メーデー(5月1日)の祝日に、フランスでは年金改革に反対する労組の統一デモが実施された。年金改革への反対デモとしては13回目、年金改革法が4月15日に公示されて以来では初めての反対デモとなった。
労組CGTは首都パリで55万人、全国では230万人が参加する歴史的なデモになったと主張し、労組CFDTも100万人以上が参加したと発表した。警察(内務省)の集計では参加者数は全国で78万2000人、首都では11万2000人で、相変わらず主催者側発表と警察側発表の乖離は大きい。複数のメディアが集計を依頼した調査会社Occurrenceによると、首都でのデモ参加者数は9万4000人だったという。動員数が大きかったことは確かだが、労組が期待していたような圧倒的な規模には達しなかった。
労組は2日、14回目の反対デモを実施するかどうかを決める。政府は、年金改革法成立後の社会労働政策に向けた協議を労組に呼びかけており、それに対する諸労組の対応には相違が見られ始めた。強硬派のCGTは、政府が年金改革を撤回しない限り、話し合いには一切応じない姿勢を堅持しているが、FOやCFDTは改革に反対する立場を基本的に維持しつつも、首相との対話には応じる可能性を示唆しており、労組の統一行動が今後も続くかどうかは不確か。
なお、1日のデモは全体として平和裏に実施されたが、パリ、リヨン、グルノーブル、ナントなどの都市では暴力行動も発生し、ダルマナン内相によると、108人の警察官・憲兵が負傷した。特に警察官1人が火炎瓶の投擲で重度の火傷を負った。内相は警察官への攻撃を目的してデモに参加する過激分子の行動を改めて批判した。
なお、当局は今回のデモを監視する手段として初めてドローンを利用した。ドローンの利用は人権と自由の侵害にあたるとして複数の団体が利用の差止めを請求する提訴を行っていたが、ルーアンの行政裁判所が使用の対象地区と時間帯を制限する決定を下した一方で、リヨン、ボルドー、パリの裁判所は提訴を却下した。