欧州議会の委員会審議において、AI(人工知能)規制に向けた規制案が賛成多数で採択された。規制案は、欧州委が2021年に提案したものだが、2000件以上の修正案の対象となった。規制案は、AIをリスクのレベル別に分類した上で規制するという内容。
医療診断から自動運転、履歴書の選別、与信審査、証拠評価に到るまで、AIは様々な分野で活用され、ユーザーの基本的人権に関わる重大な問題を引き起こすリスクがあることから、規制案は、活発な議論を引き起こした。
審議では、ChatGPTのような生成AIの飛躍的進歩を受け、特に生成AIに関する条項が付け加えられた。それらの条項によると、生成AIは、市場に投入される前に特有のルールに従わねばならないとされている。また、違法コンテンツ対策や、著作権で保護されたデータがアルゴリズム開発に用いられた場合にそれを公表することも盛り込まれた。これにより、著作権者は著作権料の支払いを求めることが可能となるとされる。
加えて、採択された規制案では「高リスク」と見なされるAIの対象が拡大され、健康、セキュリティ、基本的人権及び環境への影響が懸念されるAIに加え、有権者の投票行動に影響を与え得るAI、ユーザーが4500万人を超えるSNSのレコメンド機能に用いられるAIも含められた。これらのAIは、より厳しい透明性及びガバナンス義務の下に置かれる。
一方、禁止される行為としては、議論となった市民評価や大衆監視に加え、仕事場や教育現場及び移民管理の場における感情認識の使用、公共の場における顔認識などバイオメトリクスによる遠隔人物特定も含まれているが、後者に関しては、重大犯罪の場合には、裁判所の許可の下、事後でなら利用可能とされている。また、警察によるAIを利用した犯罪予測や、顔認識技術向けデータベース構築のためのインターネット上での画像の大量収集も禁止されている。