憲法評議会は14日、先に国会で可決された年金改革法案の違憲審査の結果を発表した。一部の条項の削除を命じた以外は、大筋で法案を合憲と認めた。マクロン大統領は時を移さず、15日未明に年金改革法を官報上に公示した。
憲法評議会は、全部で6つの条項の削除を命じたほかは、法案を全体として合憲と認めた。法案は、社会保障会計予算法への修正案という体裁をとっており、憲法評議会は、予算関連法案に相応していないことを理由にこれら6条項の削除を命じた。具体的には、定年年齢引き上げに伴うシニア雇用の促進を目的として導入される企業単位のシニア雇用評点制度の導入とシニア対象の無期雇用契約(CDI)の導入、社会保険料の徴収組織の見直し、就労条件が過酷な労働者への配慮、賦課式年金制度の広報、の6条項が削除の対象となった。定年年齢を62才から64才へ引き上げることを柱とする改革の本体はそのまま合憲と認定された。反対派からは、年金改革が補正予算法案として扱われたのはそもそも不当であり、それにより国会審議が加速化され、「49.3」(採決を経ずに法案を可決させる憲法上の規定で、予算法案については無制限に利用できる)により可決されたのは違法だとする議論が出されていたが、憲法評議会はそうした議論も退け、法案を大筋で合憲と認めた。
憲法評議会は別途、RIPと呼ばれる国民投票請求の審査も行ったが、こちらも不受理とする決定を下した。左派議員らが「定年年限は62才を超えてはならない」とする法案を別途提出し、その国民審査請求を行っていたが、憲法評議会はこの請求も認めなかった。なお、同じ目的でこれとは別のRIP請求も提出されており、その審査結果は5月3日に発表される予定。
マクロン大統領は、憲法評議会の審査結果が出てから数時間後には年金改革法を官報上に公示して施行した。これは、改革に関して強い姿勢で臨むことを改めて示したものとして注目され、労組や野党勢力は強い反発を示している。大統領は17日夜に国民向けのテレビ演説を行う予定。政府は、シニア雇用対策など、年金改革に伴う影響緩和措置の一部が削除されたことを踏まえて、これらの点に関する労使との協議を再開することで、年金改革を巡る対立の緩和の道を探りたい考えだが、労組側は5月1日(月)のメーデーの機会に大規模な動員を達成して一矢報いたいところで、関係の正常化は実現するとしてもそれ以降になる。