意識した対策を打ち出した。
大統領はまず、グリーン産業部門向けの税額控除(タックスクレジット)を導入すると予告。生産投資又は無体資産(特許、ライセンス等)への投資に係り20-45%相当の税額控除を適用するという趣旨で、既存の研究税額控除(CIR)に上乗せする形で適用する。大統領は、2030年までの期間に200億ユーロの投資実現の呼び水になると説明した。この措置は、16日に閣議に提出されるグリーン産業法案に盛り込まれる。適用対象の詳細については明らかにされていない。
大統領はまた、国内で必要な人材を育成する必要性を強調し、1万5000人の育成に「フランス2030」(公共投資プラン)の枠内で着手すると予告。7億ユーロを投じて、人材不足が鮮明な職種について、総合的な対策を進めると説明した。
大統領はさらに、EV購入奨励金について、支給に当たり製造時の炭素負荷に関する条件を追加する方針を示した。名指しはしなかったが、中国製EVを支給対象から外すことを目的にした措置だと考えられる。新たな制度は2024年年頭にも施行される見通しだが、大統領は技術的な詳細は明らかにしなかった。
国内生産の振興については、重点地区を選定して支援する現行の取り組みを強化する方針を示した。今年には1億ユーロがこのために投入される。大統領はこれに絡んで、環境規制を当面はこれ以上追加せず、投資家が安定した見通しを得られるようにすると約束したが、これについては、環境派から批判の声が上がっている。