60億ユーロの債務を抱える仏食品・日用品小売大手カジノ・グループ(傘下にモノプリ、フランプリ、カジノ、ジェアンなど)をめぐる動きが活発化している。すでにオーガニック食品等販売の仏テラクト(Teract、農業生産者の協同組合InVivoの流通事業子会社)との資本提携に向けた独占交渉が3月から進められてきたが、4月24日、この交渉に同業の仏アンテルマルシェ(ムスクテール・グループ)が参加した。なお、フランスの食品・日用品小売部門でカジノは7位、アンテルマルシェは3位につけている。
カジノとテラクトは両社の国内の小売業を束ねた会社と、地産地消の購買センターを束ねた会社の2社を設立し、カジノとテラクトが共同で保有することを検討している。かねてよりカジノと購買で協力関係にあるアンテルマルシェは、カジノとテラクトが設立する新組織に少数出資(1億ユーロ)するとともに、売上高にして11億ユーロに相当するカジノの100店舗ほどを買収し、また購買に関する協力をさらに強化することを提案した。これにより、3社は食品流通の上流から下流までをカバーする垂直統合型のビジネスモデルを構築することができ、アンテルマルシェが保有する強力な購買システムを利用できる。またアンテルマルシェによる店舗買収は、カジノに数億ユーロをもたらす(アンテルマルシェは2億ユーロの前払いを約束)。テラクトによる2億ユーロの追加出資なども合わせて、この計画では、(店舗譲渡の収入以外に)5億ユーロ程度の資金がカジノにもたらされる見通し。アンテルマルシェの側も店舗を増やす利点があるほかに、InVivoから生鮮食品や地産地消に関するノウハウを得ることを期待している。
しかし、これとは別に、同じく24日、フランスで積極的な企業買収を展開するチェコの実業家ダニエル・クレティンスキー氏が、大型の増資計画をカジノに提案した。同氏はすでにカジノの資本の10%を保有し、オーナーのナウリ氏に次ぐ大株主になっているが、3番目の株主(2.6%を保有)であるフィマラック(大物実業家のラドレドラシャリエール氏が経営)と組んで、総額11億ユーロの増資を提案。このうち、クレティンスキー氏が7億5000万ユーロ、フィマラックが1億5000万ユーロを出資し、残りの2億ユーロは他の株主がもたらすという構想で、カジノの現在の株式時価総額(6億9100万ユーロ)と比べて、極めて規模の大きい増資となる。クレティンスキー氏の提案には一連の条件が付与されており、特に劣後債を保有する債権者がその譲渡に応じることなどが条件となる。
カジノは2件の提案を並行して検討する方針で、双方の提案は両立も可能だとしている。増資が実現すれば、テラクトとの交渉でもより有利な立場を得られ、一石二鳥だとの計算も働いている模様。ただし、クレティンスキー氏の提案では、同氏とフィマラックが合わせて資本の55%を取得することになり(40%と15%)、現在51%を保持するナウリ氏からクレティンスキー氏へと経営権が移動する見通しで、その場合には、テラクト側が交渉を停止する可能性が強い。