今日のフランス
-
2024.11.20
仏国内の工場、閉鎖や人員削減相次ぐ
工業部門の施設の閉鎖や人員削減計画が増えている。全国的な広がりも見せている。レゼコー紙が独自の集計結果を20日付で報じた。 これによると、50人を超える雇用が関係する案件数は、9月以来で40ヵ所余りを数えている。失われる可能性がある雇用数は合計で7500人程度に上る。最近では、タイヤ大手ミシュランが国内2工場(ショーレ及びバンヌ)を閉鎖する計画を発表。食品メーカーのデルペイラも、ジェール県及びバンデ県の2拠点の閉鎖を予告した。ヴァレオ(自動車部品)はサルト県内の複数拠点の閉鎖を予告した。地域別では、工業が盛んな北部及び東部地方が多く、ミシュランの例が示すように、西部地方にも広がってきた。なお、北部のリール商事裁判所によると、1-10月の企業倒産による雇用喪失は6000人に上り、これは前年同期と比べて2倍増であるという。 これと関連して、鉄鋼大手アルセロールミタルは、ランス(マルヌ県)及びドナン(ノール県)の拠点2ヵ所を閉鎖する可能性を含めて検討する旨を労組に通知した。主要な需要家である自動車部門の不振が響いているという。 KSM News and Research -
2024.11.20
配偶者による「経済的暴力」、銀行も対応に乗り出す
配偶者による「経済的暴力」への対応に銀行各社が取り組んでいる。経済紙レゼコーが19日付で報じた。 「経済的暴力」とは、配偶者に無断で財産を奪取したり、権利を行使できなくするような行為を指す。ある調査によると、女性の2割強がこうした「経済的暴力」の被害を受けたことがあるといい、種類別では、17%の女性が「盗難・没収」の被害(生活費を使いこまれる、収入の水準が異なるのに大きな負担を要求される、など)を受けたと回答。それ以外では「金融面での統制」(知らないうちに借金を負わされる、収入を横取りされる、クレジットカードを知らないうちに使用不可にされる、など)の被害を受けた人が11%、「就労の統制」(就職に反対される、トレーニングを受けることを禁止される、など)の被害を受けた人が6%となっている。 大手銀行BNPパリバの場合は、消費ローン子会社のBNPパリバPFから始めて、全社を対象にして、対顧客業務に携わる1万人の係員に、経済的暴力に関するトレーニングを受けさせた。経済的暴力がDVに直結・連動しているケースも多く、配偶者が一方の配偶者に代わってカード無効化の手続きを行うような場合に、本人確認を徹底するなどの対応を明確化した。 KSM News and Research -
2024.11.20
身障者雇用週間:フランスでは障がい者雇用はまだ道半ば
欧州連合(EU)で11月24日まで障がい者雇用週間が開催されている。フランスでは、1987年に障がい者雇用促進法が制定され、従業員数20人超の企業には、雇用の6%以上を障がい者とすることが義務付けられている。違反企業には制裁金が科される規定となっている。2022年時点で、障がい者の失業率は12%と、2015年の17%に比べて大きく低下したが、全体の失業率が7%であるのと比べるとまだかなり高い。障がい者雇用促進法の規定については、対象企業のうち31%が遵守しているが、39%の企業で規定よりも障がい者の雇用数が少ない。障がい者の雇用がまったくない企業も30%に上る(実績はいずれも2023年)。身障者の採用には、公共部門企業、教育、保健、社会事業、工業部門が積極的だが、広報・報道では採用が少ない。制裁金による促進効果については諸説あるが、収入は障がい者の採用支援を目的とする各種取り組みの財源となっており、関係者らは制度の有益性を擁護している。障がいに就労状況を適合化させるための援助制度については、企業側がその存在について知らず、また、手続きが複雑と考えて利用をためらうケースも多いことが問題視されている。 KSM News and Research -
2024.11.19
農民の抗議行動が開始に
農民団体が11月18日より、全国で抗議行動を開始した。欧州連合(EU)とメルコスール(南米南部共同市場)の間の自由貿易協定締結への反対などを掲げている。 農民による抗議行動は1年ほど前にも展開された。この時には、当時のアタル内閣が、農民支援の一連の措置を約束して、抗議行動が収束したという経緯がある。今回の抗議行動は、各団体の力関係を決める農民組合の選挙を2ヵ月後に控えるというタイミングもあって、各団体にとっては、存在意義を誇示する機会にもなり、強硬化を招くリスクもある。大手農民団体のFNSEAとJAは象徴的な抗議行動を優先しているが、より先鋭的なCRやCPなどの団体は、前回のような道路封鎖を展開する可能性もある。タカ派のルタイヨー内相は、封鎖が長期化するなら排除を徹底すると予告しており、今後にどのような状況になるか注目される。 政府は、アタル前内閣が約束した措置のうち、67%が実行に移されたとしているが、FNSEAでは、実行されたのは36%にとどまるとし、スピードアップを要求している。政府はまた、約束された措置のうち、立法措置をまとめた法案の審議を1月に上院で再開する(解散総選挙のため法案の国会審議は中断されていた)と予告。このほか、上院では、農民対象の規制緩和(農薬制限措置の解除など含む)を盛り込んだ議員立法法案が提出されており、マクロン派の議員団も、農民支援法案を議員立法法案として提出、こちらは12月2日に下院で審議される予定。 KSM News and Research -
2024.11.19
ブルゴーニュワインの競売会、今年は不作で売上金が大幅減
毎年恒例のブルゴーニュワインの競売会が11月17日まで、オスピス・ド・ボーヌを会場に開催された。サザビーズが開催を請け負った。売上金は総額で1390万ユーロとなり、前2年を下回った。 この競売は200年以上の歴史があり、収益金は医療・慈善事業に寄付されることになっている。当年物のブルゴーニュワインが取引され、毎年の価格動向をみるうえでの目安にもなる。今年の出品は天候不良で雨が多く、そのため病害も多かったことから不作に見舞われた。出品量も前年比でほぼ半減し、売上金は、やはり不作だった2021年の1260万ユーロは上回ったものの、一転して過去最高を記録していた2022年の2900万ユーロに比べて顕著に後退した。 目玉の「プレジデント」ロットは、落札額が1樽で36万ユーロとなった(これに10万ユーロの追加寄付金が上乗せ)。前年35万ユーロをわずかに上回ったものの、2022年の81万ユーロに比べると低下が目立った。平均落札価格は、1樽で3万1165ユーロとなり、前年の3万916ユーロからわずかに上昇。これは不作による品薄の効果によると考えられる。 KSM News and Research -
2024.11.19
フランスの投資誘致力、国会解散を経て目立って悪化
外国企業を対象とするフランスの投資誘致力に関する調査結果が発表された。国内の政局流動化を背景に、投資誘致力の評価が目立って後退したことを示す結果が得られた。 この調査はEYが各種の外国企業200社(フランスに進出していない企業含む)を対象に、10月3日から21日にかけて実施した。調査がなされた時期は、バルニエ内閣が予算法案を公表した後に当たる。調査によると、全体の50%の企業が、直近6ヵ月間にフランスの誘致力が悪化したと回答(「緩やかに悪化」が49%、「大きく悪化」が1%)。「悪化した」と回答した企業にその理由を尋ねた(複数回答可)ところ、「国会解散に由来する政治的不確実性」が61%で最も多く、これに、「法人税制に関する不確実性」(47%)、「公共財政の悪化」(37%)が続いた。 また、全体の49%の企業が、対仏投資のプランを縮小したと回答。投資延期を決めた企業のうち、投資再開を決めるのは少なくとも1年後になると答えた企業は85%に上っており、政局不透明感が足かせになっていることがわかる。フランスはこれまで、マクロン政権下で順調に直接投資の誘致に成功してきており、2023年には1200件近くの投資計画の発表(雇用では4万人相当)が実現したが、足元の状況で急激に評価が冷え込んだ。 KSM News and Research -
2024.11.18
失業保険巡り労使が基本合意、支出節減と高齢層の就労拡大に関して合意
労使による共同運営を建前とする失業保険を巡り、労使間で15日に基本合意が成立した。節減措置と、高齢層の雇用問題を巡り合意した。 労使はまず、越境就労者の失業手当算定方法を見直すことで合意。スイス、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルクで就労するフランス人労働者が失業した場合、失業手当はフランス側が支給することになるが、その支給額は、一般にフランスよりも高めの給与水準に連動することから高めになる。これを是正する措置が合意には盛り込まれた。このほか、高齢層の失業者に認められている長めの給付期間も短縮される。22.5ヵ月間の支給を受けられる年齢下限は53才から55才へ、また、27ヵ月の支給を受けられる年齢下限は55才から57才へ、それぞれ引き上げられる。他方、経営者側は、使用者負担の失業保険料率の引き下げ(4.05%から4%へ)の開始を、2025年5月1日まで遅らせることに応じた。これらにより、2025年通年では4億ユーロ、向こう4年間の合計では23億ユーロ程度の節減が実現する。 高齢層(60-64才)の雇用促進措置としては、この年齢層を対象にした特殊無期雇用契約CVEの導入(欠け目なしの年金受給が可能になる年齢を採用時に使用者に通知し、その年齢になると契約が自動的に打ち切られる)と、段階的な年金受給を開始しつつ就労を継続する制度の60才からの適用を可能にすることなどが取り決められた。 KSM News and Research -
2024.11.18
イルドフランス地域圏、「空飛ぶタクシー」の試験運用許可を取り消し
イルドフランス地域圏(パリ首都圏)議会は15日、いわゆる「空飛ぶタクシー」の試験運用許可を取り消す決定を下した。許可は年末までの期間に有効だったが、これを取り消した。また、パリ市内のオーステルリッツ河岸に整備予定だった発着場向けの補助金100万ユーロも取り消した。 パリ市内と空港などを結ぶ「空飛ぶタクシー」の試験運用は、ADP(パリ空港会社)と、電動垂直離着陸機を製造の独Volocopter社が共同事業として取り組んでいたもので、パリ五輪の際にデモンストレーションが行われる予定だった。ただ、環境問題などを理由に、正式な許可が出るのが遅れて、地元のパリ市も計画に敵対的な姿勢を見せていた。イルドフランス地域圏議会は、フランス及び欧州当局からの型式承認が得られていないことを理由に、年内の試験運用に道を閉ざす決定を下した。 「空飛ぶタクシー」の市場規模は、欧州で2030年までに42億ユーロにまで達するとの予測もある。ただ、パリ市を含むパリ首都圏の自治体の一部は、騒音などのマイナス面を挙げつつ、一握りの金持ちのためのサービスだとしてこれに敵対的な姿勢を示しており、実現の可能性が遠のいている。 KSM News and Research -
2024.11.18
スマホの世帯普及率、テレビ受像機を上回る
ARCOM(仏放送行政監督機関)の調査によると、スマートフォンの世帯普及率は2024年6月末時点で92%(1台以上を保有する世帯が全体に占める割合、以下同じ)となり、初めてテレビ受像機の普及率(89.7%)を上回り、家庭内のスクリーン中でトップに立った。スマホの普及率は1年間で3ポイントの上昇を記録。テレビ受像機は逆に0.2ポイントの微減を記録した。3年前の普及率は、スマホが83.2%、テレビ受像機が91.3%となっており、前者が大きく伸び、後者が後退を続けていることがわかる。それ以外のスクリーンの現在の普及率は、パソコンが87%、タブレットが47.5%となっており、いずれも3年前から普及率に大きな変化は見られない。 スマホの伸張とテレビ受像機の後退は、従来型の地デジテレビ局の視聴後退と連動しているものと考えられる。なお、世帯におけるスマートテレビ受像機の普及率は87.2%まで上昇しているが、テレビ視聴の方法は、固定通信事業者が提供するIPTV経由が圧倒的(84%近く)で、スマートテレビ受像機の接続機能を使う人はさほど多くない。15-34才の若い世代に限ると、リニアTV視聴はスクリーン利用のトップ3に入っていない。他方、衛星放送を受信できる世帯は11.7%まで低下した。 KSM News and Research -
2024.11.15
官民のテレビ局など、合同でロビー団体を設立
官民のテレビ局が揃って合流したロビー団体「LaFA」がこのほど発足した。民放大手TF1の社屋に当事者らが12日に揃って発足を宣言した。 LaFAには、民放大手のTF1とM6、そして、公共テレビ局を統括するフランス・テレビジョン、さらに、SACD、SACEM(いずれも著作権者協会)、ANIMフランス(アニメ制作会社の業界団体)など、コンテンツ制作関連の団体などが合流した。10社・団体が発足時より参加した。初代会長はTF1のベルメールCEOが務める。 LaFAは、攻勢を強めるインターネット大手との競争において、力を合わせて共通の利益を擁護する目的で設立された。公共放送部門の財源の確保、広告規制等の緩和、舞台芸術等のキャスト・スタッフの失業保険制度の擁護、生成AIが発達する中での権利者の正当な収入の確保、デジタル・プラットフォームに対する欧州連合(EU)レベルの規制の推進などに主に取り組む。 テレビ局各社は、従来は敵同士だったが、現在では、インターネット大手という共通の敵を見据えて、必要な部分で共同戦線を組むことが必要だとの認識が広がっている。また、先の解散総選挙では、極右RNが政権を獲得する可能性があったが、公共放送の民営化を掲げ、コンテンツ制作部門への資金供給に介入する意志もちらつかせていたRNの政権到来には、官民を問わず業界全体が脅威を感じた。その危機感が大同団結を実現する上でのばねとなった。 KSM News and Research -
2024.11.15
困窮者の3分の1強が生活保障手当を申請せず、DXで手続き困難に
困窮者救済団体スクールカトリックはこのほど公表した報告書の中で、社会福祉へのアクセス困難を問題視している。「行政当局による、行政当局のための」行き過ぎたDX推進により、しかるべき援助を得られなくなる困窮者が増えていると指摘した。 スクールカトリックに援助を求めた世帯の収入の中央値は2023年に555ユーロとなった。95%の世帯は貧困線以下(独身者の場合で月額1216ユーロ)で生活していた。収入がまったくない世帯は全体の25.4%を占めたが、この割合は前年比で2ポイント上昇し、過去最高を記録した。 収入がまったくない世帯が増えたのは、社会福祉へのアクセスが困難になったことと関係がある。2023年に同団体に援助を求めた世帯の13%は、各種給付を得る上での手続きに助けが必要だと回答しており、この割合は、10年間で7ポイント上昇している。生活保障手当の一種RSAの受給資格がある世帯のうち、36.1%は受給のための申請をしておらず、この割合は10年間で13ポイント上昇した。オンライン手続きを優先し、人間が出てこない行政機関が出来上がり、困窮者には取り付く島がない状況となっている。スクールカトリックは、受給資格が一部厳格化されたことも問題視。同団体はその上で、当局機関においてはオンライン以外のアクセスも提供し、さらに、受給見合わせの対策を積極的に推進するよう、政府に対して呼びかけた。 KSM News and Research -
2024.11.15
仏政府が計画の法人特別課税、企業別の納税額予測を掲載
仏経済紙レゼコーは15日付で、政府が2025年予算法案の枠内で導入を予定する法人対象の特別課税について報じた。政府は、財政収支の改善を図る目的で、2025年と2026年の2年間に限定して法人特別課税を導入することを決め、予算法案に盛り込んだ。年商10億-30億ユーロの企業について、法人税納税額に20.6%を上乗せ徴収し、年商30億ユーロ超の企業については、同41.2%を上乗せ徴収するとの内容。2026年には、この率が、それぞれ10.3%と20.6%に軽減される。政府は、440社が課税対象になると予想しており、税収は、2025年に80億ユーロ程度、2026年に40億ユーロ程度と予想している。下院予算法案報告担当者を務めるドクルソン議員によると、2025年税収のうち70億ユーロは、年商30億ユーロ超の157社が負担、残る10億ユーロは、年商10億-30億ユーロの294社が負担することになるという。レゼコー紙がまとめた情報によると、2025年の納税額は、LVMH(高級ブランド)で7億5000万ユーロ、エルメス(高級ブランド)で3億ユーロ、EDF(仏電力)で5億ユーロ、バンシ(建設)で4億ユーロ、サフラン(航空機エンジンなど製造)で3億3000万ユーロ、クレディミュチュエル(銀行)で4億ユーロなどとなる。納税額は企業により差があり、国際事業が多い企業の場合は納税額を小さくできる。トタルエネルジー(石油)への影響はごく小さいといい、ソシエテジェネラル(銀行)でもやはり影響はほとんどない(2025年納税額は3900万ユーロ)見込み。その一方で、中堅企業にとっては、事業規模に比して大きな負担を迫られるところも多いといい、不公平感も強まっている。 KSM News and Research -
2024.11.14
バカロレア試験、高校2年次終了時に数学の試験が追加に
ジュヌテ教育相は11月12日、教育改革の今後について発表した。バカロレア(高校卒業資格)試験における数学の扱いを変えることを明らかにした。 具体的には、バカロレア試験のうち、高校2年終了時に行われる科目に数学を加える。現在の1年生から適用され、最初の試験は2025年度(2026年6月)に行われる。現在は、国語のみが対象だが、これに数学が加わる。数学の試験内容は、生徒が選ぶ専門科目に応じて異なるものとする。高校3年終了時の筆記試験と口頭試問は従来通りに行われる。 この改革は、政府が以前から予告していたものだが、内閣が交代したことにより、その扱いがどうなるかが不明になっていた。ジュヌテ教育相は、現代において数学的リテラシーが重要性を増していることを強調し、広く能力を育成する必要性を踏まえて、国語と匹敵する地位を数学に与えるものだと説明している。 ただし、教育関係者の間からは、この発表を警戒する声が聞かれる。共通科目的な扱いで数学を試験に追加するとなると、ほかの科目の比重を減らして新たに追加する数学を処遇しなければならないが、そのために全体のバランスが崩れることになる。年度末の忙しい時期に、採点官を確保するという必要も生じる。生徒や父兄には、将来の進路にかかわらずに、数学が選抜の手段として用いられることを懸念する向きもある。。 KSM News and Research -
2024.11.14
フランスの性行動に関する調査結果:性交渉は減少、多様化進む
INSERM(国立健康医学研究所)など公的機関が実施した性行動に関する調査結果が13日に公表された。5年間に渡り、3万人を対象に大規模な調査を行った。前回調査は2006年に遡る。 これによると、初めての性交渉の年齢の中央値は、男性で17.7才、女性で18.2才となった。この年齢は、2000年代初頭まで低下を続けていたが、それ以来で上昇に転じている。若年者の経済的状況が悪化したことや、新型コロナウイルス危機に伴う社会性の喪失などが背景にあると考えられる。その一方で、性的交渉のパートナーの数(累積)を尋ねると、女性の場合で、平均7.9人、男性の場合で16.4人となった。女性は2006年調査時に3.4人、男性は1992年調査時に11.2人となっており、いずれも目立って増加している。デジタル時代で出会いの可能性が増えたことも影響していると考えられる。男性と女性の間で大きな差があることについて、調査に当たった専門家は、「パートナー」の定義に関する考え方の違いも反映されていると指摘。男性の場合は全員を数えるが、女性の場合は数える価値がある人のみを数えるという違いがあるのだという。 性行為の頻度(直近4週間の平均回数)は、女性の場合で6回、男性の場合で6.6回と減っているが、その一方で、狭義の性行為に入らない広義の性交渉は増え、多様化している。同性の間の性交渉を経験したことがあると回答した人は、男性で7.5%、女性で8.4%に上っており、若年の女性に限るとこの割合は14.8%と高い。 KSM News and Research -
2024.11.14
仏失業率、7-9月期に7.4%まで上昇
13日発表のINSEE統計によると、仏失業率(マヨット海外県除く)は7-9月期に平均で7.4%となり、前の期から0.1ポイント上昇した。前年同期と比べると同じ水準だった。失業者数は前の期と比べて3万5000人増加し、233万3000人に上った。失業率は2022年末から2023年初頭にかけて7.1%と、1982年以来で最低の水準まで下がっていたが、その後は増加傾向を示している。7-9月期には、15-24才の層で1.8ポイント上昇の19.7%となったのが目立つ。25-49才は0.1ポイント低下(6.6%)、50才以上は0.3ポイント低下(4.7%)をそれぞれ記録した。就業率は69.1%で、前の期から0.1ポイントのわずかな上昇を記録。労働力率も0.3ポイント上昇の74.8%を記録した。 足元では大型の人員削減計画の発表が相次いでおり、雇用情勢は年末にかけて悪化を続ける可能性がある。 これとは別に、フランス中銀は12日、10-12月期の仏GDPがほぼ前の期並みで推移するとの予測を公表した。2024年通年の経済成長率は1.1%になる。中銀が10月に8500社を対象に行ったアンケート調査によると、工業、サービス業、建設業とも、成長が持続しているものの、自動車部門ではEV需要の陰りに苦しんでいる。受注残も工業のほぼすべての部門で低下傾向を示している。 KSM News and Research -
2024.11.13
エンジー、「欧州のカーボンニュートラル実現には努力倍増が必要」
仏エネルギー大手エンジーは11月12日、2050年までの欧州の脱炭素化の展望を発表した。2030年までに温室効果ガス排出量を55%削減するという目標は達成可能だが、2050年をめどにカーボンニュートラルを実現するためには削減努力を倍増しなければならないとの見通しを明らかにした。温室効果ガス排出量は2010年から2020年までに年間2%のペースで削減されたが、4%ペースでの削減が必要になる。 エンジーによると、2030年目標の達成は、太陽光・風力発電、電気自動車などの成熟した技術をもとに、これをいかに展開するかにかかっている。一方で、2050年目標の達成には、海運・航空輸送・重工業の脱炭素化など産業レベルでの実証が行われていない技術に多くを負うことになるため、実現可能性が不確かな部分が多い。 エンジーはまた、欧州は主権と競争力を維持するためにエネルギー移行を加速し、エネルギーシステム全体を抜本的に変革しなければならないとした上で、そのためには欧州レベルでの取り組みが必要不可欠であると強調。エネルギー移行を成功させるための指標として、▽エネルギー最終需要の30%削減と年間1.3%のGDP成長、▽エネルギーの対外依存の65%削減(輸入量)、▽電化および再生可能エネルギー生産能力の5.5倍増(太陽光・風力)、▽グリッドの柔軟性確保のための容量の4.5倍増(うち4分の3を需要調整により達成)、▽メタンガスの脱炭素化および需要の45%減、▽水素需要の7倍増(航空、海運、重工業など)と100%低炭素化、を挙げた。 エネルギー移行には多額の投資が必要になるが、それは化石燃料の輸入が減ることによって徐々に補われる。エンジーの試算によると、化石燃料の輸入減分を加味した欧州の脱炭素化コストは2025年から2030年に対GDP比で1.8%、2031年から2040年に1.5%、2041年から2050年に1%となる。エンジーでは、欧州経済にはこれだけの投資を行う力があり、気温が1度上昇するたびに対GDP比で約10%のコストが生じることを考えると、投資しないわけにはいかないとしている。 KSM News and Research -
2024.11.13
年金支給額の改定凍結が見直しに:半数近くの受給者が除外
共和党(保守)のボキエ下院議員団団長は11日夜、民放TF1とのインタビューの中で、年金支給額の改定凍結の方針について見直しが決まったと発表した。 バルニエ内閣は、年金支給額の改定時期を年頭から半年間遅らせることで、支出の抑制を実現するとの方針を公表していた。共和党との間の協議の末に、方針の見直しに応じたのだという。政府は、ボキエ団長にその発表を委ねることで、団長に手柄を譲った格好となった。 団長によると、年頭にインフレ率の半分程度の引き上げがなされ、残りの分の引き上げは半年後になされる。支給額が法定最低賃金(SMIC)を下回る人については、半年後に遡及的に改定が実施され、インフレ分相当分の引き上げが欠け目なしに実施されるという。その適用を受ける人は年金受給者全体の44%に相当する見通しとされる。 支給額改定の6ヵ月延期に伴う節減額は40億ユーロ相当と試算されていた。支給額がSMICを下回る人向けの新たな措置は、5億ユーロから10億ユーロ程度の費用負担に相当するが、ボキエ団長は、公的機関の統廃合など、硬直した行政機構の簡素化を通じて10億ユーロ程度の節減を達成できると言明した。 KSM News and Research -
2024.11.13
管理職労組CFE-CGCのオメリル書記長、失業者に
管理職労組CFE-CGCのオメリル書記長がこのほど失業者となった。勤務先の企業の倒産と買収に伴い失職した。主要労組の書記長が失業者となるのは前例がない。 オメリル書記長は2016年にCFE-CGCの書記長に就任。同労組を戦闘的な労組に変貌させる上で功績があった。アルミ大手のペシネーに1989年にエンジニアとして入社。その後、数度にわたる買収を経験した同社にとどまり、組合員として活動を続けてきた。近年ではサボワ県内にある関連会社Niche Fused Alumina社が勤務先だった。しかし、同社は去る4月に会社更生法の適用を申請し、この10月末にはAlteo社による買収が決定。173人の従業員のうち119人の雇用が維持されたが、解雇が決まった人員の中にオメリル書記長も含まれていた。 書記長はその人脈を利用して、勤務先企業の事業継続を実現するために尽力。同じくサボワ出身のバルニエ首相への働きかけが、買収の実現において効果的だったといわれる。書記長は長らく、労組指導者として、事実上は勤務していなかったが、在籍は続いていた。買収を経て解雇されることは予期してはいたが、実際に職を失うと精神的なショックは大きいと書記長は話している。書記長は63才で、書記長としての任期は2026年6月に終了する。 KSM News and Research -
2024.11.12
サッカーが反ユダヤ的な動きの標的に
パリ市内のパルクデプランス競技場で6日、サッカーUEFAチャンピオンズリーグのPSG(パリサンジェルマン)対アトレティコ・マドリードの試合が行われたが、その際に、PSGのサポーター集団CUPが、「フリー・パレスチナ」と記したティフォと呼ばれる大弾幕を掲げた問題で、PSGはフランスサッカー連盟(FFF)が8日に開いた会合の機会に、大弾幕の事前審査を徹底することなどを約束した。 仏政府はこの問題で、政治的なメッセージがスポーツの場に持ち込まれるのは看過できないという立場から、再発防止を求めて連盟などに対して働きかけた。PSGは、サッカーの試合の日以外にCUPのメンバーを競技場内に入れないなどの措置を含めて、監督を厳しくすることを約束したという。 UEFA(欧州サッカー連盟)は、このティフォの内容を、規約が禁じる挑発や侮辱には相当しないと判断し、PSGへの制裁を見送った。PSGのサポーター集団がパレスチナ寄りであるという印象はこれまで取り沙汰されていなかったが、フーリガンへの右翼系の反ユダヤ主義の浸透は古くからあり、過去にも事案が発生している。 折しも、アムステルダムで7日に開かれたUEFAヨーロッパリーグのアヤックス対Mテルアビブ戦の後には、イスラエル人サポーターが「アラブ人」らにより襲撃を受ける事件が発生しており、イスラエル政府が自国民の帰国用に専用機を派遣する騒ぎにまで発展。国際的な緊張がサッカーの舞台に持ち込まれる状況が目立っている。 KSM News and Research -
2024.11.12
TF1、「キャッツ・アイ」を実写ドラマ化
仏民放最大手TF1は11日、連続ドラマ「キャッツ・アイ」の放送を開始した。コンテンツ制作事業の強化を代表する大予算のドラマ化となった。 フランスにおける北条司作品の人気には今更説明の必要はなかろう。北条作品は1980年代から顕著だった日本アニメブームにおける主要な柱だった。「シティーハンター」は「ニッキー・ラーソン」名義で大好評を博し、2019年には実写映画「Nicky Larson et le Parfum de Cupidon(日本題:シティーハンターTHE MOVIE 史上最香のミッション)」が制作されたほどである。TF1は、広く家族を引き付けることができる動員力のある作品をと考えて「キャッツ・アイ」を選び、リニア放送だけでなく、自前の配信プラットフォーム「TF1+」の集客力向上もにらんで大予算で制作することにした。制作にはBig Band Story社が協力。アマゾン・プライム・ビデオも日米での配信権を獲得した。予算総額は2500万ユーロというが、TF1の負担分については公表されていない。配役には、キャロル・ブーケなど大物と共に、ラップ歌手MB14を起用してやはり幅広い層へのアピールを狙っている。主役の3人にはTF1で実績のある女優(カミーユ・ルー、コンスタンス・ラべ、クレール・ロマン)が起用された。TF1としては、ヒット作「HPI(日本題:IQ160清掃員モルガンは捜査コンサルタント)」の実績(2024年のシーズン4は視聴者数830万人、うち20%が非リニア)が「キャッツ・アイ」のひとまずの目標となる。 KSM News and Research -
2024.11.12
政府、麻薬対策を公表
ルタイヨー内相とミゴー法相は8日にマルセイユを訪問し、麻薬対策を公表した。政府が一丸となって、麻薬取引に厳しい態度で臨む姿勢を確認した。 マルセイユをはじめとする全国各地では、このところ麻薬取引に絡んだ凶悪な殺人事件などが発生しており、社会問題として大きくクローズアップされている。政府は今回、デュポンモレティ前法相が準備していた対策案や、7月に提出された上院報告書などを踏まえて、摘発の強化を柱とするプランをまとめた。プランは、法律の制定が必要なく、早期に実行できる部分と、法律制定が必要な中期的な対策の2つの部分からなる。前者には、脅威の把握の戦略の立案に当たる本部の設立(パリ地検下に設置)と、組織犯罪対策の人員の40%増、麻薬取引に関係した者に対して、取引を行った地区への立ち入りを禁止したり、社会福祉手当の支給を打ち切るといった措置が含まれる。麻薬の消費が組織暴力団を助けることになることを報知させる一般向けのキャンペーンも行われる。立法措置を通じた対策としては、2025年年頭に法案を提出する。麻薬取引を対象とする全国管区検事局の設立などが盛り込まれる予定。 KSM News and Research -
2024.11.08
アカデミーフランセーズのフランス語辞書、第9版が完成
アカデミーフランセーズが第9版フランス語辞書の刊行を終えた。11月14日にパリの学士院本部にマクロン大統領を招いて式典を行う。 アカデミーフランセーズは、フランス語の純化を掲げて、ルイ王朝期の1634年に、時の宰相リシュリューが設立した機関。40人の委員からなり、設立当初から辞書編纂を最大の任務としてきた。第9版は1986年に最初の部分が公表され、このたび、第4巻(Rの部以降)の刊行を以て全巻が揃った。第8版の刊行は1935年に終了しており、それからだと90年が経過したことになる。辞書編纂の任務は今後も継続されるため、第10版の準備作業がこれから始められる。 第9版は5万3000語を収録。うち2万1000語が新収録の語彙となった。 KSM News and Research -
2024.11.08
パリ・ノートルダム寺院、1ヵ月後に再オープンへ
火災の被害を受けたパリ・ノートルダム寺院の一般公開が12月8日(土)に再開される。再開まであと1ヵ月に迫った。 ノートルダム寺院は2019年4月15日に火災の被害を受け、屋根の木組みがほぼ全焼したほか、天井の石組みが一部崩落して大きな被害が出た。それから5年半を経て、大規模な修復工事が完了し、このクリスマス前の再開が実現する。修復費用は8億4600万ユーロを要し、34万人から寄付を得た。建築家やエンジニア、工芸家や作業員など600人が修復作業に従事した。12月7日には、マクロン大統領の列席の下で記念式典が行われ、その模様はテレビ中継される。続く8日に一般公開が始まり、数千人の信者と来訪者を迎える予定。 これを前に、11月7日には、パリ五輪のオリンピックの鐘がノートルダム寺院に設置された。この鐘はこれまで、パリ北郊のスタッドドフランスに設置されていた。修復作業は公開再開後も継続され、火災以前から損傷が目立っていた建物奥の部分の主に外壁の修復工事が進められる。未消化の募金残金1億4000万ユーロがこのために充当される。3年間の期間がかかる見込み。 KSM News and Research -
2024.11.08
パリ五輪、政府支出が予定を16億ユーロ超過
政府は、予算法案の下院審議に伴い提出した文書の中で、パリ五輪及びパラリンピックに係る政府支出が予定を16億ユーロ超過したことを明らかにした。この超過分は、大会の警備費用の膨張に伴い発生した。内務省及び軍隊省の人件費がその主な原因で、政府が追加手当の支給を約束したことなどが支出の増大を招いた。16億ユーロのうち、7億ユーロが人件費(超過勤務手当、特別手当など)となっており、残りの9億ユーロ程度がその他支出(宿泊費、装備費用、移動手当、食事等)となっている。財務省は16億ユーロのすべてが歳出増に直結しているわけではないと説明。ほぼ3分の2は、省庁の既存の予算枠から案分を見直すことにより捻出し、正味で6億ユーロ相当が、内務省(5億ユーロ)と軍隊省(1億ユーロ)の予算増の形で、歳出増加分となった。内務省は、当初予算にはなかった、最大1900万ユーロの特別手当を、大会に動員される憲兵隊員・警察官に今年に入り約束。1ヵ月に渡り、1日平均で3万人を超える憲兵隊員・警察官が大会の警備等に従事した。また、他の公務員にも、大会関係の職務についた者には500-1500ユーロの特別手当の支給が大会開始の前になり決まっていた。 なお、大会の経済効果としては、7-9月期の経済成長率を0.2ポイント押し上げる効果があったと発表されている。 KSM News and Research -
2024.11.07
馬事業界が異例のスト、ギャンブル課税強化に反対
フランス・ギャロなど競馬主催団体は、7日に予定されていた国内のすべての競馬を中止することを決めた。政府が計画するギャンブル課税強化に反対を表明するため、異例のストを決めた。全国の3ヵ所で予定されていた25競走が中止となった。競馬の全面中止は新型コロナウイルス危機時を除くと前例がない。 下院審議中の予算法案には、政府提出の修正案の形で、場外馬券についてギャンブル課税率を6.9%から7.5%へ、オンライン馬券については6.9%から15%へ引き上げる措置が追加された。競馬以外のギャンブル課税の強化も盛り込まれていた。サンマルタン予算相は3日の時点で競馬への課税強化は望まないと言明し、下院審議においても修正案は不採択になったが、フランス・ギャロなど団体側は、上院審議において復活する恐れがあるとし、圧力を緩めないために予定していたストを実行することを決めた。7日午後には、パリ左岸のダンフェールロシュロー広場からボーバン広場(アンバリッド付近)までデモ行進が行われる。数頭の馬もデモに参加する予定という。 KSM News and Research -
2024.11.07
パイロット組合と国鉄SNCF労組、それぞれストを予告
旅客輸送部門でストの予告が相次いでいる。 仏国鉄SNCFの主要4労組(CGT、UNSA、SUD-Rail、CFDT)は揃って、21日(木)に24時間の統一ストを行うと予告した。年次賃金改定の交渉にあわせてストを行い、経営者側の対応いかんでは12月にストを再び実施するとの姿勢を示している。賃上げにとどまらず、鉄道貨物輸送子会社フレットSNCFの解体、将来の自由化を見越した一部のローカル線及び在来線事業の子会社化、保線事業部門の見直しといった一連の改革について、労組側は懸念を強めており、態度を硬化させる可能性もある。 パイロット組合SNPLは14日(木)にストを予告した。組合側は、政府が航空券課税の強化を計画していることに反発しており、課税強化を取り下げない限りは、ストをその後も実施すると警告している。SNPLは、他の租税の引き上げを見合わせ、また新税を導入しないことも約束するよう、政府に対して迫っている。この件への対応を巡っては、SNPL内にも対立がある模様で、SNPLのエールフランス支部は、ストによる損失発生を恐れて、ストの呼びかけには合流していない。なお、エールフランスは、課税強化を見越して、増税分に相当する値上げを実施することを決定。課税額は、欧州便で9.5ユーロ、5500km以上の長距離便で40ユーロ(いずれもエコノミークラスの場合)などとなる。 KSM News and Research -
2024.11.07
米大統領選でのトランプ氏勝利、欧州は首脳会議で対応協議
米国の大統領選挙でトランプ前大統領の再選が決まった。欧州連合(EU)では、欧州委員会が今夏からタスクフォースを設置して「もしトラ」のシナリオを検討しており、2016年のトランプ氏当選のときのような動揺はないが、安全保障や貿易を巡る米国との関係を見直す必要がある。11月7日と8日に現在のEU議長国であるハンガリーの首都ブダペストで欧州理事会の非公式会合を開催し、トランプ次期政権への対応策を協議する。 トランプ氏の政権復帰により、米国が欧州に対して従来以上に距離を置くことが予想される。北大西洋条約機構(NATO)を軸としてきた欧州の安全保障体制が揺るぎ、米国への依存度を減らし、欧州が自力で防衛体制を強化する必要が強まる。また米国がウクライナへの支援を削減ないし停止する場合に、欧州のウクライナ支援における負担が増す。経済面では、米国が保護主義を強め、関税を引き上げることが予想され、貿易摩擦が強まる。欧州製品への関税引き上げへの対応もさることながら、米国が中国製品への関税を大幅に引き上げれば、中国が輸出の矛先を欧州に向ける可能性があり、それへの対処も必要になる。 ちなみに、米国の外交政策における欧州軽視の傾向は第1次トランプ政権でいきなり始まったわけではなく、「アジア・ピボット」を打ち出したオバマ政権以来の一貫した流れであり、民主党と共和党のいずれが政権を握っても、基本的な方向性は今後も変わらない。米外交の焦点はアジア・太平洋地域での中国とのパワーバランスで、対欧州関係は二義的な位置付けにとどまる可能性が強い。トランプ氏の政権復帰はこうした流れをいっそう加速させることが予想される。 KSM News and Research -
2024.11.06
仏国内の温室効果ガス排出量、2023年に5.6%減:国内炭素負荷は4.1%減
11月5日発表のINSEE統計によると、フランス国内の温室効果ガス排出量は、2023年に4億300万二酸化炭素換算トンとなった。前年比で5.6%減少した。国民1人当たりでは5.9トン相当となる。 国内排出量の内訳は、家計による直接排出が1億100万トン(前年比3.6%減)、国内の生産活動に由来する排出が1億8000万トン(前年比6.2%減)となった。 他方、フランスの炭素負荷は全体で2023年に6億4400万トンに達した。こちらは前年比で4.1%減少した。1人当たりだと9.4トンになる。 ここでの炭素負荷とは、国内で消費された輸入製品に対応する排出量を合算し、逆に輸出製品に対応する排出量を差し引いた排出量に相当する。輸入製品に対応する排出量は3億6200万トン(国内消費がなされずに再輸出された製品に対応する1億5100万トン分を差し引いた正味の排出量)、国産製品の輸出分に対応する排出量は1億2200万トンであり、前者を合算、後者を控除すると、6億4400万トンという炭素負荷合計が得られる。なお、輸入製品に対応する排出量は前年比で5.5%減少、国産製品の輸出分に対応する排出量は同12.6%の減少を記録した。 国内の炭素負荷の減少は、輸入品に対応する排出量の減少に専ら由来している。なお、1990年以来で、国内排出量は大きく減少した一方で、輸入品に対応した排出量は増加しており、その結果、炭素負荷に占める輸入品の割合は増大する傾向にある。2023年実績でみると、輸入品が3億6200万トン、正味国産品(1億8000万トン)と家計の排出(1億100万トン)の合算が2億8100万トンという力関係になる。 KSM News and Research -
2024.11.06
給与明細作成ソフト大手SILAE、料金大幅引き上げで騒然
給与明細作成ソフトウェアで大手のSILAEが料金の大幅引き上げを通告し、物議を醸している。SILAEは顧客の不満の声に配慮し、値上げ幅の緩和に応じることを決めた。経済紙レゼコーが報じた。 SILAEは、会計事務所を直接の顧客としており、会計事務所の顧客である企業が役務の直接の受益者となる。月間で750万通程度の給与明細がSILAEの提供するソリューションを通じて作成されている。民間部門の給与明細は全体では月間に2100万通に上るため、SILAEのシェアは33%程度ということになるが、一定の規模以上の企業は、給与明細の作成を内製化していることから、会計事務所が零細・中小企業から請け負う業務に限ると、SILAEのシェアは圧倒的になる。SILAEは売り手市場であることを頼みとして、2024年1月にも料金を30%程度引き上げており、去る9月には、2025年年頭からの適用として、場合により3倍(1枚につき2.025ユーロから5.75ユーロへ)という大幅な引き上げを通告した。SILAEは、人事管理等のモジュールを追加した統合的ソリューション「My SILAE」への移行を理由に値上げを決定。料金に見合うだけ、サービスが大幅に強化されると説明しているが、会計士組合のドサンミシェル会長は、「小型車で済むのにランボルギーニを売りつけられるようなものだ」として、零細企業のニーズにはそぐわないサービスを売りつけられることに反発している。これを好機とみて、ベンチャー企業のYeapは、競合サービスの売り込みに力を入れており、SILAEも逆風に鑑みて、軌道修正を決めた。値上げの段階的な適用(2027年まで)や、従業員数10人未満の企業向けの特別料金の導入を約束した。 KSM News and Research -
2024.11.06
仏大手企業2社、相次いで人員削減計画を発表
大手企業2社が5日、相次いで人員削減計画を発表した。経済の停滞の影響が雇用に及んでいることを印象付けた。 まず、食品小売大手オーシャンが、2400人に上る人員削減計画を労組に提示。同社の国内事業は1-6月期に大幅赤字を記録しており、販売も5%の減少を記録している。競合と比べて2ポイント高い人件費を圧縮して巻き返しを図る。具体的には、リール市にある本社機能の合理化を通じて784人を削減。また、店舗規模の縮小と品揃えの見直し(食品以外の取り扱い製品の絞り込み)を通じて915人を削減する。配達事業も合理化して224人を削減。さらに、不採算店舗(大型店3店、スーパーマーケット1店)を閉鎖して466人を削減する。オーシャンを保有するミュリエ一族傘下の企業への配置転換を含めて対応し、最終的な削減幅は労組との協議を経て決める。同社はこの計画により、年間で3億7500万ユーロの節減を達成し、人件費率を12.5%にまで引き下げることを目指す。 タイヤ大手ミシュランは、国内2工場(バンヌ及びショーレ)を閉鎖して1250人を削減する方針を労組に提示した。ショーレは従業員数が約1000人で、小型商用車向けのタイヤを製造している。バンヌは従業員数が225人で、タイヤ部品を製造している。同社は、工場の存続のためにあらゆる手を尽くしたが、閉鎖以外の方法がなくなったと説明。同社はこの閉鎖に係り2024年中に3億3000万ユーロの費用を計上し、対象となる従業員の再就職先の確保に全力を尽くすと約束した。両工場の事業は段階的に削減し、2026年年頭に完全閉鎖する。労組側はこの発表に先立ち、ジュエレトゥール市の工場(タイヤ用繊維製造)も閉鎖される恐れがあると発表していたが、同工場については、欧州の複数の工場における生産事業をここに集める形で、事業を継続することが決まった。政界はミシュランの発表に強く反応しており、バルニエ首相も、下院における代表質問の機会に、過去にミシュランに支給した補助金についてその使途を調査すると予告した。 KSM News and Research -
2024.11.05
エネルギー料金の支払いに苦労する仏世帯は全体の28%に(エネルギー調停人)
仏エネルギー調停人が11月4日に発表した調査によると、2024年にエネルギー料金の支払いに苦労した仏世帯は全体の28%に上った。2023-2024年にかけての冬季に、自宅において寒さに苦しんだ世帯は全体の30%に達し、前年調査の14%から大幅に増加した。料金支払いを考慮して暖房を抑制した世帯は75%となった。こちらは、昨年まで5年間増加していたが、ここにきて減少に転じた。 また調査によると、エネルギー市場の自由化を前向きにとらえている世帯は77%に上り、約90%が供給事業者を変更できることを知っているものの、実際に変更のために情報を得ようとした世帯はわずか36%にとどまった。 調停人のシャランベルバル氏は、エネルギー供給事業者に対し、料金が上昇する可能性のある契約更新の際などに、サービスの透明性をより高め、エネルギー弱者がさらに脆弱化しないよう配慮してほしいと呼びかけた。 調査は、調査機関のBECOMINGが9月に2007世帯を対象に実施した。 KSM News and Research -
2024.11.05
イスラム過激派による中学教諭の斬首事件、特別重罪院で裁判始まる
パリ特別重罪院で4日、2020年に発生した中学教諭の斬首事件の裁判が始まった。8人が起訴された。 この事件では、イスラム教の預言者ムハンマドの戯画を題材に、政教分離に関する授業を行った中学の社会科教諭サミュエル・パティさんが、インターネット上で脅迫を受けた末に、チェチェン出身のイスラム過激派に勤務先の学校付近で殺害された。犯人のアンソロフ(事件当時18才)は警官隊により射殺された。今回の裁判では、22才から65才までの8人が被告人となり、テロ行為への協力について責任を追及される。うち2人の被告人は、アンソロフのために武器調達などの便宜を図ったとして、テロ共犯の容疑で起訴された。最高刑は終身刑となる。このほか、授業の内容など事実関係について虚偽の証言をして、事件が起きるきっかけを作った女子生徒の父親(モロッコ国籍)と、この父親に近いイスラム教の説教師(フランス・モロッコ国籍)の2人(いずれも勾留中)が、テロ行為への協力の容疑で起訴された(最高刑は禁固30年)。このほか、インターネット上で、テロ行為を扇動するメッセージを流布したり、アンソロフの犯行声明や犯行時の映像などを流布して、犯行に協力した容疑で、4人(うち1人は女性)が起訴された。最高刑はやはり禁固30年となる。 KSM News and Research -
2024.11.05
パリ市、車両通行制限地区ZTLを導入
パリ市はZTLと呼ばれる車両通行制限地区の設定を決め、4日付で施行した。パリの中心部を対象に、地区内にとどまらずに通過するだけの車両は、通行を禁止される。 ZTLに指定されたのは、パリ1区から4区までのほぼ全域で、これは、セーヌ川右岸に位置する中心部に相当する(約5.5平方キロメートル、人口は10万人)。ただし、セーヌ川の中州であるシテ島とサンルイ島、そしてセーヌ川沿いの一部河岸は対象外となる。この地区内を通行できるのは、救急車両やタクシー・配車サービス車両、路線バスなどに限られる。乗用車については、この地区内を起点とするか、終点とする車両のみが通行を許可される。住民やこの地区に通勤する者がその対象となるが、地区内の商店・飲食店等を訪れる人も、自動車での通行を認められる。それを証明する書類(商店のレシート等)の携行が義務付けられる。違反摘発がいつ開始されるか、また、その様式がどうなるかはまだよくわかっていない。 パリ市は、同地区を走行する車両が1日当たりで35万-55万台に上るが、そのかなりの分は地区内を通過するのみだとし、地区内の大気汚染等を引き起こす要因になり、また、自転車等の利用を妨げる要因にもなっているとの理由を挙げて、この規制導入を正当化している。地区内の商店等は、客足が遠のく恐れがあると懸念を示している。 KSM News and Research -
2024.11.04
全国で暴力的な事件、ポワティエでは少年1人が死亡
11月2日までに全国各地で暴力的な事件が発生した。麻薬取引に絡んだ事件も目立ち、大きく報じられている。 西部のポワティエ市内の団地街では1日夕刻に銃撃があり、15才から16才までの少年ら5人が負傷した。うち15才の少年1人が頭部に被弾し、2日に死亡した。事件当時には、ハロウィンのお祭りに参加していた若年者が多く現場におり、被害を受けた少年らは、飲食店前で買い物をしているときに銃撃に巻き込まれた。容疑者の男は自動小銃を乱射して逃走。当局の調べによると、男はアンティル諸島出身の25才で、マルセイユ方面で麻薬密売に関与して有罪判決を受け、現在は保釈中だった。ポワティエに進出して麻薬取引を始めて、現地の犯罪者らと縄張りを争い、マルセイユ仕込みの過激な手段を行使した疑いがある。被害を受けた少年らは抗争の巻き添えになった疑いが濃厚だという。 このほか、東部ローヌ県リユーラパプ市では、10月31日夜に、若者らによる自動車放火などの騒乱があり、13才から17才までの3人が逮捕された。自動車3台が放火の被害を受け、ゴミ箱が燃やされるなどの被害も出た。ハロウィンに関係した破壊行為である可能性もある。騒乱は続く11月1日夜にも発生。通行中のバスを、覆面をしたグループが襲撃し、乗客らが逃げた後で、バスにガソリンなどをかけて放火した。2台のバスが放火の被害を受け、付近住民が避難する騒ぎに発展した。同市のバンサンデ市長(中道右派オリゾン所属)は2日、逮捕された容疑者らの保護者らを呼び出して、監督責任を追及する手続きを開始すると予告した。 KSM News and Research -
2024.11.04
ソシエテジェネラルとBNPパリバ、株価推移で明暗
仏大手銀行のソシエテジェネラルとBNPパリバが10月31日に四半期業績を発表した。株価推移で明暗が分かれた。 ソシエテジェネラルは、1年余りに渡り株安に苦しんでいたこともあって、31日には終値で11.33%の急騰を記録。続く11月1日にも3.3%の上昇を記録し、年頭来の上昇幅は10.8%に達した。7-9月期業績は、経常収益が前年同期比10.5%増の68億4000万ユーロ、純益が4.6%増の13億7000万ユーロと好調だった。クルパCEOはこの機会を利用して経営人事の刷新も発表。特に、リテール銀行部門を自ら率いることを発表したが、市場は2023年5月に就任したCEOが巻き返しに向けた足場を固めたとみて、新たな経営人事を歓迎したと考えられる。 他方、BNPパリバは7-9月期にほぼ予想通りの業績を確保。純利益は前年同期比5.9%増の28億ユーロ(アナリストらの事前の予測は27億ユーロ)を記録した。ただ、同行の場合は、これまで順調に株価が推移していたこともあって、予想通りの業績では市場が納得しなかった。同行の株価は10月31日に終値で4.2%安に後退。銀行業界全体の見通し悪化が打撃になった。 KSM News and Research -
2024.11.04
11月1日付で各種の改定が施行に、法定最低賃金(SMIC)の引き上げなど
11月1日付で一連の改正が適用された。 まず、法定最低賃金(SMIC)が2%引き上げられた。月額では現金給与総額ベースで1801.80ユーロ、手取りでは1426.30ユーロとなった。時給では11.88ユーロ(手取りでは9.40ユーロ)となった。SMICの年次改定は1月1日付で行われるが、バルニエ内閣は改定時期を2ヵ月早めて11月1日付で引き上げを実施した。 このほか、補足年金(Agirc Arrco)の支給額が1.6%引き上げられた。また、11月1日は、借家人の強制立ち退きの執行が不可となる冬季保護期間の起点となる。3月末日までの期間について、強制立ち退きが不可となる。山岳地方においては、同じ11月1日から3月31日までの冬季期間において、全車両を対象に、スノータイヤの装着又はチェーンの携行等が義務付けられる。この義務は2021年11月に施行されたが、これまで、違反行為の摘発が実施されていなかった。山岳地方の34県がそれぞれ対象市町村のリストを策定する。 これとは別に、10月のインフレ率(前年同月比)は1.2%となり、前月の1.1%からわずかに上昇した。目標である2.0%と比べて低い水準にとどまっている。インフレ率などに連動する形で利回りが決まるリブレA(利息非課税の貯蓄口座)については、次回の改定が2月1日になるが、現行3%が2.5%程度にまで引き下げられる公算が強まっている。 KSM News and Research -
2024.10.31
年間で最も死者数が多いのが1月3日
30日発表のINSEE調査によると、1月3日が年間で最も死者数が多い日であるという。INSEEは2023年までの20年間の死亡統計を分析し、様々な傾向を抽出した。2023年の死者数は63万9300人となり、特に死亡者が多かった前年と比べて3万5900人の減少を記録した。年間の死亡者数は過去20年間で増加傾向にあるが、これは、人口構成の変化により、死亡する年代の人の数が増えたことによる。過去20年間の平均では、1日当たりの死亡者数は1600人で、季節でみると、夏季(6-8月)が平均で1450人と、9%も少なくなっている。これは、季節性のウイルス感染症の影響が小さいことにより説明される。逆に、冬季は1日平均の死者数が多く、1月は全体の平均比で14%増と最大になる。それとも連動する形で、年間に死者数が最も多いのが1月3日で平均比19%増、逆に最も少ないのは8月15日で12%減となる。1月3日に死者数が特に多いのは、年末年始で家族に会うことを望む終末期にある高齢者が、死の時期を「遅らせた」ことによるしわ寄せがくるためと考えられる。他方、8月15日は祝日であり、休日と祝日には死者数が減るという全体的な傾向があるため、この日が特に少なくなるものと考えられる。それとは別に、自身の誕生日に死亡する人が特に多いことも判明した。誕生日の死亡は平均比で6%も高い。この傾向は、若い世代の人で特に顕著だが(18-29才では21%増)、50才以上でも引き続き多い。この現象は諸外国でもみられ、その理由についてはいくつかの仮説が提起されている。日本での研究では、誕生日に自殺する人が多く、これは誕生日を前にしてうつ状態に陥る人が増えることにより一部説明できる。 KSM News and Research -
2024.10.31
仏経済成長率、7-9月期に0.4%(前の期比)
30日発表のINSEE速報によると、フランスの経済成長率は7-9月期に前の期比で0.4%となった。前の期の0.2%と比べて成長が加速した。パリ五輪開催の効果が大きかった。同期の個人消費支出は前の期比で0.5%の増加を記録。4-6月期には前の期比で横ばいだったが、7-9月期には大きく増加した。パリ五輪の開催に絡んで娯楽関連のサービス支出が大きく増えた。全体として、パリ五輪効果は7-9月期の個人消費の増加の半分程度に貢献したと考えられる。インフレ率の鈍化も個人消費の拡大をもたらした。他方、固定資本形成は全体で前の期比0.8%の減少を記録。前の期は0.1%の減少であり、減少幅は大きく膨らんだ。特に、企業設備投資が1.4%の減少を記録し、前の期の0.2%減から減少の勢いが加速したのが目につく。家計投資(住宅投資)は0.9%減と後退が続いた(前の期は1.0%減)。7-9月期に輸入は前の期比で0.7%減を記録。輸出(0.5%減)よりも減少率が大きかった。全体として、外需は経済成長率に0.1ポイント分の貢献を達成。このほかの項目は、内需(在庫変動除く)が0.2ポイント、在庫変動が0.1ポイントだった。10-12月期の経済成長率(前の期比)はゼロにまで減速する可能性がある。その場合の通年経済成長率は1.1%となり、これは政府の公式予測並みの水準となる。 KSM News and Research -
2024.10.31
ルタイヨー内相、移民政策の厳格適用を指示
ルタイヨー内相は29日付の通達で、移民政策の厳格適用を指示した。ルタイヨー内相は共和党(保守)の所属で、移民政策におけるタカ派の姿勢をバルニエ内閣において体現している。2025年年頭に新たな移民法案を提出することを取り付けているが、それを待たず、既存の法令の厳格適用を行うよう、各県における国の代表者である知事(行政長官)に対して指示した。具体的には、就労実績のある不法滞在者に対する滞在許可証の発行を促進する2012年の従来通達を取り消し、滞在許可証の発行を法令の枠組み内で厳しく制限するよう指示。また、秩序にとって脅威になりうる外国人の国外退去処分を組織的に行い、規模も拡大するよう指示した。なお、外国人不法滞在者の国外退去処分を執行するに当たっては、こうした者がパスポートを所持していないことが多いため、本国政府が通行証の発行に応じることが前提になるが、本国政府がこれになかなか応じずに執行ができないことが多い。最近でも、パリ市内で発生した女子大生フィリピーヌさんの殺害事件で、刑期を終えて国外退去処分を待っている段階のモロッコ人男性が、通行証の発行が遅れたことに絡んで釈放され、その間に犯行に及んだことが問題になっていた。ルタイヨー内相は、マクロン大統領のモロッコ公式訪問に同行し、29日にモロッコ政府代表とこの問題を協議した。モロッコ政府は協力に応じたが、数値目標など具体的な取り決めは発表されずに終わった。 KSM News and Research -
2024.10.30
民泊規制法案、両院協議会が妥協案で合意
両院協議会は28日、民泊規制の議員立法法案について妥協案を策定した。上下院の投票を経て、11月7日にも可決成立する運びとなった。 民泊規制法案は超党派の議員らが策定した。オーバーツーリズムを招く要因として批判もある民泊について、市町村による規制の権限を強化すると共に、税制優遇措置を縮小する内容となった。 妥協案は、民泊に供することができる物件の基準を強化するため、いわゆるDPE(エネルギー効率のレーティング制度)においてEより悪い物件(2034年からは「Dより悪い物件」に)の賃貸借を禁止する(貸主が本宅として居住する物件を除く)旨を定めた。この規定は、新規の物件に適用され、既に民泊に供されている物件については、2034年までのコンプライアンス達成が義務付けられる。税制優遇措置に関しては、「ミクロBIC」の簡易登録の貸主について、年間1万5000ユーロを上限に、賃貸収入の30%までを課税標準から控除可能とすることとし、従来の優遇措置を縮小した(2025年の収入より適用)。「観光用賃貸物件」又は「民宿物件」として登録されている物件(一定の基準を満たし、認証を受ける必要がある)に限って、7万7700ユーロを上限に50%までの控除が認められる。他方、貸主は物件を市町村に申告することが義務付けられ、市町村は申告内容に基づいて、規格外の物件の登録停止などの措置を講じることが認められる。このほか、本宅の賃貸日数制限(90日まで)の導入などの規制権限も付与される。 半面、「ミクロBIC」分類以外の貸主については、物件購入費の減価償却や転売時の課税に係る優遇措置があるが、それには今回の法案では変更が加えられていない。 KSM News and Research -
2024.10.30
会社更生法適用下のダロワイヨ、アコー・グループが買収
パリ商事裁判所は29日、会社更生法適用下にあるダロワイヨ(高級食品)の買収者として、ホテル大手アコー傘下のポテル・エ・シャボを選定した。エリオール(給食サービス)を退けて買収を決めた。 ダロワイヨは1682年にベルサイユで創業の老舗。2015年以来、投資ファンドのPercevaの傘下にあったが、新型コロナウイルス危機などが仇となり、数年間の赤字を経て、この夏に会社更生法の適用を申請していた。年商は840万ユーロ。 ポテル・エ・シャボは330万ユーロでダロワイヨの全事業を買い取り、さらに、1500万ユーロを投資して事業のテコ入れを図ると約束した。133人の従業員については、経済的理由による解雇を2年間に渡り実施しないことを約束した。ダロワイヨは、パリ・フォーブールサントノレ通りにある旗艦店を含めて、国内に7店舗を展開する。ポテル・エ・シャボは、旗艦店のリニューアルに着手すると共に、アコー・グループの協力を得てホテル網における展開などを進めて、ダロワイヨのブランド力を最大限引き出すことを目指す。 KSM News and Research -
2024.10.30
バルニエ首相が入院手術、経過は良好
首相府は28日、バルニエ首相が27日までの週末に入院して手術を受けたことを明らかにした。「頸部の病変」を切除したと発表した。発表によれば、経過は順調で、首相は28日に首相府での執務を再開した。病名などは公表されておらず、検査の結果は数週間後に明らかになるという。 バルニエ首相は73才で、第5共和政下では最年長の首相となった。バルニエ内閣は下院で過半数を持たず、政権基盤は極めて弱い。そのためか、首相は入院手術に先立ち、大統領や上下院議長、閣僚や国会の各議員団の代表など、60名ほどに状況を説明し、理解を求めたという。かつてはミッテラン大統領の政権末期の健康問題の隠蔽など、要人の健康状態は何かと秘密にされることが多かったが、最近ではその種の隠蔽をしようにも隠し切れないという時流がある。透明性を確保する姿勢をアピールしないと、かえって傷を深めるという判断が働いて、公表を選んだものとも考えられる。病気アピールは同情票を集めるので好都合だとみる向きもある。 バルニエ首相は、今週の国会での代表質問には欠席し、31日の閣議には出席する予定。 KSM News and Research -
2024.10.29
フランス本土でバニラ栽培、ブルターニュで初収穫
ブルターニュ地方でバニラ栽培に取り組む農家がこのほど初めての収穫を達成した。数百kgを収穫した。 青果の協同組合マレシェ・ダルモールに所属する3事業体がバニラのハウス栽培に乗り出した。2018年にバニラの品薄が取り沙汰された機会に、国内で栽培する可能性を探る取り組みを開始。フランスにおける主要産地である海外県ラレユニオンの生産者の協力を得て、ハウス栽培に挑戦することを決めた。植樹から成熟して高品質の製品が得られるまで5年が必要であり、このほどようやく最初の収穫が実現した。 バニラの世界最大の産地はマダガスカルで、年間平均で2000トンを産出している。取引価格は最大で1kg当たり600ドルだが、変動は大きい。栽培と収穫は手作業が多い。マダガスカルでは、治安状況が悪いため、熟成を待っていると盗難の被害にあうことから熟成前の収穫が多く、ブルターニュでのハウス栽培では、収穫時期をじっくり吟味して高品質の製品とすることができるという利点がある。出荷先や価格については明らかにされていない。 KSM News and Research -
2024.10.29
高齢層の雇用に関する労使交渉、経営者側が合意案を提示
労使代表は29日、高齢層の雇用に関する交渉を行う。会合はこれが2回目となる。経営者3団体(MEDEF、CPME、U2P)は28日に新たな合意案を労組側に提示した。 高齢層の雇用に関する労使交渉は、年金改革との絡みで浮上した。年金改革では、定年年齢が64才へと段階的に引き上げられることが決まっているが、それと連動する形で、定年年齢までの就労の促進などのテーマで新たな労使合意を締結することが課題になっている。労使交渉は去る4月に中断されたが、バルニエ内閣の発足を経て再開が決まっていた。 経営者団体は新たな合意案において、バルニエ内閣の了承を得て、定年年齢の引き上げにあわせて、年金受給への段階的な移行の期間を拡大することを提案。就労を段階的に減らし、賃金の減少分を年金支給の部分的な開始により補うという現行制度は、2年間を上限としているが、これを、「60才から最大4年間」に拡大する。労組CFTCなどは、同制度の適用を従業員が申請した場合、使用者はこれを拒否できないとする原則の導入を求めているが、経営者側はこれには応じていない。 このほか、労組側が反発している特定雇用契約の導入を、経営者側は引き続き提案した。これは、60才以上(産別合意がある場合には57才以上)の失業者を採用する場合の特定雇用契約を導入するというもので、契約は無期限契約ではあるが、定年に達した時点で使用者側が一方的に契約を打ち切ることができるというもの。ただし、直近6ヵ月以内に無期契約にて雇用していた者を、再び特定契約にて雇用することはできない旨が盛り込まれた。このほか、従業員数300人超の企業において、高齢就労者の案件に関する労使合意を結ぶことを義務付けることも提案された。 KSM News and Research -
2024.10.29
マクロン大統領、モロッコを公式訪問
マクロン大統領は28日、モロッコの公式訪問を開始した。30日まで国賓待遇で訪問する。 モロッコとフランスの関係は2021年夏以来、様々な問題が生じて冷え込んでいた。イスラエル製スパイウェアをモロッコが用いてフランスで情報活動を展開していたことが発覚する一方で、モロッコ側は、フランス側が査証発給を制限しているとみて反発、それ以外にも様々な事案があり、関係は悪化していた。しかし、フランス政府が今年の7月に、西サハラ問題でモロッコ寄りの姿勢を打ち出したことで、風向きは大きく変わった。マクロン大統領は、7月30日付でモロッコ国王モハメド6世に送った書簡の中で、西サハラにおけるモロッコの主権を認め、モロッコ政府が示した自治プランを、将来の交渉による解決に向けた唯一の基盤であるとの認識を示した。この見解は、西サハラを巡るモロッコとアルジェリアの間の係争で、モロッコに明確に肩入れをするものであり、モロッコ側はこれを外交努力の勝利と見据えて歓迎、今回のマクロン大統領の公式訪問の実現に至った。 アルジェリア政府は予想通りにフランス政府の軌道修正を強く批判。アルジェリア政府は、この秋に予定していたマクロン大統領の国賓待遇での公式訪問を取りやめた。ルモンド紙によれば、仏政府がこうした反応を見越してもモロッコ寄りの姿勢を示したのは、アルジェリア政府のこれまでの対応への失望感があったという。マクロン大統領は就任以来で、過去の植民地問題などを含めて、アルジェリアとの関係正常化に熱意をもって取り組んできたが、アルジェリア政府の側の歩み寄りは得られなかったと判断し、どのみち成果がないならモロッコとの関係を改善するほうが得策だという意見が政府部内で大勢を占めたのだという。 KSM News and Research -
2024.10.28
ムーディーズ、フランス長期債務の格付け据え置き:見通しはネガティブに
大手格付け会社のムーディーズは25日夜、フランス長期債務の格付けを「Aa2」に据え置くと発表した。格付け見通しは「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。6ヵ月以内に格下げが決まる可能性がある。 「Aa2」は上から3段階目の格付けに相当する。フランスでは、財政赤字の膨張が目立つ中で、2025年予算法案の国会審議が始まったが、バルニエ内閣は下院で過半数を持たず、財政健全化に向けた実効ある措置を打ち出せるかどうか危ぶまれている。それでも、2週間前のフィッチに続いて、ムーディーズも格付け維持を決めたことは、政府にとって朗報となった。ただ、格付け見通しはいずれも「ネガティブ」になり、政府の財政健全化の行方が監視下に置かれた格好になった。 ムーディーズは、財政収支の悪化が予想以上の規模に達しているとし、健全化に向けた反応が、同様の状況にある他国に比べて鈍いとも指摘した。フランスの利点としては、経済の規模が大きく、健全で、多様化されていることと、人口動態が相対的に良好であること、国家制度が堅固であることを挙げたが、政府が掲げた「2025年の財政赤字を対GDP比で5%に抑制する」との目標は実現できそうにないとも指摘。政府が予定する増税は実現がより容易だが、歳出削減については政治的な困難が大きいと指摘した。 KSM News and Research -
2024.10.28
バルニエ内閣、52億ユーロの追加節減を予告
バルニエ内閣は27日、2025年予算法案に総額52億ユーロの追加節減を盛り込むと発表した。政府は、2025年に財政赤字の対GDP比を5%まで圧縮する方針で、これを実現するために必要な節減措置について、その詳細を発表した。 52億ユーロのうち44億ユーロは国が負担する。残りは地方自治体と公共医療部門が引き受けるという。具体的には、まず、各省庁の予算凍結枠(合計で26億ユーロ)が完全に廃止される。防衛、治安、司法、高等教育、海外県・海外領土など一部の項目に限り、予算枠廃止が免除される。また、公務員部門を対象に12億ユーロの節減を実施。公務員欠勤を抑止する目的で、待期期間を民間並み3日間に設定(3億ユーロの節減に相当)するとともに、傷病手当金の支給額を削減する(10%の欠け目を設定)ことで、公務員3部門につきそれぞれ3億ユーロ相当の削減を実現する。公務員欠勤を対象にした節減策の導入は労組の反発を招くことが予想される。これ以外では、政府開発援助(ODA)の6億4000万ユーロの節減(経済省では節減後でも2017年比で12億ユーロ多いと釈明)、文化予算の5500万ユーロの節減(国営テレビのフランステレビジョンが貢献、また、若年者向けバウチャー制度「パス・キュルチュール」の縮減も計画)、車両グリーン化援助の3億ユーロの節減、政府機関の現預金の一部徴収(3億ユーロ)などが盛り込まれた。 KSM News and Research -
2024.10.28
パリ首都圏のバス路線、自由化入札でRATPの独占に風穴
パリ首都圏の公共交通機関を統括するIDFMはこのほど、バス運営の自由化に向けた入札の一環で、パリに隣接する自治体をカバーする路線バスの運営委託先を決めた。従来の独占業者であるRATP(パリ交通公団)が3つのロットのうち2ロットを確保した。 正式な契約先は11月12日にIDFMが開く取締役会の会合にて承認される。RATPは今回の入札で、新設の子会社を通じて、2つのロットの運営を引き続き受託した。残る1ロットは、RATPがトランスデブと運営を分け合っていたが、今回の入札でケオリス(国鉄SNCF子会社)が契約を獲得する運びとなった。 ケオリスが獲得したロットは、北郊セーヌ・サンドニ県を結ぶ路線からなる。RATPが維持する残り2ロットは、東側のマルヌ川沿いなどの地域と、北西のセーヌ川下流の地域をそれぞれ対象としている。3ロットは、現行役務ベースで、従業員数は操車場を含めて3000人弱、年商は合計で1億ユーロに上る。 入札は全部で13ロットを対象に行われる。残る10ロットは、パリから離れた自治体を対象としており、2025年2月から10月にかけて契約が結ばれ、2026年中に事業者の切り替えが行われる予定。パリ市内の路線バスは2026年末に契約が結ばれる見通し。 KSM News and Research -
2024.10.25
スプーフィング詐欺:最高裁、BNPパリバ銀行に被害者補償を命令
いわゆるスプーフィング詐欺の事案について、最高裁はこのほど、大手銀行BNPパリバに被害者への補償に応じるよう命じる判決を下した。銀行側の訴えを退けた。 この事件では、BNPパリバの顧客である被害者が、銀行に補償を求めて訴えていた。事件は2019年5月に発生。この顧客の口座から、総額5万4500ユーロに上る不審な送金の試みがあり、この顧客は、銀行員を偽装した者からの電話での指示に従い、送金を完了する手続きを取った。この時に、スプーフィングと呼ばれる表示電話番号の偽装により、被害者を信用させるという手口が用いられていた。顧客は、全額の補償に応じなかったBNPパリバを相手取り、同年6月に提訴を行っていた。 銀行側は裁判で、顧客に重大な怠慢行為があった場合には銀行側の責任は問われないとする法令の規定を援用した。ポントワーズ商事裁は銀行側の主張を認めて、顧客側の訴えを退けたが、ベルサイユ高裁による控訴審判決では逆転して銀行側が敗訴。銀行側は上告して最高裁で争ったが、最高裁は控訴審の判決を追認した。最高裁は、吟味する余裕があるメールによる詐欺の場合とは異なり、スプーフィングにより顧客の注意力が弱められたのは無理からぬところだと認定。銀行側の主張を退けた。 この判決はスプーフィング詐欺に関する判例になりうる。BNPパリバはこの判決について、過去に発生した事件であり、それ以来で、各種の詐欺への注意を喚起する努力を展開していると説明。現在では当時とは状況が異なると強調している。 KSM News and Research -
2024.10.25
高級ブランドの仏大手、業績に明暗
仏高級ブランド大手のケリングとエルメスが相次いで7-9月期の売上高を発表した。高級ブランドの市況後退という同じ環境の中で、明暗が分かれる業績発表となった。 エルメスは7-9月期に為替調整後で11%の増収(前年同期比)を達成。売上高は37億ユーロを記録した。1-9月期では14%増の112億ユーロを記録した。エルメスは去る10月に深セン店舗を拡張の上でリニューアルオープンし、中国の全般的な市況が悪化する中でも、アジア(日本除く)での販売は7-9月期に1%増を確保。1-9月期では7%増を記録した。7-9月期には、米国(13.4%の増収)、欧州(同17.4%)、日本(同22.8%)でそれぞれ予想を上回る増収を達成した。 他方、ケリングは7-9月期に16%の減収(プロフォーマベース)を記録。売上高は38億ユーロに後退した。1-9月期の売上高は前年同期比12%減の128億ユーロに後退した。主力のグッチで回復が遅れており、7-9月期の売上高は16億4000万ユーロと、前年同期比(プロフォーマベース)で25%の大幅減が続いた。特にアジア太平洋地域での全般的な市況後退の直撃を受けた。傘下ブランドでは、ボッテガ・ヴェネタ(4%増の3億9700万ユーロ)を除いて軒並み減収を記録した。 KSM News and Research -
2024.10.25
下院小委員会、加糖食品課税の強化案を採択
社会保障会計予算法案の審議の枠内で、下院小委員会は23日、加糖を対象とする新税導入及び既存の租税の増税を盛り込んだ修正案を採択した。同案には左右の両勢力が賛成しており、可決が有力視されている。 修正案はまず、加工食品への加糖を対象にした新税の導入を盛り込んだ。加工食品を多く消費すると、慢性病や肥満症になるリスクが高まるとの理由を挙げて、過剰な消費の抑止を目的に課税を導入する。また、既存の加糖飲料税(年間税収5億ユーロ)については、課税を一層強化する方針を盛り込んだ。特に、砂糖含有量が一定以上になると、課税水準を顕著に引き上げるという形にして、含有量を抑制するよう業界を促す税制とすることを目指す。 業界側は課税強化に反発している。非アルコール飲料組合は、家計に物価上昇をもたらす措置だと批判した。実際の課税額など詳細の決定は今後の国会審議に委ねられる。 KSM News and Research -
2024.10.24
侵略的外来種は食べて排除、南仏NGOが取り組み
南仏エロー県の地中海岸に位置するトー湾で、侵略的外来種の除去を目的に、食用にする可能性を探る試みが始まった。マルセイヤン市にあるNGOのラカペシャードが開始した。 ラカペシャードは食文化をテーマとするサードプレイスを運営している。地元の自然保護団体Adenaの協力を得て、侵略的外来種18種を割り出し、うち5種を対象に、食用化による除去の可能性を探ることにした。3種の植物と2種の動物が選ばれ、植物では、米州原産のアオノリュウゼツラン、アジア原産のヤナギバグミ、アフリカ原産のCarpobrotus edulis(通称ピッグフェイス)が、動物では、ヌートリアとアメリカザリガニが選ばれた。ボランティアが集まり、ヤナギバグミの実を炒ったり、ピッグフェイスの葉を酢漬けにするなどして、地元でも受け入れられる食用の方法を探っている。 同団体は、伐採等を経て廃棄処分となる動植物を食用に有効利用できないかと考えてこのプロジェクトに着手した。ただ、商品価値が定着してしまうと、外来種の保存という本末転倒の結果を招きかねないことから、経済的な利用は考えていない。ただ、ヌートリアなどは、大西洋岸の一部地方で、肉がパテなどの特産品になっているから、もう手遅れであるかもしれない。 KSM News and Research -
2024.10.24
ルミバード、米社のナノ秒パルスレーザー事業を買収
高性能レーザーを製造の仏ルミバードは21日、ラニオン市(ブルターニュ地方)の本社にフェラシ産業担当相を迎えた。同社はこの機会に、米社からナノ秒パルスレーザー事業を買収する合意を結んだことを明らかにした。 発表によると、米国子会社を通じて、アンプリチュード・レーザー・グループから、ナノ秒パルスレーザー「Continuum」事業を買収する。同社はこれより前、銀行団より1億ユーロのファイナンスに関する合意を結んでおり、うち5000万ユーロを3年以内に買収案件に充当する旨を明らかにしていた。今回の買収により、科学研究向けの製品ポートフォリオを強化すると共に、北米市場における足場を強化する。 ルミバードは同じ機会に、1-9月期の売上高を1億4150万ユーロと発表。前年同期比で2%の増収となったが、為替調整後のプロフォーマベースでは前年並みの売上高となった。7-9月期に限ると、売上高は前年比4%増の4350万ユーロを記録(為替調整後・プロフォーマベースでも4%増)。特に、医療部門向けが8.0%の増収を達成した。 KSM News and Research -
2024.10.24
リモートワークの普及で金曜日のオフィスはがら空き、企業の対応は
新型コロナ危機を経てリモートワークはフランス企業にすっかり定着した。従業員側は自由度の高い就労体制に愛着を持つようになっており、毎日通勤体制に戻す展望はなくなっている。 ただ、曜日によって通勤実績にばらつきがあることが問題として浮上している。通勤日としては火曜日と木曜日が圧倒的に多く、週末の金曜日は特に出勤者が少ない。谷間の水曜日は、学校の休日に当たるため、やはりリモートにする人が多く、このため、フタコブラクダのような出勤実績になる。この状況だと、火曜・木曜の需要にあわせてオフィス面積を確保しなければならず、不動産資産の最適化を実現できない。社食でも曜日ごとの需要の大きな変動への対応を迫られる。ビジネス街のレストランでは、金曜日等に客足が2-3割も減り、閉店に追い込まれたところも少なくないといい、当の企業にとどまらず、広い範囲に影響が生じている。 出勤者の数を均等に近づけるための取り組みもいろいろと進められている。サノフィ(製薬)やペルノリカール(酒造)では、金曜日の出勤者を増やすために、社食での特別サービスを導入。朝食・ブランチ無料や、デザート無料などで金曜日をハッピーアワー化した。こうした取り組みは評判がいいものの、十分な効果は得られていない。より強制力のある方法は、託児手配などが課題となるため、安易には導入しにくい。リモート就労を折り込んで遠方に転居した人の場合、金曜日は列車の乗車券が高いことが多いため、金曜出勤を強要するとなると反発も大きくなることが予想される。スペースがだぶついている曜日にオフィスの一部を賃貸しして、スタートアップ企業などを受け入れるとの構想を検討する企業もあるというが、セキュリティの問題などクリアすべき課題は多い。 KSM News and Research -
2024.10.23
欧州の大学による特許出願、ドイツが最多
欧州特許庁(EPO)は10月22日、欧州の大学による特許出願に関する調査結果を発表した。この調査は、(英国やスイスなども含む広義の)欧州の1200以上の大学と、その知的財産権管理を担当する知識移転機関(KTO)を対象に、2000年から2020年までの20年間の期間における特許出願実績をまとめた。欧州出願人によるEPOへの特許出願全体に欧州の大学が占める割合は、2000年の6%前後から2019年には10%超にまで伸びており、EPOは大学の役割が強まっていると指摘した。 なお、EPOはこうした大学による特許出願を「アカデミックパテント(academic patents)」と総称したうえで、これを「直接アカデミックパテント(direct academic patents)」と「間接アカデミックパテント(indirect academic patents)」に大別している。前者は大学自体またはそのKTOの名前で出願された特許、後者は大学の研究者、スピンアウト企業、出資者、あるいは他の企業などの名前で出願された特許を指す。「直接アカデミックパテント」と「間接アカデミックパテント」の比率は、2000年には20対80と「間接アカデミックパテント」が圧倒的に多かったが、2019年には「直接アカデミックパテント」が45%を占めるに至り、その割合が拡大している。 2000年から2020年までの「直接アカデミックパテント」の出願数を国別に見ると、ドイツが2万5822件でトップにつけ、フランスが1万9265件、英国が1万3144件、イタリアが7088件で続いた。 また、一部の大学が圧倒的な役割を担っており、全体の5%に当たる大学が出願全体の半数を占めている。特に活発な大学としては、グルノーブル・アルプ大学(仏)、ミュンヘン工科大学(独)、オックスフォード大学(英)、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、コペンハーゲン大学(デンマーク)、ミラノ工科大学(伊)などがあげられる。 KSM News and Research -
2024.10.23
仏バンデル、米モンロー・キャピタルを買収
仏投資会社バンデルは21日、米モンロー・キャピタルを買収すると発表した。モンローは、プライベートデット・ファンド(中堅・中小企業を対象に資金供給を行うファンド)で、運用資産は195億ドル。バンデルはこの買収により、資産運用受託で業務の幅を広げ、世界進出も拡大する。 バンデルは11億3000万ユーロを投資し、創業出資者などからモンローの75%株式を取得する。残り25%株式については、2028年から2032年にかけて取得するオプションを設定した。バンデルはまた、その後の業績目標の達成状況に応じて、最大で2億5500万ドルを2028年に追加で支払う。さらに、仏保険大手アクサ子会社のアクサIMプライムからモンローへの5000万ドルの出資を得る方向で交渉を進める。また、モンローが立ち上げるファンドに最大8億ドルを投資する。 モンローのファンドへの投資家は、その71%が米国のペンションファンド及び保険会社となっている。バンデルはこの買収により、米国の機関投資家とのパイプを強くする。モンローは、韓国とアラブ首長国連邦アブダビに事務所を開いており、バンデルにとっては国際的な足場も確保できる。プライベートデット・ファンド事業を欧州で展開する展望も開ける。 KSM News and Research -
2024.10.23
失業保険、収支見通しを下方修正
失業保険管理機関(UNEDIC)はこのほど、収支見通しを下方修正した。雇用情勢の悪化などを折り込んで修正した。 UNEDICはこれまで、2024-27年の期間に累積で200億ユーロを超える黒字を見込んでいたが、これを約150億ユーロに下方修正した。UNEDICはまず、経済成長の減速に伴い、雇用創出数が減少すると予測。2024年に3万8000人、2025年には3万1000人へと減少する。また、インフレ減速に伴い、名目上の失業保険料収入も従来予測より目減りする。その一方で、失業率は2024年末に7.5%、2025年末に7.7%と上昇を予想。年金改革に伴い、労働力人口の構成に変化が生じることに加えて、景気低迷の影響が雇用に及ぶと予想した。 他方、支出面では2023年の失業保険制度改正の影響で、支給対象者が減るなど、抑制が見込める。ただし、別の改革により、フランス・トラバイユ(ハローワーク)の費用の80%の負担をUNEDICが求められることになり(2025年に50億ユーロの負担)、さらに、2023-26年の期間に黒字分の一部を政府に上納する(合計120億ユーロ)義務が設定されたことから、収支はその分悪化する。各年の黒字額は、2024年に3億ユーロ、2025年に18億ユーロ、2026年に35億ユーロ、2027年に95億ユーロへそれぞれ下方修正された(6月半ば時点の予測ではそれぞれ9億ユーロ、30億ユーロ、55億ユーロ、117億ユーロ)。 KSM News and Research -
2024.10.22
仏政府、オンラインカジノ解禁を計画
報道によると、仏政府は、オンラインカジノを解禁する方針を決めた。下院で審議中の予算法案への修正案の形で、解禁に関する条項を提案するという。 オンラインカジノを禁止しているのは欧州連合(EU)諸国中では少数派で、キプロスとフランスのみが禁止を維持しているという。仏政府は、財政赤字削減の必要から、追加税収を確保する様々な可能性を探っており、その一環でオンラインカジノに目をつけた。オンライン賭博規制機関ANJの調査によると、2023年には、国内で300万人程度が外国のオンラインカジノにて賭けをしたとみられており、どのみち抑止が難しい非合法の利用を合法化して、そこから税収を得る方が得策だと仏政府は判断したのだという。仏FDJ(宝くじ)は最近に、オンライン賭博業者Kindredを買収したが、オンラインカジノも展開するKindredを傘下に収めた旧国営企業のFDJが、この解禁で優位に立てる可能性もある。 オンラインカジノの解禁は、オンライン賭博業界がこれまで熱心に要求してきた。これに対して、国内にカジノを展開する業者らは、競争で苦境に立たされると予想し、実店舗を展開する業者にのみオンラインカジノの営業を認めるよう提案していた。オンラインカジノの解禁により、年間10億ユーロ程度の追加税収が得られるとする試算もある。政府はこの機を利用して、賭博業界全体を対象に課税を強化し、さらに5億ユーロ程度の追加税収を確保する意向だとする報道もなされている。半面、規制機関のANJは、解禁に伴い依存症が特に若い世代に広がる恐れがあると警戒している。 KSM News and Research -
2024.10.22
アルザス自治体、重量車両のロードプライシング導入を決定
アルザス欧州自治体(CEA)議会は21日、3.5トン以上の重量車両を対象とするロードプライシング導入を決めた。2027年より導入し、1km当たりで15ユーロセントを課税する。高速道路のA35及びA36と、2本の幹線道路の走行に係り課税する。 アルザス欧州自治体(CEA)は、アルザス地方の2県(バラン、オーラン)がそれぞれの県議会を統合する形で発足した。地域圏統合により消滅したアルザス地域圏を蘇らせるという意味合いもあり、フランス国内では前例のない県議会統合が実現した。今回のロードプライシング導入は、隣接するドイツ国内で、重量車両のロードプライシングが導入済みであることを踏まえて決定。ドイツにおける課金はこの年頭以来で1km当たり34ユーロセントまで上昇しており、このため、ドイツを回避してフランス国内の通行を選択する車両が増えている。高速道路における交通量は2-3割増えたといい、適正化を図る目的で、ドイツと並行して南北を結ぶ経路にロードプライシングを導入することを決めた。 地元の経済界はこの導入に反発し、年間6400万ユーロの負担増が生じ、輸送部門で1500人の雇用が失われるなどと主張している。アルザス欧州自治体議会の側では、地方内の道路インフラの拡充を通じて徴収分を地元経済に還元すると約束。導入方式についても、あと1年間を費やして協議を進めると約束している。 KSM News and Research -
2024.10.22
パリ学区、生徒数減少への対応を準備
バルニエ内閣は2025年予算法案において、4000人の教員削減を盛り込んだ。財政赤字削減を目的とした支出節減措置の一環だが、政府はこの根拠として、生徒の数が減少傾向を示していることを挙げている。事実、小学生の数はこの新学年に、1年前と比べて7万8000人の減少を記録しており、影響は無視できない。 パリ学区のベニエ学区長はこのほど、向こう15年程度の期間を視野に収めて、生徒数の減少への対応について展望を示した。パリでは、1年間で小学生の数が2000人の減少を記録。小中高校を合計すると、10年間で生徒数は3万人の減少を記録しているという。足元では、小学校の1クラス当たりの生徒数が、この新学年においては平均20人まで低下(前年は21.5人)しており、教育環境という点では好影響を及ぼしている。ただ、将来的には、学校や教育のあり方を見直す必要が生じると考えられ、学区長は所見を明らかにした。具体的には、教育機関の統合を検討する必要があると指摘。小学校から高校までを一つの施設にまとめて、進級・進学をスムーズにできるような体制づくりを提案。また、学校長が複数の施設を担当できるようにしたり、教育の現場と査察官、地元議員などが結集して教育を推進する体制作りを進めることなども提案した。高校については、1ヵ所を廃校として、需要が高まっている、高校卒業後の各種教育の専門機関に鞍替えするとの案も示した。 地元のパリ市は、教育機関の統合により、生徒と学校の物理的な距離が開くようなら問題だとして、慎重な見方を示している。近隣学区との統合の可能性の検討も課題になる。 KSM News and Research -
2024.10.21
家計の所得・資産調査:所得格差は再分配効果で安定、保有資産には大きな格差
INSEEは17日、家計の所得と資産に関する調査結果を公表した。 これによると、世帯の1人当たりの月額可処分所得(世帯主を1、14才以上のその他成員を0.5などとして1人当たりに直した数字)は中央値で2022年に2028ユーロとなり、1996年以来で24%上昇した(インフレ補正後)。これは国内総生産(GDP)の成長に沿った上昇となっている。主に配当金収入により、高額所得者の収入は特に大きく増加しており、このため、貧富の差は拡大した。所得再分配前で、所得水準下位10%の世帯と上位10%の世帯の間の格差は、2002年から2021年までの間に17%近く拡大した。ただし、所得再分配の効果は大きく、両者の間の格差は、2002年に3.39倍、2021年に3.41倍と、ほぼ安定的に推移した。 それでも、相対的貧困者(1人当たり可処分所得が中央値の60%未満)の数は、本土の通常の住宅に住む人で、2022年に910万人となり、人口の14.4%を占めた(欧州連合の平均並み)。海外県と、通常以外の住宅の居住者(キャラバン、学生・高齢者などの施設に住む者)を含めると、貧困者数は1120万人に上る。 資産状況をみると、格差の拡大はさらに大きい。2021年年頭の時点で、家計が保有する資産のうち92%が全体の半数の世帯(資産額17万7200ユーロ超)を保有しており、保有資産の偏りはかなり大きい。下位10%の世帯の保有資産額は4400ユーロ未満、上位10%の世帯ではこれが71万6300ユーロ超と、上位と下位の隔たりは大きい(ここでの保有資産額は債務控除前の数字)。住宅価格の上昇が資産額を押し上げる主な要因の一つとなっており、資産格差の拡大を招く要因ともなっている。 KSM News and Research -
2024.10.21
海外県マルチニークで物価抑制合意、反対派は抗議行動の継続決める
物価高に対する抗議行動が続く海外県マルチニークで16日、関係者間で合意が成立した。6000品目余りを対象に、平均で20%の値下げを実現する旨を申し合わせた。 合意には、食品小売業界と海運大手CMA CGM、マルチニークの港湾当局、地元自治体と国が参加した。マルチニークは島嶼という特殊性から、本土に比べて食料品の価格が40%も高く、過去にも物価高への抗議行動が発生した。合意では、輸送など中間費用が物価を押し上げる状況に配慮し、政府が港湾税などの課税圧力を軽減すると約束。食品小売業者や海運業者もそれぞれマージンの圧縮に取り組むことを自主的に約束し、36ヵ月間の期間について、その実施状況をモニタリングすることを取り決めた。 9月1日以来抗議行動を呼びかけてきた協力組織のRPPRACはこの合意を不十分と批判しており、合意成立より前の時点で交渉から退いた。その一方で、9月から10月にかけて断続的に発生した暴動騒ぎでは、商店の焼き討ちなどでこれまでに合計6500万-7500万ユーロの被害が115社に発生。300人程度の雇用が喪失の危機に見舞われている。状況が安定化しないと被害が拡大する恐れもある。 KSM News and Research -
2024.10.21
政府、通勤用長距離バス路線の整備に注力
政府は通勤用の長距離バス路線の整備に注力する方針を示している。デュロブレ運輸担当相が17日に、旅客輸送業界団体FNTVの総会に出席した機会に再確認した。 バルニエ内閣は財政赤字削減を狙って、様々な節減策の可能性を追求している。交通の便が悪い地域から都市部まで通勤する人はマイカーを専ら利用するが、その代替手段として、長距離バスをかなりの頻度で運行するという構想があり、これは、比較的に安価に、かつ迅速に展開できる手段であることから注目を集めている。南仏マルセイユとエクサンプロバンスを結ぶバス(年間250万人が利用)、南仏モンペリエとミヨーを結ぶバスなど、導入例はいくつかあり、マルセイユ・エクサンプロバンス間の路線では、乗客が多いことを踏まえて2階建てバスによる輸送に切り替えた。車内WiFiを提供するなどして快適性をアピールする工夫も広がっている。パリ首都圏では、高速道路A14を経由して、副都心ラデファンスとブレバルを結ぶ路線が9月に運行を開始。現在は朝に3便、夕方に3便にて運行されている。 郊外連絡鉄道を整備するのに比べるとはるかに安価に展開できるのが利点だが、脱炭素化の動きに逆行するといった批判の声もある。自治体側には、既存の鉄道路線を廃止せず、補完的な手段として利用する限りにおいて、検討の余地があると好意的な見方もあるが、自治体の財政も厳しい中で、だれが費用を負担するのかという問題は未解決のまま残っている。 KSM News and Research -
2024.10.18
合成メタノールのAerleum、600万ユーロを調達
二酸化炭素からメタノールを合成する新製法を開発する仏Aerleumはこのほど、600万ユーロの調達を完了した。パイロット生産施設を整備する。 同社は、公的研究機関IFPエネルジーヌーベル出身の研究者スティーブン・バルデー氏が、BPIフランス(公的投資銀行)出身の投資家であるセバスチャン・フィドロウ氏と共に設立した。バルデー氏はエネルギー投入が少なくて済むメタノール合成法を開発したが、同社はその商用化を目指している。この合成法においては、円筒型の反応炉の中に、二酸化炭素がよく吸着する新開発の多孔質材料を配置し、飽和状態になるまで気体にて二酸化炭素を注入する。次いで、水素を導入して加熱し、触媒反応を引き起こす。その結果、液体メタノールと水蒸気が形成され、液体のみを回収するという段取りになる。今のところは実験室のレベルでの生産にとどまっているが、18-24ヵ月後をめどに、月産数トンを生産できるパイロット設備を整備する計画。そのための資金を今回の調達で確保した。 資金調達には、360 Capital、独HTGF(シーズファンド)、Norrsken、BPIフランス、そして、Aerleumの入居先であるアクセラレーターのMarbleが参加した。需要家としては、メタノール燃料使用の実績があり、既存のインフラも整っている海事部門を想定する。競争力のあるコストの実現が鍵となる。 KSM News and Research -
2024.10.18
仏下院小委員会、予算法案の審議を開始
2025年予算法案の下院小委員会における審議が始まった。バルニエ内閣は下院で過半数を持たないため、審議の行方は予断を許さない。 小委員会はさっそく、富裕層を対象にした課税強化案について、課税をさらに強化する方向で修正を施した。3年間という期限を外して恒久化すると共に、課税強化を逃れる方法を封じる方向での修正を施した。政府はこの措置について、2025年に20億ユーロの税収増をもたらすと予想している。 これ以外でも、課税強化を図る一連の修正が法案に施された。まず、不労所得を対象とする源泉徴収課税(フラットタックス)の税率を、30%から33%に引き上げる(2025年より適用)修正案が採択された。また、野党の社会党と極右RNの両方の賛成により、過去数年の平均比で20%を超える金額の配当金について、フラットタックスの税率を35%とする旨の修正案も採択された。政府がこれらの修正にどのように反応するかはわからない。 政府の予算法案によれば、各種の措置により、2025年には合計で295億ユーロの税収増を確保できることになっている。ただ、この見通しは楽観的過ぎるとする批判の声も聞かれる。例えば、大手企業を対象とする2年間の法人税率引き上げでは、政府は2025年に85億ユーロの追加税収を見込んでいるが、企業側による節税対策の活用により、実際の税収はそれよりも顕著に少なくなる可能性がある。 KSM News and Research -
2024.10.18
サノフィ、オラノと新世代型がん治療開発で提携
仏製薬大手サノフィは、仏核燃料大手オラノの医療子会社Orano Medとの間で、新世代型がん治療開発に関する提携を発表した。Orano Med(2009年設立)は、鉛の同位体である鉛212を利用したがんの放射性リガンド療法を開発している。放射性リガンドを用いた薬品は、標的となるがん細胞のタンパク質と結びつき、放射線を放出して内部からがん細胞を死滅させる。Orano Medは特にアルファ線を用いた医薬品を開発しているが、これはベータ線を用いる医薬品に比べて、標的となるがん細胞以外への悪影響が少ないという。 この機会にサノフィは、Orano Medのバイオテクノロジー部門に3億ユーロを投資し、その16%を取得する。同部門の評価額は19億ユーロに設定される。 サノフィは去る9月、Orano Medが米RadioMedixと共同開発している、アルファ線を用いた希少がんの治療薬Alphamedixの世界販売権を1億ユーロで取得したばかり。Orano MedはAlphamedixに関し、米国で臨床試験第I、IIフェーズを開始している。2026年末から2027年にかけての販売が見込まれる。サノフィは、Orano Medが保有するAlphamedix以外のパイプラインについては権利を取得しない。 なおオラノは今年2月、オナン(ノール県)において鉛212を利用した医薬品の生産拠点「ATLab」の建設を開始。6月には米インディアナポリスで同様の施設を開所している。 KSM News and Research -
2024.10.17
LVMH、7-9月期に減収:高級ブランド銘柄が軒並み低下
16日のパリ株式市場では、高級ブランド銘柄が軒並み低下を記録した。最大手LVMHが15日夜に7-9月期の減収を発表したのが材料となった。パリ株式市場CAC40指数は同日、終値で0.4%安を記録し、低下が続いた。 LVMHは7-9月期の売上高が190億8000万ユーロとなり、前年同期比で4.4%の減収を記録した。有機的成長率はマイナス3%となった。アナリストらは事前に、2%程度の有機的成長率を予測しており、発表された数値は大きな失望を誘った。LVMHの株価は16日の取引開始直後に6%を超える大幅安を記録。終値でも3.68%の下落を記録した。関連銘柄はLVMHにつられて軒並み低下。終値で、エルメスが1.34%安、ケリングが0.82%安、ロレアルが2.18%安をそれぞれ記録した。 LVMHは、販売実績について、円高のために日本における販売が減速した(7-9月期の有機的成長率が20%、前の期が57%)ことの影響を挙げている。コンサル大手ベイン・アンド・カンパニーによると、今年の世界高級ブランド市場は0-4%の成長にとどまる見込みで、これはコロナ危機後としては最も低い成長率となる。 KSM News and Research -
2024.10.17
Quantiq、証明写真機に医療画像解析ソリューションを実装へ
人工知能(AI)を利用した医療画像解析に取り組む仏Quantiqは16日、MEグループとの提携を発表した。内容は発表されていないが、MEグループが展開する「フォトマトン(Photomaton)」名義の証明写真機に自社技術を搭載する方向で協業する。 Quantiqによると、両社は2024年初頭に提携合意を結び、数ヵ月前から試験的な導入に着手した。MEグループの主要な研究開発拠点があるグルノーブル都市圏内の2ヵ所の証明写真機にQuantiqが開発の技術を試験的に実装した。一つはショッピングセンター内に、もう一つは病院内に設置されているという。 Quantiqは2020年の設立で、各種の画像データを取得して統合・分析するツールをアプリケーションプログラミングインターフェース(API)の形で提供するビジネスモデルを採用し、事業展開の準備を進めている。ごく精度の低い動画からも、皮膚の色や頭部の動きなどのデータをアルゴリズムで解析し、心拍数や呼吸数などの数値を高い確度で推定することができる。疾病の兆候を未然に予見するソリューションの開発が当面の課題で、欧州連合(EU)レベルでの医療機器の認証を得て、2025年中に数百万ユーロの資金調達を行い、事業の本格的な展開を目指す。2027年時点で数百万ユーロの年商と損益均衡の達成を目標とする。 KSM News and Research -
2024.10.17
2025年の経済成長、財政赤字の削減努力が足かせか
景況機関OFCEは10月16日、2025年予算法案の影響を折り込んでマクロ経済予測を修正し、その結果を公表した。2025年の経済成長率が0.8%となり、政府予測の1.1%を下回ると予想した。2024年の経済成長率は1.1%となる。 OFCEは特に、予算法案に盛り込まれた財政赤字削減策による経済成長率の押し下げ効果を0.8ポイント分と予想。2025年の財政赤字の対GDP比も、政府が目標とする5%ではなく、5.3%と高めの水準にとどまると予想した。公的債務残高の対GDP比については、2024年末に112.8%、2025年末に115.1%と増大を続けるとした。 OFCEは、予算法案が示す財政赤字の削減努力についても、600億ユーロ(うち増税が3分の1、支出削減が3分の2)とする政府の予測を疑問視。実際の効果は440億ユーロ程度にとどまり、うち6割が税収増加により、4割が支出削減により達成するとの見方を示した。 OFCEは、予算案に盛り込まれた措置だけでこの推計を策定したが、政府が別途予告している措置も合算すると、GDPの押し下げ効果は追加で0.1ポイント分増えるとの見解を示している。その一方で、金利低下によるGDP押し上げ効果を2025年に0.4ポイント分と予想。逆に、政治的不安定性に由来するGDPの押し下げ効果は0.2ポイントに達する(2024年には0.1ポイント分)と予想した。 2025年の経済成長は主に個人消費が支える。実質賃金は上昇するが、家計購買力は0.2%の後退を記録する見込みで、これには、社会給付の引き上げ抑制と金利低下に伴う不労所得の縮小が影響する。 KSM News and Research -
2024.10.16
仏9月インフレ率、1.1%まで低下
15日発表のINSEE修正値によると、フランスの9月のインフレ率は前年同月比で1.1%となった。9月末に発表した速報が0.1ポイント下方修正された。 9月には、エネルギー価格が前年同月比で3.3%の大幅低下を記録。前月には0.4%の上昇を記録していたが、これが大幅低下に転じたことで、全体の物価上昇率を大きく押し下げる要因になった。サービス料金の上昇も2.4%となり、前月の3.0%の上昇から値上がりの勢いが鈍った。工業製品は0.3%の低下、食料品は0.5%の上昇をそれぞれ記録し、価格の安定ぶりが目立っている。 9月の消費者物価は、前月比では1.2%の大幅な低下を記録(前月は0.5%の上昇)。これは1990年以来で最大の低下幅であるという。サービス料金が2.2%の低下を記録したのが大きく、これは、五輪終了に伴う宿泊費や運賃の低下に主に由来している。 欧州連合(EU)基準によるインフレ率は9月に1.4%となり、前月の2.2%をやはり大きく下回った。欧州中銀(ECB)の目標である2%台を大きく割り込んだことで、17日の定例理事会における利下げ決定への期待も強まっている。 KSM News and Research -
2024.10.16
「黄色蛍光ベスト」労組、代表選挙への参加を裁判所が承認
11月25日に投票が始まる零細企業対象の労組代表選挙で、パリ地裁は14日、主要労組が共同で起こした訴えを退け、「黄色蛍光ベスト」系の労組SGJの立候補を許可する判決を下した。 「黄色蛍光ベスト」は、2018年末にフランス全土に広がった抗議行動。自動車燃料への増税への反対に端を発して、大規模な反政府運動に発展し、長期に渡り続いた。SGJはその流れを汲んで発足した労組だが、主要労組(CFDT、CGT、FO、CFE-CGC、CFTC、Unsa)が一致して、共和国の価値を守らず、反社会的な主張を展開する組織であるとの理由を挙げて、代表選挙への参加を禁止するよう求める訴えを起こしていた。SGJは、新型コロナウイルス危機に伴い、一定の職業者に対するワクチン接種を義務付けた2021年の法律の廃止を要求。それに絡んで、健保公庫のサイト上の被保険者のアカウントの削除を呼びかけたり、さらに、エリック・ラウルト医師(ヒドロキシクロロキンの投与により新型コロナウイルス感染症を治療できると主張)を支持したりと、反ワクチンの陰謀論とも連携する運動を展開している。裁判所はこれについて、同労組が労働関係にとどまらない衛生上の問題について見解を発信する組織であると認めた上で、実質的に労組としての活動もしており、職場選挙においてわずかではあるが一定の実績もあると認定。同労組には今回の選挙に参加する資格があると認めた。 零細企業対象の労組代表選挙では、従業員数10人以下の企業の従業員らを有権者として、労組を対象に投票がなされる。 KSM News and Research -
2024.10.16
仏政府、EUの自動車CO2排出規制の柔軟化を支持
14日に開幕したパリモーターショーの一環で、自動車関連部門の代表を集めた会合が15日に開催された。アルマン仏経済相はこの会合で、欧州連合(EU)の自動車政策に対する仏政府の方針を説明した。2035年に新車販売をゼロエミッション車に限定するというEUの目標を支持した一方で、2025年に強化が見込まれる自動車CO2排出規制に関しては、あらゆる柔軟化の可能性を探る方針を表明した。 自動車CO2排出規制はEU市場で年間に販売される新車の平均CO2排出量に上限を設けており、2025年以降の上限は2021年に定められた上限に対して15%引き下げられる。自動車メーカーがこの規制を遵守するにはBEVの販売を大幅に増やす必要があるが、最近のBEV販売は低調で、欧州新車市場でのシェアは12%程度にとどまっている。規制の遵守にはシェアを2倍の24%程度に引き上げる必要があると試算されているが、BEV価格の高さや公的補助金の削減など諸条件を考慮すると達成は困難で、規制に違反したメーカーに巨額の罰金が科される可能性がある。 欧州自動車工業会(ACEA)の会長を務めるルノー・グループのデメオCEOは罰金の総額が150億ユーロに達するとの見積もりを掲げつつ、かねてより規制の緩和を求めており、ACEAもこれを支持している。アルマン経済相もこれに同調し、数十億ユーロ規模の罰金は、自動車部門のグリーン化に向けた投資能力を制限し、サプライヤーにも多大な影響を及ぼす懸念があると強調した。ACEAは上限引き下げを2027年に延期することなどを提唱している。 ただし、ステランティスのタバレスCEOなどは、自社が規制遵守に向けて多数のBEVの投入を準備し、巨額の投資を行ってきたことを強調し、他のメーカーの準備ができていないことを理由にルールを変更することに反対する立場を繰り返し表明してきた。アルマン経済相の発言は、仏政府がステランティスよりもルノーの立場に与することを選んだものだと受け止められている。 KSM News and Research -
2024.10.15
パリモーターショー(Mondial de l’Auto 2024)が開幕
パリモーターショー(Mondial de l’Auto 2024)が10月14日に開幕した。20日まで開催される。 2年前の前回はドイツ、日本、米国などのメーカーが不参加で寂しいものとなったが、今回は米国、ドイツ、韓国、中国から主要メーカーがこぞって参加し、活気を取り戻した。地元勢のルノー・グループとステランティスも複数の新型EVを披露し、注目を集めている。 しかし、自動車業界自体は一連の困難に直面しており、パリモーターショーも楽屋裏の雰囲気は暗いとメディアは伝えている。新車の販売は低調で、仏市場では2024年1-9月期の販売台数が前年同期比で1.8%減に低迷。新型コロナ危機以前の2019年同期を23.2%も下回っている。EVの販売が伸び悩む一方で、仏政府は2025年予算案で、エンジン車を対象に、CO2排出量と車重に応じた新車登録税の割増強化を提案。これではダブルパンチだと仏業界団体PFAは嘆いている。欧州連合(EU)のレベルでは、2025年に自動車CO2排出規制の強化が見込まれ、EVの販売が伸びないまま、規制に違反すれば、メーカーは巨額の罰金を命じられる。コンサル大手アリックスパートナーズは罰金額の合計が2025-2029年に280億-750億ユーロに達する可能性があると試算している。フォルクスワーゲンが最近にドイツ国内の工場の閉鎖を検討し始めて衝撃を招いたが、ステランティスやルノー・グループなども「生き延び」にかかわる状況だとの危機感を共有しており、自動車部品部門への圧迫も強い。 メーカーはEV購入補助金など、EV需要を喚起する政策を各国政府に求めているが、独仏をはじめとして財政難から緊縮政策に向かっている国も多く、支援措置はむしろ削られつつある。 こうした中で、欧州への進出を目指す中国メーカーの脅威は強まっている。欧州連合(EU)は中国製BEVへの追加関税を適用しているが、中国メーカーは欧州での販売価格を引き上げずにシェアを確保しつつ、欧州での工場設置も進める構え。また追加関税は、BEVよりも人気の高いHEVやPHEVには適用されない。欧州の新車市場が縮小する中で、中国車の販売が伸びれば、欧州メーカーの苦境はいっそう強まる。 KSM News and Research -
2024.10.15
7-9月期の仏企業倒産件数、前年同期比で20%増
調査会社アルタレスの集計によると、7-9月期の企業倒産件数は1万3400件となり、前年同期比で20%増加した。直近12ヵ月の累計では、倒産件数は6万6000件を超えて、過去最高記録を更新した。 倒産件数の過半数は従業員数5人以下の零細企業となっている。ただし、50人を超える中小企業においても、7-9月期の倒産件数は106件と、前年同期比で47%の大幅増を記録している。企業倒産に伴う雇用への影響も拡大しており、同期には5万2000人の雇用が喪失のリスクにさらされた。これは、前年同期と比べて1万3300人増となっている。このほか、従業員数6-9人の零細企業で倒産件数は31%増を記録。逆に、10-50人の中小企業においては、増加率は13%と比較的に小幅にとどまった。 部門別では、卸売業と輸送(特に患者等の移動)で31%の倒産増を記録。逆に、香水など小売や眼鏡販売の倒産増は、おのおの12%増及び9%増と、一時に比べて沈静化した。厳しい危機を経験した建設業では倒産の波は一段落し、工業部門でもさほど増えていない。 KSM News and Research -
2024.10.15
仏コンステレーション・テクノロジーズ、超低軌道5G衛星の展開を計画
仏コンステレーション・テクノロジーズ&オペレーションズ社が、新たな5Gコンステレーションのプロジェクトを公表した。通信事業者の協力を得てプロジェクトを進める計画。 コンステレーション社には、BPIフランス(公的投資銀行)、実業家シャルル・ベグベデ氏のファンドAudacia、宇宙ファンドのSeraphimなどが出資している。創設者のシャルル・デルフィウー氏は、世銀で大規模インフラプロジェクトを手掛けた実績があり、貧困層向けを含めて世界中でインターネットのサービスを提供するには、通信事業者との提携が不可欠と見定めて、2022年に同社を設立した。初回調達では930万ユーロを確保し、エンジニア30人程度を雇用している。 同社のプロジェクトは、375km程度というかなりの低軌道に超小型衛星を配置するという点が新味で、高度はスターリンクなどの600-800km程度と比べて低い。この低軌道だと、地球の大気圏の影響を受けることから、衛星の安定性を確保するには技術革新が必要になる。低軌道を採用する利点としては、衛星事業者向けのKa/Kuバンドではなく、地上の通信事業者に割り当てられた5G周波数の一部を使えることが挙げられる。通信事業者の5G周波数を活用して衛星通信役務を確保し、スターリンクなどに頼らずに、通信事業者が衛星通信によるカバーを達成する方法を提供することができる。 高速・低レイテンシの衛星インターネットの市場規模は、2035年までに年間350億ユーロの規模になるものと見込まれる。この市場を渡したくない通信事業者にとって、コンステレーションのサービスは渡りに船となりうる。デルフィウーCEOは、2025年末にも最初の打ち上げを行い、2027年から2029年にかけての展開を目指すと説明。1500基程度を展開し、6Tbpsの容量確保を狙う。 KSM News and Research -
2024.10.15
サノフィ、大衆薬部門の売却に向けて米CD&Rと独占交渉を開始
仏製薬大手サノフィは10日夜、大衆薬事業を束ねた子会社Opellaの過半数株式の譲渡に向けて、米CD&R(ファンド)との独占交渉を開始すると発表した。この件では、仏ファンドのPAIも外国のファンド数社と結んで買収案を提示していたが、サノフィはこれを退けて、CD&Rを選んだ。 CD&Rは、評価額を155億ユーロに設定して、過半数株式を取得するという。報道によれば、PAIもサノフィからの要請に応じて、評価額をCD&R並みに引き上げたというが、サノフィはPAIを選ばなかった。その理由としては、フランス勢による買収を後押しするフランス政界に対する独立性を示すためではないかという観測もあるが、資金力のあるCD&Rの方が、今後の成長戦略をよりよく支えることができるという判断が働いたとの見方もある。 Opellaは、Doliprane(アセトアミノフェン)をはじめとする大衆薬事業の子会社で、サノフィ全社の売上高の12%を占め、従業員数は1万1000人に上る。最近では、セルビエ社が後発医薬品子会社ビオガランをインド企業に買収することを検討したが、政府の反対もあって断念したという事例もあり、政府がこの問題でどのような姿勢を示すかが注目されている。Opellaの場合は、世界13工場のうち仏工場は2ヵ所のみで、外国事業の比重も大きいということがあり、政府としては、本社機能や国内の生産事業・雇用の維持などの条件をつけて、外国資本による買収に応じるものとみられている。ただ、超党派の議員グループが外資による買収に難色を示し、政府に反対の念を表明する書簡を共同で送付した。 KSM News and Research -
2024.10.15
フィッチ、仏長期債務格付けを維持:見通しはネガティブに
大手格付け会社フィッチは11日、フランスの長期債務格付けの改定結果を発表した。格付けは「AAマイナス」のまま維持し、格付け見通しは「ネガティブ」とした。 フランスではその前日に、2025年の予算法案と社会保障会計予算法案が閣議決定されたばかりだった。バルニエ新内閣は、2024年の財政赤字の対GDP比率を6.1%にまで上方修正した(4月の前政権下では5.1%)上で、2025年予算案において、同比率を5%まで圧縮するため、600億ユーロ規模の節減を実施するとの方針を示していた。これに大手格付け会社がどのような反応を示すかが注目されていた。 フィッチはこれまで、財政赤字が膨張し、公的債務残高の大きな上昇が継続する場合には格下げを決める可能性があると指摘していた。とりあえず格付けを維持したが、見通しをネガティブとすることで、今後の財政運営に注文を付けた格好になった。アルマン仏経済相は、フィッチがフランス経済の多様性と行政機関の有効性、財政の安定性に関する実績を認めている点を強調。同相は、公的債務の持続可能性に向けた能力という点で、市場の信頼を維持するべく努める姿勢を示している。 KSM News and Research -
2024.10.15
仏2025年予算法案:富裕層対象の特別課税、当初見込みより小規模に
政府は2025年予算法案に富裕層対象の特別課税を盛り込んだが、その対象となる世帯数は当初見込みより大幅に少なくなる見通しという。政府が国会に提出した文書の内容が報じられた。 政府案によると、標準所得額が25万ユーロ以上(独身者の場合)の世帯について、実効課税率の下限を20%に設定するという時限措置が導入される。理論上は、対象世帯数は6万5000(全世帯の0.3%)に上るが、実際にこの時限措置の影響を受けるのは2万4300世帯程度にとどまる見通しだという。まず、対象世帯において、実効課税率が20%に満たない世帯はさほど多くないといい、さらに、一連の課税標準控除などの影響で、網の目からこぼれる世帯も多いという。このため、この措置の実効性については疑念を抱く向きもある。 これとは別に、予算法案には、政府機関の予算削減や統廃合の方針などが盛り込まれた。このうち、ADEME(環境・省エネ庁)については35%の予算削減が盛り込まれたという。ADEMEが扱う環境関連の援助金(ゴミ減容・減量、再生可能熱供給等)が大幅削減の対象になるといい、政府が財政赤字削減で環境政策を調整手段にしているとする批判の声も上がっている。 KSM News and Research -
2024.10.11
政府、予算法案を閣議決定
バルニエ内閣は10日、2025年の予算法案と社会保障会計予算法案を閣議決定した。財政赤字の削減に向けて、従来の発表よりも多く増税に依存する内容となった。景気の腰を折る懸念も取り沙汰されている。 政府は、財政赤字総額の対GDPが2024年に6.1%まで膨張すると予想(2023年は5.5%)。政府はこれを、2025年に5%まで圧縮し、次いで2029年時点で2.8%と、欧州連合(EU)基準である3%以内にまで圧縮するとの中期目標を掲げた。経済成長率については、2023年の1.1%に対して、2024年と2025年に共に1.1%と予測。インフレ率については、2023年の4.8%の後、2024年に2%、2025年に1.8%へと順次低下すると予想した。 国の財政赤字は2024年に1666億ユーロまで膨張する。財政赤字総額の対GDP比を5%まで圧縮するために、政府は支出総額を2025年に600億ユーロ削減するとの目標を設定。ただし、会計検査院付属の諮問機関HCFPは、予算法案について、実際の節減効果は420億ユーロ程度になるとの試算を示しており、予算法案の評価は必ずしも一定していない。公的債務残高の推移も懸念材料で、政府は、同残高の対GDP比が、2023年の110.6%から、2025年には115%近く、2027年までに116.5%に達し、その後は徐々に低下に向かうと予想。国債費は、2025年に549億ユーロ(前年比40億ユーロ増)となり、その後は696億ユーロまで増大すると予想している。 支出総額は前年比0.7%増(物価変動を補正後の実質ベース)となり、これは従来の実績からみるとかなりの節減に相当する。国に限ると1.1%の実質減となり、公務員数の削減(2200人減)を含めて踏み込んだ節減が図られる。他方、税制の見直しによる税収確保では、法人対象で136億ユーロ、個人対象で57億ユーロの確保が図られる。大手企業(440社が対象となる見込み)への2年間の特別課税では、2025年に80億ユーロ、2026年に40億ユーロが確保される見込みで、法人税納税額に対して20.6%または41.2%の追加徴税がなされる(この税率は2年目には半分に削減)。法人税の課税対象となっていない海運業者にも特別課税が適用される。自社株買いについては、この10月10日以降の実施分について、買入消却分の8%相当を徴税する(2025年に2億ユーロの税収見込み)。法定最低賃金(SMIC)の就労者を対象にした使用者負担社会保険料の減免措置も見直され、40億ユーロの追加収入が確保される。いわゆる「マクロン手当」の社会保険料減免措置も見直され、6億ユーロの追加収入を確保する。事業所の付加価値を課税標準とする地方税CVAEの廃止案は凍結され、同税は2027年まで維持される。 個人向けでは、所得税課税区分の所得額をインフレ率並みの改定の対象とすることが決まった。政府はこの点では実質増税を見送った(改定凍結なら37億ユーロの増税)。他方、標準所得額が25万ユーロ以上(1人の場合)の高額所得者については、所得に対する各種納税額の率が20%を下回ってはならないとする制限が導入される。話題になっていた電力消費税については、危機以前の水準よりも高い水準に引き上げることで、年間60億ユーロの追加税収を確保する。賃貸住宅物件への投資に係る税制優遇措置も削減の対象となる(年間2億ユーロ相当)。ガスボイラを対象にした付加価値税(VAT)優遇税率の適用も廃止され、航空券課税も引き上げられる。 KSM News and Research -
2024.10.11
仏政府系金融機関CDC、トランスデブの過半数株式を譲渡へ
仏政府系金融機関CDC(預金供託金庫)が出資先のトランスデブ(公共交通機関運営)の経営権を手放す方針を固めた。CDCがレゼコー紙に対して報道内容を認めた。 CDCはトランスデブの66%株式を保有する。その一部を譲渡し、出資率を15-34%に引き下げる方針だという。譲渡の際に基準となる評価額は今後詰める。トランスデブの残り34%株式は、仏ヴェオリア(環境サービス)が独レトマン(Rethmann)に2018年に譲渡し、同社が現在まで保有しているが、トランスデブは、レトマンに過半数株式を譲渡するか、第3の株主を迎え入れるか、2つの案を検討しているという。フランスの競合(国鉄SNCF子会社のケオリスとパリ交通公団RATP子会社のRATPデブ)による買収は、現行の株主協定に抵触するため、検討されていない。レトマンは、かつてのヴェオリアのように、公共交通機関や環境サービスなど、公共サービスの運営を柱とする企業。CDCは政府系金融機関であり、過半数を割り込む資本の譲渡は民営化の扱いとなるため、実現には当局の承認が必要になる。 トランスデブの事業は順調で、2023年には93億3000万ユーロの売上高(前年比21%の増収)に対して、2000万ユーロの純利益(前年並み)を確保した。このところは外国事業を強化しており、米ファーストトランジットの買収を経て、売上高に占める国内事業の割合は29.3%と、初めて30%を下回った。CDCでは、国内の公益性のある事業に投資するという本来の使命に照らして、少数出資は維持し、発言権は確保しつつ、経営権を譲渡する方針を固めた。 KSM News and Research -
2024.10.11
食品老舗のバラード、高級ジャムのブランド立ち上げなどで成功
コレーズ県の食品メーカー、バラード(Valade)が成長を続けている。高級志向の自前のブランドを立ち上げて成功した。 バラードは、コレーズ県名物のマロンクリームのメーカーの一つ。ジャムの製造では国内第2位だが、従来はPB商品の受託製造が主流だった。しかし、2021年に立ち上げた自前ブランド「レオンス・ブラン」が成功。果実の含有率70%をセールスポイントとして、健康志向にアピールした製品が消費者に好評を博した。自社の創業一族の名前を冠したブランドのイメージ作りにも成功した。2023年からは、砂糖無添加のコンポートを「バラード」名義で発売。最大手の「マテルヌ」に対抗できる製品を手頃な価格帯で投入した。バラードの創業は140年前に遡るが、ショソンと呼ばれるアップルパイやタルトの中身になるリンゴコンポートの製造は創業原点の事業であり、原点に戻って今度は量販店で戦いを仕掛けることになる。なお、同社の事業は、量販店が5割、給食向けが4割、ベーカリーへの供給が1割となっている。 バラードは、2018年にFnBプライベートエクイティ(複数の食品ブランドを保有)の傘下に入った。同ファンドは70%株式を保有する。2023年の年商は1億ユーロ弱で、前年比30%の大幅増を記録。販売量は10%増とより小幅で、単価が高いレオンス・ブランの成功が牽引力になったと考えられる。 KSM News and Research -
2024.10.10
広告チラシ配達のMileeが清算、1万人を超える雇用が喪失
広告チラシ配達の専門企業Mileeが去る9月に清算となった。倒産による雇用への影響は大きいものの、ほとんど話題にはならなかった。8日にはパリの経済省前で、旧従業員が数十名ほど集まり、抗議行動を行った。 Mileeの従業員数は1万人を超えていたというが、ほとんどがパートタイム就労者だった。さらに、事業所と雇用も多数の地方に分散しているため、消滅しても目に留まりにくい「透明人間」たちだった。労組によると、従業員のうち1700人は70才以上だったといい、少ない年金を補うためにアルバイトの掛け持ちという形で働いていた。未払いの従業員も多いが、なにぶん雇用数も多いため、補償基金への請求の進捗状況も遅れがちで、労組側は救済を要求。8日にフェラシ産業担当相は代表団を迎えて会談し、迅速化を約束した。 Milee(旧Adrexo)は2017年に3人の実業家(ポンス、ポミエ、サラベール)により買収され、Hoppsグループの傘下に入ったが、赤字が続いて債務が増大。公的援助を数度に渡り受けたが、業績は改善しなかった。2021年には、環境関連法規の改正により、広告チラシの受け取りをオプトインに改める(希望者以外の郵便受けへの配送を禁止する)新制度の試験導入も開始され、広告バッシングの流れの中で、事業機会も失われていった。Hoppsグループは、5年間で市場規模が5割程度縮小したと説明しているが、労組側では、2022年のグループ子会社コリ・プリベの売却収入5億8000万ユーロの使途など、経営に不明朗な点があったと主張しており、提訴を求める動きもある。 KSM News and Research -
2024.10.10
ラファールF5の開発が開始に
ルコルニュ軍隊相は9日、ラファール戦闘機の第5世代バージョン(F5)の開発に着手したと発表した。最初の契約を数週間前に付与したことを明らかにした。 ラファールは仏ダッソー・アビエーション社が開発・製造する。最新のラファールF4は2023年3月に仏兵器総局(DGA)より認証を取得し、フランス軍への配備が始まったばかり。電子戦への対応力を強化するなどの新機軸を打ち出していた。フランスは、ドイツ及びスペインと次世代戦闘機システム(FCAS)の開発に着手しており、これは2040年以降の就役開始が見込まれるが、ラファールF5は2033年にも就役を開始し、FCAS配備までの間の防衛力増強を担う役割を果たす。 ラファールF5は、2035年以降に配備予定の超音速核弾頭ミサイルASN4Gを搭載可能となる。最大の目玉は、「ロイヤル・ウィングマン」などと呼ばれる随行無人機の開発で、こちらは、ダッソーが2003年以来取り組んでいるステルス機「nEUROn」がベースとなる。ダッソーは去る7月の時点で、nEUROnの派生型の開発に関する1億3000万ユーロの契約を仏当局より得ていた。 KSM News and Research -
2024.10.10
英国:移民の増加で人口増加率は過去最大に
英国家統計局(ONS)によると、英国の人口は2023年6月に6826万5200人に達し、1年前から66万2400人増加した。増加率は1%で、ONSが統計を取り始めた1971年以降で最大となった。 人口増を牽引したのは移民数の増加で、移民数は2022年7月から2023年6月の期間中に67万7300人増えた。一方で、同期間中の死亡数は出生数を1万6300人上回り、新型コロナ危機下の2020年を除くと、1976年以降で初めて死亡数が出生数を上回った。なお、これ以外に、「その他増減」(兵員とその他調整)という項目がある。 英国では今夏にも移民反対の騒動が起こるなど、移民問題はセンシティブな問題で、歴代政権は移民削減を約束してきた。英国が欧州連合(EU)から離脱し、移行期間を経て2021年に両者間の自由な移動の枠組みが終了するまでは、英国の移民の主要部分をEU出身者が占めてきたが、現在ではEU以外の出身者が85%を占める。 KSM News and Research -
2024.10.10
バルニエ内閣、初の不信任案が否決に
下院で8日、左派連合NFPが提出した内閣不信任案の審議が行われた。予想通り反対多数で否決された。 極右政党RNのマリーヌ・ルペン議員団団長は、今回は内閣不信任案には賛同しないとする立場を確認。下院における力関係からみて、不信任案が可決される可能性は皆無だった。左派連合の側は、バルニエ少数内閣が民主主義の常道を踏みにじって発足し、極右RNの「善意」にすがる以外に存続の道がないと糾弾した。 これより前、バルニエ首相は、マクロン大統領の旧与党議員団EPRの会合に出席。EPRからの支持の確保が首相の出席の目的だったが、EPRの所属議員らからは首相への批判の声が噴出し、冷ややかな会合になったという。アタル前内閣の閣僚も多いEPR議員団には、バルニエ首相が、前内閣の準備した歳出凍結措置の実行を見合わせ、2024年の財政赤字を意図的に膨らまして、2025年予算法案の編成における自らの財政健全化の「力量」を水増しするつもりだとする不満の声がある。増税反対の声も根強くあり、バルニエ首相の政策運営の道は極めて険しい。 これとは別に、下院は同日、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が提出したマクロン大統領の弾劾決議案を廃案とすることを決めた。同案は、LFIを主軸とする左派連合NFPの他党からの賛同も得られておらず、最終的な廃案が決まった。 KSM News and Research -
2024.10.10
中国政府、EU産ブランデーへの追加関税を決定
中国政府は8日、欧州連合(EU)産のブランデー(果実酒由来の蒸留酒)を対象にした追加関税を暫定的に導入すると発表した。11日付で適用を開始する。 中国政府は、EU産のブランデーが原価割れの価格で中国に輸出され、現地の競合を圧迫していると主張し、去る1月より調査を進めていた。その一方で、EUは4日に、中国製EVを対象にした反ダンピングの追加関税導入を承認したばかりで、中国政府は、その報復として準備していたカードを早速切ったものと考えられる。 中国政府が指定した製造者は、11日より、対中輸出に係り、追加関税相当の保証金を税関に納付することを求められる。10社程度の製品が対象となるが、フランスのコニャック(ぶどう酒から得られる蒸留酒)への影響が最も大きい。ペルノ・リカールのマーテルは30.6%、LVMHのヘネシーは39%、レミーコアントローのレミーマルタンは38.1%、その他の対象製品は34.8%の追加関税の適用を受ける。 コニャックをはじめとする欧州産の蒸留酒にとって中国は重要市場で、例えばペルノ・リカールは全社売上高の1割を中国で達成している。しかし、このところは中国の全般的な消費冷え込みを背景に中国販売は低迷しており、マーテルの場合、2024年6月期に10%の販売減を記録していた。既に厳しい市況の中で追加関税が導入されると打撃は大きくなる。仏メーカー各社は、シロ判定を得ることに期待して、調査に協力し、費用をかけてデータを渡したが、中国側による業界の詳細な把握を許しただけで制裁を受け、通商摩擦の犠牲になったという苦い思いが業界には広がっている。 KSM News and Research -
2024.10.10
CACEIS、欧州初のトークン化マネーファンドにカストディ業務を提供
大手銀行のクレディアグリコル(フランス)とサンタンデール(スペイン)の共同子会社CACEISは7日、SPIKO(フィンテック)に対して、トークン化資産のカストディ業務を提供していることを明らかにした。Ethereumのパブリックネットワーク上にてネイティブ発行のトークンを対象とするマネーファンドとしてはフランスで初の2商品にカストディ事業を提供する。 対象のファンドは、独仏のユーロ建て債券とドル建ての米国債により運用される。償還期限が平均で2ヵ月、最大で6ヵ月の債券が対象になる。昨年6月に運用が開始され、1億ユーロを超える資金を集めた。ブロックチェーンの利用により、ユーロ建て債券のファンドでは10ベーシスポイント、ドル建てでは40ベーシスポイントの手数料圧縮を実現する。CACEISでは、将来的にステーブルコイン、トークン化預金、中銀発行のデジタル通貨の取り扱いを可能にするサービスに着手する計画。 SPIKOは2023年にパリに発足したトークン化金融商品を専門とするベンチャー企業。CACEISは保管資産が5兆ユーロ強、運用資産総額が3兆4000億ユーロ。金融投資家と資産運用会社を顧客に金融サービスを提供している。 KSM News and Research -
2024.10.08
予算法案:電力課税強化の是非が争点に
バルニエ内閣は10日に2025年予算法案を閣議決定する。電力課税が争点の一つとなっている。 電力ユーザーから料金に上乗せする形で徴収される電力消費税(旧TICFE/CSPE)は、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰の対策として、2022年にそれまでの1MWh当たり32.44ユーロが、欧州連合(EU)の定める最低限である0.5ユーロ(事業所の場合、世帯の場合は1ユーロ)まで一気に引き下げられた。エネルギー価格の鎮静化を受けて、2024年2月にはこれが20.5ユーロ(世帯の場合は21ユーロ)まで戻されていた。さらに、2025年2月には、ウクライナ侵攻前の32.44ユーロまで再引き上げがなされる方針が固まっていたが、報道によると、税収確保のために、課税額がウクライナ侵攻前よりもさらに高い水準まで引き上げられる可能性がある。 電力規制料金は2025年2月に改定されることになっているが、この際に、世帯向けでは、課税水準をウクライナ侵攻前まで引き上げた場合でも、9%の引き下げが実現するとされている。ただ、課税水準の引き上げがさらに大幅になった場合には、料金引き下げ分がそれだけ目減りすることになる。課税水準の変更を巡っては政府部内でも意見が分かれている模様で、パニエリュナシェ・エコロジー移行相は6日の時点で、追加引き上げには反対するとの見解を表明した。 KSM News and Research -
2024.10.08
Younited、SPACによる買収を経て上場へ
仏Younited(フィンテック)が上場を決めた。SPAC(特別買収目的会社)のIris Financial(アムステルダム市場上場企業)に買収される形で上場が実現する。買収後にはパリ市場でも上場される。 Iris Financialは米リップルウッド(投資ファンド)が立ち上げたSPAC。Iris Financialは、Younitedが発行する新株を引き受け、1億5000万-2億ユーロを注入する。Iris FinancialはYounited Financialに社名を変更し、アムステルダムとパリで上場される。Younitedは子会社として経営の独立性を維持し、経営陣も残留する。 仏フィンテック部門ではこの2年ほど、ベンチャー企業の上場案件が途絶えていた。Younitedは2022年末に6000万ユーロを調達。新たな資金調達で様々な選択肢を検討していたが、SPACによる買収を通じた上場という解決策に落ち着いた。 Younitedは消費ローンなどのサービスを提供。金利上昇などが逆風となり、2023年の経常収益は1億1800万ユーロと、前年比25%の減収を記録。新規与信額は31%減の11億ユーロに後退、損失額は5070万ユーロ(前年は3340万ユーロ)に膨らんでいた。同社はこのため、損益均衡の実現目標を2025年へと先送りしていた。 KSM News and Research -
2024.10.08
グリュックスマン欧州議員、社民主義の新党立ち上げを予告
ラファエル・グリュックスマン欧州議員は6日まで、支持者を集めてジロンド県ラレオル市で集会を開いた。社民主義を代表できる政治勢力を糾合する意欲を示した。 グリュックスマン欧州議員は、先の欧州議会選挙で社会党と共闘して14%の得票率を獲得。左派陣営をリードする好成績を残した。ただ、マクロン大統領がその直後に解散総選挙を決めたのを境に主導権を発揮できなくなり、選挙では左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を主軸とする左派連合が結成され、居場所を失っていた。グリュックスマン氏は、バルニエ内閣が発足して政局が本格的に動き出したこのタイミングで集会を開き、自らが2018年に立ち上げた政治運動のプラス・ピュブリックを本格的な政党に鞍替えして、2025年以降に見込まれる総選挙において、全選挙区に候補者を立てられる勢力となることを目指す考えを明らかにした。プラス・ピュブリックの加入者数は、1500人から1万1000人まで増えているといい、グリュックスマン氏は、LFIとの協力に失望した社会党の支持層を含めて、政権を担える現実的な社民勢力の糾合に取り組む意欲を打ち出した。 社会党内では、パリ北郊サントゥアン市のブアムラン市長が数日前に政策集団を立ち上げたばかりで、LFIと袂を分かつことを目指す動きが広がっている。グリュックスマン氏のプラス・ピュブリックには、マクロン支持から転じたルソー元保健相が所属し、唯一の下院議員となっている。同様にマクロン大統領に失望した旧与党勢力の中にはグリュックスマン氏への合流に関心を示す向きもある。 KSM News and Research -
2024.10.07
セルジュ・ゲンズブール記念館が会社更生法の適用を申請
パリ市内に1年前にオープンしたセルジュ・ゲンズブール記念館がこのほど会社更生法の適用を申請した。株主間の対立が背景にある。係争の解決を待って事業は継続される。 セルジュ・ゲンズブールは歌手・作曲家で、1991年に62才で没した。パリ左岸7区のドベルヌイユ通りにある私邸は長らく、遺族によりそのままの形で保存されてきたが、隣接の建物とセットで記念館としてリニューアルされることが決まり、1年前にオープンしていた。記念館は好評を博し、予定通り年商400万ユーロを達成し、収支は黒字だが、オープンまでの投資段階における株主間の係争があり、会社更生法の適用申請に至った。 事業会社のアルテウムには、ゲンズブールの実娘で女優のシャルロット・ゲンズブール氏が代表する一族が50%を、不動産開発業のドミニク・デュトレクス氏(73)が経営の会社が50%株式をそれぞれ出資したが、シャルロット・ゲンズブール氏はデュトレクス氏を使い込みなどで提訴し、去る3月に商事裁判所から返済命令を勝ち取り、現在は刑事告訴を準備している。他方、デュトレクス氏は破産宣告済みだといい、ゲンズブール氏側では私財を整理して業者等への未払い分を立て替えたが、全額は返済できていない。会社更生法の適用を申請し、デュトレクス氏との資本関係を整理した上で、黒字事業を元手に再建の道筋をつける考えとみられる。 KSM News and Research -
2024.10.07
ベジタブルミートの品名制限、欧州司法裁がEU法規違反と認定
欧州司法裁判所はこのほど、植物由来の食品に「ステーキ」などの名称を冠することを禁じる仏政令について、欧州連合(EU)の規則に反するとする判断を下した。仏行政最高裁(コンセイユデタ)が判断を請求し、これに答えて法解釈を明確化した。 仏政府は今年に入り、畜産業界の要望に応える形で、いわゆるベジタブルミートが「ステーキ」、「ソーセージ」、「ベーコン」、「ハム」など食肉・肉類加工品の伝統的な品名を採用することを禁止する政令を制定していた。国内のベジタブルミートの製造業者らは、禁止が国内産の製品にのみ限定されていることを不公平だとして行政最高裁に政令の差し止め請求を起こしており、行政最高裁は暫定的に差し止めを決めた上で、本件審理において、欧州司法裁判所にEU規則解釈の判断を請求していた。 欧州司法裁判所はこの請求に応じて下した判断の中で、加盟国が、通常に用いられている品名や説明を、植物性タンパク質を原料とする食品において使用することを禁じることは認められないとして、仏政府の政令をEU規則違反であると指摘した。裁判所は、現行法規が、本件の場合であっても、消費者を十分に保護できる内容であるとした上で、消費者の保護が不十分であることを証明できる限りにおいて、加盟国には製造者等の責任を追及することが可能であるとの判断も示した。KSM News and Research -
2024.10.07
政府、航空券課税の強化で10億ユーロ程度の税収見込む
政府は財政健全化の一環として、航空券課税の強化を計画している。航空会社の連合組織FNAMによれば、10億ユーロ程度の税収が見込まれている。 バルニエ内閣は2025年予算法案において総額で600億ユーロの財政赤字削減を計画。うち200億ユーロを増税で、400億ユーロを歳出削減により達成することが予定されている。航空券課税は2006年に導入され、当初はアフリカにおけるエイズ対策の資金を捻出するとの名目が掲げられていた。現在の年間税収は4億6000万ユーロに上るが、これが2倍超に引き上げられることになる。報道によれば、5000km超の長距離路線において、ビジネスクラスでは超税額が60ユーロから200ユーロへ3倍超に引き上げられる。エコノミークラスでは、7.5ユーロから60ユーロへ8倍増というさらに大幅な引き上げになる。プライベートジェットの場合は1人につき3000ユーロへと引き上げられる。 仏最大手のエールフランスは、年間徴収額の3割に当たる1億4000万ユーロを現状で負担しているとし、増税による影響は大きく、競争上の打撃になると主張している。KSM News and Research -
2024.10.04
アルストム、SNCF競合から高速鉄道車両を受注
仏アルストム(鉄道機器)はこのほど、高速鉄道の次世代車両12本をプロクシマ社から受注した。プロクシマが2028年に開業する予定の仏国内の高速鉄道路線で就役する。 プロクシマは、仏国鉄SNCF出身のラシェル・ピカール氏が立ち上げたプロジェクトで、正式なサービス名はまだ決まっていない。パリと南西地方を結ぶ3路線(レンヌ、ナント、アンジェ、ボルドー方面)を運行する計画で、フランス勢としては国内高速鉄道事業への初の参入となる。2階建て車両12本を発注。契約規模は8億5000万ユーロ程度とみられるが、プロクシマの100%資本を保有するアンタン・インフラストラクチャー・パートナーズ(投資ファンド)がファイナンスを手配する。アンタンはBNPパリバ銀行発の投資ファンドで、仏及び欧州の10社程度の銀行からシンジケートローンを得るというが、銀行名は明らかにされていない。 プロクシマは2028年までに300人程度を雇用し、ボルドーに拠点を置いて役務を開始する計画。アルストムとは15年間の保守委託の契約も結んだ。アルストムが供給するのは、SNCFが「TGV-M」として導入する計画の次世代車両で、SNCFは100本を発注している。 KSM News and Research -
2024.10.04
ブイグ・テレコムが業績目標を下方修正、親会社の株価急落
ブイグ・テレコムは3日、業績目標の下方修正を発表した。携帯事業における価格競争の激化を折り込んで戦略目標を見直した。市場はこの発表に失望し、親会社であるブイグ・グループ(建設など)の株価は同日終値で4.75%の大幅安を喫した。 ブイグ・テレコムは、2021年1月に発表した5年後(2026年)に達成の戦略目標の一部を下方修正すると発表。役務由来の収入を70億ユーロ超、EBITDAAL(営業粗利益)を25億ユーロとした目標について下方修正すると予告した。具体的な数字は示さなかった。半面、フリーキャッシュフローの目標は6億ユーロに維持するとした。 ブイグ・テレコムは、価格競争を背景に、携帯サービスの平均単価が低下していることと、2020年から2021年にかけて結んだエネルギー価格に関するヘッジ契約が終了し、その影響が2025年に出ることを、業績目標の下方修正の理由として挙げた。同社は巻き返しを狙って、固定サービスと携帯サービスを組み合わせて有利な料金で提供する新ブランド「B.iG」を7日より投入すると予告した。アナリストらはこれらの発表について、ブイグ・テレコムが平均単価を犠牲にしてでもシェア拡大を狙う戦略を示したものだと判断。フリーキャッシュフローの目標維持は、投資節減を前提としたものだとみている。KSM News and Research -
2024.10.04
マクロン大統領の支持率、就任以来で最低の22%に
仏経済紙レゼコーの依頼で毎月実施の世論調査によると、マクロン大統領の支持率は10月に22%となり、前月比で3ポイント、2ヵ月前からでは5ポイントの低下を記録した。マクロン大統領が2017年に就任して以来で最低の水準まで下がった。 この調査は、政策を遂行する能力への信頼感の有無について質問し、その結果を集計している。調査を行うElabe社はこの結果について、解散総選挙から現在に至る情勢について国民が大統領に責任があるという心証を強めたことを示すものだと説明している。特に、2022年の大統領選挙においてマクロン大統領に投票した人に限ると、支持率は2ヵ月で13ポイント低下の61%まで低下しており、大統領が支持層においても人気を失っていることがわかる。管理職や、従来からの支持層である年金受給者においても支持を失っているのも、大統領にとって痛手となった。 他方、バルニエ首相の支持率も、就任直後の前月より、3ポイント低下の28%に後退した。別の世論調査においては、国民の65%が、バルニエ首相が施政方針演説で示した政策について、変革というよりは従来路線の継承であるとの見方を示しており、首相の支持率が低下したのもその辺りに原因があると考えられる。KSM News and Research -
2024.10.03
2025年予算法案:年金支給額の引き上げ凍結など盛り込む
バルニエ内閣は2日、2025年予算法案の骨子を諮問機関HCFPに提示した。財政赤字の対GDP比を2025年に5%まで圧縮する目的で、600億ユーロの赤字圧縮措置を盛り込む内容となった。うち400億ユーロを歳出削減で、200億ユーロを増税により実現する。 増税については、前日までに発表されたように、大企業と富裕層をそれぞれ対象にした特別課税が柱となる。それに加えて、環境課税の強化で15億ユーロ相当の確保がなされる。その中には、二酸化炭素排出量が大きい車両の販売時課税の拡大と、内燃機関車両の現物供与に係る税制優遇措置の見直しが含まれる。他方、400億ユーロの歳出削減では、半額の200億ユーロが政府支出の見直しによりなされる。アタル前内閣が既に150億ユーロの削減措置(支出凍結)を決めているが、これに加えて、50億ユーロの追加節減(公務員数の削減により実行)がなされる。このほか、社会保障会計で150億ユーロ近くの節減がなされる。特に、年金支給額の引き上げを6ヵ月間延期することにより、30億ユーロの節減がなされる。最後に、地方自治体に50億ユーロ程度の節減が求められる。 KSM News and Research -
2024.10.03
パリ副都心ラデファンス地区、不振打開が課題に
パリ副都心ラデファンス地区の運営組織AUDEは1日に、関係者らを集めた会合を開いた。その機会に、同地区の将来に関する報告書が公表された。空室が増えており、このままだと存続の危機に直面するとの厳しい内容となった。 ラデファンス地区は1960年代に整備が始まったビジネス地区で、パリ首都圏でも随一の規模を誇っている。ただし、最近では不振が目立っており、2年来の空室率は15%と、2018-19年の5%未満から大きく上昇している。この集計からは、市場に出る前の段階の物件が除外されており、これを含めると空室率は実に19%まで上昇する。しかも、一部の高層ビルでは、物件の45%までが事実上の値引きで賃貸されており、それでも空室率が上昇しているのは不振の厳しさを物語っている。 ラデファンス地区の不振は、オフィス不動産市場全体の不振の反映でもある。新型コロナウイルス危機を経て、リモート勤務が大きく拡大。一時は平均で週2.3日間に達した。現在ではこの数字は1.5日間まで下がっているが、それでも、コロナ前と比べてはるかに高い水準にある。企業は不動産戦略の見直しを進めており、需要が冷え込んでいる。ラデファンス地区の場合は、オフィス施設が古くなり、規格に適合しなくなるものが増えつつある中で、必要な投資資金を確保しにくくなっていることが問題となっている。住宅や、特に教育機関を誘致して混成的な地区に鞍替えすることが解決策の一つになるが、規制上の制約が改装を難しくしているという事情もある。AUDEでは、規制の緩和に加えて、税制優遇措置の導入によるファイナンス面での支援などを求めている。 KSM News and Research -
2024.10.03
LVMH、パリマッチの買収を完了
高級ブランド大手の仏LVMHが10月1日付で写真誌パリマッチの買収を完了した。1億2000万ユーロを支払い、メディア大手のビベンディ・グループから買収した。LVMHはパリマッチを独立した子会社として扱うことを約束、そのテコ入れを図る。 パリマッチは長らくラガルデール・グループの傘下だったが、ビベンディによるラガルデールの買収に絡んで、2020年よりビベンディの傘下に入っていた。ビベンディを保有する実業家のバンサン・ボロレ氏は、カトリック伝統派に属し、傘下のメディアを通じて右翼の主張を伝播することに力を注いている。パリマッチでも、売却直前の最新号では右翼の政治家であるフィリップ・ドビリエ氏を表紙にするなど、機関誌のような様相を呈していた。パリマッチの編集部では、そうした上からの方針に反発して退社する職員も多かったとされ、残った80人程度の職員のほとんどは、LVMHによる買収を歓迎しているという。 パリマッチは、かつてはスターと、大統領をはじめとする有力政治家などの近況を報じる芸能・写真誌として人気を博した。ただ、近年は時代も変わり、情報配信のチャンネルも多様化したことから、写真誌の影響力は薄れていた。ボロレ氏の手中に収まる以前からパリマッチの凋落は始まっており、オーナーが変われば立て直しができるというわけでもない。高級ブランド大手のLVMHの傘下に入ることで、今度はLVMHのブランドやスターの宣伝に駆り出されるのではないかと懸念する向きもあるという。 KSM News and Research -
2024.10.02
バルニエ首相の施政方針演説、慎重な内容に
バルニエ首相は1日、下院で施政方針演説を行った。財政収支の改善や治安強化などを掲げたが、具体的な措置に立ち入るのは避け、慎重な演説となった。 バルニエ内閣は下院で過半数を持たず、不信任案の成立を避けるには、極右政党RNが左派連合による不信任案に同調して賛成票を投じないことが鍵になる。バルニエ内閣を支持する勢力(共和党、旧連立の各党)の間の足並みも揃っておらず、バルニエ首相は極めて困難な政局運営を強いられている。初の施政方針演説は、そうした困難がうかがわれる内容になった。 バルニエ首相は予算運営について、2025年に財政赤字の対GDP比を5%まで圧縮することを目標に設定。同比率3%以内という欧州連合(EU)の基準達成を2029年に遅らせる方針を確認した。2024年に同比率は6.2%まで増大する勢いとなっており、2025年に5%を達成するには、400億ユーロを超える節減が必要になる。首相はその実現の方法として、歳出削減に軸足を置くとしたが、大企業と富裕層を対象にした臨時課税を導入する方針も確認した。詳細については立ち入らなかった。 首相は、5つの政策上の優先課題として、生活水準、公共サービスへのアクセス(学校、医療など)、治安、移民、友愛、を掲げて、これらの課題について、いくつかの施策を説明した。まず、11月1日付で、法定最低賃金(SMIC)を2%引き上げると予告。また、初めて住宅を購入する人向けの無利子融資(PTZ)の適用条件の緩和を予告した。年金改革と高齢層の就労促進については、労使の協議に委ねる考えを示した。クローズアップされて久しい治安対策と移民問題については、国民の期待に沿って対応を強化する意欲を示したが、タカ派のルタイヨー内相が求めている外国人対象の医療援助の制度見直しについては言及せず、法治国家の原則を遵守する中で対策を進める姿勢を確認した。解散総選挙によって宙に浮いた格好の、審議中だった法案については、農業法案、行政改革法案、そして、「生命の終わり」に関する法案を特に取り上げ、来年初頭の審議再開を約束した。このほか、政府として、国民の声をよりよく反映させ、国会との関係を改善することも約束。「国民審議の日」を設けて、自治体単位で国民の声を聴取する機会を作ることや、国会の法案審議において、議員団提案の法案審議を増やすなどの方針を示した。一部勢力が求めている比例代表制の導入については、「イデオロギーを持たずに検討に応じる」としたが、具体的な約束はしなかった。首相はまた、妊娠中絶や同性婚、体外受精の権利などを挙げて、獲得された自由を擁護すると約束。人種差別、ユダヤ人排斥、女性への暴力、コミュニティ中心主義などには屈せず、政教分離を擁護するとの姿勢も確認した。 KSM News and Research -
2024.10.02
ベネトゥ、プレジャーボートのリフィットに着手
プレジャーボート大手の仏ベネトゥはこのほど、傘下の二胴船(カタマラン)のブランド「ラグーン(Lagoon)」を通じて、リフィットのサービス「ネオ」を開始した。環境配慮に敏感な層の取り込みを狙う。 ベネトゥは、新事業のテストケースとして、ラグーン620 Fireflyの中古船のリフィットを進めている。イタリアのモンファルコーネにある造船所をこのサービスの拠点とすることを決めた。現在リフィット中の船体は、2024年2月に下取りしたもので、全長は18.9メートル。12年間に渡り就役した。最初は民間の所有者が、次いでリース会社が保有した。装備とソフトウェアを最新のものに取り換えて、2年間の製造者保証をつけて新造船と同様の条件で引き渡す。リフィットには4-6ヵ月がかかり、回収した装備品等の7割は有効活用される。 ベネトゥによると、60フィート(18メートル)を超えるボートの場合、最新のソリューション搭載への期待が極めて大きい。インフレ高進という背景において、競争力のある価格で最新のアップデートを提供できるという利点がある。ベネトゥでは、当面はこのモデルに限り、リフィットの需要を探る計画。同社は、2030年までにカーボンフットプリントを30%削減するとの目標を立てており、リフィット事業もこの戦略に沿って開始した。 KSM News and Research -
2024.10.02
パリのペリフェリック、速度制限の強化が開始に
パリ市は10月1日付で、ペリフェリック(環状自動車専用道)における最高速度を時速70kmから50kmに引き下げる規制改正に着手した。10日付で全線の最高速度を時速50kmに制限する。 1日付では、ポルトドルレアン(南)からポルトデリラ(東)までの区間に限り、制限速度が時速50kmまで引き下げられた。今後、標識の取り換えを順次進めて、10日時点で全線にて新たな制限速度を適用する。当面は違反行為の摘発は行わず、周知徹底を優先する。 制限速度の引き下げに伴い、二輪による、いわゆるすり抜け走行も禁止されることになる。二輪のすり抜け走行は、中央分離帯があり、追い越し車線がある専用道において、試験的措置として2021年8月より認められているが、その条件として、最高速度が時速70km以上であることが定められており、制限速度が引き下げられると許可の条件に合致しなくなる。 パリ市は、沿線住人の騒音と大気汚染の被害の軽減を目的として、この措置の導入を決めた。ただ、パリ市が含まれるイルドフランス地域圏のペクレス議長(共和党)はこの措置を、郊外居住者に不利益を被らせるものだとして批判。ペリフェリックの事実上の平均速度は時速35km前後であり、速度制限の強化で実際の影響が及ぶのは、混雑していない時間帯に限られるが、そうした時間帯に自動車通勤する郊外居住の就労者の場合、通勤に余分に時間がかかり、睡眠時間が1日につき最大で12分間削られるなどと主張している。政府も速度制限の強化には批判的な姿勢を示している。 KSM News and Research -
2024.10.02
デジタルウォレットの新サービス「Wero」、フランスでも開始に
仏大手銀行7行は9月30日、デジタルウォレットの新サービス「Wero」を共同で開始すると発表した。個人間送金サービスの「Paylib」を後継する形で、アプリ経由の送金サービスを開始。その後に、決済サービスの提供を開始する。 Weroは、コンソーシアムのEPI(欧州支払いイニシアティブ)を構成する独仏ベネルクス諸国の銀行が共同で導入。ドイツでは既に数週間前からサービスが始まっている。EPIは、共同の決済カードの導入を目的に結成されたコンソーシアムだが、デジタルサービスの共同開発へとスケールを小さくして存続が決まったという経緯があり、今回、その具体的な成果がフランスでも導入される。フランスの銀行は、携帯電話番号に紐づけられた個人間送金サービス「Paylib」を共同で運営しているが、これを新サービス「Wero」に譲る形で発展的に解消する(2025年3月までに終了予定)。欧州連合(EU)の規則にあわせて、Weroは2025年1月には全面的に即時送金のサービスとする。その後は、段階的にB2Cの決済手段を提供する足場とする予定で、2025年中に、QRコード決済により、決済端末を導入していない自営業者向けにサービスを開始、続いて2026年中には、店舗決済の手段としてサービスを開始する計画。米国系などが強い携帯決済に対抗し、より安価な料金でサービスを売り込む構え。 KSM News and Research -
2024.10.02
ズアリ氏、ピカールの100%株式を取得へ
資産家のズアリ氏が保有するIGZ社は9月30日、冷食大手ピカールへの出資率を49%から100%に引き上げると発表した。残り株式を保有する英ライオン・キャピタルから全株式を買収する。買収の実現には、従業員代表組織から承認を得て、当局機関からの許可を取得する必要がある。2025年3月までの買収完了を目指す。 ズアリ氏は2020年に、スイスのAryzta社から持ち分を取得することで、ピカールの49%株式を確保していた。ライオン・キャピタルは15年前にピカールの株式を取得していたが、このほど売却を決めた。ピカールは1185店舗を展開し、2023年3月期に17億ユーロ程度の売上高を達成した。従業員数は4500人程度で、欧州のほかに中東とアジアに進出している。 ズアリ氏は、シャランジュ誌によると、保有資産額が推定12億5000ユーロに上り、フランスでは第104位の資産家。カジノ(食品小売大手)のフランチャイジーとして成功を収めた。最近では、カジノ買収をチェコの実業家クレティンスキー氏らと争って失敗していた。買収の受け皿とする予定だったTeract(食品小売やガーデニングの小売業を資産に保有)は、2023年7-12月期に4080万ユーロの純損失を出しているが、赤字幅は縮小する傾向にある。 KSM News and Research -
2024.10.02
女性の稼ぎがいいカップルには破局のリスク
女性の方が高収入のカップルは離別に至る可能性が高いとする調査結果がこのほど公表された。仏INED(国立人口研究所)が発表した。 この調査では、2011年から2017年の期間に、100万近くのカップルを層別抽出にて選び、所得と離別の関係について調べた。婚姻関係のある者から同棲関係の場合までを含めて調査した。それによると、家計の収入の55%以上を女性がもたらしている場合、離別に至るリスクは11-40%と目に見えて高くなる。収入の差が大きいほどリスクも増大する。この傾向は、あらゆる種類、またあらゆる年齢層のカップルにおいてみられるが、全体に所得水準が低いほど、格差に伴う離別のリスクは高まるのだという。 また、法的な関係の違いにより、収入が果たす役割も異なるという。婚姻世帯の場合、男性の収入が大きいと、関係が安定するという効果が得られるが、同棲世帯の場合は、収入が同等である方が安定性が高くなる。 調査対象のカップルにおいては、男性の方が所得が多い場合が全体の49.3%、同等の場合が20.5%、女性の方が多い場合が13.7%をそれぞれ占めた。収入が男性のみという世帯は全体の14.5%を占め、女性のみというケースは2%だった。離別リスクの調査結果は、フランスのような社会においても、男性が稼ぐという社会的な規範意識が今も残存していることを示している。KSM News and Research -
2024.09.30
仏公的債務残高、過去最大の水準に
27日発表のINSEE統計によると、6月末時点の仏公的債務残高は3兆2284億ユーロとなった。同残高は、1-3月期には583億ユーロ、4-6月期には689億ユーロの増加を記録。年頭来では1000億ユーロを超える増加を記録したことになる。同残高の対GDP比は112%に達した。 2017年にマクロン政権が発足した時点では、公的債務残高は2兆2810億ユーロとなっており、それから7年間で1兆ユーロ程度の増加を記録したことになる。この9月に退任するまで、7年間に渡り経済相を一貫して務めてきたルメール氏は、新型コロナウイルス危機などを乗り越えることに成功した代償だと弁明していたが、その当否はともあれ、増大した公的債務残高にどのように向き合うかという課題を未解決であることには変わりない。2024年には国債費が520億ユーロに達する見通しとなっており、さらに、足元の金利の推移は仏政府にとって逆風になっている。26日には、5年物仏国債の流通利回りが2.48%に上昇。信用力が劣るはずのギリシャ(2.40%)を上回る異例の事態となった。10年物長期金利をみても、26日にフランス(2.97%)はスペイン(2.95%)を上回っており、市場が政局混迷を背景に、フランスの財政運営の将来に懸念を強めていることがうかがわれる。KSM News and Research -
2024.09.30
極右RNの架空雇用疑惑、裁判が開始に
極右政党RNの架空雇用疑惑の裁判が30日にパリ地裁で始まる。同党を率いるマリーヌ・ルペン下院議員をはじめとする27人と、RNが法人として起訴された。11月27日まで裁判が行われる予定。 RNは欧州議会において、2004年から2016年にかけて、党職員等を欧州議会議員の公設秘書の名目で採用することにより、欧州議会の資金を党のために流用していた疑いがもたれている。欧州議会の試算によると、被害総額は700万ユーロ近くに上る模様だが、被害の規模は特に、2014年の欧州議会選挙でRNが躍進し、議員数が大きく増えたことに伴い大きくなった。RNは当時に資金難に直面しており、清算の危機を回避するため、公設秘書で得られる資金を最大限活用することに踏み切ったとみられており、2011年以来、実父のジャンマリー・ルペン氏を引き継いで党を率いる立場となったマリーヌ・ルペン氏には、組織的な横領を指揮した疑いがかけられている。 架空雇用は各党の常套手段であり、中道政党MODEMの所属議員ら数人も2023年末に有罪判決を受けていたが、この時に、同党のバイルー党首は、証拠不十分で無罪判決を受けており、組織ぐるみの犯罪という認定はされなかった。大統領就任に意欲を見せるマリーヌ・ルペン氏の場合、党の責任を認定されて有罪判決を受ければ打撃は大きく、被選挙権停止が決まる可能性もある。ただし、控訴を経て執行が止まれば、2027年の次回大統領選挙より前に刑罰が確定することはなく、有罪判決で支持者が離れることもないだろうという楽観論が党内にはある。KSM News and Research -
2024.09.30
フランス最後のアコーデオン製造業者が倒産
コレーズ県チュール市にあるモージャン(Maugein)社が会社更生法の適用を申請した。国内に残った最後のアコーデオン製造者が姿を消すことになる。 モージャンは創業125周年。熟練工を含む10人を雇用していた。近年は販売不振に悩み、2013年に現在の経営者であるリシャール・ブランダオ氏が投資家らの支援を得て買収し、立て直しを図っていたが実らなかった。新型コロナウイルス危機が打撃になったほか、中国市場に活路を探る戦略が裏目に出て、中国競合の追撃を受ける格好になり、経営が立ち行かなくなった。2年前に始めたハーモニカ製造の多角化も成功しなかった。 チュール市は、オランド元大統領の地元という縁があり、今年に入り、チュール市にはアコーデオン文化センターがオープン。元大統領も開所式に姿を見せていた。モージャンは2007年に、EPV(国宝企業)という経済省が運営するラベル認定を得ていたが、伝統のノウハウがこれで姿を消すことになる。KSM News and Research -
2024.09.26
社会保障会計の詐欺被害、年間130億ユーロ相当に
首相府下の諮問組織HCFIPS(社会保障会計財源高等評議会)は25日、社会保障に対する詐欺に関する報告書を提出した。改善のための一連の勧告を盛り込んだ。 報告書の推定によると、社会保障会計が被害を受けている詐欺の規模は、年間で130億ユーロ程度に上る。これに対して、検査等で検出されている不正行為の規模は21億ユーロに過ぎない。さらに、実際に回収できた資金は6億ユーロにとどまる。 報告書はこれらの数字について、推計であり、精度を高める必要があると断った上で、検査・摘発を強化して回収を増やすというやり方には限界があり、いずれにしても、社会保障会計の収支立て直しをそれだけで実現できるものではないと指摘。その例として、被害の規模が特に大きい、企業による就労者隠しと社会保険料逃れを挙げて、こうした不正の場合、雇用主が雲隠れしたり、倒産したりすれば、未払い分の回収の道が立たれると指摘した。報告書は対策として、不正を助長するような抜け道がある制度や、複雑すぎて監視の目が行き届かなくなる制度を上流から改めるよう勧告。その例として、近年に導入された「自己負担ゼロの補聴器」を挙げて、患者が出費に注意を払わなくなることを悪用して、介在する業者が組織的に不正を行うような状況があると指摘した。不正を助長する状況を改め、死角をなくしてゆくことで、不正を未然に阻止することが有効な対策とした。KSM News and Research -
2024.09.26
サンマルタン仏予算相:「2024年の財政赤字対GDP比が6%を超えるリスクあり」
サンマルタン予算相は25日、下院財政委員会における聴聞に出席した機会に、2024年に財政赤字の対GDP比が6%を超えるリスクがあることを認めた。財政健全化に向けた意欲を確認した。 財政赤字の対GDP比は、当初予測では5.1%に設定されていたが、既に7月の時点で、経済省はこれが5.6%まで膨張する可能性があることを認めていた。予算相はさらに踏み込んで、6%を超えるリスクがあることを認めて、軌道修正が必要であることを強調した。ちなみに、財政赤字の対GDP比は、2023年には、当初予定の4.9%を上回り、5.5%にまで増大していた。 予算相は、2週間後、つまり10月9日までに2025年予算法案を国会に提出すると約束。財政健全化については、一方で歳出を削減し、他方で税収の調節を図るというやり方ではうまくゆかないと言明し、歳出削減を優先することが必要だと強調した。足元の財政赤字拡大の理由としては、外需主導の経済成長につき、個人消費に伴う税収(付加価値税など)が予想を下回っていることと、企業が投資や採用を手控えていることの影響を挙げた。KSM News and Research -
2024.09.26
フィリピーヌさん殺害事件:不法移民の容疑者逮捕、司法の責任追及の声も
パリ西部のブーローニュの森で21日に女子大生フィリピーヌさん(19)が遺体で発見された件で、容疑者の男性が24日、スイスのジュネーブで逮捕された。強姦罪で有罪判決を受け、現在は不法滞在者であったことが報じられ、物議を醸している。 逮捕されたのは22才のモロッコ人男性。報道によると、同容疑者は17才だった2019年に観光ビザでフランスに入国。その直後に強姦容疑で逮捕され、2021年10月に禁固7年の有罪判決を受けた。規定の最低限の刑期を終えた後に仮出所し、違法滞在者として収容施設に移送された。当局は本国のモロッコへの送還手続きを進めたが、旅券を持たない者を国外退去処分とするには、本国から通行証を得る必要があり、手続きが遅れる中で、勾留延長の期限がほぼ尽きた9月初頭に、条件付き(警察署への定期的な出頭命令を伴う)で釈放されていた。出頭命令に従わなかったため、当局は指名手配で行方を追っていたが、その間に犯行に及んだことになる。容疑者は、性犯罪者のリストに掲載されており、犯行後に被害者のカードを使って現金を引き出した時の映像により身元が特定され、逮捕に至った。当局はスイスに身柄の引き渡しを請求すると共に、殺人、強姦、詐欺などの容疑で容疑者認定を行った。 今回の事件について、極右勢力などは、国の対応に落ち度があり、犯罪者を野放しにしたのが原因だなどとして、移民排斥の主張を展開する材料としている。就任したばかりのルタイヨー内相も、法令上のしかるべき手段を整備して万全の対応を可能にすることに意欲を示した。KSM News and Research -
2024.09.25
仏国鉄SNCFとドイツ鉄道(DB)、パリ・ベルリン間の急行列車運行計画を発表
仏国鉄SNCFとドイツ鉄道(DB)は9月24日、独ベルリンで開催された鉄道技術見本市Innotransの機会に、パリとベルリンを結ぶ新急行列車の運行で協力すると発表した。 新しい列車は12月16日以降、パリ東駅と独ベルリン駅の間を、仏ストラスブールと独フランクフルトを含むいくつかの停車駅を経て8時間あまりで結ぶ。昼間に1日1便が運行される。DBがICE車両(444座席)にて運行し、年間32万人を追加で輸送できる。座席の一部をSNCFが販売する。 一方、昨年12月に鳴り物入りで再開したパリ・ベルリン間の夜行列車は、夜間に保線工事を実施するため、8月12日以降、10月末までの予定で運休している。KSM News and Research -
2024.09.25
住宅保険と自動車保険、2025年に保険料大幅上昇の見込み
住宅保険と自動車保険の保険料が2025年に大幅に引き上げられる。 住宅保険には、平均で8-10%か10-12%の引き上げ(調査会社により予測が異なる)が適用される見通し。前2年と比べて2倍程度の引き上げ幅となる。その最大の理由が、自然災害の補償を行う公的再保険CCRの再保険料の引き上げで、同保険料率(元受け保険の損害保険部分に対応する保険料に対して適用される)は長らく12%に据え置かれてきたが、自然災害の増加と被害の拡大を受けて、20%に引き上げられることが決まった。試算によると、これは1世帯当たりで年間18ユーロの値上げに相当し、保険料を全体で5-7%押し上げる要因になる。残りの上昇分は、被害の回復にかかる費用の増大に由来するという。ただし、物件により保険料の推移には違いがあり、集合住宅においては、保険料に占める賠償責任保険に対応する部分が大きく、自然災害に対応する部分が相対的に小さいため、値上げ幅がより緩やかになり、一戸建てはその逆により大きな値上げとなることが予想される。 自動車保険についても、調査会社により、4-6%か5-6%の値上げが予想されている。前年の3%と比べて、値上げ幅が大きくなる。危険な運転行為が増え、自動車部品等の価格も上昇したことに由来した値上げだが、費用増をカバーするには7-10%の値上げが必要になるといい、各社は競争が激しいのを背景に、本来よりは値上げ幅を抑制するのだという。KSM News and Research -
2024.09.25
仏当局機関、製薬会社11社を罰金処分に:医薬品不足で
ANSM(フランス医薬品・保健製品安全庁)は24日、製薬会社11社を対象に、総額800万ユーロの罰金処分を決めた。医薬品在庫の最低限確保の義務違反を理由に罰金処分を適用した。昨年に同じ理由で下された処分と比べて、罰金額は14%の増加を記録した。 近年、国内では医薬品不足が深刻になっている。その対策として、製薬会社には、2ヵ月分の製造者在庫(一部の重要医薬品については4ヵ月分)の確保が義務付けられているが、今回の罰金処分では、この義務の未達成分が処罰の対象になった。うち、ビオガラン(セルビエ傘下)の罰金額が400万ユーロと最も大きかった。高血圧症の治療薬Irbesartanの在庫水準が不十分だったことなとが対象となった。大手サノフィも、Jevtana(がん治療薬)とRifinah(結核治療薬)の在庫不足で処分の対象となった。 ANSMによると、2023年には5000件を超える品切れ案件が報告されており、これは前年比で30%増、2018年比では6倍増に相当する。ただし、ANSMは、昨年に導入した対策の成果で、今冬には適正な在庫水準が確保されるとの見通しを示した。KSM News and Research -
2024.09.24
フランスの労働生産性、改善に転じる
左派系の経済研究所OFCEがこのほど発表した推計によると、フランスにおける労働生産性(付加価値を労働時間総数で割った値)はこの4-6月期に、前年同期比で1.3%増加した。新型コロナウイルス危機前には、労働生産性は年間0.9%程度の向上を記録していたが、それを上回る改善を示した。 フランスの労働生産性は、新型コロナウイルス危機を挟んで顕著に後退しており、2019年中頃から2023年中頃までの4年間では5%近く後退した。2019年末から2024年6月まででは、国内の雇用数は110万人の増加を記録。生産性が維持されるには、この増加を12万9000人にとどめる必要があり、それを超える98万人分が、「余剰な」雇用増加分となっていた。これは、新型コロナ危機後の厳しい状況において、雇用維持の公的援助が投入されたことなどが原因と考えられるが、原因が不明な増加分が48万人相当あり、エコノミストらはその理由を詮索していた。OFCEによると、公式統計等の修正により、実際には「原因不明」の雇用増分は28万5000人まで縮小。部門別では、工業部門(20万人)と建設部門に集中している。こうした余剰分は、生産回復に伴い徐々に解消されてゆくが、労働生産性が危機前の水準に復帰するのはまだ先だと考えられる。KSM News and Research -
2024.09.24
パリ市のベンチ、子ども向けバージョンがお目見え
パリ市が、「ダビウ」型と呼ばれるベンチの子ども向けバージョンを開発している。試作品が27日から28日にかけて公開される。 パリ市内の公園などには、背もたれの両面に腰掛け板を配した緑色のベンチがある。19世紀より配備が始まった由緒正しいベンチで、設計者の名前をとってダビウ(Davioud)と呼ばれる。ただ、背もたれの位置が高すぎて、子どもが座ると、仰向きにひっくり返るリスクがあった。この問題に対応するべく、パリ市の保守・調達センター(CMA)はベンチの改良に着手。高さを7分の6に縮小すると共に、2枚の腰掛け板の隙間を狭めて、子どもの小さな指でも間に入らないようにして、指が抜けなくなる事故を防ぐ工夫をした。背もたれの角を丸めるなど、リスクを最小化する改良も加える。改良版の配置に当たっては、当局機関の認証を得る必要があるが、それに加えて、教育省の認可も得て、学校の校庭内の設置も予定する。公共スペースでは、学校近くの街路や公園などへの配置を予定。具体的な個数についてはまだ固まっていない。伝統のスタイルを残して、子どもにも適した新設計の試作品は、「子供の街角フェスティバル」の機会を利用して公開される。27日(金)の16時30分にドルーボワ通り(2区)で、28日(土)の14時にはドラプレザンタシオン通り(11区)で、同日16時15分にはサンモール通り(11区)で公開される。CMAではこれに加えて、高齢者が立ち上がる時に支えにできるひじ掛けを配した「ダビウ」ベンチの新バージョンも開発する予定。KSM News and Research -
2024.09.24
BNPパリバ、HSBCの独プライベートバンク事業を買収
仏最大手銀行BNPパリバは23日、英HSBC銀行からドイツのプライベートバンク事業を買収する契約を結んだと発表した。ドイツ事業を強化する。 HSBCは非戦略事業の整理を進めており、フランスのリテール業からの撤退なども完了している。今回売却を決めたドイツ事業は、年間収入9000万ユーロ程度、従業員数は100人程度の事業で、売却額は明らかにされていないが、報道では3億-6億ユーロ程度で交渉がなされていたという。 BNPパリバはドイツ事業の強化を進めており、2012年から2021年にかけては収入が2倍増を記録。従業員数は6000人を超えている。今回の買収を経て、ドイツ事業における運用資産総額は400億ユーロに達することになり、ドイツ大手のコメルツバンクやドイツ銀行と競える規模まで大きくなる。保有資産額2500万ユーロ以上の超富裕層を含めて、資産家の顧客層とのパイプを強めることができる。 ドイツには、ミッテルシュタントと呼ばれる一族経営の中堅企業が多く、資産運用や貿易業務など金融機関の需要は何かと多い。最近では、伊ウニクレディトがコメルツバンクに買収攻勢をかけるなど、外国勢の注目も高まっている。BNPパリバはその中で今回の買収を決めた。KSM News and Research -
2024.09.23
バルニエ新内閣の顔ぶれが発表に
バルニエ新首相による組閣人事が終了し、新内閣の顔ぶれが21日に発表された。共和党(保守)とマクロン大統領派の旧与党の人材を中心とする内閣になり、右派色の強い顔ぶれになった。バルニエ新首相は10月1日に国会で施政方針演説を行う予定で、そのあとに不信任案が採択されない限りは内閣が承認される運びとなる。 新内閣は総勢39人。アタル前内閣から7人が留任しており、全体として、アタル前首相に近い人材の起用が目立った。その一方で、共和党からは、上院議員団団長で移民問題や社会問題などで特にタカ派として知られるルタイヨー氏が内相に起用されており、バルニエ内閣の右派色を象徴する人事となった。また、ダルマナン内相や、共和党のボキエ下院議員団団長など、有力政治家は閣外に議員としてとどまっており、こうした「うるさがた」を野放しにしたことは、政局運営を困難にする要因となりうる。それと関連して、新内閣に迎えられた政治的な重みのある人物はルタイヨー氏ぐらいで、実績が多くない人材の登用が目立つ。首相として操縦しやすい布陣にはなるかもしれないが、ただでさえ少数内閣として支持基盤に欠ける政権の足元がさらに暗くなるというリスクもはらんでいる。他方、左派系の人材としては、HATVP(公職部門の監視機関)の議長を務めるミゴー氏が法相として入閣したのを除けば皆無で、マクロン大統領が約束していた開かれた多様な内閣とは程遠い。 極右RNは型どおり新内閣の構成を強く批判。施政方針演説の内容いかんでは、不信任案を支持する可能性を口にする者もあり、バルニエ内閣が発足後ただちに瓦解する可能性も完全には否定できない。左派陣営もバルニエ内閣の人事を批判。特に、ルタイヨー氏をはじめとして、かつての同性婚反対デモなどに加わった共和党の人材が内閣に合流したことを攻撃材料としている。KSM News and Research -
2024.09.23
バルニエ首相、富裕層など対象の増税の可能性は否定せず
組閣人事を終えたバルニエ首相は22日夜、国営フランス2局とのインタビューに答えて、今後に推進する政策について一部見解を披露した。首相はこの機会に、政局運営において妥協を探る姿勢を重視すると約束し、結束と友愛を旨とするなどと述べた。具体的な政策については、特に、全体を対象にした課税圧力の強化を行う可能性を否定。低所得層や勤労者、中流層を対象とした増税の可能性を否定した。ただし、最富裕層に努力を求める可能性については否定せず、また、大企業を対象とする一時的な課税強化の可能性も否定しなかった。年金制度については、極右RNと左派連合NFPの双方が年金改革廃止を要求しているが、バルニエ首相は、「時間をかけて改善する」と言明し、就労状況の過酷さを退職年齢に反映させる制度や、子どものいる女性への配慮、また若年時に就労を開始した人への配慮という点で、改善に応じる考えを示した。移民問題については、厳しいが人道的な態度で、教条的にならずに「実践的な措置」を通じて対応する考えを示した。 バルニエ首相は23日に閣僚らを朝食会に招いて協議し、同日午後の初閣議に臨む。予算法案の準備が焦眉の急だが、担当大臣には、経済・財務相にアルマン氏(旧与党)を、そして予算相にはサンマルタン氏(旧与党)を起用。予算相については、異例の措置だが首相付き大臣として、首相が陣頭指揮をとる布陣を採用した。KSM News and Research -
2024.09.23
エールフランス、短中距離便で軽食提供を有料化へ
エールフランスは2025年年頭より、短中距離便で軽食提供の有料サービスを試験導入する。詳細については発表されていない。 対象となるのは4時間以内のフライトで、リスボン(ポルトガル)やヘルシンキ(フィンランド)などまでの中距離便が想定されている。ビジネスクラスについては従来サービスを維持、有料化では、無料サービス(水・コーヒー・紅茶と菓子)を継続しつつ、軽食などは有料化するという対応が図られる。 エールフランスは、長距離便においても受託手荷物を有料とする「ライト運賃」を導入するなど、LCCを意識した有料オプションにより収入の最大化を目指している。LCCにおいては、受託手荷物や軽食など有料オプションが収入の半分近くを占めているといい、利益が出るのは専ら有料オプションであるともいわれる。エールフランスが短中距離便において同じ土俵でやりあうとしたら、LCCとは明らかに差があるクオリティを打ち出して、料金を正当化できるかがカギになる。KSM News and Research -
2024.09.20
LVMHのアルノーCEO、独立系メディアに対してかん口令
報道によると、高級ブランド大手LVMHのベルナール・アルノーCEOは、去る1月17日付で経営陣に文書を送り、特定の紙誌のジャーナリストとの取材に応じないよう求めた。名指しでかん口令を敷くのは大手企業でも異例だという。 アルノーCEOはその文書の中で、「調査報道サイトやインサイド情報誌などを名乗るマスコミが、高級ブランドの知名度を利用して、読者に媚びる報道を配信する」事例が見受けられるとし、そのような臆面のない記者と懇談したり、社内の情報を提供することを固く禁じるとした。CEOは具体的に、La Lettre(Indigoグループ傘下)、カナールアンシェネ、メディアパルト、ランフォルメ(実業家ニエル氏が支援する経済情報サイト)、そして、米国のPuck News、Glitz(Indigoグループ傘下)、Miss Tweedの7タイトル(サイト含む)を挙げて、経営陣にかん口令を敷いた。 この文書の存在を報じたのは当のLa Lettreで、対象となっているのはいずれも独立系を標榜する報道グループとなっている。各社とも、フランス随一の富豪であるアルノー氏のやり玉に挙げられたことをむしろ喜んでおり、La Lettreのボノー編集長は、「編集部が誠実かつ効果的に仕事をしていることの証だ」とコメントしている。KSM News and Research -
2024.09.20
パリ首都圏の公共交通機関、一律料金を採用:1月2日から
イルドフランス地域圏(パリ首都圏)のペクレス議長(共和党)は18日、首都圏における公共交通機関について、距離に基づいた料金体系を廃止し、一律料金に移行すると発表した。2025年1月2日より施行される。ペクレス議長はこれを「革命」と形容。地域圏の左派野党勢力も、郊外居住者に負担を強いる料金体系が廃止されるとしてこれを歓迎した。 具体的には、メトロ、RER(郊外連絡急行)、ローカル線のいずれを利用しても(乗り換えも可)、1行程につき料金は一律2.50ユーロとなる。バス・トラムウェイは2ユーロ(車内で精算の場合は2.50ユーロ)となる。ただし、空港まで乗ると、一律13ユーロの料金が適用される。 新料金体系は、郊外とパリを往復する人には有利だが、パリ市内の移動に限れば、現在の2.15ユーロ(10回券なら1回1.735ユーロ)よりも高くなる。また、紙の切符(紙以外の媒体の10回券とも)は2025年末で廃止され、その後は、定期券Navigo(1ヵ月86.40ユーロ、週単位でも購入可能)か、Navigo Liberte+(毎月15日に1ヵ月分の利用料金が引き落とされる乗車券。事前に登録が必要で本人のみ使用可)、Navigo Easy(プリペイド乗車券。登録不要)の3種に整理される。Navigo Liberte+なら、1行程1.99ユーロ(1日当たりの課金は最大で12ユーロに制限)の割引が適用されるが、Navigo Easyだと割引はない。 ペクレス議長は、新料金体系に伴い生じる費用負担を年間3000万ユーロ程度と試算。無賃乗車が減り、利用者の増大が見込めることから、全体として費用増を収入増により補えるとの見方を示している。KSM News and Research -
2024.09.20
実業家のニエル氏、ワンマンショー「億万長者になる方法」を開催
イリアッド(通信フリー親会社)の創業者として知られる大物実業家のグザビエ・ニエル氏が18日、パリ市内のミュージックホール「オランピア」で「億万長者になる方法」と題したワンマンショーを行った。2000人の観客で満席となった。 ニエル氏は、フォーブス誌の長者番付ではフランス第9位の資産家で、資産総額は220億ユーロ超と推定されている。今回のイベントは、聞き書き本「Une sacree envie de foutre le bordel(大暴れしてやろうじゃないか)」(フラマリオン社刊、19.99ユーロ)の出版にあわせて開催され、スター起業家を見ようとする熱心な観客が集まった。ニエル氏はこの機会に、最近の民放大手M6の買収失敗を含めて、自らの多数の失敗を列挙し、失敗は成功のもとであるから恐れずに数多くの失敗をすることだと観衆に助言。格安サービスを売り物に成功したフリーについては、既成の業界に風穴をあけて、国民に購買力をもたらすことができたことを誇りに思うなどと述べて、喝采を浴びた。KSM News and Research -
2024.09.19
ワイン生産量でイタリアが世界首位に返り咲き
2024年のワイン生産量でイタリアがフランスを抜き返して世界首位に返り咲く見通しとなった。国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によると、2007年以後でイタリアがワインの年間生産量で世界首位でなかった年は、2011年と2014年および2023年だけだった。 仏農業省によると、今年はとりわけ気象条件がひどく、フランスのワイン生産量は前年比18%減の3930万ヘクトリットルに落ち込む見込み。一方、伊農業団体Coldirettiによると、イタリアの今年のワイン生産量は、凶作だった昨年より8%増えて4100万-4200万ヘクトリットルに達する見込み。ただし、それでもまだ近年の平均生産量を大きく下回っている。イタリアの北部では春から初夏にかけて強雨や雹の被害で不作だったが、中部と南部では昨年に比べて状況は改善したという。ただし多くの地域が干ばつに見舞われた。KSM News and Research -
2024.09.19
バルニエ首相による組閣人事が難航、増税の是非も対立点に
バルニエ首相による組閣人事が難航している。マクロン大統領の旧与党勢力が抵抗を強めている。組閣人事は20日までに発表される予定だったが、遅れる可能性がある。 バルニエ首相は18日に組閣人事の素案をマクロン大統領に提示したとされる。マクロン大統領はこの人事について、「単色」だと側近に漏らしたといい、これが旧与党勢力に広まって、緊張が高まっている。バルニエ首相は、自らが所属する保守の「共和党」の人材を多く登用する考えとみられており、マクロン大統領は、自陣営や、それ以外の勢力の登用が少ないことに反発したとされる。それと並行して、バルニエ首相の政策方針に関する憶測が対立の火種にもなっている。首相が増税による財政健全化を検討しているとの噂があり、ダルマナン内相などは、増税を決める内閣には入らないし、議会で支持もしない、と言明して敵対的な立場を表明。バルニエ首相は協議のために19日に旧与党勢力を率いるアタル前首相と会談する予定だったが、これはキャンセルされており、妥協点を見出す困難を露呈した格好になった。KSM News and Research -
2024.09.19
タレス・アレニア・スペースが人員削減を計画、労組が抗議行動
衛星建造のタレス・アレニア・スペース(TAS)で17日に、人員削減計画に反対する労組によるストが行われた。トゥールーズ本社前では700人が参加する集会が行われた。 TASは、仏タレス(防衛電子)が67%、伊レオナルドが33%を出資する合弁会社。同社は、需要の後退を理由に、2023年から2025年にかけて1237人を欧州にて削減する(うち980人がフランス)計画に着手しているが、労組側はこれに反対している。 トゥールーズ拠点は通信衛星を専門としているが、ここでは2700人の従業員のうち650人が削減される予定で、特に影響が大きい。南東地方のカンヌ市にある拠点(通信衛星及び観測衛星の組み立て、インテグレーション及びテスト)でも、1800人のうち330人が削減される。削減される人員には親会社のタレス内での配置転換が提案される。 会社側は、人員削減の理由として、民生用の静止通信衛星の受注が世界的に後退していることを挙げている。その一方で、次世代のデジタル衛星(軌道上でアップデート可能)については、投入する人的リソースがより少なくて済み、その開発も技術的な理由で遅れていることから、需要を後継する役割を果たせていないという。労組の側では、衛星分野の技能は育成に時間がかかることから、安易な削減をせず、将来を見据えてサービスへの多角化などを探るべきだと主張している。KSM News and Research -
2024.09.18
闇深の託児業界を暴く暴露本が出版に
闇深い託児業界の内幕を暴露する調査報道の新刊「Les Ogres(食人鬼)」がフラマリオン社から18日に刊行される。ベストセラーになった高齢者施設の暴露本「Les Fossoyeurs(墓掘り人)」を執筆したジャーナリストのビクトール・カスタネ氏が新たに執筆した。刊行前から報じられ、話題となっている。 前著は高齢者施設運営業界の大規模な変革をもたらすきっかけを作った。今回も大きな反響を呼び起こすものと予想される。今回の著作は、託児所における虐待案件の実例の数々を紹介。さらに、大手のPeople & Babyを中心に、業界における行き過ぎた経費節減の手口を暴露した。おむつの取り換えの頻度を減らすよう現場に指令したり、食品などを供給せずに現場の職員に自前で支払わせるようなやり方が横行しているとし、さらに、納入業者に支払いをせず、不満なら法的手段を講じるよう業者に求めるといったしたたかな対応(納入業者側は、時間と費用がかかることから、訴えずに泣き寝入りするのがほとんどだったという)も目立つという。職員のサービス残業なども日常茶飯事というブラックぶりで、労働条件にも問題が多い。 暴露本は特に、託児実績を水増しして補助金を詐取する手口や、企業向けの託児サービス提供の受託契約においても料金を水増しして、不当に税制優遇措置の適用を受けるといった手口を紹介。暴露本を執筆したカスタネ氏は、当局がそうしたやり方に目をつぶっているとし、特に、担当大臣だったベルジェ家族相(2023年7月-2024年1月)と、業界団体FFECの間で癒着があり、「業界側は政府を批判しない、政府は業界をそっとしておく」という不可侵条約のごときものが結ばれていたと糾弾している。KSM News and Research -
2024.09.18
ノートルダム寺院で発見の埋葬遺体、詩人デュベレーの遺体か
火災のあったパリのノートルダム寺院では、修復作業に伴う発掘調査で、未知の人骨2体が発見されていた。うち一方は碑銘から高位聖職者のものと判明していたが、もう一方の人骨の身元は不明だった。このほど発表された鑑定調査では、16世紀の詩人ジョアシャン・デュベレーの遺体である可能性が高いとの結果が得られた。 デュベレーはプレイヤッド派と呼ばれるルネサンス期の詩人のグループに属し、1560年に30代で亡くなった。滞在先のローマで望郷の念を歌った「幸いなるかな ユリシーズのように(・・・)経験と分別を身に着けて故郷にもどり 親族にかこまれながら余生を送ることになる者は」で始まる詩で特に名高い。発見された遺体は鉛の棺に納められ、交差廊と呼ばれる教会建物の中央部分の床石の下に埋葬されていた。鑑定結果によると、遺体の年齢は30代でデュベレーと一致。また、デュベレーは病のため聴覚障がい者となっていたが、遺体の頭蓋骨には、聴覚障害を引き起こす結核による病変がみられた。また、デュベレーはローマ旅行を含めて騎馬をよくしたことで知られるが、遺体にも騎馬に対応した骨の変形がみられた。 デュベレーはパリ大司教で枢機卿も務めたジャン・デュベレーの甥で、ノートルダム寺院内サンクレパン小礼拝堂に埋葬されたジャン・デュベレーの隣に埋葬されたとの記録が残っているが、その場所からは遺体が発見されていなかった。何らかの事情で交差廊に改葬された可能性などが考えられる。ただ、遺体の身元を100%断定する材料には欠けるため、今のところは確からしい推定の域にとどまるという。KSM News and Research -
2024.09.18
マクロン大統領の弾劾請求、仏下院事務局が受理
仏下院事務局は9月17日、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が提出したマクロン大統領の弾劾請求を受理した。事務局の投票では左派が一致して賛成票を投じ、賛成12票、反対10票で受理が決定した。 大統領弾劾手続きの第一段階を突破したことになるが、続いて行われる下院法務委員会の審議を通過し、さらに上下両院で3分の2の賛成を得るのは不可能とみられている。 法務委員会でも議会でも左派は少数派である上に、社会党はすでに弾劾に反対する意向を表明している。社会党は、弾劾は失敗に終わると判断しており、それが却ってマクロン大統領を正当化することに懸念を示している。また、中道派と右派は、バルニエ新首相が任命されたことで政局の中心におり、現状では大統領弾劾請求を支持する理由がない。KSM News and Research -
2024.09.17
欧州委のブルトン委員(フランス代表)が辞任
欧州委員会のフォンデアライエン委員長が進めている次期欧州委の組閣人事に絡んで、フランス代表のブルトン委員が16日に辞任すると発表した。即時に辞任し、次期欧州委には残らないと明らかにした。ブルトン委員は、辞任に当たり、フォンデアライエン委員長の采配を公然と批判。フランス政府はそのすぐ後に、次期委員としてセジュルネ外相を指名すると発表した。 フォンデアライエン委員長は先の欧州議会選挙で一応の勝利を収め、欧州委委員長への再選を決めていた。欧州委は、全加盟国が各1名を指名して選ばれる委員により構成されることになっているが、この組閣人事は遅れている。委員長は男女同数の実現にこだわり、各国に男性1名と女性1名の2人の候補を指名するよう求めたが、ほとんどの国がこれに従わず、委員長と各国の間の関係がぎくしゃくする場面もあった。それとは別に、フランスのマクロン大統領は、かなり早い時点でブルトン委員の再任を提案。従来の域内市場担当のほかに、競争力など担当範囲を広げる処遇をフランス側は求めていたが、フォンデアライエン委員長は数日前にマクロン大統領と電話会談した際に、ブルトン委員の担当範囲を当初案より狭める考えを伝えて、対立が生じていたという。ブルトン委員は16日に自ら辞任を発表した際に、自身ではない候補が担当範囲を拡大して委員に就任することで政治的な取引がなされた、と言明し、これを辞任の理由と説明した。フォンデアライエン委員長とブルトン委員の間柄は以前から良好ではなかったといわれている。 次期欧州委の顔ぶれは17日にも発表される予定。この際に、新委員の権限の詳細なども明らかになる。KSM News and Research -
2024.09.17
不法移民対策の強化に向かう欧州諸国
ドイツ政府は9月16日、不法移民対策を目的に、1週間前に予告した通りに陸上国境の全体で検査を復活させた。以前から検査を実施している4ヵ国を含めて9ヵ国(ポーランド、チェコ、オーストリア、スイス、オランダ、デンマーク、ベルギー、ルクセンブルク、フランス)との国境が対象。フェーザー内相は15日、日曜紙とのインタビューなどを通じて、長蛇の列や渋滞などを招かないようにスマートな検査を実施すると予告し、国境近辺の住民の通勤や経済活動にできるだけ支障が及ばないように配慮する姿勢を強調した。 オランダでも7月に発足した極右参加の連立政権が9月13日、非常に厳しい移民制限案を発表した。今後にオランダ議会の承認を得る必要があるが、難民申請者収容施設を設けることを市町村に義務付けている法律の廃止、家族呼び寄せの制限(特に成人した子どもの呼び寄せの不許可)などを提案。また、欧州連合(EU)の移民・難民受け入れの枠組みに関するアプトアウトをできるだけ早期に申請することも発表した。なお、枠組みは4月に改正され、欧州議会の承認を得たばかりで、当時のオランダ政府(ルッテ政権)はこれに同意していた。 また、英国のスターマー首相は9月16日にイタリアを訪問してメローニ首相と会談した際に、イタリア政府の不法移民対策の成果を称賛して、英国でも参考にすることを示唆した。イタリアは地中海をわたって自国に流入する移民を減らすために、チュニジアおよびリビアと合意を結び、資金援助と引き換えに不法移民の渡航を水際で食い止めることを要請している。またアルバニアとも合意を結び、同国に2ヵ所の収容施設を設置して、海路でイタリアに入った移民を収容し、難民審査手続きや不適格者の本国送還などを行うことを取り決めた。施設の開設は当初の予定より遅れてまだ実現していないが、メローニ首相は近日中の実現を見込んでいる。施設の開設に必要な資金はイタリアが負担し、運営もイタリアが行う予定。 伊内務省によると、2024年のはじめから9月13日までに海路でイタリアに流入した移民の数は4万4675人で、前年同期の12万5806人から大きく減少した。 スターマー首相は、イタリアがアルバニアと結んだ合意については、今後の成果を確認する必要があるとしたが、移民の移動経路に位置する国々との対等な協力関係を通じて、不法移民問題に根本から取り組むことの重要性を強調し、イタリアがこうした国際協力の取り組みで手本を示したと評価。英国はプラグマティックな姿勢で、効果のある手段を採用する方針だとした。KSM News and Research -
2024.09.17
パリ市、運河に廃棄物回収用の「気泡カーテン」を導入
パリ市はこの夏より、市内の運河の清掃を目的とする新鋭装置の試験を行っている。気泡で水中にカーテンを作り、浮遊するゴミを1ヵ所に集めて回収する。結果は上々で、他の運河にも展開される可能性がある。 この装置は、運河の町として知られるオランダのアムステルダムで導入実績があるが、フランスではこれが初めてだという。パリ市は、市内の19区を流れるウルク運河に装置を試験的に導入。運河を斜めに横切る形でホースを水中に沈め、そこから圧縮空気により泡のカーテンを水中に作る。魚は行き来できるように、わずかな間隙が設けられる。廃棄物はこのカーテンで遮られ、岸に向けて浮遊して角に自然と集まってくるので、船を出して廃棄物を回収する。パリ市によると、毎日回収する必要があるほど廃棄物が溜まるのだそうで、泡のカーテンのトラップ効果はかなり高い。この装置の初期投資は8万ユーロで、現在はランニングコスト(電力)と効果を検証して費用対効果の把握を進めている。 この装置は、ウルク運河からラビレット水盤と呼ばれる船着き場に至る直前の場所に設置された。ラビレット水盤では、2017年より夏季に水浴所が開設されており、泡のカーテンは、水際で廃棄物を食い止める役割を果たしている。効果的な設置場所を選んで設置が広がる可能性がある。KSM News and Research -
2024.09.16
五輪・パラリンピックで活躍の選手らが14日にパリでパレード
政府は14日、シャンゼリゼ大通りなどを会場に、五輪・パラリンピックで活躍した選手らを集めたパレードを開催した。7万人程度の観衆が集まる盛況だった。続いて凱旋門のあるエトワール広場で記念コンサートが開かれた。 五輪・パラリンピックの開催は、事前には懸念の声もあったものの、終わってみると国民にはかなり好評だった。大会の警備は効果的に行われ、交通などを含めて目立った混乱は生じなかった。開かれた大会というコンセプトも広く受け入れられ、大会に賭けた組織委員会と特に政府にとっては、大衆的な成功を収められたことが何よりも大きかった。14日のパレードは、そうした大衆的な支持を改めて確認する機会になった。 マクロン大統領はパレード前日の13日に、ルパリジャン紙に寄稿した文章の中で、毎年9月14日を「スポーツの日」として国民全体で祝うことを提案。スポーツ施設や学校、さらには街角で、様々なスポーツのイベントを開くお祭りにしたいと表明した。フランスでは、1982年以来、6月21日に音楽をテーマにしたイベントが全国で開かれて成功を収めており、マクロン大統領はそれに倣って「スポーツの日」の開催を提案した。大統領としては、五輪の成功を追い風にして支持の回復を図りたいところだが、大衆とは忘れっぽいものであるのも本当で、熱狂はそれほど長くは続かないのではないか。KSM News and Research -
2024.09.16
仏国鉄SNCF、高速鉄道の車内持ち込み荷物制限で罰金適用を開始
仏国鉄SNCFは16日より、高速鉄道(TGV)の車内持ち込み荷物の制限について、違反行為に対する罰金処分の適用を開始する。去る2月に定めた新規則の順守徹底を図る。 SNCFは従来、TGVの車内持ち込み荷物について、「一度に全部の荷物を自分で持ち込める」だけの量に制限するとの規則を定めていた。同社はその定義を明確化した上で、違反行為に罰金を適用することを決めた。新規則においては、1人につき、最大70cm×90cm×50cmの荷物2点とより小型(最大30cm×40cm×15cm)の荷物1点の合計3点までの持ち込みを認める。バギーやキックスケーター、サーフボード・スノーボード及び楽器については、大型荷物と同じ扱いにて持ち込みが認められる。違反行為への罰金処分については、規定外の荷物又は上限を超えた数の荷物について、1点につき50ユーロの罰金が科される。また、「邪魔な荷物又は危険な荷物」については、150ユーロの罰金が科される。 SNCFは乗車率を高めることで収入を最大化することを目指しているが、そうした努力もあって鉄道の旅客数は増加傾向を示している。それに伴い、車内の混雑も目立つようになっており、持ち込み荷物の制限導入は乗車率を高めるための工夫となりうる。KSM News and Research -
2024.09.16
ベラリア、ガラス瓶製造の100%電気炉を開所
ガラス容器製造の仏大手ベラリアはこのほど、仏シャトーベルナール市(コニャック地方)にガラス瓶製造の新鋭100%電気炉を整備した。二酸化炭素排出量の60%削減を実現する。 ベラリアは設計に2年、建設に2年を費やして新施設を整備した。総投資額は5700万ユーロで、国から800万ユーロの補助金を獲得した。日量180トン(30万本相当)のガラス瓶を製造できる。半年前に試運転を開始し、このほど正式に開所した。年間の二酸化炭素排出量は1万3000トンで、同等の規模のガス炉の3万トンと比べて、60%の削減を達成する。 同社はこのほかにも、ガスと電気のハイブリッド炉を、2025年にスペインのサラゴサに、2026年には仏サンテティエンヌ近郊に開所する計画を進めている。これらは脱炭素化に向けた全社の施設の段階的な更新のパイロット施設としての役割を果たす。完全電気炉については、これまでは小型の香水瓶などで導入例があるが、大型のガラス瓶を製造する施設としては世界でも初めてだという。熱を逃さない縦型(高さ4メートル)の設計を採用するなど、新機軸を打ち出した。フランスは脱炭素の電源(原子力)からの電力を豊富に確保できる利点があり、地元の需要家(蒸留酒コニャックの製造業者)からの支援も決め手になった。KSM News and Research -
2024.09.13
欧州中銀、利下げを決定
欧州中銀(ECB)は12日に開いた定例理事会で利下げを決めた。下限金利である預金ファシリティー金利を25ベーシスポイント引き下げ、3.5%とした。上限金利とリファイナンス金利はそれぞれ60ベーシスポイント引き下げ、3.9%と3.65%とした。ただし、最近では預金ファシリティー金利の重要性が高まっているため、リファイナンス金利などについては、引き下げの実質的な影響は差し当たりはないものとみられる。 欧州中銀は去る6月6日に利下げに転じ、それ以来でこれが2回目の利下げとなった。8月には、ユーロ圏のインフレ率は8月に2.2%まで低下し、欧州中銀が目標とする2%に近づいた。その一方で、上昇傾向を示していた賃金は、上昇率が4-6月期に4.3%まで下がった(前の期は4.8%)。インフレは全体的に抑制傾向を示してはいるが、サービス料金の上昇率が4.2%と高く、物価上昇が再燃するリスクもはらんでいる。その一方で、ユーロ圏の経済成長は減速を示しており、4-6月期の成長率は予想の0.3%より低く、0.2%にとどまった。景気刺激をにらんで再利下げに動きたいところだが、インフレ率の推移はしばらくは予断を許さない状況であり、今後の利下げのペースがどうなるかは予測が難しい。欧州中銀のラガルド総裁は、利下げの日程についての言及はせず、データを見て対応を決めるとの慎重な姿勢を維持。市場関係者のうち、次回理事会と12月の2回に渡り利下げを行うと予測する人は半数にまで減っている。KSM News and Research -
2024.09.13
ルメール経済相、政界から引退
ルメール経済相は12日、経済省に職員らを集めて退任のあいさつをした。政界から退いて教員になると伝えた。 5日に指名されたバルニエ新首相は組閣人事の協議を進めており、16日の週に新内閣の顔ぶれを発表すると予告している。閣僚の中には残留を希望する者もあるが、ルメール経済相は一足先に入閣する意志がないことを明らかにした。 ルメール経済相は55才。マクロン大統領の就任直後に発足したフィリップ内閣に経済相として迎えられ、数度の内閣改造を経てもこれまで7年余りに渡り現職にとどまってきた。これは経済相として最長在職記録となる。経済相は右派の有力政治家だったが、マクロン大統領の初当選を経てマクロン支持に転じ、これまで主要閣僚の地位にとどまってきた。次期大統領を狙う野心もあったが、ここで政界からひとまず退くことを決めた。経済相は、自分の原点を、30年前にリヨン第2大学で始めた文学の教員職だったと位置付け、今度は、経済・地政学の分野で大学教員に戻ると言明。勤務先は明らかにしていないが、スイスのローザンヌ大学が7月の時点でルメール経済相と交渉中だと認めており、スイス行きが有力視されている。 財政収支が悪化し、新政権の財政運営が危ぶまれる中での退任となる。財政難の責任を経済相一人に負わせることはできないが、どう転んでも落ち着く先がある辺りは、昔ながらのフランスを思わせる。それとも、潮目が変わったら戻ってくるつもりだろうか。KSM News and Research -
2024.09.13
ゼネラル・ミルズ、北米の乳製品製造事業を仏2社に売却
米食品大手ゼネラル・ミルズはこのほど、北米の乳製品製造事業を、ラクタリスとソディアールの仏2社に売却することを決めた。売却額は合計で21億ドル。ラクタリスが米国事業を、ソディアールがカナダ事業をそれぞれ買収する。買収は2025年中に完了する見通し。 ラクタリスは年商12億ドル相当の事業を獲得する。ラクタリスは既に、米国で11工場を展開し、4000人を雇用しているが、これに買収する2工場(1000人)が加わる。買収後でラクタリスは、ヨーグルト等の乳製品分野で、仏ダノンとチョバニに次ぐ米3位となる。 ソディアールが買収するカナダ事業は年商3億3000万ユーロ規模で、ケベック州にある1工場(従業員数300人)を買収する。 ゼネラル・ミルズが売却する事業は、ソディアールが1965年に立ち上げたヨーグルトブランド「ヨープレイ」を中核としている。ゼネラル・ミルズは1977年に米国におけるライセンス展開に着手し、2011年には、ヨープレイの権益を買収、ソディアールとの合弁(ゼネラル・ミルズが51%を保有)に切り替えていた。しかし、ゼネラル・ミルズが事業再編を進める中で、2021年にはソディアールがブランド権益を買い戻していた。今回、ゼネラル・ミルズは製造部門を分割して売却することで、乳製品事業からの撤退を完了する。KSM News and Research -
2024.09.12
バリエール、詐欺広告の件でフェイスブックに勝訴
仏カジノ経営大手のバリエール・グループは、自社を騙った詐欺広告の件でフェイスブックを相手取って起こした訴訟において、裁判所から執行命令を得たと発表した。フェイスブックが是正措置を導入しない場合、1日につき1万ユーロの制裁金を支払うようあわせて命じた。 この件では、バリエールが、自社のロゴやカジノ写真、制服姿の従業員の写真などを盗用した詐欺広告がフェイスブック上で流布されていることを問題視。これらの詐欺広告は、オンラインカジノへの誘導が目的だが、バリエールは、オンラインカジノはそもそも違法であり、それに誘導する詐欺広告をフェイスブックが放置しているのは問題だとして、対策実施を義務付けるよう求める訴訟をパリ地裁に2023年11月時点で起こしていた。去る4月には高裁判決でも是正措置導入を命じる判決が下されたが、バリエールはその遂行(フィルター導入、詐欺広告を出稿のアカウント情報の保全と提供)が不十分だとして、制裁金の規定の伴う執行命令を下すよう、裁判所に別途求めていた。その訴訟で今回、言い分が認められて有利な判決を得た。 一連の訴訟は、アイルランドにあるメタ(フェイスブック)の欧州本社を相手取って仏国内で起こされた。バリエールは別途、被疑者不特定のまま、詐称・盗用と賭博法違反の疑いでの刑事訴訟を起こしている。KSM News and Research -
2024.09.12
スプーフィング禁止、10月1日より施行に
10月1日より、「スプーフィング」と呼ばれる、固定電話の番号偽装が禁止される。通信事業者が番号偽装の通話を遮断する技術的手段を整えた。 スプーフィングは、いわゆる「銀行員詐欺」と呼ばれる犯罪において、被害者を錯誤に陥れるために多く利用されている。銀行支店などの固定電話番号を偽装表示してなりすまし、カード番号等の情報を詐取したり、オンライン決済の実行認証をさせたりするという手口。フランス中銀の付属機関の集計によると、決済手段を悪用した詐欺(2023年に被害総額12億ユーロ)の実に32%をこの種の詐欺(3億7900万ユーロ)が占めている。 禁止措置は、通称ネジュラン法(2023年施行)の下で導入された。すべての通信事業者が揃ってスプーフィング排除の技術的手段を整える必要があり、実際の導入が遅れた。パリ五輪に前後した導入だと通信障害を招くリスクがあるため、導入日が10月1日まで延期された。 SMSと携帯通話については、18ヵ月前から、番号以外の表示(「健康保険」など公的機関を騙る名称等)を行えないようになっている。それでも、メッセージの冒頭に公的機関等の名称を掲げて、個人情報の詐取を狙うSMSの大量送付は後を絶たない。当局では警戒を呼び掛けると共に、詐欺SMSについては専用番号「33.700」に通報するよう呼びかけている。KSM News and Research -
2024.09.12
欧州委、EUのエネルギー状況に関する年次報告書を発表
欧州委員会は9月11日、欧州連合(EU)のエネルギー状況に関する2024年報告書を発表し、エネルギー供給安全保障の危機的リスクを耐えて、エネルギー市場とエネルギー価格のコントロールを取り戻し、気候中立への移行を加速したと評価した。 消費者にとっては、EUレベルでのエネルギー危機対策の取り組みが奏功し、電力とガスの価格が2022年のピークと比べて大きく低下したと指摘。「EU電力市場設計(EU Electricity Market Design)」の改革のような新たなエネルギー市場規制により、低所得層の電力アクセスの保護が強化され、また、ガス価格危機が発生した場合に、加盟国が消費者保護策を導入してエネルギーと基本的な社会サービスにアクセスできるように図ることが可能になったと強調した。 報告書によると、再生可能エネルギーが大きく成長した。2024年上半期(1-6月)にEUの発電源の半分を再生可能エネルギーが占めた。特に風力発電はガス火力発電を抜いて、原子力発電に次ぐ第2の主要発電源となった。 また欧州委員会は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後に、EU加盟国に対して2023年春までにガス消費を15%削減(450億立方メートルの削減)することを要求していたが、報告書によると、目標を上回る18%の削減(530億立方メートル)が達成された。これに勢いを得て、削減目標は2024年3月まで延長され、さらに600億立方メートルが削減されたと推定される。 ガスの調達における対ロシア依存の縮小も進んだ。EUのガス輸入に占めるロシア産ガスのシェアは2021年の45%から2024年6月には18%に低下した。その一方で、ノルウェーや米国など信頼できるパートナー諸国からの輸入は増加した。KSM News and Research -
2024.09.11
フランス人の肥満・過体重が深刻化
フランス公衆衛生庁(SPF)は9月10日、フランス人の肥満と過体重に関する長期的な調査結果を発表し、肥満度(過体重度)が非常に高いので、予防策を強化する必要があると警鐘を鳴らした。この調査は1996年から2017年まで20年以上の期間にわたり肥満者・過体重者の割合を追跡調査したもので、特に男女別の推移の違いが鮮明になっている。 なお、肥満と過体重については、BMI(体格指数)に基づく国際的な基準があり、BMIが25以上を過体重、30以上を肥満としている。ただし、SPFの調査は主に対象者の自己申告に基づくもので、厳密な測定によるものではないため、自己申告バイアスが働いていることを考慮する必要がある。 男性では、過体重者(肥満者も含む)は1996年の40.2%が2017年には50.1%となった。1996年から2008年にかけては上昇が続き、2014年までは48%台で安定、その後2016年にかけて上昇したが、2017年には少し低下した(ただし上昇も低下も統計的な有意差ではない)。肥満者の割合は1996年の7.4%が2017年には12.9%となった。2016年まで継続的に上昇し、同年に14.5%に達したが、2017年には有意な低下がみられた。 女性では、過体重者(肥満者も含む)は1996年の25.3%が2017年には38.8%となった。継続的な上昇がみられた。肥満者の割合は1996年の5.7%が2017年には14.1%となった。 なお、2006年と2015年には身体測定に基づくデータが収集されており、それによると、男性の過体重率と肥満率は2006年に57.8%と16.1%、2015年には53.9%と16.8%、女性の過体重率と肥満率は2006年に41.4%と17.6%、2015年には44.2%と17.4%だった。自己申告値との差は男性よりも女性のほうが大きく、女性のほうが自分の過体重や肥満を過小評価する傾向が強いことがわかる。 この調査は対象期間が2017年までなため、2020年以後の新型コロナ危機の影響を調査することが今後の課題という。KSM News and Research -
2024.09.11
イージージェット、仏トゥールーズ空港の拠点を閉鎖へ
英格安航空イージージェットは10日、フランスの従業員代表を集めた会合を開き、トゥールーズ・ブラニャック空港の拠点を閉鎖する方針を通知した。同拠点には2機を配置しているが、これを他の拠点(仏国内にはあと6ヵ所)に移し、125人の従業員には配置転換を提案する。3月末の冬季シーズン終了と共に実施する。 イージージェットは、フランスの国内線の需要が後退していることを踏まえて今回の決定を下した。ただ、トゥールーズへの乗り入れは継続し、特に、エールフランスが撤退を決めたパリ・オルリー空港とトゥールーズの間の路線を維持する。現在はトゥールーズ空港に発着の20便程度が毎日運航されているが、拠点の閉鎖に伴い、早朝にトゥールーズを出発する便などは廃止が不可避となる。 イージージェットはこれに加えて、パリ・シャルルドゴール空港に配置の1機をパリ・オルリー空港に移すと共に、仏国内の3拠点ではCAを対象に希望退職者を募る。イージージェットは仏国内で1800人程度を雇用しており、国内便のほか欧州便を合計で250路線程度運航している。2023年の旅客数は2000万人を超えた。KSM News and Research -
2024.09.11
サノフィ、国内に新鋭工場を開所
仏製薬大手サノフィは10日、リヨン市近郊に位置するヌービルシュルソーヌ市(ローヌアルプ県)で新工場の開所式を行った。マクロン大統領も列席した。 新工場は2020年6月に着工。大統領はこの時にも式典に出席していた。新工場の面積は2万4000平方メートル、投資額は4億9000万ユーロで、国も援助を行った。新工場は新技術を導入した「未来の工場」という触れ込みで、デジタル技術を駆使し、設計と装備についてはモジュール式のコンセプトを徹底することで、最大4種のワクチン又はバイオ医薬品を同時に製造することができる。ワクチンは、生ワクチンから組換えタンパクワクチン、mRNAワクチンに至るまで各種のワクチン製造に対応でき、設計思想にコンタミネーションの徹底排除を組み入れることで、同時製造を可能にする。サノフィが力を入れる免疫治療の医薬品も同時製造できる。ワクチンの製造では、認可前から製造に着手できる機動的な体制づくりが鍵となるが、新工場では短期間で生産ラインを立ち上げ、増産を実現することも容易となる。 新工場は最大で年間にワクチン5億回分を製造する能力を有する。施設の認可手続きはこれから始まり、2025年末までの生産開始を予定する。仏政府は、国内生産の振興を目的に同工場の建設を支援した。大統領府は今回の開所について、「保健衛生の国家主権」の確保に貢献するとコメントした。KSM News and Research -
2024.09.10
五輪モニュメントの常設化を求める声
パラリンピックが8日に閉幕し、五輪に始まったパリの「祭り」は終了した。事前には何かと悪評もあった五輪誘致だが、終わってみると国民の満足度はかなり高く、五輪関連のモニュメント等の常設化を求める声も上がっている。パリ市のイダルゴ市長(社会党)は、五輪人気を自らの手柄とすることに熱心で、エッフェル塔前のイエナ橋など周辺の車両通行禁止(緊急車両とタクシー・バスの専用レーンは整備)を恒久化する方針を確認。歩行者天国化をほかの地区にも広げる考えを示している。また、エッフェル塔に設置された五輪シンボルについては、一時は恒久化を望むと発言し、その後、「4年後のロス五輪開催まで」の設置継続へと軌道を修正した。観光名所と化したチュイルリー公園に設置の気球型の聖火台については、特に保存を求める声が高い。チュイルリー公園は国有であるため、その維持の是非はパリ市の権限外になるが、パリ市では、ラビレット科学都市(19区)への移設など腹案を温めているらしい。ラデファンス(パリ副都心)に置けば、今と同じく、凱旋門と同じ軸上に並んでよろしいとする意見もある。五輪開会式でセーヌ川上を走り抜けた金属製の馬(「ゼウス」)は、パリ市役所前の広場に設置されているが、こちらも人気が高い。とはいえ、記憶が風化する中で存在感を示して生き残ってゆけるとは限らない。KSM News and Research -
2024.09.10
仏経済成長率、10-12月期にマイナス成長へ転じる見込み
INSEEは9日発表の調査の中で、2024年の経済成長率を1.1%とする予測を示した。政府公式予測である1.0%よりは高いものの、10-12月期にはマイナス成長に転じると予測した。経済成長率は、1-3月期に0.3%、4-6月期に0.2%を記録し、減速傾向を示していた。7-9月期にはパリ五輪開催の効果から、成長率が0.4%に上昇する見込みだが、この数字は、7月時点の予測だった0.5%に比べて小さい。また、10-12月期には、前の期への反動もあって、0.1%のマイナス成長に転じる見込みとなった。2025年年頭時点の経済活動の水準がそのまま1年間続いたと仮定した場合で、2025年通年の経済成長率は前年比で0.2%となる。政府は欧州委員会に提出した計画の中で、2025年に1.4%の成長率を予測していたが、その下方修正は不可避と見られている。経済省筋では1.1%という新たな予想値を取り沙汰している。2024年の経済成長を支えるのが外需で、成長率への貢献度は0.9ポイント分となる。内需は、企業設備投資が鈍い一方で、個人消費にはようやく拡大の兆しが出ている。インフレ率が年末時点で1.6%まで減速する見込みで、実質購買力が増大して個人消費を支える役割を果たすものと期待できる。他方、穀類の不作が懸念材料で、INSEEはこれが通年経済成長率を0.1ポイント押し下げる要因になると予想している。KSM News and Research -
2024.09.10
欧州連合(EU)の競争力向上を提言のドラギ報告書が提出に
欧州中銀(ECB)のドラギ前総裁は9月9日、欧州連合(EU)の競争力に関する報告書を提出した。EUの国際競争力が低下している現状を問題視し、踏み込んだ改革を提言した。欧州委員会は昨年秋に、ドラギ前総裁に報告書の作成を依頼していた。欧州委のフォンデアライエン委員長はドラギ前総裁と共に報告書の公表に立ち会った。報告書は400ページに及び、全部で170項目の提言を盛り込んでいる。報告書はまず、経済成長率の格差の拡大、世界貿易における地位の低下、不十分な投資の水準、労働力の不足など、欧州経済が抱える問題点を指摘。報告書は特に、米中との技術開発における競争を勝ち抜くために、EUにおけるイノベーションを刺激し、また様々な部門における大手企業の発足を可能にする必要があると強調している。そのために、競争法規とその適用のあり方を見直すことを提案した。具体的には、買収案件の影響を評価するに当たっては、加盟国ごとではなく、欧州全体の市場を考慮することを提案。さらに、条件付きで買収を許可しておいて、後に影響を評価し、必要なら是正を命令するという形にすることも提案した。このほか、新技術について、AI(人工知能)などを念頭に、規制が厳しすぎて、ベンチャー企業の将来的な成長の芽を摘む恐れがあると指摘し、見直しを勧告した。報告書は、欧州経済が世界における競争力の回復を図る上で、年間に7500億-8000億ユーロ以上の追加投資を実現することが必要になるとの試算も示した。これは、EUのGDPの5%程度に相当し、過去50年余りでこれだけの規模の投資が実現した例はかつてない。報告書は、デジタル移行やグリーン移行の実現をにらんで、欧州エネルギー市場の統合に向けた取り組みなどを提言。また、ファイナンスに絡んで、資本市場の統合強化にも触れ、ドラギ前総裁は特に、EUによる共同起債による資金の確保に賛意を表明した。欧州域内の防衛産業部門の振興も重要課題として挙げ、共同調達の推進や、欧州企業優先を可能にする規則の制定などを勧告した。KSM News and Research -
2024.09.10
仏の政治不安定、グリーン水素プロジェクトにも影響
9月6日付の仏レゼコー紙は、フランスにおける政局不安定がグリーン水素プロジェクトにも影響を与えていると報道した。政府は2023年、差額決済契約(CfD)入札を通じてグリーン水素プロジェクトへの支援を行うことを発表したが、以来、実施には移されていない。当初の予定では、2023年末に初の入札を行い、1年目は150MW、3年間では1GWを対象として、期間10年のCfDを付与するはずだった。加えて、やはり政府が予告した新水素戦略も今のところ発表されていない。戦略では、目標の設定やその実現に向けたロードマップが提示される予定だったが、その内容に批判も出されていた。戦略が今後発表されることはないとの観測もある。マクロン大統領は今年初頭に内閣改造を行い、ここでエネルギー移行省が廃止され、エネルギーに関する責任が、レスキュール・エネルギー担当相とルメール経済相との間に分割された。これにより強いイニシアティブが取りにくくなったことに加え、予算運営が厳しい状況にあるため政府が補助金付与に消極的であることも影響している。こうした中で、仏国内のプロジェクトに投資を予定していたグリーン水素生産事業者が、フランスでのプロジェクトを諦め、すでにCfDが導入されているオランダやスペイン、英国といった国々のプロジェクトへの投資に向かうケースが発生しているという。 なお、CRE(仏エネルギー市場規制委員会)はまもなく、国内での水素インフラ展開を支持する内容の報告書を発表する予定。仏電力大手EDFの送電子会社RTEは、最近発表した報告書の中で、水素に関し、水素貯蔵を通じた電力需給調整について、5時間超にわたる場合は、バッテリーを通じた需給調整に比べてはるかに割安であると予測した。水素プロジェクト実施の追い風となる可能性がある。一方でRTEは、水素生産コストについては、国内での生産は一部国に比べて割高であると判断、輸入のほうが有利な可能性を示唆した。ただし関係者によると、スペインとドイツの間での水素輸送網の構築により、フランスは余剰水素の販路を確保しやすくなることから、国内プロジェクトの投資回収は比較的楽であるという。KSM News and Research -
2024.09.10
アタル首相、退任前にアンティコールへ認可を付与
アタル首相は6日付の官報に、汚職追及NGOのアンティコールに対する認可を付与する省令(アレテ)を公示した。職務遂行内閣の首相として公示した最後の省令となった。首相は同日中にバルニエ新首相に引継ぎを行った。アンティコールは、認可を受けたNGOとして、自らが直接に被害を受けていない案件であっても、汚職案件に原告としてかかわる権利を確保した。同団体はこの権利により、汚職案件の捜査の進展を促す法的手段を講じることが可能になる。同団体は2002年に設立され、従来はこの権利を保有していたが、同団体の内紛を背景に、2023年6月に行政裁判所により認可取り消しの命令を受けていた。アンティコールはその後、再認可を政府に請求したが、ボルヌ前内閣はこれに応じず、アタル内閣もこれまで消極的な対応をしていた。団体側が行政訴訟を起こし、去る9月4日には、認可の諾否の回答を24時間中に示すよう求める裁判所の決定を得ていた。アタル首相は結局、無条件に認可を付与することを決め、省令を公示した。 アンティコールは現在、148件の汚職容疑の案件に原告としてかかわっている。その中には、大統領府のコレール長官の民間企業勤務時代の案件も含まれる。長官はマクロン大統領の全面的な支持を受けているが、アタル首相はマクロン大統領との間の関係が険悪になる中で政府から離れた。アンティコールへの認可の付与は首相の意趣返しであるかもしれない。KSM News and Research -
2024.09.10
バルニエ新首相、就任早々で課題多数
マクロン大統領により5日に首相に指名されたバルニエ氏は6日より、組閣を目指して協議を開始した。組閣人事においては、アタル前内閣から残留者を得て、また自らが所属する共和党を含めて、幅広い方面から人材を登用する意向を示した。対話と尊重を旨に政局運営に当たる意欲を見せている。バルニエ新首相は7日にはパリ市内のネケール病院を訪問。就任後の初訪問先として公立病院を選び、医療部門の問題を優先課題として取り組む意志を表明した。政府はその一方で、欧州委員会に対して、予算計画の提出期限(9月20日)の延期を要請したことを明らかにした。予算法案は10月1日が国会への提出期限となっているが、こちらも延期される見通し。財政状況が厳しい中で、下院で過半数を確保できないバルニエ新首相にとって、予算編成は当面の最大の課題となる。極右RNを率いるマリーヌ・ルペン下院議員は7日に開いた集会の機会に、発足するバルニエ新内閣に対して、政局運営に注文を付ける考えを打ち出し、移民政策を最優先課題に設定するよう求める考えを明らかにした。ルペン議員はまた、バルニエ内閣を監視するなどとし、場合によっては不信任案に投票することも辞さないと述べた。その一方で、左派勢力は7日に全国でマクロン政権への反対を掲げて全国でデモを行った。このデモは、高校生・大学生の2団体が8月末に予告したものだが、その後に左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が合流した。他の左派政党は合流を見合わせ、労組も別の日付でデモを予定していたため合流を見送った。パリでは警察集計で2万6000人が参加したが、大きな規模には発展しなかった。KSM News and Research -
2024.09.06
マクロン大統領、ミシェル・バルニエ氏を首相に指名
マクロン大統領は5日、首相にミシェル・バルニエ氏を指名した。同日中にアタル首相との間で引継ぎ式が行われ、数日中に組閣人事が発表される見通し。その後に国会での信任投票が行われる。バルニエ氏は73才。保守野党「共和党」に所属し、2022年の大統領選挙においては、共和党の公認候補となることを目指したが断念していた。バルニエ氏は国会議員として、また閣僚として、さらに欧州委員会の委員として、長く豊富な経験がある。英国の欧州連合(EU)離脱に当たってはEU側の交渉官を務めて、困難で長期にわたる交渉をまとめ上げた実績も有する。マクロン大統領が決めた解散総選挙を経て、下院では過半数を得る勢力がなく、首相選びは難航した。これまでに左右の両陣営から数人の候補の名前が挙がったが、いずれも国会運営を可能にする十分な基盤を確保するめどが立たず、指名が見送られてきた。50日余りを経てようやくバルニエ氏の首相指名に落ち着いた。バルニエ氏の人選は、マクロン大統領と同じ親欧州派の信念を共有していることに加えて、大統領が特に見直しに応じることを嫌がっている案件(年金改革など)で、大統領に近い立場であることが決め手になったとも考えられる。下院での信任においては、極右RNがひとまず不信任に合流しないことを約束したといい、これで指名直後に不信任となるリスクはなくなったため、首相指名が実現した。これについては、統一候補を推してきた左派連合NFPの各党が揃って反発。マクロン大統領とRNの統一候補だなどとして、首相指名に不信任案を提出することを明らかにしている。左派連合は特に、移民制限に関してバルニエ氏がこれまで掲げてきた政策に反対。また、同氏が過去に、同性愛を犯罪とする規定の削除(1982年)に反対したことを問題視している。いずれにしても、実際の国会運営に入れば波乱は必至で、バルニエ内閣は短命で終わる可能性がある。英国のEU離脱の交渉官として見せた粘り強さと妥協を探る姿勢がどの程度成果を挙げるかが注目される。バルニエ氏本人は、アタル首相との引継ぎ式の挨拶で、党派主義に陥ることなく、国民に真実を告げると言明。特に国の債務と、環境上の債務(現在の無策で次世代に払わせることになる代償)について言及した。バルニエ氏はまた、すべての政治勢力を尊重し、その意見を聞くとも約束した。各論に入る段階で妥協点を見いだせるかがカギになる。KSM News and Research -
2024.09.06
ペルノ・リカール、プロサッカーチームPSGとの提携を断念
仏酒造大手ペルノ・リカールは5日、プロサッカーチームPSG(パリ・サンジェルマン)との間で結んだ世界対象の提携契約を解消すると発表した。地元のマルセイユ市で不買運動が起こったことを踏まえて、提携を断念した。ペルノ・リカールは先の業績発表の機会に、ウイスキーとシャンパーニュの世界販売を促進する目的で、名門サッカーチームのPSGと提携契約を結んだことを発表した。しかし、ペルノ・リカールの地元であるマルセイユでは、同市を本拠とするサッカーチーム「オリンピック・マルセイユ(OM)」のファンを中心に、ライバルのPSGとの提携を裏切り行為として糾弾する声がSNS上で拡散。不買運動にまで発展するに至り、会社側も提携を断念することを決めた。社名になっている「リカール」は創業一族の名前だが、パスティスと呼ばれる蒸留酒のブランド名でもある。原料のアニスの独特の香りがあり、酒自体は透明だが、水で割ると黄色く濁るという特殊性があって、南仏を代表する酒として知られる。PSGとの提携は、パスティスではなく、世界市場に売り込めるウイスキーとシャンパーニュを対象としたものではあったが、誇り高いマルセイユ市民を逆なでする結果になった。KSM News and Research -
2024.09.06
フランス2、ニュース番組の時間延長決める
国営フランス・テレビジョンのエルノットCEOは4日、夏休み明けの新番組編成を発表した。報道を強化する方針などを打ち出した。フランス・テレビジョンは五輪効果でこのところ好調で、フランス2は視聴率(占拠率)トップに躍り出た。足元の好調が持続するかどうかは別として、例年になく明るい新番組編成の発表となった。目玉はフランス2の夜のニュース番組で、20時に始まる定時ニュースを、これまでの39分程度から、54分程度へと延長する。米国大統領選挙をはじめとして重点的な報道案件が多いこともあり、掘り下げた報道のできる体制を整える。キャスターは従来通り、ラピックスとドラウスの両氏が交代で担当する。ニュース後の天気予報とあわせて全体で1時間枠とし、プライムタイムの番組は、フランス2、フランス3、フランス5の3局とも21時5分からの開始に揃える。フランス2でニュース番組後に放送されている連続ドラマ「Un si grand soleil(こんなに大きな太陽)」はフランス3に移る。9日(月)より開始される。エルノットCEOは同じ機会に、政局空転のため宙に浮いた格好になっている公共放送部門の再編(フランス・テレビジョンとラジオ・フランスを単一持ち株会社の下に統合)計画について、改めて賛意を表明した。KSM News and Research -
2024.09.05
フィリップ元首相、大統領選挙への出馬意欲を表明
フィリップ元首相が大統領選挙への出馬意欲を確認した。2日夜に公表されたルポワン誌とのインタビューの中で語った。フィリップ元首相はルアーブル市の市長を務める。マクロン大統領が2017年に初当選直後に首相となり、2020年7月まで3年余りに渡り在職した。かつては右派の「共和党」に所属し、2017年の大統領選挙前にマクロン大統領に合流。首相職を退いたのちは、マクロン大統領との間で距離を取りつつ、新党「オリゾン(地平)」を率いてマクロン政権への協力を続けてきた。この7月の繰り上げ総選挙後は一段とマクロン大統領との距離を広げつつあった。この時期の大統領選挙の出馬表明は意外ではあるが、フィリップ元首相は、再度解散総選挙が行われる可能性や、大統領の辞任により大統領選挙が行われる可能性も視野に収めていることを認めつつ、どのような場合にも大規模な変化を提案できる準備を整えると言明。具体的には、年金改革(「より長く働く必要がある」)や財政健全化、選挙制度の改正(比例代表制の導入、公職兼務の制限の再緩和)などを挙げた。元首相の大統領選出馬意欲の表明により、政局混迷の打開に苦しむマクロン大統領への圧力は一段と厳しくなった。KSM News and Research -
2024.09.05
ダノン、一部製品からニュートリスコアを排除
仏食品大手ダノンは、一部の製品からニュートリスコア(包装前面栄養表示)を削除することを決めた。分類基準の改正に伴い、不当な扱いを受けていると判断し、削除を決めた。ニュートリスコアは2017年に導入が開始された任意制度で、栄養面から食品をA(最良)からEまでの5段階に分類し、色分けの信号機のような図案で包装上に表示する制度。ダノンは、スポーツ栄養食「Hipro」と、Danette及びDanominoの両ブランドの飲むヨーグルト、Actimel(飲むヨーグルト)について、ニュートリスコアの表示を削除した。Alpro(豆乳など代替乳製品)についても、この9月から段階的に表示を削除する。ダノンは他の製品についても表示を取りやめる可能性を否定していない。ニュートリスコアの分類を決めるアルゴリズムは1年半前に修正された。非加糖の含有糖分の扱いが厳しくなり、含有糖分が多い飲むヨーグルトのような製品のランクの低下を招いており、これにダノンなど一部のメーカーは反発している。ダノンは特に、アルゴリズム修正に先立つ協議が行われなかったことに不満を示している。NGOのフードウォッチはダノンの決定を許しがたいと非難している。KSM News and Research -
2024.09.05
中銀、経済成長率予測の上方修正を予告
フランス中銀のビルロワドガロー総裁は4日に公表されたルポワン誌とのインタビューの中で、2024年の仏経済成長率予想を上方修正すると予告した。総裁は、2つの好材料があると指摘し、従来予測の0.8%を9月中旬に上方修正すると言明した。総裁はまず、インフレ減速に伴い、購買力の増強と金利の引き下げが実現するとし、これを持続的な好材料だとした。総裁はまた、一時的な好材料として、パリ五輪の成功を挙げた。フランス政府は2024年の経済成長率の公式予測として1%という数字を採用しているが、中銀の予測は修正後でこの政府予測に近づくことになる。総裁はその一方で、総選挙の終了から50日間も次期首相が決まっていない状況を挙げ、不透明感が2つの悪影響を及ぼしているとも指摘。まず、長期金利の独仏スプレッドが、選挙前は0.5ポイントだったのが、現在では0.75ポイントまで開いていることを挙げた。総裁はもう一点、先行き懸念から企業が投資と採用を手控え、家計が貯蓄を増やして消費に消極的になるリスクを指摘した。次期政権が取り組むべき最優先課題は予算編成と財政の健全化にあることも強調した。KSM News and Research -
2024.09.04
職務執行内閣、予算運営に関する文書を送付:厳しい節減努力を次期政権に要望
職務遂行内閣は3日、国会の各政治勢力に対して予算関連の文書を送付した。予算運営が厳しい状況にあることを伝えて、次期政権に対して可能な対策を提言する狙いがある。報道によると、この文書は、現状では財政赤字の対GDP比率が2024年に5.6%まで膨張すると予想。従来の予測は5.1%だった。また、補正措置が講じられないなら、2025年にも引き続き同比率が6.2%まで膨張するとの予測を示した。同じ仮定の下で、同比率は2026年に6.7%、2027年に6.5%となり、政府が欧州委員会に対して約束した「2027年に3%以内」との目標から大幅に逸脱する。これを是正するとしたら、2027年時点で1100億ユーロの節減を実現する必要が生じる。より緩やかな節減を目指すとすると、節減規模を2025年時点で300億ユーロ、2028年時点で1000億ユーロとして、財政赤字の対GDP比は2025年に5.2%、3%以内を達成するのが2029年にずれ込む。これだと欧州委の承認を得られるか微妙になる。マクロン大統領はこれまで、増税なしという方針を掲げてきたが、大統領に近い筋も、歳出削減と増税を組み合わせて財政健全化を進める必要があると認めている。国会議員らに送付された文書は、歳出削減についていくつかの可能な方法を提示。2022年に990億ユーロに上った企業向け各種援助については、2027年までに30億ユーロの削減を実現する青写真を示した。この中には、CIR(研究税額控除)の4億5000万ユーロ削減や、バイオ燃料向け物品税優遇措置の削減(7億ユーロ)などが含まれる。このほかでは、医療機器の患者自己負担の拡大など、国民の負担増を招く措置も提案されているという。KSM News and Research -
2024.09.04
ピレネーアトランティック県の観光鉄道、地元ララン市が買収
仏南西地方のピレネーアトランティック県にある「アルトゥスト軽便鉄道」を地元のララン市(人口1200人)が買収した。1ユーロという象徴的な価格にて、SHEM(エネルギー大手エンジー子会社)から買収した。地元では鉄道を観光開発に活用する計画。アルトゥスト軽便鉄道は全長10km弱。標高2000メートルの高地を走行し、風光明媚な景色を楽しめる。今年はこれまでに11万2000人を超える観光客が利用した。もとは、アルトゥスト湖のダム建設の資材と人員を輸送する目的で1920年に建設され、1930年には撤去される予定だったが、観光利用を目的に生き残った。ダムを運営するSHEM社がこれまで所有権を維持してきたが、今回、ララン市への譲渡に応じた。なおSHEMは今後も同鉄道の利用を継続し、保線費用の折半を続ける。ララン市は2019年より、同鉄道の運営権をアルティセルビス社から買収。ちなみに、アルティセルビス社はエンジー傘下だったが、同年に投資ファンドに譲渡された。アルティセルビス社はスキー場も運営するが、ララン市のスキー場については同じ機会に同市に譲渡していた。ララン市は、温暖化にあわせて、夏季を中心にしたリゾート開発に舵を切ることを決めており、マウンテンカートの導入などに投資。アルトゥスト軽便鉄道を観光客誘致の手段として捉えて、車両などに投資し、1日当たりの輸送能力を3800人(30%強の増加)に引き上げる予定。KSM News and Research -
2024.09.04
パリ市で「雨戸論争」
パリ市で「雨戸論争」が持ち上がっている。パリ市選出の環境派のサンドリーヌ・ルソー下院議員のツイートがきっかけとなった。ルソー下院議員は、温暖化で夏季の猛暑が目立つ中で、雨戸があれば室内を暗くして温度を下げることができるのに、備えていない住宅が多いと問題視した。同議員の事大主義を揶揄する向きもあるが、パリ市内で雨戸を整備するのが困難なのは本当なのだという。フランスでは湿度が低いため、日光を遮ればかなりしのぎやすくなるのは事実で、「北風と太陽」のような寓話にそれなりの説得力を感じるのも、湿度の低さに一因があるだろう。雨戸が有効な断熱手段になりうる所以だが、パリ市内には歴史的建造物も多く、外部から見える部分に手を加えることに制約がある。文化省下の組織であるABFの建築専門家からの意見書取得が必要なのは、パリ市内の建物の97%(表面積ベース)に上り、うち4分の3では正式な許可手続きが適用される。業界関係者らは、専門家の個人的な趣味が意見書には反映され、可否を客観的に定める基準に乏しいことを問題視する声も上がっている。建物の屋根の色を白くして、吸熱効果を低める工夫にしても、景観保護の観点から許可されないケースが多いという。ABFの関係者らは、パリ市内の景観保護に貢献していると反論しているが、気候変動への対応と景観の保護との間で、難しい選択を迫られることも増えてきそうだ。KSM News and Research -
2024.09.03
パリ市、ペリフェリックの速度制限強化を予告:時速50kmに、10月中にも実施か
パリ市のイダルゴ市長(社会党)はこのほど、ペリフェリック(パリ環状自動車専用道)の速度制限を時速70kmから50kmへ引き下げる方針を再確認した。10月中に実施するとした。速度制限の引き下げの権限を巡って論争が生じている。イダルゴ市長は以前から速度制限の引き下げに意欲を示していた。市長は、ペリフェリック周辺に50万人が居住していることを挙げて、大気汚染の状況を改善するために速度制限を引き下げると説明。市長はこのほか、五輪期間を対象に導入された関係者向け優先レーンを維持し、公共交通機関とライドシェアの専用レーンとするよう、政府に対して要請したことを明らかにした。政府は速度制限の引き下げに反対している。ベルグリエト運輸担当相は、ペリフェリックを利用する車両(1日120万台程度)の8割がパリの住民のものではないことを挙げて、郊外居住者に不利益を及ぼす措置になるとして反対している。パリ警視庁のヌニェス警視総監も速度制限の引き下げに反対しており、過去の慣習から、速度制限について決定するのは警視庁の役割だと説明している。権限の所在については諸説あるが、パリ警視庁は、速度制限に伴う取り締まり状況のアップデートを行う権限があり、速度制限引き下げを反映させない形で、その施行を妨害することはできるという。KSM News and Research -
2024.09.03
フェレロ、ビーガン対応のヌテラを発売
伊フェレロ(食品)は4日より、ビーガン完全対応のヌテラ(チョコレートスプレッド)を販売する。イタリア、フランス、ベルギーの3ヵ国で「ヌテラ・プラントベースト」の品名で発売する。価格は350グラム入り瓶で4.19ユーロ。伊ロンバルディア地方のサンタンジェロ工場で製造する。フェレロは通常のヌテラと完全に同じ食感と風味を実現するため、5年間の研究開発を通じて新レシピを編み出した。牛乳の代わりに米シロップとヒヨコマメを使用し、動物由来の原材料を完全に排除した。 ヌテラはヘーゼルナッツを多く用いている点に特徴があり、フランスではチョコレートスプレッドのシェア66%を占める大手。ただ、かつては85%のシェアを握っていたが、近年では競合ブランド(伊Nocciolataのシェアは現在6%)やPB商品に市場を蚕食されている。今年の1-7月期の業界売上高は4億3400万ユーロ(前年同期比8.3%増)、数量ベースでは5%近くの増加を記録した。フェレロは「ヌテラ」名義でチョコレートスプレッドのほかビスケットなどを展開。フランスにおけるその年商は3億9000万ユーロに上る。KSM News and Research -
2024.09.03
マクロン大統領による首相指名にまた遅れ:CESEのボーデ議長が有力候補か
マクロン大統領は9月2日、首相指名に向けて一連の人物と会談した。同日中に首相指名はなされず、決定は3日以降に持ち越された。大統領は2日に、カズヌーブ元首相、ベルトラン・オードフランス地域圏議長、そして2人の大統領経験者(オランド、サルコジ)と相次いで会談した。うち、カズヌーブ元首相は社会党を離れて独自の政治運動を立ち上げた。ベルトラン氏は保守野党の共和党に所属し、過去に閣僚経験もある。前日まではカズヌーブ元首相で決まりかとの報道もあったが、特に左派陣営内で支持がなく、2日中に本命から外れた感がある。代わって名前が浮上したのが、CESE(経済・社会・環境評議会)のティエリー・ボーデ議長で、大統領周辺からは、同氏が最有力候補だとする声も聞こえている。CESEは労使や市民社会の代表、有識者などから構成される諮問機関で、「第3の議会」とも呼ばれている。ボーデ議長は、共済保険業界の出身で左派系の人材として捉えられており、マクロン大統領が国民の声を広く聴取する目的で開催した2回の全体会議(気候変動対策、次いで尊厳死問題)の運営に協力した実績もある。マクロン大統領は、政局運営の主導権を奪われることを恐れて人選に逡巡しているとされているが、非政治家による実務家内閣ならば操縦しやすいという利点がある。ただ、国会運営ができるのかは未知数で、不信任案ですぐに倒れることがない内閣を樹立する最低限の協力を議会で確保できるかどうかはわからない。KSM News and Research -
2024.09.02
人気のイチゴ品種「ガリゲット」、業界は保護に危機感
仏経済紙レゼコーは9月2日付で、フランスで人気のイチゴの品種「ガリゲット」の将来について報じた。業界による品種保全と「模造品」対策の現状を紹介した。フランスのイチゴ生産は、業界団体によると年間5万8000トンに上る。今年の生産は比較的に順調で、春季に気温が上昇しなかった分、通常より遅い時期まで出荷が続けられたという。ガリゲットは1976年に公的機関INRAにより作出された品種で、現在は国内生産の20%を占める。甘味と酸味が共に強い高級品種として人気を博し、外国産(特にスペイン産)のイチゴとの差別化を図る上で重要な役割を果たしてきたが、「特許」の保護期間が1990年代末で終了し、その後、品種の固定と維持、種苗の品質管理は業界の専門機関CTIFLが担ってきたが、公的機関であるGevesがこの件で2021年に公共サービス委託契約を打ち切ったことから、保護の手立てが途絶えたまま現在に至っているという。ガリゲット種はフランスにおける品目リストからも外されており、欧州連合(EU)の品目リストの枠内で認定を受けている状況だが、このままだと、品質の輪郭がぼやけた「模造品」が逆輸入の形で国内市場に流入するリスクもある。国内の500程度のイチゴ生産者が作る業界団体AOPnはこのため、最良の3株を選定し、ガリゲットの新標準を策定して自らその保護を引き受けることをGevesに対して提案した。年内に認証を得て品種保護の作業に着手することを望んでいる。KSM News and Research -
2024.09.02
交通事故が論争に発展
南仏アルプマリティム県バロリス市で8月30日、7才の少女がオートバイにはねられて重傷を負う事件があった。同県内では交通関連の事件が相次いでおり、論争にも発展している。バロリス市では、市内の県道で横断歩道を通行中だった7才の少女がオートバイにはねられた。オートバイは19才の少年が運転していたが、少年はレーンを逆走し、後輪走行をしていた時に事故を起こした。少女の両親は31日にSNS上で、脳死状態で回復の見込みはないと発表。次いで9月1日に少女の死亡を明らかにした。少年は免許を保有し、オートバイは自ら正規に購入、保険にも加入していた。また、アルコールや薬物は検出されなかった。当局は31日時点で、少年を重大な交通法規違反を原因とする過失傷害の容疑者と認定(予審開始通告)した上で、一連の条件を課した上で保釈した。容疑者が攻撃の対象となるリスクもあってか、詳細は公表されていない。勾留継続を裁判所が決めなかったことについては批判の声も上がっている。これより前、同じアルプマリティム県内では、検問で停車命令に従わずに逃走した自動車にはねられて憲兵隊員が死亡する事件があった。逮捕された容疑者は、カーボベルデ国籍の30代の男性で、正規滞在者だが過去に飲酒運転等で10数回の犯罪歴があった。これらの事件は、右翼の論客を多く招くことで知られるニュース専門局CNews(ビベンディ傘下)で特に熱心に取り上げられ、政府の無策や、「左翼のイデオロギー」を攻撃する材料として用いられている。KSM News and Research -
2024.09.02
8月にインフレ減速、景気の先行きには懸念も
8月30日発表のINSEE速報によると、フランスのインフレ率は8月に前年同月比で1.9%となった。前月の2.3%から鈍化し、3年ぶりに2%台を割り込んだ。昨年8月には電力料金の引き上げがあり、このため、今年の7月までは前年同月比で上昇幅が大きかったが、8月にはこの効果がなくなったため、インフレ率の鈍化が実現した。自動車燃料等の他のエネルギー製品の価格も低下傾向を示している。食料品の値上がりも、1年前には11.2%に達していたが、この8月には0.5%まで鈍化した。半面、サービス料金は全体で3.1%の上昇を記録。季節的な要因と、五輪の影響があり、宿泊・輸送を中心に料金の上昇が目立った。専門家らは、国際的な紛争の新展開やエネルギー価格の動揺がない限りは、今後数ヵ月間にインフレ率は2%前後で推移すると予想。2025年にかけてはさらに物価は沈静化が見込めるという。その一方で、INSEEはフランスの4-6月期の経済成長率(前の期比)を、速報の0.3%から0.2%へと下方修正した。内需(在庫変動除く)のGDP成長率への貢献度を0.1ポイント引き下げた。民間部門雇用数も同期に0.1%の微減を記録しており、経済と雇用の先行きが懸念材料となっている。KSM News and Research -
2024.08.30
マクロン仏大統領のセルビア訪問:ラファール戦闘機の輸出決まる
マクロン仏大統領は29日、セルビアの公式訪問を開始した。この機会に、セルビアによるラファール戦闘機(仏ダッソー社製)の12機調達が正式に発表された。この輸出契約は去る4月より交渉が進められていた。ラファール(スタンダードF4)のほかに、対空ミサイル「ミストラル」(MBDA社製)とタレス社製のレーダーが供給される。契約は総額で30億ユーロ規模といい、うちラファール戦闘機は12億ユーロ相当になる。ラファール戦闘機の外国による採用はこれで8ヵ国目となった。うち欧州は、ギリシャとクロアチアに続く3ヵ国目となる。セルビアの軍用機は旧ソ連製が主体だが、フランス政府にとっては、今も親ロシアの傾斜が根強いセルビアを欧州側の陣営に組み入れる手段になる。ただし、セルビアのマスコミは、コソボを支援するクロアチアと対等の装備を確保できると報じており、フランスはコソボを挟んで両方にラファールを供給することにもなる。 ダッソーのラファール戦闘機の受注残はこれで200機を超える。うち169機を輸出が占める。航空機部門ではサプライチェーンの混乱が全般的に続いており、ダッソーも生産ペースの確保に苦しんでいるが、足元で不振のビジネスジェットの生産を抑えて戦闘機にリソースを振り向けてしのぐ構え。KSM News and Research -
2024.08.30
テレグラムのドゥーロフCEO、フランス当局により容疑者認定
メッセージアプリ「テレグラム」のドゥーロフCEOが24日にフランスで逮捕された件で、仏司法当局は28日、ドゥーロフ氏に12件の容疑で予審開始を通告した。予審は、担当の予審判事が起訴の是非を決めるための裁判上の手続き。当局はドゥーロフ容疑者を28日に保釈したが、保釈金500万ユーロの支払いに加えて、出国禁止と、1週間に2度の出頭義務を課すなど、厳しい条件をつけた。当局が採用した一連の容疑の中には、「違法な取引を可能にするオンライン・プラットフォームの運営共犯」、「法律で許可される傍受に必要な情報の当局機関への提供の拒否」、「児童ポルノの流布、麻薬物質の取引、詐欺行為、犯罪団の活動の共犯」、「犯罪団の資金洗浄」などが含まれる。テレグラムは、エンドツーエンドの暗号化により完全な機密性を確保した通信ができるのが売り物だが、テレグラム上に設置されたグループには、テロ行為の称揚や違法な取引、詐欺などに使われているものも多く、モデレーターの機能もほとんど設けられていないことが問題視されていた。ドゥーロフCEOはロシア人だが、2021年にはフランス国籍も取得。通常はアラブ首長国連邦ドバイに居住し、同国の国籍も保有している。極端な自由主義を掲げて、一時はロシア当局と険悪な関係になり、15年前にロシアを離れたが、現在もロシアのパスポートを保有しているといい、近年ではロシア政府との関係も改善したとみられている。ドゥーロフCEOは弁護士を通じて、違法行為とは一切かかわりを持っておらず、無実だとするコメントを発表。ドゥーロフ氏を支持する勢力は、逮捕劇は政治的な陰謀であり、自由の侵害だとの主張を展開しているが、マクロン仏大統領は26日にコメントを発表し、完全に独立した司法当局が進めている捜査によるものであり、政治的な背景は一切ないと説明している。KSM News and Research -
2024.08.30
フランスの移民、人口の10.7%に
8月29日発表のINSEE調査によると、フランス国内の移民数は2023年に730万人となった。うち34%はフランスに帰化した外国人となっている。この調査における移民とは、外国で外国人として生まれた人のうちフランスに居住する人を指し、国籍取得者も移民に含まれる。全人口に占める移民の割合は10.7%となり、この割合は1968年の6.5%から上昇している。移民が占める割合は2000年頃から増大に向かったが、移民の増加は世界的な現象でもあり、また、フランスにおいては、出生数の減少と死亡者の増加(団塊の世代の高齢化が主因)に伴い、移民の比重が拡大したという事情もある。出身別では、アフリカが居住する移民の48%を占めて多く、欧州は32%、アジアは14%、米州・オセアニアは6%だった。アフリカのうち6割は北アフリカ諸国の出身だが、この割合は1968年には9割に上っていた。その一方で、ブラックアフリカ諸国の出身者は2006年以降で2倍増を記録している。労働力人口に属する年齢の人を対象にしたアンケート調査では、「能力以下の職に就いている(又は最後の職が能力以下の職だった)」と答えた人の割合が、アフリカ出身者で32%と高いことが判明。この割合は、非移民では24%、移民全体では29%だったが、アジア出身者の場合は26%と低めになっている。KSM News and Research -
2024.08.29
エールフランスKLM、スカンジナビア航空の19.9%株式を取得
エールフランスKLMは28日、スカンジナビア航空(SAS)の19.9%株式の取得を正式に決めた。米国および欧州連合(EU)の競争当局から許可を取得した。1億4450万ドルで株式を取得する。エールフランスKLMにとっては、2003年の発足(エールフランスによるKLMの買収)以来で最大の買収案件となった。スミスCEOの就任以来でも最大規模となる。欧州大手のルフトハンザ・グループとIAG(ブリティッシュ・エアウェイズ、イベリア)を追う形で、欧州の業界再編の動きに加わる。エールフランスKLMは、これを機会に株主協定を結び、2年後にSASの経営権を取得するオプションも得た。オプション行使に当たってはEUから許可を得ることが条件になる。なお、SASの資本は、デンマーク政府が25.8%を保有し、あとは投資ファンド2社(Castlelake、Lind Invest)が保有している。エールフランスKLMとSASは9月1日付で広範な業務提携の遂行に着手。共同運航を開始し、それぞれのマイレージ制度の相互承認を開始する。また、SASは、ルフトハンザとユナイテッド航空が主導するスターアライアンスを脱退し、エールフランス及びデルタ航空を主軸とするスカイチームに合流する。KSM News and Research -
2024.08.29
仏家計景況感、8月に改善
28日発表のINSEE統計によると、家計景況感指数は8月に92ポイントとなり、前月から1ポイント上昇した。前月(1ポイント上昇)に続いて2ヵ月連続で上昇し、ロシアのウクライナ侵攻開始以来では最高の水準に達した。ただ、長期の平均である100をかなり下回っており、直近の最高値である2021年6月の105と比べて大きな隔たりがある。8月には、開催中だったパリ五輪の浮揚効果が出た可能性もある。ただし、自身の経済状況に関する見方を示す指数は、現況判断(前月のマイナス22がマイナス23へ)と先行判断(前月のマイナス10がマイナス9へ)のいずれもほぼ前月並みで改善していない。貯蓄意欲を示す指数は前月の35から37へ上昇、消費意欲を示す指数もマイナス32からマイナス31へ上昇しているが、貯蓄意欲の方が勝っており、先行きの見通しは依然として慎重であることがうかがわれる。他方、国民全般の生活水準については、現況判断がマイナス72からマイナス68へ、先行判断がマイナス50からマイナス45へと目立って改善している。物価の先行き上昇懸念が薄れたことが背景にあると考えられる。KSM News and Research -
2024.08.29
フランスの中学校で携帯電話持ち込み禁止を試験導入
ベルべ教育相は8月28日、全国の中学校200校で、9月から携帯電話の持ち込み禁止を試験導入すると発表した。生徒は教室へ入る前に、所定の棚にスマートフォンをしまうよう求められる。同相はこの措置を2025年から全面導入する可能性も示唆した。去る5月に、マクロン大統領の要請で作成された、子どものスクリーン曝露に関する専門家委員会の報告書が公表された。報告書では、11歳未満のスマートフォン使用と15歳未満のSNS利用の禁止が進言されており、大統領はこの実施を政府に求めていた。スマホ専用棚の設置には費用の面から消極的な自治体もある。また保護者からは政府の「統合失調症的」政策に疑問も呈されている。教育省はスマートフォンを専用棚に取り上げる一方で、タブレットを配布してデジタル環境で宿題を出し、デジタル教科書での勉強を強制している。現場の証言によると、教員たちは、明確な理由付けのないまま、デジタル教材を授業に組み込むよう指示を受けているという。 なおフランスでは、公式には2018年以降、中学校での携帯電話使用が禁止されている。KSM News and Research -
2024.08.28
介護者手当の支給条件、2025年年頭より緩和へ
介護者手当(AJPA)の支給条件が2025年年頭より緩和される。複数の人を介護する場合に支給期間の上限が引き上げられる。7月5日に施行令が公示された。現行制度においては、近親者を介護する就業者で、介護休暇を取得した人は、被介護者1人につき66日間を上限に、介護手当の支給を受けられる。この上限は変更されないが、別の近親者を介護する場合には、さらに66日間の支給期間が認められる。4人までこの追加の支給期間が認められる。介護者手当の金額は、2022年より法定最低賃金(SMIC)並みに引き上げられた。これは2024年には1日につき64.54ユーロに相当する。1ヵ月につき22日間が上限で、支給額は月額で1419.88ユーロとなる。制度改正により、過去に受給実績がある人が新たに別の被介護者の世話をする場合、2025年1月1日より、再び手当を受給できるようになる。近親者を介護する人の70%は労働力人口に属するとされ、この割合は年々増加する傾向にある。介護休暇(2017年に導入)と介護者手当(2020年末に導入)は認知度が低く、利用が進んでいないという問題点も指摘されている。KSM News and Research -
2024.08.28
雹害対策でヨウ化銀散布、カルパントラ地方のぶどう農家が取り組み
カルパントラ地方のワイン用ぶどう栽培農家は以前から、雹害を軽減するためのヨウ化銀散布の取り組みを進めている。カルパントラ地方はローヌ川の東側に位置する。ヨウ化銀は雲に到達して雪の核になるため、降雨を引き起こすための手段として、一部の諸国で用いられている。カルパントラ地方では、巨大な雹が降り、作物や施設に大きな被害を及ぼすのを避ける目的で、このヨウ化銀散布が導入されている。ヨウ化銀の粒を雹の核として雲に注入することで、雹を形成する核の数が増え、1個当たりの雹のサイズが小さくなる(雲に含まれる水蒸気の量は一定であるため、核の数が多ければそれだけサイズは小さくなる)という趣旨で、カルパントラを含む南東地方では185基の発生器が農家に設置されている。地元のカルパントラ自治体連合は年間2万ユーロを負担してこの取り組みを助成している。効果に関する検証は困難だが、ぶどう農家のジャンクロード・ミコル氏は、50-60%程度の有効性があると話している。なお、国内で発生したぶどう農家の雹害では、2014年6月に発生したものが特に大きく、その被害額(支払い保険金ベース)は8億5000万ユーロに上った。KSM News and Research -
2024.08.28
パラリンピック開幕:パリ・メトロの完全バリアフリー化も計画
パリ・パラリンピックが28日に開幕する。9月8日(日)まで12日間に渡り開催される。イルドフランス(パリ首都圏)のペクレス議長は記者会見を開き、公共交通機関の対応について説明した。期間中には1日30万人の移動がある見込みで、これは五輪期間中の50万人に比べると少ない。ただ、帰省客がパリに戻り、9月2日には学校も再開されるため、旅客輸送の需要はその分大きくなる。ちなみに、通常の期間中の旅客輸送需要は1日500万人で、夏季の350万人(五輪観客除く)よりも多い。パリの公共交通機関は五輪時と同じ強化体制で臨む予定。当局は、パリ・メトロ9号線(ローランギャロス競技場向け)、13号線(スタットドフランス向け)、RER(郊外連絡急行)のA線(ベールシュルマルヌ方面)について、観客の利用が増えるためできる限り乗車を見合わせて代替ルートを利用するよう勧告。RER C線(ベルサイユ方面)で30%、RER D線(スタッドドフランス方面)で30%などの増便も予定する。ペクレス議長は、パラリンピックにちなんで、パリ・メトロの完全バリアフリー化についても言及。現在整備が進んでいるグランパリ・エクスプレス(メトロ15号線以降)はネイティブでバリアフリーが実現するが、建設が古い既存の路線について、20年をかけて段階的に完全バリアフリー化を進めるとした。費用は150億-200億ユーロがかかるが、国と地域圏、パリ市がそれぞれ投資資金の捻出で協力することを約束したという。地上部分が多く、対応が容易な6号線でまず着手する予定といい、その費用は6億ユーロから8億ユーロ程度に上るとした。KSM News and Research -
2024.08.27
二日酔い予防サプリ、専門家らは効果を疑問視
二日酔い予防効果があると評判の発泡サプリ「Hydratis」がよく売れている。医師など医療専門家はその使用に注意を促している。Hydratisは同名の仏ベンチャー企業が製造・販売する発泡剤サプリで、様々な味のものがあり、水に溶かして飲む。薬局で販売されており、水分補給を助けるという触れ込みだが、インフルエンサーなどが二日酔いの予防に効くなどと宣伝していることもあってよく売れている。同社の共同創設者テオ・ウード氏は、今年は400%の販売増を達成していると話している。ただ、医療関係者の評判はよくない。クレルモンフェラン大学病院のスポーツ医学科のデュクロ科長は、コーラを飲むよりはよいだろうが、と前置きした上で、塩分と糖分が多すぎ、また人工甘味料が含まれている点を問題視。ミネラル分についても、バランスある食生活をしていれば必要がないと指摘している。依存症対策NGO「アディクション・フランス」のバセ会長は、ありもしない二日酔い予防効果に惑わされて、飲酒量が増える結果を招くなら問題だとしている。Hydratis社の側では、自社製品が、水を飲むよりは水分補給効果が高いのは立証されていると主張しているが、適切に水分を補給し、バランスのよい食生活をしている人は摂取するべきではないとも認めている。二日酔い予防効果については、そのような使い方がなされているのは事実だが、積極的に宣伝をしているわけではないと釈明している。KSM News and Research -
2024.08.27
マクロン大統領、左派連合カステ首相候補の指名を拒否
マクロン大統領は26日午後、首相指名に向けて同日までに行った協議の結果を総括し、左派連合NFPが擁立したカステ候補の指名を見送ると発表した。大統領府が声明文を発表した。再度協議を27日より開始すると予告した。大統領が決めた解散総選挙の結果、過半数を獲得する政治勢力はなく、そのため内閣の成立が遅れている。合計で最大勢力となった左派連合NFPはカステ候補を立ててその指名を迫ったが、マクロン大統領は、全政治勢力からの意見聴取の結果、カステ候補を首相に指名したとしても、ただちに不信任案が可決されるのは不可避であることが判明したとして、国家制度の安定性を維持するために、指名を見送ると発表した。大統領はその上で、打開策を探るために、27日から非政治家も交えた協議を再開すると予告した。官僚などを首相に起用して実務家主軸の内閣を発足させる考えともみられるが、協議に招く人物らの名前を含めて、詳細は明らかにされていない。マクロン大統領は引き続き、左派連合NFPから左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を引き離し、連合の他党(社会党、環境派EELV、共産党)を引き入れて、右派の「共和党」までに至る幅広い勢力から何らかの形で協力を取り付けることを望んでいるとみられるが、それがうまくゆく保証はない。左派連合の側では、カステ候補の指名見送りを民主主義の理念に反する決定だなどとして反発し、抗議行動などを開始する考えを示している。KSM News and Research -
2024.08.27
アイスランド:トイレ新法令が施行、中性トイレの導入も
場合により「中性トイレ」の設置を義務付ける法令がアイスランドで施行された。男女別のトイレを維持する場合に設置が義務付けられる。この法令は、トイレの表示において、性別ではなく、設備を明示することを求める内容。大便器、小便器、おむつ替え・授乳室といった、提供される設備とその用途を図で示すことを求めるのが主眼で、従来のように、男性と女性のデザイン画を表示する場合に限り、中性の人向けの第3の場所を整備する必要が生じる。登録と許可を必要とするあらゆる事業を営む施設と企業に法令が適用され、公衆衛生当局が実施状況を監督する責務を負う。当局の関係者は、新たな法令により、大がかりな設備投資が必要なケースは稀であり、基本的に、表示を取り換えるだけで既存の設備をそのまま維持できると説明している。新たな義務は、新規の許認可の付与時や、既存の許認可の更新時に適合が求められる。定期検査を受ける施設では次回検査時より適用される。KSM News and Research -
2024.08.26
今夏にEV充電器の利用頻度が上昇
フランスでは今夏の休暇期にEV 充電器の利用が目に見えて活発化した。EVは航続距離や充電設備の不足に不安があるとされ、長距離走行が必要なことが多い休暇旅行での使用を躊躇う向きも強かったが、航続距離の改善や充電設備の整備の進展により、こうした不安が解消されつつあることがうかがわれる。エコロジー移行省と電動モビリティ推進団体Avereの調査によると、今年に入ってから高速道路などの幹線道路と都市周辺を中心に、1万4000基超の超急速充電器(150kW以上)が新規設置され、充電器の利用促進に貢献している。充電器を運営する事業者はいずれも今夏に充電回数と充電電力量が急増したことを明らかにしている。トタルエネルジー(仏エネルギー大手)は幹線道路沿いの高圧充電器設置数を過去1年間に2倍に増やしており、この7月には充電回数が前年同月比で127%増加したとしている。また8月1-18日にも充電回数は前年同期比で倍増し、充電電力量は110%の増加を記録した。これは1回当たりの充電電力量も増えたことを意味している。利用者がより大型のバッテリーを搭載したEVを運転しているか、より長距離の走行に備えているなどの可能性が推定される。Ionity(ドイツに本社があるEV充電事業者)も今夏の一連の週末に、南北を結ぶ高速道路(A6、A7、A9)などを中心に、充電回数が前年同期比で70%増えたとしている。充電器網が拡大し、利用頻度が高まったことは、EVの普及には朗報だが、料金が割高なことや不透明なことが問題点として指摘されている。Avereによると、今年1-6月期の超急速充電器の平均利用料金(40kWhの充電量、サービス料金込)は21.35ユーロだったという。またこの半年間に1kWh 当たりの平均料金は6.77%の上昇を記録した。ただし、事業者によっては、充電量だけでなく、利用時間(分単位)に応じた課金も適用しているケースがあり、その場合は、40kWhの充電料金は26.4ユーロに上る。逆に、サブスクなどを利用する定期的利用者であれば、17ユーロですむという。ただし、サブスク利用者向けの料金も、充電器と運営事業者およびサブスク事業者などにより大きく異なる(最大で2倍の差)。競争当局は6月、料金体系を充電量に応じた従量課金に統一し、充電時間に応じた課金を撤廃することや、充電スタンドや高速道路の入口で料金表を明示すると共に、充電スタンド毎の料金をオンラインで表示し、それをリアルタイムで更新することにより、消費者が費用を比較できるようにすることなどを、事業者に対して勧告した。KSM News and Research -
2024.08.26
マクロン仏大統領、首相指名に向けて全政治勢力の代表との協議を開始
マクロン大統領は23日、議会の全政治勢力の代表との協議を開始した。首相指名に向けて協議した。大統領は大統領府に各勢力の代表らを個別に招いて協議。同日には、左派連合NFPのカステ首相候補と連合に加わる各党代表が揃って大統領と会談した。このほか、連立与党の代表として、アタル首相、フィリップ元首相、バイルー氏らがそれぞれ個別に会談した。大統領はまた、保守野党「共和党」を率いるボキエ下院議員らとも会談した。極右RNの代表(バルデラ党首、マリーヌ・ルペン下院議員団団長、RNと協力するシオティ下院議員)とは26日に会談する。首相指名の日程は明らかにされていないが、27日(火)か28日(水)にも指名がなされるとの観測が浮上している。協議において、共和党のボキエ下院議員らは、左派連合NFPの主軸である左翼政党「不服従のフランス(LFI)」に所属する者が入閣するなら信任しないとの見解を表明。同様の立場表明は連立与党内にもみられる。これと関連して、LFIを率いるメランション氏は24日、開催中の党の夏季集会の会場から民放TF1とのインタビューに応じ、「LFI所属の者が入閣しないなら、カステ内閣を信任するのか」と問いかけ、NFPが提示した政策が遂行されるなら、LFI所属者の入閣断念に応じる考えを示した。マクロン大統領がどのような反応を見せるかが注目される。KSM News and Research -
2024.08.26
ユダヤ教寺院を狙った放火事件、容疑者が逮捕に
南仏エロー県のラグランドモット市で24日朝、ユダヤ教寺院を狙った放火事件が発生した。警察はテロ事件として捜査を開始。実行犯容疑者を同日夜に逮捕した。ラグランドモット市は地中海沿いのリゾート地で、夏季には観光客でにぎわっている。事件は市内のユダヤ教寺院で朝の8時過ぎに発生。寺院建物と寺院前に放火がなされ、停車中の自動車2台にも燃え広がった。うち1台にはガスボンベが車中にあり、それが爆発して、現場に急行していた警官1人が負傷した。それ以外の負傷者は出なかったが、土曜日はユダヤ教の安息日に当たり、9時からは礼拝が行われることになっていたため、大きな被害が出る可能性もあった。監視カメラの映像から、パレスチナの旗を身にまとった男性が、可燃物入りとみられるボトルを両手に持って付近を歩いていたことが判明。警察はテロ事件として捜査を開始した。同日午後には、アタル首相とダルマナン内相が現地を訪問して憂慮の念を表明。ユダヤ人を狙った犯罪に厳正に対処する姿勢を確認した。警察は24日夜に容疑者を逮捕。南仏ニーム市(ガール県)内のピスバン地区内の自宅で容疑者を逮捕した。団地の最上階に住む容疑者を、特殊部隊が介入して物々しい雰囲気の中で逮捕した。逮捕時に容疑者は銃を発砲したため、警官隊は応戦して発砲し、負傷した容疑者を逮捕した。逮捕された容疑者は33才のアルジェリア人で、10年近く前からフランスに正規滞在していた。容疑者と共に3人が逮捕され、当局は事件への関与の度合いを調べている。なお、ニーム市ピスバン地区は麻薬取引の横行で事件が多く発生しており、数日前にも、新設の派出所の脇で爆発事件があったばかりだった。KSM News and Research -
2024.08.23
「月額100ユーロのEVリース」、利用者のプロフィールが明らかに
電気自動車(EV)の普及支援を目的に、仏政府が今年のはじめに導入した「月額100ユーロのEVリース」制度の利用者に関する統計調査の結果を、同制度の運営を担当するエネルギー気候総局(DGEC)が公表した。利用者のプロフィールが平均的な新車購入者と異なることが明らかになった。同制度は、マクロン大統領の2022年の選挙公約に基づいて2023年秋に予告され、2024年1月1日に所得水準で下位50%の世帯(世帯成員1人当たりの年間所得が1万5400ユーロ以下)を対象として導入された。頭金を国が負担し、利用者は月々の支払のみを負担するだけでEVをリース利用できる。なお、所得以外に、自動車通勤の距離が15km以上であるか、仕事のために年間8000km以上を走行することが同制度を利用する条件として要求される。予想以上の反響があり、申し込みが殺到したせいで、予算超過を避けるために、3月はじめに受付が締め切られた。利用者数は5万人で、EVの引き渡しは9月末まで続く見通し。今回の調査対象は最初に引き渡しを受けた2万5000人のみだが、そのプロフィールを知るには十分という。それによると、利用者の61%弱は年間所得(世帯成員1人当たり)が1万200-1万5400ユーロ、残りの40%弱は1万200ユーロ未満。普通なら(EVよりも安いエンジン車でも)新車を購入する資金力のない所得層であることが確認された。また利用者が若いのが特徴で、36才未満が30%を占めた(18-25才が6.5%、26-35才が23.8%)。41.5%が36-45才で、利用者の平均年齢は40才程度。これは2023年にEV乗用車新車を購入した人の平均年齢を9才下回っている(EVに限らず乗用車新車を購入した人の平均年齢より14才若い)。制度が好評だったので、政府は2025年に再開すると予告していたが、財政が逼迫していることや、解散総選挙後の政局混迷により、実行されるかどうかは不確かになっている。KSM News and Research -
2024.08.23
住居の55%が夏季の室温の過剰な上昇に直面
困窮者救済に取り組むアベピエール財団は22日、夏季に過度に暑くなる住宅の問題に対処するよう訴える報告書を公表した。気候変動に伴い猛暑の強度と頻度が高まる中で、国内の住宅が対応できていないと指摘した。財団の調査によると、2023年に24時間以上の住宅内の高温に苦しめられたと回答した人は、全体の55%に上った。過度に室温が高くなる住宅に住む人は、2013年から2020年にかけて26%の増加を記録したという。特に都市部の住民で被害が大きく、例えば、パリ首都圏においては、31%の住民がヒートアイランド現象の生じる地区内に居住している。市街地では住宅が狭いことも、室温上昇に拍車をかける要因になる。パリは欧州の都市の中でも熱波による死亡率が高いという。フランス全体では、2023年に高温による死亡者数が5000人を数えたとされる。アベピエール財団は、エアコンの普及が広がっている(エアコンのある本宅の数は2020年までの7年間に75%増)ことについて、排熱で気温上昇が加速するというデメリットがあり、包括的な対策を進めずにエアコンに頼るのには問題があると指摘。具体的には、断熱効率が悪く、冬季の暖房需要が大きい住宅の改善のみに力点を置いている現行の気候変動対策について、断熱性のみ高めると夏季の室温上昇をさらに加速する結果になりかねないとし、換気システムの整備などを組み合わせた包括的なリフォームを推進するよう、当局に対して勧告した。KSM News and Research -
2024.08.23
RATP(パリ交通公団)で車検不正疑惑、会社側は否定
ルパリジャン紙は22日付で、RATP(パリ交通公団)の車検不正の疑惑について報じた。RATPの複数の職員の証言としてこの疑惑を報じた。これによると、RATPはバス運転手らに対して、車両の定期検査の直前に、ダッシュボードにパソコンを接続させて、リスクを知らせる車載データを全消去させた上で、車両を車検に回していたという。これが本当なら、一時的に不都合なデータを消して、車検業者を騙して検査合格を得ていたことになる。ルパリジャン紙によると、車検不合格で車両を使えない時間が長くなった場合、バスの運行に支障が出ることから、それを回避するため、会社側が職員に対して不正行為を指示していたのだという。同紙に証言した職員らは、職を失うのが恐くて不正と知りながら応じたと述べており、同紙は、車検を通った直後に事故が発生してしまったとする証言も掲載している。RATPはこの報道について、専ら事故を起こした2人の運転手の証言に基づいたものであり、いずれも事故の責任が運転手の側にあったことが判明している事案だと説明し、係争関係にある運転手の証言は信ぴょう性に欠けると反論。組織ぐるみの不正はないとの見解を明らかにした。他方、イルドフランス地域圏(パリ首都圏)のぺクレス議長はRATPに対して、この報道に関して説明を要求。RATPのカステックスCEO(元首相)は調査を行い結果を報告すると約束した。KSM News and Research -
2024.08.22
中国政府、EU産乳製品を対象に不当な国家補助の調査を開始
中国政府は21日、欧州連合(EU)の乳製品を対象に、不当な国家補助の疑いで調査を開始すると発表した。1年期限で調査し、場合により調査期間を6ヵ月延長するとした。EU加盟国による20件程度の国家補助のスキームが調査の対象になるとされ、中国政府は、オーストリア、ベルギー、クロアチア、チェコ、フィンランド、イタリア、アイルランド、ルーマニアの名前を挙げているが、仏業界団体はフランスも対象になると発表している。フレッシュチーズ、ブルーチーズ、一部の牛乳及びクリーム、サワーミルクが調査の対象となる。欧州連合(EU)から中国への乳製品の輸出は2023年に43億ユーロに上り、EUは対中国の乳製品輸出ではニュージーランドに次ぐ第2位だった。乳幼児向けミルクが特に多いが、これは調査の対象外となっており、調査対象の製品は2023年の輸出実績で17億ユーロ相当だと欧州委員会では試算している。前日の20日には、欧州委が中国製EVを対象とする追加関税の税率に関する最終案を公表したばかりであり、中国政府がこれに対抗する形でEU産乳製品の調査を開始したのは疑いを得ない。中国とEUの間では通商摩擦の事案が数多く発生している。KSM News and Research -
2024.08.22
新たな首相候補として社会党のブアムラン氏に脚光:サントゥアン市市長
政局混迷が続く中で、毎日のように新たな首相候補が取り沙汰される状況が続いているが、そうした中で、パリ北郊サントゥアン市のカリム・ブアムラン市長(51)の名前が首相候補として浮上している。次期大統領の呼び声さえ聞こえるという。ブアムラン氏はモロッコ系移民の2世で、移民も多いセーヌ・サンドニ県サントゥアン市で2020年に市長となった。共産党で政治活動をはじめ、現在は社会党に所属する。サントゥアン市はパリ五輪の主要施設を受け入れており、また、次回の五輪開催のロサンゼルス市とサントゥアン市が姉妹都市である関係もあって、米ニューヨークタイムズ紙がインタビューを掲載。これが脚光を浴びるきっかけになった。政界では、オランド元大統領の顧問を務めたガンツェール氏や、中道系で閣僚などを歴任したボルロー氏などが、ブアムラン氏を次期大統領候補として持ち上げているという。ブアムラン氏は社会党所属ではあるが、問題地区を掲げるパリ北郊の自治体を治める「共和国派」として、治安強化や権威の回復などを重視する姿勢を示し、また、足元の政局混迷においては、国民本位で政局空転に終止符を打つための妥協の道を選ぶよう呼びかけている。これが大統領府の目にとまる可能性があるという。また、サイバーセキュリティの専門企業を経営し、シリコンバレーでの経験もあり、この辺りはマクロン時代以降でアピールポイントになりうる。KSM News and Research -
2024.08.22
ガラス容器のデポジット制度、2025年より一部地域で試験導入へ
フランスで2025年よりガラス容器のデポジット制度が導入される。導入主体のCITEOが骨子を明らかにした。CITEOは非営利団体で、製造者が汚染者負担の義務を遂行するために設立するエコオルガニスムと呼ばれる組織の一つ。デポジット制度では、リユースを前提に容器が回収されるが、CITEOは自ら、デポジット制の対象となるガラス容器の製造を手配し、これを食品等のメーカーに譲渡して制度を立ち上げる。製造は2024年10月に開始し、2025年3月からは専門店における容器回収に着手する。同年5月には量販店にも回収網を広げる計画。まず広口の1リットル瓶(果汁、スープ等)から始めて、その後に750mlの色付き瓶(ビールなど向け)、野菜・コンポートなど向けの広口瓶などに対象を広げる。将来的には10%のシェア確保を目指す。北西の4地域圏(オードフランス、ペイドラロワール、ブルターニュ、ノルマンディ)で試験的に導入され、その後に全国への適用拡大を目指す。デポジット料はまだ決まっていないが、1点につき20-30ユーロセント程度になる見込み。価格上昇の効果を吸収する目的で、初回デポジット料を「貸与」するなどの便宜を図ることも検討する。CITEOでは、リユースにより容器の価格そのものは通常の容器よりも低下が見込めるとも説明している。CITEOによると、ガラス容器のリユースにより、エネルギー消費は75%、水の消費は50%、温室効果ガスの発生量は79%、それぞれ削減を見込めるという。KSM News and Research -
2024.08.21
アタル首相、2025年予算法案の歳出上限を通知
2025年予算法案の準備で、アタル首相は20日、各省庁に予算枠の上限を通知した。全体として前年並みの支出に抑制する内容になったという。解散総選挙後の政局混迷で、次期内閣の発足のめどがまだ立たない中だが、予算法案は憲法上の規定により10月初頭までに国会に提出する必要がある。アタル首相は、今回の通知について、次期内閣が遅滞なく予算法案の編成を終えることができるように、必要な準備を進めることが目的だと説明している。全体として、2024年予算法と同じ4920億ユーロを歳出総額に設定したとされるが、これは、インフレを考慮すると、100億ユーロ程度の実質削減に相当するといい、現状維持の外観とは裏腹に、次期内閣に厳しい努力を求める内容となっている。省庁別の上限は公表されていないが、中期国防計画法の定める支出項目には手をつけず、また、文化、スポーツなど一部の省庁では増額又は現状維持が認められる。半面、労働省の予算には6億ユーロ程度の節減が求められるという。政府は2025年に財政赤字総額の対GDP比を5.1%まで圧縮するとの目標を立てていたが、政府筋ではこの目標に言及するのを控えている。財政赤字総額に含まれる社会保障会計等の収支改善の展望が厳しいこともあって、財政健全化の道筋を確保するのは一段と難しくなっている。KSM News and Research -
2024.08.21
ドービルのサラブレッド競売、今年も5000万ユーロ超え
仏ドービル市で開かれる毎年恒例のサラブレッド競売が、今年は8月16日から18日まで開催された。落札額の総額は5690万ユーロに上り、過去最高となった前年から10.9%の減少を記録したものの、3年連続で5000万ユーロの大台を大きく超えた。この競売はオークションハウスのアルカナが主催し、1歳馬が出品される。292頭が出品され、226頭が落札された。落札馬が占める割合は77%と、全般的な経済情勢が厳しい中でも良好な数字を維持できた。平均落札額は21万7058ユーロで、20万ユーロの大台を大きく超え、これも3年連続となった。落札額が100万ユーロ超えは4頭で、最高額は170万ユーロに達した。バイヤーは日米を中心に、欧州全域、中東、オーストラリアなど様々で、落札額上位11頭(60万ユーロ超)は、8ヵ国からの11のバイヤーによる落札と、多様性が目立った。最大のバイヤーは、カタール資本のアルシャカブレーシング社で、全10頭を合計310万ユーロで落札した。出品者としては、地元カルバドス県のモンソー厩舎が31頭・1280万ユーロで最大だった。KSM News and Research -
2024.08.21
牡蠣殻から舗装材など製造のAlegina、工場建設に着手
バンデ県のAlegina社は、牡蠣の殻を原料とする先進素材の量産を計画している。2026年末に1万平方メートルの工場を開所する方針で、これに1200万ユーロを投資する(うち500万ユーロを装備に充当)。Aleginaは2018年に、地元の産品である牡蠣の殻を有効利用する技術開発を目的として設立された。「Kaomer」のブランド名でのテーブルウェア(陶器)の原料を得たり、ジュエリーの原料とすることから初めて、断熱性の高い屋根材の製造や、透水性の高い舗装材の製造へと進んだ。現在では2021年に製造を開始した舗装材(ブランド名「Vivaway」)が主力となっており、新工場ではその増産を図る。この舗装材には、牡蠣由来の原料を30%の割合で配合している。透水性が高く、雨水がそのまま土壌に吸収され、排水の仕組みを整える必要がなくなる。白色を基調とした舗装材で、屋根材と同様に太陽光を反射し、熱の吸収が少ないため、ヒートアイランド現象の対策ともなる。新工場では、年間4万トンの牡蠣殻原料を処理できる(現在は1000トン)。2017年に操業を停止した鋳造所の跡地(3.2ヘクタール)を利用する。牡蠣殻の回収ルートの強化も課題で、現在は個人を対象とする回収の試験的な取り組みも進めている。KSM News and Research -
2024.08.20
仏競争当局、ブイグ・テレコムによるラポスト・テレコムの買収を許可
仏競争当局は8月19日、仏ラポスト(郵便)のMVNO(仮想移動体通信事業者)子会社ラポスト・テレコムのブイグ・テレコムによる買収計画を許可した。買収は関連市場の競争に悪影響を及ぼすリスクがないと判断し、無条件で許可した。ラポスト・テレコムはラポストとキャリア2位のSFRが2011年に設立し、ラポストが51%、SFRが49%を保有。SFRのネットーワークを利用して、「ラポスト・モバイル」のブランド名でサービスを提供しており、キャリア4社に次ぐ携帯事業者となっている。キャリア3位のブイグ・テレコムが2月に9億5000万ユーロでの完全買収を提案してラポストと独占交渉に入り、7月12日に競争当局に買収計画を届け出ていた。競争当局はラポスト・テレコムの市場シェアが限定的であることを理由に、ブイグ・テレコムによる買収が競争の構造に及ぼす変化は限定的と判断。ラポストは全国の郵便局網を通じて「ラポスト・モバイル」のサービスを販売しており、ブイグ・テレコムは買収によって、この広範な販売網も取得することになるが、これについても競争当局は、モバイル通信市場においてはオンライン販売や電話による販売が発達しており、郵便局網を通じた販売の重要度を相対化して考える必要があると判断した。ブイグ・テレコムは今後、SFRの同意も得る必要がある。SFRは2026年末までネットワークをラポスト・テレコムに提供する契約を結んでいる。7月末の報道によると、SFRはラポスト・テレコムの売却には消極的であり、また売却収入の分配をめぐってラポストと意見が対立しているという。ラポスト・テレコムの顧客数は230万人で、買収が成就すれば、ブイグ・テレコムの 顧客数は現在の1770万人から2000万人前後に増える見通し。KSM News and Research -
2024.08.20
新内閣の発足遅れ、予算法案の編成はどうなる?
新内閣の発足の遅れに伴い、予算法の成立の展望に懸念が生じている。予算法は、政府が毎年の策定と成立の義務を負う唯一の法律であり、憲法上の規定により、10月の最初の火曜日までに国会に提出することが義務付けられている。今年は10月1日が期限となる。予算法案は閣議決定に先立ち、諮問機関HCFPの意見書を得て、さらに、行政最高裁(コンセイユデタ)による法案事前審査を受けなければならない。このため、9月の早い時期に準備を終えることが必要になる。アタル職務執行内閣は、予算上限を各省庁に通知するなどして、予算法案の準備作業を進めているが、節減の規模などを巡り、閣僚の間で見解に相違があるとも伝えられている。財政赤字総額の対GDP比を2027年までに3%以内に圧縮することを欧州委員会に約束している手前、堅実な予算法案を策定することが課題となるが、準備される法案は、次期内閣により、また国会審議を通じて大きく修正される可能性があり、予算運営の行方は判然としない。政府はまた、2024年予算法の枠内で100億ユーロ相当の追加凍結を決め、凍結規模は累積で165億ユーロに達したが、この取り扱いも次期内閣の決定次第となる。KSM News and Research -
2024.08.20
パリ五輪で消費財の販売大幅増
ニールセンIQ調査によると、パリ五輪の期間中に、量販店における消費財の販売は、パリにおいて数量ベースで11%の大幅増を記録した。金額ベースでも7.9%の増加を記録した。12年前のロンドン五輪時には、この増加率は、数量ベースで5.3%、金額ベースで0.4%にとどまっており、パリ五輪では大きな消費刺激の効果が得られた。開会式を除いては好天に恵まれ、それまでインフレ高進を背景に抑え込まれていた消費熱が解放されたものと考えられる。製品別では、ボトルウォーター(非スパークリング)が最も多く売れ、これに、炭酸飲料、非アルコール飲料、アイスクリームが続いた。好天を背景に、ビール、サラダ用野菜、ヨーグルトや、ピクニック需要を反映した製品の売れ行きも良好だった。ブランド別では、クリスタリン(ボトルウォーター)が59%増で伸び率トップ、コカ・コーラ(29%増)やエビアン(48%増)も大きく伸びた。ソデボ(サンドウィッチ、サラダなど)やマグナム(アイスクリーム、ユニリーバ傘下)も販売増が目立った。なお、販売増の効果は、パリの11%に対して、近隣地区では8.3%と小さくなり、全国では4.3%増に落ち着いた。KSM News and Research -
2024.08.19
RSA改革、2025年年頭より全国で導入へ
生活保護手当の一種であるRSAの支給条件の改正が、2025年年頭より全国で施行される。一部地区で行われている試験導入の結果は良好であるという。RSAは元来、受給者への就業奨励を建前とする給付だったが、受給から抜け出せなくなる人が多いことが問題視されていた。マクロン政権は、完全雇用の実現という政策目標に沿った一連の措置の一つとして、RSAの支給条件を厳しくする改正を計画。政局混迷に伴い、今後に発足する内閣がどのような決定を下すかはわからなくなっているが、変更がなければ2025年年頭より全国的に施行されることになっている。新制度においては、社会給付の窓口や失業保険管理機関、職業安定機関などの関連部署のすべてが就業支援の目標に向けて協力し、受給者に対しては、それぞれの需要や必要を見極めつつ、週15時間以上の活動(トレーニングなど含む)を義務付ける契約を結ばせることになる。2023年3月に17地区を対象に始まった試験導入においては、合計で4万人余りが対象になった。うち3分の2は高卒未満であるなど、就業が困難な状況にあったが、開始から6ヵ月後の時点で、42%が何らかの就業体験を持ち、また、恒常的な職(無期雇用契約又は6ヵ月を超える有期雇用契約)を得た人の割合も16%に上ったという。ただ、全国適用に伴い必要になる職員増強などの展望は、今後の予算法案の策定に委ねられる。KSM News and Research -
2024.08.19
マクロン大統領、首相指名に向けて協議を開始へ
大統領府は16日、マクロン大統領が議会の全勢力との協議を23日より開始すると予告した。協議は26日まで続けられ、その結果を踏まえて首相の指名がなされるという。正確な日程は示されておらず、首相指名にはさらに時間がかかる可能性もある。マクロン大統領は現在、南仏ブリガンソン要塞で夏季休暇を過ごしているが、15日と17日には、第2次世界大戦関連の記念式典を南仏で挙行した。17日の式典では、先に閉幕した五輪も念頭に置きつつ、国民に団結を促す言葉を演説の中で口にしたが、この言葉は、過半数を確保できる勢力が見当たらない中で、従来の垣根を超えた協力関係の確立を通じた政局運営の実現を呼びかけたものとも考えられる。とはいえ、下院において多数派を擁立する展望はみえない。マクロン大統領の狙いは、従来の与党勢力に加えて、右は共和党、左は社会党、また中道野党の院内会派LIOTから、内閣不信任案には協力しないという言質を取り付けて、政局運営を可能にすることにあるともみられるが、それがうまくゆく保証はない。その一方で、左派連合の主軸である「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏は18日付のラトリビューン日曜版に寄稿し、左派連合の首相候補カステ氏の指名を大統領が拒むなら、大統領弾劾の手続きを開始すると予告。2007年の改憲により追加された大統領弾劾の手続き(上下両院の3分の2を超える賛成など必要)が成功する可能性はごく低いが、メランション氏らはこの可能性を口にすることで、大統領に退陣を迫るという選択肢も含めて、圧力を強めることを狙っていると考えられる。KSM News and Research -
2024.08.19
エムポックス流行、フランスでも「最大限の警戒態勢」に
アフリカ大陸でエムポックスの感染が拡大している件で、毒性と感染力が高い1b株の感染が欧州で初めて確認された。スウェーデンで検出された。アタル首相はこれを受けて16日に、国内で最大限の警戒態勢に移行すると発表した。エムポックスはサル痘とも呼ばれるウイルス感染症で、天然痘に似た発疹が発生することで知られる。体液を通じた感染(性感染など)が主で、新型コロナウイルスに比べると感染力は低いが、1b株では子どもの場合で死亡率が10%に達するとの報告もあり、この変異株においては危険度が高まっている。アフリカ大陸では今年に入り1万9000人の感染が報告されており、既に前年通年を上回っている。欧州やアジアでの感染確認を受けて、世界保健機関(WHO)も14日時点で国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言した。アタル首相は、感染拡大の展望を踏まえて、国内でも警戒態勢を導入すると説明。渡航勧告や予防接種勧告を順次見直すと予告し、また、備蓄ワクチンを感染国に贈与し、世界的な感染拡大の抑止に協力すると説明した。国内では、医療関係者を通じて疑い例の把握を徹底し、確認の場合の濃厚接触者の特定などに当たる。対応については感染状況を見て随時見直す。フランスでは2022年以来、エムポックスへの対応準備が整っているといい、感染者には3週間の自主隔離などが勧告されるが、強制力は今のところない。ワクチンの備蓄は十分にあるとされ、米欧で認可を受けた唯一のワクチンを製造するデンマークのBavarian Nordic社も、50万回分の備蓄があり、2025年までに1000万回分の製造が可能だと発表している。医療関係者らは、仏国内で全国民を対象にしたワクチン接種をする必要はないと話している。KSM News and Research -
2024.08.08
五輪のパリ脱出の人々、今になって後悔
日刊紙ルフィガロは、五輪期間中にパリを離れた人々が臍を嚙んでいると報じた。厄介事に巻き込まれるのを避けるため休暇旅行に出たが、思いのほか盛り上がっているので悔しい思いをしているのだという。パリ五輪においては、特に開会式の前後に立ち入り制限地区の設置がなされ、交通規制も多く敷かれた。このため、移動が困難になって通勤に支障が出るなど、不都合が多いとみて、期間中をあえて選んで休暇に出る人も多かった。ただ、蓋を開けてみると、観光客は意外に少なく、道路や公共交通機関もむしろ空いている。パリ市内は祝祭の雰囲気に包まれて、人々は何やら一体感を味わっているようで、少なくとも遠くから見ている限りではいい感じにみえる。高みの見物で「パリにいるやつざまぁ」を気取るつもりだった人は悔しい思いをしているらしい。「友達がみんな誕生日に呼ばれているのに、一人だけ寝ているみたいだ。『僕はあそこにいたんだ』と言えないのが悔しい」(27才のアダムさん)。故郷のリール市に逃れたポールさん(33)は、「みんながいうんだ。『いいところを見逃したぜ』って」と悔しがる。幸いにリール市ではハンドボールの準々決勝と準決勝が行われるので、入場券を買って観戦にゆくことにした。少しでも五輪の雰囲気を味わって、「僕はそこにいた」と言いたいらしい。そういう人は最初からパリに残らないとだな。KSM News and Research -
2024.08.08
仏貿易赤字、1-6月期にわずかに改善
7日発表の税関統計によると、仏貿易赤字は1-6月期に397億ユーロとなり、前の期の452億ユーロと比べて改善した。ただ、赤字額は4-6月期だけで214億ユーロとなり、1-3月期に比べて増大した。足元の悪化は、エネルギー価格の推移によるところが大きいという。6月までの12ヵ月間の貿易赤字は849億ユーロとなり、2023年通年の1000億ユーロと比べて改善した。貿易赤字は2022年には過去最大の1640億ユーロまで拡大したが、それ以降は少しずつ改善が進んでいる。1-6月期のエネルギー製品の貿易収支は310億ユーロの赤字となり、前の期(320億ユーロ)とほとんど変わらない水準で推移した。足元の4-6月期は天然ガスの備蓄構築の時期に当たり、輸入が膨らんだという事情も手伝っている。エネルギー製品と防衛機器を除いた貿易赤字は1-6月期に195億ユーロとなり、前の期の253億ユーロから大きく改善した。新型コロナウイルス危機以前の水準まで戻したという。航空機・宇宙機の貿易収支は140億ユーロの黒字となり、貿易収支の改善に貢献している。化粧品・香水の貿易黒字も10%増の90億ユーロ弱に達した。KSM News and Research -
2024.08.08
中国製BEV、西欧市場で意外に苦戦
独Schmidt Automotive Research(自動車市場調査)によると、2024年1-6月期に、西欧18ヵ国のBEV新車市場において、中国製BEVのシェアは10.3%にとどまり、予想されたような中国車の大量流入は起きていない。なお、調査対象の西欧18ヵ国には、2004年の拡大以前の欧州連合(EU)加盟国とノルウェー、スイス、アイスランド、英国が含まれる。また、BEVに限らず、すべての動力源を合わせた西欧18ヵ国の乗用車新車市場において中国車の割合は、1-6月期に3.1%(4-6月期には3.4%)で、日本車の13.4%や韓国車の7.9%を大きく下回った。中国のBEVブランドのうちでは、2007年に英MGを買収したSAIC(上海汽車)が突出しており、西欧18ヵ国のBEV新車市場で1-6月期に4.7%のシェアを確保した。Geely(吉利汽車)が3.1%で続いた。中国最大手のBYD(比亜迪)は西欧市場進出から1年以上を経たが、苦戦しており、シェアは1.7%に過ぎない。中国勢の進出が予想ほど進まないのは、BEV輸送船の不足、西欧市場でのBEV販売の不振、フランスでのBEV購入補助金からの中国車外しなどにも原因がある。さらに7月からは欧州連合(EU)による中国製BEVに対する追加関税も加わり、中国製BEVにはますます逆風が吹いている。こうした状況で中国メーカーは欧州に工場を設置して現地生産を強化するなどの対応策を講じているが、これが効果を発揮するには時間がかかる。中国製BEVの強みは価格の安さだが、西欧のメーカーも今後に手頃な価格のBEVを続々と投入する見通しであり、競争は激化する。Schmidt Automotive Researchは中国製BEVの市場シェアは2027年まで12%程度にとどまると予測している。KSM News and Research -
2024.08.07
向精神薬の服用、若い世代で大きく増加
向精神薬を服用する人が増えている。若い世代で特に増加が目立つ。健保公庫の集計によると、12-25才の層では、2023年に93万6000人が向精神薬を服用した。この数は2019年と比べて18%増えており、その直後に発生したコロナ危機が若年層の精神衛生を損なう要因になったことがわかる。種類別では、抗うつ薬の消費が60%の大幅増を記録。統合失調症及び双極性障害の治療薬でも35%の増加を記録した。消費量の大幅な増加は、特に2021年(12%増)に目立ったが、2023年にも引き続き5%増を記録している。性別でみると、12-25才の層で向精神薬を服用した人のうち62%は女性であり、特に、緊急外来に精神障害で来院する女子が大幅に増えているという。抗不安薬の女子への投与は8%増と特に多い。女子の場合は性的暴行に対する恐怖が原因の一つになっている。その一方で、低い年齢層から向精神薬の服用が定着することの危険性を指摘する向きもある。KSM News and Research -
2024.08.07
民間部門雇用数、4-6月期に減少
6日発表のINSEE速報によると、民間部門の雇用数は4-6月期に2115万人となり、前の期比で7900人減少した。前の期には6万1000人の増加(率にして0.3%増)を記録していたが、4-6月期にはわずかながら減少に転じた。ただし、前年同期と比べると、民間部門雇用数は7万8000人の増加(0.4%増)を記録。また、新型コロナウイルス危機直前の2019年末と比べても6.1%の増加(120万人増)を記録しており、増加傾向は持続している。ただその勢いが鈍化している恐れがある。1-3月期には、公共部門も含めると雇用数は前の期比で7万5000人の増加を記録していた。民間部門では、有期雇用契約(CDD)の増加が目立ち、また、分野別では、宿泊・飲食と企業向けサービスで主に増加を記録していた。五輪を前にして若年層を中心に採用が増えた可能性があり、4-6月期にはその反動が出たとの見方もある。また、4-6月期には、建設業で6300人の雇用減を記録し、前の期の9000人減の後で後退が続いた。雇用創出の原動力となっているサービス業でも、純増数は6300人と、前の期の5万700人から後退した。派遣雇用は2万人減を記録しており、これは雇用情勢が悪化する先ぶれである可能性もある。KSM News and Research -
2024.08.07
PFASの飲料水汚染問題:リヨン地裁が原因調査の独立専門家の選任決める
ローヌ川流域のPFASによる飲料水汚染問題で、リヨン地裁は2日、リヨン都市圏などの訴えを認める形で、汚染原因の調査に当たる3人の独立専門家グループの設置を命じた。急速審理の形で命じた。リヨン都市圏には、化学大手アルケマとダイキンが入居するピエールベニト工業地区がある。同工業地区よりもローヌ川の下流に位置するテルネー取水所では、PFASのうち2026年に規制が導入される3種について、予定される規制値を最大で2倍上回る汚染が確認されており、リヨン地裁は今回、両社の施設を対象にして、その排出物(処理水及び気体)とPFAS汚染の間の関係を探る調査を実施させることを決めた。2025年末日を期限として調査が行われる。この決定は、リヨン都市圏と、リヨン都市圏の水道事業を担当する公社・三セクが共同で起こした訴えを受けて下された。原告側は、責任の所在を明確にした上で、「汚染者負担の原則」に基づいて、浄水事業におけるPFAS除去の費用を汚染者と認定された企業に負担させることを望んでいる。PFAS除去には600万ユーロを設備に投資する必要があり、また、年間50万ユーロの運営費が発生するものとみられている。KSM News and Research -
2024.08.06
ベルジェ男女平等担当相、共和党との連携を呼びかけ
保守系日刊紙ルフィガロは6日付で、ベルジェ男女平等担当相のインタビューを掲載した。同相はこの中で、保守野党の共和党から首相を迎えて次期内閣を編成する構想を明らかにした。同相は、新たな連立与党を実現するのではなしに、不信任案で覆されるのを回避可能な安定した政権を樹立する目的で、これまでにない協力の仕方を模索すべきだと言明。購買力の増強や、地方分権、市民に近い公共サービスの実現、秩序の回復、政教分離など、国民が重視する優先課題のために協力する新たな連携作りを探ることに意欲を見せ、治安問題を含めて、従来の連立与党と共和党の間で接点を見出すことは可能だとの見方を示した。首相の人選では、選挙で敗れた従来の連立与党から選出するのはおかしいと認め、共和党からの起用が妥当とした。ダルマナン内相は、オードフランス地域圏のベルトラン議長の名前を挙げているが、ベルジェ氏は、ベルトラン、バルニエ(外相など歴任)、ラルシェ(上院議長)の3氏の名前を出して、いずれの人物にも閣僚経験があり、適切な人材だとする見方を示した。ベルジェ氏はまた、社民勢力の合流にも期待を示したが、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を離れることが条件だとの考えを示唆した。KSM News and Research -
2024.08.06
ロレアル、ガルデルマと資本・業務提携
仏化粧品大手ロレアルはこのほど、スイスのガルデルマ(皮膚科化粧品等)との資本・業務提携を明らかにした。10%株式を取得し、研究開発で協力する。ロレアルは10%株式をガルデルマの主要株主らから買収する。アラブ首長国アブダビの政府系ファンドAdiaや、スウェーデンのEQTが率いるコンソーシアム「サンシャイン・スイスコ」などから取得する。買収額は明らかにされていないが、ガルデルマの時価総額(2024年3月以来チューリッヒ株式市場の上場企業)が7月2日の終値で173億ユーロであったことを考えると、17億ユーロはくだらないものと考えられる。ガルデルマは、2023年に41億ユーロの売上高を達成(為替調整後で8.5%の増収)。今年に入り、1-6月期の増収率は10.8%とさらに加速した。皮膚科化粧品に加えて、美容用注射剤(ボツリヌス毒素製剤など)にも注力しており、世界販売の半分をそれにより達成している。仏イプセン(製薬)が開発した製剤をライセンス販売していたが、自前での開発にも成功し、来年にはRelfydessの商品名で欧州にて発売する予定となっている。その一方で、イプセンとは契約内容を巡り係争になっている。ロレアルは、ガルデルマの主要株主のサンシャイン・スイスコと株主協定を結び、経営には関与しない形で出資する。その一方で、共同の研究事業を進めることでも合意した。対象については明らかにしていないが、ロレアルは、ガルデルマの美容用注射剤を特に有望する旨を表明しており、この分野が対象になることが考えられる。KSM News and Research -
2024.08.06
TikTok、欧州委と和解:「TikTok Lite Rewards」の導入を最終的に放棄
欧州委員会がデジタルサービス法(DSA)違反の疑いでTikTokを対象とする調査を開始した件で、TikTokは問題となっていた「TikTok Lite Rewards」のサービス展開を欧州連合(EU)全域において最終的に放棄することを約束した。欧州委とTikTokの間で和解が成立した。8月5日に欧州委が発表した。「TikTok Lite Rewards」は、TikTok上での閲覧時間の実績に応じて報酬が与えられるプログラムで、スペインとフランスで去る3月末に開始されていた。欧州委はこのプログラムについて、青少年を中心とするユーザーを依存状態に陥れるリスクがあると指摘し、デジタルサービス法(DSA)違反の疑いで4月22日に正式調査を開始していた。TikTokはこれを受けて、同24日の時点で、60日間の期限で同プログラムの提供を中断する自主的措置を実施。これと並行して欧州委との間で協議を続けていた。TikTokは今回、「TikTok Lite Rewards」のEUにおける導入を恒久的に断念することを約束。また、同様のプログラムを将来的に開始しないことも約束した。欧州委はこの約束を認めて、調査の打ち切りを決めたが、今後は継続的に約束の履行状況を監視すると説明した。違反が確認された場合には、最大で世界年商の6%に上る罰金処分を決めることができる。KSM News and Research -
2024.08.05
仏Culturespaces、東京に進出予定
ライティングによる没入型イベントを「アトリエデリュミエール」などの名義で運営する仏民間企業Culturespaces(キュルチューレスパス)が内外で展開を広げている。同社はブリュノ・モニエ氏が設立。現在は350人を雇用し、年商は7500万ユーロに上る。年間に400万人の入場者数を達成している。一連の展開により、2025年には8500万ユーロ・500万人の達成を目指す。フランス国内では、パリ、レボードプロバンス、ボルドーに、外国ではニューヨークや韓国の2ヵ所などに常設施設を置いている。公共サービスの運営受託方式(ボルドーなど)と直営方式(パリなど)などの方式を採用。独ハンブルクでは10月17日に2000平方メートル・2フロアの常設施設を直営方式でオープンする予定。1000万ユーロを投資し、年間60万人の入場者数の達成を目指す。ちなみに、パリでは95万人、ボルドーとレボードプロバンスでは各80万人を達成している。東京では、某テレビ局との提携により、2026年に常設施設をオープンする予定だが、こちらはフランチャイズ方式で展開する。同社は、ゴッホの没入型ライティングのコンテンツを開発(開発費は約50万ユーロ)して名声を得た。この10月には、仏人気漫画アステリックスと「星の王子さま」の興行をそれぞれパリとボルドーで開始する。これらコンテンツについては世界対象の独占権も設定した。評判になったクリムトのコンテンツは巡回展として興行しており、これまでに7ヵ所で行ったが、近くブラジルのサンパウロでも開催する予定。KSM News and Research -
2024.08.05
仏政府、コカインそっくりのスニッフィーの販売を禁止
政府はこのほど、スニッフィー(Sniffy)と呼ばれる鼻吸引による強壮剤の販売を禁止した。関連省令を7月末に官報上で公示した。スニッフィーには各種のフレーバーがあり、主にインターネット上で販売されているが、最近ではたばこ販売店での取り扱いも広がっていた。合法的な成分しか含まれていないが、若い世代に鼻吸引というコカイン摂取と同じ方法を普及させて、依存的な行動を定着させる恐れがあるとして、専門家らがその危険性を指摘していた。ボートラン保健相は去る6月3日の時点で、禁止措置の施行の許可を欧州委員会に請求すると予告。その許可が得られたのを受けて、禁止省令を公示した。省令は、肉体の活性化の効果、特に、神経系に働きかける有効成分を含む粉末製品と、鼻吸引により消費される製品、又は、麻薬物質と紛らわしい製品を対象に、その販売を1年期限で停止させるという内容。スニッフィーの主成分は、Lアルギニン、クレアチニン、Lシトルリン、タウリン、マルトデキストリンなどで、いずれも禁止物質ではないが、コカインとの消費形態上の類似点が問題視されている。なお、フランスではコカインの陳腐化が目立っており、消費した経験がある人の割合は、成人層で9.4%に上っている。KSM News and Research -
2024.08.05
仏政府、企業の実質的支配者リストへのアクセスを制限
仏政府は7月31日付で、企業の実質的支配者リストへのアクセス制限を導入した。個人については、請求を経て案件ごとの開示を認めるという形に改められた。 企業の実質的支配者リストは、フランスでは2021年4月に開示が始まった。ただ、2022年11月に、欧州司法裁判所がこの開示を欧州連合(EU)の基本法に抵触するとの判例を下して以来、全面開示の維持が難しくなっていた。仏政府は、アクセスを一時的に制限した後に、判例を折り込んだ法令をEUが確定するのを待って、全面開示を復活させていたが、関連EU法令が公示されたのを受けて、それに即してアクセス制限を導入した。 企業の実質的支配者リストは、脱税や法令違反等の監視の手段とする目的で導入されたもので、自己申告の文書の内容がこれまでは無制限でだれでも閲覧できた。今後は、当局機関と金融機関について無制限でのアクセスを認め、また、調査報道ジャーナリスト、研究者、市民団体等、さらに、顧客情報を把握する義務を負う企業についても、包括的にリストにアクセスする権利を認める。一般市民については、INPI(産業財産庁)が管理するシステムを通じて案件ごとに請求し、情報開示を得る格好になる。KSM News and Research -
2024.08.02
フランスの出生数、1-6月期も減少
INSEEの8月1日発表によると、フランスの出生数は2024年1-6月期に32万6131人となり、前年同期比で8140人減少した。減少率は2.4%(2024年が閏年であることを考慮すると3%)。出生数は2023年に前年比6.6%減の67万7891人に落ち込み、第二次世界大戦以来で初めて70万人を割り込んだ。これに比べると1-6月期の減少幅は縮小したが、出生数は2011年以来、新型コロナ危機下のロックダウン後にわずかに上昇した2021年を除いて減少を続けている。他の先進諸国に比べると高めであるとはいえ、合計特殊出生率も全ての年齢層で低下しており、2023年は1.68となった。フランスはこれまで、子どもを持たない女性の数が他と比べて少なく、3人以上の子どもを産む女性も多かったのが、第一子を産む年齢も上がってきており、他国に倣う傾向にあるという。シンクタンクのTDTEが実施したシミュレーションによると、フランスの合計特殊出生率が現在のイタリアと同水準の1.3に低下した場合、2040年のGDPは、合計特殊出生率を1.8として算出されたINSEEの予測を750億ユーロ、3ポイント下回ることが予想される。こうした出生率の低下に歯止めをかけるべく、マクロン大統領は年頭に、不妊対策の強化と両親共に享受できる誕生休暇の導入を予告した。誕生休暇は、収入保障が低すぎて利用実績が伸びない現行の両親休暇に代わるものとして2025年中の導入に向けて協議が進められていたが、6月末の解散総選挙によって中断された。公共政策が少子化対策に有効か否かは議論が分かれるところだが、国立人口研究所(INED)の研究者は、「公共政策は子どもを持ちたいカップルが望みを実現するのを助けることはできるが、子どもを持ちたいと思わせるのはずっと難しい」と指摘する。KSM News and Research -
2024.08.02
仏大手銀行の4-6月期業績:国内リテールで苦戦
仏大手銀行の4-6月期業績が出揃った。いずれも国内リテール銀行業の苦戦が続く展開となった。最大手BNPパリバは、経常収益が前年同期比8.0%増の122億7000万ユーロ、純利益が同20.8%増の33億9500万ユーロとなった。クレディアグリコル・グループは、経常収益が同0.4%減の95億700万ユーロ、純利益が同18.3%減の20億2800万ユーロだった。ソシエテジェネラルは経常収益が同6.3%増の66億8500万ユーロ、純利益が同23.7%増の11億1300万ユーロだった。BPCE銀行は、経常収益が同2.9%増の56億2600万ユーロ、純利益が同17.2%減の8億600万ユーロだった。リテールを主力とするクレディアグリコルとBPCEで減収減益となった。BNPパリバとソシエテジェネラルは他の事業が補填する形で増収増益を確保したが、国内リテール業の回復の遅れは両行でも目立つ。特に、ソシエテジェネラルは、リテール部門融資の金利純収入見込みの下方修正が響いて、業績発表当日の1日に9%近くの株安を喫した。各行とも、足元の政局混迷に伴う先行き不透明感などを材料に、家計が消費ローンや住宅ローンなどの融資需要を絞り込んでいることの影響を受けている。不良債権に係る引当金の増額も業績を悪化させる要因になっている。KSM News and Research -
2024.08.02
サノフィ、インスリン製造工場を独フランクフルトに整備へ
仏製薬大手サノフィは1日、各種インスリンの製造工場の立地選定で、ドイツのフランクフルト市に決定したことを明らかにした。既存工場を後継する新鋭工場を2029年までに開所する計画。投資額は13億ユーロに上る。このプロジェクトの誘致はフランス側も名乗りを上げていたが、ドイツがより手厚い支援を約束して誘致に成功したものとみられる。報道によれば、フランス政府は、このプロジェクトに4億ユーロの補助金を約束していた。ドイツ連邦政府と地元のヘッセン州およびフランクフルト都市圏はさらに多額の補助金を提示した模様だが、最終決定は欧州連合(EU)からの国家補助への許可取得が条件になるという。サノフィのフランクフルト工場は1923年の開所で、4000人が勤務している。新工場は3万6000平方メートル程度に上り、Lantusから次世代基礎インスリン製剤Toujeoまでの20種程度のインスリン製剤を製造する。80ヵ国に向けて出荷する。ドイツはこのところ製薬工場の誘致に相次いで成功している。米イーライリリーは、肥満症治療薬として注目されるマンジャロの製造拠点をドイツに置くことを決定(投資額23億ユーロ)。第一三共も10億ユーロ規模の投資計画を去る2月に発表している。KSM News and Research -
2024.08.01
仏インフレ率、7月に2.3%
7月31日発表のINSEE速報によると、フランスの消費者物価は7月に前年同月比で2.3%上昇した。前月は2.2%で、インフレ率は7月に0.1ポイントの上昇を記録した。フランスでは、7月1日付でガス規制料金が12%余り引き上げられ、これを含めてエネルギー価格が全体で8.7%の上昇を記録し、物価を押し上げた。ガス規制料金の引き上げはインフレ率全体を0.15ポイント程度押し上げる効果をもたらしたものとみられている。それ以外の項目は落ち着いた推移を示しており、食料品の価格上昇率は0.5%まで減速(前月は0.8%)、このところ上昇が目立っているサービス料金も、上昇率が2.5%まで落ち着いた(前月は2.9%)。工業製品価格は横ばいとなった。欧州連合(EU)基準のインフレ率は、7月に2.6%となり、前月をやはり0.1ポイント上回った。ユーロ圏全体のインフレ率も、フランスと同じ2.6%で、前月を0.1ポイント上回ったところも同じとなっている。ユーロ圏全体でも、エネルギー価格の上昇が物価を押し上げる要因となっており、全般的には原油価格がユーロ安も手伝って上昇したのが響いている。INSEEは仏インフレ率が年末には2%台を割り込むと予想。通年平均インフレ率は2.2%まで下がり、前年の4.9%を大きく下回る見込み。足元では、インフレ率が下がりつつあるのに個人消費は振るわず、6月にも0.5%減を記録している。インフレ減速に伴い個人消費がどの程度回復するかが、今後の景気を左右する重要な要因になる。 KSM News and Research -
2024.08.01
会計検査院、大統領府の支出膨張を問題視
会計検査院は7月29日、大統領府の2023年収支に関する報告書を公表した。前例のない830万ユーロの赤字を記録したと指摘。支出の膨張を問題視した。報告によると、2023年の大統領府費用は1億2500万ユーロに上った。赤字額は準備金の取り崩しにより補填されたが、会計検査院は、このような状況は長続きしないとし、収支均衡を達成するため踏み込んだ節減努力が必要だと指摘。支出膨張の理由の一部は外的要因によるものではあるが、内的要因による支出の拡大もみられるとし、管理を強めるよう求めた。会計検査院は特に、催事と訪問の費用の膨張を問題視。2023年の関連予算は当初予算の45%増という修正がなされ、3100万ユーロというかさ上げ後の予算はほぼ全額が支出されたと指摘。インドのモディ首相の歓迎晩餐会(41万2000ユーロ)と英国チャールズ国王の歓迎晩餐会(47万5000ユーロ)の例を挙げて、会食者の数と一人当たりの費用のいずれもが大きく増えたと説明した。大統領府の厨房の改装工事もあって、大統領官邸外での大型催事が増え、外部の業者への委託で費用が大きくかさんでいるという事情があることも指摘した。また、大統領の外国訪問の費用も、2023年に1724万ユーロと、前年(1205万ユーロ)から大きく増え、コロナ危機直前の2019年(844万ユーロ)に比べると実に2倍強に増えていると強調。もちろんインフレ高進がその一因ではあるが、それだけでなく、随行する公式及び非公式の人員が大きく増えるなど、支出を押し上げる一連の構造的な要因があると指摘した。 KSM News and Research -
2024.08.01
仏政府、失業保険現行制度を10月末日まで延長
アタル職務執行内閣は7月31日付の官報上に、失業保険の現行制度の適用を10月末日まで延長する内容の政令を公示した。失業保険制度の改正に関する取扱いを次期政権に委ねるため、延長期間を長くした。失業保険制度の改正案は政府が準備したもので、本来は7月1日付で施行されるはずだった。しかし、解散総選挙が決まり、予定通りに施行できなくなった。失業保険の現行制度は6月末日で失効することになっていたため、政府は急遽、9月30日まで現行制度を継続適用することを決めていたが、今回、それをさらに1ヵ月間延長した。政府はこの延長について、法令案の事前審査を行う行政最高裁(コンセイユデタ)の勧めに従って決めたと説明している。失業保険制度の改正案は、最大給付期間の短縮化(57才未満について12月1日より18ヵ月から15ヵ月へ)と、受給資格の厳格化(「直近24ヵ月に6ヵ月以上の就労実績」を「直近20ヵ月に8ヵ月以上の就労実績」へ)を柱に、再就職へのインセンティブを高める制度作りを目指す内容だが、労組はこれに強く反対していた。総選挙で議会内の最大勢力となった左派連合はその改正案の廃案を公約に掲げている。 KSM News and Research -
2024.07.31
フランスの経済成長率、4-6月期に0.3%(前の期比)
30日発表のINSEE速報によると、フランスの経済成長率は4-6月期に前の期比で0.3%となった。ドイツでは同じ時期に0.1%のマイナス成長となっており、明暗が分かれた。INSEEはまた、1-3月期までの経済成長率を上方修正した。1-3月期について0.3%(速報値を0.1ポイント引き上げ)、2023年10-12月期について0.4%(同0.1ポイント引き上げ)とした。2023年通年の経済成長率は1.1%で、2024年については、7-9月期以降がゼロ成長になったと仮定した場合で、通年成長率は1.0%と、政府の公式予測と同じ水準に達した。4-6月期には、輸入の伸びが0%(前の期比、以下同じ)となったのに対して、輸出が0.6%増を記録した。船舶や航空機など大型製品の引き渡しが貢献した。全体として外需は経済成長率を0.2ポイント押し上げる貢献をみせた。他方、内需は0.1ポイント分の貢献(在庫変動はゼロ貢献)となったが、個人消費支出は前の期並みにとどまり(前の期は0.1%減)、企業設備投資は0.1%増(前の期は0.4%減)、と、回復はしているものの本格的な拡大には程遠い。家計の固定資本形成(住宅投資)は0.5%減と後退が続いている。下半期にかけては、7-9月期には五輪効果で経済成長率が0.5%に達する見通しだが、10-12月期にはマイナス0.1%となり、減少に転じるものと予想されている。政局混迷の影響など不確定要素も多い。KSM News and Research -
2024.07.31
マクロン仏大統領、西サハラ問題でモロッコ寄りの姿勢示す
モロッコのモハメド6世国王が31日に即位25周年を迎える。この機会に、フランスのマクロン大統領は国王宛てに書簡を送り、西サハラ問題でモロッコ寄りの立場を表明した。フランス政府にとって大きな方針転換となる。西サハラ問題でモロッコと対立する隣国のアルジェリアはこの書簡に強く反発し、在仏アルジェリア大使の召還を決めて抗議した。モロッコの南側に位置する西サハラは、モロッコ帰属に反対する独立派による運動が古くからあり、現在に至るまで法的な地位が確定していない。アルジェリアは西サハラの独立派を支援しており、これが両国の間の根深い対立の原因になっている。国連の仲介の下で、住民投票による解決を探る旨が取り決められたが、これはいまだに実現しておらず、解決に至らないままにらみ合いが続いている。そうした中で、米国は2020年12月に、モロッコとイスラエルの国交正常化の引き換えという形で、モロッコが2007年に提示した「自治プラン」の支持に転じた。それ以来で、モロッコは欧州諸国に対しても支持を求めて外交圧力を強めており、軋轢を経て、これまでにスペインなど数ヵ国の切り崩しに成功していた。マクロン大統領は今回の書簡で、モロッコの「自治プラン」が、「公正で持続的な、交渉を経た政治的解決に至る唯一の基盤」であると認め、さらに、「西サハラの現在と未来はモロッコ主権の枠内に存する」とし、西サハラのモロッコ領有権を承認すると明確には述べていないものの、事実上の承認を与えると解釈できるような表現を用いて、モロッコ側に寄り添う姿勢を示した。仏政界では、右派(サルコジ元大統領や、入閣したダティ文化相、さらに大統領派に協力するフィリップ元首相など)がモロッコ寄りの姿勢を示しており、その圧力に配慮して、マクロン大統領は今回の方針転換を決めたものと考えられる。予想通りにアルジェリア政府はこれに激怒し、「フランスは西サハラ人民の自決権を否定し、国連が展開してきた努力に背を向けた」などとするコメントを発表。テブーン大統領は今秋にフランスの公式訪問を計画していたが、その実現の可能性は遠のいたとみられている。KSM News and Research -
2024.07.31
住宅建築許可発行数、2015年以来で最低水準に
2023年7月から2024年6月までの12ヵ月間に発行された住宅建築許可数は34万7900件となり、2015年以来で最低の水準に落ち込んだ。前年同期比で15.3%、6万2900件減少した(前年同期にもすでに10万600件減少)。内訳は、一戸建て住宅で8万1200件(24.4%減)、公共住宅を含む集合住宅で17万6400件(15.4%減)、高齢者や学生向けレジデンスで4万6900件(6.6%減)。建築許可発行数と連動して同期間中の着工数も21.8%減退し、過去最低並の水準に落ち込んだ。 新築住宅市場は、建材価格の高騰と環境規制の厳格化による建設コスト急増、住宅ローンの金利上昇、新築物件購入にかかる公的支援の削減を受けて大きく縮小している。建設業界ではすでに雇用への影響が出ており、複数の大手不動産会社が人員削減を発表、小規模事業者の倒産も相次いでいる。業界団体は最近、2025年半ばまでに15万人の雇用が失われるとの見通しを発表した。KSM News and Research -
2024.07.30
通信大手SFRの光通信ケーブルを狙った破壊事件、全国8件で被害
鉄道の通信ケーブルを狙った破壊事件に続いて、29日未明には国内の数ヵ所で通信大手SFRの光通信ケーブルを狙った破壊事件が発生した。警察が捜査を開始した。バックボーンと呼ばれる、事業者間などのネットワークの根幹を担う大容量回線が狙われた。全部で8県(ムーズ、エロー、オワーズ、ブーシュデュローヌ、ドローム、オード、セーヌエマルヌ、エソンヌ)の数ヵ所の回線で被害が生じた。被害の規模は大がかりな攻撃である割には大きくなく、SFRの1万人程度の顧客の固定サービスが不通となり、副次的に、他の事業者の固定・携帯サービスにも多少の影響が出た。復旧状況は被害地域により差があり、ドロームとオードの両県では、切断個所の特定に手間取り、30日朝の時点ではまだ復旧していない。光回線ケーブルは金属ディスクカッターで切断されたものとみられている。バックボーンのケーブルの位置は公表されておらず、アクセスも困難であることから、事前に情報を収集して計画を立案しない限りは、これだけの規模で行うのは不可能と考えられる。警察は、鉄道を標的とした26日に発生の破壊行為と同等の容疑で捜査を開始。2つの事件は類縁性も多いが、関連があるのかどうかはまだわかっていない。極左系の過激派グループによる犯行の可能性があるが、当局は今のところ慎重な見方を示している。KSM News and Research -
2024.07.30
シャモニー自治体連合、民泊の数量規制を導入
モンブランに近いシャモニーを核とする自治体連合はこのほど、オーバーツーリズム対策で民泊規制の条例を導入することを決めた。2025年5月1日付で施行される。民泊の数量規制はフランスでは海浜リゾート地のビアリッツ市で導入されているが、山岳地方での導入はこれが初めて。具体的には、住宅の短期賃貸を計画する個人に対して、自治体から登録番号を取得することが義務付けられる。許可は3年期限(更新可)で付与される。物件の数は、シャモニー市とレウッシュ市では1人につき1件、セルボ市では同2件に制限される。バロルシーヌ市では1年期限で数には制限を設けずに登録を認めるが、その後に制限を決めて導入する。法人はひとまず規制の対象外となるが、今後に規制導入を検討する。なお、シャモニー市の場合、3500件の家具付き賃貸物件のうち、3分の1が法人保有となっている。賃貸料金は1平方メートル当たりで30ユーロ、物件の取引価格は1平方メートルあたりで1万-1万8000ユーロと高い。KSM News and Research -
2024.07.30
左派連合NFPの首相候補カステ氏、新たな課税案を披露
左派連合NFPの首相候補カステ氏は、7月28日付のラトリビューン日曜版とのインタビューの中で、国外に居住するフランス人への課税導入案を披露した。米国に倣った国外居住者への所得課税制度は左右両派から度々持ち出されるが、現実には導入は難しい。国外に居住する250万人のフランス人に、居住地での納税額とフランスに居住した場合の課税額との差額をフランスに納めさせるという構想だが、その実現には大きな障壁が立ちはだかる。まず、フランスは税一般法典4B条により、国籍主義ではなく、居住地国を納税義務国としている。また、人の自由な移動を保障する欧州連合(EU)の法令に違反する恐れがある。さらに、フランスがこれまでに締結した二国間租税条約全てについて、改定のための再交渉が必要になる。租税条約は国内法に優先されるため、導入は非現実的だと税務専門家は指摘する。さらに、米国のように自国民の情報を外国政府に提供させるための影響力がフランスにはないため、法整備なされたとしても実効性は期待できないという。KSM News and Research -
2024.07.29
欧州医薬品庁、「レカネマブ」の承認に反対
欧州医薬品庁(EMA)は7月26日、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の欧州連合(EU)での販売承認に反対意見を表明した。レカネマブは日本のエーザイと米バイオジェンが共同開発し、米国では2023年1月に承認されて「レケンビ」の商品名で販売されている。症状がまだ大きく進行していない患者を対象に、症状進行を抑制する効果があると認められており、日本や中国などでも承認済み。EMAは「レカネマブ」の効果は認めつつも、脳出血や脳浮腫などの副作用のリスクがあることを理由に、承認に反対した。最終的な決定権は欧州委員会にあるが、欧州委はEMAの意見に従うのが通例となっている。エーザイは強い失望を表明し、EMAに再検討を求める方針を明らかにした。EUの認知症患者数は約800万人といい、その半数超がアルツハイマー病の患者だという。KSM News and Research -
2024.07.29
デュラレックス、従業員組合組織による買収決まる
割れないガラスコップで知られるデュラレックス(Duralex)社が、従業員組合組織により買収されることが決まった。26日にオルレアン商事裁判所が決めた。デュラレックスは、業界他社と同様に、エネルギー価格の高騰で大きな打撃を受けた。2022年11月には5ヵ月間の操業停止を決め、一時帰休制度などを通じて国から1500万ユーロの援助を受けた。ただ、その後の業績の回復は遅れ、去る4月末には会社更生法の適用を申請。3件の買収計画案が提出されたが、その中で、SCOPと呼ばれる新設の従業員組合組織による買収案が裁判所の承認を受けた。これで、デュラレックスのロワレ県ラシャペルサンメスマン市にある工場の事業継続のめどが立った。同工場には従業員228人が勤務している。計画案では、オルレアン都市圏が工場の土地を500万-800万ユーロで取得し、従業員組合組織に貸与する形で支援。地元のサントル・バルドロワール地域圏は融資保証を与えて銀行融資が得やすくなるように支援する。ほかに100万ユーロを融資して事業継続を支える。従業員組合組織は組合員からの拠出も得て、生産施設を確保する。SCOP設立による買収案件はこの10年ほどで、経営難の企業の事業継続の手段としてよく用いられるようになった。近く、プーランのチョコレート工場(ロワールエシェール県ビルバルー市)も同じ方法で買収される見通しとなっている。KSM News and Research -
2024.07.29
パリ五輪:鉄道破壊行為の背後に極左過激派か、開会式の内容巡り論争も
パリ五輪開会式の直前に鉄道を狙った破壊行為が生じた件で、国鉄SNCFは29日(月)朝には平常の運行を全域で再開した。28日までは一部で混乱が続いた。被害を受けたのは、クルタラン(ウールエロワール県)、クロワジーユ(パドカレー県)、パニーシュルモゼル(ムルトエモゼル県)の3ヵ所で、線路脇の通信ケーブルが放火され、機能しなくなった。このほか、ベルジニー(ヨン県)の施設は放火未遂の被害を受けた。ケーブルの破損のため、高速鉄道(TGV)の運行は一時麻痺状態に陥り、80万人の旅客に影響が出た。当局は、組織犯罪担当の検事局の下で捜査を開始。テロ容疑は採用されず、「国家の基本的利益」への破壊行為などの容疑で捜査が進められている。この容疑での最高刑は、禁固15年と罰金22万5000ユーロとなっている。犯人グループの輪郭はまだつかめていないが、「予期せぬ選手団」を名乗るグループが、匿名プラットフォーム「Riseup」上で「支持声明」を発表。資本主義経済を代表する五輪への憎しみを表明する内容で、この声明文は極左系グループによるものと考えられる。声明文と犯人グループとの関係は明らかではないものの、環境原理主義・極左過激派は、携帯基地局の鉄塔放火といった犯罪行為を近年に行っており、そうした犯罪と今回の事件の類縁性が指摘されている。鉄道は伝統的に極左過激派の格好の標的でもある。他方、26日夕方に行われた五輪開会式は、競技場外での初の開催という新機軸を打ち出したが、あいにくの雨の中でも滞りなく終了した。国際的な評判も上々で、主催者側は賭けに勝ち、面目を保った。芸術総監督の重責を担ったトマ・ジョリ氏は、半ズボンにハイソックスというピーターパンのような姿で取材に応じ、開かれた五輪、ダイバーシティーのメッセージを前面に打ち出した開会式の演出において、自らもそうしたメッセージの体現者という立ち位置で臨んだ。それでも論争はあり、特に、カナの婚礼を意識した活人画と、続いてほぼ裸のディオニュソス(歌手・俳優のフィリップ・カトリーヌが演じる)が登場するシークエンスは、キリスト教の精神を愚弄する内容だとして、カトリック司教会が抗議のコメントを発表するなどした。KSM News and Research -
2024.07.25
ユーロ圏の景気は停滞、英国の景気は回復
S&Pグローバルは7月24日、ユーロ圏や英国の7月の総合PMI(購買担当者景気指数)を発表した。ユーロ圏の総合PMIは50.1で、景気の分岐点とされる50をかろうじて上回ったものの、前月の50.9と比べて低下し、直近5ヵ月間の最低を記録した。S&PグローバルのパートナーであるHCOB(ハンブルク商業銀行)のチーフエコノミストは、ユーロ圏経済が7月にほぼ停滞状態に陥ったと指摘。その上で、製造業部門の状況が大きく悪化した(製造業PMIは45.6、製造業PMI生産高指数は45.3でいずれも直近7ヵ月間の最低値)が、その一方で、サービス業は緩やかな成長を維持しており(サービス業PMI事業活動指数は51.9、直近4ヵ月間の最低値)、7-9月期にGDPが成長する可能性はあるとの判断を示した。ユーロ圏の主要国では、ドイツの総合PMIは7月に48.7となり、前月の50.4から50未満へ落ち込み、直近4ヵ月間の最低値を記録した。サービス業PMI事業活動指数は52.0と直近4ヵ月間の最低値ながら50を上回っているものの、製造業PMIは42.6(直近3ヵ月間の最低)、製造業PMI生産高指数は42.2(直近9ヵ月間の最低)と低迷し、サービス業と製造業の明暗が鮮明になっている。フランスの総合PMIは7月に49.5となり、50を下回っているが、前月の48.2から大きく上昇し、直近3ヵ月間の最高を記録した。HCOBのエコノミストは、パリ五輪が景気を活性化させていると指摘した。サービス業PMI事業活動指数は50.7(直近3ヵ月間の最高)、製造業PMIは44.1(直近6ヵ月間の最低)、製造業PMI生産高指数も44.1(直近6ヵ月間の最低)と、サービス業と製造業の対比はやはり鮮明。一方、英国の総合PMIは7月に52.7となり、9ヵ月連続で50を上回った(6月は52.3)。また1-7月の平均値は53.0となった。製造業が特に好調で、製造業PMIは直近24ヵ月間の最高の51.8、製造業PMI生産高指数は直近29ヵ月間の最高の54.4を記録。サービス業PMI事業活動指数は52.4(直近2ヵ月間の最高)で、こちらも50を上回っている。なお、製造業PMI生産高指数は「貴社の生産高は1ヵ月前と比べて大きいか、同じか、小さいか」という質問への回答を集計したもの。製造業PMIは、新規受注、生産高、雇用、サプライヤー納期、購買品在庫の5項目に関する調査結果を組み合わせたもの。KSM News and Research -
2024.07.25
地デジテレビ局免許更新:当局機関ARCOMはC8とNRJ12の免許更新を認めず
仏放送行政監督機関ARCOMは24日、地デジ放送局の免許更新に関する決定を下した。C8(カナルプリュス傘下)とNRJ12(ラジオ局NRJグループ傘下)について免許更新を認めず、代わって新規参入者に免許を付与する決定を下した。今回の免許更新は、2025年に期限切れを迎える15免許(無料局及び有料局)について審査された。建前上は更新が前提ではなく、新規参入者を受け入れて審査した上で、付与先を決める手続きが進められたが、既存局の免許更新が認められなかったのは、地デジ放送開始以来で前例がなく、決定は驚きを以て迎えられた。免許更新が認められなかった局のうち、C8はカナルプリュス・グループに属するが、最近では、シリル・アヌーナ氏の番組で放送事故が相次いでおり、8年間で合計750万ユーロの罰金処分を受けるなど黒星続きだった。カナルプリュスがボロレ・グループの傘下に入って以来、番組内容の右傾化を問題視する向きもあり、アヌーナ氏は極右の主張を一般に浸透させる上でのキーパーソンになった印象もあった。免許更新が認められなかったのはその辺りの事情も関係していると考えられる。ただし、同じく右傾化を批判されているグループ傘下のCNews(ニュース専門無料局)の方は、免許更新が認められた。他方、NRJ12については、収支が優れず、財政的な基盤がぜい弱だったことが、免許更新が認められなかった理由と考えられる。 これら2局に代わって、地方紙ウエストフランスの「OF TV」と、チェコ人実業家クレティンスキー氏が保有するメディアグループ「CMI」の「レエルTV」の2局への免許付与が決まった。前者は、都市部以外の地域に住むヤングアダルトを念頭に置いた生活情報等を配信する局として、後者は社会・歴史・科学・文化芸術、世界の5つのテーマでドキュメンタリーや討論、娯楽番組を放送する局として発足する予定。KSM News and Research -
2024.07.25
首相府下の経済調査機関CAE、財政健全化で提言
首相府下の経済調査機関CAE(経済分析評議会)は24日、財政運営の展望に関する報告書を提出した。一定の時間をかけて財政健全化を進めるよう勧告した。2023年に、フランスの公的債務残高の対GDP比は110%程度に上り、財政赤字の対GDP比も5.5%と大きかった。政府は2027年時点で財政赤字の対GDP比を3%以内に圧縮するとの目標を掲げているが、その実現可能性は疑問視されており、仏政府は財政健全化の道筋をつけるのに苦労している。 CAEは、経済に大きな打撃が生じないようにするため、一定の時間をかけてプライマリーバランスの黒字化を進めるよう勧告。現在、プライマリーバランスの赤字は対GDP比で3.5%に上るが、これを1%程度の黒字に転じさせることが目標となる。そのためには、1120億ユーロ程度の赤字減らしが必要になる。7年間でこの目標を達成すれば、目標達成の時点で公的債務残高の対GDP比は119%程度となり、その後は低下に転じる。CAEは、短期的に動員可能な手段として、見習い研修雇用制度への支援の削減(40億ユーロ)、法的最低賃金(SMIC)の2.5倍までで社会保険料の減免措置を打ち切る(20億ユーロ)、研究税額控除(CIR)の大手企業向け適用を打ち切る(25億ユーロ)、相続税免除措置の廃止(90億ユーロ)、を挙げた。税収増加の方法としては、時限措置による特別課税の導入や、所得区分の改定幅のインフレ率以下への抑制といった措置を挙げた。公務員のベースアップ凍結も200億ユーロ程度の節減をもたらすと指摘した。KSM News and Research -
2024.07.24
左派連合、首相候補にカステ氏擁立:マクロン大統領は相手にせず
左派連合は23日、首相候補として官僚のリュシー・カステ氏(女性)を選んだと発表した。マクロン大統領に対して同氏の指名を迫った。左派連合の統一首相候補選びは難航した。22日まで早期の指名は望めないとの空気が広がっていたが、23日には一転して人選で合意した。マクロン大統領が同日夜にテレビインタビューに応じる直前というタイミングで発表して、政局の主導権を握る意志を打ち出した。カステ氏は37才。官僚として経済省の詐欺行為摘発当局(DGCCRF)などに勤務した経験があり、現在はパリ市の財務・購買局長を務めている。左派系の人材で、公共サービス擁護を掲げる活動を展開。かつてテレビ討論の機会に、与党ルネサンスの有力政治家ゲリニ氏を、政府によるコンサル乱用疑惑で厳しく追及して名前を知られたという経緯もある。年金改革(定年年齢を64才に段階的に引き上げる内容)の廃止運動にも携わっており、そのためか、この問題を重要課題に掲げる左翼政党「不服従のフランス(LFI)」もこの人選を承諾した。首相候補の決定発表の直後、マクロン大統領のテレビインタビューが始まった。マクロン大統領は、パリ五輪を主なテーマとしてこのインタビューの機会を設けたが、首相の人選については、左派連合も含めて過半数の擁立の展望はないとし、これまでの固定観念にはとらわれずに協力を進める以外の道はないと述べつつ、五輪終了(8月半ば)より前に首相指名を行うつもりはないことを示した。KSM News and Research -
2024.07.24
所得税払い過ぎの還付、24日に開始
2023年所得に係る納税額通知の送付が24日に始まった。これに伴い、払い過ぎの還付と不足分の徴収が同日に開始される。払い過ぎの還付は、納税者の3分の1程度に相当する約1300万人が対象になる。総額で約130億ユーロが還付される。1人当たりにすると844ユーロに相当するという。銀行口座を税務当局に登録している場合には、24日か、1週間後の31日に自動的に還付金が振り込まれる。件名は「REMB IMPOT REVENUS」、振込人は「DGFiP FINANCES PUBLIQUES」となる。還付には主に、各種税制優遇措置(託児やホームヘルパー、賃貸住宅への投資、寄付等)に伴うものと、扶養家族の増加といった要因で、源泉徴収分の所得税が取りすぎになっていた分の精算がある。このうち、税額控除については、年頭に2022年実績に基づいた試算で60%相当が前倒しで還付されており、最終額による精算を経て残金が還付される。銀行口座を税務当局が把握していない場合には、小切手が郵送される。いずれの場合も自動的に還付はなされるため、還付の手続きを呼びかけるメールの類は詐欺と考えてよい。不足分の徴収は、960万人を対象になされ、1人平均で2300ユーロに上る。300ユーロまでなら9月29日に一括引き落としがなされ、それ以上の額の場合には、4分割払い(9月から12月まで)となる。KSM News and Research -
2024.07.24
エディティス、BD・漫画出版のデルクールと買収交渉を開始
仏出版大手エディティスが、BD(バンドデシネ)・漫画出版でフランス3位のデルクールの買収に向けて独占交渉に入った。レゼコー紙の得た情報では、買収額は1億ユーロを超える模様。エディティスは2023年末にチェコの実業家クレティンスキー氏に買収されたが、氏から充分な資金と事業展開の自由を与えられていることをうかがわせた。デルクールは1986年の創業で、売上高は2023年に初めて1億ユーロを超えた(BD 58%、漫画35%、コミック6%、文芸1%)。「Les Legendaires」「Walking Dead」「Blagues de Toto」といった、ミリオンセラーのBDシリーズを擁する。フランスのBD・漫画市場における第3位で、シェアは11%。独GfK(市場調査)によると、BD・漫画部門は過去10年で大きく伸びており、今日では仏出版界において文芸部門に次ぐ収益源に成長した。エディティスのBD・漫画部門は総売上高の5%を占めるにすぎず、デルクールを買収できれば同部門を強化できる。KSM News and Research -
2024.07.23
総選挙後の混迷続く:共和党は「政策協定」提案、左派は首相候補擁立に失敗
総選挙後の政局混迷が続いている。いずれの陣営も政権樹立に向けた展望が開けていない。保守野党の共和党では、下院議員団の団長となったボキエ氏の下で、「政策協定」を提案して打開の可能性を探っている。共和党は、中道勢力と共に上院では過半数を握っており、下院における勢力は小さいものの、政策運営に注文を付けて一定の言質をとった上で、閣外から法案の可決に協力するとの方針を示している。具体的には、憲法評議会により削除を命じられた移民法における共和党提案の諸条項(一部の社会給付について、外国人への支給においては一定の正規滞在実績を条件として求める、など)の採択を要求。また、各種社会給付の支給総額への上限設定(法定最低賃金SMICの70%まで)、失業保険制度改正の実行、社会保険料の減免措置と残業手当の所得税非課税化を通じた手取り給与の増額を要求し、勤労インセンティブを高める制度作りを求めた。これらの点については、アタル内閣の政策目標と重なる部分もある。共和党はまた、増税と年金支給額の引き下げをせずに財政の立て直しを図ることを、譲れないポイントとして掲げ、2025年予算法案において250億ユーロの節減の実現も要求した。旧連立与党との間で接点を見出すことは不可能ではないが、それだけでは過半数には足りず、左派の一部を切り崩すとなると、およそ妥協点を見いだせるような内容ではない。他方、合計して最大勢力となった左派連合は、いまだに首相候補の一本化ができていない。候補に挙がっていたチュビアナ氏が22日に立候補を断念すると発表し、協議は再び振り出しに戻った。チュビアナ氏は社会党・共産党・環境派が推したが、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が承知しなかった。続いて、共産党のシャセーニュ下院議員、オックスファム・フランス代表のデュフロ元環境相、社会党のアモン元教育相の名前が挙がっているというが、一本化は望めない情勢とみられている。KSM News and Research -
2024.07.23
ビベンディ、主要資産の分社上場計画を発表
仏メディア大手ビベンディは22日、分社上場計画の詳細について発表した。早ければ2024年12月にも主要資産を分社化・上場する。ビベンディは、コングロマリットに対して一般的にみられる株価の過小評価が、自社についても見受けられると主張し、分社化と上場により企業価値を高めることを目指すと説明している。主要資産のうち、カナルプリュス(有料テレビ)については、英ロンドン株式市場での上場を選択。同社はその理由として、既に加入者数の3分の2が国外事業によるものであることを挙げ、また、マルチチョイス(南ア)の買収が実現すれば、英国市場と同じ法規の適用下にある南アのヨハネスブルク株式市場での同時上場ができることも利点として挙げた。また、ハヴァス(広告)についても、オランダ・アムステルダム市場での上場を選択。これについては、複数議決権設定の制度の歴史が古いアムステルダム市場での上場が、敵対的TOBからの防衛を図る上で有利であることを挙げている。ビベンディはいずれでも、30%を超える株式を維持する予定。ビベンディは、外国市場を選択したことについて、フランスを離れて外国に逃れるのが目的ではないとし、ビベンディ本体のほか、出版事業を束ねて再編成する「ルイ・アシェット・グループ」の上場をパリに維持することを挙げた。ルイ・アシェット・グループには買収したラガルデール・グループの資産が統合される。ビベンディ本体は、ゲームロフト(ゲームソフト)や金融資産(旧子会社であるユニバーサル・ミュージックに保有する株式など)を保有し、カナルプリュスとハヴァスの債務も引き取る。ビベンディは、実業家のバンサン・ボロレ氏のボロレ・グループが29.9%株式を握っており、分社化・上場はボロレ・グループの利益に直結する。KSM News and Research -
2024.07.23
カルフール、「手のひら決済」を試験運用
仏食品小売大手カルフールが、スーパー「カルフール・マーケット」のパリ6区の店舗で7月29日から「手のひら決済」の試験運用を開始する。顧客は自分の手のひらの静脈パターンとカード情報を登録しておき、店舗のレジでは決済端末に手のひらをかざすだけで支払いを行える。「手のひら決済」では、手のひらの静脈を読み取る生体認証技術を利用する。端末を開発した仏決済用端末大手インジェニコは、「指紋や顔認証と異なり、体内にある静脈は摩耗せず、外部環境に影響されにくいので、より高度な安全性を提供できる」と説明している。米国ではアマゾンが2023年7月に、傘下の食品スーパー「ホールフーズ」全店への「手のひら決済」導入を発表したが、欧州では今回のカルフールが初のテストケースとなる。同社は、「この技術は支払いプロセスを早めるのみならず、レジ待ちの時間も短縮でき、顧客定着化システムに統合されて全体的な購買体験を改善する」と期待する。KSM News and Research -
2024.07.22
OECDの国別労働時間統計、フランスは依然として最下位グループに
OECD(経済協力開発機構)の統計によると、フランスの住民一人当たりの労働時間は直近の数年間に増加したものの、2023年は依然として加盟国中の最下位グループに属している。7月22日にレゼコー紙が明かした。OECD統計による2023年の国別の住民一人当たり労働時間で、フランスは664時間と、欧州平均の770時間を14%下回った。スペインは715時間、ドイツは729時間、イタリアは767時間、ポルトガルは803時間、ルクセンブルクは1114時間、EU(欧州連合)域外では米国が835時間、英国は738時間だった。この数字には人口バイアスが含まれているため取り扱いに注意が必要だが、データは、各国の労働力の強度と、若年層、高齢層、低資格層に対する雇用維持力または雇用提供力を反映している。とはいえ、フランスの一人当たり労働時間としては1995年の統計開始以来最高で、2017年より47時間増加している。OECDのカルシヨ雇用所得部門チーフは、「2017年に就任して以来のマクロン大統領による相次ぐ労働市場改革が、雇用創出と高齢層・年金受給層・若年層・職業訓練生の就業率改善を促し、失業率を7%台まで引き下げたと見て取れる」と解説する。本統計では就労者の労働時間は分からないが、これとは別のOECDのデータによると、2023年のフランスのフルタイム労働者の週労働時間は38.7時間で、ドイツの39.2時間、米国の41.2時間より短い。就労者の年間実労働時間を比較するとこの差がさらに顕著になる。Rexecode(民間経済研究所)の最近の調査によると、2022年のフランスのフルタイム労働者の年間実労働時間は平均1668時間で、欧州平均の1792時間、ドイツの1790時間より短かった。経営者団体に近いRexecodeは、仏独の差は約3週間分の労働に相当し、その3分の1はフランスの週労働時間がドイツより短いこと、残りは有給休暇と疾病欠勤に起因すると説明した。KSM News and Research -
2024.07.22
シャンパーニュ、今年の収穫量は前年比12%減の見込み
シャンパーニュ・ワインが販売後退に伴い、生産調整を予定している。2024年のぶどう収穫量は、1ヘクタール当たりで1万kgに制限される。これは前年比で12%減、2022年比では16.5%減に相当する。今年は雨が多く、シャンパーニュ地方でも病毒の被害が広がる恐れがある。それに加えて、需要の減退に対応して供給を抑えて、製品価格を維持することを目的に、生産量を調整する。シャンパーニュの需要は2020年以降は出入りが大きい。2020年には新型コロナウイルス危機のために出荷が2億4500万本に後退。その翌年には反動で大きく増加し、2年間に渡り大きな需要を記録した。業者によっては供給が追い付かない状況も生じた。しかし、2023年には出荷量が2億9700万本と減少傾向を示し、今年に入ってからは後退幅が15%にまで拡大した。地域別では、1-6月期の出荷が最大市場である米国向けで18%の減少を記録(前年同期比)。英国向けは3%減にとどまったが、仏国内向けの出荷は10%減を記録した。米国の場合は、先高感から販売業者が在庫の積み増しを進めてきたが、その反動が出た。実際に、価格は2年間で20%の上昇を記録している。シャンパーニュは値下げに消極的なことで知られるが、過去には1993年、2000年、そして2009年に値下げを決めた前例もあり、今回に値下げの決断を下すかどうかも注目される。KSM News and Research -
2024.07.22
下院、要職の互選を終了:極右RNを排除、与党連合は主導権失う
下院は20日までに、改選後の要職の互選を終えた。極右RNを排除する動きが奏功し、RNはまったくポストを得られなかった。他方、与党連合は事務局で過半数を失うなど、今後の国会対策は一段と厳しくなった。左派連合は、22議員からなる事務局で副議長2人を含む12のポストを得た。議長はそれより前、与党所属のブロンピベ議長が再選を果たしていたが、議長は事務局において少数派に追いやられた。その一方で、与党連合は、8つの小委員会のうち6つで委員長のポストを確保。しかし、最重要の財政委員会については、激しい攻防の末に、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」所属のコクレル委員長が再選を果たした。財政委員会では、野党所属議員が委員長を務めることが慣例になってはいるが、今回は、どの勢力が与党になるのか見極められない状況である中で、(旧)与党勢力も互選に参加するという慣例破りの事態となった。それでも、コクレル委員長は他党の支持も受けて再選を決めた。それ以上に、与党勢力にとって痛手となったのが、予算案報告担当委員の選出で、こちらは通常では与党勢力が握るポストであるものの、中道野党グループLIOTを率いるドクルソン議員が与党候補と同票の末に、年長者を優先する規定により当選を果たした。与党勢力は、予算法関連の審議で統制権を完全に失ったことになる。保守野党の共和党は、事務局において、2人の議長職と財務官のポストを確保し、改選前よりもむしろ勢力が拡大した。逆に極右RNは完全に排除された格好で、議員団を率いるマリーヌ・ルペン議員などは、卑怯なやり口だと他党を厳しく批判した。KSM News and Research -
2024.07.19
欧州中銀、金利据え置き決める
欧州中銀(ECB)は18日に定例理事会を開き、金利据え置きを決めた。リファイナンス金利は4.25%、下限金利(中銀預金金利)は3.75%、上限金利は4.50%に据え置かれた。欧州中銀は前回の6月6日の理事会において、25ベーシスポイントの利下げを決めていた。夏休み前で最後となった今回の理事会では、市場の予想通り、金利据え置きが決まった。市場は次回の利下げのタイミングを注視している。欧州中銀のラガルド総裁は、前回の利下げの効果の経済への浸透について、問題なく進んでいるとの見解を示した上で、今後の金利政策については、これから得られる経済指標を吟味した上で決めると説明。注目の9月の次回理事会については、「何ができるかという問題は全面的に開かれている」との表現で、あらゆる可能性があるとの立場を示し、利下げを否定せず、また肯定もしないという姿勢を貫いた。市場関係者は、9月か12月の利下げか、9月と12月の2回の利下げかという見方の間で意見が分かれている。ユーロ圏のインフレ率は、5月の2.6%に対して、6月は2.5%と、減速のペースがかなり鈍くなっている。その一方で、ラガルド総裁は、賃金上昇について、足元の上昇は過去のインフレ高進が遅れて波及したものだとし、2025年から2026年にかけては減速するとの見方を示して、賃金上昇がさらに物価を押し上げる二巡目には至らないとの考えをにじませた。KSM News and Research -
2024.07.19
下院議長選出、プロンピベ議長が再選果たす
下院は18日、総選挙後の特別会の招集に伴い、議長選挙を行った。改選前の与党連合所属のブロンピベ議長(女性)が第3回投票で賛成多数により再選を果たした。マクロン大統領が決めた解散総選挙では、極右勢力の過半数確保を阻めたものの、極右、左派、与党の各勢力が拮抗する形になり、多数派の擁立は極めて難しくなっている。通常なら議長選挙は無風だが、今回は状況が状況だけに、6人が立候補して厳しく争う異例の展開となった。第1回投票では、ブロンピベ議長は得票率でシャセーニュ(共産党)、シュニュ(極右RN)に次ぐ第3位となり、オリゾン(旧与党連合に所属)と保守野党の共和党所属の2候補がふるい落とされた。第2回投票では、オリゾンと共和党の合流を得て、ブロンピベ議長が210票でトップに立った。第2回投票で中道野党グループLIOTの候補が脱落し、最後の第3回投票において、プロンピベ議長が最多得票により、過半数を得ないまま規定に沿って選出された。LIOTのドクルソン議員は、中間勢力の糾合を掲げて立候補したが、実らなかった。第3回投票は、与党連合と左派連合、そして極右の3大勢力のにらみ合いが続いていることを示す結果になったが、共和党の協力を得た少数政権樹立の可能性を示唆する結果とみることもできる。ただ、こうしたまとまり方は、変化を求めた多くの有権者の失望を招く可能性もある。なお、下院の院内会派の力関係を見ると、総議席数577のうち、単独での最大勢力は極右RNの126議席で、以下、マクロン大統領派の「共和国団結派」が99議席、左翼「不服従のフランス(LFI)」が72議席、社会党が66議席、共和党「共和右派」が47議席、環境派が38議席、中道与党MODEM「民主派」が36議席、オリゾンが31議席、LIOTが21議席、「民主共和左派」(主に共産党)が17議席、共和党からRN支持に回ったシオティ派が16議席となった。これ以外に会派に属さない議員が若干名を数える。KSM News and Research -
2024.07.19
Meatly、英国で培養肉の家畜飼料向け販売許可を取得
英国のベンチャー企業Meatlyはこのほど、英環境省の動植物衛生庁(APHA)から、自社開発の培養肉について、家畜飼料として販売する許可を得た。家禽肉を培養し、ペットフードなどに用いる。培養肉に販売許可が与えられるのは欧州諸国ではこれが初めてだという。Meatlyのオーウェン・エンソールCEOは、今回の許可について、英国が培養肉の分野でリーダーになる意志を示したものだと歓迎。欧州連合(EU)離脱と政府のバイオテクへの熱意で今回の許可が可能になったとの見方を示した。エンソールCEOはまた、人の食用に供される食品としての許可取得にも意欲を表明。当局機関の英食品基準庁(FSA)も、安全性が確保され、法令に適合するという条件において、培養肉のような代替材料の食品への使用を許可することに前向きの姿勢を示している。なお、これまででは、イスラエル、シンガポール、米国の3ヵ国のみが、培養肉の食品における使用を認めている。エンソールCEOは、動物福祉に敏感な人の間で培養肉への需要は大きいとの見方を示している。培養肉を巡っては、細菌に弱いとか、培養促進のためのホルモン剤の使用など、消費により健康障害を起こすリスクを指摘する向きもあるが、CEOは、細菌対策は万全だとし、抗生物質の投与などがなく、重金属等の汚染物質の点でもクリーンな製品であることを強調している。KSM News and Research -
2024.07.18
パリのイダルゴ市長、セーヌ川遊泳で五輪に向けて水質改善をアピール
パリのイダルゴ市長が7月17日午前、かねての約束通りセーヌ川で遊泳した。パリ五輪組織委のエスタンゲ委員長とイルドフランス地域圏ギヨーム知事も合流した。市長は5分間ほどで水から上がり、セーヌ川の安全性と快適さをアピールした。セーヌ川では、トライアスロン(7月30、31日と8月5日)、マラソンスイミング(8月8、9日)、パラトライアスロン(9月1、2日)競技が予定されている。6月は連続降雨の影響で水質が悪化していたが、パリ市とイルドフランス地域圏によると、過去2週間のバクテリア検査結果は全体的に良好だという。環境NGOのSurfriderが6月26日と7月4日に五輪競技コースで行った標本検査でも、大腸菌と腸球菌のレベルは国際スポーツ連盟の遊泳許可基準を満たしていた。イダルゴ市長より一足早く、7月13日にはウデアカステラ・スポーツ・五輪相がセーヌ川に飛び込むパフォーマンスを見せた。マクロン大統領もセーヌ川遊泳を2月末に約束したが、こちらは未だ実現してない。KSM News and Research -
2024.07.18
ペルノ・リカール、ワイン事業を売却
仏酒造大手ペルノ・リカールはこのほど、ワイン事業の売却を決めた。ごく一部の銘柄を除き、全体を投資ファンドのグループに売却する。売却額は未公表。売却されるのは、ペルノ・リカールの売上高のほぼ4%相当のワイン事業で、年間9リットル入りケース1000万体程度を販売している。オーストラリアのオーランド、ジェイコブス・クリーク、セント・ヒューゴ、ニュージーランドのストーンリー、ブランコット・エステート、チャーチロード、スペインのカンポ・ビエホ、イシオス、アスピリクエタなど。ペルノ・リカールは、シャンパーニュのMummとペリエジュエ、最近に買収したロゼワインのサントマルグリット、カリフォルニアワインのケンウッドとMummナパは手元に残し、主力の蒸留酒ともども、高級志向を鮮明に打ち出す。買収者となるコンソーシアム「AWL」は、投資ファンドのベイン・キャピタルが主導し、インターメディエート・キャピタル、ソナAM、サムエル・テリーAMが出資している。オーストラリアワインのアコレード・ワインズを既に傘下に収めており、今回の買収で事業規模をさらに広げる。KSM News and Research -
2024.07.18
ピエール神父に性的暴行疑惑:7人の女性が告発、ゆかりの団体が発表
困窮者の救済事業に尽力したカトリックの聖職者「ピエール神父」(2007年没)に性的暴行・セクハラ疑惑が浮上した。7人の女性の告発を受けて、ピエール神父が設立の3団体(エマウス・インターナショナル、エマウス・フランス、ピエール神父財団)が独立組織による調査を行い、その結果を17日に公表した。ピエール神父は1954年冬に有名な呼びかけを行い、住居のない困窮者の救済を訴え、世論を動かした。その後も精力的に活動し、困窮者に職を与えて生活の安定化を図る目的で、廃品を回収して修理などを経て販売する事業「エマウス」を立ち上げ、また、数度に渡り下院議員を務めるなど活躍した。2007年に94才で亡くなった。発表によると、告発した7人の女性は、1970年から2005年にかけて、「性的暴行または性的ハラスメントに類する行為」の被害を受けた。団体の職員やボランティア、知人などが被害を受けた。うち1人は事件当時に未成年者(16-17才)だった。団体側は、ほかにも被害を受けた女性からプライバシーを完全に守り証言を得るための仕組みを整え、被害者らに支援を約束した。ピエール神父本人は、2005年のインタビューにおいて、女性と性的関係を持ったことがあると認めていたが、恒常的な関係を持たないよう努めていたなどと言明していた。また、聖職者の妻帯を認めないカトリック教会の方針に異議を唱えていた。カトリック教会にとって、ピエール神父は傍流だが社会全体への訴求力を持った存在であり、一部には偶像視をされていたこともあって、性的暴行事案の発覚に伴う打撃は大きい。KSM News and Research -
2024.07.18
仏ベンチャー企業の資金調達額、1-6月期に前年同期並み42億6000万ユーロ
EYの集計によると、仏ベンチャー企業の資金調達額は2024年1-6月期に42億6000万ユーロとなり、前年同期と同じ水準を記録した。同調達額は、2022年1-6月期に83億9000万ユーロと記録的な水準を達成。2022年通年では134億9000万ユーロとやはり極めて大きな額となったが、2023年1-6月期には42億6000万ユーロへ後退、同年7-12月期には40億6000万ユーロまで下がっていた。2024年に入って回復傾向が見え始めたが、数字の上では前年同期と同じ水準にとどまった。この1-6月期には、ミストラルAI(4億6800万ユーロ)とEV充電器網を展開のエレクトラ(3億400万ユーロ)が3億ユーロ越えの大型調達を成功させた。大型案件は2023年には冷え込んでおり、復調を示す材料となった。これに、水素モビリティのHysetco(2億ユーロ)、AI開発のH Company(1億8400万ユーロ)、ビジネスソフトのPigment(1億3400万ユーロ)が続いた。調達額で上位5社を、AI・ソフトウェアとグリーンテックが占めた。近隣諸国との比較では、英国が84億7000万ユーロでフランスを大きく上回っている。ドイツは36億5000万ユーロでフランスには及ばなかった。フランスでは総選挙を経て政局が混迷しており、これが下半期にかけて資金調達環境の悪化を招く要因となることが懸念されている。KSM News and Research -
2024.07.17
キャディ、会社清算決まる
スーパーマーケットの買い物カートを製造するキャディ(Caddie)社の清算が決まった。サベルヌ地裁商事部が、会社更生のめどが立たないと判断し、即時の清算を決めた。従業員110人は失職する。キャディはアルザス地方の企業で、針金製造のアトリエ・レユニ社(1928年創設)を前身とする。1957年に大型店舗向けの買い物カートのコンセプトを米国から移入し、「キャディ」の商標(1959年に出願)にて製造・販売した。高度成長期の大量消費時代のトレンドに乗り、郊外型の大型店舗の展開が広がるのと軌を一にして成長を遂げた。消費社会が曲がり角を迎えた1990年代から徐々に業績が傾き、2012年に初めて会社更生法の適用を受けた。その後、立て直しの試みが数度に渡りなされ、合計で1400万ユーロ程度の公的資金も投入されたが、いずれも失敗に終わり、4回目の会社更生法適用を経て、最終的に会社清算が決まった。今回は、現親会社のコシェ・グループと、その前の経営者ドデュー氏が買収の意思を表明したが、裁判所はいずれも不十分な内容とみて採用せず、幕引きを決めた。KSM News and Research -
2024.07.16
エアバスとタレス、衛星事業の統合を検討か
仏経済紙ラトリビューンは、エアバスと仏タレスが双方の衛星事業の統合を検討していると報じた。初期段階の協議が始まったという。両社はこの報道についてコメントに応じていない。 タレスは、67%株式を保有する子会社タレス・アレニア・スペース(TAS)を通じて、衛星建造等の事業を展開している。残りの33%株式は伊レオナルドが保有する。タレスは先に、衛星部門の従業員数8000人のうち、1300人を削減すると発表しており、フランス国内のカンヌ及びトゥールーズの工場において主に削減される予定となっている。エアバスも業績下方修正に伴い人員削減計画を9月にも発表することになっている。両社が衛星事業を統合すれば、重複している部分も多いため、かなりのコスト節減を見込める。 これまでにも、この種の統合の噂はあったが、いずれも成功していない。大手同士の合併となると、競争問題が発生して実現が難しくなる。エアバスとTASの場合は、両社合計で欧州の衛星市場において65%程度のシェアを確保することになり、欧州委員会など関連当局機関の許可を得るのは難しくなる。ただ、近年では風向きも変わってきた。欧州内でも、後発の独OHBが成長し、宇宙ベンチャーの参入も増えており、米中からの攻勢など国際競争も厳しくなっている。大手間の合併に向けての環境は以前よりは良好で、大型の合併が実現する可能性もある。 KSM News and Research -
2024.07.16
左派連合の3党、チュビアナ氏を首相候補に推薦:左翼LFIは反対
報道によると、左派連合「新民衆戦線(NFP)」に加わる4党のうちの3党(社会党、環境派EELV、共産党)が、首相候補としてローランス・チュビアナ氏を推薦する方針を固めた。左翼政党「不服従のフランス(LFI)」に提案するという。LFIはこの人選に反発している。 チュビアナ氏は女性で73才。外交官で大学教員も務めた。ジョスパン左派内閣で環境問題の顧問を務め(1997-2002年)、気候変動対策パリ条約(2015年)の交渉にも関わった。マクロン大統領がくじ引きで市民を招集して編成した気候対策全体会議の座長も務め、マクロン政権との間の関係も良好に保っている。社会党・EELV・共産党は、市民社会の代表として、また、独立した人材として、同氏の登用を推しているが、左翼政党LFIは、マクロン政権に歩み寄る人事になるとしてこの人選に反発している。15日夜の時点でまだ正式にはLFIに提案されていないといい、左派連合内で合意が得られるかどうかはまだわからない。また、この人選でLFIと他の3党との対立が鮮明になる可能性があり、3党が人選を強行すれば、左派連合は瓦解する可能性がある。3党がマクロン大統領派との連携に向かう可能性も否定できなくなる。 一方、アタル内閣は16日に最後の閣議を開き、正式に総辞職する。アタル首相をはじめ、総選挙に出馬して当選した議員らは18日に始まる下院での審議を主戦場とし、アタル内閣は職務執行内閣に移行する。どの程度の期間になるかはわからないが、パリ五輪と夏季休暇をやり過ごした後、9月中の新内閣発足を目指すという線が有力になっている。 KSM News and Research -
2024.07.16
EU人口、移民純流入により増加
欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタット(Eurostat)によると、EUの人口は2024年1月1日時点で4億4920万人となり、2023年1月1日の4億4760万人を160万人ほど上回った。新型コロナウイルス危機の影響で2020年と2021年に減少を記録した後、2022年と2023年には増加が続いた。 EU人口の自然増減は2011年まではプラスだったが、2012年にはマイナスに転じ、それ以後もマイナスが続いている。従って、2011年以後の人口増(2019年まで増加が続き、上記のように2年間の減少を経た後に、2年連続で増加)は移民の純流入がもたらしている。 2023年には死者数が484万人に達して、出生者数(367万人)を約120万人上回った。しかし、移民の純流入数が280万人に上り、差し引きで約160万人の人口増をもたらした。なお、移民の純流入数は2021年には90万人だったが、2022年には300万人、2023年は前述のように280万人と増えている。 2024年1月1日時点の国別人口は最少がマルタの60万人、最多がドイツの8340万人。3大国(独仏伊)はEU人口の47%を占めている。 2023年にEU全体で人口が増加したにもかかわらず、7ヵ国では人口が減少した。特にポーランドは13万2800人減、ギリシャは1万6800人減、ハンガリーは1万5100人減を記録(ほかに、イタリア、ブルガリア、スロバキア、ラトビアで減少)。対照的に、スペインは52万5100人増、ドイツは33万人増、フランスは22万9000人増を記録した。 KSM News and Research -
2024.07.15
パリ五輪、交通規制が新段階迎える
パリ五輪に伴う交通規制が15日に新段階に入った。全長で185kmの五輪関係者向け専用レーンが設置された。関係者以外の走行が禁止される。 北部では、高速道路A1のロワシー・シャルルドゴール空港からパリのポルトドラシャペルまでの区間、東部ではA4のベルシーと「コレジアン」(カヌー・カヤックの競技場付近)までの区間、西部ではA13のサンクルーからロカンクールまでの区間(A12も同様)が対象となる。また、パリ環状自動車専用道のポルトドバンプ・ポルトドベルシー間(北回り)、さらに、パリ市内から副都心ラデファンスに続く大通りとラデファンスの周囲の環状道も対象となる。パリ市内などにも専用レーンの設定がなされる。専用レーンを通行できるのは、組織委が認めた車両のほか、タクシー、公共交通機関、消防・救急等の車両で、プレートナンバーが登録されており、当局が違反行為を監視・摘発する。専用レーンにはしかるべき表示がなされ、区間により8月13日まで規制が適用される。一部の区間については、五輪後もカーシェアリング向けなどの専用レーンとして恒久化される。詳しい情報は、専用アプリ「Sytadin」や専用サイト「anticiperlesjeux.gouv.fr」にて発信される。 KSM News and Research -
2024.07.15
プロサッカー1部リーグの放送権、DAZNとBeINSportsが獲得へ
報道によると、仏プロサッカー1部リーグ(リーグアン)の来季以降の放送権を巡り、仏プロサッカー連盟(LFP)と2事業者の間で基本合意が成立した。開幕(8月16日)より1ヵ月前というぎりぎりのタイミングで決まった。近く契約が締結されるという。 契約を獲得したのは、英DAZN(ストリーミング事業者)とBeINSports(カタール資本の有料テレビ局)の2社。DAZNは年間4億ユーロを支払い、各節の9試合(リーグアンを構成する18チームが対戦)のうち8試合の放送権を確保する。BeINSportsは、1億ユーロ程度を支払い、残り1試合の放送権を得る。有料テレビ大手カナルプリュスは、BeinSportsと販売契約を結んでいるため、従来通りに好カードの放送を確保できる。2024-29年が対象だが、2026年で契約を打ち切る権利の設定を巡り、DAZNとの詰めの協議がまだ残っているという。 リーグアンは、かつては主力コンテンツだったが、現在ではその価値は下がっている。2020年にはメディアプロ(スペイン)が多額の権利料で放送権を確保したが、立ち行かずに放送権を放棄し、代わりの事業者を見つけるのに苦労したという経緯もある。今回も応募は振るわず、一時は仏プロサッカー連盟が自前で放送・配信を手配するという案まで浮上したが、より古典的な契約締結に落ち着いた。ただ、契約額は連盟のラブリューヌ会長が期待していた年間10億ユーロと比べて半分程度に過ぎない。放送権収入は各チームの収入にも直結するため、会長の立場が弱体化するのは避けられない。 KSM News and Research -
2024.07.15
総選挙後の混乱:左派連合、首相候補擁立に失敗
総選挙後の内閣樹立に向けた動きが空転を続けている。最大勢力となった左派連合「新民衆戦線(NFP)」は14日までに首相候補を一本化できなかった。 首相候補選びでは、左派連合に加わる共産党が、共産党系の女性政治家であるユゲット・ベロ氏を推薦。ベロ氏はレユニオン海外地域圏の議長を務め、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」とも共闘関係にあることから、LFIの賛同が得られる人物として浮上した。LFIを率いるメランション氏も同氏の人選を承認した。ただ、今回の選挙で顕著な復調を見せた社会党が譲らず、ベロ氏も立候補を取り下げた。社会党のフォール第一書記は、左寄りのかじ取りで復調を成し遂げた功績を盾に、自らの首相就任を求めて譲らず、合意は成立しなかった。左派連合が一枚岩ではないことが改めて確認されたことで、左派連合に本当に政権を運営する求心力があるのか、疑念が高まっている。左派連合では、下院が初招集される18日までに首相候補を擁立することを目指すとしている。 対する連立与党陣営では、アタル首相がルネサンス党の議員団団長に選出された。ダルマナン内相やボルヌ前首相の立候補を抑止した上で就任を果たした。ただ、ルネサンス党内では、右派と左派の間の対立が一段と高まっており、こちらも求心力を維持するのは困難とみられている。 他方、保守系日刊紙ルフィガロは、左派連合が政権を獲得する可能性をにらんで、国外に移住する準備を進める人が増えていると報じた。富裕者だけでなく、起業家や管理職など、より広い層が国外脱出を目指しているのだという。所得税最高課税率90%の導入、富裕税の再導入、相続税の課税強化などの展望を嫌気して、外国に資産の移転を希望する人が多いのだという。 KSM News and Research -
2024.07.12
フランスの貧困水準は前年並み、貧富の格差は依然大きく
7月11日発表のINSEE統計によると、フランスにおける世帯可処分所得と貧困の水準は2022年にほぼ前年並みとなった。フランス本土における相対的貧困線(月額所得1216ユーロ)以下の貧困者は910万人となり、前年比で2万8000人増加したが、人口に貧困者が占める割合は14.4%と前年比で0.1ポイント低下した。この割合は新型コロナ危機が始まった2020年を除くと2018年以来、ほぼ一定している。INSEEでは、法定最低賃金(SMIC)と老齢年金の引き上げ、政府による貧困層の購買力支援措置が奏功したと説明している。 カテゴリー別に見ると、自営業者の貧困率が2021年の14.6%から2022年の18.3%に上昇したが、これは新型コロナ危機に絡む支援措置の終了に伴うものと考えられる。また、単身世帯の貧困率も上昇したが、一方で労働市場の好調を受けて給与所得者の貧困率は低下した。 一方、2021年に拡大した貧富の格差は2022年は前年並みに落ち着いたものの、依然大きい。INSEEによると、所得上位20%の富裕層の可処分所得は下位20%の貧困層の可処分所得の4.4倍だ。ただし、インフレ対策や新年度の支援など低所得者に的を絞った支援のおかげで、所得下位10%の可処分所得は0.3%増加し、2019年と比べて2.4%改善した。 これとは別にINSEEが同日発表した物質的・社会的困窮に関する統計によると、2023年初頭時点で900万人、人口の13.1%が困窮状態にあるとされ、上記の貧困に関するデータと一致する。困窮者数はほぼ前年並みだが、10年前からは明らかに増えているという。特にひとり親家庭と子どもが3人以上いる家庭が困窮しており、農村部より都市部に困窮者が多い。この3年間で給与所得者と労働者の困窮リスクも増加している。 KSM News and Research -
2024.07.12
ルメール経済相、2024年中に100億ユーロの追加節減を決定
ルメール経済相は11日、2024年中に追加で100億ユーロの節減を実施することを決めたと発表した。各省に予算枠の縮小を通知した。 仏政府は欧州委員会に提出した中期財政計画の中で、2024年の財政赤字の対GDP比を5.1%まで圧縮する(2023年は5.5%)ことを約束している。解散総選挙後の政権発足の展望が開かれない中で、予算運営の先行きも危ぶまれている。この先の展開がどうなるとしても、赤字縮小に向かう道を指し示すことで、真剣な財政運営の姿勢を内外にアピールするのがこの発表の真意と考えられる。 100億ユーロの節減のうち、50億ユーロは中央省庁の支出削減により達成。ただし、節減努力の省庁ごと、予算項目ごとの配分などについては明らかにされておらず、決定の有効性については疑念もある。残りの50億ユーロのうち、電力会社の「儲け過ぎ」を対象とする時限課税「CRIM」の延長で30億ユーロを確保。課税強化ではこのほか、自社株買いを対象とする課税の導入(数億ユーロ)を予定する。あとは地方自治体による節減努力に期待するが、国には地方自治体に対して節減を義務付ける権限はない。 政府はこれまでに、100億ユーロの節減を追加実施しており、それに加えて、インフレ対策の特別措置として導入していた電力課税中断措置の解除(年間50億ユーロ)、処方薬の自己負担分の拡大(同6億ユーロ)を決めた。今回の発表分を加えて、総額250億ユーロ余りの節減が実現されることになる。ただ、その一方で追加の支出項目(ニューカレドニア暴動関係で4億ユーロ程度、解散総選挙の費用が1億-2億ユーロなど)もあり、財政赤字削減目標を達成するのに十分であるかは定かではない。次期政権が財政健全化に意欲を示すかどうかも未知数で、先行きへの懸念も高まっている。 KSM News and Research -
2024.07.12
仏デジタル広告市場、2024年には100億ユーロを突破へ
デジタル広告業界団体SRIがオリバー・ワイマンに依頼して実施しているデジタル広告統計によると、1-6月期の仏デジタル広告市場規模は51億ユーロとなり、前年同期比で14%の成長を記録した。前年同期には、成長率が5%まで減速していたが、2023年7-12月期には25%の大幅増を記録。2024年に入っても成長の勢いが持続した。2024年通年の市場規模は103億ユーロと、初めて100億ユーロの大台に乗る見通し。成長率は10%以上になる。 1-6月期の市場の内訳をみると、SNSが25%増の14億ユーロ近くを記録。中国のファーストファッション大手SHEINやTEMUなどの大口広告主がSNS上の広告需要を押し上げているものとみられる。他方、アフィリエイト・メーリング・価格比較サイトは1%増の4億5000万ユーロで頭打ちとなった。ディスプレイ広告は、動画ストリーミングサイトにおける広告が特に好調で、15%増の9億4000万ユーロの規模に達した。検索も11%増の22億4000万ユーロと大きく増加した。 なお、インターネット大手のグーグル、メタ、アマゾンの3社だけで、広告市場全体の71%を占有(35億ユーロ強)した。この割合は、前年同期の67%を上回り、一段と大手の独り勝ちの様相が強まった。 KSM News and Research -
2024.07.11
フランス中銀の月例景況調査:総選挙に伴い先行き不透明感広がる
フランス中銀は7月10日、企業対象の月例景況調査の結果を発表した。総選挙の結果を受けて、経済界に先行き不透明感が広がっていることを印象付けた。この調査は、毎月8500社を対象にアンケートを行い、その結果を集計している。今回の調査は、6月26日から7月3日にかけて行われ、総選挙第1回投票後の時期も含まれている。 これによると、6月には、民間サービス部門でわずかな成長を記録。工業部門と建築部門では、前月の停滞(休日日数が多かった)の反動で、より顕著な成長を記録した。7月の事業見通しでは、工業部門で前月と同様の成長が予想されているが、サービス部門では成長が鈍化する見込みで、建築部門では横ばいとなる。先行き不透明感を示す指数は、大きく跳ね上がり、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後に生じたエネルギー危機時以来で最高の水準に達した。工業部門では、航空宇宙を除くすべての分野で、受注残の水準が不十分とする回答が目立った。建築部門でも受注残の水準に懸念が示された。先行き不透明感の原因としては、総選挙に伴う政局混迷を挙げる人が多かった。 フランス中銀は、4-6月期の経済成長率(前の期比)を0.1%と予想。2024年通年経済成長率については0.8%との予測値を維持した。INSEEは総選挙の影響を除外して1.1%とする予測を示していた。総選挙の影響については、ゴールドマンサックスは、短期的にわずかにネガティブな影響が生じると予想。10-12月期と2025年1-3月期の経済成長率予測も0.1ポイントずつ下方修正した。 KSM News and Research -
2024.07.11
100万ドル超の資産家数、フランスで2023年に1.6%増
スイスUBS銀行が10日に発表した「グローバル・ウェルス・リポート」最新版によると、資産額が100万ドルを超える資産家の数はフランスでは286万8031人となり、前年比で4万7000人、率にして1.6%増加した。ただし世界では前年の3位から4位に後退した。首位は米国で2200万人弱(世界全体の38%相当)、中国が600万人(同10%相当)で続き、第3位は、昨年5位だった英国が上昇した。資産家数は300万人強となり、前年の250万人から大きく増えた。フランスが4位で、この下には日本とドイツが続いた。 世界全体では、資産家数は2022年に前年比で3%減を記録した後、2023年には4.2%増に転じた。欧州・中東・アフリカ地域で4.8%増、アジア太平洋地域で4.4%増と、世界全体よりも大きな増加を記録した。 フランスでは、2023年に資産家の平均資産額は前年比で5%を超える上昇を記録した。ユーロ建てでは上昇率は1.75%にとどまるが、上昇傾向は2008年以来で持続している。全体の中で、資産家における資産額の増加の勢いが、ほかに比べてより大きいことがわかるという。2028年まででは、フランスの資産家数は、45万人の増加(率にして15%増)を記録する見込み。 KSM News and Research -
2024.07.11
マクロン大統領、「共和国支持」勢力に結集促す
総選挙後の新政権樹立の展望が立たない中で、マクロン大統領は10日午後、地方紙を通じて、国民向けのメッセージを公表した。堅固な過半数を確保するために、共和国支持派のすべての勢力に協議するよう呼びかけた。 大統領はこの中で、有権者が極右の台頭を阻む選択をしたことを歓迎しつつ、どの勢力も単独では十分な勢力とはなりえない現実があると指摘し、共和国を支持する勢力にのみ過半数を確保するチャンスがあると説明。共和国の制度、法による支配、議会民主主義、国の独立性、欧州重視の方針のいずれについても擁護ができるすべての勢力に向けて、過去のいきさつを乗り越えて、共通の価値に基づいた協力の道を探るよう呼びかけた。そのためには時間がかかるだろうとも述べて、早期の決着を図る可能性を否定した。大統領はまた、選挙結果について、国民が変化を求め、また権限の集中を望まないことの表明であるだろうと述べて、自らも譲歩に応じる考えをにじませた。 大統領のメッセージからは、極右RNに加えて、左派連合の中核をなす左翼政党「不服従のフランス(LFI)」も外して、それらの中間に位置する勢力を幅広く結集しようとする意志がうかがわれる。左派連合の結束がどの程度であるのか、LFIから他党を引き離すことができるかが成功の鍵を握ることになる。右派の共和党に協力を仰ぎ、右寄りの結集を図るという方法もあり得るが、その場合には、マクロン大統領のルネサンス党の内部にある左右勢力の対立が激化し、空中分解を招く展開となることも考えられる。共和党の院内会派を率いることになる有力者のボキエ氏は、連立与党入りの可能性を繰り返し否定しているが、政策パッケージで合意してその遂行に協力する可能性については含みを残している。再編の行方がマクロン大統領の目論見通りに進むのか、今後が注目される。 KSM News and Research -
2024.07.10
サルコジ元大統領夫人が容疑者認定、証人買収疑惑に絡んで
サルコジ元大統領の夫人であるカーラ・ブルーニ氏が、元大統領のリビア資金不正取得に絡む事件で予審開始通告を受けていたことが、9日までに明らかになった。予審は、担当の予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続き。証人買収の秘匿などの容疑で予審の対象となる。 サルコジ元大統領は、2007年の大統領選挙(当人は落選)の資金確保のため、不正にリビアのカダフィ政権(当時)から資金を得ていた疑いをもたれており、この件では起訴が決まっている。この事件に関して、仲介役を果たしたとされるレバノン系実業家タキエディン氏が2020年に、写真誌パリマッチの取材に応じて、それまでの証言を翻し、元大統領にリビア資金が渡った事実はないと言明した。この前言撤回が、実は買収による虚偽の言明である疑いが後に浮上し、レバノンまでインタビューに訪れたパリマッチの芸能女性ジャーナリストのミシェル・マルシャン(通称ミミ)をはじめ、Onepoint(ITコンサル)のラヤニCEOなど、関係を疑われて10人程度が予審開始通告を既に受けている。サルコジ元大統領もこの件で、証人買収秘匿などの容疑にて予審開始通告を既に受けており、今回、それが夫人にまで広がった。モデル・歌手として芸能活動を行っていたカーラ・ブルーニ氏はミシェル・マルシャン氏とは旧知の中であり、警察の調べによると、タキエディン氏に証言を撤回させる動きについて、本人名義ではない隠れ回線を通じて、マルシャン氏とやり取りをしていたという。ブルーニ氏は予審開始通告後に釈放されたが、夫を除いて事件の関係者らと接触することを禁じられた。 KSM News and Research -
2024.07.10
食品加工業における再生水利用、法令の整備が完了
仏政府は9日、食品加工業による再生水利用の条件について定める政令及び省令(アレテ)を各1本、官報上で公示した。これで法令上の枠組みがすべて整った。 フランスでは気候変動を背景に水不足が深刻な問題として浮上している。足元では、春季の多雨もあって、地下水系の水位は十分な水準に達しているものの、中長期的には水不足が常態化するものと予想されている。再生水は、フランスでは全体の1%が利用されているにとどまっており、利用を拡大できれば水不足の対策として効果を発揮するものと期待されている。 公示された政令等は、食品加工業において、自前の排水処理による再生水を洗浄といった一部工程に用いることを主に念頭において、再生水の品質要件などを定めている。飲用可能水と同じ配管網を通じて再生水を供給することや、食品の原材料として一部の再生水を用いることも認めている。 食品加工業は、水不足により国内生産が制限されることに懸念を強めており、その回避のために再生水の利用に期待を寄せている。業界側によると、再生水の利用により、業界の飲料水の消費量は15-80%の節減が可能だという。 KSM News and Research -
2024.07.10
欧州の「アリアン6」ロケット、初打ち上げに成功
欧州宇宙機関(ESA)の依頼により開発された大型ロケット「アリアン6」の初打ち上げが9日に成功した。関係者は成功に安堵している。 アリアン6は、アリアン5を後継する大型ロケットだが、開発には4年の遅れが生じた。アリアン5は既に退役しており、提携先だったロシアのソユーズ・ロケットの事業を失った欧州にとって、小型ロケット「ヴェガ」が不具合のため運用休止(2022年末以来)となる中で、宇宙への自前のアクセスが途絶えるという状況が生じていた。アリアン6の成功により、宇宙へのアクセスを再び確保することができた。 アリアン6は初回打ち上げにおいて17体の宇宙機を搭載。それには、研究機関等による11基の超小型衛星や、大気圏再突入用のカプセル2基などが含まれる。衛星の軌道投入などのミッションにはいずれも成功した。ただし、新開発のVinciエンジンの3回着火機能により最上段を地上まで帰還させるミッションには失敗した模様。 アリアン6は今後、年内に新たな打ち上げ(軍事観測衛星を搭載)を予定する。次いで2025年には、欧州衛星測位システム「ガリレオ」向け衛星の軌道投入を皮切りとして6回、2026年には8回の打ち上げを予定する。 KSM News and Research -
2024.07.09
総選挙:最大勢力の左派連合、首相候補選びに着手
総選挙の結果を受けて、最大勢力となった左派連合「新民衆戦線」は首相候補選びの協議に着手した。マクロン大統領に対して、憲政の常道に従って、最大勢力から首相を任命するよう要求している。 マクロン大統領は投開票の7日夜の時点から、熟考して判断を下すと表明しており、どのような決定をどのような日程で下すのかは明らかにしていない。大統領周辺からは、左派連合の最左翼である「不服従のフランス(LFI)」と、極右勢力の両方を排除した幅広い連立を形成し、主導権を維持する方向で接触が続いているという説明も聞こえてくる。 そうした中で、左派連合の側では、大統領派の切り崩しにはなびかずに、結束を維持して事に当たると繰り返しており、今週中にも首相候補を一本化し、マクロン大統領に指名を求めるとの展望を示している。ただ、最大勢力とはいえ、左派連合の議席数では過半数には遠く及ばず、首相指名を得たとしても議会で信任を得られるか心もとない。政局運営も極めて困難になるのは確実で、例えば与党勢力の左派を切り崩して過半数はないにせよある程度の規模を確保するという作戦も考えられる。現段階では見通しがまだ開けていないが、首相候補選びにはそうした展望が影響を及ぼすことも考えられる。 結束を強調してはいるが、左派連合は一枚岩ではない。特に、左翼政党LFIを率いるメランション氏は、自ら首相を務めることに乗り気ではあるようだが、尖った人物であるために左派連合内部にさえアンチも多い。社会党は、一時は勢力を弱めていたが、今回の選挙ではかなり勢いを増しており、無所属議員や、LFIを様々な理由で離脱した議員なども取り込めば、LFIを上回る院内会派を形成できる可能性もある。そのため、首相候補選びでは声を高めてくることが考えられる。環境派EELVでは、トンドリエ代表が今回の総選挙において、自らは出馬していないがメディア稼働を増やして反極右をアピールし、一定の人気を集めており、左派系日刊紙リベラシオンなどは新時代のリーダーとして持ち上げている。左派連合内のつばぜり合いも活発化しており、先の読めない状況が続いている。 KSM News and Research -
2024.07.09
ロマンス詐欺の脅威、大手銀行も注意を喚起
その人とはSNSで偶然に知り合った。間違って少しエッチな写真を送っちゃったごめんなさい、というのがきっかけだった。それからメッセージのやり取りがあって、聞けば資格取得の講座を受けるのにお金が足りないという。いわれるままに100ユーロをタバコ販売店から送金した。販売店では番号が印字されたチケットが渡されて、その番号があればどこでも換金できるという便利なサービスだ。また100ユーロを送ろうとしたら、タバコ販売店の人に止められた。これは詐欺によく使われるので大丈夫ですかという。いや大丈夫だといってやはり送った。 これがロマンス詐欺の典型的な例である。エッチな写真はもちろん本人のものではない。向こう側にいるのは女ですらない。西アフリカの某国など本場の「業者」で、大量にこの種のメッセージを送りつけて、反応があるのを待っている。類似の詐欺としては、オレオレ詐欺の変種のようなのがある。これは、WhatsAppのようなメッセンジャーアプリに「お母さん、スマホなくしちゃった。それでお金が足りないから送って」のようなメッセージを送りつけて、心当たりのある人が自動的に騙されるのを待つ、という手口だが、いずれの場合も、被害者は自発的に送金を行っている点に特徴があり、救済は難しい。大手銀行クレディアグリコルは最近に、この種の詐欺に対して警戒するよう顧客に促すキャンペーンを実施。本来は、上記の実例にもあるように、足がつかない送金サービスを用いるのが主流だが、最近では口座振替にも手口が広がっているようで、銀行もキャンペーンに乗り出したようだ。 KSM News and Research -
2024.07.09
総選挙後のパリ株式市場、比較的に平静保つ
総選挙決選投票の投開票が7日に行われたが、続く8日のパリ株式市場では、代表的株価指数CAC40が終値で0.63%安を記録。比較的に小幅な低下にとどまった。先が読めない展開となったことで、市場ではしばらくは手探りの動きが続くとみられる。 選挙では、極右RNが第3の勢力にとどまり、連立与党が第2位で予想外の健闘を見せた。首位となったのは左派連合で、やはり予想外の成績を残したが、いずれの勢力も過半数には遠く及ばず、新内閣の構成がどうなるか、今後の政局運営がどうなるのかは予想がつかない状況となった。左派連合は、極右RN以上に費用高の一連の公約を掲げており、それが首位になったことは、国家財政の今後にとって懸念材料となりうる。過半数確保のめどが立たないことは、そうした「危険な」公約実現の可能性が遠のいたことを意味するが、その一方で、政局の空転が続けば、財政健全化の道筋を示すこともまたできなくなる。フランスの財政状況は欧州諸国中でもかなり悪い状態にあり、政府は9月20日までに欧州委員会に健全化に向けたプランを提出する必要があるが、これが遅れるなどした場合、フランス売りが広がる恐れがある。10年物長期金利の独仏スプレッドは、6月27日時点で82ベーシスポイントまで開き、現在は60ベーシスポイント近くまで下がっているが、市場関係者らは、今後数ヵ月間で60-80ベーシスポイント程度で推移すると予想。ただ、夏季に投機筋が動いて、仏国債に揺さぶりをかける可能性も否定できず、三すくみの政局混迷が続いて財政健全化の方向を打ち出せないなら、厳しい状況に追い込まれる可能性もある。 KSM News and Research -
2024.07.08
トタルエネルジー、電力・ガス顧客向けに自動車燃料料金引き下げを検討(CEO)
仏石油大手トタルエネルジーのプヤネCEOは7月6日、同社の電力・ガス顧客向けに、自動車燃料料金上限の引き下げを検討すると述べた。エクサンプロバンスにおける経済フォーラムにおいて明かした。極右の台頭といった国内の状況や、物価高に対する国民の強い反発に配慮し、企業としてあえて採算を度外視した措置を講じる考えを示した。 燃料価格高騰の悪影響を抑制するため、トタルエネルジーは2023年3月以来、仏国内のガソリンスタンド網でのガソリン・軽油価格に1.99ユーロ/リットルという上限を設定している。CEOは、トタルエネルジーの電力・ガス供給サービスを受けている顧客に対し、この上限を引き下げる可能性を示唆した。CEOは、1.99ユーロという上限の設定について、「経済的には合理的とは言えないが、エネルギー価格高騰に伴い、市民の怒りが沸き上がっているために導入した」と、企業の社会的責任に基づいたものだと説明した。CEOによれば、輸送費の高さで小売価格も高くなりがちな農山漁村地域において、特にこの措置の恩恵は大きいという。プヤネCEOはすでに、上限を2024年中維持する方針を明らかにしており、2025年以降の維持も示唆している。 KSM News and Research -
2024.07.08
総選挙決選投票:与党連合と左派連合、極右RNの阻止に成功
総選挙の決選投票が7日に行われた。極右RN(国民連合)の阻止を目的とする与党連合と左派連合の協力が効果を発揮し、RNは獲得議席数では躍進ができなかった。最終的な獲得議席数では左派連合がトップ、与党連合が2位となり、RNは3位にとどまった。投票率は66.63%と高く、有権者の関心の高さをうかがわせた。 総選挙は小選挙区制・2回投票制で行われ、第1回投票で過半数候補がなかった選挙区では、一定以上の得票率を確保した候補らによる決選投票が行われる。3人以上の候補が出場権を得た選挙区において、与党連合と左派連合は、優勢な候補に道を譲って立候補を取り下げるという形での極右阻止の選挙協力を決めた。その効果があり、RNは、投票前の予測とは異なり、第1党の地位を得ることができなかった。決選投票における得票率は、RNが32.05%で最も高く、これに左派連合が25.68%、与党連合が23.15%で続いた(ただし、進出候補の数がRNでは多いため、決選投票における得票率の比較は支持の状況を正確に反映したものとはならない)。獲得議席数では、与党連合が148議席で最も多く、これに左派連合が146議席で続いた。RNは提携先を含めて104議席(RNのみでは88議席)で第3位にとどまり、予想されたほどは伸びなかった。 第1回投票で当選を決めた候補者を含めた改選後の各勢力の議席数をみると、全議席577議席のうち、左派連合は180議席を獲得し、最大勢力となった。与党連合は163議席で第2の勢力となった。極右RNは、提携先(保守野党の共和党を割って出たシオティ党首派)を含めて143議席(うちRNは125議席)となり、改選前から比べて勢力を伸ばしたものの、第3の勢力にとどまり、念願の単独過半数はもとより、最大勢力になることもできなかった。このほか、共和党は、提携先を含めて66議席(共和党のみだと39議席)を獲得した。 与党連合と左派連合は、極右による政権獲得を阻止することはできたものの、今後の政権樹立の展望は開かれておらず、趨勢を見極めるにはまだ時間が必要とみられている。単純計算では、左派連合と与党連合が手を組めば、過半数(289議席)を確保できるが、特に左派連合主軸の左翼政党「不服従のフランス(LFI)」と与党連合の間の対立点は極めて大きく、折り合いをつけるのは難しい。左派連合の中間層から右派までを取り込むという再編型の新政権発足という展望もなくはないが、切り崩しができるとは限らず、また、両端では立場がかなり異なる勢力の糾合が可能なのか、疑問は多い。与党連合は改選前の最大勢力の座を譲り渡したわけで、主導権を発揮できる立場でもなくなった。アタル首相は総選挙後の通例として辞表を提出。次期政権が固まるまで、職務執行内閣を率いて首相の座にとどまることになる。 なお、選挙に出馬した閣僚のうち、ゲリニ公務員相はパリ市内の選挙区で、環境派候補に敗れて落選。エルアイリ家族担当相は、ロワール・アトランティック県の選挙区で、三つ巴戦の末に、社会党候補に敗れて落選した。それ以外の出馬候補は、アタル首相やダルマナン内相など主要閣僚を含めて当選した。このほか、注目の選挙区では、ボルヌ前首相と改選前のプロンピベ下院議長が当選。ベラン元保健相は三つ巴戦を経て、左翼LFIの候補に敗れて落選した。オランド前大統領は地元のコレーズ県の選挙区で当選。LFIの人気政治家フランソワ・リュファン候補は、与党連合の立候補取り下げのおかげで極右RNの候補を抑えて再選を果たした。極右RNを率いるマリーヌ・ルペン氏の姉に当たるマリーカロリーヌ・ルペン候補はLFIの候補に敗れて落選。共和党党首でRNとの協力に転じたシオティ候補は、地元ニースの選挙区で再選を果たした。極右小政党を率いるデュポンテニャン候補はエソンヌ県の選挙区で落選し、27年に渡り務めた議員職を失った。 KSM News and Research -
2024.07.08
ドイツ連立与党、2025年予算法案を巡り合意
ドイツ連立与党はこのほど、2025年予算法案を巡り基本合意に達した。厳しい協議を経てようやく合意が得られた。 連立与党の各党のうち、社民党(SPD)と緑の党は、景気刺激やエネルギー移行などのための財政支出を優先。対する自民党(FDP)は財政規律の順守を掲げて対立が目立っていた。困難な交渉を経て、5日にようやく基本合意がまとまった。 合意によると、2025年予算の規模は4810億ユーロで、インフラ向け公共投資、安全保障、経済振興の3項目が優先課題に設定された。うち、インフラ投資では、鉄道、高速道路、公共交通機関、デジタルなどの分野向けに、投資額を530億ユーロから570億ユーロへ引き上げる。安全保障では、北大西洋条約機構(NATO)への公約に沿って、国防費を対GDP比で2%へ引き上げる方針を確認。2028年時点で800億ユーロへ拡大することを決めた。国防軍特別基金を通じた財源確保を進めるが、2028年に同基金が尽きた後の展望は示されていない。法人及び個人を対象とする経済成長支援では、2025年と2026年に230億ユーロという金額を設定した。EV等購入時の減価償却の条件の改善、電力課税減税措置の延長などを盛り込んだ。支援策により経済成長率を0.5ポイント押し上げる効果が期待できるという。 財源面については、景気低迷に伴い、財政規律の適用基準が緩和されることから、2024年中では113億ユーロの赤字国債発行が可能になり、財政運営の助けとなる。資本取引を財政規律の埒外に置く規定を活用して、ドイツ鉄道(DB)や公的年金基金の増資引き受け(合計440億ユーロの債務増が可能に)も行う。 KSM News and Research -
2024.07.05
ガラス容器のデポジット・リユース制度、試験導入が開始
ガラス容器のデポジット制度の試験導入が2025年5月に始まる。北西地方に限定して試験導入がなされる。 ガラス容器にデポジット料を乗せて販売し、容器回収と共にこれを返却するという制度は、フランスでもかつては一般的だった。その後、プラスチック容器の利用拡大などの要因を受けて1980年代末から1990年代初頭には姿を消したが、環境配慮への意識が強まる中で、容器のリユースへの関心が高まっている。これまでにも各種のデポジット制度の試験導入の試みがあったものの、様々な障害があり、いずれも普及はしなかった。今回は、リサイクル組織(汚染者負担の原則に基づいて、メーカーの拠出により運営される団体)のCiteoが、食品小売業者や食品メーカーらの協力を得て、ガラス容器のデポジット制を試験導入する。18ヵ月の期間を対象に、食品小売の様々な規模の1200店舗を通じて、デポジット料と引き換えにガラス容器を回収し、洗浄の上でメーカーに供給する。対象地区の消費者数は1600万人を数え、当初は6品目、総数では3000万体程度の容器が対象となる。Citeoは、ガラス容器を自ら製造業者から購入し、これをメーカーに供与する形になるが、この購入と回収ポストの整備に1500万ユーロを投資した。洗浄業者を含めたエコシステムを育てて、デポジット制を定着させることを目指すが、消費者の参画を得ることが最初のハードルとなる。デポジット料は20-30ユーロセントになる見通し。 KSM News and Research -
2024.07.05
仏長期国債、総選挙の混乱の中でも105億ユーロ相当の起債が成功
仏国債庁(AFT)は4日、長期国債の発行を行った。10年、30年、40年物の国債を合計105億ユーロ相当売り出した。応募倍率は種類により2.4倍から2.7倍に上り、起債は成功した。 突然の解散決定から、総選挙での極右政党RN(国民連合)の台頭懸念により資本市場は大きく揺れたが、今回の起債の成功は、混乱した状況の中でも仏国債への信頼が大きく損なわれていないことを示しており、関係者らは安堵している。解散後では、6月21日に中期国債(償還期限3-8年)が105億ユーロ相当発行され、成功を収めていたが、今回は指標となる10年物国債を含む起債とあって、投資家の反応が注目されていた。AFTは、通常は120億-140億ユーロ相当を起債するが、今回は状況に鑑みて105億ユーロと規模を小さくして起債を行った。そうした工夫はあったものの、外国投資家を中心とする需要は本物で、起債は確実な成功を収めた。足元で、総選挙の決選投票の行方に関する楽観視(極右RNによる過半数確保の可能性が遠のいた)も好材料になった。独仏間の長期金利スプレッドは、第1回投票直前の6月28日には86ベーシスポイントまで開いていたが、7月4日には67ベーシスポイントまで縮小した。それでも、10年物国債の流通利回りは3.27%と高めで、値頃感が需要を支えた可能性もある。 KSM News and Research -
2024.07.05
英国総選挙で野党・労働党が圧勝、スナク首相は辞任
英国で7月4日、総選挙の投開票が行われた。中道左派野党の労働党が改選前より211議席多い412議席を獲得して地滑り的勝利を収めた。下院の定数は650議席で326議席以上を獲得すれば単独過半数を確保できる。 中道右派与党の保守党は改選前と比べて250議席を失い、同党として史上最低の121議席に後退した。保守党の有力者の中ではトラス前首相や、シャップス国防相、ビジネス・エネルギー・産業戦略相などを務めたリースモグ氏などが落選した。 この惨敗を受けて、スナク首相は5日、辞意を表明した。国王に会見した上で辞任する。保守党党首としても、即座にではないが辞任することを予告した。かわって、労働党のスターマー党首(61)が5日に国王により新首相に任命される。 ほかの政党では、中道野党の自由民主党が63議席増の71議席、スコットランドの地域主義政党スコットランド国民党が38議席減の9議席、北アイルランドのナショナリズム政党シンフェインが改選前と同じ7議席を獲得した。 KSM News and Research -
2024.07.04
総選挙決選投票:選挙後の協力を探る動き
7日に行われる総選挙決選投票を前に、選挙後の協力を探る動きが始まっている。選挙の結果を左右する可能性もある。 決選投票では、極右RN阻止を目的として、左派連合と連立与党を中心とする他の政治勢力が、他の候補に道を譲るために立候補を取り下げる動きが広がった。実際の投票行動がどのようになるかはわからないが、極右RNによる単独過半数の獲得がより困難になるのは間違いない。 いずれの勢力も過半数を得られないとなると、国会運営は改選前以上に厳しくなる。左派連合は、中核である左翼政党「不服従のフランス(LFI)」をはじめとして、マクロン政権批判を旗頭に掲げており、連立与党陣営との協力の道を探るとすれば変節になるが、それでも、連立与党の内部には、左はLFIを除く左派勢力、右は保守野党の共和党に至る幅広い勢力を糾合して、政局運営に当たるという構想が浮上している。ただ、その具体的な内容は、読みがたい選挙結果にも左右されるため明らかではない。協力のあり方についても、アタル首相などは、「連立」という言葉を使わずに、プロジェクトを推進するための多数派の形成を探るなどと述べて、案件ごとに多数派を確保するといった政局運営のあり方を示唆した。とはいえ、現在の連立与党が新たな下院において主導権を握れる可能性は低い。また、いずれの陣営にも、そうした協力を無節操とみて批判する動きがあり、極右を政権から遠ざけることに成功したとして、すんなり新政権が発足する展望が開けているわけではない。対する極右RNは、呉越同舟の既成勢力が有権者の民主的な選択を押しつぶそうとしている、などとして、反極右の「共和派戦線」を批判し、かえって集票効果につなげようと画策している。 KSM News and Research -
2024.07.04
キュータイ、AI音声アシスタントを公開
パリに発足した人工知能(AI)研究の非営利団体キュータイ(Kyutai)は3日、AI音声アシスタント「モシ(Moshi)」のプロトタイプを公開した。「100%メイドインフランス」の生成AIであることをアピールした。 キュータイは、大物実業家のニエル(通信フリーの創設者)、ロドルフ・サーデ(海運大手CMA CGMのCEO)、エリック・シュミット(グーグル出身)の3人が共同出資して8ヵ月前に発足した。3氏は3億ユーロを投資。初の成果となったモシには1000万ユーロ程度の開発費が投じられた。 モシは、大規模言語モデル(LLM)の「ヘリウム」をベースとし、音源データによりモデルをさらに育てた。実際の俳優の声を出力に用いて、ウィスパーを含む70トーンという多彩な表現力を実現し、より人間らしい対応を可能にした。相手が返事をしても遮って話し続けてしまうなどの欠陥がまだあるが、レイテンシ(反応速度)は3-5ミリ秒と、競合の160ミリ秒程度と比べて格段に小さい。モシは、プラットフォーム「Hugging Face」上で一般向けに公開され、商品化に向けてさらに改良を図る。 KSM News and Research -
2024.07.04
欧州委、ルフトハンザによるITAエアウェイズ買収を許可
欧州委員会は3日、独ルフトハンザ・グループによる伊同業ITAエアウェイズの買収を条件付きで許可する決定を下した。 ITAエアウェイズは旧アリタリア航空で、救済のための買収者探しは紆余曲折を辿った。結局、ルフトハンザ・グループが41%株式を3億2500万ユーロで取得し、残りをイタリア経済省が保持することで合意が成立、ルフトハンザはその後に残り株式を取得するオプションも得た。欧州委はこの案件を審査の上で、条件付きで許可を与えた。 欧州委は、この案件を正式調査にて厳しく審査。異議告知書の送付を経て、ルフトハンザと伊経済省に一連の是正策を提出させた。欧州委は今回、その内容を承認したが、是正措置のすべてを履行することを条件として買収を認めた。是正措置の実施状況の審査が今後とも継続される。 欧州委は審査の過程で、イタリアと中東欧を結ぶ短距離路線、そしてイタリアと北米を結ぶ長距離路線について、買収が競争を少なくする効果をもたらすことに懸念を表明。また、ミラノ・リナーテ空港においてITAの優越的地位が形成される恐れがあるとも指摘した。これらを是正するため、イタリアと中東欧を結ぶ短距離路線の事業については、ルフトハンザかITAのいずれかの資産を競合企業に売却することを求めた。長距離便については、競合と合意を結んで、発着枠の交換などを通じて公平な競争の基盤を整えるよう求めた。ミラノ・リナーテ空港についても、発着枠を不当に占有しないようにする是正措置の実行を求めた。 KSM News and Research -
2024.07.03
電力・ガスの小売業者、料金競争を活発化
電力・ガス供給事業者の間で料金競争が活発化している。エネルギー卸市場の価格低下を背景に、各社が顧客獲得で料金を引き下げている。当局機関のCRE(エネルギー市場規制委員会)の最新の集計によると、電力の場合、規制料金以外の自由化市場における契約では、前年と比べて料金が20%近く下がっている。電力規制料金より安い契約の数は、2023年末には30だったが、3月末には45まで増えた。ガスの場合はそれよりは小幅な低下だが、それでも前年比で7%の値下がりを記録している。3割の契約が(2023年半ばの規制料金の廃止後に代わりに導入された)標準料金より安い設定になっているという。エネルギー自由化市場は、2022年のエネルギー高騰に伴い、機能不全に陥っていたが、この数ヵ月間では回復が著しい。電力では、個人ユーザーの契約の40%に相当する1380万ユーザーが規制料金外の契約となっており、旧独占事業者EDF(仏電力)以外の業者との契約が全体に占める割合も、2023年末の29.2%が3月末には29.4%へ上昇した。ガスでは、旧独占事業者エンジー以外の業者との契約が3月末時点で全体の44.4%を占め、3ヵ月前の43.9%から増大した。ただ、業者を乗り換えた世帯が全体に占める割合は、ガスで2.7%、電力で2%と、2022年のエネルギー高騰前の3-4%と比べてまだかなり低い。家計がこれまでの混乱に懲りてか、乗り換えをためらっている様子がうかがわれる。 KSM News and Research -
2024.07.03
総選挙決選投票:218選挙区で極右対抗の候補者一本化/極右支持者はどんな人?
7日に行われる総選挙の決選投票に向けて、立候補の届け出が2日に締め切られた。全部で218選挙区において、極右RNの単独過半数獲得阻止を目的に、進出権のある候補が立候補を取り下げた。うち、130選挙区では左派連合の候補が、81選挙区では連立与党の候補が取り下げた。一方の極右RNは、協力先のシオティ派を含めて、全体で443選挙区で決選投票に進出。この数は前回2022年の総選挙時の208を大きく上回った。極右対抗の協力においては、候補者や政党の呼びかけとは別に、有権者がどのような反応を示すかは未知数で、効果がどの程度あるかは結果を見なければわからない。第1回投票においては全体として、都市部では極右への抵抗が強く、逆に農山漁村では極右への支持が目立って拡大するという傾向がうかがわれた。これは従来の傾向とも一致しているが、農山漁村地方での極右の勢いは極めて大きくなっている。最近に極右への投票に転じた人も多い。どのような気持ちで極右に投票するのかを分析するのは容易ではないが、3日付のルパリジャン紙は、各地で極右支持の人々に意見を聞いている。強くうかがわれるのは、やはり強い政治不信と現状への不満で、現政権拒否の意思表示が極右への投票になって現れている。マクロン大統領の不人気が極右台頭に直結しているとも考えられる。現状に強い不満を抱き、極右への投票で何かが変わると期待しているらしく、「極右はまだ試していない」(共産党支持だったアニタさん76才)という言葉も聞かれる。RNが政府の攻撃に用いている論拠の中では、やはり治安懸念の効き目が大きく、特にイスラム教徒を敵と見定める言説には動員力があるようだ。「マクロン大統領は金持ちを喜ばせようとするばかりで、名もなき人々には関心を示さない」として、そうした疎外感に応えてくれる勢力としてRNを思いなす人も多いという。 KSM News and Research -
2024.07.03
ユーロ圏のインフレ、6月に減速
欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタット(Eurostat)は7月2日、ユーロ圏の6月のインフレ率(前年同月比)の速報値を2.5%と発表した。5月の2.6%と比べてインフレは減速した。部門別の価格上昇率(前年同月比)は、食品・アルコール・タバコが2.5%(5月は2.6%、以下カッコ内は5月の上昇率)、エネルギーが0.2%(0.3%)、非エネルギー工業製品が0.7%(0.7%)、サービス料金が4.1%(4.1%)。食品・アルコール・タバコとエネルギーの値上がりの鈍化がインフレ率を小幅ながら押し下げた。インフレ率は欧州中銀(ECB)が目標とする2%に近づいてはいるものの、今後もまだ上下動はあると予想されている。ラガルド総裁は7月1日にポルトガルで開催されたECBの年次会合で、目標の2%を達成しない限りはインフレ対策に勝利したとは言えず、それまでは気を抜けないと言明。ECBは7月18日の定例理事会では政策金利を据え置く見通しで、新たな利下げ決定があるとすれば、9月12日の理事会が有望とされる。総裁はまた、1日の発言で、地政学的な緊張の高まりを背景に、直近の2年間に3000件超の貿易保護措置が導入されており、これは通常の5倍だと指摘して保護主義の台頭に懸念を表明した。総裁は開かれた経済地域であるEUが真っ先に悪影響を被るリスクがあるとし、保護主義は経済成長、イノベーション能力、生産性向上に有害であり、ユーロ圏の生産性が低下すれば、労働コストが上昇して、インフレの再燃につながる恐れがあると説明した。なお、ユーロスタットは同じく2日に、ユーロ圏の5月の失業率を6.4%と発表した。これは4月と同じで、過去最低水準。EU全体の5月の失業率も4月と変わらず、6.0%だった。 KSM News and Research -
2024.07.02
オリンピック選手村、100%再生可能エネルギーで運営
パリオリンピック選手村が低炭素で、炭化水素エネルギーに一切頼らない場所になるよう、仏電力大手EDFと仏パートナー企業各社とが協力し合っている。パリオリンピックは2012年のロンドンオリンピック比でカーボンフットプリントを半減する目標を掲げている。選手村はパリ北郊セーヌ川沿いのサンドニとサントゥアン・シュル・セーヌ、セーヌ川中州のリル・サンドニの3市にまたがり、面積は52ヘクタール。 選手村入口の建物は、厚さ1.3ミリの太陽光シートで覆われており、その発電容量は88kWpに上る。セキュリティゲート、コンピュータ、バッジプリンターに電力を供給する。セーヌ川では、期間中は選手村側の川上で航行が禁止されるため、EDFはここに仮設の浮体式太陽光発電ファーム(78kWp)を設置して、川沿いのショッピングスペース「Village Plaza」に電力を供給する。連日1万5000人が食事をとる巨大なオリンピックレストランの近くにある選手村管理事務所棟は、通常の建物比で16%の節電ができる構造となっている。その屋根の上にはソーラーパネル(130kWp)が設置され、バッテリーと双方向充電スタンド7台も装備されている。敷地内には2500戸の宿舎があるが、うち15棟には屋根にソーラーパネルが設置され、平均して敷地内の電力需要の2割を賄う。選手村の出口には1200台のEVに充電できるよう200基の仮設充電スタンドが設置されている。オリンピック後、選手村の敷地から太陽光シート、浮体式太陽光発電ファーム、仮設充電スタンドは撤収されるが、管理事務所棟の設備は残る。そして選手たちの宿舎は一般住宅に転用される。 KSM News and Research -
2024.07.02
パリ株式市場、総選挙第1回投票の結果を好感して大幅上昇
6月30日の総選挙投開票の結果を受けて、7月1日にパリ株式市場は大幅な上昇を記録した。市場は、恐れていた最悪のシナリオが実現する可能性が遠のいたと判断した模様。 パリ株式市場CAC40指数は同日の取引開始直後に2.8%の大幅上昇を記録。終値でも1.09%高となった。総選挙では、予想通りに極右RNが躍進を果たし、協力先と合計で33%程度の得票率を達成した。RNに対抗する左派連合「新民衆戦線」の得票率は28%程度だった。下院における議席配分は、7日の決選投票の結果が出るまで判明しないが、RNが単独過半数を確保する可能性は低いと考えられる。同様に、左派連合の単独過半数獲得の目もほぼなくなり、ビジネス環境の悪化を招く政策を掲げる左派連合が単独政権を運営する可能性もなくなったことを市場は歓迎していると考えられる。 解散総選挙ショックで特に低迷していた金融関連株の上昇が目立ち、例えば、BNPパリバは3.59%高、ソシエテジェネラルは3.10%高、クレディアグリコルは2.83%高を記録した。長期金利の独仏スプレッドも12ベーシスポイント縮小して74ベーシスポイントとなり、この2週間で最低の水準に下がった。それでも、10年物長期金利は3.3%と高く、ポルトガルよりも高い水準が続いている。 KSM News and Research -
2024.07.02
総選挙決選投票:極右阻止に向けた協力の行方は
7日に行われる総選挙決選投票の投開票に向けて、各選挙区での立候補維持の届け出が2日18時で締め切られる。極右RNの単独過半数獲得の阻止に向けた立候補取り下げの是非が焦点になる。 マクロン大統領は、極右に1票も与えないという方針を示し、これまで極右RNと同列に扱って批判してきた左翼政党「不服従のフランス(LFI)」とそのリーダーであるメランション氏の批判を差し控えたという。連立与党の側ではこの協力を反極右の「共和派戦線」と呼んでいる。焦点となるのが、3人以上の候補が決選投票への進出権を得た選挙区で、これら選挙区では、下位となった候補が立候補を取り下げて、RNの対立候補を支持するという格好になる。1日の時点で、300余りのこの種の選挙区のうち、155選挙区で立候補取り下げが実現。その内訳は、104が左派連合「新民衆戦線」の候補、48が連立与党の候補となっている。極右阻止のこうした動きが有効に機能すれば、RNの単独過半数獲得は難しくなるが、現状でRNのみが単独過半数を獲得するポテンシャルを持っているのも確かで、いずれにせよ下院における最大勢力になるのはほぼ間違いない。 左派連合との「協力」については、連立与党内の右派勢力に、左翼政党LFIを支持する形となることに反発する声が根強くある。LFIとRNの対決であれば、どちらにも投票すべきではないとする意見を、ルメール経済相やフィリップ元首相などが表明している。 RNのバルデラ党首は、過半数が得られないなら首相にはならないと公言してきた。第1回投票の開票速報発表の直後でも、過半数獲得を目指す姿勢を鮮明に打ち出し、有権者に支持を呼びかけていた。ただ、RNの党内からは、単独過半数でなくとも内閣を樹立する可能性を探ることを示唆する発言も出始めている。 KSM News and Research -
2024.07.01
ラヴェルの「ボレロ」、著作権保護期間延長の請求が棄却に
モーリス・ラヴェルの名曲「ボレロ」の著作権をめぐる訴訟で、ナンテール地裁は6月29日、著作権保護期間の延長を求める承継者らの訴えを退ける判決を下した。 ボレロは1928年初演で、ラヴェルは1937年に亡くなっているため、その78年後の2015年にボレロの著作権も失効した。本来なら没後70年で失効するが、第二次世界大戦を考慮した延長を経て、78年後に失効した。失効の直前に、画家のアレクサンドル・ブノワの承継者らがボレロの共同著作権を主張してSACEM(著作権者協会)に延長を請求。SACEMがこれを拒否したため、提訴に至っていた。その判決が今回下された。 ブノワは、パリ・オペラ座のバレエの舞台芸術を担当していたが、ブノワの承継者らは、ボレロがもともと当該バレエ作品の音楽として着想されたものだと主張。「ボレロ」初演時に同時に上演がなされたバレエ作品にブノワのクレジットがあることなど根拠に、ブノワがラヴェルの創作活動に影響を与えた共同制作者であって、著作権を共有していると主張した。この主張がみとめられれば、ブノワは1960年没のため、そこから70余年で著作権保護期間は2039年まで延長されることになる。分け合うとしても著作権期間の延長を得られるからか、ラヴェルの権利承継者らも、この訴えを支持していた。 裁判所は、SACEMの主張を認める形で、ブノワが共同制作者であるという主張に根拠が示されていないと認定。ブノワ本人が一度も共同制作について言及していないことなども指摘して、承継者側の要求を退けた。承継者らは判決を不服として控訴する構えで、当該バレエ作品の振付師だったニジンスカ(1972年没)も著作権者であるとする主張を展開するという。 KSM News and Research -
2024.07.01
仏インフレ率、6月に2.1%まで減速
28日発表のINSEE速報によると、6月のインフレ率(前年同月比)は2.1%となり、前月の2.3%から低下した。インフレ減速が鮮明となった。 食料品は前年同月比で0.8%の上昇を記録しているが、工業製品は前年同月並みの水準に安定化した。エネルギーは4.8%の上昇を記録したが、前月の5.7%に比べると上昇の勢いは鈍った。他方、サービスは前月と同様に2.8%とかなりの上昇を記録した。ユーロ圏基準によるインフレ率は2.5%となり、フランス中銀のビルロワドガロー総裁は、脱インフレが進行していると述べて、この数字を歓迎した。特に、消費者物価は前月比では0.1%の上昇と、ほぼ前月並みに落ち着いた。 一方、個人消費の推移を示す商業部門売上は4月に前月比で1.4%の増加を記録。前月の1.5%減から増加に転じた。直近3ヵ月をその前の3ヵ月と比べた場合には1.1%増を、前年同期と比べた場合には2.0%増をそれぞれ記録した。賃金が物価を上回る勢いで上昇しており、これで個人消費が上向きになった可能性がある。 KSM News and Research -
2024.07.01
総選挙第1回投票:極右RNが予想通りトップに、決選投票の行方は?
総選挙の第1回投票が6月30日に行われた。事前に予想された通り、極右RN(国民連合)がトップとなった。決選投票は1週間後の7月7日に行われる。 7月1日未明に内務省が発表した開票結果によると、RNの得票率は全体で29.25%となった。決選投票を待たずに当選を決めた候補者は37人に上った。保守野党の共和党を飛び出してRNとの選挙協力を決めたシオティ党首が立ち上げた候補リストは、得票率3.9%で1議席を獲得。両者を合計すると、得票率は33.15%と極めて高い水準に達した。第2位は左派連合(新民衆戦線)で、得票率は27.99%、第1回投票における獲得議席数は32に上った。マクロン大統領の与党連合は得票率が20.04%で、第1回投票における獲得議席数は2にとどまった。保守野党の共和党は得票率が6.57%、獲得議席数は1にとどまった。投票率は66.71%とかなり高く、2022年の前回総選挙時の47.5%を大きく上回った。関心の高さをうかがわせた。 マクロン大統領は、欧州議会選挙における極右RNの台頭を受けて、解散総選挙という意外な選択をした。極右の脅威を材料に、自陣営への支持を膨らませようとする背水の陣だったと考えられ、左右の中間層を切り崩して新たな支持基盤を形成する目論見もあったと思われる。ただ、左派勢力は、一枚岩ではないものの選挙協力を実現して反極右をアピール。反極右の唯一の勢力として支持を集めることを狙ったマクロン大統領の賭けは裏目に出た。右派陣営内でも、共和党のシオティ党首派がRNとの選挙協力を選択。極右と左翼の両方に支持を吸い取られる形で、中間派を糾合して多数派を実現したマクロン大統領は自らの選択で足元を掘り崩す格好となった。大統領の不人気は本物であり、極右にせよ左翼にせよ反マクロンが集票の最大の材料になったと言えるだろう。現職への逆風と変化への期待は、フランスでも20年近く前から続く傾向であるが、今回も、購買力の低迷や治安懸念などに敏感になった国民が現政府に対して拒否の意思表示をした結果とみることができる。大統領の心の内はわからないが、ここで自らの制御下で極右に政局運営を譲り、国民が極右内閣に失望したところで、例えば2027年の大統領選挙で政権を奪回する(マクロン大統領本人は連続3選を禁止する憲法の規定があり立候補できないが)という作戦だという穿った見方もできるかもしれない。 下院は全577議席で、過半数は289議席。第1回投票では、過半数を獲得した候補は決選投票を待たずに当選を決める(選挙区の有権者数に関する最低限の規定あり)が、そうでない場合には、一定の得票率の候補者が決選投票に進出できる(実質的に4人までが進出できる)。3大勢力のいずれも進出権を得た場合には、極右候補の当選阻止を目的に、第3位の候補者が辞退し、対立候補への支持を表明するという選択ができる。連立与党を率いるアタル首相は、極右阻止を目的に、「共和派戦線」を組んで、必要な限り左派連合を支持するとの方針を明らかにした。実際に各選挙区でどのような決断が下されるかについては、趨勢を見守る必要がある。全国では半数を超える選挙区でRNがトップとなっており、全体として、RN、左派連合、連立与党の3候補が進出権を得たのは244選挙区(RN、左派連合、共和党の3候補が進出権を獲得したのは46選挙区)、2候補進出の選挙区では、左派連合とRNの組み合わせ(67選挙区)が圧倒的に多く、「極右×連立与党」は32選挙区と少ない。なお、RNを率いるマリーヌ・ルペン氏と社会党のフォール第一書記は第1回投票で当選を決めた。共産党のルーセル全国書記は決選投票に残れずに敗退した。RNではこのほか、有力者のシュニュ下院議員が決選投票を待たずに再選を決めた。左翼「不服従のフランス(LFI)」では、改選前のパノLFI議員団団長とボンパール下院議員が再選を決めた。 KSM News and Research -
2024.06.28
失業手当給付額、7月1日付で1.2%引き上げ:制度改正の行方は?
労使共同運営が建前のUNEDIC(失業保険管理機関)は27日、7月1日付で失業手当の給付額を1.2%引き上げると発表した。200万人程度の受給者が対象となる。なお、直近5年間の改定幅は年平均で1.68%となっており、2023年には、7月1日付の年次改定(1.9%)に加えて、インフレ高進に配慮して1.9%の引き上げが4月1日にも実施されていた。労組のうちCGTは、インフレ率を考えるとこの改定では低すぎると批判した。 その一方で、政府は失業手当の制度改正に関する政令を近く公示する予定。政府が決めた一連の改正を盛り込む内容だが、現行制度は6月末日で期限切れを迎えることになっており、政令が公示されないと、失業保険の業務遂行の法的基盤が失われて、支給が継続できなくなるような事態も考えられる。失業手当の制度改正は、受給条件の厳格化、雇用市場が良好な場合の支給額の引き下げ、失業者の起業向け支援措置に関する検査の強化といった不人気な措置が盛り込まれているため、30日に行われる総選挙第1回投票を前にした微妙な時期につき、政府が政令公示を見送る可能性も高い。その場合には、現行制度の延長を政令により決めない限り、失業保険制度の正常な運営は継続できなくなる。 KSM News and Research -
2024.06.28
仏政府、ノキアからASN(海底ケーブル)を買収
仏政府は、フィンランドの通信機器大手ノキアから、海底ケーブル敷設の子会社ASN(アルカテル・サブマリン・ネットワークス)の80%株式を買収する。27日に発表された。 公的機関の国家出資庁(APE)を通じて、1億ユーロ程度でASNの80%株式を買収する。ASNの評価額は3億5000万ユーロ(負債含む)に設定された。国家投資庁は、後に残り株式を取得するオプションも確保した。 ASNは、ノキアがかつて買収した仏企業アルカテルに由来する資産。海底ケーブルの設計、敷設、保守の専門企業で、従業員数は1000人程度。フランス(北仏カレーに拠点)と英国、ノルウェーに拠点を置いている。年商は10億ユーロを超えており、世界的な需要増大を背景に、2019年以来で2倍に増加した。海底ケーブルに関する技術力を保有する企業は欧州において数が少なく、仏政府はこれを戦略的資産とみなして、自ら買収に乗り出すことを決めた。 ノキアは以前からASNを売却する機会をうかがっており、2019年には売却先の候補企業も現れたが、この時は売却に失敗していた。ノキアは足元で、5G通信機器の需要が一段落したことで業績が後退しており、財務基盤のテコ入れを図り、事業を集約化するために、ASNの売却を決めた。 KSM News and Research -
2024.06.28
フランス総選挙:極右RNのマリーヌ・ルペン氏、大統領の権限軽視の発言で波紋
30日の総選挙第1回投票を前に、優勢の極右RNを率いるマリーヌ・ルペン氏の発言が物議を醸している。ルペン氏は、「コアビタシオン」政権下における大統領の軍の指揮権を問題視した。 フランスでは、大統領に広範な権限があるが、過去に、大統領とは異なる政治勢力による内閣が発足したことがある。これは俗にコアビタシオン(共存)と呼ばれる状態であり、ミッテラン大統領(左派)の下でのシラク右派内閣、シラク大統領の下でのジョスパン左派内閣の例がある。過去のコアビタシオン政権の下で、「軍事・外交は大統領の専管事項」という解釈が定まっており、特に軍事については、憲法第15条の「大統領は軍の指揮官」という規定が根拠となっている。ルペン氏は26日付の地方紙ルテレグラムとのインタビューの中で、軍の司令官が大統領だというのは儀礼的なものであり、財布の鍵を握るのは首相だ、などと言明し、「(ウクライナを念頭に置いて)大統領は部隊を派遣できない」と言明した。この発言については、連立与党陣営が、憲法の規定を無視してすべての実権を握ろうとするRNの危険な姿勢を示すものだと強く批判している。 KSM News and Research -
2024.06.27
GIEカルトバンケールの「サンコンタクト・プリュス」で50ユーロを超える非接触決済が可能に
仏GIEカルトバンケール(決済カード運営主体)がこのほど、非接触型決済の新サービス「サンコンタクト・プリュス」を開始した。これまでの限度額であった50ユーロを超えても、非接触による支払いが可能となる。ただし業者側はカード決済端末の更新が、利用者は暗証番号の入力が必要。 フランスでは新型コロナ禍の2020年5月以降、銀行カードによる非接触決済が大きく進展し、上限額が50ユーロまで引き上げられた。仏中銀が2023年末に発表した報告書によると、20ユーロ未満の近接型カード決済では、10件中6件以上が非接触で行われている。 GIEカルトバンケールには、非接触型決済の上限額をなくすことで「アップルペイ」(アップルの決済サービス)などのモバイル型決済に奪われた国内需要を取り返し、フランスの銀行網を利用したカード決済に顧客を導く狙いもある。 KSM News and Research -
2024.06.27
アトスの経営難:ラヤニ氏が買収を断念、救済案が振り出しに戻る
経営難の仏アトス(情報処理)について、救済のための買収者となることが決まっていたダビッド・ラヤニ氏が買収を断念すると26日までに発表した。これで救済計画が宙に浮いた格好になった。 ラヤニ氏はOnepoint社の経営者で、7500万ユーロを投じてアトスの株式を11%程度買い入れて、筆頭株主となっていた。投資会社バトラーとエコノコムの協力を得てアトスを一括買収することを提案し、アトスの取締役会もこの提案を受け入れていた。増資にてラヤニ氏らが1億7000万ユーロを注入し、次いで債権者団(負債額は48億ユーロ)に負担を求めて、株式への書き換え等を通じて株主構成を見直し、会社の立て直しを進めるという計画だった。報道によると、ラヤニ氏は追加で債権者団に負担を求め、債権者団がこれを拒否したことから折り合いがつかなくなり、ラヤニ氏は買収を断念したという。 ラヤニ氏のOnepoint社は企業規模がアトスに比べてごく小さく、もともと買収者の器ではないという見方もあった。最初から再交渉をするつもりで適当に条件を提示して交渉権を得たという報道もある。ラヤニ氏側では、アトス会計に追加で5億ユーロを超える欠損があることが判明したため、追加交渉が必要になったと主張しているが、債権者団の側では、そのような話は聞いていないと否定している。 ラヤニ氏の撤退により、債権者団がアトスの経営権を握る形での救済がなされる可能性が強まった。その一方で、ラヤニ氏と交渉権獲得を争ったチェコの実業家クレティンスキーは、改めて買収提案を持ち寄る考えを示しており、クレティンスキー氏復活の目もある。ただ、債権者団の大半は、事業分割を前提とするクレティンスキー氏の提案には反対しており、実現は困難とみられている。 KSM News and Research -
2024.06.27
麻薬の消費が広がる:国民の9.4%にコカイン消費の経験
依存症対策の公的機関OFDTは26日、麻薬消費の現状に関する最新の調査結果を発表した。利用者が目立って増えていることが明らかになった。 この調査は、本土に居住する1万4984人の成人を対象に2023年に行われた。これによると、特にコカインの消費の拡大が目立ち、全体の9.4%の人が、これまでにコカインを試したことがあると回答。この割合は、2017年の前回調査時には5.6%で、その後に大きく上昇したことがわかる。直近12ヵ月間にコカインを消費した人の割合も、2017年の1.6%に対して、2023年には2.7%へと大きく増えた。1992年の調査と比較すると、実に10倍の増加であるという。各種薬物の消費も拡大しており、例えば、MDMA(通称エクスタシー)では、試したことがある人が5%から8.2%に増加した。全体では、麻薬・違法薬物(大麻除く)をこれまでに試したことがある人の割合は14.6%となり、これは、2017年から2倍増を記録している。直近12ヵ月以内の消費実績がある人の割合も、2.3%から3.9%に上昇した。男性の方が女性より、過去の経験(男性20.1%、女性9.3%)と直近12ヵ月の実績(同5.2%と2.6%)のいずれでも高い。 KSM News and Research -
2024.06.26
EU主要人事で合意成立、フォンデアライエン委員長は続投へ
欧州議会の連立3会派は6月25日、欧州連合(EU)の主要人事に関して27ヵ国首脳が17日の非公式晩餐会で示した人事を承認する形で合意を成立させた。欧州委員会委員長にはフォンデアライエン委員長が再任され、欧州理事会の議長にはシャルル・ミシェル議長の後任としてアントニオ・コスタ氏(ポルトガル元首相)、外務・安全保障政策上級代表にはカヤ・カッラス氏(エストニア首相、女性)が選ばれた。 連立3会派のリーダー(中道右派EPPのトゥスク・ポーランド首相とミツォタキス・ギリシャ首相、左派S&Dのショルツ独首相とサンチェス西首相、中道Renewのマクロン仏大統領とデクロー・ベルギー首相)は、最大会派であるEPPを率いたフォンデアライエン委員長が続投し、過去5年間に制定された重要法案(グリーンディール、移民・難民協定、インターネット規制)の適用を監視することを望み、委員長に協力的な人物としてコスタ氏を選んだ。外務・安全保障政策上級代表に選ばれたカッラス氏の人選は、中東欧の中道出身者を選ぶというEU内のバランスに配慮してのもの。 以上の人事は今週にブリュッセルで開催の欧州理事会(EU首脳会議)で承認される予定。 KSM News and Research -
2024.06.26
プラスチックボトルとキャップの一体化、7月3日から義務化に
プラスチックボトルの飲み口のリングについている「一体型」キャップが、7月3日から義務化される。プラスッチック容器包装の環境への影響軽減を目的として2019年に公布されたいわゆる「使い捨てプラスチック禁止EU指令」の発効に伴い、飲料メーカーやボトラーに、3リットル以内のプラスチックボトルに関して、一体型キャップの採用が義務付けられる。これを待たず、ここ数年では、ミネラルウォーターやフルーツジュース、牛乳などのボトルで、一体型キャップが採用されるようになっている。ボトルウォーター大手のSources Almaでは、指令に先駆けて2016年に一体型キャップの採用を始めた。 ボトラー大手リフレスコは、衛生・風味上の保護という観点から十分に機能する一体型キャップの開発には数年を要したと説明している。テトラパックでは、一体型キャップ導入のために、シャトーブリアン(ロワールアトランティック県)の工場に3年かけて1億ユーロを投じた。2018年にPwCが欧州清涼飲料協会(Unesda)向けに行った調査では、キャップの開発、特許出願、モールドや生産ラインの変更など、キャップの変更にかかる総費用は27億ユーロから87億ユーロになる。牛乳業界では、滅菌に関する義務が他の飲料よりも厳しく、その一方で価格帯が低めであることから、十分に安価なソリューションを開発するのに苦心したという。 もともと一体化キャップの義務化は、プラスチック廃棄物の回収・選別・リサイクル促進を目的としていたが、テトラパックによると、製法によっては、従来比でプラスチックの使用量を最大60%削減できるというメリットもある。ただし一部の消費者からは「飲みにくい」といった不満も聞かれる。 KSM News and Research -
2024.06.26
夏のバーゲンセール開幕、今年も低調か
夏のバーゲンセールが26日に始まる。今年も低調になる恐れが強い。 衣類の販売はこのところ低迷が続いている。1-5月には前年同期比で2%の減少を記録した(IFM調べ)。5月に限ると後退幅は実に6%に達するという。専門店の連合会の集計によると、専門店に限ると、衣類で6.9%減、靴では11%減を記録している。 今年は天候が優れず、夏物の販売が伸び悩んだという特殊事情も加わる。インフレ高進が家計の購買力を圧迫する中で、家計が、支出抑制の調節手段として衣類を捉えて、買い控えの傾向を強めていることも影響している。カンターの調べによると、靴下・下着で5.1%、Tシャツで6.5%の販売減(数量ベース)を記録しており、特に不振が目立っている。すべての販売形態で後退がみられ、全体では2.6%減と、15年来で最も大きな後退幅であるという。 店舗には在庫があふれており、バーゲン期間中の大幅値引きを狙って集客が得られるかというとそれは期待薄だという。オピニオンウェイが行った世論調査によると、今年はバーゲンに行かないと答えた人は全体の59%と多数派を占めている。20%程度の人が、お金がないから行かないと答えた。総選挙を目前に控えて先行き懸念が高まっていることも逆風となる。 KSM News and Research -
2024.06.25
欧州委、デジタル市場法(DMA)違反の疑いでアップルを追及
欧州委員会は24日、アップルを対象としたデジタル市場法(DMA)違反の疑いの調査で、暫定結果をアップルに通知した。違反があると認める内容になった。アップルからこの結果についての反論を得た上で、欧州委は最終的に処分の是非を決定する。 今回の通知は、アップルがAppStoreを通じて、ソフトエディターや消費者に不利益を生じさせているとの疑いが対象となった。欧州委は、アップルのユーザーへの自由なアクセスをソフトエディターに対して契約上で禁止するなどしており、また、正当化されない手数料を徴収しているなどとする暫定的な結論を示した。欧州委は2025年3月末までに最終的な処分を決める。 欧州委は同時に、アップルに対して、DMA違反の疑いでの3件目の調査開始を決定し、アップルに通知した。DMAは、他社による代替的な配信プラットフォームの受け入れをアップル等の大手に対して義務付けているが、欧州委は、アップルが契約上の条項を設けて、ソフトエディターが代替的プラットフォームを利用するのを事実上封じるなどしており、また、代替的プラットフォームにアップルが請求する手数料も不当に高いなどと指摘している。 KSM News and Research -
2024.06.25
パリ・メトロ14号線が完成、全区間が開業
パリ・メトロ14号線の延伸部分が24日に営業運転を開始した。最大で1日当たり100万人の利用が見込まれる。 14号線は最も新しい路線で、最初から自動運転システムが採用された。パリを縦断する形で整備が始まったが、後に、郊外に自動運転の環状地下鉄網を整備するという趣旨のグランパリ・エクスプレス(GPE)計画に組み入れられる形で、南北の郊外までをつなぐ路線として延伸がなされた。24日には7駅が新たに開業。北は、セーヌ・サンドニ県のサンドニ・プレイエル駅が終点となり、ここがGPEを構成する環状地下鉄(15、16、17号線)との乗り換え駅になる。駅舎の設計は隈研吾が担当した。南側では、オルリー空港駅(オルリー・パレ・ビエイユポスト)が終点となる。建設中の15号線と南側で交差する乗換駅となるビルジュイフ・ギュスタブルシー駅は年内にオープンを予定する。 14号線はこの完成で全長が28kmとなり、現在のパリ・メトロの中では最長の路線となった。グランパリ・エクスプレスでは全長200kmが整備される予定。14号線は最短で115秒の間隔にて運行され、2025年半ば時点で1日100万人の利用客達成を目指す。パリ五輪の開催に開業が間に合った。完成には15年を要し、投資額は365億ユーロに上った。 KSM News and Research -
2024.06.25
極右RNの選挙綱領、移民排除打ち出す
極右RNのバルデラ党首は24日に選挙綱領について公表した。移民排除の政策を打ち出した。 バルデラ党首は、緊急に取り組むべき課題として、不法滞在者への医療援助を救急医療に限定することと、不法滞在者の国外退去処分を実行する上での制約を除去すること、移民の家族呼び寄せに関する条件の厳格化などの措置を打ち出した。さらに、各県知事(行政長官)による不法滞在者への滞在許可証発行の権限を、通達により停止するとも予告した。各県知事は、雇用確保が難しい職種などで就労実績がある人に滞在許可証の発給を決める権限があるが、そうした権限が停止される。 RNはこのほか、国籍付与の出生地主義を見直す方針を確認。出生地主義の下で、フランスでは、国内で生まれた人について、成人(18才)になった時点で、11才以降に5年間の居住実績があることなどを条件として、申請を経て国籍を付与することになっている。RNは、両親のうちの少なくとも一方がフランス人であることを国籍付与の条件とすることを計画している。 さらに、より長期的な課題として、▽シェンゲン圏内における人の移動の自由を加盟国国民に限定する、▽各種社会給付を国民優先とし、外国人については、5年以上の居住実績を求めるなどして制限する、などの措置も提案した。実現には国民投票が必要になるため、2027年の大統領選挙以降の実現を目指すとした。 KSM News and Research -
2024.06.21
総選挙世論調査:極右RNがトップ、左派連合と連立与党が追撃
日刊紙ルフィガロなどの依頼で行われた世論調査によると、30日の総選挙第1回投票に行くと答えた人は全体の64%に上った。これは、2年前の総選挙と比べて16.5ポイント高く、国民の関心が高いことがうかがわれる。異例の解散総選挙で、国民は政権交代への期待を高めているともみられ、選挙の行方を左右する可能性がある。勢力別の支持率を見ると、極右RNが34%(前回選挙は19%)でトップ。左派連合「新民衆戦線」が29%(同26%)で第2位、連立与党が22%(同26%)でこれを追う展開になっている。保守野党「共和党」は6%(前回13%)で差が開いている。3大勢力が揃って決選投票への進出権を得た選挙区では、決選投票における協力がどうなるのかが結果を左右するカギになる。 他方、経営者団体MEDEFは20日、各勢力の代表を招いて政策に関する見解を質す会合を開いた。経済界は、マクロン大統領派や保守野党の共和党の政策表明を肯定的に評価。半面、法定最低賃金(SMIC)の月額1600ユーロへの引き上げなどを掲げる左派連合に対しては否定的な反応が目立った。極右RNについては、特に年金問題でのバルデラ党首の答弁が不明瞭であることに批判の声が聞かれたが、全体として、左派連合に対するよりも風当りが緩やかだった。 KSM News and Research -
2024.06.21
ユーロサトリ:仏軍需企業が相次いで契約獲得
パリ近郊で開催中の防衛装備・安全保障展示会「ユーロサトリ」では、ウクライナ絡みで契約付与の発表が相次いでなされた。マクロン大統領が「戦時経済」への移行を標榜して軍需産業に増産を働きかける中で、契約が次々に付与された。 仏タレスは、フランス軍向けの120mm砲弾を数万発受注し、フェルテサントーバン(ロワレ県)にある工場の年間生産能力を、2023年の2万発に対して、2026年には8万発超に引き上げるための契約を確保した。タレスは、国内のレーダー組み立て拠点でも、GMレーダーの年間生産量を、2年前の12基から30基に引き上げる計画を進めるなど、増産体制の確立に努めている。 KNDSフランス(旧Nexter)は、ウクライナでも活躍するカエサル自走榴弾砲を、来年には月産12基と、ロシアのウクライナ侵攻前の2倍に拡大するべく準備を進めている。同社はユーロサトリの機会に、アルメニアから36基を受注。DGA(仏兵器総局)も、エストニア及びクロアチアとの共同購入の枠組み合意が成立間近だと発表した。共同購入の促進を目的とした欧州連合(EU)の基金の支援を得て、他の諸国の合流も予定されているという。 KNDSはまた、ウクライナ国内に兵器の保守拠点を開く方向で準備を進めており、それが実現に近づいている。フランスが提供したカエサル自走榴弾砲の稼働率を高めることに貢献する。 KSM News and Research -
2024.06.21
パリ五輪:「空飛ぶタクシー」の試験飛行が許可に
パリ五輪にあわせて、「空飛ぶタクシー」の試験飛行が行われることが決まった。パリ市などは反対していたが、当局は許可を与えた。 独Volocopter社製の電動垂直離発着機が使用される。機体は欧州連合(EU)の航空当局の型式認証をまだ得ておらず、商業営業を認めず、無償の試験運転に限定することで許可された。ルブルジェ空港、シャルルドゴール空港、そして、パリ市内のオーステルリッツ駅付近のセーヌ川上に発着施設が整備され、操縦士と乗客1名の2人乗りにて運行がなされる。イブリーヌ県サンシールレコール市にある一部競技の会場と、パリ南郊イシーレムリノーのヘリポートにも乗り入れる。パリ市内は建物上空を避け、セーヌ川の上空を飛行する形になる。 この試験飛行は、Volocopter社のほか、ADP(パリ空港会社)、RATP(パリ交通公団)などの協力で推進され、パリ首都圏(イルドフランス地域圏)も後押しした。ただ、パリ市議会は、騒音公害などを問題視して反対。環境当局機関も、アセスメントが不十分などの理由を挙げて否定的な見解を示し、小規模な試験飛行という形に落ち着いた。ADPは、患者輸送といった用途でも有用性を証明することを望んでいる。 KSM News and Research -
2024.06.20
欧州委、フランスなど7ヵ国を過剰な財政赤字是正手続きの対象に
欧州委員会は19日、過剰な財政赤字の是正手続きを加盟7ヵ国について開始すると発表した。フランスも対象となった。 欧州委は、フランスのほか、イタリア、ベルギー、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、マルタの7ヵ国を対象とした。フランスの場合、財政赤字の対GDP比が2023年に5.5%となり、目標の4.9%を大幅に上回っていた。金額にすると158億ユーロの超過となる。政府は2027年に同比率を3%以内に圧縮するとの目標を設定しているが、その達成は極めて困難になった。折しも、マクロン大統領は欧州議会選挙の結果を踏まえて解散総選挙を決定したが、優勢の極右RNと左派連合はいずれも費用高の公約を掲げており、財政健全化の展望は一段と遠のいている。 なお、欧州連合(EU)は先頃、財政規律を定めた安定・成長協定を見直した。新型コロナウイルス危機に続いて、ウクライナへのロシアの侵攻に由来する混乱があり、EUは協定の適用を2023年まで凍結していたが、今年に見直しを経て適用が再開された。見直し後でも、財政赤字の対GDP比を3%以内、公的債務残高の対GDP比を60%以内とする従来の基準は維持されるが、是正手続きの対象国には、4年間の財政運営の目標について定める計画文書の提出が求められ、そこでは、投資的支出を特別扱いするなどの形で、財政規律の柔軟な適用を行うことが認められる。欧州委は、公的債務残高削減の目標(同残高の対GDP比が90%を超えている場合には年平均で同1%相当、60-90%の場合には同0.5%相当の削減)を義務付けることができる。対GDP比で0.1%までの制裁金を科すこともできるが、以前より制裁金による罰則が適用された実績はない。 KSM News and Research -
2024.06.20
ユダヤ人虐殺糾弾のクラルスフェルト氏、極右RNの支持表明で波紋
ユダヤ人虐殺の戦犯探しで知られる弁護士のセルジュ・クラルスフェルト氏(88)が今回の総選挙で極右RNの支持を表明し、物議を醸している。自らもユダヤ人である同氏は16日、テレビ局とのインタビューの機会に、左派連合とRNの一騎打ちとなった場合に、「反ユダヤの党と親ユダヤの党との間なら、私は親ユダヤの党に投票する」と言明した。同氏は、パレスチナ支持を前面に打ち出す左翼「不服従のフランス(LFI)」を念頭に、左派連合を反ユダヤの党に分類したと考えられる。 RNの前身であるFN(国民戦線)を率いたジャンマリー・ルペン氏(現在のRNを率いるマリーヌ・ルペン氏の父親)は、修正主義的な発言の数々で知られ、ナチスドイツに協力したペタン政権を再三にわたり支持してきた。マリーヌ・ルペン氏は、RNを「普通の党」にするという戦略の下で、父親の反ユダヤ路線からの軌道修正を進めており、外国人排斥の標的をイスラム過激派に見定め、いわば「敵の敵」であるユダヤ人コミュニティとの和解を進めてきた。クラルスフェルト氏は2022年の大統領選においては、決選投票に進んだマリーヌ・ルペン氏を「人種差別と反ユダヤ主義の娘」と位置付けて、その当選に反対する論陣を敷いていたが、その後、マリーヌ・ルペン氏は去る2月にクラルスフェルト氏の自宅を訪問するなどして接近と和解を進めた。 今回のクラルスフェルト氏の発言は、RNにとって権威のお墨付きを得るという象徴的な意義があるが、アウシュビッツ・ビルケナウ収容所の生き残りとして証言を続けているジネット・コリンカさん(99)は、「極右が我々を守るとは信じられない」と述べて、過激主義はなんであっても危険だとコメントしている。ユダヤ人コミュニティの中にも、クラルスフェルト氏の発言を疑問視する声がある。 KSM News and Research -
2024.06.20
少年による少女強姦事件、ユダヤ人差別の犯行で世論に衝撃
パリ郊外クルブボワ市で12才の少女が性的暴行を受けた事件で、12才から13才の少年3人が逮捕された。低年齢者の犯行であることに加えて、ユダヤ人差別の事件として、世論に衝撃を与えている。 事件は15日午後に発生。ユダヤ人の少女が市内で3人の同世代の少年らにより廃墟へ連れ込まれ、性器や肛門に挿入されるなどの暴行を受けた。ユダヤ人差別の言葉を浴びせ、さらに、「警察に言ったら殺す」、「200ユーロを持ってこなかったら、家族も痛い目にあわせる」などと脅迫した。被害者は両親とともに警察に提訴。3人の少年は17日に逮捕され、18日には予審(担当予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続き)開始通告を受けた。強姦や脅迫などの容疑で、うち2人について検察側は勾留継続を請求。残る1人は強姦以外の容疑で予審開始を通告され、暫定保護観察処分の下に置かれた。 容疑者らは、少女がユダヤ人であることを隠していたので処罰したとか、少女のパレスチナに関する言葉に報復するためにやったなどと供述しているという。総選挙を目前に控えたタイミングもあって、この事件は政界でも物議を醸している。 KSM News and Research -
2024.06.19
フランス総選挙:極右RNのバルデラ党首は過半数獲得を条件に
・マクロン大統領、解散を正当化 マクロン大統領は18日、対ドイツ戦終了80周年の記念行事を複数行い、その合間に記者団に対して解散決定について説明した。大統領は、軽々しく解散を決めたわけではないとし、このままだと、予算法案審議において内閣不信任案が提出され、それが可決される恐れがあったと指摘。そうなれば、さらに悪い状況で解散総選挙を強いられることになったと述べて、このタイミングでの解散総選挙を正当化した。また、国民に諮らずに独断で政治を行っているとする批判を封じるためにも、国民に選択を委ねる必要があったとし、国民が正しい選択をすると信頼している、などと語った。大統領は、訪問先で国民と話す機会では、極右は費用高の政策を掲げ、極左は常軌を逸した公約を掲げている、などと述べて、両方を並べて批判することで、自らへの支持を訴えた。 ・極右RNのバルデラ党首、公約について説明 極右RNのバルデラ党首は18日付のルパリジャン紙とのインタビューの中で、総選挙に向けた党の公約について説明。就任直後にエネルギー(ガス、電力、燃料)に係る付加価値税(VAT)を5.5%に引き下げる決定を下すとし、また、電力料金に関する欧州連合(EU)の規定の適用緩和を求めて交渉を開始すると予告した。イベリア半島の諸国に認められている料金体系に準じた制度を適用することで30%の料金引き下げが実現できるなどと述べた。同党首はさらに、国の財政に関する独立監査の実施を依頼し、その結果を踏まえて、可能な施策を順次実行すると言明。マクロン政権が施行した年金改革の撤廃は秋以降に取り組むとした。移民政策等については、法令の制約の下でできる範囲内で取り組んでゆくとし、2027年(次期大統領選挙がある)以降にフリーハンドを得て憲法改正を含み改革を進める考えを示唆した。バルデラ党首は、首相就任の条件として、下院で過半数を確保し、政策を推進できる基盤を得ることを挙げて、有権者に対して支持を訴えた。 ・左派連合には足並みの乱れも 「新民衆戦線」として左派4党が形成した連合にはほころびも目立っている。社会党所属のバレリー・ルボー氏(解散前の下院副議長)は、新民衆戦線の選挙公約に伴う追加支出を1060億ユーロと試算。財政赤字の対GDP比が3%以内となるのは2030年になるとの展望を示した。ルボー氏は増税には応じない考えを示したが、この点を巡っては各党の間で見解の相違があり、公約費用の試算についても異論がある。勝利の場合の首相候補をどうするかについても足並みが揃っていない。 KSM News and Research -
2024.06.19
新型コロナウイルスの感染が再拡大
新型コロナウイルス感染症が再び増加している。この8週間で顕著に増加した。 現在の感染は、JN.1.7と、KP.2及びKP.3の3種により引き起こされており、これらはいずれも、オミクロン株に由来するJN.1の亜種であるという。現在では重症化が少なくなり、6月第1週における緊急外来の患者に占める割合は0.34%とわずかで、医療システムにとっての脅威とはなっていない。2022年のオミクロン株の流行以来で、ウイルスの被害はかなり小さくなっている。対処法が確立したこと、ワクチン接種や過去の感染により免疫力が向上したことなどが、重症化を防ぐ要因になっているものと考えられる。また、変異を通じて感染力の高い株が主流となり、毒性の方は逆に弱まった可能性もある。 この時期の感染拡大は、新型コロナウイルスの感染のあり方が、まだ季節性インフルエンザとはかなり異なっていることを示唆している。5月中旬にパリで行われたテイラー・スウィフトの大規模コンサート(数回で合計18万人を動員)がクラスターになったとの指摘もある。その一方で、世界保健機関(WHO)は、JN.1をベースにしたワクチンの製造を勧告している。 KSM News and Research -
2024.06.19
カルフール、2億ユーロの罰金請求の対象に
経済省の出先機関DREETSが、食品小売大手カルフールに対して、フランチャイジーへの不当な商行為を理由として、罰金を請求する訴えをレンヌ商事裁判所に起こしていたことが分かった。18日に報じられた。 訴えは11日付でなされたという。コンビニ型店舗網(カルフール・マーケットなど)を統括するカルフール子会社のカルフール・プロキシミテ・フランス社に対して、総額2億ユーロの罰金処分が請求されたという。経済省の側では、カルフールが契約において、競合に乗り換えることを禁止する条項を盛り込み、また、45%以上の仕入れをカルフールの購買センターから行うことを義務付け、小売価格についても事実上統制下においていることを問題視。各フランチャイジーの株式26%を確保し、重要決定に対する拒否権を確保しているのも不当だとした。 カルフールはフランチャイズ等の委託契約の拡大を戦略に掲げており、現在は事業の半分をこの種の契約を通じて達成していると発表していた。それだけに、巨額の罰金の請求を受けたことを市場は悲観し、カルフールの株価は18日に一時9%の急落を記録した。カルフールは、経済省の論拠は不当であり、自らの正しさを証明すると予告。契約関係について不満を抱いているフランチャイジーはごく少数であるとも主張している。 KSM News and Research -
2024.06.18
仏Unistellar、拡張現実双眼鏡を開発
スマート望遠鏡「Odyssey」を開発の仏ベンチャー企業Unistellarは、拡張現実双眼鏡「Envision」の予約販売に着手した。クラウドファンディングのキックスターター上で予約を募り、生産に着手する。 新開発の「Envision」はスマホ経由で拡張現実の各種モードの設定を操作できる。GPSと連動した3Dマップを重ね合わせて表示することが可能で、スコープ内の物体の「意味」(山岳の名前や避難所の位置など)を把握できる。天体の観察でも同様の情報を表示できる。また、ストップモーション機能も備えており、動物などを視認した場合、そのまま同伴者に渡して見せることが可能で、視覚情報を容易に共有できる。 2025年に予定される発売においては1000ユーロ程度の価格帯を設定する計画だが、キックスターター上の予約販売では、最初の1000体まで100ユーロ、次いで収入が250万ドルまで700ユーロにて販売する。Unistellarにはニコンが出資しており、技術面でも協力している。2022年までで、スマート天体望遠鏡「Odyssey」を1万台販売した(単価3000ユーロ)。従業員数は45人。 KSM News and Research -
2024.06.18
総選挙、選挙キャンペーンが正式に開始
総選挙の立候補届が16日に締め切られ、17日に公示がなされた。2週間後の6月30日の第1回投票に向けた選挙キャンペーンが正式に始まった。 アタル首相によると、連立与党は、60程度の選挙区で候補者の擁立を断念。保守、左派、中道の野党勢力で民主派の現職候補のいる選挙区では争わないことを決めたと説明した。分裂模様の保守野党「共和党」では、極右RNとの協力を決めたシオティ党首派が62選挙区で候補者を擁立したと説明。共和党の側では400選挙区近くで候補者を擁立。シオティ党首の選挙区(ニース)でも対立候補を擁立した。 [総選挙の制度] 下院の定数は577で、選挙は小選挙区・2回投票制にて行われる。577議席の内訳は、558が本土・海外県、8がニューカレドニア及び海外自治体、11が在外フランス人。小選挙区は原則的に人口12万5000人にて設定されるが、人口によらず1つの県には最低1つの選挙区が割り当てられる。有権者は18才以上のフランス国籍保有者だが、有権者登録は自動的ではなく、自ら手続きを行う必要がある。現在の有権者数は4900万人強。 選挙は2回投票制で行われ、第1回投票(今回は6月30日)の1週間後に決選投票(今回は7月7日)が行われる。第1回投票において、有効投票数の50%を超える得票を達成し、かつ、当該選挙区の登録有権者の25%以上の得票を達成した候補者は、決選投票を待たずに当選が決まる。他方、登録有権者の12.5%以上の得票を達成したすべての候補者は決選投票に進むことができるが、辞退することもできる。12.5%以上の得票の候補が1人以下だった場合には、第1位と第2位の候補との間で決選投票が争われる。決選投票では得票数が多かった候補者が当選する。完全に同数だった場合には年長者が当選となる。 [世論調査で極右RNが優勢] レゼコー紙などの依頼でオピニオンウェイが行った世論調査(12日と13日に層別抽出の1011人を対象に実施)によると、第1回投票における得票率(あなたの選挙区で誰に投票するか、と質問)では極右RNが33%となり、左派連合の25%を抑えてトップに立っている。連立与党は20%、保守野党の共和党は7%となった(誤差範囲は1.4-3.1ポイント)。全体の68%の人が「選択を変えることはない」と回答したが、この割合は、RNの支持者で87%と特に高い。選挙戦における争点としては(複数回答可)、「購買力」を挙げた人が67%と最も多く、以下、「物価上昇」が51%、「治安」が49%で続いた。総選挙に関心があると答えた人は75%に上った。 ラトリビューン紙などの依頼でElabeが行った別の調査(11日と12日に実施)によると、極右RNの勝利とRNによる内閣発足の可能性についてどう思うか、との問いに対して、「不安を抱く」と答えた人が50%となり、わずかに過半数となった。「満足する」と答えた人が30%、「関心がない」と答えた人が20%だった。選挙の結果として、RNの過半数獲得を望むと答えた人が全体の32%を占めて最も多く、26%が「左派連合の勝利」、17%が「連立与党の勝利」を望むと回答。いずれの質問においても、国民の3割余りが熱心に極右勢力を支持していることがうかがわれる。 KSM News and Research -
2024.06.18
燻製香料8種、使用が段階的に禁止へ
欧州連合(EU)は去る4月の時点で、燻製香料8種の禁止を決めた。需要期であるサッカー欧州選手権の開幕に伴い報じられ、話題になっている。 燻製香料は食品に燻製食品に似た香りをつけるために用いられる。安価なことから、ポテトチップスなどのスナック類の一部の製品(ベーコン味など)やバーベキュー味ソースなどの加工食品に幅広く用いられている。欧州食品安全機関(EFSA)は2023年11月に提出した意見書において、これら8種の燻製香料について、遺伝子損傷のリスクを除外できないと指摘。遺伝子損傷を経て、主に消化器系における発がん性を増大させ、遺伝病の悪化を招くリスクがあるとも指摘し、8種の燻製香料に対する許可を更新しないよう求めていた。欧州委員会はこの勧告に従って段階的禁止を提案。欧州連合(EU)理事会もこれを承認した。 禁止は段階的に進められる。まず、風味を高める目的での使用(チップス、スープ、ソース類など)については2年以内に仕様が禁止される。次いで、伝統的製法による燻製を代替する目的での使用(ハム、魚、チーズなど)については、5年以内に使用が禁止される。伝統的製法による燻製は、基本的に燻製香料とは関係がなく、禁止の対象外となる(ただし、製品によっては、燻製香料が添加されている場合もある)。 KSM News and Research -
2024.06.17
パリ五輪準備:一部のメトロ駅が閉鎖に
パリ五輪(7月26日開幕)の準備に向けて、この17日より市内の中心地にあるメトロ駅が一部閉鎖される。コンコルド駅では、既に5月17日よりメトロ12号線が停車せず、乗り換えが不可になっていたが、同駅ではこれに加えて、1号線と8号線の停車がなくなり、その乗り換えが不可になる。コンコルド広場は一部の競技の会場が設営されることになっており、メトロ駅は、1、8号線で9月1日まで、12号線で9月21日まで、それぞれ閉鎖される。1号線でコンコルドの隣の駅であるチュイルリーも6月17日から9月1日まで全面閉鎖される。同駅は規模が小さく、コンコルド駅を利用する人が流れ込んできた場合に極端に混雑することが予想されるため、コンコルド駅の閉鎖にあわせて閉鎖される。また、コンコルドの西側の隣駅であるシャンゼリゼ・クレマンソーも、7月20日から8月11日まで、また8月22日から9月8日まで、閉鎖される(1号線と13号線とも)。この界隈を利用する旅客はもっぱらマドレーヌ駅に集中することになる。 五輪開会式はセーヌ川の船舶によるパレードという異例の趣向で行われるが、セーヌ川沿いに見物席を設営する作業がやはり17日より開始される。7月8日からは、橋梁における設営が始まり、14日には対象の橋が通行止めとなる。このほか、7月18日より一部のメトロ駅が閉鎖される。状況は追って告知される。 KSM News and Research -
2024.06.17
左派4党の「新民衆戦線」、選挙綱領を公表
左派4党による「新民衆戦線」は14日、選挙綱領を公表した。左翼色の濃い政策を打ち出した。 政策綱領には、法定最低賃金(SMIC)を月額・手取りで200ユーロ引き上げ、1600ユーロとする方針が盛り込まれた。SMIC以外でも賃金のインフレ率並みのスライド改定を導入すると予告。どの程度までがその対象となるかは明らかにされていない。物価抑制では、食料品、エネルギー、燃料等の「必需品」の価格凍結が盛り込まれた。特にエネルギーでは、エネルギー課税の軽減と7月1日付で予定されているガス規制料金の引き上げの撤廃、そして、最低限の電力消費を対象とする無料枠の導入などを予告。原子力の扱いについては明言がなされていない。原子力は共産党が推進派だが、「不服従のフランス(LFI)」と環境派が反対派となっている。このほか、農業については、生産者価格最低限の設定(仕入れ価格がそれを下回ることが禁止される)を、保健については、医薬品調達等の国家機関の設置を盛り込んだ。 政策綱領にはこのほか、失業保険制度改正の撤廃、年金改革の撤廃、住宅補助の10%増額、欧州連合(EU)の財政規律に服さない予算運営といった措置や方針が含まれる。数値は示されていないが、財源は、富裕層に対する優遇の廃止や大企業の「儲け過ぎ」への課税強化により確保するとの展望を示している。 ルメール経済相はこの政策綱領について、失業急増と経済の後退、欧州からの離脱を招く最悪の内容だと非難。極右RNへの対案となる左派連合の政策綱領の内容に悲観してか、パリ株式市場CAC40指数は発表当日の14日に終値で2.66%安を記録。解散総選挙の発表後では最大の下落を喫した。 KSM News and Research -
2024.06.17
アタル首相、連立与党の選挙綱領について説明
総選挙でマクロン大統領派のキャンペーンを指揮するアタル首相は15日、大統領派の政策綱領について説明した。中産階級の支援と国の権威の確保を主要な課題として掲げた。 家計の購買力増強では、いわゆる「マクロン手当」の上限額引き上げ(3000ユーロから1万ユーロへ)を提案。マクロン手当は、今年から、所得税とCSG・CRDS(社会保障会計の財源となる目的税)が非課税ではなくなった(社内預金への繰り入れの場合と、従業員数50人未満の企業の場合は例外)が、その点は維持したままで、限度額を引き上げる。このほか、電力規制料金をこの冬に15%引き下げることを予告。学用品共同購入制度の導入を通じて、15%の費用減を家計にもたらすとも約束した。保健関係では、補足健保の適用が受けられない人向けに、1日1ユーロの保険料にて補足健保を公的機関を通じて提供すると予告。低料金でのEVリースの提供台数を2倍に引き上げて、特に医療関係者による利用の促進を図る旨も明らかにした。初めて持ち家を購入する人向けには、購入額が25万ユーロまでの場合に、不動産取引税を非課税とすることを約束。また、自社株買いを対象にした課税を導入し、その税収を充当して、中産階級の住宅のエネルギー効率改善のための資金を提供する(2027年までに30万戸のリフォームを追加で達成)とも予告した。 国の権威の確保という点では、未成年者の重大犯罪について、未成年者対象の減刑措置の適用を制限する方針を再確認した。マクロン政権の従来の政策方針(2027年までの温室効果ガス排出量の20%削減、同年までの工業部門の雇用数20万人増と工場数400増の達成など)はそのまま維持した。アタル首相は、現実的な政策を掲げているのは連立与党のみであり、極右と左翼の政策は、「パラシュートをつけずに飛び降りる」ようなものだと酷評した。 KSM News and Research -
2024.06.15
アコーとLVMH、「オリエント・エクスプレス」ブランドの展開を巡り提携
仏ホテル大手アコーと高級ブランド大手LVMHは6月13日、「オリエント・エクスプレス」ブランドの展開に関する提携合意を結んだと発表した。資金面の詳細は明らかにされていない。 アコーは仏国鉄SNCFから2022年までに「オリエント・エクスプレス」ブランドの権益を取得した。LVMHはすでに、2019年4月に買収したベルモンド社を通じて「ベネチア・シンプロム・オリエント・エクスプレス」を運行している。アコーはブランド展開をさらに拡大する計画で、LVMHはこれに協力する。LVMHの出資額は明らかにされていないが、今後、出資率を高める可能性はある。 計画では、「ドルチェビータ・オリエント・エクスプレス」の名義で、イタリア周遊列車を2025年春に開始する予定であり、すでに予約受付が始まっている。それに先立ち、オリエント・エクスプレスの名前を冠した初の高級ホテルが年内にローマでオープンする予定で、次いで2025年中にはベネチアとリヤド(サウジアラビア)でホテルが開所される。帆船による高級クルーズを「オリエント・エクスプレス・サイレントシーズ」名義で開始する計画も進んでおり、2隻を仏サンナゼール造船所に発注した。うち1隻は2026年の就航を予定している。LVMHは、鉄道とホテルの両事業についてアコーに協力する。クルーズ事業については、戦略パートナーを新たに受け入れる計画とした。 KSM News and Research -
2024.06.15
極右台頭の陰にメディアの力
極右RNの台頭にはメディアの力が大きく働いている。特に、実業家バンサン・ボロレ氏傘下のメディアは極右的な思想を一般に浸透させる役割を果たした。ボロレ氏が所有するビベンディ傘下のCNews(ニュース専門地デジ局)の場合は、エリック・ゼムール氏を積極的に起用して、極右の主張を普及させることに貢献した。ボロレ氏はまた、ラガルデール・グループの買収を経て日曜紙JDDを手中に収め、右翼系の人材を起用して同紙の編集方針を一変させた。インターネットが情報操作に対して脆弱であり、またリコメンドの仕組みのために「類は友を呼ぶ」効果で信念が強化され、虚偽が流布する悪循環が形成されやすいことはよく知られているが、大手メディアもそうしたループの一環に入ってしまった感がある。米国でFOXニュースが果たした役割を考えるとわかりやすい。 ルモンド紙によると、RNとの協力を発表して騒ぎを起こした保守野党「共和党」のシオティ党首は、欧州議会選挙投票日翌日の10日に、RNの指導者らと接触したが、それと同時に、バンサン・ボロレ氏の自宅を訪れて会談したという。シオティ党首はむしろ使い魔で、「右翼糾合」のシナリオを売り込んでいるのはボロレ氏の方だということらしい。 KSM News and Research -
2024.06.15
極右RNの首相候補、ジョルダン・バルデラってどんな人?
極右RNは、総選挙で勝利した場合に、ジョルダン・バルデラ党首を首相とする方針を明らかにしている。 RNは、国民戦線(FN)時代から変わらずに、ルペン一族の支配下にある。先代のジャンマリー・ルペン氏の実娘であるマリーヌ・ルペン氏は、直近2回の大統領選挙で決選投票まで進み、前回総選挙には自ら出馬し、解散前の下院ではRN議員団の団長を務めた。ルペン氏は、2021年の時点で、翌年の大統領選挙への出馬をにらんで党首職から退き、代行としてバルデラ副党首を任命。バルデラ氏は2022年の党首選で正式に就任し、今日に至っている。 バルデラ氏は28才と若く、「普通の政党」となることを目指すルペン氏の戦略において、若年層にアピールする切り札として起用された。バルデラ氏は移民が多いパリ北郊セーヌサンドニ県で生まれ、イスラム主義の台頭や麻薬取引の横行への対策を最優先課題に掲げて、「本場」で育った自らの経験をアピールポイントとしている。 16才の時にFNに入党、青年部の代表などを務めた。高校卒業後はパリ大学に入学したが、政治活動に専念するため中退した。その後、2015年の地域圏議会選挙でイルドフランス地域圏(パリ首都圏)議員に初当選。2017年には党の副党首となり、2019年には欧州議会選挙にRNの筆頭候補として立候補。RNはこの選挙でマクロン大統領派を抑えてトップとなり(得票率23.3%)、23才で欧州議員となった。バルデラ氏はTikTokのアカウントを通じた動画の配信を通じて、若い世代を中心に食い込んでおり、外見に特に気を使い、肉体を鍛錬して「強さ」をアピールするなど、メディア戦略にも長けている。2020年以来はルペン氏の姪と婚姻関係にあり、ルペン一族の一員でもある。 KSM News and Research -
2024.06.13
歌手のフランソワーズ・アルディさん死去
シンガーソングライターのフランソワーズ・アルディが11日に死去した。80才だった。息子で歌手のトマ・デュトロンが12日に発表した。 フランソワーズ・アルディは対ドイツ戦が終了する1944年にパリで生まれた。飛び級で16才の時に高校卒業資格(バカロレア)を取得した聡明な少女で、褒美で買ってもらったギターで曲を作り、歌うようになった。パリ大学に進学したが、ポピュラー音楽を志し、同世代の若者たちになじめず孤立する内向的な少女の心情を単純なメロディーに乗せて歌った自作曲「Tous les garcons et les filles(男の子たち女の子たちはみんな)」(1962年)が出世作となった。儚げな容姿で時代の寵児となり、セルジュ・ゲンズブール作詞の「さよならを教えて(Comment te dire adieu)」(1968年)、ミシェル・ベルジェ作曲の「Message personnel(メッセージ)」などの名曲を世に送り出した。 2018年に発表したアルバム「Personne d’autre(ほかには誰も)」を最後に、その後はがんとの闘病が続いた。最近では、末期患者に自殺の可能性を与えるよう訴える公開状を発表していた。下院の解散が決まり、自殺を助ける可能性に道を開く「生命の終わり」法案が成立する見込みがなくなった直後というタイミングでこの世を去った。 KSM News and Research -
2024.06.13
マクロン大統領、極右・極左へ対抗するため結集を呼びかけ
総選挙に向けて、マクロン大統領は12日午後に記者会見を開き、見解を表明した。大統領はこの機会に、2027年の次期大統領選挙において極右が勝利するのを妨げるために、この時点で政治勢力に明確な立場の表明を迫るべく、解散を決めたと説明。大統領は、極右の脅威に加えて、メランション氏が率いる「不服従のフランス(LFI)」を念頭において、左翼の極端な勢力も脅威として捉えて、両方の極端な勢力に組しない理性的な勢力に結集を呼びかけた。大統領は、自らの政策について、国家主権、エコロジー・経済、不平等対策、生活向上、外交の5項目を優先課題に設定。具体的な公約については政府による今後の発表に譲ったが、イスラム主義を念頭に置いた政教分離に関する政策の推進に言及し、年金支給額の物価スライドの維持も約束した。大統領は、極右RNについては、財政収支の大幅な悪化を招く非現実的な公約とロシア寄りの態度を批判。左翼LFIについては、「反ユダヤ的」な言動や実力行使の姿勢を問題視した。 他方、極右RNとの協力を巡り揺れる保守野党の共和党では、RNとの協力を決めたシオティ党首を党の政治局が全会一致で除名することを決定した。しかしシオティ党首は、決定には何の効力もないと主張し、引き続き党首の職を務めると言明。RNとの選挙協力に基づいて候補者の選定を進めると予告した。党は前代未聞の混乱に陥った。 極右新党「ルコンケット」でも、RNとの協力を巡り党を二分する混乱が生じている。同党を率いるエリック・ゼムール氏は、RNとの協議に応じたマリオン・マレシャル氏(欧州議会選における筆頭候補)をはじめとする欧州議会選挙の当選者ら数名を除名すると発表。党員党友を裏切って、一族の元に戻った(マリオン・マレシャル氏は、RNを率いるマリーヌ・ルペン氏の姪に当たる)「家族呼び寄せ」の賛同者だ、などと罵倒した。 KSM News and Research -
2024.06.13
極右RNの政策、その内容には懸念も
極右RNのバルデラ党首は11日、ラジオ局RTLとのインタビューの中で、総選挙における公約について見解を明らかにした。RNは総選挙において第1党となる勢いで、バルデラ党首はRNが勝利の場合の首相候補と目されている。 党の正式な公約は今後に公表されるが、バルデラ党首は、自らが筆頭候補を務めた欧州議会選挙と同様に、購買力、治安、移民の3つのテーマを中心に政策を訴えると言明。党首は、7月1日付でガス規制料金が10%引き上げられることを挙げて、マクロン政権を非難し、RNは、エネルギー(自動車燃料含む)に係る付加価値税(VAT)の税率を引き下げるなどと約束した。企業向けには、国内生産の振興を目的とした減税を約束し、「経済愛国主義」の称揚と規制緩和の推進を予告。電力料金に関する欧州連合(EU)の規則から離脱するとともに、民衆層と中流層にも減税を約束した。さらに、治安の改善と移民の制限を最重要課題とし、社会給付の自国民優先という原則を掲げた。年金政策については、RNはマクロン政権による年金改革(定年年限の60才から62才への引き上げ)を撤廃するとの政策を掲げていたが、バルデラ党首は、国の経済状況を見て決める、と説明し、従来よりも立場を後退させた。 このほか、バルデラ党首とは別に、解散前に下院議員を務めていた有力者のシュニュ氏は、公共放送部門の民営化の可能性を示唆した。 企業寄りのシンクタンク「モンテーニュ研究所」が2022年の総選挙時のRNの公約をベースにまとめた試算によると、RNの公約の費用は年間1200億ユーロ程度、期待できる節減効果は180億ユーロ程度で、差し引き後で1000億ユーロという巨額の財政収支の悪化を招くという。解散総選挙の発表以来で、仏長期金利は上昇を続けており、株安も進行している。 KSM News and Research -
2024.06.12
保守野党「共和党」のシオティ党首、極右RNとの協力を発表
繰り上げ総選挙に向けた動きで、保守野党「共和党」のシオティ党首は11日、極右RNとの協力を決めたと発表した。党首の発表に対して、党内の有力者は揃ってRNとの協力を否定し、党首に対して辞任を求める声が上がった。共和党の空中分解の危機に発展した。 シオティ党首は、党内で協議を経ずにこの発表を行った。民放テレビ局TF1とのインタビューの機会に、同党首は、マクロン大統領派と左翼勢力に国が脅かされる中で、現在の共和党にはこれらに対抗する十分な力がないとし、右翼の結集が必要だなどと述べてRNとの協力を正当化。共和党の候補がいる選挙区ではRNは候補者を立てないという形で協力すると述べた。 共和党の有力政治家らは揃って、シオティ党首の独断に過ぎず、党の方針では一切ないとして、RNとの協力を否定。シオティ党首に辞任を迫った。一方のRNのバルデラ党首は、シオティ党首の決断を歓迎し、実際に選挙協力は存在し、数十の選挙区が対象になる、などと述べたが、選挙協力に合流する議員の名前などは明かさなかった。シオティ党首への支持を口にする議員らは今のところほとんどない。 共和党が空中分解すれば、マクロン大統領派は、RNへの合流を拒否する共和党の勢力を取り込むことがより容易になる。それが大統領の狙いだとも考えられる。大統領は11日午後に記者会見を開く予定だったが、これを急遽、12日に延期しており、共和党の動きを折り込んで見解を発表することになるとみられる。 KSM News and Research -
2024.06.12
経営難の仏アトス(情報処理)、筆頭株主ラヤニ氏が提出の買収案を採用
経営難の仏アトス(情報処理)の取締役会は、筆頭株主となったOnepoint社のラヤニ社長が提出した買収案を採用することを決めた。チェコの大物実業家クレティンスキー氏による買収計画を退けた。11日に発表された。 ラヤニ氏の買収計画では、債権者団が債権のうち29億ユーロの株式への書き換えを受け入れて、約79%の株式を握る。Onepointは投資会社のバトラーらと結び、1億7500万ユーロを出資して21%株式を確保する。債権者団も増資を引き受けて7500万ユーロを出資する。現行株主らの出資分は取引後で全体の0.1%に縮小する。さらに、債務により15億ユーロ(うち3億ユーロは保証)の資金を確保し、事業の再興を図る。 政府は、戦略的な重要性があるアトス資産(スパコン、サイバーセキュリティ、クリティカルシステムなど)の買収を約束しており、その売却収入(評価額は7億-10億ユーロ)もアトス再建の資金となる。 買収案の実現には、債権者団の3分の2以上の賛成が必要になる。クレティンスキー氏は、買収提示額を3度に渡り引き上げ、債権者のうちBNPパリバ銀行の賛成を取り付けたが、より大きな負担を恐れた大多数の債権者は同氏の買収提案には従わなかった。他方、ラヤニ氏にとっては、アトス買収は悲願で、2022年にも買収を提示したが、この時は退けられていた。同氏は、アトスの売上高を、2024年予定の96億ユーロから、2027年には106億ユーロに増やし、営業利益率を3倍の7.7%、キャッシュフローを7倍近くに増やすとの目標を掲げているが、大企業の経営実績がないラヤニ氏が再建に成功するのか危ぶむ声もある。 KSM News and Research -
2024.06.12
総選挙:極右RNが優勢=世論調査
6月30日と7月7日に行われることが決まった繰り上げ総選挙では、欧州議会選挙に続いて極右RNが躍進を果たす見通しとなっている。2件の世論調査の結果が発表された。 民放M6などの依頼で行われた調査によると、得票率でRNは34%となり、統一左派の22%(2年前の前回選挙では25.7%)を抑えてトップに立つ。マクロン大統領派は19%で、前回の25.8%から後退する。保守野党の共和党は9%(前回11.3%)となる。 ハリス・インターラクティブによる議席数予測によると、RNは改選前の89議席から、235-265議席に躍進して第1党となる。マクロン大統領派は125-155議席(改選前は249議席)へ後退する。統一左派は115-145議席(改選前153議席)、共和党は40-55議席(改選前74議席)となる。国民議会(下院)の定数は577議席で、RNは過半数(289議席)には及ばないが、共和党との協力により、単純計算では議会で過半数を擁立できることになる。 欧州議会選挙の結果分析においては、多くの層でRNへの支持が増大している。これまでは支持が低めだった中間職でも、得票率が前回の欧州議会選(2019年)の17%から32%へ上昇。ワーカー(38%から58%へ)と従業員(25%から37%へ)でも大きく増加した。就労者における得票率は全体で25%から35%へ上昇。逆に、失業者では36%から35%へとわずかに低下。自営業者でも20%から18%へ低下した。高校生・大学生で9%から29%へと大きく上昇しているのも目立ち、変化を求める若い層への浸透も拡大している。逆に、年金生活者では23%から24%への微増にとどまった。 KSM News and Research -
2024.06.11
気候不順目立つ、全国的に温度が低め
この春は気候不順が目立っている。温度が上がらず、降水も多くなっている。 このところは温暖化の影響もあって、6月中には毎年のように、真夏並みの暑い日々が続くことが多かった。今年は全般的に気温が低めで、特に10日から13日にかけては、コルシカ島を除く全国で低温が続くものと予想されている。北仏ではすでに数日前から冴えない天候の日々が続いていたが、北極圏から寒気が流れ込む気圧配置となり、低温が全国に広がった。平年比で5-6度程度の低さであり、寒さというほどではないが、それでも10月並みの気候だという。ピレネー山脈の標高2000メートル以上の場所では11日に雪が降る見通しで、全国でも所により特に朝方には気温が10度を下回る見通し。13日以降には気温はある程度上昇するが、週末にかけては天気が崩れて雨模様となる見込みという。北仏を中心に、天候不順で観光業の苦戦が目立つが、過去の例をみても、6月の低温が7月以降も続くとは限らず、逆に記録的な猛暑となる可能性もあるという。 KSM News and Research -
2024.06.11
マクロン大統領、解散決定の背景
マクロン大統領は9日、欧州議会選挙での敗北を受けて、下院を解散し、総選挙を行うと予告した。6月30日と7月7日という最短の日程での総選挙となる。 極右RNは30%を超える得票率を達成。対するマクロン大統領派は15%程度で、2倍を超える差が開いた。ただ、各党の得票率は、事前の世論調査並みの数字であり、十分に予想の範囲内だった。マクロン大統領は投票前には、20%を超える得票率を達成できるなどと話しており、それが本心からであるなら、選挙結果に失望して総選挙という大きな賭けに出たのかもしれない。 極右系の週刊紙JDDは投票前に、極右勝利でも政府は何事もなかったかのように政治を続けるだろう、などと論評していた。解散総選挙は極右RNが要求してきたものではあるが、当のRNの側でも、大統領の決定は予想外だった。とはいえ、ルモンド紙によると、解散構想は以前から検討されていたらしい。大統領府のスタッフ10人程度のチームが検討を進めてきたといい、大統領はこれを秘密にしてきた。総選挙で極右RNが過半数を握るのは十分に可能なシナリオではあるが、大統領は背水の陣で有権者の決起を促して、風向きを変えられると踏んだのかもしれない。また、解散総選挙を後押しした人物の中には、右派出身のダルマナン内相が含まれるという。RNが総選挙で勝利して、バルデラ党首を首相とする内閣が発足したとしても、その無能ぶりが国民の不興を買い、2027年の大統領選挙ではRNに失望した有権者が右派に戻ってくる、といった火遊びじみた計算があるとも考えられる。大統領は9日夜、最初の開票速報が発表された20時過ぎの時点で、アタル首相をはじめとする重要閣僚数人とブロンピベ下院議長らを集めて解散の決意を伝えたというが、特に首相とルメール経済相は寝耳に水だったといい、反対したが大統領は聞き入れなかったという。 KSM News and Research -
2024.06.11
解散決定を受けて株安、各勢力は総選挙の準備を開始
マクロン大統領が解散総選挙を発表したのを受けて、10日のパリ株式市場CAC40指数は終値で1.35%の下落を記録。8000ポイント台を再び割り込んだ。欧州諸国よりも大きな下げ幅を記録した。また、10年物長期金利は同日に13ベーシスポイントの上昇を記録。11月以来で初めて3.22%を超えた。ドイツとのスプレッドは7ベーシスポイント拡大して55ベーシスポイントとなり、こちらは12月12日以来で最大となった。市場は不確実性を嫌うが、特に、極右RNが政権に就いた場合の経済政策に関する疑念が大きく作用している。 極右RNは総選挙での勝利に向けて、選挙協力の打診に着手した。10日夕方には、極右新党「ルコンケット」のマリオン・マレシャル筆頭候補がRN本部を訪れて、RNの実質的な指導者であるマリーヌ・ルペン氏及びバルデラ党首と会談した。マレシャル氏はマリーヌ・ルペン氏の姪で、RNを飛び出た後に、エリック・ゼムール氏が立ち上げた極右政党「ルコンケット」に合流したという経緯がある。会談の際に選挙協力の可能性が協議されたが、ルペン氏はゼムール氏とは犬猿の仲であり、ゼムール派抜きの協力であることが前提だと通知したという。RNはまた、保守野党「共和党」にも接近しているが、共和党は党として、マクロン大統領派にも、極右勢力にもなびかないことを決めている。RNが個別に議員や党員らを切り崩そうとすることは考えられる。 他方、左派勢力は10日に、極右への対抗のための大同団結を実現するための協議に着手した。左派勢力は、解散前の下院では院内会派NUPESを構成して協力していたが、このところ足並みの乱れが目立ち、事実上の分裂状態に陥っていた。欧州議会選挙でもそれぞれが候補リストを擁立。うち社会党は健闘、左翼「不服従のフランス(LFI)」は安泰、環境派は後退、共産党は議席獲得に失敗という経緯をたどっていた。社会党リストを率いたグリュックスマン氏はLFIを率いるメランション氏と折り合いが悪く、大同団結の実現は自明とはいえない。他方、労組は10日に全国で極右反対のデモを行った。15日と16日の週末にもデモを予定する。 KSM News and Research -
2024.06.10
住宅投資に回復の兆し:住宅ローン与信が4月に回復
冷え込んでいた住宅投資に回復の兆しがみえてきた。中銀発表の統計によると、住宅ローンの新規与信(再交渉分を除く)は4月に89億ユーロとなり、前月比で29%の増加を記録した。前月の3月(69億ユーロ)には、2014年以来で最低の水準まで下がっていたが、4月には増加に転じた。2022年春以来で本格的な回復の兆しが現れるのはこれが初めてだという。5月にも増加が継続する見通し。 住宅ローン与信額は2022年にごく低い水準に停滞した後、2023年には40%の大幅減を記録していた。インフレ高進を背景に、家計が購買力を失ったことが背景にある。それがようやく回復の兆しを見せ始めた。足元で欧州中銀(ECB)が0.25ポイントの利下げを決めたが、銀行はこれを見越して、住宅ローンの金利引き下げに着手しており、融資の条件がそれだけ良好になった。住宅ローン平均金利(新規与信時)は4月に3.89%となり、1月と比べて0.28ポイント低下している。5月には3.73%まで下がったものとみられている。 高騰していた住宅取引価格も、需要の冷え込みを背景に低下する傾向を示している。5月には全国平均で前年同月比5.5%の低下を記録したが、関係者らは、インフレで目減りした家計購買力を補うにはまだ不十分だとみている。 KSM News and Research -
2024.06.10
ウクライナのゼレンスキー大統領とバイデン米大統領、それぞれフランスを訪問
ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、フランスを公式訪問した。大統領は前日の6日、ノルマンディー上陸作戦80周年の記念式典に招待を受けて出席し、続く7日に公式訪問を行った。大統領は同日、下院で演説を行い、ロシアとの戦争におけるフランスの支援に感謝を表明するとともに、「1930年代にヒトラーは次々と一線を超えていった。プーチンは同じことをしている」と述べて、欧州防衛のためにウクライナに力強い支援を引き続き与えるよう訴えた。大統領夫妻はこれに続いて、大統領府を訪問し、マクロン大統領夫妻による歓待を受けた。マクロン大統領はこの機会に、欧州諸国と協力して、ウクライナに軍事訓練の教官を派遣する方向で、調整が最終段階に入っていると言明した。 続く8日には、やはり記念式典に出席したバイデン米大統領の公式訪問が行われた。両国の大統領夫妻が、パリの凱旋門下にある無名兵士の墓所で式典を行い、次いで大統領府でのワーキングランチと夜の記念晩餐会に臨んだ。両国首脳はこの機会に、細部で対応に差があるものの、ウクライナやパレスチナなどの国際問題で見解の一致を強調。イラン問題については圧力を行使する意思を確認した。 KSM News and Research -
2024.06.10
欧州議会選:極右RNが大勝、マクロン大統領は解散総選挙を決断
欧州議会選挙の投開票がフランスでは6月9日に行われた。事前の予想通り、極右政党RNが勝利した。マクロン大統領は同日夜、「国民に選択の可能性を与える」ために、解散総選挙を行うと予告した。6月30日に第1回投票、7月7日に決選投票が行われる。 欧州議会選挙は全国統一選挙区による比例代表制で争われ、5%を超える得票率の候補リストに議席が配分される。10日未明の開票速報によると、極右RNが31.50%の得票率を達成し、マクロン大統領派の14.50%を大きく引き離してトップに立った。3位は社会党系の左派グループで14.00%の得票率を達成して健闘した。4位が左翼政党「不服従のフランス(LFI)」で10.10%、5位が保守野党「共和党」で7.2%、6位が環境派で5.50%、7位が極右「ルコンケット」で5.30%となり、以上7リストが議席を獲得した。議席数では、RNが30、マクロン大統領派と社会党が共に13、LFIが9、共和党が6、環境派と「ルコンケット」が共に5となった。 極右RNは、前2回の欧州議会選挙でトップとなっていたが、これほどの大差で勝利したことはかつてなかった。前回の選挙では、RNとマクロン大統領派の差はかなり小さかったが、今回の選挙では、それぞれ7ポイント程度上昇と下降を記録して、15ポイント以上の差が開いた。それだけでなく、極右新党「ルコンケット」も5%ラインをクリアし、極右は合計で37%近くの得票率を達成したことになる。マクロン大統領への批判と欧州批判をナショナリズムが吸い上げて成長していることが明確になった。 マクロン大統領は9日の午後9時頃、選挙速報が発表されてから1時間後というタイミングで、短い国民向けのメッセージを公表。解散総選挙を決めたことを明らかにした。大統領は、安定した政策運営のために国は明確な過半数を必要としていると述べて、国民に選択の余地を与えることを決めたと説明した。解散総選挙という決断は予想外で、国民に驚きを与えた。これより前、RNの筆頭候補を務めたバルデラ党首は、マクロン大統領に解散総選挙を迫っており、RNの要求に大統領が屈した感もある。第3位となった社会党の筆頭候補グリュックスマン氏と、環境派はそれぞれ、RNの要求に屈したとしてマクロン大統領の解散総選挙の決定を批判。逆に、共和党と、左翼政党LFIは解散総選挙を歓迎している。なお、過去に解散総選挙は、シラク大統領(故人)が1997年に決めた例があるが、大統領の保守勢力は選挙で惨敗し、ジョスパン左派内閣との「コアビタシオン」を招いたという経緯がある。その後、大統領選挙・総選挙の制度改正(ともに任期を5年間に揃えた)もあり、大統領が解散を決めるのはこれが初めてとなった。マクロン大統領は2022年の総選挙で下院における過半数を失っており、巻き返しの必要はあったが、このタイミングで解散を決めて、危険な賭けに打って出たことになる。 KSM News and Research -
2024.06.07
欧州単一効特許制度の導入から1年
欧州特許庁(EPO)が欧州単一効特許制度の運用を開始してからこの6月1日で1年間が経過した。欧州単一効特許は、欧州統一特許、欧州単一特許などとも呼ばれ、ひとまず欧州連合(EU)加盟国のうち17ヵ国が導入に応じた。各国ごとの有効化(バリデーション)を必要とせず、一括して効力が認められる制度で、出願者にとっては費用の削減などが見込める。従来制度において、4ヵ国を選んだ欧州特許の出願と同程度の費用で、17ヵ国全域を対象とした保護が受けられるとされる。この導入と並行して、欧州単一特許裁判所(UPC)が発足し、関連の係争を裁く体制が整えられた。 導入に参加したのは、フランス、イタリア、ブルガリア、スロベニア、オーストリア、ドイツ、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタのいずれもEU加盟の17ヵ国。報道によると、新制度の導入以来で、2万7000件を超える単一効特許の出願がなされた。EPOへの出願全体の23%を単一効特許が占めたことになる。出願者の所属国別では、デンマーク(出願全体に占める単一効特許の割合が50%)とポーランド(同50%)、そしてスペイン(同40%)が特に利用に熱心だった。ちなみにポーランドとスペインは導入に合流していない。出願の3分の2を欧州が占め、それに米国、中国、日本、韓国が続いた。他方、欧州単一特許裁判所では、1年間で373件の提訴を受け付けた。うち134件が権利侵害の案件、35件が特許無効の申し立てだった。 KSM News and Research -
2024.06.07
マクロン大統領、ウクライナへの戦闘機供与を予告
マクロン大統領は6日夜、テレビインタビューに応じた機会に、ウクライナへの戦闘機ミラージュ2000-5の供与を予告した。 大統領は同日、ノルマンディー上陸作戦80周年の一連の記念式典を挙行。作戦に参加した連合国各国の個別式典に加えて、合同式典がオマハビーチで挙行され、これにはバイデン米大統領らのほかに、ウクライナのゼレンスキー大統領も出席した。ゼレンスキー大統領は7日に下院で演説する予定で、このほか、戦車等製造のKNDSの拠点を訪問し、マクロン大統領との会談にも臨む。仏政府はこれまで、戦闘機供与の可能性を否定してきたが、マクロン大統領は一転して、ウクライナの国土防衛を目的として戦闘機の供与を決めたと発表。供与する機体の数や日程は明かさず、今夏より操縦士の訓練を始めると予告した。一部諸国(オランダ、ベルギー、デンマーク)は、米国の許可を得て、F-16戦闘機の供与を予告しているが、これらはまだ実現していない。戦闘機隊の構成が複雑になると運用が困難になるという理由を挙げて、仏政府はこれまで、ミラージュ戦闘機の供与の可能性を否定してきたが、態度を改めた。マクロン大統領はその一方で、このところの懸案となっているウクライナへの軍事教官派遣の是非については明らかにしなかったが、派遣は封じ手ではないとも述べた。 大統領はこのほか、9日に投票日を迎える欧州議会選挙について、欧州全体での極右の台頭は欧州を麻痺させる、と言明し、強い欧州を実現するための決起を有権者に呼びかけた。極右RNは大統領の発言について、選挙に不当に介入するものだと反発している。 KSM News and Research -
2024.06.07
PasqalとIBM、量子スーパーコンピューティングで提携
量子コンピューティングの仏ベンチャー企業Pasqalは6月6日、米コンピュータ大手IBMとの提携を発表した。IBMが進める量子を中心としたスーパーコンピューティングの実現に向けて協力する。 Pasqalは、中性原子方式による量子コンピュータの開発を進めている。IBMは、量子計算リソースと古典計算リソースにまたがって動作する量子アプリケーションの運用を要とする、量子を中心とした次世代スーパーコンピューティングの実現に向けて開発を進めており、Pasqalはこれに協力する。特に、化学分野と素材科学分野の研究に有用なアプリケーションの開発を進める。 両社は、量子計算と古典計算にまたがるワークフローを制御するソフトウェアのアーキテクチャを共同で定義する。オープンソースのソフトウェアに基づいたインテグレーションと研究界の参画を重視する考えで、両社はこのため、ドイツで技術フォーラムを共同開催し、他の地域での同様の取り組みも進める。 両社の協力には資本提携は含まれておらず、知財権の取引も予定されていない。なお、IBMは去る5月に、フランスの量子コンピューティング分野に4500万ユーロを投資する計画を発表。2025年までに50人程度のエンジニア・研究者を採用し、パリ・サクレーに2019年に設立した拠点を強化する。 KSM News and Research -
2024.06.06
中高生に人気のアプリ「Ten Ten」、内務省が注意を喚起
中高生の間で人気のアプリ「Ten Ten」について、内務省がリスクに対する注意を促した。インターネットいじめなどへの悪用や、プライバシー侵害等のリスクに警戒を呼びかけた。 Ten Tenは2022年9月にリリースされたフランス製のアプリ。スマホをトランシーバー代わりに使えるというもので、電源を切るか、機内モードにしない限りは、スマホの状態がどのようであっても、相手の声が届くし、自分の声も届けられることが特徴となっている。授業中に鳴って教員を苛立たせているほかに、悪意あるいたずらの手段にもなりうる。 内務省の責任者は、夜間や授業中などには通知をオフにするよう、青少年に対して勧告。それに加えて、セキュリティ上の諸問題についても警戒を呼びかけている。アプリは常時、マイクにアクセスできるが、技術的にはこれを悪用して端末の周辺の状況を把握することに用いることができる。この点について、Ten Tenの開発・運営会社は、会話のデータは一切保存していないとして、悪意ある潜入的なツールではないと弁明している。 Ten Tenは2021年にパリで発足のベンチャー企業で、現在の従業員数は6人程度。ユーザーから集めた個人情報の利用に関する規定が十分に熟する前にアプリが急激に成功してしまったとする評価もある。 KSM News and Research -
2024.06.06
ボーマノワール、ボードライダーズの西欧市場ライセンスを取得
仏ボーマノワール・グループがこのほど、ボードライダーズの西欧市場ライセンスを米オーセンティック・ブランズ社から取得した。立て直しを図る。 ボーマノワールは、La Halle、Caroll、Sarenzaなどのアパレルブランドの買収を通じて事業を拡大している。今回、ボードライダーズのアウトドアスポーツブランド7種の西欧市場ライセンスを取得し、長らく停滞が続いている事業のテコ入れを引き受けた。ブランドの所有権は引き続きオーセンティック・ブランズに帰属する。 ボーマノワールがライセンスを得たのは、クイックシルバー、ロクシー、ビラボン、DCシューズ、エレメント、RVCA、VonZipperの7ブランド。ライセンスの期限は15年間。対象地域において7ブランドは150店舗を展開し、量販店など販売業者の数千ヵ所の店舗で取り扱われている。2023年の年商は3億ユーロだった。ボーマノワールは3年以内の黒字化を目標に設定。仏サンジャンンドリュス市にあるボードライダーズの欧州本社は維持するが、700人の本社従業員を500人まで減らす計画。 KSM News and Research -
2024.06.06
ノルマンディー上陸作戦80周年記念式典、6日にオマハビーチで
ノルマンディー上陸作戦80周年を記念した一連の式典の要となる式典が6月6日、カルバドス県のオマハビーチで挙行される。米国のバイデン大統領をはじめとして、連合国に加わった各国の元首・首脳らが出席する。ドイツからはショルツ首相が出席する。ロシアの代表は一切、招待されていないが、ウクライナのゼレンスキー大統領は出席する予定で、フランス政府はこの記念式典を、ウクライナ支援で結束を示す機会とすることを望んでいる。 バイデン米大統領は5日朝にフランスに到着し、ノルマンディーに向かった。バイデン大統領は8日には国賓待遇で公式訪問を行うことになっている。マクロン大統領は2022年12月にバイデン大統領の招きで、米国を国賓待遇で公式訪問しており、その返礼としてバイデン大統領を招待した。フランスでは、欧州議会選挙を9日に控えており、バイデン大統領の公式訪問を含めて、上陸作戦80周年記念の一連の式典は、大統領陣営による選挙対策にも組み入れられている。 公式訪問時の首脳会談においては、ウクライナ、ガザ、アフリカにおける安全保障問題、経済・通商問題を巡る再調整、13日から15日までイタリアで開催のG7首脳会議及び7月にブラジルで開催のG20首脳会議に向けた対応の3点が議題になるという。 KSM News and Research -
2024.06.05
若年者向けの鉄道乗り放題定期券、受付開始に
マクロン大統領は4日、若年者向けの鉄道乗り放題定期券「パス・ライユ(Pass Rail)」の販売を5日に開始すると発表した。専用サイト(https://www.ecologie.gouv.fr/pass-rail)にて受け付ける。月額49ユーロで16-27才の若年者に提供する。 この種の定期券は、ドイツで全国民を対象に販売され、成功を収めていた。フランスでも当初は全国民を対象にした導入が検討されたが、費用が大きいこともあり、若年者に限定して提供することを決めた。7月と8月に2ヵ月間に限り提供。起点を選ばずに1ヵ月のみ(例えば、7月14日から8月14日まで、など)という購入の仕方もできる。定期券を購入した上で、予約サイトで列車を予約し、追加料金なしで鉄道を利用できる。利用できるのは、ローカル線(TER)、長距離在来線(アンテルシテ)、夜行列車(寝台列車の場合は追加料金が必要)で、高速鉄道は対象外。また、トランシリアンと呼ばれるパリ首都圏のローカル線も対象外だが、パリ発着で地方に向かうローカル線(向かう先の地域圏が運営しているため対象となる)や長距離在来線は無料で利用できる。 16-27才の70万人程度が利用できるが、うち6万人程度が実際に定期券を購入する見通しという。政府は費用負担を1500万ユーロ程度と予想しており、うち8割は国が負担、残りの2割は地域圏が分担する。 KSM News and Research -
2024.06.05
ナンバープレートなりすまし、防止法案が提出に
偽造ナンバープレートによるなりすまし詐欺の被害が広がっている。番号の本当の所有者が速度違反や駐車違反等の罰金を支払わされることになる。防止のために議員立法法案が提出された。 ドライバー団体「4000万人のドライバー」によると、2022年には、被害届が出ているだけで2万2000件近くの事案が発生している。2010年には1万3600件となっており、10年程度で2倍近くに増えている。同団体では、この種の不正においては、頻繁にナンバープレートを取り換えることがほとんどで、被害者が気づかずに罰金等を支払っているケースも多いと指摘。実際の被害規模はさらに大きいとし、年間で40万件から100万件に上るとの推計を示した。 同団体の協力を得て、中道与党MODEM所属のゲスマール下院議員は議員立法法案を準備。現在は、業者にナンバープレートの作成を委託する場合にはノーチェックだが、法案は、委託の際に、車体登録証と本人確認書類の確認を義務付けるとの内容となっている。業者側の罰則規定がないなど不備もあるが、ゲスマール下院議員は、急いで対策を講じる意志を示すことが大切だと説明する。同議員によれば、法案には超党派の支持が得られているという。 KSM News and Research -
2024.06.05
N26、フランスで利息付き銀行口座を開始
ネオバンクの独N26がこのほど、フランスで利息付きの銀行口座のサービス「エパルニュ・エクスプレス」を開始した。契約内容により2.26-4%の金利を適用する。 フランスでは、過去に普通口座に利息は付かないという規則が適用されていた関係で、現在でも利息が付く銀行口座のサービスはほとんどない。マイナス金利が解除されて久しく、金利があるのが当たり前の時代となり、ネオバンクが利息付き口座を売り物に競争を仕掛け始めた。Lydia Solutionが少し前に利息付き口座「Sumeria」のサービスを開始(最初の3ヵ月間に4%、その後は2%)。N26はこの後を追ってサービスを開始した。 N26は、1日ごとの残高で利息を計算し、月ごとに元本に算入する。サービス内容により異なる4つの契約について、最低で2.26%、最高で4%の利息を付与。月額無料のサービスで2.26%が適用され、4%の適用は、月額16.9ユーロの契約加入が条件となる。N26の場合は、資金洗浄対策の規定不順守を理由に、本国ドイツの当局機関から、新規顧客獲得数を制限する制裁措置の適用を受けていたが、これが最近に解除されたことで、利息を武器に集客力の向上を図る。 従来の銀行においても、このところ資金が利息のある定期預金へとシフトする動きが目立っている。中銀統計によると、去る3月時点で定期預金の残高は1710億ユーロとなり、2023年夏時点の1300億ユーロを大きく上回っている。 KSM News and Research -
2024.06.04
39才は迷いの中
「人生の道の半ばで 正道を踏み外した私が 目をさました時は暗い森の中にいた」ダンテの「神曲」の冒頭の句である。ダンテはこの時35才で、半分が35才なら全体は70才と、ダンテが生きた13-14世紀という時代を考えると長くないかという気もするが、これは旧約聖書の詩編第90章10節「人生の年月は70年ほどのものです」を根拠にしているらしい。いずれにせよ、中年が迷いの中というのは今も昔も変わらない。 現在は39才がそうした迷いの年であるという。派遣会社Actualなどが行った調査によると、無期雇用契約(CDI)の就労者の場合、希望的な気持ちの人と悲観的な気持ちの人の占める割合は、ちょうど39才を境に反転する。この年になると、労働市場における自分の商品価値に自信が持てなくなり、転職の可能性を自ら封じてしまう人が増えてゆく。住宅ローンも残っていたりするので、安定重視で守りに入り、転職で失敗するリスクを負う勇気がなくなる。失うもののない新卒者だった頃の進取の気性は今はもうない。この時期を過ぎると、不承不承の職であってもとどまるしかないと考えるようになり、そうすると、主体性を失い、モチベーションを喪失するリスクが高まるという。Actual社のサミュエル・チュアル社長は、企業側としては、39才以上の経験者には、尻の温まらない若い世代とは違い、安定してとどまってもらえる利点もあるとし、商品価値が落ちると考えるのは誤りだと説明している。 KSM News and Research -
2024.06.04
エッフェル塔の棺事件、再びロシアの情報操作か
エッフェル塔の脇に5点の棺が置き去りにされる事件が1日に発生した。ロシア方面からの情報操作の工作とみられている。 置き去りにされた棺には石膏が入っており、「ウクライナのフランス人兵士」と書かれ、フランスの旗で覆われていた。棺を小型商用車で運んできた運転手の男が現場付近で逮捕され、続いて長距離バスでドイツのベルリンに発とうとしていた2人が同日午後に逮捕された。運転手はブルガリア人で、前日にフランスに入った。金をもらってやったと供述している。残りの2人は、ウクライナ人とドイツ人で、それぞれ400ユーロで雇われたと供述している。当局はこれら3人の容疑者認定は見送り、釈放した。 この種の事件としては、去る5月14日未明にパリ市内のユダヤ人虐殺メモリアル壁面に赤い掌の落書きがなされたのが記憶に新しい。この時の容疑者であるブルガリア人のゲオルギ・Fは今回の事件の容疑者らと関係があり、いずれの事件でも、写真撮影がなされ、それがロシア系の情報操作グループ「Doppelganger」により、大手メディアに似せた偽サイト経由で拡散されたという共通点がある。今回の棺の件は、フランス軍がウクライナに教官を派遣する計画を巡り、ロシアが妨害工作のための「コンテンツ」を作らせたものと考えられる。 KSM News and Research -
2024.06.04
ニュース専門局:CNews、初めてBFM TVを視聴率で抜く
メディアメトリが発表した5月のテレビ視聴率統計によると、ニュース専門地デジ局のうち、CNews(ビベンディ傘下)が視聴率(占拠率)で2.8%となり、BFM TVの2.7%を抜いてトップに立った。以下、LCI(TF1傘下)が1.7%、フランスアンフォ(国営)が0.7%で続いた。 CNewsはこの1年間で視聴率を0.6ポイント伸ばした。最大手のBFM TVは逆に0.2ポイントの低下を記録。月間視聴率ではこれまで、2023年12月と去る3月に同率に並ばれていたが、今回初めて2位に下がった。BFM TVはアルティス・フランス(通信SFRの親会社)の傘下だったが、現在は海運大手CMA CGMのメディア部門による買収の途上にある。 累積視聴者数(4週間に1日につき平均10秒以上の視聴があった人を積み上げ計算した数字)では、CNewsが3452万1000人、BFM TVが4594万8000人で、後者がまだ優位を保っているが、CNewsが視聴者への浸透を高めているのは間違いない。CNewsはビベンディの傘下に入って以来、右傾化を強めており、極右の台頭を後押ししているなどとする批判の声も根強くある。 KSM News and Research -
2024.06.03
五輪テロを計画の青年が逮捕、チェチェン出身
政府は5月31日、パリ五輪を狙ったテロを計画していた18才の男性を逮捕したことを明らかにした。パリ五輪関係のテロ計画容疑での逮捕者はこれが初めて。 チェチェン出身のロシア国籍の18才の若者がサンテティエンヌ市で5月22日に逮捕された。サンテティエンヌ市内の競技場では、五輪期間中(7月26日-8月11日)に、サッカーの試合が複数、開催されることになっている。逮捕された男性は、ジョフロワギシャール競技場の襲撃を計画したが、警戒が厳重であるため、付近で観客を襲撃し、治安部隊と一戦を交えたうえで殉教者として死ぬことを望んでいたという。当局は31日までに容疑者認定を行い、計画がごく初期の段階にとどまっていたことから、監視下に置いた上で容疑者を釈放した。 この男性は当局によるマークの対象とはなっていなかったが、カフカス山脈北部地方の出身者のコミュニティを監視する中でその存在が浮かび上がった。カフカス山脈北部地方は、2018年のパリ市オペラ座界隈での刃物襲撃事件、2020年の教員サミュエル・パティさん殺害事件、2023年の教員ベルナールさん殺害事件の犯人の出身地であり、ダルマナン内相は、この地方出身の16-25才の若者について、「特別なアプローチ」で臨んでいることを明らかにしている。 KSM News and Research -
2024.06.03
S&P、仏長期債務を「AAマイナス」に1ランク格下げ
格付け会社S&Pは5月31日夜、フランスの長期債務の格付け見直しを発表した。「AA」から「AAマイナス」に1段階引き下げた。格付け見通しは「安定的」とした。 最近では、フィッチが2023年に格下げを決定したが、フィッチとムーディーズはともに数週間前に格付け据え置きを発表していた。S&Pが格下げを決めたことは、欧州議会選挙の投票日を目前に控えて、マクロン政権にとって政治面での打撃が大きい。 S&Pは、仏財政赤字の対GDP比が2023年に5.5%となり、当初目標を明確に上回ったことを指摘。政府は2027年に同比率を3%未満に引き下げることを目標に設定しているが、それを実現するめどが立っていないと指摘。フランスの公的債務残高の対GDP比が、ユーロ圏においてギリシャとイタリアに次いで3番目に高いとも指摘し、国債費の対GDP比も、2023年の3.3%に対して、2027年には5%まで上昇するとの見方を示した。政治的な安定性にも問題があり、しかるべき政策を推進する上での政府の能力に疑念があるとも指摘した。 ルメール経済相は格下げ決定について、フランスの格付けは上から3段階目とまだ高いと説明。財政収支の悪化はコロナ危機以来の経済支援が原因であり、この支援によって経済を支えていなかったら、さらに重大な結果になっていたはずだとして、政府の政策を正当化した。野党勢力は格下げについて、それぞれの立場からマクロン政権を非難。保守野党の共和党は、政府が歳出と債務の削減を拒否してきた結果がこれだと非難、左翼政党LFI(不服従のフランス)は、政府が格下げ決定を口実に予算削減を進める恐れがあるとし、収支悪化の原因は、富裕者等を優遇する不公平な税制にあると主張した。 KSM News and Research -
2024.06.03
STマイクロ、SiCパワー半導体の伊新工場に50億ユーロを投資
仏伊半導体大手STマイクロエレクトロニクスは、伊シチリア島カターニア市に半導体新工場を建設することを決めた。50億ユーロを投資し、SiCパワー半導体を製造する新工場を2026年までに開く。SiCパワー半導体の製造を専門とする垂直統合型の工場は世界でもこれが初めてだという。 SiCパワー半導体は、電動化を進める自動車部門を中心に採用が広がっている。2023年の世界市場規模は27億ドルで、うち11億ドル(40%強に相当)はSTマイクロが稼いでいる。同社はカターニアとシンガポールでSiCパワー半導体を量産しているが、完全自動の新工場を欧州に整備し、需要の取り込みを図る。人工知能(AI)を活用して生産工程の最適化を推進し、競争力の向上を進める。2033年までに、200mmウェハの年間生産能力78万枚の達成を目指す。 投資額のうち20億ユーロはイタリア政府による国家補助が充当され、欧州委員会は域内の半導体生産振興の枠内でこの国家補助を承認した。欧州連合(EU)は、世界生産に占める欧州生産の割合を、現在の10%から20%に引き上げることを目標に定めている。 KSM News and Research -
2024.05.31
仏国内の水道水消費量、2023年に3.2%減
自治体の水道事業が作る団体FNCCRが発表した速報(合計で国内の有収水量の13%に相当する自治体を対象に調査)によると、2023年の国内の水道水の消費量は前年比で3.2%減少した。近年には毎年0.5-1%程度の減少を記録していたが、それを超える減少を記録した。度重なる干ばつを前に、個人や企業が節水に努めた結果とも考えられる。 消費量の減少は、自治体が運営する水道事業や、スエズやヴェオリアなどの水道会社の収入減少に直結する。その上、今後数年以内には水道インフラへの大型投資が必要となり、水道事業者は、その資金の捻出を迫られている。このため、FNCCRと業界団体等は、「水道料金の上昇は不可避」との見解を示している。 事業者からは、季節による変動料金制の導入を求める声もあがっている。トゥールーズ市の場合は、水の需要が高い6-10月の料金を42%引き上げ、それ以外の月には30%引き下げるという料金体系の導入を決めた。大口需要家に適用される逓減型料金を廃止するという案も取り沙汰されている。また、未申請で地下水汲み上げ井戸を利用している家庭の摘発を強化するべきとの声もあがっている。 KSM News and Research -
2024.05.31
軍用AIのPreligens、買収者探しに着手
軍用AI(人工知能)技術を開発する仏Preligensが身売り先を探している。顧問銀行を通じた買収候補者の募集が6月初頭に締め切られる。 Preligensは2016年に発足。衛星データの分析ツールを軍事用途で開発しており、フランス軍を主要顧客とする。従業員数は220人で、2023年には、2800万ユーロの売上高に対して400万ユーロの赤字を出したが、2024年には黒字転換(300万-400万ユーロ程度の利益)を見込んでいる。 同社は、成長に向けて新たな資金調達を実施する可能性も検討したが、欧州には十分な資金力のある投資基金が少なく、大手企業の傘下に入って事業拡大の道を探ることにした。2人の創業者と360キャピタル(アーリーステージの企業への投資を専門とするファンド)が保有株の譲渡を望んでおり、買収者探し以外の選択肢がないのが実情とみられる。軍事関連の戦略的分野の企業の場合、仏政府による拒否権の発動も考えられ、投資家にとって腰が引ける状況があることも、資金調達を難しくしている。 仏サフラン(航空機エンジンなど製造)や、仏伊合弁のテレスパツィオ(伊レオナルドが67%、仏タレスが33%を出資)などが買収に関心を示している模様。後者の場合は、仏伊両国政府の関係が必ずしも良好でないことが障害となる可能性もある。 KSM News and Research -
2024.05.31
地方分権に関する報告書、政府に提出
与党ルネサンス所属のブルト下院議員は30日、地方分権に関する報告書を政府に提出した。51項目の提言を盛り込んだ。アタル首相はこの報告書をもとに、地方議員らとの間で法案策定に向けた協議を開始する。 マクロン大統領は報告書の策定を去る11月にブルト議員に依頼していた。報告書は、一連の権限の割り振りを見直し、一部の権限は国に戻し、また逆に一部の権限は自治体に移譲する形で、自治体間の役割分担を明確にすることを提案した。例えば、住宅政策の権限は市町村及び市町村連合に委ね、連帯給付は県に委ねる(国も協力)方針を示した。すべての国道の管理権限は県に移譲し、また、地域圏には、経済開発・雇用政策の権限を委ねることを提案した。権限に対応する形で、地方税等の税収が向かう先も整合的に整理することを提案。土地関連の税収は市町村及び市町村連合に割り当て、県の財源は、交付金とCSG(広く所得を課税標準とする租税)の税収の一部充当などにより確保する。地域圏については、法人税税収の一部充当と、法人対象の土地利用に係る課税等により財源を確保する。 報告書はこのほか、2017年に禁止された国会議員と市町村首長の兼務を復活させることを提案。また、市町村議員の数を20%削減し(10万人程度の削減に相当)、その代わりに首長をはじめとする議員の報酬と保障を強化することを提案した。県議会議員と地域圏議会議員をセットにして選出する選挙制度の再導入も提案した。パリ、リヨン、マルセイユの3大都市に適用される特別な選挙制度については、区ごとの選挙に加えて、市全体の候補リストにも投票できるようにする見直しを提案した。パリとその周辺の130市で構成される「グランパリ都市圏」(2016年に設立)については、成果が上がっていないことを理由に廃止することを提案した。また、パリ環状自動車専用道(ペリフェリック)については、パリ市の管理下から国の管理下に切り替えることも提案した。 KSM News and Research -
2024.05.30
性同一性障害の治療に関する議員立法法案、上院を通過
性同一性障害の治療に関する法案が28日、上院を通過した。身体的治療を制限する内容の法案を採択した。 法案は、保守野党の共和党が議員立法法案の形で提出した。共和党は中道勢力とともに上院で過半数を握っており、法案は賛成多数で採択された。政府はこの法案に反対意見を提示、左派勢力は法案に反対票を投じた。 法案は特に、二次性徴抑制療法を行う条件として、2年間にわたる精神療法の実施を義務付けている。反対派はこれについて、期間が長すぎて、二次性徴抑制療法が有効となりうる年齢を過ぎてしまい、事実上の禁止に等しいと批判している。法案推進派は、転換を後悔してもとに戻ろうとする人の事案を挙げて、身体的な治療に弊害があることを強調しているが、反対派は、性同一性障害に苦しむ青少年の自殺が特に多いことを挙げて、治療の道を閉ざすのはリスクの方が大きいと主張している。政府は、保健当局による意見書が2025年に提出される予定であることを挙げて、政治的な議論が先行するのは望ましくないとの見解を示し、法案に反対した。 KSM News and Research -
2024.05.30
仏会計検査院、社会保障会計の赤字増大を問題視
会計検査院は29日、社会保障会計に関する報告書を公表した。収支の悪化を問題視し、支出削減に向けた努力を呼びかけた。 報告書によると、社会保障会計の赤字額は2023年に110億ユーロ弱となり、新型コロナウイルス危機時に比べれば縮小したものの、当初見通しを上回る額にとどまっている。このままだと赤字額は増大を続けて、2027年には170億ユーロを超える水準に達する。会計検査院は、この推計が、医療支出の年間伸び率を3%と仮定してなされていることを挙げて、人口高齢化により医療費が増大する傾向にあることなどを考えると、ごく楽観的な予測であると指摘し、さらに赤字が拡大する可能性を示唆した。 会計検査院は、2027年時点で赤字額が過度に増大するなら、社会保障会計の健全性は大きく損なわれるとし、収支改善の努力が不可欠であることを強調した。報告書は、社会保険料の各種減免措置(残業手当や特別賞与、外食券など現物供与に係る減免措置等)の規模が年間で180億ユーロ(2022年実績)に上ることを挙げて、節減の余地が大きいと指摘した。また、傷病手当金(2022年実績で120億ユーロ)についても、制度の見直しによる節減の余地があると指摘。最大支給期間を現行の3年間から2年間に短縮する、傷病手当金の支給が開始されるまでの待期期間を3日間から7日間へ延長する、などを可能な措置として提示した。 KSM News and Research -
2024.05.30
パリ五輪開会式:ベランダは大丈夫か
パリ五輪の開会式の際に、見物者が集まった民家のベランダが崩落するリスクがある。専門家が29日付の日刊紙ルパリジャンに対して明らかにした。 7月26日に開催されるパリ五輪の開会式は、セーヌ川を船舶がパレードするという斬新な企画で行われる予定だが、セーヌ川を見下ろせる建物には見物の人々が多数集まることが予想される。しかし、特に古い建物の場合は、脆弱になっているところも多く、極端な荷重に耐えられない恐れもある。トゥールーズ大学の教員で専門家のブシュージュ氏は、この機会に複数の物件を点検したが、ひび割れや苔(防水性に欠陥があることを示す兆候)などが見受けられるものが多く、手摺がぐらついているなどの危険な兆候もあったと説明。開会式のことが気にかかって仕方がない、と話している。 パリの代表的な「オスマン風」建物は、現在のパリの基調を作った19世紀後半の都市計画に由来しており、ベランダが3階と6階に設置されている。かつては、1階に商店があり、2階には商店主が住み、そして3階には富裕者が住む(当時はエレベーターがなかったため、階が低い方が好まれた)という構成が通例で、富裕者向けにベランダが設置された。6階は屋根裏部屋の一つ手前の階で、ここにベランダがある理由ははっきりしていない。作業用の足場のような用途が想定されていたのかもしれない。いずれにしても、街並みに統一感を与えることに貢献している。こうした建物のベランダは、そもそも大きな荷重を想定していないし、建設から長い年月を経過しているため、あまり頑丈であるとはいえない。それにイナバの物置くらい人が乗ったら、確かにひとたまりもないかもしれない。区分所有建物の管理組合の連合組織はこの機会に啓蒙のための文書を準備。「飛び跳ねたり動き回ったりすると余分な負荷がかかるのでやめましょう」、「専門家に鑑定をしてもらいましょう」などのアドバイスを盛り込んでいるが、鑑定を依頼する入居者は多くないという。 KSM News and Research -
2024.05.29
パリ・シャンゼリゼ大通りの改修計画案が公表に
パリのシャンゼリゼ大通りの改修計画案が27日に発表された。150項目の提案を盛り込んだ。計画案は、シャンゼリゼ大通りに出店する企業などが作るシャンゼリゼ委員会が策定した。シャンゼリゼ大通りは世界的に有名だが、近年は客足が鈍っており、巻き返しを図るべく、今回の計画案が策定された。都市計画の専門家である建築家のフィリップ・キアンパレタ氏が策定に協力した。パリ市と国に対する提言という位置づけで計画案をまとめた。 計画案はまず、片側3車線の大通りを片側2車線に改め、2車線を自転車専用レーンとすることを提案。また、歩行者のためのスペースを13%増やし、さらに、緑地化を進めて、木陰で休憩できる場所や泉水などを整備、トイレも整備する。温暖化への耐性のある快適な空間を都市内に整備することを目指す。人工被覆化されていない地面を120%増やし、160本の植樹なども行う。コンコルド広場に近い方のシャンゼリゼ周辺の20ヘクタールの緑地は本格的な庭園に改め、子どもの遊技場やスポーツ施設などを整備。大衆的な人気を得られる地区に再整備する。コンコルド広場は、イベント開催の会場としての機能を果たせるような形で、シャンゼリゼの改修計画に組み入れる。 150項目の提言をすべて実行するには、2億5000万ユーロの投資が必要になる見込み。財源の確保は今後の課題となる。パリ市や国が計画案をどの程度受け入れるかも未知数。 KSM News and Research -
2024.05.29
仏ガラパゴス、仏フォションを買収
仏フォション(高級食材)が仏ガラパゴス(ビスケット製造)の傘下に入る。 老舗フォションの年商は1億ユーロ、15ヵ国に85ヵ所の販売拠点を持つ他、パリと京都に5ツ星ホテル、仏ルーアン市にガストロノミー学校を経営する。一時はパリ市マドレーヌ広場の本店閉鎖に追い込まれるほどの経営難にあったが、この3年は黒字を確保している。 ガラパゴスは1990年創業、GavottesやTraou Madなどのブランドでビスケットを製造販売する。年商1億2500万ユーロ、うち2割が仏国外の売上。仏国内の販売拠点は12ヵ所。 2004年からフォションを所有するデュクロ一族は、経営者がフランス人であることと全事業を同一株主が経営することを条件に売却先を探していた。ガラパゴスとは1年前から売却交渉に入っていた模様。売却額は明らかにされていない。フォションのビシェル社長は、ガラパゴスは自社にとって「望みうる最良のパートナー」とコメントした。 ガラパゴスのジェローム・タカール社長は、「フォションの遺産を継承」し、ガラパゴスと補完的である国外販売網を強化することに意欲を示した。フォションのトルコとカタールの出店計画は維持し、2000年代に撤退した米国へも再進出を目指すと抱負を語った。 KSM News and Research -
2024.05.29
サイバー攻撃保険、保険料が低下傾向に
企業のリスク担当者が作る団体AMRAEの集計によると、フランスではサイバー攻撃保険の保険料が顕著な低下傾向を示している。保険事故の減少が背景にある。 過去数年ではサイバー攻撃の増加に伴い、保険が機能しなくなる可能性が懸念されていた。しかし、2023年には、年商1000万-5000万ユーロの中規模企業向けで、平均で保険料が7%の低下を記録した。この規模の企業では、年間保険料は平均で5400ユーロとなった。自己負担枠上限も、従来の3分の1の1万5000ユーロに引き下げられ、加入の条件は改善された。この規模の企業の保険加入数は従来の3倍に増えた。 サイバー保険加入の8割を占める大手企業では、保険料の低下率は12%に達した。中堅企業でのみ保険料は上昇。全企業の合計でも、保険料は12%の低下を記録。保険加入企業は増えたものの、保険料の低下により、保険料収入は3億2800万ユーロで、前年比で4%増と小幅な伸びにとどまった。内訳は、大手企業が2億6310万ユーロ(1%減)、中堅企業が4860万ユーロ(27%増)、中規模企業が770万ユーロ(73%増)、小規模企業が450万ユーロ、零細企業が380万ユーロだった。 KSM News and Research -
2024.05.28
下院調査委、託児所の問題点を指摘する報告書を公表
下院調査委員会は27日、託児所に関する調査報告書を採択した。託児所のサービスの質の低下を問題視し、改善を求める内容となった。 託児所における子どもの虐待案件の告発が相次ぐ中で、下院は調査委員会の設置を決めた。報告書の作成は与党ルネサンス所属のタンジリ議員が担当したが、報告書の内容については、民間の託児所の問題を不問に付すのはおかしいとして、左翼政党LFI(不服従のフランス)のマルティネ調査委副委員長が異議を唱え、自ら別途報告書を公表するという異例の展開となった。 国内の託児所の受け入れ能力は50万人分程度だが、うち半分が公営で、残りは4分の1ずつが民間と非営利団体による運営となっている。調査委報告書は、運営規則がサービスの質を招く原因になっているとして、その改正を勧告。具体的には、保育士の数を、現行の子ども6人に1人ではなく、5人に1人へと増やし(2027年までに実現)、保育士の負担を減らして就労条件を改善し、人材難の解消を進めるべきだとした。このほか、企業による託児所の予約制度を廃止し、託児所のあっせんにおいて市町村が果たす役割を強化して、受け入れ希望者に公平な扱いを実現することを提案した。託児所の運営資金に企業からの徴収金を充当することも提案した。 副委員長が提出した独自報告書は、問題託児所に出された26件の閉鎖命令のうち、93%が民間託児所であることを挙げて、営利を優先する民間施設に問題が集中していると指摘する内容となった。株主が所有する不動産施設に託児所を入居させて、テナント料を得るようなやり方も見受けられると問題を提起した。 KSM News and Research -
2024.05.28
河川等のPFAS汚染、欧州で広がる:セーヌ川では汚染度が高め
環境NGO連合のPANヨーロッパはこのほど、ほとんど分解がなされずに環境中に定着することから「永遠の化学物質」と呼ばれるPFASによる汚染状況を欧州各地で調べた結果を公表した。幅広い汚染が確認された。 今回の調査では、欧州10ヵ国において、河川及び地下水系から標本を採取し、PFASの含有量を調べた。その結果、すべての標本から、かなりの量のPFASが検出された。検出された物質は、98%以上がトリフルオロ酢酸(TFA)であり、標本のうち8割近くで、1リットル当たり500ナノグラムという欧州連合(EU)指令の基準値(PFAS全体を対象にした基準値で、2026年より適用が開始される予定)を超えていた。平均では1180ナノグラムで、フランスのセーヌ川では2900ナノグラムと平均よりかなり高かった。セーヌ川の調査は、パリ市内のノートルダム寺院付近で標本採取が行われた。TFA汚染の原因としては、冷媒ガスの放出と、農薬による汚染、そして、PFASを使用する工場からの排水などが考えられるが、パリのセーヌ川の場合は、上流に位置する農業県における農薬汚染が主因であると考えられる。 TFAによる健康被害については、まだ科学的な知見が出揃っていないが、免疫系の弱体化などの影響がある可能性が指摘されている。飲料水からの除去については、逆浸透膜法による浄化以外の手法は開発されていない。 KSM News and Research -
2024.05.28
ペプシ、パリにポップアップ・レストランを開設
ペプシ・フランスは29日まで、パリ市内でポップアップ・レストラン「ペプシ・フードストリートダイナー」を開く。フランス市場でのシェア拡大をにらんだ話題作りの一環で開いた。 シェフ発掘番組「トップシェフ」の第7シーズンで優勝のグザビエ・パンスマン氏を招へいし、ペプシ・コーラを食材に用いたメニューを用意してもらった。ストリートフードを売り物とする人気シェフを起用して、若い世代にアピールするのを狙った。やはり若者に人気があるサンマルタン運河近くに2フロアの店舗を確保し、23日から29日までの1週間に、1食につき200人のテーブルを用意したが、すでに満員御礼の盛況だという。ニューヨーク、ソウル、パリの3メニューを各25ユーロで提供する。 ペプシは仏市場でシェア5%と、王者のコカ・コーラに大きく差をつけられている。ただ、ゼロシュガーに限るとシェアは15%とより高い。ペプシは2、3年後をめどに、シェアを2倍に増やすことを目指しており、レギュラー品でも砂糖の含有量を1リットル当たり4.5グラムまで削減(他社製は11グラム)したこともアピール材料としている。テイクアウト向け需要を取り込むべく、多彩な容量の製品を揃え、100%リサイクルのボトルも売り物とする。 KSM News and Research -
2024.05.27
マクロン仏大統領、国賓待遇でドイツの公式訪問を開始
マクロン仏大統領は5月26日、国賓待遇でのドイツの公式訪問を開始した。3日間の日程で訪問する。国賓待遇での公式訪問は近年は稀であり、前回は24年前にさかのぼる。欧州議会選挙を直前に控えたタイミングで、独仏両国が欧州建設における協力関係をアピールする機会となる。 初日の26日には、ベルリンで独シュタインマイヤー大統領とともに、基本法制定75周年とベルリンの壁崩壊の35周年を同時に祝う「民主主義祭典」に出席。外国首脳の参加はマクロン大統領のみで、両国の友好関係を演出した。マクロン大統領はこの機会に、独仏関係の停滞が取りざたされるのはほとんど恒常的なことであり、それにもかかわらず、両国は協力して素晴らしい成果を挙げてきた、と言明し、足元で両国間の対立が報じられている中でも、協力関係が堅固であることを強調した。大統領はまた、ナショナリズムの台頭を民主主義の脅威として捉えて、これに断固として戦う姿勢を強調し、欧州議会選挙に向けて極右勢力に対抗する姿勢をアピールした。 26日には大統領官邸で晩餐会が開かれ、これにはショルツ首相と、メルケル前首相も出席した。27日には、ベルリンにあるユダヤ人虐殺メモリアルを訪問後、旧東独地方ザクセン州のドレスデン市を訪問し、聖母教会前で欧州の若者に向けた演説を行う。極右の台頭が目立つ土地柄でもあり、大統領はこの機会に、極右への対抗と欧州の建設に向けた意欲を再確認するとみられる。同日にはフラウンホーファー研究所の訪問も予定する。最終日の28日には、ミュンスター市(ノルトライン・ウェストファーレン州)にてウェストファリア平和賞を授与された後、ショルツ首相との会談が予定される。 KSM News and Research -
2024.05.27
アタル首相、失業保険の改正案を公表
アタル首相は26日付のラトリビューン日曜版とのインタビューなどを通じて、失業保険制度の改正案について公表した。7月1日付の政令により改正を定め、12月1日付で施行する。 首相は、経済成長の回復に伴い生じる求人難を見越して、就労意欲を高める必要があるとし、失業保険制度の改正を通じて、就業するほうが有利になる環境作りを進めると説明した。具体的には、失業手当の受給資格を得る条件として、今後、直近20ヵ月に8ヵ月以上の就労実績があることが求められる。現行制度では24ヵ月中に6ヵ月以上となっており、条件が厳しくなる。失業手当の支給期間も、最大18ヵ月から15ヵ月へ短縮される。高齢層の失業者については別枠の規定が適用されるが、その年齢最低限は、現行の55才から57才に引き上げられ、53-55才を対象とする中間的制度は廃止される。失業手当の給付期間も最大27ヵ月から22.5ヵ月へと短縮される。 このほか、失業率が6.5%を下回った場合(現在は7.5%)には、失業手当の支給期間が、57才未満の場合で12ヵ月、57才以上の場合で18ヵ月に短縮される。 他方、高年齢層の失業者については、就業時の報酬より低い報酬での再就職を受け入れた場合に、差額を失業保険から支給する(期限は1年間)制度が導入される。 KSM News and Research -
2024.05.27
仏政府、加工食品の生産国表示制度を導入
政府は25日、加工食品に用いられる農産品の生産国を表示する任意制度の導入で業者側と合意したことを明らかにした。年内にも表示が始まる。 新制度「オリジンアンフォ(Origin’Info)」には、PB商品を含む80の食品ブランドが合流を約束した。果物・野菜と食肉には生産国の表示に関する義務が10年以上前から導入されているが、加工食品には表示に関する統一的な枠組みがなかった。政府は今回、業界側との協議を経て、任意制度の仕様をまとめた。これによると、表示は、当該製品に用いられている3種までの農産品について、生産国を示す形でなされる。例えば、ミートソーススパゲティの調理済み製品なら、小麦、トマト、牛肉の3種について、それぞれの生産国が表示される。加工がなされた国名をあわせて表示することと、円グラフを用いて国別の比重を表示することも認められる。また、包装前面にはQRコードのみを表示し、それを入口にインターネット経由でラベル表示を参照できるようにすることも認められる。 任意制度につき、表示がなされる製品の選択は各社に委ねられるが、政府は、年末時点で1万点を超える製品に表示がなされるものと予想している。政府はまた、同制度の適用を欧州諸国に広げるよう働きかける方針。 KSM News and Research -
2024.05.24
フランスの温室効果ガス排出量、2023年に前年比5.8%減
アタル仏首相は23日、2023年のフランスの温室効果ガス排出量が前年比で5.8%減少(二酸化炭素換算で2280万トン減)したと発表した。予想の4.8%を上回る減少率と、これを歓迎した。首相が引用した数字は、政府の削減目標の達成状況を調べる機関Citepaが算出した速報値で、確定値は2025年6月に公表される予定。 仏政府は、欧州にならって、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減し、2050年にはカーボンニュートラルを達成することを目指しているが、目標達成には2022-2030年の間に毎年5.3%(二酸化炭素換算で合計1億3800万トン)の削減が必要になる。2023年には、前年の2.7%減から削減ペースが加速して目標達成に弾みがついたが、環境NGOらはこれを暖冬や経済活動の停滞など一時的な要因に起因したものとのシビアな見方を示した。また、Citepaの数字には輸入製品に由来する排出量が考慮されておらず、森林・土壌による炭素吸収分も含まれていない。首相府下に設置のエコロジー企画総局(SGPE)は、現ペースで森林が減少する仮定では、削減目標の達成が難しくなるとの見方を示している。 KSM News and Research -
2024.05.24
国際通貨基金(IMF)、フランスに支出削減を勧告
国際通貨基金(IMF)は23日、対フランス4条協議の見解を公表した。全般的な増税によらない財政健全化を勧告した。 IMFは、仏経済成長率を、2024年に0.8%、2025年に1.3%と予想。これは仏政府の公式予想に近い水準となっている。IMFはまた、2027年時点で財政赤字の対GDP比を2.9%まで引き下げるという仏政府の中期財政目標を支持したが、その実現に当たってはかなりの調整が必要だと指摘。フランスではすでに課税水準が高めであることを挙げて、全般的な増税によらずに支出の削減を通じた財政健全化を進めるべきだと指摘した。 IMFは具体的には、非効率的な支出項目を削減の対象とするよう勧告。失業給付の絞り込みと地方自治体の財政健全化への貢献拡大などを求めた。さらに、研究開発・イノベーション向けの税制優遇措置の見直しを勧告。これは、研究税額控除(CIR)の対象の絞り込みを意味していると考えられる。公共部門の人件費については、行政機構の重複を整理し、デジタル化・自動化を推進することで削減が可能と指摘した。気候変動対策に絡んでは、化石燃料の税制優遇措置の段階的な廃止を勧告した。この措置については、対象となっている農業部門や建設部門等の強い抵抗があり、これまで実現が目指されたものの失敗しているという経緯がある。 KSM News and Research -
2024.05.24
Expleo、炭素繊維のリサイクル手法を開発
仏ベンチャー企業Expleoは、航空機に多用される炭素繊維のリサイクル手法の開発を進めている。環境負荷の小さいリサイクル手法の工業化に取り組んでいる。 炭素繊維の使用は毎年10%増のペースで進んでいる。航空機のリサイクル需要は2030年までに6000-8000機と見込まれるが、新型機ほど軽量な炭素繊維の利用が多く、エアバスA350の場合は50%を炭素繊維が占めている。既存のリサイクル手法だと、3000度という高温で熱して、汚染度の高い薬剤を利用することが必要になり、リサイクルの炭素負荷は大きく、費用もかかる。Expleoは、CNRS(仏国立科学研究センター)発のベンチャー企業で、2019年に設立。トゥールーズにある研究所(Softmat、Cirimat)の協力を得て、新手法を開発した。 炭酸プロピレンを溶剤に、過酸化水素水を反応剤とし、さらにクエン酸を触媒として用いて、60度という低温にて酸化反応を通じて炭素繊維を回収する。母材のエポキシ樹脂も分離回収できる。回収した炭素繊維の性能劣化は5-10%程度と小さい。現行のリサイクル手法のほとんどでは、3-5mm程度の長さでしか回収できないが、実験室では5cm長の回収に成功。某社の資金協力を得てプロトタイプが6月に稼働する予定で、ここでは30-50cm長の回収と手法の最適化が図られる。航空機以外でも、耐用年数切れがこれから立て込む風力発電機など応用が可能な分野は多い。 KSM News and Research -
2024.05.23
仏政府、失業保険制度改正案を近く公表へ
ボートラン労相は22日、失業保険制度改正に関して労使代表との個別協議を開始した。意見聴取を経て、改正案がアタル首相により26日に発表される。 個別協議で提示された政府原案によると、政府はこの改正で、通年にて36億ユーロの節減を見込んでいる。就業促進効果により9万人の就業者増加も見込む。 具体的には、失業手当の受給資格を得る条件が厳しくなり、現行の「直近24ヵ月中で6ヵ月以上の就労実績」が、「直近20ヵ月中で8ヵ月以上の就労実績」に改められる。この厳格化は25才未満の層で特に影響が大きいと考えられる。 高齢層については、以前の報酬よりも低い報酬での就労を受け入れる失業者向けの収入補填措置を導入。この措置にかかる費用は失業保険会計(UNEDIC)が負担する。半面、高齢層の失業者に年金満額受給までの期間の失業手当の支給を継続する制度については、「社会保障上限の57%」(現金給与総額ベースで月額2202ユーロに相当)が支給額の限度となる。高齢層の失業手当支給期間(通常よりも長く設定されている)も絞り込まれ、57才以上にならないと適用されなくなる(それより年齢が低い場合は通常の18ヵ月間)。この年齢下限の引き上げでは年間2億7000万ユーロ以上の節減が見込まれるという。 このほか、失業者の起業等援助も減額の対象となる。景気拡大期には失業手当の条件を厳しくするとの措置も増強される。短期雇用契約等の利用が多い企業に対する保険料割り増し制度についてはまだ裁定がなされていないという。 KSM News and Research -
2024.05.23
外国による干渉対策法案、上院で審議
上院は22日、外国による干渉対策法案を審議した。同法案は、与党議員が議員立法法案の形で提出、去る3月に下院を通過している。 法案は、ロビー活動等を行う組織のリストを作成し、外国系の組織について、リストへの登録を義務付けている。リスト登録をせずにロビー活動等を行う団体には刑法に基づいた処罰が適用される。リストは、公的機関のHATVP(閣僚の資産状況を監視する等の任を負う独立機関)が管理する。また、アルゴリズムを用いたインターネット接続状況の分析・監視も可能になる。アルゴリズムを用いたインターネット監視は、2015年にテロ防止を目的に限定して試験導入されたが、その対象を、外国からの干渉に関係する一連の案件に拡大する。また、外国による干渉に携わった個人、企業、団体の資産凍結を可能にする条項も盛り込まれた。 外国からの干渉の対策法案はロシアや中国の脅威を念頭に策定された。折しも海外領土ニューカレドニアでは暴動が発生しているが、政府は、ニューカレドニア議会とアゼルバイジャン国会の間で4月に協力合意が締結されたばかりであることなどを挙げて、アゼルバイジャンが分離独立派をたきつけていると非難しており、外国からの干渉が注目される中での上院審議となった。なお、マクロン大統領は急遽、22日にニューカレドニア訪問に出発したが、それに前後して、ニューカレドニアは大規模なDDos攻撃を受けたという。 KSM News and Research -
2024.05.23
マクロン大統領、AIのファンドオブファンズ設立を予告
マクロン大統領は21日、人工知能(AI)分野の関係者を集めた会合を開いた機会に、同分野への資金供給を目的としてファンドオブファンズを設立すると予告した。大規模言語モデル、AI向けプロセッサ、クラウドの開発等を対象に資金を供給する。大統領は、独仏共同のファンドにしたいと言明、できれば欧州レベルのファンドにする意欲を示した。ガバナンスや資金総額については明らかにしなかったが、仏政府が少なくとも4分の1を拠出するとの考えを示した。大統領はこのほか、AI関係の国内のクラスター9ヵ所向けに、合計で4億ユーロを投資すると予告。AI関連の技能者の養成を年間10万人と、現在の2倍に増やすことを目指すとした。AI向けGPUの欧州連合(EU)域内生産が占める割合を3%から20%に引き上げるとの目標も確認した。 仏政府はこれまで、「Tibi2」ファンドを通じて、ディープテック分野のアーリーステージ及びグロースステージの企業に合計で70億ユーロの投資を実現した。また、2022年に設立の欧州レベルのファンドオブファンズ「ICTE」は、テクノロジー分野の欧州大手の育成を目的に、10億ユーロの投資実現を目指している。 KSM News and Research -
2024.05.22
ユダヤ人慰霊モニュメントの落書き、ロシア依頼の犯行か
去る14日未明にパリ市内のユダヤ人虐殺慰霊モニュメントで落書きが見つかった事件で、警察の調べによると、ロシアによる犯行である疑いが強まっている。22日までに報道された。 この事件では、パリ4区のマレ地区にあるモニュメントの外壁など数ヵ所に、赤い手形が多数、刻印されているのが見つかった。警察は監視カメラの分析などから、2人の実行犯を特定。携帯電話の分析とあわせて、犯人らが潜伏していたパリ東部のホテルを突き止めた。犯人らはいずれもブルガリア人で、ロシアからの依頼で犯行を実行した疑いがある。 昨年11月にも、青い色のダビデの星がステンシルで落書きされる事件がパリ市内で発生したが、この時も、ロシアによる依頼であったことが判明している。今回の事件では、パレスチナ支持派が抗議行動で用いた赤い手形というシンボルが使われており、仏国内での対立を増長させて不安定化を図ることを狙ったロシアの工作であると考えられる。 KSM News and Research -
2024.05.22
公共放送部門の統合目指す法案、下院で審議
公共放送改革法案が下院小委員会で審議されている。公共放送部門を一つの持ち株会社の下に統合する方針が小委員会にて承認された。 新ホールディング会社「フランス・メディア」には、フランス・テレビジョン、ラジオ・フランス、INA(映像アーカイブなどを運営する公的機関)の3社が合流する。アルテ(独仏合同の文化専門テレビ局)のフランス側組織は参加しない。フランス・メディア・モンド(外国での放送など担当)はひとまず合流から外れる。合流する3社はフランス・メディアの子会社となり、それぞれに経営陣が置かれるが、持ち株会社の指揮下に入る。従業員総数は1万4000人近く、年間予算(公的補助金)は30億ユーロ超の大所帯となる。フランス・メディアのCEOは、ARCOM(放送行政監督機関)が任期5年で任命する。フランス・テレビジョンのエルノットCEOは統合に賛成しており、フランス・メディアのCEOに立候補する可能性がある。2025年年頭に持ち株会社を設立し、その1年後を目処に統合を実現することを目指すが、統合にかかる費用に関する試算等は今のところ示されていない。ラジオ・フランスはフランス・テレビジョンに比べて賃金が低く、横並びに改定するとなるとそれだけで年間3000万-5000万ユーロの費用が発生するといい、統合は必ずしも費用削減には直結しない。 統合を後押しする政府は、デジタル時代の競合に対抗する足場を築くために、公共放送部門の活性化を図る必要があると統合の理由を説明している。これに対して、特にラジオ・フランス内では統合に伴う雇用への影響等を懸念する声が大きい。 KSM News and Research -
2024.05.22
コンパニーデビオテクノロジー、土壌の保水に貢献の吸水剤を発売
仏コンパニーデビオテクノロジー(Compagnie des Biotechnologies)が新開発の吸水剤の販売を開始した。灌漑を必要とせずに農作物を守る役割を果たす。 新製品「テラ・ヒドラタ(Terra Hydrata)」は、窒素、リン、カルシウム、天然材料に由来する各種肥料、かんきつ類とバナナに由来する植物性廃棄物をでんぷんにより固化したもので、外見は洗濯用洗剤の粉末に似ている。これを1平方メートル当たり30グラムの割合で耕作地の土壌に混ぜて散水すると、地中で水分を吸収してゲル化する。重量比で100倍に上る水を捉え込むことが可能で、水は徐々に地中に放出される。同社比では、水の需要を50%、肥料の需要を20%削減しつつ、収穫量を35%増大させる効果が得られるという。この製品の効果は6ヵ月間にわたり持続し、その後は1年以内で完全に生分解し、地中に吸収される。南仏やイスラエルにおける厳しい環境での試験でも効果が確認されており、イスラエルでは、40度の高熱の下で、1度のみ散水しただけで1ヵ月間にわたり作物を守る効果が得られた。アルジェリアや米国での導入が決まっており、伊酒造大手カンパリも、サトウキビのプランテーション(500ヘクタール)での採用を決めた。価格は1kg当たり19ユーロで、海水淡水化などの代替手段を整えるより安価で済む。 KSM News and Research -
2024.05.21
元閣僚のアバド下院議員、強姦未遂で容疑者認定
閣僚経験者のダミアン・アバド下院議員(与党ルネサンス所属)が16日、強姦未遂容疑で予審開始通告を受けた。予審は担当の予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続き。アバド容疑者はこれ以外に、2件の同様の訴えで、容疑者認定の一歩手前の段階として知られる「弁護士同席での参考人」指定を受けた。 アバド議員は四肢の動きに制約がある先天性の病気を持ち、身障者議員として知られていた。保守野党の共和党所属だったが、2022年5月にマクロン政権が引き抜いて連帯相として起用していた。就任に前後して性的暴行疑惑が表面化し、同年7月には閣外に離れていた。捜査を経て、今回の容疑者認定に至った。 提訴した3人の女性は、2010年から2011年にかけて被害を受けたと主張。誘われてアルコール飲料を口にしたところ、気分が悪くなり昏倒するなどの症状が出たとする点で主張が一致している。アバド議員は、容疑は事実無根であり、捜査を通じて無実が証明されると確信しているとのコメントを発表した。 KSM News and Research -
2024.05.21
開業医診察料、30ユーロへの引き上げで合意案まとまる
開業医組合と健保公庫(CNAM)の間で進められていた交渉で、合意案が17日に策定された。組合側は合意案をそれぞれ持ち帰って組合員に諮る。2週間後を期限に調印の是非を決める。 合意案には、組合側の要求に沿って、開業内科医の診察料の引き上げが盛り込まれた。診察料は現在、26.5ユーロだが、これが年末までに30ユーロへ引き上げられる。このほか、80才以上の後期高齢者を対象とした1年間に一度の「長時間診察」について、60ユーロの診察料の請求が認められる。かかりつけ医の職務に係り健保公庫から支給される報酬の増額と、医療助手の採用に係る援助金の増額も、この7月に実施する旨を盛り込んだ。一連の報酬増額の見返りに、組合側は医療拡充に向けた各種の努力を約束する。 新合意の期限は5年間で、健保公庫側では、新合意に伴う費用増を16億ユーロと試算している。開業医としての就業が有利になり、医師確保がより容易になるなど、医療システムの機能改善への貢献が期待される。 KSM News and Research -
2024.05.21
1-3月期の平均失業率、前の期並み7.5%
17日発表のINSEE統計によると、1-3月期の平均失業者数(ILOの定義による失業者)は230万人となり、前の期と比べて6000人の微増を記録した。失業率は7.5%となり、前の期と同じ水準にとどまった。失業率は前年同期には7.1%と、1982年以来で最低の水準まで下がっていたが、それと比べると0.4ポイント高い水準にある。ただ、失業率は2023年を通じて上昇を続けていたが、2024年に入って上昇が一段落したことになる。また、近年のピークである2015年半ばと比べると3.0ポイント低い水準にある。 失業率を年齢別にみると、15-24才の若年層で18.1%と高く、前の期から0.6ポイント上昇したのが目につく。前年同期と比べても1.5ポイント上昇した。 INSEEは、2024年全体では、失業率が前年より0.1ポイントの微増を記録すると予想している。労働力人口の増加に伴い、6月時点で失業率は7.6%まで上昇する見込みという。 KSM News and Research -
2024.05.17
パリ市、住民の路上駐車有料化を計画
パリ市が、EV・ハイブリッドの住民による路上駐車の有料化を計画している。近く市議会で審議される。 パリ市は、去る2月に住民投票を実施し、SUVのような大型車両の駐車料金を引き上げる方針を諮った。住民投票の投票率は5%程度と低かったが、パリ市は住民投票での賛成多数をたてに、駐車料金の引き上げを決めた。パリ市は当初、住民については有料化を見合わせると約束していたが、料金改定の条例案には導入が盛り込まれた。 条例案によると、SUVのような大型車両の駐車料金は、1時間当たりで、1-11区においては18ユーロ、12-20区においては12ユーロとなる。住民が自宅付近に駐車する場合には、EVについては2トンまで、プラグイン・ハイブリッドについては1.6トンまで無料だが、それを超える場合には有料化される。料金は、年間登録料45ユーロ+1日につき1.50ユーロに設定される。新料金体系は10月から適用される。 集計によると、パリ市住民が所有し、駐車料金が非課金のEV・PHEVは8500台で、その半数は15-17区に集中している。路上駐車有料化の影響を受けるのは1150人という。パリ市では、影響が小さいことを理由に、この変更を「微調整」だと説明しているが、野党勢力は市民をだまし討ちにする措置だと非難している。 KSM News and Research -
2024.05.17
Lydia、銀行口座サービスを開始
仏Lydia(フィンテック)は15日、銀行口座サービス「Sumeria」を開始した。預金に利息が付くフランスでは異例のサービスを提供する。 Lydiaは個人間の送金サービスで若い世代への浸透に成功した。銀行口座「Sumeria」では、銀行口座の基本に立ち返ったシンプルで使いやすいサービスの提供を目指し、貯蓄口座や株式投資アカウントなどサービスを多角化するネット専業銀行との差別化を図る。売り物となる利息は、開設から3ヵ月間は利率が特別に4%、その後は2%となる。 Lydiaは、18-35才の層を中心に800万人のユーザーを数える。既存のユーザーを足場に新サービスの売り込みを図る。同社はこのために1億ユーロを投資する計画で、3年後に500万人の顧客獲得を目指す。フランスと欧州で顧客担当者を中心として400人の採用も予定する。同社はフランスにおける決済サービス業者の免許により事業を展開しているが、金融機関としての免許取得の手続きも開始。銀行口座のサービスにおいて融資の提供にも乗り出す方針。 KSM News and Research -
2024.05.17
離婚した配偶者の脱税連帯責任、免責拡大の法案が近く可決か
報道によると、離婚した配偶者の納税義務に係る連帯責任を免除する内容の議員立法法案が近く可決される見込み。中道与党MODEMの所属議員が提出した法案の妥協案が、両院協議会により採択されたという。上下院が採択すれば法案は最終的に可決される。 フランスでは、結婚(結婚に準じる契約PACS含む)していた期間に発生した税務当局への債務(脱税等を理由とする)について、所得を合算して世帯単位で申告していた場合には、離婚後であっても、両方の元配偶者が連帯責任を負う規定になっている。離婚後の所得が十分に小さく、債務返済能力が不足している場合には、免除を申請することができるが、当局が免除を認める場合は少数であるという。現行制度においては、配偶者による申告等の内容を知らされていなかった人でも、離婚後に支払いを税務当局から請求される形になり、そうした被害者はほとんどの場合が女性であるという。その救済を目的に、この法案が提出された。具体的には、脱税行為等の存在を知らされておらず、その恩恵も被っていないことの証拠を示すことにより、元配偶者が連帯責任の解除を認められる旨を定めている。 KSM News and Research -
2024.05.16
欧州連合(EU)の経済成長率、2024年に1%
欧州委員会は15日、経済成長見通しの修正結果を発表した。これによると、欧州連合(EU)の経済成長率は、2023年の0.4%に対して、2024年に1%、2025年に1.6%と順次加速する。ユーロ圏の経済成長率は、2024年に0.8%、2025年に1.4%とやはり加速する。また、ユーロ圏では、インフレ率が2023年の5.4%に対して、2024年に2.5%、2025年に2.1%まで鈍化する。その一方で、失業率は、2024年に6.6%、2025年に6.5%と、ごく低めの水準にとどまる。低失業率を背景に賃金は上昇傾向を示し、その一方で物価が沈静化することから、購買力の増強と個人消費の拡大が期待され、これが経済成長の原動力となる。反面、金利が高めで推移していることから、設備投資は軟調であり、特に建設部門への影響が大きい。 国別では、ドイツの経済成長率が、2024年に0.1%、2025年に1%となり、2023年のマイナス0.3%からプラス成長に転じるものの、低成長が続く。GDPでユーロ圏の2位と3位のフランスとイタリアも、2024年に1%未満、2025年に1.5%未満と、回復の勢いは振るわない。ユーロ圏加盟諸国の財政赤字の対GDP比は全体で2023年に3.6%だったが、これが2024年には3%、2025年には2.8%へと低下する見込みとなっている。フランスを含む11ヵ国で、基準である3%以内が達成できておらず、欧州委は是正の手続きを開始する予定だが、財政的手段が削られることで景気の腰が折れる懸念も残る。全体として、米中との経済成長の格差が開いており、EUにおいては、国際的な競争規則にあえて従わずにイノベーションへの投資を後押しする米中に対抗する手段を導入することが必要だとする論調が高まっている。 KSM News and Research -
2024.05.16
地デジテレビ局免許更新、新規参入も多数か
2025年に放送免許が期限切れを迎える地デジテレビ局10局について、免許申請が15日に締め切られた。既存局はすべて更新を目指すが、それ以外で数社が免許取得を目指して申請を行った模様。申請を審査する当局機関のARCOMは書類を審査した上で申請の受理を決めることになっており、提出者の名前は公表していない。 これまでに、週刊誌レクスプレスと、地方紙ウエストフランスが免許取得の申請を行うことを明らかにしている。また、報道によると、チェコの実業家クレティンスキー氏傘下のCMIフランスと、左翼系のウェブTV「ル・メディア」が、それぞれ申請を行った模様。反面、大手M6の放送免許更新時に出願して争った大物実業家グザビエ・ニエル氏のNJJ社は、今回は申請を見合わせたという。 地デジ放送は2005年に始まったが、今回の放送免許更新はこれまでで最大の規模となる。地デジ無料局が合計で10局、免許の期限切れを迎えることになり、その更新の是非が焦点となる。TF1グループ傘下の3局(TMC、TFX、LCI)、M6グループ傘下の2局(W9、Gulli)、カナルプリュス参加の3局(C8、CNews、CStar)、そしてニュース専門局のBFM TV(CMA CGMによる買収途上)とNRJ12(ラジオ局NRJグループ傘下)の合計10局が期限切れを迎える。当局機関のARCOMは、既存局の免許更新が既定の方針ではないと明らかにしており、視聴率が低く採算性に問題がある局(例えばNRJ12)や、放送事故が多いC8などでは厳しい攻防となることも考えられる。 KSM News and Research -
2024.05.16
パリ市の清掃部門ストが終了、労組と合意
パリ市は15日、清掃部門の労組CGTとの間で基本合意に達したと発表した。5月中と、パリ五輪の期間を含む7月1日から9月8日までの期間のスト予告は解除されたという。 パリの清掃部門労組は、五輪期間中の特別手当の増額などを求めて、14日にストを開始していた。パリ市の側では、ストの参加率は16%で、廃棄物収集に大きな影響はなかったと発表しているが、組合側では、参加率は区により70-90%に上ったと主張している。 パリ市では、2023年3月にも廃棄物回収部門で、年金改革反対を訴える長期ストがあり、街の評判が損なわれたという経緯がある。パリ市側は今回、現金給与総額ベースで、7月より月額50ユーロ、2025年1月より月額30ユーロの増給を約束。その他の案件に関する協議を開始することに応じた。 組合側は、1人につき月額400ユーロの増給と、五輪関係の特別手当として1900ユーロの支給を求めていた。パリ市の側では、特別手当について、各人の就業状況に応じて600-1900ユーロという枠組みに変更はないと説明している。 KSM News and Research -
2024.05.15
パリ五輪の経済効果、首都圏で90億ユーロ程度
パリ五輪組織委員会の依頼でなされた五輪経済効果の試算が14日に公表された。パリ首都圏について90億ユーロ程度の経済効果が得られるとの結果になった。 パリ五輪誘致時にまとめられた推計では81億ユーロとされていた。今回の推計における90億ユーロという数字は中央値で、最低で67億ユーロ、最大で110億ユーロ強の経済効果が得られるという。準備段階、開催段階、そして開催後の3段階が試算の対象となった。 五輪開催の費用は、組織委員会による開催関連の支出が44億ユーロ、インフラの準備を担当したSolideoを通じた支出が45億ユーロとされている。組織委の支出は、入場券販売をはじめとする収入で主に賄われることになっており、国の支援は5億ユーロ程度を占める。Solideoについては国が25億ユーロを支援している。 大会期間中には1600万人の訪問が見込まれ、うち200万人が外国人となる。テレビ視聴者数は世界で40億人に上る見通しという。 KSM News and Research -
2024.05.15
ニューカレドニアで暴動
仏海外領土のニューカレドニアで13日、独立派による抗議行動が大規模な暴動に発展した。最大都市のヌメアをはじめとして、放火や商店の略奪などを含めた混乱と緊張が同日夜に続いた。82人が逮捕され、54人の治安部隊員が負傷した。治安部隊を狙ったライフル銃などによる銃撃もあったという。 当局は14日に夜間外出禁止令を発令。集会を禁止すると共に、中学校・高校を休校とした。国際空港も封鎖し、厳戒態勢を敷いた。 ニューカレドニアでは、独立派と帰属派の間で対立があり、数十年に渡る安定化と対話のプロセスを経て、先に行われた住民投票が帰属を承認した。ただ、独立派は選挙のやり方などの点で結果に納得しておらず、依然として抵抗を続けている。その一方で、島民投票の結果を踏まえて、仏政府は、ニューカレドニアの選挙制度改正に関する憲法改正法案を国会に提出。その下院審議にあわせる形で、独立派が抗議行動を行い、それが暴動に発展した。憲法改正では、ニューカレドニアに10年以上の居住実績のある人が有権者として認められるが、独立派はこれが自らに不利になるとみて反発している。 中央政界では、保守野党の共和党と極右RNが改憲を支持。それに対して左派勢力は揃って改憲の見直しを要求している。マクロン大統領は13日に、ニューカレドニアの全政治勢力に向けて、パリで会合を開き、対話を再開することを提案。アタル首相は14日に下院での答弁の際に、対話の呼びかけに応じて話し合いによる解決を図るよう重ねて当事者らに呼びかけた。 KSM News and Research -
2024.05.15
医師の診断書不要で病欠、政府が検討
バルトゥ保健担当相は14日、医師の診察を経ずに短期の病欠を認めることを検討すると予告した。前日に会計検査院が提出した報告書に盛り込んだ提案の実行を検討する。 会計検査院は、医師不足の対策として、この措置を提案した。現在は、病欠と傷病手当金(4日目より健保公庫から支給)を認められるには、医師の診断書が必要だが、これを不要とすることで、医師の仕事を軽減し、本来の医療により多くの時間を割けるようにする狙いがある。 健保公庫は、新型コロナウイルス危機対策として、コロナ罹患の場合の自主申告制度を一時的に導入し、待期期間なしで傷病手当金を支給した。この措置は2021年から2023年にかけて実施された。会計検査院は、その前例を踏まえて、制度の恒久的な導入を提案。英国、ノルウェー、スウェーデン、ベルギーなどで同様の措置が実施されているが、制度の乱用などは見受けられていないとも指摘した。ただし、虚偽申告を排除するための規制の導入は必要だと提言。企業による負担を含めて、病欠者が一切の所得保障を得られない期間の設定などを検討するよう勧告している。 KSM News and Research -
2024.05.14
極右勢力によるデモ、11日にパリ6区で
パリ6区で11日、極右勢力によるデモが行われた。600人以上が参加した。 このデモは、活動家グループ「C9M(5月9日委員会)」の呼びかけで行われた。パリ警視庁は禁止命令を出したが、主催者側の提訴を受けてパリ行政裁判所が当日になり禁止命令を差し止める決定を下したことから、開催に至った。裁判所は、禁止命令がデモの自由に対する重大な侵害に相当すると認定した。 このグループは、1994年5月9日にパリ6区内で転落死した青年の追悼を目的に、同年中に結成された。この青年は、ペタン派(第2次世界大戦中にナチスドイツに協力する政権を率いた)でユダヤ人排斥主義の団体に属し、当局により禁止されていた「米国の帝国主義に反対する」デモに参加していたが、警察から逃げる途中で転落死した。活動家グループ「C9M」には、ネオナチやネオファシストの極右、王党派、民族中心主義の排外勢力などが合流しており、デモ参加者らは、ナショナリズムの歌を歌ったり、ナチス流の敬礼をするなどして気勢を上げた。記者や通行人を脅すなどの場面もみられた。 デモは、極右政党RNを率いるマリーヌ・ルペン下院議員の側近だったアクセル・ルストー氏の息子であるガブリエル・ルストー氏が指揮した。マリーヌ・ルペン氏は、かつて協力関係にあったユダヤ人排斥主義的勢力との間で現在は距離を置いており、盟友だったアクセル・ルストー氏は、息子が率いる今回のデモへの参加を見合わせた。 なお、欧州議会選挙で与党の筆頭候補を務めるアイエール氏が極右の若者らと撮影した写真が12日時点で出回った。アイエール氏はこれについて、極右の若者らとは知らず、Tシャツに書かれていた極右的な言葉にも気づかずに、撮影に応じたものだったと述べて、だまし討ちにあったと釈明した。極右デモの際に撮影されたものではないとも説明した。 KSM News and Research -
2024.05.14
MAフランス、会社清算が決定
自動車の車体用部品を製造するMAフランス社の会社清算が決まった。ボビニー商事裁判所が13日に決定した。 MAフランスはパリ北郊オルネースーボワ市に工場を置き、従業員数は280人。このほかに120人の期間工が就労している。同社は数年前から赤字が続いており、イタリア籍の親会社CLNが赤字を補填していた。売上高の8割に貢献する取引先であるステランティスが価格引き上げの交渉に応じず、経営が行き詰まった。4月17日には従業員によるストが始まったが、ステランティスは内製化等を通じて乗り切り、MAフランスが存続する道は完全に閉ざされた。会社側の申請を経て裁判所が清算を決定した。 MAフランスの清算は地元のオルネースーボワ市にとって新たな打撃となる。同市にはPSA(現ステランティス)の自動車工場があったが、10年前に閉鎖され、3500人の工員が職を失い、105ヘクタールの空き地が生じた。MAフランスは土地を一部取得して工場を拡張したが、ここで再び閉鎖に至った。 KSM News and Research -
2024.05.14
対仏投資誘致イベント「チューズ・フランス」、投資計画多数が発表に
マクロン大統領は13日、ベルサイユ宮殿を会場に、対仏投資誘致イベント「チューズ・フランス」を開催した。外国企業の経営者180人を招待し、フランスの投資環境について説明し、積極的な投資を呼びかけた。 今回の開催は7回目で、この機会に56件の投資プロジェクトが発表された。投資額は合計で150億ユーロ以上に上る。将来的に1万人程度の雇用創出が期待できる。前年の開催時には、合計130億ユーロの28件の投資計画が公表されたが、今回はそれを上回り、これまでで最大の規模となった。なお、2017年以来で、このイベントの機会に122件・312億ユーロの投資計画が発表された。 発表された投資計画は、脱炭素化、人工知能(AI)、金融などの分野が中心となっている。主な案件は次の通り。▽独Liliumによる電動垂直離着陸機の組み立て工場の整備。ヌーベルアキテーヌ地域圏に4億ユーロを投資して整備へ。▽仏製薬大手サノフィはこの機会を利用して、11億ユーロの投資計画を発表。バルドマルヌ県ビトリーシュルセーヌの工場に投資し、モノクローナル抗体の生産能力を2倍に増強。▽マイクロソフトは2027年までに40億ユーロを投資。主にAIサービスの提供の要となるデータセンターを整備。低炭素技術を導入。▽マッケイン(カナダ)は仏国内の冷凍ポテト工場3ヵ所に3億5000万ユーロ強を投資。25%の増産が目標。▽米金融大手モルガン・スタンレーはパリに「欧州キャンパス」を開所。人員増強と投資拡大を約束。▽KDDIはパリ首都圏と南仏に10億ユーロを投資。データセンターなど整備へ。▽バッテリー分野では複数のプロジェクトで15億ユーロ超の投資が予定。 KSM News and Research -
2024.05.13
政府、「誕生休暇」の概要を公表
エルアイリ家族担当相は12日までに「誕生休暇」の概要を公表した。15日に労使代表などを集めた協議を開始すると予告した。 「誕生休暇」は、少子化対策の一環としてマクロン大統領が予告した施策の一つ。現行制度としては、「両親休暇」があり、これは延長を経て最大で3年間の取得が可能で、月額448ユーロの収入が保障される。エルアイリ家族担当相は、期間が長すぎ、また収入保障も低すぎて、休暇取得の実績が伸びていないと指摘。その上で、出産から1年以内に父親と母親が3ヵ月ずつ取得が可能な「誕生休暇」に切り替えることを提案した。収入保障は給与の50%(月額1900ユーロの支給を上限とする)とする。同相は新制度により、収入の大幅減少を恐れて取得を見合わせる人が減り、また、女性を長期の休暇に追いやって社会進出の機会を閉ざすこともなくなると述べて、その利点を強調した。既存の父親・母親休暇については維持され、「誕生休暇」と両方を取得することが引き続き可能となる。 新制度について労組は懐疑的な見方を示している。収入保障については、所得の高い層を優遇するものであり、低所得層にとっては不利になる場合も出てくるとの指摘もある。 KSM News and Research -
2024.05.13
パリ五輪の立ち入り制限区域、通行証の申請が開始に
政府は10日、パリ五輪の警備体制について発表した。立ち入り制限区域について説明した。パリ五輪の警戒体制は、開幕直前の7月18日(木)から開幕式がある26日(金)までが特に厳しい。五輪(7月26日から8月11日まで)とパラリンピック(8月28日から9月8日まで)の期間中は、会場周辺に絞った警戒体制が適用される。立ち入り制限は、SILTと呼ばれるセーヌ川沿いの制限区域内(当局発表の地図だと灰色などで表示)で適用され、それよりも幅広な周辺地区(当局発表の地図だと赤色などで表示)においては、動力付き車両の乗り入れが禁止される。セーヌ川の橋の通行は、パリの中央に位置する多くの橋で禁止されるが、アンバリッド橋、シュリー橋、ノートルダム橋では通行証なしで往来が認められる。制限区域への立ち入りと動力付き車両の乗り入れには、専用サイト(https://anticiperlesjeux.gouv.fr/)における申請を経てQRコード式の入域・通行証を取得する必要がある。受付は5月13日(月)より開始されるが、業者・企業向けサイト(https://www.joptimiz.green/)は、一足先に10日より運用が始まった。住民、SILT区域内の宿泊施設を利用する観光客や、区域内の物件を賃借する非居住者、区域内の商店等の経営者、区域内の企業の従業員等が申請の対象となる。立ち入りを正当化する書類(企業発行の証明書や住宅賃貸借契約書など)の提出が必要となる。制限地区の地図はパリ警視庁により公開されているが(https://www.prefecturedepolice.interieur.gouv.fr/la-securite-des-jeux-2024/des-jeux-securises-pour-tous/ceremonie-douverture-des-jo-2024-un-dispositif-de-securite-adapte-pour-garantir-la-securite-de-tous)、7月26日の開幕式当日に限ってはSILTがより幅広く設定されているので注意を要する。 KSM News and Research -
2024.05.13
サノフィ、ノババックスと提携:コロナ・インフルの混合ワクチンを開発へ
仏製薬大手サノフィはこのほど、米ノババックス(Novavax)と提携合意を結んだ。新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの混合ワクチンを共同で開発する。 サノフィは、新型コロナウイルスワクチンの開発で出遅れた。自前の開発を断念し、ノババックスが開発の非mRNAワクチンを、自社のインフルエンザワクチン(非mRNA)に統合して販売する方針に切り替えた。サノフィはまず5億ドルを支払い、次いで開発や許可取得、販売等のマイルストーン達成に応じて最大で7億ドルを追加で支払う。サノフィは、ノババックスが開発の新型コロナウイルスワクチンの世界販売権(別途提携合意があるインド、日本、韓国など除く)を獲得し、サノフィ自前のインフルエンザ・ワクチンとの混合ワクチンを開発する独占権を確保する。また、ノババックスが開発のアジュバント「Matrix-M」を使用する権利(非独占権)も獲得した。サノフィはノババックスの株式(5%未満)も取得する。 サノフィは2025年からノババックスの新型コロナウイルスワクチンの販売を開始する。続いて混合ワクチンの販売にも着手する計画。サノフィはノババックスに「2桁台」のライセンス料を支払う。混合ワクチンの開発と販売についてはサノフィが全面的な権限を有する。 KSM News and Research -
2024.05.10
仏ブイグ、メトロ15号線の新区間の建設契約を獲得
仏建設大手ブイグが率いるコンソーシアムが、パリ大環状自動運転メトロ(グランパリ・エクスプレス)整備計画の枠内で、メトロ15号線の新区画の建設契約を獲得した。契約額は10億8700万ユーロ。2031年の運転開始を予定する15号線東部分の第2区画(サンドニ・プレイエルとドランシー・ボビニー駅を結ぶ区画)において、ブイグはトンネル8kmと4駅などの設計・建設を請け負った。コンソーシアムにはブイグのほか、Colas RailやEgisが参加。土木工事は事前に完了している。運行事業者はRATP(パリ交通公団)子会社が率いるコンソーシアムとなる予定。 15号線東部分の第1区画の建設については、ブイグの競合エファージュのコンソーシアムが2023年12月に契約(25億4000万ユーロ)を獲得していた。 KSM News and Research -
2024.05.10
アルストム、増資計画など発表
仏アルストム(鉄道機器)は8日、2024年3月期業績を発表した。増資計画をあわせて明らかにした。市場は発表を歓迎し、同社株価は同日終値で9.36%の上昇を記録した。 アルストムは、買収したボンバルディア・トランスポートの事業に足を引っ張られる形で、資金繰りの悪化に見舞われていた。2024年3月期の上半期(4-9月)にキャッシュフローは11億ユーロの赤字に転じ、純負債は36億ユーロへ膨らんだ。同社は立て直しを期して、1500人の削減と資産売却(2件で合計7億ユーロ)を去る11月に予告。これに続いて今回、財務基盤の強化を目的に、7億5000万ユーロのハイブリッド債の起債と、10億ユーロの増資を予告した。増資は良好な市況を条件に実施される。 アルストムは、格付け会社ムーディーズによる格下げの対象になる懸念があったが、ムーディーズはアルストムの発表を歓迎し、格付け(Baa3)の据え置きと、予告された2つの措置の実施を条件に、格付け見通しを「ネガティブ」から「安定」に引き上げる考えを示した。 アルストムは2024年3月期には、売上高176億ユーロに対して、5.7%の営業利益率(前年度は5.2%)を達成。純損失は特別費用が嵩んで3億900万ユーロとなり、前年の2倍以上に増大した。2025年3月期には、5%の増収、6.5%の営業利益率、フリーキャッシュフロー3億-5億ユーロの達成を目指す。 KSM News and Research -
2024.05.10
民間部門の雇用数、純増に転じる:貿易赤字は縮小
7日発表のINSEE統計によると、民間部門の雇用数は3月末時点で2116万800人となり、3ヵ月前と比べて5万500人増加した。率にすると0.2%の増加となった。その前の3ヵ月間には0.1%の減少を記録していたが、1-3月期には増加に転じた。1年前と比べると10万1100人の純増を記録(0.5%増)。新型コロナウイルス危機前の2019年末と比べると120万人の純増(6.2%増)を記録している。足元で雇用は増加に転じたものの、2027年に完全雇用を実現するとの政府の目標達成のためには、この程度の増加の勢いでは不十分で、今後にテコ入れが必要になる。特に、年金改革により定年年限が段階的に引き上げられることで、労働力人口が同年までに数十万人の増加を記録する見込みであり、失業者の吸収には雇用創出の加速が不可欠となる。 これとは別に、7日発表の税関統計によると、フランスの貿易収支は3月に57億ユーロの赤字となった。1-3月期の赤字額は176億ユーロとなり、その前の3ヵ月間と比べて赤字額は27億ユーロ縮小した。輸入が0.9%減り、逆に輸出が0.7%増えたことで、収支が改善した。ただし、新型コロナウイルス危機前の水準(四半期単位で140億ユーロ程度)と比べるとまだ高い水準にとどまっている。 KSM News and Research -
2024.05.07
中国の習国家主席、フランスを公式訪問
中国の習国家主席が5日、公式訪問のためフランスに到着した。国家主席は国賓待遇でフランスを訪問する。6日にはマクロン大統領が国家主席を大統領府に招き、首脳会談が行われた。 首脳会談には欧州委員会のフォンデアライエン委員長も列席し、経済問題と国際問題を中心に協議が行われた。欧州委は、中国製EVや太陽光パネル等に関するダンピング調査を実施中で、中国に対して公平な通商関係の構築を求めて圧力を強めている。中国側は首脳会談の機会に、フランス製のコニャックなど蒸留酒を対象とする追加関税の導入を見合わせると約束したが、目立った譲歩はこのくらいで、強気の構えを崩さなかった。中国側は、中国が過剰生産能力を抱えて価格攻勢をかけているというのは思い過ごしであって、世界のインフレ圧力の緩和に供給面から貢献している、との主張を繰り返した。ただし、国家主席は、電気通信と医療分野の公共調達市場へのアクセス加速を約束したが、その詳細は示さなかった。 中国側にとっては、米国との通商摩擦において欧州側からの「中立性」を取り付けるのが課題だったが、例えばEVをとってみても、欧州にとって需要を満たすために安価な中国産EVをなしで済ますわけにはゆくまいという強気の読みがあるのか、習国家主席は手土産を持たずに訪問した。 ウクライナ問題も協議の対象となった。中国側は、「新たな冷戦」を回避することを望むと言明。マクロン大統領によると、中国側は、ロシア軍への兵器の輸出をせず、デュアルユース製品の対ロ輸出を厳格に統制すると約束したという。パリ五輪期間中の停戦実現にむけて働きかけることでも合意した。 このほか、フランスと中国の間で、食品加工、金融、航空宇宙、自治体間協力などの分野で、18件の契約・合意が結ばれた。習国家主席は7日にピレネー地方を訪問し、2日間の公式訪問の日程を終える。 KSM News and Research -
2024.05.07
ポンピドゥーセンター・メッス分館で落書き被害、女流芸術家の犯行
ポンピドゥーセンター・メッス分館で5月6日、展示作品に落書きなどがなされる事件が発生した。パフォーマンス芸術家のデボラ・ド・ロベルティスが「犯行声明」を出した。 メッス分館では、精神分析家ジャック・ラカン(1981年没)をテーマとする特別展が開催中だった。オルセー美術館から貸与され、ラカンが一時所有していたことで知られるクールベの絵画「世界の起源」を含む5作品が落書きの対象となった。女性たちのグループが訪問者を装い会場に入り、数人が騒ぎを起こして監視員らを引き付けた上で、別の数人が赤いペンキで作品に「MeToo」と落書きした。女性の陰部を描いた「世界の起源」のほかに、オーストリアの女性現代芸術家VALIE EXPORTの作品を含む5作が被害を受けた。「世界の起源」はガラス板により保護されており、本体に汚損は及ばなかった。 当局は実行犯のうち2人の女性を逮捕。逮捕されたのは30代の女性2人で、犯罪歴はなかった。デボラ・ド・ロベルティス本人は騒乱の際に会場にいて、展示されていた仏女性現代芸術家のアネット・メサジェの繊維オブジェを取り外し、バッグに入れて逃走した。ロベルティスはその様子を写した動画を自ら公開。この作品が特別展を企画したベルナール・マルカデ氏の所蔵品だが、自身はマルカデ氏に性的虐待を受けたとし、作品の「没収」は借りを返させる当然の行為だなどと主張している。なお、ロベルティスは、芸術作品の隣で陰部を見せるというハプニング芸術で知られ、クールベの「世界の起源」の前で陰部を見せているところの写真が作品として、今回の特別展でも展示されていた。当局は6日の時点でロベルティスを逮捕していない。 事件を経てメッス分館は7日に臨時閉館となった。8日に再開が予定される。 KSM News and Research -
2024.05.07
政府、農薬削減プランの修正案を公表
政府は6日、農薬削減プラン「エコフィト(Ecophyto)」の修正案を公表した。2030年までに農薬使用量を半分にするとの目標を維持した上で、目標の達成状況を評価する基準を変更することを決めた。 政府は、農民らの抗議行動を鎮める目的で、農薬削減プランの見直しを約束していた。修正案は具体的に、目標達成状況を評価する尺度として、現行のNoduと呼ばれるフランス独自の基準ではなく、HRI1と呼ばれる欧州連合(EU)の指標を用いる旨を定めている。HRI1においては、有効成分の重量に対して、農薬の種類ごとに定められるリスク係数をかけ合わせて実質値が算出される。HRI1に依拠すると、農薬使用量は基準となる2011年比で既に32%削減されていることになるが、環境保護団体などは、Noduに依拠すれば3%増加していることになり、尺度を変えることで規制は骨抜きになると反発している。修正案にはこのほか、削減プランのための2億5000万ユーロの支援が盛り込まれた。うち1億4600万ユーロが代替手段の研究に、5000万ユーロが農薬を代替する農法のための機械設備の購入に、2000万ユーロが農業用水の処理のための資金に、それぞれ充当される。 KSM News and Research -
2024.05.06
パリのRER E線、サンラザール・ナンテール間の延伸部分が開通
パリ首都圏のRER(郊外連絡急行)E線の延伸部分が開通した。3日にアタル首相らが除幕式を行った。 開通したのは、E線のパリ市内のオスマン・サンラザール駅から、パリ西郊ナンテール市内のナンテール・ラフォリ駅まで8km程度の区間。パリ市内のポルトマイヨ駅、パリ副都心ラデファンス地区のラデファンス・グランタルシュ駅と合計で3駅に乗り入れる。並行するRER A線の混雑緩和に貢献することが期待される。 RER E線は「EOLE」のコードネームで建設が進められ、現在は、パリ市内のサンラザール駅以東の区間で営業運転がなされている。新区間の建設工事は2017年に始まった。2026年にはさらに東部のマントラジョリ市(イブリーヌ県)までが開通する予定(サンラザール駅から合計55km)。建設費用は全線で54億ユーロの見通し。 営業運転は6日(月)に開始される。ただ、新区間の運行は年内は制限され、平日は10-16時に限定、週末も20時までで終了する。最大で15分間隔にて運行される。アルストム社製の新車両「RER NG」の引き渡しが遅れて、予定の34本に対して14本にとどまっているため、当面は限定的な運行となる。 KSM News and Research -
2024.05.06
政府、住宅振興法案を閣議決定
政府は3日に住宅振興法案を閣議決定した。6月中旬に上院で審議が開始される。 住宅建設は足元で大きく冷え込んでいる。住宅価格高騰に加えて、金利上昇に伴い家計の購買力不足が進んだことが背景にある。公営の低家賃住宅(HLM)の入居待ちの世帯の数は260万と過去最高に達しており、賃貸物件を探すのにも困難が増している。住居難の人の数は420万人に上るといわれる。政府はその対策として今回の法案をまとめた。 法案はまず、2100程度の都市部の自治体が達成義務を負う公営住宅建設目標(住宅建設の20-25%を公営住宅とする)について、「中間住宅」(公営住宅と民間物件の中間に位置し、家賃設定等に一定の制約が課される)の建設を以て目標達成に代えることを認めるとの規制緩和を盛り込んだ。自治体による義務達成が遅れている(2022年までの期間では7割近くの自治体が未達成)ことを踏まえて、活性化をにらんで規制を緩和するが、左派系の自治体を中心に、努力をしてこなかった自治体を優遇する内容だとする批判の声も上がっている。 法案はこのほか、HLMの入居資格の厳格化を盛り込んだ。入居資格の所得上限を18ヵ月間に渡り120%以上上回った既存入居者の退去処分(現行制度では24ヵ月に渡り150%以上上回った者が対象)と、所得上限をわずかでも上回った既存入居者に対する家賃割り増しの適用(現在は20%以上上回った者が対象)を通じて、HLMの「回転率」を高める狙いがある。さらに、市町村長の権限が強化され(HLMの入居者決定に関する権限強化等)、住宅建設に関する規制緩和や異議申し立ての制限によるプロジェクトの迅速化も盛り込まれた。 KSM News and Research -
2024.05.06
家畜福祉を評価のラベル表示制度、仏当局機関が導入を勧告
ANSES(仏食品環境労働衛生安全庁)は2日に発表した報告書の中で、家畜福祉を評価した食品包装前面表示制度の導入を勧告した。栄養表示のニュトリスコア(Nutri-Score)に倣って、家畜福祉の状況を5段階評価にて分類し、ラベル表示を行う制度の導入を提案した。 ニュトリスコアは2017年に任意制度として導入され、栄養面から5段階(Aが最良、Eが最低)に製品を分類し、包装前面に色分けしてわかりやすく表示するという趣旨。ANSESは、これに倣って、家畜福祉が法定最低限の製品をEとし、最良の製品をAとして分類表示することを提案した。飼育や飼料、健康状態、繁殖、輸送、と畜の各段階における配慮の状況を基準とし、屋外へのアクセスや生活条件といった側面を特に重視する。消費者が家畜福祉の観点から製品を選択できるようになり、需要面から改善に向けたインセンティブが働くことが期待できる。ANSESは特に、欧州連合(EU)全域で共通のラベリング制度が導入されることが望まれると指摘した。 ANSESは報告書の中で、業界単位などで設けられている既存の家畜福祉ラベリング制度について、仕様書があいまいで消費者に混乱を招く恐れがあると問題視。その一方で、新制度の導入費用については業者側が負担すべきだとしたが、費用の推計等については示さなかった。 KSM News and Research -
2024.05.03
マクロン大統領、ウクライナへの地上部隊派遣の可能性に再び言及
マクロン大統領はこのほど、英エコノミスト誌とのインタビューの中で、ウクライナへの地上部隊派遣の可能性について再び言及した。ロシア軍が戦線を突破し、ウクライナからの要請があったら、地上部隊派遣の問題を検討するべきであると言明。現時点ではそのような状況にはないとも付け加えた。 マクロン大統領は2月26日の記者会見の際に初めてウクライナへの地上部隊の派遣の可能性に言及。この発言について、欧州諸国は否定的な見解を示し、フランス国内でも野党勢力を中心に大統領を批判する声が目立った。大統領は今回のインタビューにおいて、ロシアがウクライナで勝利することがあってはならないと言明。そのようなことになったら、ロシアがウクライナでとどまる保障はなく、モルドバ、ルーマニア、ポーランド、リトアニアなど近隣諸国の安全保障に重大な影響が及ぶと強調。さらに、巨額の資金を投入し、欧州の防衛を図ると言明しておきながら、ロシアを止められなかったということになれば、欧州の信頼性は大きく損なわれるとし、ロシアを相手にして、あらかじめ禁じ手を設けてはならず、その意味で地上部隊派遣を否定するべきではないと説明した。 大統領は特に、欧州政治共同体(EPC)の枠内で、欧州共同の防衛体制の構築を協議することを提案。欧州政治共同体は、2022年に発足した協議機関で、欧州連合(EU)の非加盟国も幅広く参加している。第4回首脳会議が7月18日に英国で開催される予定。大統領はまた、核兵器も欧州防衛の議論の対象とするべきだとの見解を示し、核兵器保有国として、欧州防衛の信頼性に参加する用意があることを強調した。 KSM News and Research -
2024.05.03
ルメール経済相、国鉄SNCFのファランドゥCEOを呼び出し
ルメール経済相は2日、先に国鉄SNCFで締結された労使合意を問題視する姿勢を示し、SNCFのファランドゥCEOを呼び出して説明を求めると明らかにした。 SNCFは先に、退職間際の職員の待遇に関する労使合意を締結していた。SNCFはある種の早期退職制度を採用しており、退職間際の希望者に対して、一定の給与水準を保障しつつ、就労を免除している。現行制度では、退職前の12ヵ月について、最後の6ヵ月は60%の給与の支給を受けつつ就労が免除されることになっている。来年1月に施行される新たな合意では、これが、18ヵ月間(最後の9ヵ月について75%の給与が保障される)とより長く、保障も大きい制度に改められる。車掌や就労条件が厳しい人には、さらに手厚い保障が適用される。 全期間を通じて、年金保険料を含む社会保険料は満額が会社側負担となる。この合意については、定年年限の段階的な引上げを柱とする年金改革を実質的に無効化する内容だとする批判の声が一部にあり、ルメール経済相は、SNCFに対する不公平感を強めている特に右寄りの有権者層に多いそうした批判の声に配慮する目的で、今回の「呼び出し」を決めたものと考えられる。ただし、会社組織であるSNCFの労使関係に政府として介入する手段は限られている。 なお、ファランドゥCEOの任期は5月12日で終了する。ファランドゥCEOは67才で、年齢上限である68才に近づいており、政府が特例措置を認めない限り再任はない。決定権はマクロン大統領にあるが、報道によれば、数ヵ月間の任期延長を決めて、パリ五輪を終えた後に後任の選定を進める公算が高いという。 KSM News and Research -
2024.05.03
子どものスクリーン曝露制限を勧告する報告書、政府に提出
マクロン大統領が作成を依頼した子どものスクリーン曝露に関する専門家委員会の報告書が4月30日に提出された。年齢に応じた使用禁止を含む厳しい内容の措置を勧告した。 子どものスクリーン依存については、脳の発達を阻害するリスクなどが指摘されており、社会問題にもなっている。報告書は29項目の勧告を提示し、全体としてその導入を検討するよう政府に対して求めた。具体的には、6才未満の子どもに対するスクリーン曝露の全面禁止という厳しい措置を勧告。スマートフォンを与えてもよい最低年齢は11才(現在は平均で9才から所有)に設定。インターネットへのアクセスについては13才までは認めるべきではなく、さらに、SNSの利用については15才までは認めるべきではないとした。 報告書はサービス業者の責任も追及。中毒性があり、ユーザーを囲い込んでしまうようなサービスは禁止すべきであり、子どもと青少年に自由と選択の余地を与える必要があるとした。教育機関については、託児所・保育園・幼稚園からスクリーンを全面排除することを求め、学校で用いるデジタルデバイスについても、Pronoteのような教育用アプリ(中学生・高校生向け)でリアルタイム更新はせず、生徒がデジタル空間に閉じ込められることがないよう配慮するべきだとした。保護者については、子どもに対してしかるべき模範的な姿勢を示すことができるよう、保護者をサポートする体制を整えるべきだとした。 KSM News and Research -
2024.05.02
フランス投資誘致力調査:直接投資受け入れで2023年も欧州トップに
EYが毎年作成するフランス投資誘致力調査の結果が2日に発表された。フランスは欧州における直接投資誘致でトップの地位を保った。 対仏直接投資の案件数(投資決定数)は2023年に1194件となり、前年比で5%減少した。対象雇用数は3980人となり、こちらは前年の3810人から増加した。欧州全体では前年比4%減の5700件に後退。景気の停滞と戦争の影響が出たが、フランスはそれでも、2位の英国(6%増の985件)、3位のドイツ(12%減の733件)を抑えて首位の地位を守った。 フランスでは、全体の44%に相当する530件が工業部門の生産施設への投資だった。雇用数250人超の投資案件数では英国と並んでおり、雇用面での恩恵はより大きくなった。人工知能(AI)関連の投資案件(主に研究開発拠点)も17件を数えて、欧州諸国中で最も多かった。 外国企業の経営者を対象にしたアンケートでも、全体の75%程度の経営者が、向こう3年間でフランスの投資誘致力は改善すると思う、と回答しており、フランスの評価は後退していない。フランスの利点としては、労働力の質、インフラの信頼性、国内市場の活力が挙げられている。 KSM News and Research -
2024.05.02
仏経済成長率、1-3月期に0.2%
4月30日発表のINSEE統計によると、1-3月期の仏経済成長率(前の期比)は0.2%となった。7-9月期と10-12月期にそれぞれ0.1%の成長率を記録した後、1-3月期にはわずかながら成長が加速した。INSEEは当初、1-3月期のGDPが前の期並みになると予想していたが、予想よりも良好な数字となった。 1-3月期には、個人消費支出が前の期比で0.4%増を記録。前の期の0.2%増から増加が加速した。固定資本形成は全体で0.3%増を記録し、前の期の0.9%減から増加に転じた。金利上昇に伴う購買力減退で、家計による設備投資(住宅投資)は相変わらず1.5%減と後退が続いたが、企業設備投資が0.9%減から0.5%増と増加に転じたのが目立った。輸入は0.2%増、輸出は0.5%増を記録、GDP成長率における外需の貢献度は0ポイントとなった。内需(在庫変動除く)の貢献度は0.4ポイントとなり、個人消費の回復を主な原動力として経済成長を押し上げた。在庫変動は0.2ポイントのマイナス貢献となった。 4-6月期以降がゼロ成長だったと仮定した場合で、2024年通年の経済成長率は0.5%となる。政府の通年成長率の公式予測は1.0%となっているが、これまでの推移をみる限り、予測は現実味を帯びてきた。なお、フランス中銀はそれよりわずかに低い0.8%との予測を採用している。 INSEEが同日に発表した4月のインフレ率(速報)は2.2%(前年同月比)となり、前月より0.1ポイント低下した。食料品の価格上昇率は1.2%まで鈍化したが、エネルギー価格の上昇率は3.8%となり、前月の3.4%と比べて上昇が加速した。サービス料金の上昇率は3.0%で前月と変わらなかった。欧州連合(EU)基準のインフレ率は前月と同じ2.4%だった。 KSM News and Research -
2024.05.02
ルノーの現代美術コレクション、6月に競売に
オークションハウス大手クリスティーズは6月に、自動車大手ルノーが所有する現代美術コレクションの競売を行う。ルノーは1960年代末から戦後の代表的なアーティストの作品を収集しており、クリスティーズによると、このコレクションは、アートと産業とイノベーションを結びつけるルノーの前衛的ビジョンを体現するものだという。 競売にかけられるのは、デュビュッフェ、バザルリ、ラウシェンバーグ、サム・フランシス、ニキ・ド・サンファル、ジャン・フォートリエなどの60点ほどの作品で、その価値は500万-800万ユーロと見積もられている。競売に先立って、5月30日から6月6日までパリ市マティニョン大通りのクリスティーズの施設で展示される。 これらの作品のうち、ルノーの社史と関連のあるアーティストの作品を中心とした30点ほど(ルノーのために創作された作品や、コレクションを補完するために後から購入された作品で構成)は6月6日に競売にかけられる。1点当たり数万ユーロから数十万ユーロと評価されている代表的作品が対象となる。また、5月30日から6月7日にかけて、アンリ・ミショーの30点ほどの作品がオンライン競売にかけられる。こちらは価格が3000-8000ユーロと比較的手頃。 KSM News and Research -
2024.04.30
パレスチナ支持派、ソルボンヌ大学で抗議行動
パリ5区にあるソルボンヌ大学校舎で4月29日、パレスチナ支持派による抗議行動が行われた。同日に数十人が校舎内に侵入し、中庭に垂れ幕を展開するなどした。警察が介入して活動家らは強制排除された。パレスチナ支持派らはその後、校舎前の広場に集まって抗議行動を継続、200人程度が集まった。 パレスチナ支持派らは、イスラエルの大学・高等教育機関との提携をやめることなどを要求。政府がイスラエルの肩を持ってガザ地区の「民族大虐殺」を容認しているとする主張を展開した。支持派らは今回の行動を、先週にパリ政治学院(シアンスポ)で行われた抗議行動の続きと位置付けており、米国の大学での運動とも呼応するものだと主張している。この抗議行動には、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が肩入れしており、ソルボンヌ大学前の抗議行動にも同党の議員らが応援に姿を見せた。 パリ政治学院(シアンスポ)では、活動家の学生への懲罰手続きを見合わせることを約束して事態をひとまず収拾したが、これについては、野党の保守勢力が、キャンセルカルチャーに阿るような態度だとして批判の声を浴びせており、政界の反応は真っ二つに分かれている。保守野党の共和党に所属のペクレス・イルドフランス地域圏(パリ首都圏)議長は、「平穏と安全が回復するまで」の措置として、パリ政治学院への地域圏の助成金の支給を停止すると発表した。 KSM News and Research -
2024.04.30
ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」、修復完了で展示再開へ
ドラクロワ(1798-1863)の名画「民衆を導く自由の女神」が6ヵ月間の修復を経て、5月2日にルーブル美術館に戻ってくる。 「民衆を導く自由の女神」は、ドラクロワが1830年の7月革命の直後に描いた作品で、三色旗を掲げて屍の上を進む女性に民衆が従って進む模様を描いている。フランスを象徴する作品として国民の間では広く知られ、数多くの引用やパロディの対象ともなっている。 今回の修復は専門機関のC2RMF(フランス美術館修復研究所)が手掛けた。過去の修復の際の上塗りで隠れてしまった細部が再び見えるようになり、配色や細かいニュアンスもドラクロワの意図を明らかにする形に戻された。前景左下にある靴や、耳から血を流して倒れている人などのディテールはこれまで認識されていなかった。 ドラクロワはこの作品を描いた時に32才で、生活が厳しかったこともあり、用いられたキャンバスの質はごく粗悪であるという。この作品は原色のみを用いて短期間で描きあげられたといい、修復に当たった専門家らは、勢いのある制作姿勢がうかがわれると説明している。 KSM News and Research -
2024.04.30
政府、組織犯罪対策強化を計画
デュポンモレティ法相は28日付のラトリビューン日曜版とのインタビューの中で、麻薬取引を念頭に置いた犯罪組織の対策強化案について説明した。専門検事局の新設や、内部告発者の保護の強化などの方針を明らかにした。 麻薬取引に絡んだ犯罪は、マルセイユをはじめとして全国各地で目立っており、政府は大規模な摘発作戦に乗り出している。法相はそれを補完する措置として、全国管区組織犯罪検事局(PNACO)の新設を予告。既存の地域圏単位の司法警察の組織のあり方は残して増員も図るが、連携を強めるための調整役を果たす新機関を設置すると説明した。法相はその一方で、大麻解禁のような方法は消費を拡大するばかりで問題の解決にはならないとの見方も示し、解禁の可能性を否定した。法相はさらに、イタリアのマフィア対策の例に倣って、「改心した告発者」に法的認知を与えて、犯罪組織の壊滅を図ると説明。類似の制度はフランスでも2004年に制定されたが、利用がほとんどないことを踏まえて、報復のリスクに対する安全の保障(戸籍の書き換え等)を徹底するなどして、制度を強化するとした。制度の費用は、引き続き犯罪組織から押収した金品(2023年に14億ユーロ弱)により賄うとも説明した。 KSM News and Research -
2024.04.29
パリ政治学院をパレスチナ支持派が占拠
パリ政治学院(シアンスポ)を占拠していたパレスチナ支持派が26日午後に解散した。24時間余りの占拠後に、学校側が示した譲歩を花道として退去した。 パレスチナ支持派の学校における抗議行動は、米コロンビア大学などでも発生しており、パリ政治学院での騒動もそうした動きに触発されたものと考えられる。フランスでは特に、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が、欧州議会選挙(6月9日)に向けたキャンペーンの柱にパレスチナ支持を据えており、今回の抗議行動にも、パレスチナ系の候補者であるリマ・ハッサン氏(女性)やポルト下院議員らが支援に訪れた。26日には、政治学院の建物前で、パレスチナ支持派とイスラエル支持派の間のにらみ合いがあり、機動隊が間に入って衝突を避けるといった場面もあった。パレスチナ支持派は、学校側に対して、イスラエルによるガザ地区の攻撃を正式に非難するよう要求して占拠を継続。パリ警視庁は、校舎の占拠者の強制排除の命令を下し、状況は緊迫したが、学校側が、パレスチナ支持派の指導者らの懲罰手続きを停止することと、全員参加を認めてパレスチナ関連の会合を開催することを受け入れたことで、ひとまず占拠が解除された。 KSM News and Research -
2024.04.29
ネクシティ、人員削減計画を発表
仏不動産大手ネクシティは25日、人員削減計画を発表した。不動産開発部門の従業員数の2割に相当する約500人を削減する。これまでの退社分ともあわせて、2022年比で28%の従業員数が削減されるという。 フランスでは、金利上昇を背景に、住宅投資が2022年秋頃から急速に冷え込んだ。購買力が損なわれた家計の間で住宅投資の手控えが広がった。2024年2月までの12ヵ月間に発行された建築許可数は36万4800件となり、その12ヵ月前と比べて22%の大幅減を記録している。ネクシティはこの人員削減に伴い、2024年に5000万ユーロ程度の費用を計上するが、削減に伴う経費節減効果は、2025年の時点で通年4500万ユーロを見込む。その他の経費節減策により、合計では通年で9500万ユーロのコスト削減を達成し、立て直しを図る。 今年に入ってからでは、不動産業界の人員削減計画の発表は、バンシ・イモビリエとブイグ・イモビリエに次いでこれが3件目で、業界の冷え込みの厳しさをうかがわせている。ネクシティは、財務状況の悪化は2024年で底を打ち、2025年には業況の回復が加速すると予想している。 KSM News and Research -
2024.04.29
ムーディーズとフィッチ、フランスの格付けを据え置き
大手格付け会社のムーディーズとフィッチは26日夜、フランスの長期債務の格付けを維持した。ムーディーズは「Aa2」に、フィッチは「AAマイナス」に、それぞれ据え置いた。また、格付け見通しも「安定的」のままに維持した。 フランスではこのところ財政収支の悪化が顕著になっており、格下げを危ぶむ声もあった。欧州議会選挙(6月9日)を控えて、政府としては格下げで信頼性の低下を招くのは避けたいところで、両社の格付け見直しの発表が注目されていた。格付け見通しを含めて現状維持を獲得できたのは朗報となった。 ただ、両社とも、フランスの財政運営の展望について懐疑的な見方を表明。フィッチは、2027年に財政赤字の対GDP比を3%以内に圧縮するとした政府の目標の達成が危ぶまれると指摘。ムーディーズは、2027年時点の公的債務残高の対GDP比が115%で推移する(2023年末時点で112.3%)と予想した。 3大格付け会社のうち、S&Pは5月末に格付け見直しについて発表する。欧州議会選挙の直前というタイミングになり、政府としてはまだ気が抜けない状況が続く。ルメール経済相は26日夜の格付け発表後に、財政健全化の目標を堅持し、努力を続けるとのコメントを発表した。 KSM News and Research -
2024.04.26
マクロン大統領、欧州政策について演説
マクロン大統領は25日、パリのソルボンヌ大学を会場に演説を行い、欧州政策に関する見解を披露した。500人の招待客が集まった。 大統領は、6月9日の欧州議会選挙を意識して今回の演説を準備した。選挙では極右RNが支持率でトップとなっており、マクロン大統領は今回の演説で連立与党への支持を呼び込むことを狙った。大統領は、今日の我々の欧州は終わりを迎えることがありうる、と言明。反欧州勢力の台頭への危機感を表明すると共に、欧州を擁護するか否かは我々の選択にかかっている、と述べて、欧州議会選挙に向けて親欧州派に奮起を促した。 大統領はまた、今のままでは欧州は米中との経済競争に敗れて貧困化する恐れがあると言明。過去30年間に住民1人当たりの国内総生産(GDP)の伸び率が、欧州では米国に比べて半分に過ぎないと数字を挙げて、懸念を表明した。大統領は、将来性のある産業部門を米中が大量に資金を投入して支援しているのに、欧州は遅れを取っていると指摘。欧州議会の改選を経て欧州連合(EU)が新たな任期を迎える次の5年間が勝負になるとし、官民の巨額の投資を支えるため、EUレベルでの共同の投資プランを実現する必要があると強調した。その財源としては国境炭素調整措置や金融取引課税などを挙げた。大統領の提案については、コロナ危機時のように債務による調達に頼る必要が出てくると懸念する向きもある。大統領はまた、防衛や宇宙など戦略的部門において欧州企業を優先することや、グリーン技術や人工知能(AI)等の支援のために自由競争の規則を特例的に緩和することなども提案した。 KSM News and Research -
2024.04.26
ネスレ・ウォーターズ、源水汚染で「ペリエ」200万本を破壊
仏保健当局DGSは4月25日、排泄物起源のバクテリアが検出されたことに伴い、ネスレ・ウォーターズ・フランスの天然炭酸水「ペリエ」200万本が破壊されたと明らかにした。同社は前日の24日に、「用心のため」ペリエを大量に廃棄処分にしたと発表していた。 問題となったのは南仏ニーム近くの採水地点の一つで、地元のガール県庁が4月19日付で、3月10-14日にボトル詰めされたペリエ全本を破壊するよう命じた。大腸菌(E.coli)が検出されたことを理由に、ペリエの源水井戸の一つについて、採水の即時停止も命じた。 親会社であるネスレ(スイス)はボトルウォーターで世界トップだが、今年1月にもフランス国内で生産しているミネラルウォーターに法律で禁止されている滅菌処理を施していたことが公けになったばかり。結果として、ボージュ県とガール県の一部採水地点で閉鎖や、ミネラルウォーターから処理済み飲料水への格下げが行われた。 一方、業界世界2位につける仏ダノンは25日の株主総会の場で、「ペリエ」の件で動揺する株主らに対して、同社では厳格な検査体制・対策をとっていると説得に努めた。例として、同社「エビアン」を巡っては日毎300件の検査が行われ、地元の市町村や農家、各種団体とともに、地下に水が浸透する場所が汚染されないよう30年以上にわたり環境的配慮を続けていると説明した。また、同社「ボルヴィック」の水源枯渇不安を指摘する株主に対しては、干ばつ時などに採水量を減らして水源の保護に努めていると反論した。ダノンによれば、フランスの水資源のうちボトルウォーター業界が採水している割合は全体で0.03%、うちダノンは0.008%だという。 KSM News and Research -
2024.04.26
ムーランルージュの風車、羽が脱落
パリ18区にある老舗キャバレー「ムーランルージュ」の看板ともいうべき風車の羽が25日未明に落下する事件があった。負傷者はなかった。 風車の羽はすべてが脱落し、ムーランルージュがあるクリシー大通りに落下した。落下時に、風車の手前に位置するネオンサインの一部に当たり、「MOU(ムー)」の3文字も落下、ネオンサインは「ランルージュ」になってしまった。その名の通り赤い風車小屋の本体は無傷だが、羽がないためよく意味の分からない建物となった。 ムーランルージュは今年創業135周年を迎える老舗キャバレーで、世界中から観光客が訪れるモニュメントである。かつて、背後のモンマルトルの丘には風車小屋が多くあり、一時は10を超える風車があった。風車はモンマルトルを象徴する風景であり、ムーランルージュが店名と目印を風車にしたのもそれが理由だった。ムーランルージュの風車は飾りだが、現在もモンマルトルには2ヵ所の風車が残っている。 脱落した羽は同日朝8時頃に撤去された。脱落した原因は不明だが、ムーランルージュ側は、悪意ある行為があった形跡はないと説明。点検は毎週行っているが、異常はなかったとも説明している。消防によれば残った建物には倒壊等のリスクはないという。ムーランルージュの営業は継続される。 KSM News and Research -
2024.04.25
フィヨン元首相の架空雇用事件:最高裁判決で元首相の有罪確定
最高裁は24日、フィヨン元首相らを被告人とする架空雇用事件の上告審判決を言い渡した。3人の被告人の有罪判決を支持したが、フィヨン元首相の量刑と、元首相夫妻に命じられた被害者への返済額について、改めて決定する必要があるとして、その点について高等裁判所に裁判のやり直しを命じた。元首相の有罪がこれで確定した。 フィヨン元首相は、下院議員時代に、夫人を議員秘書の名目で雇用し、下院にその給与を支払わせていた。これが内実のない架空雇用である疑いが浮上し、元首相夫妻と、元首相の代行議員(議員と閣僚職の兼務が禁止されていることに伴う制度で、閣僚に就任した議員の在任期間中の代行を務める議員)の3人が公金横領などの容疑で起訴された。元首相は、この疑惑が浮上した当時、大統領選挙への出馬を準備していたが、疑惑の中で出馬を維持し、2012年の第1回投票にて落選。その後に政界から退いた。 上告審では、訴訟手続きの欠陥を理由に元首相が起こした訴えの取り扱いが焦点の一つとなった。元首相は、訴訟の手続きに欠陥があったと主張し、手続き上の欠陥を理由とする訴訟無効の訴えを起訴後には起こすことができないとする刑事訴訟法典の規定は憲法違反だとして、憲法評議会による違憲審査を請求した。憲法評議会はこの言い分を認めて、政府に法律の改正を命令(2024年10月1日付で同規定の廃止が決定済み)。評議会はその一方で、現行の係争については、欠陥の存在を被告人が起訴前には知り得なかったことが証明され、さらに、訴訟無効の訴えを禁止する規定を根拠として裁判所が無効請求を却下した場合に限り、被告人が違憲状態を自らの利益にできるとする条件を付けていた。最高裁はこの点について、下級審は、元首相が提起した訴訟無効の訴えについて、禁止規定を援用して却下したものの、それにとどまらず、内容を吟味した上で理由を挙げて却下していたと認定。本件において被告人が違憲状態を自らの利益とすることは認められないとの判断を示した。 最高裁はその一方で、元首相夫人と代行議員の執行猶予付き禁固刑を追認したが、元首相の実刑部分が伴う量刑(禁固4年、うち1年間が実刑部分)については、執行猶予の伴わない刑罰を下す要件を満たしていることの根拠を下級審が示していない、との理由を挙げてこれを破棄し、裁判をやり直して元首相の量刑を決定するよう命じた。また、元首相夫妻に対して、80万ユーロの賠償金を被害者である下院に支払うよう命じた下級審の判決について、元首相夫人に与えられた報酬は明らかに法外ではあったが、元夫人がまったく秘書としての仕事をしていなかったとはいえないとし、根拠を挙げて適正な金額を設定するべきだとの判断を示し、この点についても、やり直し裁判にて決定するよう命じた。 KSM News and Research -
2024.04.25
仏政府、自社株買いへの課税導入を検討
日刊紙ルフィガロは25日付で、仏政府が自社株買いを対象とする課税の導入を検討していると報じた。2025年予算法案に盛り込み、2024年中に実施の自社株買いから適用するという。 仏企業による自社株買いは、2023年に総額330億ユーロに上り、過去最高記録を更新した。トタルエネルジー(90億ユーロ)とBNPパリバ銀行(50億ユーロ)の2社だけでその半分近くを占める。政府は、財政赤字の膨張を受けて財政健全化が急務となっており、その一環として自社株買いへの課税導入を検討しているという。 マクロン大統領は昨年の時点で、大手企業による行き過ぎた利益還元を問題視する発言をしていた。自社株買いへの課税導入は国会審議の対象ともなり、連立与党議員による1%課税の導入の提案もなされたが、この時は廃案となっていた。なお、1%という課税率は、その1年前に米国で導入された課税と横並びになっている。 1%の課税が導入されたとして、単純計算では2023年実績では3億ユーロを超える税収が確保される計算になる。税率を含めて、自社株買い課税の導入案はまだ検討段階にあり、固まっていないという。 KSM News and Research -
2024.04.25
ポンピドゥー・センターに会計検査院が苦言
会計検査院は4月23日、パリのポンピドゥー・センターに関する報告書を公表した。脆弱な経済モデル、ガバナンス強化の必要性、旧式な人事管理など、いずれの面でも改善を求める厳しい内容となった。 ポンピドゥー・センターは、大規模な改修工事のため2025年から少なくとも5年間閉鎖する一方、パリ首都圏のマシー市(エソンヌ県)に工事期間中の収蔵品保管と特別展開催を目的とする別館を建設し、2026年の開館を予定している。 現センターの改修工事費3億5800万ユーロは国が負担する。しかし、自力調達が必要な「ポンピドゥー・センター2030」計画予算1億6900万ユーロやマシー別館関連費2億5400万ユーロの確保は、時間的にも厳しい状況だ。 報告書は2013-2022年が対象で、2015年の同時多発テロや新型コロナ禍での閉館・行動制限などが発生した特殊な期間ではあったが、来館者数の減少は容認できないとした。報告書は、ポンピドゥー・センターが近現代美術品の優れた収蔵品と「ポンピドゥー」ブランドを生かして40万人以上の入場を見込める特別展を計画することと、外国人の集客に注力することを提言している。 KSM News and Research -
2024.04.24
政府、各種簡素化法案を閣議決定
政府は23日、各種簡素化法案を閣議決定した。主に企業の行政手続き等の枠組みを簡素化して、負担を減らして経済活動を振興する狙いがある。 法案には50項目の簡素化が盛り込まれた。その内容は多岐に渡る。政府の試算によると、行政手続き等への経営資源の投入のために、国内総生産(GDP)の3%に相当する840億ユーロ相当が無駄になっているといい、政府は簡素化による経済振興効果は大きいと説明している。財政赤字削減のための大規模な追加節減が必要となる中で、簡素化による企業支援は、政府にとっては懐を傷めずに実行可能という利点もある。 中小・零細企業への恩恵が大きい措置としては、Cerfaと呼ばれる行政書式の段階的な廃止、申告と許認可の対象となる案件の削減、公共調達契約の窓口となる統一プラットフォームの開設、一部の申告義務違反に対する禁固刑の廃止、新たな規格の導入に先立つ影響調査の実施、給与明細書の簡素化、などが含まれる。 セクター別では、商店対象の規制緩和、データセンター整備の促進措置、再生可能エネルギー生産の奨励など、多岐に渡る措置が導入される。公共調達では、支払いサイトの短縮などの措置も盛り込まれた。反面、労使関係の様々な義務が発生する従業員数の下限(11人、20人、50人、200人をそれぞれ超えると新たな義務が発生する)については、労組の反発も予想されることから、今回の法案にその改正は盛り込まれなかった。法案の国会審議は今夏に始まる予定。 KSM News and Research -
2024.04.24
Cafom、「アビタ(Habitat)」ブランドを復活へ
仏Cafom(家具販売)は4月23日、昨年12月に倒産した「アビタ(Habitat)」ブランドを復活させると発表した。フランス国内ではオンライン販売のみで、Cafom子会社(67%出資)のマーケットプレイス「Vente-unique.com」上で販売する。夏前の始業を見込む。その他の国ではフランチャイズ店舗の展開を狙う。デザインもアップデートする。 アビタは英国人デザイナーのテレンス・コンラン卿が1964年に創設したインテリアショップ。Cafomは2011年にアビタの英国を除く店舗やインターネット事業を買収したが、2020年に実業家ティエリー・ルゲニック氏に売却した。その後業績不振が続き、2023年12月末に仏ボビニー商事裁判所により会社更生法の適用下に置かれたばかりだった。 Cafomは、2020年のアビタ売却時に世界商標権は売らずに保持し、Cafomの倉庫を起点として物流を担当する契約を結んでいた。さらに会社更生法下でアビタのオンラインサイトなどを30万ユーロで獲得したほか、総額1200万ユーロと見積もられる在庫品もロイヤリティなどの未払い分決済のために裁判所から引き取りを許可された。一方、前払いを済ませた後にアビタが倒産して商品を手にしていない8842人の旧顧客へは商品券提供で対応する。これら事前決済額は900万ユーロにのぼる。 KSM News and Research -
2024.04.24
子どもへの体罰事件、父親が控訴審で逆転無罪
子どもへの体罰で起訴された父親が、控訴審で無罪判決を得た。検察と被害者の子ども及び母親はただちに上告した。 メッス高裁が19日に下した判決内容が22日に公表された。イブ・ミラ被告人は、国境警察に所属した元警察官で、起訴当時に9才と12才だった子ども2人に、2016年から2022年にかけて、暴力を振るったとして起訴された。被害者の証言によれば、平手打ちや、壁に押し付けて息ができないようにするなどの粗暴な行為を繰り返しており、汚い言葉での罵倒に加えて、「シリアにつれていって置き去りにしてやる」などの脅迫的な言葉も発していた。被告人は、2023年7月に第1審で執行猶予付き禁固18ヵ月と親権停止の有罪判決を受けていたが、メッス高裁は一転して無罪判決を言い渡した。高裁は、暴力の事実を認めた上で、子どもが犯した過ちに照らして相応の規模であり、子どもに損害を及ぼしておらず、また侮辱的な性質のものでない限りで、子どもを矯正する権利が親にはあり、刑事裁判所はこれに依拠して被告人への懲罰を見合わせることができるとの理由を挙げて、無罪判決を言い渡した。本件については、子どもが言うことを聞かなかったり、悪いことをしたことが矯正の理由であったとし、被告人が自ら子どもの頃に厳しい教育を受けていたことにも酌量の余地を認めた。 フランスでは、2019年にいわゆる「体罰禁止法案」が制定され、民法典を改正する形で、「子どもの教育においては体罰を用いない」旨が親の義務として定められた。今回の判決については、「矯正の権利」という概念は法令ではなく判例に由来するもので、現行の法令の枠組みの中でその正当性を失っているという議論が出されている。最高裁がどのような判決を下すかが注目される。 KSM News and Research -
2024.04.23
仏政府、7月1日付で失業保険制度の改正を施行へ
仏政府はこのほど、7月1日付で失業保険制度の改正を実行すると予告した。 政府は、2027年時点で完全雇用を実現することを目標に掲げており、失業保険制度の改正をその手段として捉えている。受給資格を厳しくするなどの方法で、就業インセンティブを高めて、失業を減らして就労者を増やすことを目指しており、その方向で制度を見直す。失業保険は、本来は労使による共同運営が建前だが、労使は先に、新たな合意に向けた交渉に失敗しており、政府はそれを理由に、自ら改正案をまとめることを決めた。労使からの意見聴取は行うが、交渉権は与えず、政府が意見を踏まえて改正案を定める。現行制度が6月30日までの期限付きで延長適用されており、期限が切れる7月1日付で改正が施行されるよう、準備を進める。意見聴取の手続きは数週間以内に開始される。 なお、経営者団体のうちU2Pが先に、一部の労組との間で、有給休暇の権利を転職先でも行使可能にするアカウント制度CETUの導入で基本合意を結んだ。政府はこれについて、関心を持って注目しているとコメントしたが、今回の改正においてこれを取り入れる可能性は示さなかった。 政府がどのような改正を加えるかはまだ決まっていないが、アタル首相はこれまでに、給付期間、給付条件(就労実績)、給付額の3つの調節手段があると言明した上で、給付条件の調節を特に有望視するとコメントしていた。労組側は、政府が自ら改正案をまとめることに反発している。 KSM News and Research -
2024.04.23
仏賭博市場、2023年に3.5%成長
賭博監督機関ANJはこのほど、2023年の市場統計を公表した。業者収入(収入から賞金を控除した純額)は134億ユーロを記録。新型コロナウイルス危機直前の2019年以来で、初めてすべてのセグメントで増収が記録された。全体の増収率は3.5%だが、これは欧州市場全体の増収率である5.5%と比べると小さい。 内訳をみると、宝くじを独占するFDJの純収入が66億ユーロで最も多かった。前年比で1.8%の増収を記録した。オンラインを除く馬券販売を独占するPMUの純収入は17億ユーロで、前年比で1%増加した。コロナ危機前の2019年の水準に復帰した。カジノの純収入は8.1%の大幅増を記録し、27億ユーロとなった。新型コロナウイルス危機で最も打撃が大きかったセグメントだが、2023年には著しく回復した。オンライン賭博は全体で23億ユーロの純収入を達成(7.2%増)。うち、スポーツ賭博がオンライン全体の63.3%を占めて最も多く、ポーカー(21.6%)と馬券(15.1%)が続いた。オンライン賭博では、遊戯者の数が減ったものの業者収入は増えており、平均掛け金は6.3%増加した。遊戯者ののめり込み度が増大した可能性がある。 KSM News and Research -
2024.04.23
欧州議会選:極右RNの優位続く、高齢者層でもRNへの支持増加
右翼系メディア(ビベンディ傘下のCNews、JDD、ヨーロッパ1)の依頼で行われた世論調査によると、6月9日の欧州議会選挙における支持率は、極右RNが29%で変わらずトップを保っている。2位は連立与党の19%で、ラファエル・グリュックスマン氏が率いる社会党の候補リストが12%でその後を追っている。以下、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が8%、保守野党の共和党が7%、極右政党ルコンケットが6%などとなっており、全体の力関係にはこれまでと比べて大きな変化がない。 極右RNは前回の欧州議会選挙でも第1党となっていた。若いバルデラ党首の下で前回よりも支持を伸ばしている。極右への拒否感が全体的に風化していることも背景にある。RNの実質的な指導者であるマリーヌ・ルペン下院議員が進めてきた、「普通の政党」としての認知を目指す作戦が成功しつつある。別の世論調査によると、65才以上の層でRNの欧州議会選挙における支持率が26%まで上昇。高齢者層は従来、極右への拒否反応が最も大きいことで知られており、マクロン大統領への支持が特に高かった。現在も、欧州議会選挙における支持率では連立与党が33%でトップだが、RNは前回選挙時のこの層における得票率(19%)と比べて大きく支持を伸ばしている。高齢者層は概して安定性を好むが、このところの暴力的な事件の多発などで特に不安を強めており、タカ派の極右的な主張になびきやすくなっていることが考えられる。 KSM News and Research -
2024.04.22
フォール・ボワイヤールに改修計画
大西洋岸のシャラント・マリティム県にあるモニュメント「フォール・ボワイヤール」の改修計画が持ち上がっている。所有者であるシャラント・マリティム県が2025年から大規模な工事に着手する方針を固めた。 フォール・ボワイヤールは、外敵からの防護を目的に、19世紀になって建設された。過去には牢獄として用いられ、海上にぽつりと堅牢な城壁が浮かんでいる様は風情がある。アラン・ドロン主演の映画「冒険者たち」(1967年)の舞台となったことでも知られ、近年は国営フランス・テレビジョンが放送のゲーム番組「フォール・ボワイヤール」の舞台として全国区の人気を保っている。 このところは気候変動の影響による大型の暴風雨の到来も増えて、建物には損傷が出始めている。倒壊から建物を守る目的で、シャラント・マリティム県は4000万ユーロ近くの予算を投じて大規模な改修工事を3年間に渡り続ける予定。工事は、城塞の両端に、保護のための新たな構造物を建設することを柱とする。片方の端には、船着き場を含む防波堤を、もう一方の端には波消しの構造物を設置する。景観が損なわれるという批判の声を意識して、県側は、1950年代以前に存在し、その後に撤去された構造物を復活させる工事だとして、より本物の姿に近くなると説明している。船着き場の整備により、これまではまったく行われていなかった城塞内の見学の組織と、それに伴う収入の確保も可能になる。 KSM News and Research -
2024.04.22
ステルス値上げの店頭表示義務、7月1日より導入へ
政府は19日、ステルス値上げ対策で減量の事実を店頭で表示することを義務付けると予告した。16日付の関連省令(アレテ)が近く官報に公示される。7月1日付で施行される。 ルメール経済相はステルス値上げを詐欺のようなものだと非難し、その対策を導入すると予告していた。新規制は、大型店舗及び中型店舗において適用され、食料品及び日用品(例えば清涼飲料水、缶詰、洗剤、箱入りの穀類など)について、重量当たりの価格上昇があった製品(価格を下げずに内容量を減らした場合)に、店頭での表示義務が発生する。店舗側は、同じ製品の従来の内容量と、減量を経た後の重量当たりの価格を、製品のそばに2ヵ月間に渡り表示しなければならない。量り売りの製品(惣菜、チーズ、青果など)は対象外となる。政府はまた、疑わしい事案について、当局の公式プラットフォーム「signal.conso.gouv.fr」に通報するよう、消費者に対して呼びかけた。 小売大手のうち、カルフールは規制導入に先駆けて店頭表示を去る1月に導入した。他の大手は、メーカーではなく小売業者に表示責任が負わされるのは不当ではないか、と不満を示している。 KSM News and Research -
2024.04.22
サブスク・シェアリング仲介のSpliiit、訴訟を乗り切れるか
有料アカウントのシェアリングを仲介する仏Spliiitが事業展開の拡大を図っている。ただ、大手プラットフォームから提訴の対象となっており、法的な懸念を抱えている。 Spliiitは2019年に発足。多アカウントを設定できるプレミアム会員サブスク(動画、音楽、新聞雑誌、ゲームなどオンラインサービスのほか、フィットネスクラブ等も)のシェアリングを仲介している。Spliiitは共有者間で決済用のウォレットを提供。シェアリング開始時に50ユーロセントの手数料を徴収し、その後の月額料金のやり取りに係り5%の手数料を徴収する。200種を超えるサブスク契約を取り扱っており、シェアリング提供側の会員数は16万6000、利用者全体では100万を超える。2023年の売上高は前年比80%増の100万ユーロに上り、黒字化を果たした。 Spliiit側では、利用規約を遵守したシェアリングだと説明しており、シェアリングにより浮いた購買力で他のサブスクに加入することが可能になるため、全体として業界の需要を拡大するのに貢献していると主張している。ただ、大手プラットフォームは納得しておらず、アップル、ディズニー、ネットフリックスはSpliiitを2022年初頭にパリ地裁に提訴。裁判所は緊急審理請求を却下したが、本件審理が継続中で、数ヵ月中に判決が出る見通し。 KSM News and Research -
2024.04.19
後発医薬品のビオガラン、インド企業による買収の可能性が浮上
仏製薬大手セルビエが後発医薬品子会社ビオガラン(Biogaran)の売却を検討している。外国企業による買収の可能性が浮上し、政治問題化している。 セルビエは、がん治療薬の開発などに経営資源を絞り込む方針で、昨年にビオガランの売却先探しに着手していた。インド同業Torrent PharmaceuticalsとAurobindo Pharmaを含む4社が買収を打診したとの報道がなされ、外資による買収の脅威が取り沙汰されるに至った。 政府は折しも、国内生産の振興を後押ししており、特に医薬品等の重要製品について、外国への依存から脱却するための生産還流の旗振りをしている。それだけに、ビオガランの外国企業への売却が決まれば、政府の推進する政策が失敗したという印象を与えかねない。ビオガランは従業員数が240人。国内に生産拠点はないが、国内の下請け企業40社程度と取引関係があり、関係する国内の間接雇用は8000人を超える。売却を経て国内の産業基盤が風化する恐れもある。 オードフランス地域圏のベルトラン議長(共和党)などは、政府に対して売却に反対するよう呼びかけている。レスキュール産業担当相も、外資による戦略的部門における投資案件の審査制度があり、買収禁止を含めた対応が可能だと言明し、産業基盤や雇用の維持などの約束を買収許可の条件として求める考えを示した。 KSM News and Research -
2024.04.19
アタル首相、未成年者の犯罪対策を予告
アタル首相は19日、パリ郊外ビリシャティヨン市を訪問した機会に、未成年者犯罪対策について公表した。一連の施策を提案し、8週間をかけて関係各方面と協議し、最終案をまとめると説明した。 ビリシャティヨン市では、中学生の男子が集団暴行を受けて死亡する事件が去る4日に発生していた。未成年者による暴力的な犯罪がこのところ相次いでおり、アタル首相はこの機会に、教育と司法の両面から、この問題に強い姿勢で対処する考えを示した。6月の欧州議会選挙を前に、優勢の極右勢力に格好の攻撃材料を与えないようにする狙いもある。 首相はまず、教育を通じた非行対策について、問題を起こす生徒に対する処罰の強化を提案。進学先の決定等に関する基準に賞罰を加えることなどを含めて、学校側が適切な対応を取れるようにする体制作りを予告した。寄宿舎の活用による若年者の感化といった対応にも前向きの姿勢を示した。未成年者犯罪への対処では、監督義務を果たしていない保護者の責任追及を打ち出し、また、未成年者訴追の手段を強化する方針を示した。 KSM News and Research -
2024.04.19
書籍のテレビ広告が2年限定で解禁、出版業界は反対
フランスで書籍のテレビ広告を2年にわたって試験的に許可する政令が4月5日付で官報に公示された。720社が加盟するフランス全国出版社協会(SNE)は、ベストセラー作品が有利になり出版業界の弱体化と文学創作の衰退に繋がりかねないとして反発し、政令の廃止を求めている。フランス書店協会(SLF)、著作家の代表組織である作家評議会(CPE)、約400の出版社が加盟する独立出版連盟(Fedei)なども、テレビ広告に反対の立場を表明している。 広告許可の目的は読者層の拡大にある。メトロや街中の本のポスターに目を留めず、新聞や雑誌なども読まない層にも、テレビ広告なら訴求力があるとの期待から、規制緩和が決まった。これまでのところ、出版社の広告出稿は、政令公示の1週間後にXO出版がBFMTV局でスポット広告を流したのみにとどまっている。大手出版社エディティス傘下のXOは、以前より大衆向けの宣伝に積極的で、かつてラジオ広告を通じてギヨーム・ミュッソの作品をベストセラーに押し上げたことで知られる。全国テレビ広告協会(SNPTV)も、2020年夏に試験導入された映画のテレビ広告が映画業界全体にとってプラスだったとして、今回の解禁でも、若者層の読書を増やすなどの貢献ができるとの見方を示している。 KSM News and Research -
2024.04.18
アタル首相、就任から100日
アタル首相が就任してから、4月18日でちょうど100日目を迎えた。首相はこの機会に精力的にメディアとの取材に応じて広報活動を展開している。 首相は18日に、パリ首都圏のビリシャティヨン市を訪問し、若年犯罪対策に関する見解を表明する。同市では先頃、男子中学生が未成年者らのグループに暴行を受けて死亡する事件があったばかりで、このところ続く未成年者による暴力的事件を象徴する事件として、世間を騒がせた。首相はこれより前、施政方針演説において、未成年者の非行について、厳正に処罰して正しい道に連れ戻すと言明し、国の威厳を重んじる対応で臨む考えを示していた。就任100日目にこの問題を前面に打ち出すことで、アタル首相が信条に掲げた国の権威の回復というテーマで国民に訴えかける考えとみられる。首相の100日間については、掛け声ばかりで成果が伴っていないとする批判の声も聞かれる。 保守系日刊紙ルフィガロが18日に発表した世論調査によると、「アタル首相をよい首相だと思うか」という問いに51%が「そう思う」と回答。人気はかなり高い水準を保っている。一連の属性を挙げてアタル首相にふさわしいかどうかを尋ねたところ、「ダイナミック」が68%で最も多く、「感じがよい」(62%)、「開かれた姿勢で対話に臨んでいる」(59%)など、肯定的なものが多かった。反面、政策の成果については、力を入れている「若年者政策」で肯定的な評価がいちばん大きかったが、それでも、「満足できる成果」と評価した人は40%と少数派にとどまり、政策遂行能力の評価は優れなかった。「マクロン大統領とアタル首相とどちらが好きか」の問いには、65%がアタル首相と答えており、マクロン大統領は27%にとどまった。これは、アタル首相の人気という以上に、マクロン大統領の不人気を示す数字とも考えられる。 KSM News and Research -
2024.04.18
会計検査院、政府の財政運営を厳しく批判
政府がまとめた中期財政計画について、会計検査院の付属組織であるHCFP(財政高等評議会)が17日に意見書を提出した。財政健全化の展望に根拠が欠けると厳しく批判する内容になった。 政府は中期財政計画において、財政赤字の対GDP比を2027年に3%以内にまで圧縮するとの目標を維持した。ただ、2023年に財政赤字は対GDP比で5.5%まで膨張しており(当初見込みは4.9%)、従来通りの赤字削減の目標を達成するのは難しくなっている。意見書は、政府が経済成長率の予測を下方修正した(従来予測の「2024年に1.4%、2025年に1.7%」を「2024年に1%、2025年に1.4%」へ)とはいえ、まだ過度に楽観的だと指摘。貿易の拡大、貯蓄性向の低下、雇用拡大といった楽観的な前提に依拠した予測であることを問題視した。その上で、政府の展望には整合性が欠けており、およそ現実的ではないとも指摘した。支出削減を大幅に進めるのだとしたら景気回復が阻害されるとし、現状の経済成長予測は楽観的過ぎるため、さらに支出の削減を迫られると指摘。赤字削減を優先するか、経済成長の確保を優先して赤字削減のペースを落とすか、いずれかを選択しなければならないとも指摘した。意見書はまた、支出削減の方法があいまいで現実的でないとも指摘、その明確化を求めた。さらに、評議会の意見書として、政治的決定に介入するのは異例だが、減税公約(中産階級向けの20億ユーロ減税、法人向け減税)の見直しを検討するよう勧告した。 KSM News and Research -
2024.04.18
転職先でも有給休暇の権利を行使:労使が新制度導入で基本合意
経営者団体のうちU2Pが労組との間で進めていた全体交渉の一部が16日にまとまった。有給休暇等の取得権利を蓄積できる制度の導入で合意した。 CETUという名称の個別アカウントを導入し、ここに有給休暇等の取得権利が蓄積される。転職後の勤務先で、条件付きでその行使が可能になる。具体的には、年間5週間の有給休暇については未消化分を1年につき1週間まで蓄積できる。時短合意に伴う有給休暇や残業に伴い取得した代休の権利等も別途蓄積できる。権利は金額換算で蓄積され、その金額は実勢賃金水準の年間推移に連動する形でスライド改定される。アカウントの記帳等の管理は政府系金融機関CDCに委託される。行使については、転職先の勤続年数が条件となり、通常の行使の場合には36ヵ月以上の勤続実績が必要になる。行使は最低で1ヵ月分、最大で12ヵ月分の範囲内で行われることを要する。 この制度の導入は、マクロン大統領が選挙公約に掲げていたもので、労組の中で特にCFDTが積極的に導入を求めていた。経営者団体側では、最大団体のMEDEFが批判的であり、先にすべての経営者団体と労組が参加して行われ、決裂に終わった失業保険関連の労使交渉でも、あらかじめ議題から外されていた。U2Pは、商店主や手工業者など零細の事業者が主に加入する経営者団体で、人材誘致に有利とみて同制度の導入に意欲的であり、今回、他の経営者団体(MEDEFとCPME)が不参加の中で労組と交渉し、合意をまとめた。ただ、合意を施行するには、政府に関連法令の制定を請求する必要があり、その段階で、多数派経営者団体であるMEDEFは制定を妨害することができる。また、労組の中では、管理職の加入が多いCFE-CGCが強く反対している。 KSM News and Research -
2024.04.17
外国人留学生受入れ数でフランスは世界6位
フランスの外国人留学生受入れ数は増え続けているものの、伸びが鈍化している。Campus France(フランス留学斡旋機関)の調べによると、フランスの高等教育機関が2022年度(フランスの学年度は秋に開始)に受け入れた外国人留学生数は41万2000人で、前年度比1万2000人増(3%増)を記録した。前年度には8%増を記録していたが、これはコロナ危機で留学が途絶えた後の一時的な急増と考えられる。2017年度から2022年度にかけての外国人留学生の増加率は17%で(6万人増)、これは同期のドイツ(54%増)やカナダ(65%増)と比べて見劣りする。 外国人留学生受入れ数の国別ランキングで、フランスは2016年には4位だったが、2021年には6位に後退しており、僅差で迫る7位の中国に近い内に抜かれる可能性も強い。2017年度から2022年度にかけては主に大陸欧州やサハラ以南アフリカからの留学が伸びを牽引した。逆にアジアからの留学は頭打ちで、これはコロナ危機を経て留学生の流れに変化が生じたことも一因とみられている。 マクロン大統領は2027年度までに年間50万人の外国人留学生受入れを達成することを目標に掲げており、アジアからの留学生誘致の加速が課題となる。フランスは特にインドからの留学生受入れに注力している。 なお、人気のある留学先のうち、オーストラリア、カナダ、オランダ、英国などは、最近ではむしろ外国人留学生受入れを制限する方針に転換している。 KSM News and Research -
2024.04.17
デファクト・テクノロジーズ、EUから250万ユーロの補助金獲得
電子回路設計向けのEDAソフトウェアを開発する仏デファクト・テクノロジーズ(Defacto Technologies)はこのほど、欧州連合(EU)が革新的な中小企業に資金を供給するプログラム「EICアクセラレーター」より250万ユーロの補助金を獲得した。 同社は新たなEDAソフトウェアを開発する計画で、それに向こう2年間で410万ユーロ近くを投資する予定。補助金はその資金となる。ほかに同社が自前で100万ユーロ強を投資。残りは銀行融資で確保した。資金は主に、必要な人材を確保するために投資される。 同社は2003年に発足、グルノーブルに本拠を置く。現在の従業員数は12人で、米カリフォルニア州にも拠点を置いている。同社は、上流段階のシステム設計をサポートし、包括的なソリューションを提供できる新世代のソフトウェアの開発を進めており、2026年後半の発売を目指している。機械学習を活用し、設計過程の自動化を推進。従来ツールに比べて30%の設計時間短縮を実現する。 同社は年商250万ユーロのうち8割を輸出で達成している。開発中の新ソフトウェアを投入後には毎年100%の増収を達成して2028年に1000万ユーロの年商の実現を目指す。 KSM News and Research -
2024.04.17
デュラレックス、会社更生法の適用を申請
ガラス器製造のデュラレックス(Duralex)が会社更生法の適用を申請した。16日に発表された。 デュラレックスは経営不振を経て、2021年1月に耐熱ガラス容器で知られるピレックス(Pyrex)により買収され、再起を図っていた。しかし、電力価格の高騰に伴い、2023年4月までの5ヵ月間に渡り、シャペルサンメスマン市(ロワレ県)にある本社工場で、経費節減のため高炉の操業を中断することを余儀なくされた。一時帰休を利用し、1500万ユーロの融資を国から確保して乗り切った。操業再開を経て業績を立て直す計画だったが、インフレ亢進に伴い個人消費が落ち込んだのが逆風になり、思うように販売が伸びなかった。それと並行して、この3月半ばには、オルレアン行政裁判所により、事業規模に見合った二酸化炭素排出権が確保されていないことを理由に、約84万ユーロの罰金支払いを命じられ、経営難に追い打ちをかけた。会社側はこの判決を不服として控訴することを決めている。 デュラレックスの従業員は230人。なお、今回の会社更生法の適用申請は、親会社であるピレックスの事業には影響が及ばないという。 KSM News and Research -
2024.04.15
ニューカレドニア:選挙制度改正を巡り独立派と帰属派の対立深まる
海外領土ニューカレドニアの中心都市ヌメアで13日、選挙制度改正の賛成派と反対派のそれぞれによるデモが行われた。警察発表では、両方のデモにそれぞれ2万人ずつが参加。島民総数が26万9000人であることを考えると、極めて大きな規模になった。政府はデモ隊間の衝突を防ぐために治安部隊を多数動員した。 ニューカレドニアではフランス帰属派と独立派の間で根深い対立が続いている。和平合意から20年を経て実施された島民投票では独立案が否決され、仏政府はそれを踏まえて、自治強化を柱とする制度作りを進めている。その一環として、有権者の拡大を盛り込んだ選挙法改正法案が仏国会にて審議中で、先に上院を通過して下院に送られたが、これがニューカレドニア内での対立を深めている。 法案は、島に10年以上居住する人に投票権を付与する内容で、従来制度よりも移住者の発言力が大きくなる。独立派は、この改正で勢力が弱まるとみて反対している。その一方で、帰属派は改正をさらに有利な方向に修正しようと圧力をかけており、両者の間の対立が深まっている。13日のデモは、独立運動が活発化した1980年代以後で前例のない規模となり、今後に対立が激化する恐れもある。 KSM News and Research -
2024.04.15
スクーター・オートバイの車検制度導入:反対派は抗議行動
スクーター・オートバイ等の車両を対象とする車検制度が15日より正式に開始される。 車検制度は、50cc未満のスクーター等を含めて対象となり、それ以外にも、四輪バギー(クアッド)や三輪バイク等も対象となる。古い車両から順に義務が発生する。2017年年頭以前に登録された車両については2024年末日までに、2017年から2019年末日までの登録の場合は2025年に、2020年から2021年末日までに登録の場合は2026年中に、それぞれ車検を受ける必要がある。2022年1月1日以降に登録の車両は、走行開始から4.5年から5年目までの6ヵ月間に車検を受ける。車検はその後、3年おきに実施される。車検は認可を受けた施設で行われ、ブレーキの状態、排気ガス・騒音、ハンドル等の状態、ランプ・ライトの状態、バックミラーの状態、車輪・サスペンション・車軸等の状態がチェックポイントとなる。検査の結果は、合格、要修理、走行禁止の3段階に分類され、走行禁止の場合には、修理と再検査で合格しない限りは、走行再開が認められない。違反の場合の罰金処分等も定められた。 政府は、検査料金を50ユーロ、所要時間を30-45分と予想している。バイカー団体は車検導入に反対する働きかけを積極的に展開しており、そのためもあって導入はかなり遅れた。団体側は反対を続けており、13日には全国で抗議行動が行われた。 KSM News and Research -
2024.04.15
コロナ禍を経て、フランスでは沿岸部への移住傾向が鮮明に
調査会社IFOPとジャン・ジョレス財団が4月12日に公表した分析によると、コロナ禍でリモート就労が発達したことなどを受け、海の近くへ移住する人が増えた。沿岸部への移住は以前から見られていた現象だが、INSEE統計の2017年と2021年の数値を比較分析したところ、現象がさらに進んでいることが明らかになった。地域によっては人口が2-5%増加し、10%増のところもある。バンヌ市のあるブルターニュ地域圏のモルビアン県以南、バイヨンヌ市(ヌーベルアキテーヌ地域圏)に至る大西洋岸で特に人口増が目立つ。地中海沿岸部でもある程度の人口増が見られた。逆に英仏海峡に面した沿岸部では、日照時間が少なめなことなどを理由に、サンマロ市周辺を除いてほとんど人口増が見られなかった。なお、富裕層が移り住んできている沿岸部では不動産価格の高騰がさらに進み、中流層や地元の低所得層には手が届かなくなってきている。 人口の増加は、ボルドー、ナント、トゥールーズ、リヨン、オルレアン、ストラスブールといった一部の主要都市の周辺部でも見られたほか、スイスとの国境地帯でも見られた。対照的に、中央地方では広く人口減が目立った農業や工業が盛んな地域ではなく、サービス業が集中する都市や観光業で栄える地域に人口が集まりつつある。庭付き一戸建てへの志向も、人口移動の原動力の一つになっている。 KSM News and Research -
2024.04.12
欧州中銀(ECB)、金利を据え置き
欧州中銀(ECB)は4月11日に開いた定例理事会で、政策金利の据え置きを決めた。下限金利は4%、上限金利は4.75%、リファイナンス金利は4.5%にそれぞれ据え置かれた。 ECBは、ユーロ圏のインフレが低下し続けていることを踏まえて、目標値の2%へと向かう確信が高まった場合には、金融引き締めの緩和を決めると説明。6月の次回理事会で利下げを決める可能性を示唆した。3月のユーロ圏のインフレ率は食品の物価上昇の勢いが大きく鈍化したことで2.4%に落ち着き、前の月の2.6%を下回った。一方の米国では3月にインフレが加速し、10日に発表された消費者物価指数は予想を上回る3.5%だった。インフレ圧力を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ決定は9月半ばに持ち越されるとの見方が広がっており、ECBがFRBに先立って利下げに踏み切る可能性が出てきた。 ECBのラガルド総裁は、ECBの金融政策はデータに基づいて決めるとして、FRBの利下げ如何に影響されるものではないと繰り返した。また、ECBの理事会内では4月の利下げを支持する向きもあったが、経済状況がより確実になってから決定すべきとの意見が大きく勝ったとした。ING銀行のエコノミストらはECBが四半期毎に0.25ポイントの幅の「緩慢な」利下げを選択すると見ている。 KSM News and Research -
2024.04.12
教員欠勤で休講は不当、行政裁判所が国に賠償責任
パリ近郊のセルジーポントワーズ地方行政裁判所は10日、教員の欠勤により不利益を被ったとして生徒と保護者らが起こした訴えで、国の責任を認める判決を言い渡した。同種の一連の訴訟で初めての原告勝訴となった。 この裁判では、12人が訴えを起こしたが、うち8人が勝訴した。うち、小学校3年生(CE2)の生徒の場合は、2021-22年度に30日の教員欠勤があり、代行が手配されないまま、教育機会が失された。別の中学生の場合は、1年生で117時間、2年生で39時間の授業がなされなかった。裁判所は、1988年の行政最高裁(コンセイユデタ)の判例に依拠し、すべての必修科目の教育を保障する法的義務を教育省は負っていると認定。判決では、連続で3週間以上、飛び飛びでは年間で15%以上の休講があった場合に、国の責任が問われた。ただし、賠償金の金額は1人につき150ユーロと象徴的な金額にとどめた。 教育省はこの判決について、内容を精査した上で控訴を検討するとコメント。1988年の判例は、欠勤の場合に適切な手配をする義務を課したものであり、そうした法的義務は提訴の案件においても満たされていたものと考えている、と説明した。提訴は父兄の連合組織FCPEなどの支援により行われたが、2022年以来で20学区において340件の提訴がなされており、これから順次判決が下されることになる。 KSM News and Research -
2024.04.12
政府、住宅関連法を準備:公営住宅の「終身賃貸」を廃止へ
カスバリアン住宅担当相は12日付の経済紙レゼコーに対して、5月初頭に閣議決定を予定する住宅関連法案について説明した。公営住宅の「終身賃貸」を廃止する方針などを示した。 住宅難は以前からの政策課題だが、足元では住宅建設業の不振により状況が一段と厳しくなっている。政府は準備中の住宅関連法案において、自治体による公営住宅整備を促進するための措置を盛り込む予定。住宅担当相は特に、公営賃貸住宅の入居待ちの世帯が180万世帯に上る(公営賃貸住宅は520万戸)ことを問題視。入居世帯のうち8%は、入居以来で所得水準や資産状況に変化があり、入居資格を失っているとの試算を示し、家賃の引き上げや賃貸借契約の打ち切りを通じて、回転をよくする必要があると説明した。 住宅担当相はまた、公営住宅と民間住宅の中間に位置し、家賃の上限規制が伴う「中間住宅」も、自治体の公営住宅整備義務の達成にカウントされるようにすることで、整備事業の促進を図る方針を示した。市町村長の権限拡大による円滑な整備事業の推進、公営住宅の持ち家化促進などの方針も打ち出した。 KSM News and Research -
2024.04.11
「公務員解雇」の可能性に労組反発
ゲリニ公務員相は9日、公務員制度の改正に向けた意見聴取を開始した。公務員相はそれに先立ち、「公務員の解雇のタブー」を取り去る意志を示し、組合側の反発を招いている。 公務員相は、マスコミとの取材に応じて、終身雇用の名の下に、仕事をしない公務員を去らせることができないのはおかしい、とし、働く者に褒章を与え、十分に仕事をしない者を制裁するのが正しいあり方だ、と言明した。公務員解雇の規定は現行法令においても定められているが、公務員相は、220万人の国家公務員のうち、職務遂行が不十分であることを理由とする罷免は昨年に13件、重大な過失を理由とする罷免が222件であることを挙げて、実際に解雇するのは極めて困難だと指摘。実効の伴う制度に改める考えを示した。ただし、民間企業のような「経済的な理由による解雇」は決して導入しないと約束した。 公務員相は、配置転換の促進(国家公務員、地方公務員、公共医療部門の間の人材の往来の促進)、能力給への移行、A、B、Cのカテゴリーからなる等級制の見直しなどを掲げて、新時代にあわせた公務員制度の改革を呼びかけた。 公務員部門の8労組のうち、FGF-FOは、公務員相の発言を批判して9日の会合への出席を拒否した。他の労組は、制度改正よりも賃金引上げに取り組むよう促すコメントを発表した。政府は協議を経て法案を今秋にまとめる予定。 KSM News and Research -
2024.04.11
「人工被覆化ネットゼロ」の対象外の特例プロジェクト、政府がリストを発表
仏エコロジー移行省は11日、「人工被覆化ネットゼロ」の目標達成義務から除外されるプロジェクトの第1次リストを公表する。重要な大規模プロジェクトの実現の妨げとならないよう配慮した。 人工被覆域の拡大は生物多様性にとって有害と考えられ、ヒートアイランド現象の原因としても問題視されている。政府は、将来的な人工被覆化ネットゼロを目指し、2021年から2031年の間の人工被覆域の増大分を、従来の半分(25万ヘクタールから12万5000ヘクタール)に減らすことを決めている。ただし、この削減目標の適用除外となる1万2500ヘクタール分の枠を政府は設定しており、その枠に含まれる対象プロジェクトの第1次リストをエコロジー移行省はこのほどまとめて、10日に関係自治体等に提示した。レゼコー紙の報道によると、リストには、南西地方の鉄道整備プロジェクト、環境派が反対しているオクシタニー地域圏内の高速道路A69の整備プロジェクト、さらに、北部地方のセーヌ・ノール運河の建設プロジェクト、首都圏とノルマンディ地方方面を結ぶ鉄道新線プロジェクト、リヨン・トリノ間の鉄道整備プロジェクトなど、国土整備の大規模計画が含まれる。港湾整備計画(ルアーブル、マルセイユ、ダンケルク)とナント空港の整備事業も含まれる。このほか、工場新設計画(McPhyの電解槽製造ギガファクトリー、MBDAのミサイル工場など)や、アルザスのリチウム採掘事業なども含まれる。 KSM News and Research -
2024.04.11
仏政府、2024年の財政赤字を上方修正
仏経済省は10日、財政運営の中期見通しを公表した。その中で、2024年の財政赤字の対GDP比を、従来予測の4.4%から5.1%へ上方修正した。 財政赤字の対GDP比は、2023年に5.5%となり、当初予測の4.9%に対して膨張していた。それに伴い、2024年の見通しについても上方修正を迫られた。経済省は、発表済みの100億ユーロの節減に加えて、2024年中にあと100億ユーロの節減が必要になると予告した。 経済成長率は、2025年に1.4%、2026年に1.7%、2027年に1.8%と順次回復する。公的債務残高の対GDP比は、2024年に112.3%、2027年には112%とほぼ同じ水準で推移する。国債費は、金利上昇に伴い、2024年の463億ユーロに対して、2027年には723億ユーロにまで拡大する。経済省はそれでも、2027年に財政赤字の対GDP比を3%以下の2.9%まで圧縮するとの展望を維持した。 報道によれば、ルメール経済相は、補正予算法案の策定により財政健全化の諸措置を実施する方向で国会議員らに打診したが、可決の展望は開かれなかった。マクロン大統領とルメール経済相の間の対立が深まっているともみられている。政府は増税の可能性を否定しているが、いずれかの形で増税に追い込まれるという見方も根強くある。 KSM News and Research -
2024.04.10
欧州人権裁、気候変動対策不備でスイス政府の責任を認定
欧州人権裁判所は9日、気候変動対策が不十分であることを理由に、国を相手取って市民が起こした3件の訴訟について判決を下した。うち1件について、スイス政府の責任を認める判決を下した。 欧州人権裁判所は、欧州人権条約の運営機関である欧州評議会の下に置かれた司法機関で、仏ストラスブールに本部を置く。今回の提訴は、スイスの年金生活者連合、ポルトガルの若者グループ、仏グランサント市のカレーム元市長(2001-2019年在任)がそれぞれ起こしたもので、気候変動対策の不備の責任を国に追及している。裁判所は、カレーム氏が2023年3月に仏政府を相手取って起こした訴訟については、2019年から欧州議会議員を務める同氏が現在はグランサント市に居住しておらず、訴人としての資格がないことを理由に却下した。また、ポルトガルの若者グループが、ポルトガルを含む32ヵ国を相手取り、ポルトガルで発生の大規模な山火事などの被害は各国が正しく気候変動対策を進めなかった結果として発生したと主張して訴えていた件については、グループが本国ポルトガルで可能な訴訟の手段をすべて尽くしていないことを理由に、やはり却下した。 裁判所は、スイスの年金生活者らが起こした訴訟についてのみ、スイス国内での訴訟を経ての提訴である点を認めた上で、スイス政府が、炭素予算等の方法を用いて温室効果ガスの排出量を数量的に制限する手段を十分に講じていないとし、これが欧州人権条約の第8条(生存、健康、福祉、生活の質を保障される権利について定める)の違反に相当すると認定した。汚染や自然災害等の環境問題で第8条違反が認定された判例はあるが、気候変動対策の不備が8条違反として認められたのはこれが初めてで、画期的な判例となる。スイスの最大与党であるスイス国民党はこの判決に強く反発しており、欧州評議会からの脱退を要求した。 KSM News and Research -
2024.04.10
Spendesk、Okkoを買収
仏Spendesk(フィンテック)はこのほど、同業Okkoの買収を決めた。株式交換と現金で買収する。買収額は未公表。 Okkoは従業員数が5人で、発足からまだ1年を経ていない。企業の購買管理のツールを開発し、その提供を開始していた。Spendeskによる買収後に、Okkoの商標は放棄され、Spendeskのサービスに完全に統合される。 Spendeskは2016年の発足。法人向けの決済手段(クレジットカード)の提供からはじめて、様々な機能を追加し、支出管理のソリューションを包括的に提供する業者に成長した。評価額10億ユーロ超のユニコーン企業と目されており、従業員数は570人に上る。ビジネスソフト大手の進出が手薄な50-1000人程度の従業員数の中小・中堅企業をターゲットとしており、フランスのほか、ドイツ、英国、スペインに5000社の顧客を数える。法人向けフィンテックの分野では現在、再編の動きが急速に進んでおり、Spendeskも今回の買収により、サービスの幅を広げて競合に対抗する基盤を確保することを狙う。今後も企業買収の機会をうかがう方針。 KSM News and Research -
2024.04.10
アトス、債権者団に再建策を提示
経営難の仏アトス(情報処理)は9日、債権者団に提示した再建策を公表した。債権者団の48億ユーロの債務を24億ユーロまで圧縮するとの内容。債務再編は主に債権の株式への転換を通じてなされ、既存株主の出資率はかなり目減りするという。アトスは26日までに回答を求めた。既存株主の側の反発も予想される。 アトスはその一方で、12億ユーロを債権者、既存株主、投資家から確保する計画。その内訳は、6億ユーロが現金(2024-25年に債務又は出資で確保)、3億ユーロが新たなクレジットラインで、また3億ユーロが銀行保証となる。当座の債務返済に対応できる財務基盤を整えた上で、残りの債務について、5年間の返済猶予の取り付けを目指す。アトスは4億ユーロのつなぎ融資を銀行団から確保したと発表。また、仏政府がスパコン事業子会社のブルSAの株式を取得し、5000万ユーロの融資を与えたことも発表された。スパコン事業は、核兵器シミュレーションの重要技術を担っており、政府は戦略的事業を防衛する目的で出資に踏み切った。政府はこれにとどまらず、アトスを仏資本企業としてとどめるための策を講じる考えを示唆しており、今後の出方が注目される。 他方、アトスの筆頭株主となったダビッド・ラヤニ氏(Onepoint社のCEO)は、26日にアトス再建の提案を公表する。これには、大物投資家のウォルター・バトラー氏が協力を約束したことが明らかにされており、再建策の内容も注目ポイントとなる。 KSM News and Research -
2024.04.09
仏ミシュラン・ガイド、ホテルの独自等級「クレ(鍵)・ミシュラン」を発表
仏ミシュラン・ガイドは4月8日、「星付きレストラン」をモデルにした仏国内の「クレ(鍵)付きホテル」189軒のリストを公表した。レストランでの「星」評価と同様に、覆面調査員の調査をもとに、「格別な体験」を顧客に提供できるホテルに対して1つから3つまでの「鍵」を授与した。 全国で24軒が「ホテル自体が目的地となるような例外的な滞在」を提供する「3つ鍵」ホテルに選ばれた。うち9軒はパリに集中している。「パリ最高のスパ」があるフォーシーズンズ・ジョルジュサンクや、眺望が優れたシュバル・ブラン(LVMH傘下)などが選ばれた。 「格別な滞在」を提供する「2つ鍵」は全国で38軒が獲得した。スキーリゾートであるクールシュベルのラポジェ、オンフルールのラ・フェルム・サン・シメオン、ディナールのカステルブラック、カシスのロッシュ・ブランシュなどが選ばれた。 「1つ鍵」は127軒が取得した。星付きレストランを併設する「フォントブロー修道院」のホテルなど、同程度の料金で特別な体験ができるホテルが選ばれた。パリでは、伝説的なナイトクラブ「バン・ドゥーシュ」を改装した「レ・バン」などが選ばれた。 「鍵」を授与されたホテルは、すべてミシュランのプラットフォームで予約が可能。外国の選定結果も今後に発表される。 KSM News and Research -
2024.04.09
パリ五輪開会式:制限地区SILTへの立ち入りは登録者以外禁止
ダルマナン内相は9日付の日刊紙ルパリジャンに対して、パリ五輪開会式に絡んだ立ち入り制限地区について説明した。7月26日(金)の開会式に先立つ1週間前から、「SILT」と呼ばれる制限地区内の立ち入りは、登録者以外禁止される。SILTには、トロカデロ宮から凱旋門につながる地区、セーヌ川沿いの地区、シテ島とサンルイ島の全体などが含まれる。住民や就労者を含めて、制限地区内に入るには各人が専用のインターネットサイト(5月10日に開設)を通じて登録し、QRコードを取得しなければならない。登録は審査の上で認められる。QRコードと本人確認書類を提示しなければSILT内には入れない。SILT内に含まれるルーブル美術館やオーステルリッツ駅などについては、切符や入場券と本人確認書類の提示により、専用入口から入場できる。SILT内の住民が訪問客を招く場合も、客人のそれぞれが事前登録をする必要がある。開会式の観衆については、入場券と本人確認書類の提示でSILT内の立ち入りが認められる。全体で数万人が登録対象となる見通しで、SILT内には4万5000人の治安部隊員が配され、入域者には自由な往来が認められる。 KSM News and Research -
2024.04.09
ワーナー・ミュージック、Believe買収を断念
米ワーナー・ミュージックは6日、仏Believe(レコード会社)の買収を断念すると発表した。報道によれば、ワーナーは、デューデリジェンスを経て、いくつかのリスクが特定されたため、買収の断念を決めたと通知したという。 Believeは、創業者のラドガイユリCEOが、主要株主であるファンド系の投資家(TCV、EQT X)と結んでTOBにより買収される計画だった。上場廃止を目指すTOBで、去る2月15日に発表された。これに対して、ワーナーは買収に名乗りを挙げて、正式な検討に着手した。これに対抗して、ファンド系の投資家らは、TOBの強行につながる決定を下したが、この決定はAMF(金融市場監督機関)により、3月22日に禁止されていた。Believeの少数株主は、ワーナーによる買収価格のつり上げに期待していたが、ワーナーは予想外の断念を決めた。 Believeは2021年に19.5ユーロの価格で上場されたが、その後に株価は低迷。CEOらによるTOBの提示額は15ユーロと低く、損を被ることになる株主らの不満は大きい。投資ファンドにしてみれば、割安で資産を取得する好機でもあり、こうした上場廃止のTOBの動きがほかの銘柄にも広がる可能性がある。テクノロジー分野でも、2021年に上場のOVHクラウド(データセンター)は、上場価格18.5ユーロに対して、現在の株価は11ユーロに低迷。Believeと同じような推移を辿っている。 KSM News and Research -
2024.04.08
中学生が集団暴行死、「家族の名誉」殺人か
パリ近郊のビリシャティヨン市(エソンヌ県)で4日、下校中の男子中学生が集団暴行を受ける事件があった。被害者は5日に入院先で死亡した。警察は同日、成人1人と未成年者4人の合計4人を逮捕した。 被害者のシェムセディンくんは15才で、この夏に中学校を卒業する予定だった。4日午後、下校途中に覆面をしたグループに集団暴行を受けて意識不明の重体となり、入院先の病院で翌日に死亡した。警察は同日に、17才の未成年者3人と、20才の成人1人、そして15才の未成年者(女子)を逮捕。7日には、うち女子を除く4人に、殺人等の疑いで容疑者認定を行い、勾留の継続を決定した。女子には、犯罪を予見できる立場にあったのにしかるべき通報をしなかった疑いで、やはり容疑者認定を行った。 報道によれば、今回の事件は、郊外問題地区に多いグループ間の抗争ではなく、恋愛のもつれが引き金となったものとみられる。逮捕された5人のうち、女子と男子2人は兄弟で、女子と「性的な問題」について話し合うことを被害者に禁止する目的で暴行したとみられる。性的な問題で「家族の名誉」を守るためと称する暴力事件は少なからず発生している。 数日前には、モンペリエ市内の中学校前でも、女子生徒が集団暴行を受ける事件があった。低年齢層の間で過激な暴力事件が続いて発生した。アタル首相は6日、社会全体のぎすぎすした状況が学校にまで広がっていると憂慮の念を表明。非行を早い段階で処罰し、重大な犯罪に発展するのを未然に防ぐことに努めるとの方針を示し、関係閣僚と共に対策を準備中だと明かした。 KSM News and Research -
2024.04.08
アタル首相、医療へのアクセス改善策を公表
アタル首相は6日、医療へのアクセス改善を目的とする措置について説明した。数紙の地方紙に対して明らかにした。 医師不足や医療砂漠の問題など、医療へのアクセスは目に見えて悪化しており、対策が以前から急務となっている。その一方で、医療関係者らは、予算節減の流れの中で反発を強めており、舵取りは困難の度を増している。首相はその中で、一連の措置を予告し、政府として努力する姿勢を国民にアピールすることを狙った。 具体的には、まず、心理カウンセラーの利用促進を目的とする制度の適用拡大を予告。払い戻し対象の診察料を1回30ユーロから50ユーロに引き上げ、年間の回数の上限も8回から12回に引き上げる。かかりつけ医の紹介なしに、患者が直接に心理カウンセラーを利用できるようにする。6月から適用を開始する。政府は1000万ユーロの追加予算を見込む。 医師の予約を守らなかった患者から、1回につき5ユーロを徴収する制度も導入される。医師の収入欠損を防ぎ、医師の「稼働率」を高めて医療へのアクセスを改善する狙いがある。5ユーロの制裁金は、予約プラットフォームや医師本人が徴収し、医師の収入とする。当日より24時間前までに変更や取り消しがなされなかった場合に徴収される。医師本人が課金の是非を決める任意制度として、2025年年頭にも導入する。 このほか、やはり任意制度として、看護師、歯科医、助産師にも当直・夜勤制を導入する。また、一部の抗生物質について、医師の処方を不要として、薬剤師が処方を決めることができるようにする。マッサージ療法の利用について、医師の処方を不要とする試験制度を一部地方で導入する。医師の育成については、2023年の1万800人に対して、2025年に1万2000人、2027年に1万6000人へと順次増やす。欧州連合(EU)域外で資格を取得した医師の受け入れも拡大する(2024年に2700人)。 KSM News and Research -
2024.04.08
マクロン大統領、第2次世界大戦の国土解放80周年の記念式典を開始
マクロン大統領は7日、第2次世界大戦における国土解放の80周年を記念する一連の式典を開始した。同日には、ドイツ軍に対する抵抗運動の舞台となったオートサボワ県グリエール高原にて式典を挙行。続いて、アン県イジュー市を訪問し、同市の施設で1944年4月6日に起こったゲシュタポによる44人のユダヤ人の子どもたちの逮捕事件に関する追悼式典を開いた。子どもたちはアウシュビッツ強制収容所に送られ、生き残った者はほとんどなかった。 大統領は今年に、様々な機会にあわせて式典を挙行する予定で、5月8日(対独戦戦勝記念日で祝日)には、パリ五輪聖火がマルセイユに到着するのにもあわせて、マルセイユでの抵抗運動を記念する式典を挙行。ノルマンディー上陸作戦の記念式典(6月5-7日)もハイライトになる。一連の式典は11月23日のストラスブール解放まで続けられる。 マクロン大統領は就任以来で、歴史的な事跡を顕彰する行事や式典等を積極的に行っており、そうした取り組みにはごく消極的だった前任2者(サルコジ、オランド)とは対照的に活動している。今年は特に、パリ五輪に加えて、パリ・ノートルダム寺院の修復工事完了が予定されており、これらとあわせて、国民に結束を呼びかける機会とすることを望んでいるものとみられる。 KSM News and Research -
2024.04.05
商店テナント料、月額払いが義務付けに
グレゴワール消費担当相は4日、6月3日に上院に提出する予定の各種簡素化法案に、商店テナント料の月額払いを義務付ける条項を盛り込むことを明らかにした。商店主連合の要望を反映させて、資金繰りを支援する。商店は現在は3ヵ月分を前払いしており、資金繰りが圧迫されている。 消費担当相はまた、保証金の上限額を3ヵ月分のテナント料に制限する方針も明らかにした。現在は6-12ヵ月分が求められている。同相によると、これらの措置により、商店側の資金繰りには20億ユーロの余裕が生じる。 761の個人向け製品のチェーン店が加盟する連合会CNC(2万6000店舗)では、長年に渡る要求が受け入れられたことを歓迎。ショッピングセンターのテナントが加盟する連合会Procosも政府の決定を歓迎したが、不動産業者との関係改善を図るにはまだ不十分だと指摘。テナント料のスライド改定に用いられる指数ILCの上昇率に上限を設定するよう、改めて要求した。同指数は2023年にも6%の上昇を記録。同指数は、インフレ率(75%)と建設コスト指数(25%)を基準にして決定されている。 インフレ亢進を背景とする消費の不振で、一部のチェーン店では倒産等の案件も相次いでいる。その一方で、不動産・建設部門も厳しい状況が続いており、政府にとって裁定を下すのは容易ではない。 KSM News and Research -
2024.04.05
ローカル線乗り放題の定期券、今夏の提供決まる
政府はこのほど、ローカル線乗り放題の定期券「Pass Rail(パス・ライユ)」を今夏に提供すると発表した。17-27才の若年者に限定して導入する。 これはマクロン大統領が公約に掲げた施策だった。費用の分担を巡り、ローカル線の運営主体である地域圏側との協議が難航したが、結局、パリ首都圏(イルドフランス地域圏)を除くすべての地域圏との間で合意が成立し、導入が決まった。 月額49ユーロで、パリ首都圏を除く全国のローカル線(TER)と、長距離在来線(アンテルシテ)に無制限で乗車できる。6月15日より、国鉄SNCFが一括窓口となり、アプリ「SNCF Connect」などを経由して販売する。7月と8月の夏休み期間に限定して提供する。SNCFは、17-27才の1割程度に相当する70万人が購入するものと予想している。この措置の総費用は1500万ユーロと予想され、その8割は国が負担する。 この制度は、ドイツで導入され、好評を得ている同様の制度に倣う形で導入される。政府は、2025年からは、パリ首都圏のローカル線も利用できる制度にすると約束している。 KSM News and Research -
2024.04.05
有機フッ素化合物(PFAS)の禁止に関する法案、下院を通過
下院は4日、有機フッ素化合物(PFAS)の禁止に関する法案を採択した。法案は5月30日に上院で審議される予定。 有機フッ素化合物(PFAS)は近年、「永遠の化学物質」などと呼ばれ、自然界で分解されることがほとんどないことから、水の汚染が進むことが懸念の対象となっている。水などをはじくその性質から、焦げ付かないフライパンのコーティングや、化粧品、スキーワックスなどに使用されている。その毒性については議論の対象となっている。 法案は、環境派政党EELV所属のティエリー議員が議員立法法案の形で提出した。下院を通過した法案は、2026年1月1日以降、化粧品、スキーワックス、大部分の衣類について、PFASの使用を禁止する旨を定めている。フライパンにおける使用については、国内生産する仏大手のテファール(セブ傘下)の従業員らが、雇用の維持などを求めて抗議行動を行ったこともあり、原案に含まれていた禁止措置が、国会審議の過程で削除された。 下院を通過した法案にはこのほか、5年間をかけて段階的にPFASを含む排水を禁止する措置と、飲料水における汚染状況の検査の義務が盛り込まれた。「汚染者負担の原則」に依拠してメーカーに拠出金を納付させることも決まった。 KSM News and Research -
2024.04.04
Pigment、1億4500万ドルを調達
代表的な表計算ソフト「エクセル」に代わる使いやすいツールを開発の仏Pigmentがこのほど、1億4500万ドルの資金調達を終えた。評価額は発表されていないが、評価額10億ドル越えのいわゆる「ユニコーン」企業の仲間入りを果たした模様。 Pigmentは2019年の設立で、これまでに3億9300万ドルの資金調達を行っている。英米系の著名ファンドが数多く出資しているのが特徴で、今回の資金調達も米Iconiq Growthがまとめた。Pigmentのエレオノール・クレスポ共同創設者によると、ファンド側からの要望に応じる形で今回の資金調達は行われた。メタ出身の大物女性起業家が率いるサンドバーグ・バーンサル・ベンチャーパートナーズもこの機会に出資しており、注目度の高さをうかがわせた。 Pigmentのツールは、ユニリーバ、メルク、ケオリスなど大手企業に採用が広がっており、財務会計にとどまらず、人事など他の分野での利用も増えて、統合的に利用できる効率的なツールとしての評価も高まっている。2023年には収入3倍増を記録したといい(数字は未公表)、収入の半分以上は北米で達成している。シリコンバレーの事務所設置や研究開発の強化などを進める予定。 KSM News and Research -
2024.04.04
仏政府、独自の衣類向け「エコスコア」表示へ
エコロジー移行省は4月3日、国民が購入する衣類の環境負荷表示に向けた算定ツール「Ecobalyse」を披露した。これにより各衣類が環境に及ぼす影響が「エコスコア」として表示されることが可能となる。今後一ヵ月間は業界や各種団体を対象とする諮問にかけられ、5月に政令(デクレ)を公布、今秋の施行を目指す。エコスコア表示は最初は任意となるが、2025年以降は義務付けられる予定。2021年成立の「気候・レジリエンス法」により、2025年以降に繊維を含む複数部門でのこうした表示が義務付けられている。 欧州委員会は同様の目的で2013年より「製品環境フットプリント(PEF)」の導入に取り組んできたが、仏政府は独自のメソッドの展開を決めた。算定ツール「Ecobalyse」はエコロジー移行省とADEME(環境・省エネ庁)による共同開発で、温室効果ガスの排出、水・天然資源の消費、生物多様性への悪影響、公害の誘発といった環境負荷に応じて、「ゼロ」から「無限大」までのスコアを割り出す。エコロジー移行省は、フランスのスコアは欧州の「製品環境フットプリント(PEF)」のメソッドに基づきつつも、洗濯時や廃棄時の製品の毒性など幾つかの補足的基準が加えられていると説明している。 KSM News and Research -
2024.04.04
政府、農業法案を閣議決定
政府は3日に開いた閣議で農業法案を決定した。法案の下院審議は5月13日に始まる予定。 政府はこの法案を、先に生じた農民らによる抗議行動への回答として策定した。国家の防衛と基本的利益に貢献する政策目標として「食料主権」を設定し、その達成のために農業を優先部門として位置づける内容で、農民に対する配慮を明文化した格好になった。 具体的には、農業のための教育とトレーニングの強化を打ち出し、小学校における農家見学の提供、中学・高校における体験型の研修の実施、一般向けの広報キャンペーンの展開を盛り込んだ。また、農業部門の起業支援では、新設機関「フランス・セルビス・アグリキュルチュール」を通じた支援に2400万ユーロの予算を設定。起業やエコロジー移行支援のための公的融資保証の制度も導入する。環境規制や行政手続き等の簡素化では、刑事罰から罰金処分への切り替えを通じて、農民に過剰な処罰が下されないようにすると約束。貯水池や畜舎建設などのプロジェクトにおいて、係争が長期間にわたり続くような状況をなくすことも約束した。法案はまた、農業、漁業、養殖業を、国の「主要な利益」と認定しており、環境のような他の「主要な利益」に対して重しが効くような法令の枠組みを整える内容でもある。 法案の国会審議においては多数の修正案が提出されることが予想される。フェノー農相は、開かれた態度で修正案を検討すると約束した。 KSM News and Research -
2024.04.03
政府、自然災害保険の制度改正を準備:気候変動に伴う災害増加に対応
自然災害の保険に関する報告書が2日、政府に提出された。政府は報告書を踏まえて、制度改正について関係各方面と協議する。今秋に法令案を策定する。 気候変動に伴う水害など自然災害の発生は今後も増加するものと予想される。損害保険の制度維持を図る目的で、政府は報告書の作成を保険分野の専門家であるラングルネー氏に依頼。116ページに及ぶ報告書がこのほど提出された。 政府によれば、自然災害に伴うコストは、2050年までに50%増を記録する見通しとなっている。自然災害の被害は、住宅保険によりカバーされるが、住宅保険料からの徴収金による公的な自然災害基金があり、これが保険プールのような形で保険会社を支えることになっている。保険事故が増えると、災害の多い地域から保険会社が退き、保険砂漠化する危険があるが、政府は、報告書に含まれる提言のうち、リスクの低い地域に偏って保険を引き受けている会社から負担金を徴収し、リスクの高い地域でも事業を展開する保険会社の収入とするという仕組みの導入に賛意を表明。保険引き受けの状況等を地域ごとにモニタリングする組織の設置もあわせて予告した。自然災害基金の徴収金の引き上げの展望については判断を示さなかった。 政府は、住宅強靭性の向上やリスク対策を含めた制度改正案を準備すると約束。これを関係各方面との協議の末に今秋にも策定すると予告した。増税で財源を確保する可能性は否定した。 KSM News and Research -
2024.04.03
下院議員による報告書、私立学校運営の「不透明性」を問題視
下院は2日、私立学校に関する報告書を公表した。報告書は、左翼政党LFI(不服従のフランス)のバニエ議員と与党ルネサンスのベイスベール議員が作成した。会計検査院が去る6月に提出した報告書と同様に、私立学校の財源の不透明性を問題視し、国に対して、私立学校との関係を見直すよう求める内容となった。 フランスで私立学校(高校まで)は7500程度を数え、生徒数は200万人超に上る。ほとんどがキリスト教系の学校だが、最近では、ウデアカステラ・スポーツ相が教育相に就任した際に、自身の子どもをパリ市内の私立学校スタニスラスに通わせていたことが問題になった。同相は、公立学校では休みの教員の代行が確保されていないなどと釈明して、さらに論争を招いた。この時は結局、教育相の職務から退いて事態を収拾したという経緯がある。報告書は、私立学校向けの助成金の総額を誰も把握しておらず、120億-130億ユーロという推計値があるだけだと指摘。私立学校は75%の運営資金を助成金に依存しているのに、国は教育内容等の点で十分に監督責任を果たしていないとも指摘し、財源面を含めた透明性の確保と効果的な監督体制の確立を勧告した。具体的には、生徒のダイバーシティ確保に消極的な学校に対して、助成金の減額制度を適用することなどを提案。また、公立学校の拡充も課題として挙げた。 カトリック系の私立学校連合は、今回の報告書の内容に反発。学校側はしかるべき努力をしており、私立学校叩きは時代遅れだなどとコメントした。 KSM News and Research -
2024.04.03
アタル首相、「不労所得への課税」強化に前向きの姿勢示す
アタル首相は2日、「不労所得への課税」に関する報告の作成を、ジャンルネ・カズヌーブ下院議員に依頼することを明らかにした。6月までに具体的な提言をまとめるよう依頼する。 フランスでは、2023年の財政赤字の対GDP比が5.5%まで膨張。赤字額は予定よりも158億ユーロ大きくなった。政府は2024年に100億ユーロの節減を実施することを決定。2025年にも200億ユーロの節減を行う準備を進めている。政府はその一方で、財政赤字の対GDP比を2027年時点で3%まで圧縮する方針を確認しているが、実現の方法を巡っては、連立与党内にも増税を求める動きがある。首相はそうした動きに配慮し、連立与党の結束を維持する目的で、与党所属の国会議員らに検討を求めることを決めた。カズヌーブ下院議員は、予算法案の報告担当を務めている。連立3党のそれぞれからの代表も加わり、連立与党がすべて参加する協議を行う。富裕層への課税強化は連立内の左寄りの勢力が特に求めている施策だが、マクロン大統領はこれまで、増税の可能性を否定してきただけに、どのような課税なら政府は応じるのか、詳細は明らかになっていない。 アタル首相はその一方で、失業保険の制度改正については、失業者の就業促進を通じて公的債務を削減し、公共サービスを強化するために必要だと強調。失業手当の給付期間短縮を含む改正の検討ポイントを維持する考えを再確認した。これは、連立与党内の左寄りの勢力が特に難色を示していた施策であり、アタル首相は一方で譲歩し、他方では譲らない姿勢を示したことになる。 KSM News and Research -
2024.04.02
失踪幼児の遺体、8ヵ月ぶりに発見
2才6ヵ月のエミールちゃんが去る7月に行方不明になった事件で、3月29日に遺体の一部が発見された。警察が遺体の身元を確認した。警察はあらゆる可能性を考えて捜査を続けている。 エミールちゃんは去る7月8日、祖父母の家がある南仏アルプドオートプロバンス県ルオベルネ村に滞在中に行方不明となった。これまで手がかりがなく、生死は不明だった。29日にはハイカーが山中で子どもの頭蓋骨を発見し、警察に通報。警察は頭蓋骨と歯を回収し鑑定したところ、エミールちゃんの遺体に間違いないことが判明した。報道によると、頭蓋骨が発見された場所は、祖父母の家から1.3km程度に位置し、傾斜が急な場所だった。失踪後に何度か大規模な捜索が行われ、この場所も対象になっていたが、これまでは発見されなかった。付近には川があり、融水で増水して流されてきた可能性や、動物が運んできた可能性、また、人為的に最近になり投棄された可能性など、当局はあらゆる可能性を考えて捜査を進めていると説明した。なお、発見の前日には、ルオベルネ村で新たな現場検証が行われたばかりで、これを偶然と考えるべきかどうかなど、明らかになっていない点は多い。 KSM News and Research -
2024.04.02
医療自己負担が引き上げに、自動車保険加入証の携行義務は廃止
4月1日付で一連の改定が実施された。 まず、医療料金の自己負担分が引き上げられた。健保公庫は2023年に111億ユーロの赤字を記録しており、政府が準備する節減策において重要な貢献を求められている。自己負担分の引き上げで年間8億ユーロ以上の節減を目指す。具体的には、医薬品1箱につき自己負担分が従来の2倍の1ユーロに引き上げられる。自己負担の1日当たりの上限は設定されない。年間当たりの上限は50ユーロに維持された。このほか、患者搬送の費用についても自己負担額が2ユーロから4ユーロに引き上げられる(1日当たりの自己負担上限も従来の2倍の8ユーロに)。政府の試算によると、患者1人当たりで年間17ユーロ以上の負担増となる。診察料金の自己負担分については、今回は引き上げの対象外だが、5月15日付で実施される予定。引上げ幅はまだ決まっておらず、現行の1ユーロが、2ユーロか、3ユーロへ引き上げられる可能性がある。 4月1日からは、自動車保険加入証の制度も改正された。フロントガラスにステッカーを貼付する義務が廃止され、保険証書の携行も必要なくなる。当局は、保険会社の協力を得て、車体番号から読み出せるデータベースを構築。検問等の際には警察官らがデータベースを参照して確認する。これにより、偽造ステッカー等を排除して検査を効率化する。 KSM News and Research -
2024.04.02
インフレ率、3月に2.3%まで低下
3月29日発表のINSEE速報によると、消費者物価指数は3月に前年同月比で2.3%上昇した。インフレ率は前月には3.0%を記録していたが、3月には顕著に減速した。 食料品価格は前年同月比で1.7%の上昇を記録。前月の3.6%上昇に比べて鈍化し、インフレ率の押し下げに貢献した。その他の項目は、サービス、たばこ、エネルギー、工業製品のいずれでも、上昇の勢いは鈍った。前月比では、消費者物価指数は0.2%の上昇を記録。前月の0.9%上昇と比べてやはり鈍化が目立った。エネルギーは前月の0.9%上昇から0.2%の上昇へと鈍化。ガスと石油製品の価格はわずかに低下したが、電力料金は課税強化に伴い上昇した。工業製品の価格はわずかに上昇したが、これは、冬季バーゲンセールの終了に伴う一時的な上昇とみられる。欧州連合(EU)基準のインフレ率は3月に2.4%となり、前月の3.2%からやはり減速した。 他方、個人消費支出は2月に前月比で横ばいとなった。なお、1月の個人消費支出は速報では前月比0.3%減と発表されていたが、0.6%減に修正された。直近3ヵ月をその前の3ヵ月と比較すると、やはり変動なしの横ばいだった(品目別では、食料品が0.9%減を記録。工業製品が0.3%増、エネルギーが1.2%増を記録)。3月のインフレ率が2%近くまで下がったことで、個人消費が拡大局面に転じる期待がある。 KSM News and Research -
2024.03.29
マクロン仏大統領のブラジル訪問:メルコスールとの自由貿易協定の見直しを要望
マクロン仏大統領は3月27日、ブラジルの公式訪問を開始した。29日まで訪問する。大統領は28日には、サンパウロで経営者団体主催のフォーラムに出席した。大統領はスピーチの際に、「あえて耳障りなことを言うが」と前置きした上で、メルコスール(南米南部共同市場)と欧州連合(EU)の間でまとめられた自由貿易協定について、現在の形では賛成できないとする立場を再確認した。大統領は、協定案が20年以上も前に準備が始まった古いものであり、「内容がとても悪い」とも言明。生物多様性と気候変動に関する問題が扱われていないことを特に問題視した。そのうえで、「20年前のメルコスールとは決別し、新しい協定を策定しよう」と呼びかけ、環境等の規則を遵守した製品を自由貿易の対象として認める協定の実現を目指す考えを示した。マクロン大統領は29日にルラ大統領と会談する予定で、その際にEUメルコスール協定の問題も協議される可能性がある。ブラジル側は再交渉に応じる可能性を否定していないが、メルコスールの他の加盟国の反応という問題もある。それはEUの側でも同様で、交渉権は欧州委員会にある。マクロン大統領がメルコスールとの協定の見直しを要求しているのは、欧州議会選挙を前に、自由貿易協定に敵対的な農民の突き上げが高まっていることが背景にある。KSM News and Research -
2024.03.29
政府、セイル搭載のハイブリッド船舶の振興策を準備
アトランティック造船所で27日、セイルとLNGの二元動力のクルーズ船の起工式が行われた。ベルビル海洋閣外相とレスキュール産業担当相が列席した。両相はこの機会に、セイルを搭載する次世代帆船の振興策を公表した。起工式が行われたのは、ホテル大手アコーが発注した「オリエントエクスプレス・サイレンシーズ」で、「オリエントエクスプレス」のブランド名を用いて、環境配慮型の豪華クルーズのサービスを展開する計画。全長220メートル、3本のマストに各2枚のセイルを配する。1本当たりで1500平方メートルのセイルを展開し、推進力を得る。風力が不十分な状況ではLNG燃料で稼働。将来的にはグリーン水素燃料に転換する。最大乗客数は120人で、客室は平均で70平方メートル。設計は2018年以降にアトランティック造船所において準備され、アコーが採用を決めた。2026年3月の進水を予定。アコーは2隻を発注しており、2027年には同型船が進水する予定。仏政府は同日、将来的にセイル搭載のハイブリッド推進船舶の世界市場シェア30%をフランスが獲得することを目指す支援プランを公表。この分野で仏政府は2022年にも100万ユーロ近くの支援を行ったが、今後は公的資金5億ユーロ、民間資金10億ユーロを集めて投資スキームを作り、さらに民間投資を呼び込む方針。民間資金では、海運大手CMA CGMのロドルフ・サーデCEOが2億ユーロの拠出を約束。残りは金融機関や機関投資家から様々な形で確保する予定という。KSM News and Research -
2024.03.29
毛髪差別の禁止法案、下院を通過
下院は28日、毛髪差別を禁止する議員立法法案を採択した。法案は中道野党議員団LIOTが提出。左派政党が賛成し、マクロン政権も基本的に支持した。この法案は、企業が、毛髪のあるなし、色や形状に基づいて差別的待遇を導入することを明示的に禁止。特に、アフロヘアの女性がストレートパーマをかけることを強要されたり、採用面接時に敬遠されるような状況をなくすことを目的に法案は準備された。政府は、現行の労働法典の下でも、そうした差別は禁止されていることを挙げて、法案の意図は支持するが、必要性があるかは疑問だとする見解を示した。法案を準備した海外県選出のセルバ議員は、アフロヘアのほかに、偏見の対象となっている赤毛や、禿頭の男性(ちなみにセルバ議員本人も禿頭)の例などを挙げて、毛髪差別の裾野は広く、法律で明示的に禁止すれば、被害者の側が権利を明確に主張しやすくなると説明した。法案は今後、上院で審議されるが、上院で多数派を握る保守勢力は、コミュニティ中心主義的な行き過ぎを招く恐れがあるとして法案に批判的で、上院審議の行方は定かではない。 KSM News and Research -
2024.03.28
ヒジャブ絡みの事案で高校校長が退任、物議に
パリ20区にあるモーリス・ラベル高校の校長が3月22日に退職した。校長は生徒や父兄、教職員らに宛てた書簡の中で、安全上の理由から早期退職することを決めたと説明した。校長は去る2月に、学内でヒジャブ(イスラム教徒の女性が着用するベール)をつけていた女子生徒に注意したことがきっかけで、インターネット上で殺人脅迫の対象となっており、これを苦にして退職を決めたものとみられる。この事件は政界でも物議を醸している。 校長は去る2月に、同高校に通うBTS(高校卒業後に高校にて継続して取得できる職業資格)の女子生徒が構内でヒジャブを着用しているのを見つけて、着用をやめるよう注意した。フランスでは、政教分離の建前から、学校において宗教的シンボルを着用することが法律により禁止されている。女子生徒はこれを無視し、校長との間でやり取りがあり、警察の介入に至った。女子生徒側は、校長に暴力を振るわれたと主張して提訴したが、この提訴は検察当局により却下された。女子生徒は自主退学したが、その後、インターネット上でこの事件を取り上げて校長を非難する動きが生じ、殺人の脅しをする書き込みも現れた。校長は恐喝などの疑いで提訴し、この件では2人の容疑者が逮捕されている。アタル首相は27日のテレビインタビューの機会に、校長に対する支持の念を表明。事件の発端になった女子生徒について、虚偽告発の疑いで提訴すると予告した。 この件は現場の教職員の間で反響を呼んでいる。教職員らによると、宗教絡みを含めて、生徒や父兄などが攻撃的な反応を示すケースが増えているといい、最前線に立たされる教員らに対して、国と上層部が十分な支援を与えていないとする不満の声も根強くあり、教職員らは退職の校長に自身の困難を重ね合わせてみている。政界では、左派勢力が教員らの声を汲み取る形で政府の対応が不十分だと糾弾。保守陣営と極右陣営は、政府の弱腰の対応がイスラム主義の台頭を招いているなどと非難している。 KSM News and Research -
2024.03.28
アタル首相、失業保険の制度改革を予告
アタル首相は27日夜、民放テレビ局TF1とのインタビューに応じて、失業保険の制度改革を予告した。財政赤字が膨張する中で、財政健全化の手段として提案した。今秋の施行を目指すとした。 アタル首相は、財政収支の悪化について、課税を強化するか、国民がより多く働くようにするか、2つしか手段がないと言明。首相は、企業の特別利益や富裕層への課税論がこのところ高まっていることについて、ドグマティックな態度で臨むつもりはないとしたが、増税を否定する立場を再確認し、労働の価値を前面に打ち出した対応を志向する考えを示した。首相は具体的に、失業手当の支給期間の短縮や、失業手当受給資格の制限強化を通じて、働く方が有利な制度に改める考えを示した。フランスでは諸外国と比べて失業者への保障の水準が特に高いとして、制度改正を正当化した。 失業保険の制度改正はその効果が出るまで時間が必要である(給付期間を12ヵ月間に制限したとして、効果が出るのは12ヵ月後以降)ことから速効性はない。それでもアタル首相がこの問題を持ち出した背景には、今春に仏長期債務の格付け見直しの結果を発表する格付け会社各社に対して、堅実な財政運営の姿勢をアピールしたいという思惑がある。また、マクロン政権がより右寄りの有権者への浸透を目指す中で、「労働の価値」を称揚する政策運営で得点を稼ごうという考えもあるだろう。労組の反発は避けられないが、政府に近い筋からは、「自分が失業しない限り、失業者の保障への関心は一般国民の間には薄いものだ」という声も聞かれる。 KSM News and Research -
2024.03.28
仏国内の工場数、2023年に57ヵ所の純増
仏政府が発表した公式集計によると、国内の工場数は2023年に57ヵ所の純増を記録した。純増幅は前年の49を上回った。拡張も入れると、新設・拡張数は201ヵ所(縮小分を差し引いた純増ベース)となり、こちらも前年の176ヵ所を上回った。 政府は、国内生産の振興を主要な政策課題に掲げている。工場数の増減は、従来はトレンデオ社の集計結果が政策議論において用いられていたが、政府はより細かな公的集計をまとめる方向で、数年前から準備を続けていた。その初めての集計結果が発表された。 2023年通年では増加が加速したものの、下半期に限ると工場の純増数は79となり、上半期の122に比べて減速した。エネルギー価格の上昇や金利水準の高さ、諸外国との誘致競争などの影響が浸透した可能性がある。その一方で、製造業の雇用数は2017年以来で13万人の増加を記録しており、2023年に限ると前年比で1.8%の増加を記録している。 部門別では、食品加工が新設・拡張で47件の純増を記録。グリーン産業・循環経済(バッテリー製造、水素製造、リサイクルなど含む)も29件で多かった。輸送(22件)と保健(20件)がこれに続いた。地域別では、オーベルニュ・ローヌアルプ地域圏が73件で最も多く、これにヌーベルアキテーヌ地域圏が続いた。両地域圏に全体の半数が集中している。 KSM News and Research -
2024.03.27
仏食品小売業界:ルクレールが勝者、カジノは再編を経て新体制に
調査会社カンターによると、2023年の仏食品小売業界のシェアで、ルクレールが1.1ポイント増の23.5%を記録。首位の座を守った。2024年に入ってからも、ルクレールは0.5ポイントのシェア拡大を達成。食品小売業界では、競合のカルフール、アンテルマルシェ(ムスクテールグループ)、オーシャンが店舗買収により勢力の拡大を狙っており、また、安値志向のリドルなどとの競合も厳しい。ルクレールは、品揃えの豊富さと安値の追求の両面作戦により、厳しい競争の中でシェア拡大を続けている。 他方、食品小売業界における負け組となったカジノでは、3月27日付でチェコの実業家クレティンスキー氏が率いるコンソーシアムに経営権が移ることになり、ジャンシャルル・ナウリCEO(75)が26日付で辞任、お別れの書簡を従業員に送付した。ナウリ氏は企業買収により一代でカジノを大手企業に育てたが、高債務のやりくりに行き詰まり、大規模店舗網等の売却を経て、小型店舗網(モノプリ、フランプリ等)を主力とする新生カジノに再編し、経営権を譲渡した。 KSM News and Research -
2024.03.27
3月分の給与、振込なしでも慌てずに
3月末の給与の支払いが遅れる可能性がある。銀行間決済システムが復活祭(3月31日)の休業期間に入ることと関係がある。 ユーロ圏内の銀行間決済はターゲット2と呼ばれるシステムを経由している。今年はこの月末が復活祭の長い休暇と重なり、そのため、ターゲット2の休業期間とも重なってしまうため、指図された振込が振込先口座において反映されるのが休暇明けの4月2日(火)以降になってしまう可能性がある。フランスでは、29日(金)は祝日ではないが、欧州の多くの国では、聖金曜日として祝日であり、ターゲット2の休業期間もこの日が起点となる。フランスでも「復活祭後の月曜日」として祝日である4月1日(月)の翌日である2日から稼働が再開する。振り込みから入金まで24時間程度がかかるため、フランスでは営業日の29日に振込の手配がなされるとすると、入金は早くて4月2日、最大では同4日(木)までずれ込むことになるという。これを回避するには、27日(水)までに手配を終えることが望ましいといい、多くの企業はターゲット2の休業を見越して早めの手配を心掛けるとみられるが、取りこぼしが出ることも予想される。 同一銀行に保有する口座間の資金の移動は祝祭日によらず実行できる。また、即時送金は年中無休で稼働する。これに伴い、銀行側としては精算を待って長い休業期間中に十分な資金を蓄えておく対応が必要なのだという。 KSM News and Research -
2024.03.27
仏財政赤字の対GDP比、2023年に5.5%まで拡大
26日発表のINSEE速報によると、2023年の仏財政赤字は1540億ユーロとなり、対GDP比で5.5%に拡大した。同比率は、コロナ危機直後の2021年に6.6%と高めにとどまった後、2022年には4.8%まで縮小していたが、2023年には再び拡大に転じた。財政収支の悪化は歳入の不振によるところが大きい。歳入の増加率は2023年に2.0%となり、前年の7.4%増と比べて明確に鈍化した。国民負担率(対GDP比)は43.5%となり、前年の45.2%から低下し。コロナ危機前の水準(2019年に43.9%)近くまで戻った。他方、歳出の増加率は3.7%となり、こちらは前年の4.0%増からわずかに鈍化した。対GDP比での歳出は、2023年に57.3%となり、2021年の59.6%、2022年の58.8%と比べて縮小しているが、コロナ危機前(2019年に55.2%)と比べるとかなり高い水準にとどまっている。公的債務残高の対GDP比は2023年末時点で110.6%となり、1年前の111.9%と比べて低下した。2019年の97.9%と比べると大きい。 財政赤字の内訳をみると、国で1553億ユーロ、各種政府機関で16億ユーロ、地方自治体で99億ユーロの赤字をそれぞれ記録。社会保障会計では129億ユーロの黒字を記録した(速報値につき全体の合計は総額と完全には一致しない)。社会保障会計の黒字はCADES(同会計の累積債務返済基金)によるところが大きく(180億ユーロの黒字)、社会保障会計の本体の収支は優れなかった。 財政赤字の拡大を受けて、連立与党内には増税による財政健全化を求める声もあるが、マクロン政権は減税を柱とする税制運営を維持する構えを見せている。ルメール経済相は26日、増税は経済成長の勢いを削ぎ、経済成長による税収拡大の芽を摘むとの主張を展開。法人対象の特別税の導入についても、企業の課税水準は既に高いと述べて、安易な増税論には屈しないとする姿勢を示した。同相は、増税によらずに2027年に財政赤字の対GDP比を3%まで圧縮する方針を再確認した。 KSM News and Research -
2024.03.26
仏の映画製作業界、コロナ禍前の水準を回復(CNC報告)
仏の映画産業支援組織であるCNC(国立映画映像センター)が発表した2023年の活動報告によると、コロナ禍で一時危機的状況に陥った仏の映画製作産業はコロナ禍前の水準にほぼ回復した。 2023年にCNCの支援認可を受けた映画の本数は2022年より10本増えて298本となり、2017-19年の年間平均である約300本に並んだ。特に、フィクションとアニメを中心に、仏映画(資金の半分超を国内で調達した映画)が236本を占めた(2022年は208本)。外国資本が出資する共同制作映画は120本となり、やはりコロナ禍前の水準にほぼ回復した。 製作本数の増加に伴って投資額も増え、CNCの支援認可を受けた映画の投資総額は13億4000万ユーロとなった。これは前年比で13.6%増、2017-19年の年間平均比でも12.9%増に当たる。仏映画の投資額は前年比23.4%増の11億ユーロとなり、過去10年間で見ても2016年と2021年に次ぐ高水準を記録した。共同制作映画の投資額は4億6468万ユーロとなり、前年比で10.2%減少した。 仏映画の1本当たりの予算額も3年連続で増加して平均額は478万ユーロとなり、これも2017年以降の最高だった。本数では、予算が100万-400万ユーロの映画が最も多く、全体の41.9%を占めたが、400万-700万ユーロの中規模予算の映画も、全体の23.7%を占めるまでに増え、2004年以降で最高となった。記録映画が減ったことで予算額が100万ユーロ未満の映画は減ったが、一方で、『モンテ・クリスト伯』や『ド・ゴール』など2000万ユーロを超える大予算映画は8本となり、前年から2倍に増えた。 仏映画への放送事業者による投資額は総額3億8400万ユーロに達し、史上最高を記録した。事業者別でのトップはカナルプリュスで1億5400万ユーロ、無料局では公共放送のフランス2が4800万ユーロ、フランス3が2200万ユーロだった。外国の配信プラットフォームは39本に総額4800万ユーロを投資したが、これは本数でも投資額でも前年の2倍超に当たる。 KSM News and Research -
2024.03.26
フランス政府、テロ警戒水準を引き上げ
ロシア・モスクワでのテロ事件を受けて、フランス政府は25日より、国内のテロ警戒警報の水準を最大の「テロ緊急警戒」に引き上げた。テロ警戒作戦「サンティネル」に参加する軍人の数を7000人に増員し(従来の3000人に4000人を追加)、駅や学校、宗教施設等の警戒を強化、パトロールも増やした。 テロ警戒警報は3段階からなり、3ヵ月前に中間段階へと引き下げられていたが、それを最高段階へと戻した。テロの脅威はフランスを含み世界的に高まる傾向にあり、年頭来では国内で2件のテロ計画が未然に摘発されている。今回のロシアの事件に犯行声明を出した「イスラム国ホラサン州」(ISIS-K)はアフガニスタンに本拠を置き、タリバン政権を狙ったテロを展開するグループだが、歴史的な理由からロシアも標的としている。諸外国を狙って工作員を送り込むタイプのテロ計画ということでは、この1年半程度で、ドイツ、ベルギー、オランダなどで逮捕者が出ており、フランスでも去る11月に国内で逮捕のチェチェン系ロシア人とタジキスタン人は「イスラム国ホラサン州」との関係が疑われている。去る12月にパリのエッフェル塔近くで1人を殺害のテロ事件を起こした犯人の男は、「イスラム国ホラサン州」への忠誠を誓う声明を発表していた。ただ、フランス国内における最大の脅威は、国内で過激化した分子の存在にあり、これが外国からの影響に触発されて犯行に及ぶリスクが大きい。中東情勢も犯行に及ぶ引き金となりうる。 KSM News and Research -
2024.03.26
再生水利用が拡大
恒常的な水不足を背景に、フランスでも再生水利用が本格化しつつある。ベシュ・エコロジー移行相が22日に状況を説明した。 再生水利用は、従来から水不足に悩んでいた国では既に本格化している。地中海沿岸諸国では、再生水の利用率は、スペインで15%、イスラエルでは実に90%に上っている。フランスではこの割合は1%に過ぎない。仏政府は、再生水の利用拡大を柱の一つとする対策プランを1年前に策定。その中で、2027年までに再生水利用のプロジェクト1000件を推進するとの目標を設定したが、これまでの集計では700件が実施中又は準備中となっており、目標達成が射程に入った。フランスには全国に2万3000ヵ所の下水処理場があるが、うち、再生水利用に適した施設は1年前には33ヵ所に過ぎず、この1年間で大きく前進した。700件のプロジェクトのうち、300件は自治体によるもので、残りは企業によるプロジェクトが占める。2023年8月に制定の政令により、再生水利用プロジェクトの認可期間を5年間とする制限が撤廃され、これにより、長期的な展望に立ってプロジェクトを推進することが可能になり、利用が大きく加速した。昨年末には、灌漑と緑地向けの利用に関する施行令も公示された。1月には、食品加工部門における再生水の利用に関する政令も公示され、法令の枠組みが整いつつある。水処理大手のヴェオリアは、自治体からの事業受託で、50件程度の再生水利用事業を進めており、2025年には200ヵ所の処理場での対応を完了することを目指している。 KSM News and Research -
2024.03.25
仏政府、小型ロケット開発の4社を支援
マクロン大統領は25日、海外県仏領ギアナを訪問する。大統領はこの機会に、クールー基地で組み立て中の欧州の新型ロケット「アリアン6」を見学する。アリアン5の打ち上げ終了に伴い、欧州は打上げ能力を失っており、アリアン6の初打上げは失敗を許されない重要性を帯びている。 大統領はこの訪問の機会に、小型ロケットを開発する仏ベンチャー企業4社に対する援助を公表する。4社は、欧州宇宙機関(ESA)が行うプロジェクト募集にも参加する。うち、LatitudeとHyPrSpaceは、それぞれ低軌道投入用の安価な小型ロケットの開発を進めている。Siriusと、MaiaSpace(アリアングループ傘下)は、中軌道に1.5トンまでの投入が可能なより大型のロケット開発を進めている。仏政府は、「フランス2030」投資プランの枠内で、合計で最大4億ユーロを支援する計画で、これらは、初回打上げ(プロジェクトにより2026-28年を予定)時のペイロード購入の契約付与の形で与えられ、成功が支援獲得の条件となる。 KSM News and Research -
2024.03.25
独仏政府、次世代戦車開発を巡り合意
ルコルニュ仏軍隊相は22日、ドイツのベルリンを訪問してピストリウス独国防相と会談した。この機会に、軍備開発に関する一連の合意に達した。 独仏両国は、次世代戦車の共同開発を計画しており、2017年に計画が開始されたが、これまでのところ進展が遅れていた。両国は、次世代戦闘機システムをフランス主導で、次世代戦車システムはドイツ主導で開発する計画で、戦車開発では、独KMWと仏Nexterを統合してKNDS社が発足していた。ただ、ドイツ側ではラインメタル社も開発計画に参入してバランスが崩れ、ラインメタルとKMWの間の係争もあって、計画の進展が遅れていた。両国政府は今回、4月26日に趣意書に調印し、プロトタイプを準備する設計段階「1B」を正式に開始することで合意。両国の政治主導でプロジェクトを推進する決意を確認した。次世代戦車は、両国の現行戦車(ドイツのレオパルト2、フランスのルクレール)を2040年に後継する計画で、ドローン戦闘や電子戦に対応、エネルギーレーザー兵器の実装も計画する。他の車両や兵器等と協働する戦車システムの中核を担うものとなる。 独仏両国は同じ機会に、KNDSがウクライナ子会社を設立し、現地で生産事業を展開する方針を明らかにした。KMWが供給したレオパルトとPzH2000自走榴弾砲、Nexterが供給した自走榴弾砲の交換部品等の製造からはじめて、より本格的な製造事業の開始も視野に収める。ただし、現地生産の開始の日程などは明らかにしなかった。 KSM News and Research -
2024.03.25
フナックのシャンゼリゼ店、年末に閉鎖へ
仏フナック・ダルティ(書籍・電子製品・家電販売大手)は3月21日、パリのシャンゼリゼ大通りにあるフナックの店舗を年末に閉鎖すると発表した。フナックのシャンゼリゼ店は長年にわたり大幅な赤字が続いているといい、同社は経済的に妥当で、社会的に責任ある唯一の選択肢だと説明した。店舗の賃貸料をはじめとする経費全般の上昇に加えて、シャンゼリゼ地区の商業活動は外国人観光客向けの高級品販売が主流になり、フナックの顧客が訪れる頻度も減る傾向にあるため、将来性も乏しいことが決め手となった。 シャンゼリゼ店の従業員は101人で、全員がパリ市内にあるほかの5ヵ所のフナック店舗に配置転換となる。今と同じポストと給与を保証されるという。 フナック・ダルティは10ヵ国以上に1000店超の店舗を展開し、2万5000人を雇用。2023年に前年比0.9%減の78億7000万ユーロの売上高に対して、5000万ユーロの純利益を計上し、黒字転換を果たした(2022年には3200万ユーロの純損失を記録)。 KSM News and Research -
2024.03.22
仏労働生産性の低下は雇用の相対的な増加に由来=仏中銀
仏中銀は3月22日、近年の仏生産性の低下は主に「雇用に有利な公共政策に要因がある」との見方を示した。2023年4-6月期の名目労働生産性(付加価値を労働者数で割った数字)は、2019年末と比べて5.2%低い水準に下がっており、コロナ危機前の標準的な水準と比べると8.5%低くなっている。中銀はその原因を分析した。 中銀は、生産性の低下が、専ら分母となる労働者数の相対的な増加に由来しており、富の創造が減退したわけではないと指摘。中銀は、8.5%の減退分のうち5ポイント分についてその要因を特定。特定分の3分の1は一時的な要因に、残りの3分の2は長期的な要因に由来すると指摘した。中銀は、非特定分でも、この1対2という比率は同じだと想定している。 一時的要因とは、企業がコロナ危機脱却時に雇用調整を手控えて、雇用数を維持したことを指す。企業は採用難に直面し、事業が減退する中でも雇用をあえて維持したが、中銀によると、そのために、輸送機器製造、建設、宿泊・飲食、情報通信の4部門を中心に36万人の余剰雇用が生じた。中銀は、この余剰は徐々に解消し、3年後には元に戻ると予想。つまり、失われた生産性の3分の1はその時までに回復することになる。 長期的な要因としては、政府が雇用政策の柱とする見習い研修生の増加をあげた。労働生産性の後退幅8.5%のうち、1.2ポイント分がこの増加に由来するとの推計を示した。中銀はこれについて、労働者の能力向上に伴い将来的には生産性改善の要因に転じるとも指摘している。中銀はこのほか、コロナ危機後の求人難を背景に、企業が、就業から遠ざかっていた人材にまで採用を広げ、生産性が低い労働力が増大したことに伴う効果を1.4ポイント分と試算している。また、コロナの影響で就労形態が見直されたことの効果を0.4ポイント分と試算した。 特定されていない要因として、中銀は、新型コロナ後の倒産件数の低さや、危機前と比較した人件費の低さに由来する効果を、可能性として示唆した。 KSM News and Research -
2024.03.22
インバウンド観光客由来の仏収入、2023年に過去最高
フランス中銀が発表の国際収支によると、経常収支は2023年に346億ユーロの赤字となったが、サービス収支のうち旅行収支は181億ユーロの黒字を記録した。黒字幅は前年比で3.7%拡大した。インバンド観光客に由来する収入は635億ユーロとなり、前年比で12%近く増加し、過去最高記録を更新した。 観光部門はフランスの国内総生産(GDP)の7-8%を占める。観光振興の公的団体アトゥ・フランスは、インフレ亢進の中でも世界の家計が観光支出を裁定の対象から外していることがうかがわれると指摘して、好調な観光収入を歓迎している。宿泊施設に限ると、収入は前年比で10%を超える増加を記録したという(調査会社MKG調べ)。 ラグビーW杯が開催された影響からか、欧州諸国からの観光客の貢献が特に目立った。収入では、ベルギー人が82億ユーロで最も多く、英国人(72億ユーロ)、スイス人及びドイツ人(各65億ユーロ)が続いた。米国人は62億ユーロとなり、前年(55億ユーロ)はもとより、コロナ前の2019年(41億ユーロ)を上回った。 KSM News and Research -
2024.03.22
ギャラリー・ラファイエットの地方店舗網、事業継続決まる
ボルドー商事裁判所は21日、百貨店大手ギャラリー・ラファイエットの地方店舗網(26軒)について、所有者であるミシェル・オアヨン氏が提出した再建計画を承認した。ひとまず倒産を回避した。 オアヨン氏は、保有するエルミオーヌ・リテール社を通じて、2018年から2021年にかけてギャラリー・ラファイエットから地方店舗網を買収し、フランチャイジーとして運営を継続していた。裁判所は今回、民事再生の手続きの下でオアヨン氏による事業継続プランを承認。具体的には、ギャラリー・ラファイエットがエルミオーヌに対する債権のうち70%を放棄することを受け入れ、残りの30%について、オワヨン氏は10年期限で返済することを約束した。オアヨン氏はまた、店舗網の近代化に投資を行い、新たなブランドの受け入れを拡大するなどして増収を図ることを約束した。 対象店舗は、アジャン、アミアン、アングレーム、バイヨンヌ、ボーベー、ベルフォール、ブザンソン、カーン、カンヌ、シャロンシュルソーヌ、シャンベリー、ダックス、ラロシュシュルヨン、ラロシェル、サント、リブルヌ、ロリアン、モントーバン、ニオール、ルーアン、タルブ、トゥーロン、トゥール、ポー、ロニーシュルボワ、コケル(カレー近郊)にある26店舗で、従業員数は1000人程度。オワヨン氏は、GAP、ゴースポール、カマイユの3店舗網の倒産を招いた件で、パリ地検による詐欺等の容疑での捜査対象になっており、労組側では、今回の事業継続の許可について、ブランドの信頼を損ねたオアヨン氏が店舗網の活性化に成功できるのかと懸念を強めている。 KSM News and Research -
2024.03.21
ベラン元保健相、美容整形医に転身で物議に
ベラン元保健相が美容整形医として医師に復帰することを決めた。物議を醸している。 ベラン氏は1980年生まれの43才。グルノーブル大学病院で脳神経科に勤務した経験があり、地元イゼール県選出の下院議員から、2020年2月のコロナ危機発生直後に保健相に就任。2022年5月のマクロン大統領再選後も、報道官などの役職で2024年1月まで閣僚にとどまった。アタル現内閣の発足時に内閣を離れ、下院議員に復職していたが、今回、週に1日の勤務で、パリのシャンゼリゼ大通りにある民間医療施設にて、美容整形医として医師としての活動を再開することを決めた。 古巣の脳神経科で公立病院に勤務するのではなく、美容整形の民間医療機関を勤務先にするという選択は、各方面から批判を受けている。医療関係者の連合組織や医療部門労組などは、公立病院が人手不足や予算不足で苦しむ中で、保健相としてその原因の一旦を担うベラン氏が、富裕者相手の美容整形で復帰するのは何事かと声高に批判している。ベラン氏本人は、脳神経科は日進月歩で、長期の休業後に復帰するのは難しいことと、元閣僚ということで、医療チーム内で浮き上がった存在になる恐れがあることを挙げて選択を正当化。美容整形には社会的な有用性があり、悪く言うのはおかしいとも述べている。 KSM News and Research -
2024.03.21
仏競争当局、グーグルに2億5000万ユーロの罰金処分
競争当局は20日、グーグルに対して、著作隣接権への対応に落ち度があったとして、2億5000万ユーロの罰金処分を言い渡した。 フランスでは、2019年7月の法律により、欧州連合(EU)の指令を国内法規化する形で、報道社等のコンテンツのプラットフォームによる利用に係り、著作隣接権料の支払いを義務付ける法令の枠組みが整備された。報道社等との係争を経て、競争当局は2020年時点で、この問題に関するグーグルの対応が不十分であると判断し、5億ユーロの罰金を科すと共に、コンプライアンス達成を命令した。2022年6月には、この問題でグーグルが5年期限(更新可)の公約を提示し、競争当局もこの提案を承認した。競争当局は、公約の達成状況を評価する独立鑑定人を指名して遵守状況を監視していたが、グーグルが鑑定人の作業に協力する義務を遵守しておらず、また、7項目の公約のうち4項目に違反があると認定し、これらの違反について新たな罰金処分を科すことを決めた。 競争当局は具体的に、3ヵ月以内に透明で客観的、非差別的な基準に基づいて、著作隣接権料の支払いに関する誠実な交渉を行う義務に違反があると認定。著作隣接権料の透明な評価に必要な情報を報道社等に提示していない点と、著作隣接権に関する交渉が、報道社等とグーグルの間の既存のその他の関係を損なう結果を招かないようにするために必要な措置が講じられていない点も問題視した。さらに、グーグルの生成AIサービス「Google Bard」に新聞社等のコンテンツを使用する旨を当事者や競争当局に通知していなかったことも問題視した。 グーグル側は、今回の処分について、事実関係について争わないことを約束し、和解の形でこれを受け入れたが、2億5000万ユーロという罰金額について、過剰な規模だとコメントしている。 KSM News and Research -
2024.03.21
アタル首相、健康保険証と身分証の統合を優先課題に
アタル首相は3月20日、カルトビタル(健康保険証)と身分証を統合する計画を優先課題に指定した。この計画は首相が前内閣で予算相を務めていた2023年春に提案していたものだが、当時は、内務省や健保公庫(CNAM)が難色を示していた。首相は、前内閣ではあまり歓迎されず、優先的とはみなされなかったが、自らの内閣では優先課題とし、全ての省庁の協力を得て進めると言明した。 統合計画の狙いは、他人の健康保険証を用いて医療費の払い戻しを受けるなどの不正行為を防止することにある。CNAMはそうした不正行為の被害はさほど大きなものではなく、医療関係者による水増し請求などのほうが深刻だとしている。また、スマートフォンなどを用いた健康保険証の非物質化が検討されている中で、身分証との統合が障害となるリスクも指摘している。これに対して、首相の側では、内務省が開始した身分証の非物質化計画に、健康保険証を組み入れる構想を提示している。 KSM News and Research -
2024.03.20
政府、市街地の車両乗り入れ制限をパリとリヨンに限定
政府は19日、大気汚染に関する省間委員会の会合を開き、市街地の車両乗り入れ制限について協議した。大気汚染の全体的な改善を理由に、義務的な制限の導入をパリ都市圏とリヨン都市圏にのみ求めることを決めた。 政府は、ZFEと呼ばれる車両乗り入れ制限地区の設定を、人口15万人以上の自治体連合(全国に43)に対して義務付けた。ただ、ドライバーや自治体側の反発が根強くあり、政府は規制の緩和に応じていた。規制は「Crit ’Air(クリテール)」と呼ばれる、汚染度に応じたラベル制度に基づいてなされるが、乗り入れ制限の対象となるのは、1996年以前に登録の車両(クリテールのラベル取得ができない番外扱い)に限られ、それ以上の制限拡大は、当該都市圏の汚染度に基づいて決める形になった。今回、政府は審査の上で、2025年年頭より「クリテール3」(2006年年頭以前に登録のガソリン車と2011年年頭以前に登録のディーゼル車)までの乗り入れ制限の適用を義務付けられる都市圏として、パリ都市圏とリヨン都市圏のみを選定した。大気汚染の水準がかなり高めのルーアン、ストラスブール、マルセイユ・エクサンプロバンスの3都市圏は義務付けを逃れた。 政府の集計によると、二酸化窒素(NO2)の汚染度は全国43都市圏の平均で1立方メートル当たり24マイクログラムまで低下した。パリとリヨンでは欧州基準の40マイクログラムをまだ上回っており、制限導入が決まった。 KSM News and Research -
2024.03.20
加工食品に含まれる砂糖、当局機関が警戒促す
ANSES(食品環境労働衛生安全庁)はこのほど、加工食品に含まれる砂糖・甘味料に関する調査結果を公表した。幅広い加工食品に砂糖・甘味料が多く用いられていることを指摘し、砂糖の過剰摂取に警戒を促した。 ANSESは、市販されている4万品目近くの加工食品を調査し、砂糖等の含有量について調べた。その結果、77%の品目で砂糖等の添加が確認された。種類別では、砂糖等が含まれる製品として最も多いのがソース類(全体の94%で確認)で、スナック類(冷凍)と乳児用ミルクがともに87%、冷蔵乳製品・デザート類と肉類加工品がともに84%などで続いた。一般には砂糖はないと思われがちな製品でも多く、例えば、塩味を基調とする調理済み食品では、冷蔵品で71%、冷凍品で59%に砂糖が含まれていた。ポテトチップス1人分に角砂糖8個分の砂糖等が含まれているなどの突出した例も紹介されている。 ANSESは、成人について、1日の砂糖摂取量の上限を100グラムとするよう勧告している。この量は、世界保健機関(WHO)の勧告の2倍とむしろ高めだが、こうした隠れ摂取を考えると、実勢の摂取量はかなり多くなる恐れがある。ANSESはその一方で、朝食用シリアルや茶系飲料、エナジードリングなど一部の製品については、業界の自主的取り組みなどもあって含有量が減っていると指摘。加糖飲料への課税導入(2012年)も効果を発揮しているとし、行政の指導により顕著な成果を達成できる余地があると強調している。 KSM News and Research -
2024.03.20
エアバス、アトスの事業部門買収を断念
エアバスは19日、仏アトス(情報処理)のビッグデータ・セキュリティ部門(BDS)の買収を断念すると発表した。経営難のアトスはこれで状況が一段と厳しくなった。 高債務に苦しむアトスにとって、BDS部門の売却は、債権銀行団との間で進めている債務再編交渉における重要な手土産だった。これが実現しなくなったことで、アトスは民事再生法の適用申請に追い込まれる可能性が高まった。エアバスは、アトスの破綻回避にこだわるルメール仏経済相から同部門を買収するよう強い圧力を受けていた模様で、これがかえって逆効果になった可能性もある。エアバスは、買収部門に含まれるスパコン事業の赤字を嫌って最初から消極的な姿勢だったといい、仏政府のごり押しに、フランスと並ぶエアバスの主要株主であるドイツ勢は、会社の利益に反してアトス救済を押し付けられるとみて、反発を強めていたともいわれる。 アトスは、情報処理事業を売却する方向でチェコの実業家クレティンスキー氏と交渉を進めていたが、こちらも既に不調に終わっている。エアバスの断念は痛手で、アトスは20日に予定していた2023年業績の発表を延期し、対応策の検討に入った。アトス株価は同日に20%を超える大幅な下落を記録。年頭来の低下幅は70%を超えている。なお、アトス救済にはダッソー・グループ(戦闘機など製造)が関心を示しているとの見方があり、ダッソーと資本関係があるタレス(防衛電子)も、一部事業の買収を検討後に断念したという経緯がある。ただし、報道によれば、タレスが再交渉に応じるとしたら、債務再編が一段落することが前提だという。 KSM News and Research -
2024.03.19
教育省、中学校改革に関する省令を公示
教育省は17日付で、中学校改革に関する省令(アレテ)を公示した。9月の新学年より施行される。 中学校改革は、アタル首相が教育相時代に着手したもので、学力増強を目的とする一連の新機軸を打ち出している。目玉の一つは、国語と数学の授業を「能力別グループ」により行うというものだったが、省令では結局、「能力別」という言葉の使用を避けて、「個々の生徒の必要に配慮した」グループ分けを行うとの表現が用いられた。教員らの反発に配慮した措置だが、教員らの不満や批判の声は相変わらず根強くある。グループ別学習においては、「特別な必要がある」生徒のグループは人数を減らすことになる。1年に1週から10週まで、必要に応じて、教室全体による授業を行うことができる旨も定められた。教員らからは、この改革だと、1学年の国語と数学の時間をすべて同期させることが必要になり、負担は特に大きくなるとの声が聞かれる。中学1年次と2年次より新制度が9月より導入され、3年次・4年次(フランスの小中高校は5・4・3制)では翌年以降の導入となる。 改革はこのほか、留年の制限の緩和(従来のように保護者が最終的な決定権を持つのではなく、学校長が決定権を行使できるようにする)、さらに、「ブルベ」(中学卒業時に行われる試験)の不合格者を対象にした高校入学準備クラスの試験導入(9月より)も盛り込まれた。将来的にブルベ不合格者は高校入学が認められなくなる。 KSM News and Research -
2024.03.19
パリ市内の治安状況、20区が最良
日刊紙ルパリジャンがパリ市内の治安状況ランキング2023年版を公表した。20区の評点が最高という少々意外な結果になった。 このランキングは内務省の犯罪統計に依拠して算出。暴行(全体の評点に占めるウェイトを35%に設定)、盗難(同25%)、侵入窃盗(同20%)とその他のトラブル(麻薬密売に伴う被害、破壊行為等)の4項目について、住民当たりの発生件数で比較した。それによると、20区は評点12.70(20点満点)で最も安全な区となった。これに、14区(12.01)、15区(11.66)、17区(11.02)、13区(10.79)、11区(9.43)が続いた。16区はその下(9.43)に位置し、最下位は2区の1.75点だった。1区は住民数が少ないため、ランキングから除外されている。住民数が少ないほど、住民数当たりの犯罪発生件数は多くなりやすいことが考えられるため、20区が「安全」であるのもその辺りに一因があるのかもしれない。20区のプリエ区長は、女性に対する暴力の予防に力を入れており、その成果が出たと強調している。 なお、人口5万人以上の都市のランキングでは、パリのランキングは103位とかなり低い。 KSM News and Research -
2024.03.19
仏政府、EDFに軍用トリチウム製造を依頼
仏政府はEDF(仏電力)に核兵器用の物質生産を依頼することを決めた。シボー原子力発電所の原子炉を利用してトリチウムを生産する。ルコルニュ軍隊相が発電所地元のビエンヌ県を訪問した際に明らかにした。 トリチウムは、シボー発電所の原子炉2基を用いて生産される。ターゲットを炉心に組み入れて電力生産の通常の運転(7ヵ月間程度)を行い、回収してCEA(仏原子力庁)に引き渡す。来年に開始を予定する。 トリチウムの生産はCEAが自前の設備で行ってきたが、EDFへの委託を通じて生産能力の冗長性を確保する。発電用原子炉のこの種の利用法は米国では例があるが、フランスではこれが初めてとなる。1990年代から構想があり、長期的な計画に即したものだと軍隊省では説明しているが、足元のロシアとの対立を背景にして実施を決めたものとみられる。シボー原子力発電所が選ばれたのは、最も新しい発電所であり、残余の運転期間が最も長いことが決め手になったという。 KSM News and Research -
2024.03.18
ステファン・ベルン氏、初の政界進出
テレビ番組の制作・司会で知られるステファン・ベルン氏が地元自治体で立候補した。初めての政治進出となる。 ベルン氏は60才。欧州の王室ジャーナリストなどとして活躍後、現在では、歴史的建造物の保護・活用の分野での名声が高まり、マクロン政権下でも相談役などとして活躍している。ベルン氏は地元のティロン・ガルデ村(ウールエロワール県)の村議会補欠選挙に立候補。プロボ村長が去る1月に辞任を決めたことに伴う選挙で、3人が選出されることになっているが、立候補者はベルン氏の率いる候補者リストの3人(ベルン氏含む)のみで、当選は確実視されている。24日に投票が行われ、正式に村議会入りする。ベルン氏は、村長になるつもりはないと説明しているが、村議の互選でなされる村長選出で自身を推す声があるなら考える、とも付け加えている。 ティロン・ガルデ村は、パリから1時間30分程度で行ける村落で、ベルン氏は新型コロナウイルス危機を経てここに住所を移すことに決めた。同氏はそれより前、2013年に、村内にある17世紀の歴史的建造物を購入。ここを博物館として公開し、村おこしに肩入れしている。ここを歴史的建造物の保存・活用のモデルケースにしたい意気込みで、村役場を足場に野望をさらに推し進める考えとみられる。マクロン政権をはじめ政界に強いパイプを持つベルン氏がその気になれば、より一層の公的資金の呼び込みも容易だろう。 KSM News and Research -
2024.03.18
CMA CGM、BFM TVグループを買収へ
仏海運大手CMA CGMは、アルティス・フランスからBFM TVグループの買収に向けた独占交渉を開始した。評価額を15億5000万ユーロに設定して100%株式を買い取る。15日に両社が発表した。 BFM TVグループは、ニュース専門地デジ局BFM TVと民放ラジオRMCを核にした民放グループで、フランスでは第3位。RMC傘下の地デジ局・有料局も含まれ、テレビ・ラジオの視聴者・聴取者数は1日当たりで1500万人超に上る。CMA CGMが80%、同社のロドルフ・サーデCEOをはじめとするサーデ一族の持ち株会社が20%株式をそれぞれ取得する計画で、買収額はEBITDA倍率では14とかなり高い。CMA CGMは、コロナ危機後の運賃大幅上昇で得た潤沢な資金を用いてメディア資産の買収に力を入れており、子会社のホワイノット・メディアを通じて、地方紙のラプロバンスとコルスマタン、経済紙のラトリビューンを保有、民放大手M6にも出資している。BFM TVグループの買収が実現すると規模が格段に大きくなる。 アルティスを率いる仏・イスラエル系の実業家パトリック・ドライ氏は、2015年にBFM TVグループを7億ユーロで買収した。アルティス・グループは、全体で600億ユーロ近くの債務を抱えており(アルティス・インターナショナルとアルティスUSA含む)、アルティス・フランスに限っても債務額は240億ユーロに上る。金利上昇を経て債務のリファイナンスが苦しくなっており、BFM TVグループの売却により、2025年に償還期限が来る債務14億ユーロの全体と、2026年に償還期限が来る債務13億ユーロの一部について、返済のめどをつけた。ただ、2027年には55億ユーロ、2028年には94億ユーロの債務の期限がくることになっており、同社は金利低下によりリファイナンスの条件はより良好になると期待している。主要資産であるSFR(通信)を売却する構想もあるが、SFRの業績が優れないこともあり、適正価格での売却はより困難になるとみられる。 KSM News and Research -
2024.03.18
オランダ政府、次期潜水艦調達で仏ナバル・グループを選定
オランダ政府は3月15日、ワルラス級潜水艦の後継艦導入に向けた入札で、仏ナバル・グループを選定したことを明らかにした。独占交渉を開始した。 ワルラス級潜水艦の後継艦に関する入札は、TKMS(独ティッセンクルップ傘下)と、ダーメン造船所(オランダ)と結んだサーブ(スウェーデン)、およびナバル・グループの3社の争いとなったが、ナバル・グループが「バラクーダ」を提案して勝利した。4隻を供給する予定で、契約額は今後の交渉により決まるが、オランダ国内の報道では40億-60億ユーロという数字が取り沙汰されている。 バラクーダは、「シュフラン級攻撃型原子力潜水艦」として、フランス海軍が既に就役を開始している。オランダ海軍向けには通常動力型潜水艦として供給される。外国建造の潜水艦となることを脅威として、政界にも懸念を示す向きがあったが、ナバル・グループ側は、オランダのロイヤルIHC(オフショア設備)と提携し、40%以上の事業機会をオランダ企業(30社程度)に与えることを約束し、選定を得た。オランダ政府は、ワルラス級潜水艦を建造した会社が既に倒産しており、国内の潜水艦建造ヤードを再整備する費用負担は膨大になることを挙げて、外国企業の選定を正当化している。 KSM News and Research -
2024.03.15
パリ政治学院が大揺れ、学院長辞任に続いてユダヤ人差別問題が浮上
パリ政治学院(シアンスポ)が揺れている。学院長の辞任に続いて、学内の人種差別問題が浮上している。 パリ政治学院は政治家の登竜門としても知られる名門校で、マクロン大統領をはじめとして出身者は多い。そのマティアス・ビシュラ学院長は13日に辞意を表明。学院長はマクロン大統領とも同窓の間柄だが、元内縁の妻にDVで告訴を受け、去る12月に事情聴取を受けていた。学院長側も元内縁の妻をDVで告訴しており、検察当局は先に、両者をともに起訴することを決定した。学院長は、この件が学校に害をなすのを避ける目的で辞任すると説明している。 これに前後して、学内で12日に発生した事案が政治問題に発展している。同日には、パレスチナ支持派による無届の学生運動が学内で行われたが、この際に、仏ユダヤ人学生連盟(UEJF)に所属する女子学生が入場を妨害される事案があった。ユダヤ人排斥的な言葉が発せられたとの証言もある。マクロン大統領は13日に開いた閣議でこの問題を取り上げ、このようなことは容認できないと言明。政府はこの件を検察当局に通報した。アタル首相は同日夜にパリ政治学院の理事会を訪問し、政府として強い憂慮の念を伝えた。 KSM News and Research -
2024.03.15
病欠期間中の有給休暇権利取得、行政最高裁が政府改正法案を承認
病欠期間中の有給休暇権利取得に関する政府法案の事前審査の結果が13日付で発表された。遡及的な請求を制限する政府案が認められた。経営者団体はこの判断を歓迎している。法案は18日に国会に提出される。 事前審査は規定により行政最高裁(コンセイユデタ)が行った。フランスの法令は、病欠期間中に有給休暇の権利は発生しない旨を定めているが、これが、1996年の欧州基本権憲章と2009年の欧州連合(EU)条約(リスボン条約)に違反するとの議論が以前からあった。フランス最高裁は最近に、この件を巡る訴訟で、仏現行法令をEU条約に抵触するとの判断を下しており、適合化を図るための法改正が必要になっていた。ただ、遡及的に有給休暇取得の権利が大幅に認められた場合、企業側の負担は莫大になることから、経営者団体は適正な法改正を求めていた。行政最高裁は今回の事前審査で、経営者団体との協議の末に政府がまとめた改正案を適法と認めた。 具体的には、1996年から2009年までの期間に発生した有給休暇の権利については、企業を請求対象とすることを認めず、国を相手取った訴訟により行使される旨を定めた。2009年12月1日以降については、従業員が既に当該企業に在籍していない場合では、1年間につき4週間分(病欠以外の通常の取得では5週間分)の取得を認め、かつ最大で3年間の期間に制限して遡及的な請求が認められる。従業員が当該企業に在籍している場合には、遡及的な請求が認められるのは、法令の施行から2年前までの期間に限定される。施行後の有給休暇取得の権利は、同じく年間で4週間までに制限される。 KSM News and Research -
2024.03.15
ネットの架空恋人のために妻殺害、夫が自供
北仏ブサン村で去る1月に発生した女性の殺害事件で、3月11日に夫が犯行を自供した。インターネットで知り合った女性と本格的に交際するため殺害したと自供した。警察の調べでは、問題の女性は実際には存在せず、インターネット詐欺であったことが判明しており、犯人本人をはじめ、周囲に衝撃を与えている。 事件は1月28日に発生。人口500人のブサン村で、アリシアさん(28)が自宅で死んでいたと、同居する内縁の夫のニコラ・H(30)が警察に通報した。パン屋から戻ったら刺殺されて死んでいたと供述、強盗犯による殺害ではないかと推測を述べていた。小村のため、事件は付近住民に驚愕と恐怖を与え、村内は事件以来、騒然としていた。警察は、状況に不自然な点も多いことから、改めて事情聴取を行ったところ、内縁の夫は犯行を認めた。 ニコラ・H容疑者は、近隣の自治体で職員を務めており、2年前から被害者と共にこの村に住んでいた。警察は、容疑者がベアトリス・ルルーを名乗る女性とインターネット上で接触していたことを突き止め、追及したところ、容疑者は犯行を認めた。警察の調べでは、このベアトリスなる人物は、ネット上のプロフィールではブレスト市(ブルターニュ地方)で商店を経営していることになっているが、実際には詐欺の本場である西アフリカ地方の詐欺団が作った偽アカウントであることが判明しており、IPアドレスはこの地域のものと一致している。容疑者は「ベアトリス」に貢いでいたといい、しばらく前からアリシアさんと不仲になった。犯行の数日前には毒殺を試みたが失敗し、刺殺に至ったと供述している。ベアトリスが存在しないことを知った容疑者は大いに動揺しているという。 KSM News and Research -
2024.03.14
AI報告書、政府に提出:投資増額を進言
政府が設置した人工知能(AI)専門家委員会が13日、報告書をマクロン大統領に提出した。AI分野で諸外国との遅れを取り戻すのは可能だとして、多額の投資を行うよう提言した。 報告書は、AIによる経済成長率の押し上げ効果を、2034年までで年間1.35ポイント程度と試算。雇用への影響については、全体でみるとプラス効果を期待できると指摘。そのために教育とトレーニングに力を入れて、AIの恩恵がすべての層に浸透できるようにすることが大切だとした。 報告書は、AIの波に乗り遅れれば、フランスの世界における地位は決定的に後退すると指摘。AIへの投資を拡大しないという選択肢はないと強調した。報告書はその上で、AIへの公的投資額が過去8年間で合計30億ユーロに過ぎないと指摘。向こう5年間では年間50億ユーロの公的投資が最低限必要だとの見方を示した。公共サービスのデジタル移行、欧州の半導体産業の振興、デジタル分野の企業への大型投資等を優先項目として示し、民間投資も呼び込んで、年間総額で150億ユーロの投資を実現するべきだとした。報告書は、財源として貯蓄資金の有効活用が取り沙汰されていると指摘した上で、その仕組みが整うまでの間、公的基金を設立して早期の資金供給を実現する必要があると力説した。 KSM News and Research -
2024.03.14
フランスの廃棄物リサイクル、いっそうの努力が必要
ADEME(仏環境・省エネ庁)はフランスでの廃棄物リサイクルの現状について報告し、10年間で改善したものの、まだ努力の余地は大きいと指摘した。またフランスの産業や環境上の課題、主権にとって、リサイクルがかつてなく重要になっていると強調した。 2021年にリサイクル目的で回収された廃棄物の量は6600万トン以上に達し、5300万トン以上が生産に再利用された。なお同年の廃棄物総量は3億1000万トンだった。また2012年から2021年までの10年間に、生産に再利用される廃棄物の割合は、鉄含有金属とアルミニウム以外の全ての種類の廃棄物で増加した。 プラスチック廃棄物の回収量は2021年に130万トンに達して、2012年と比べて40万トンの増加を記録した。回収率は25%と推定される。プラスチック業界はプラスチック廃棄物の再利用率も今回初めて算出し、2020年に14%だったと推定している。なお、1トンのプラスチックを再利用すると、新品を利用する場合と比べて、2.7 CO2換算トンの温室効果ガス排出削減につながるという。しかしADEMEはフランスのプラスチック廃棄物リサイクルはまだ少なすぎると判断し、廃棄物の選別、製品のエコ設計、リサイクル容量の増強などが必要だとしている。 KSM News and Research -
2024.03.14
フランス中銀、2024年経済成長率予想を0.8%に下方修正
フランス中銀は12日、2024年の仏経済成長率予測を0.8%に下方修正した。従来の予測を0.1ポイント引き下げた。なお、仏政府は同年の経済成長率予測を1.4%としていたが、これを先月に1%まで引き下げている。中銀のビルロワドガロー総裁は、政府公式予測との差について、誤差範囲内のわずかなものだと説明。景気後退に陥ることなく、インフレ抑制が実現するとの展望を示した。経済成長率は、2025年には1.5%、2026年には1.7%まで上昇するとも予測。こちらは、従来予測(1.3%と1.6%)を上方修正した。インフレ率については、2023年の5.7%(通年平均)に対して、2024年には2.5%と半分以下に低下する。続いて2025年と2026年にはそれぞれ1.7%まで低下する。この両年には、食料品と工業製品の価格上昇幅が抑制され、エネルギー価格は低下を記録すると予想した。 インフレ抑制の展望が鮮明になったことで、利下げへの期待も高まっている。欧州中銀(ECB)は先の理事会で金利据え置きを決めたが、ラガルド総裁は、「4月になれば少し、また、6月になればさらに一層」、把握される経済状況が明確になる、と言明し、間接的な表現ながら、利下げに転じるタイミングについて言及していた。仏中銀のビルロワドガロー総裁は、今春に利下げに転じるのが「かなり確からしい」としているが、「春」とは、4月から6月21日までの期間のことだ、とも付け加えている。 KSM News and Research -
2024.03.13
仏音楽市場、2023年に5.1%の成長を記録
仏音楽出版業界団体SNEPの集計によると、仏音楽市場は2023年に9億6800万ユーロの規模となり、前年比で5.1%の成長を記録した。2017年以来で7年連続で成長した。成長率は、新型コロナウイルス危機の影響が大きく出た2020年(0.1%増)と2021年(反動で14.3%の大幅増)を除くと標準的な水準だが、2022年(6.4%増)と比べると減速がみられた。 内訳をみると、著作隣接権収入が前年並み1億2200万ユーロ、映画・ドラマ等における使用が2.8%減の3100万ユーロ、物理媒体(レコード、CD等)が1.2%減の1億9500万ユーロとなった。デジタルは6億2000万ユーロに上り、前年比で8.8%増を記録。全体の64%を占めるまでに至った。うち、ストリーミングは6億1000万ユーロで、残りの1000万ユーロはダウンロードとスマホ向けが占めた。ストリーミングの増収率が1桁台まで鈍化したのはこれが初めてで、まだ伸び代が大きいはずなのに減速に向かっていることに業界は懸念を示している。ストリーミングのうち、有料サービスの収入は77%を占めており、残りは広告収入とSNS上の楽曲使用等に由来するが、SNEPでは、TikTok上の楽曲使用が大量であるのに適正な収入が確保されていないと問題視。この問題では、大手ユニバーサルがTikTok上の楽曲使用を禁止して係争を起こしている。 KSM News and Research -
2024.03.13
デカトロン、新たな経営戦略を発表
仏スポーツ用品大手デカトロン(ミュリエ一族傘下)は3月12日、新たな経営戦略を発表した。同社は世界70ヵ国以上で1700店(従業員総数は10万人)を展開する総合的なスポーツ用品販売会社だが、特にコスパの良いPB商品が人気で、100前後の種目をカバーする70種類超のPBを保有している。新戦略では、「デカトロン」を、ナイキやアディダスと並ぶような世界的ブランドに成長させることを目指す方針で、ロゴマークなども刷新した。コスパの良い製品を通じてスポーツの敷居を下げるという従来のイメージを維持しつつ、高いパフォーマンスを求めるアスリートや、ファッション性を求める利用者のニーズに対応する商品の投入にも取り組む。 ブランドイメージの明確化に向けて、林立状態のPBを抜本的に整理し、9種類の「スペシャリスト」ブランドと4種類の「エキスパート」ブランドに絞り込む。前者はQuechua(登山、ハイキング、キャンプなど)をはじめとして、主に一般利用者向けのPBで構成。後者は、Van Rysel(ロードバイク)、Simond(登山)、Kiprun(ランニング)、Solognac(狩猟)の4ブランドで構成され、よりハイレベルの利用者向けという位置づけ。「エキスパート」ブランドはデカトロンの店舗以外でも販売し、各部門での高級ブランドと競わせることを目指す。また、購入商品に関連した情報・アドバイスの顧客への提供など、サービス面も強化する。 経営戦略では温室効果ガス排出削減も課題とし、直接・間接の排出量(スコープ1、2、3)を2026年までに20%、2030年までに42%削減し(比較対象年は不明)、2050年にはネットゼロを達成することを目標に掲げた。特に製品の再利用や生産の脱炭素化などを通じた削減を予定している。 KSM News and Research -
2024.03.13
コルシカ島の自治権強化に関する憲法改正案巡り基本合意
ダルマナン内相は12日未明、コルシカ島議会の政治勢力との間で、コルシカ島の自治権強化を盛り込んだ憲法改正案を巡り基本合意に達したと発表した。 内相の説明によると、共和国の内部においてコルシカ島に自治に関する地位を認める旨が明文化され、共和国は、歴史、言語、文化に根差す独特のコミュニティにかかわるコルシカ島、また、地中海の島嶼であるコルシカ島の独自の利益を考慮することを約束する。さらに、本土で有効の法令を修正する権利をコルシカ島議会に認める。ただし、法令修正が認められる分野については、憲法付帯法の定めるところに従う旨が定められる。内相によると、都市計画や不動産などの法令が修正対象として認められるが、修正は、共和国の基本的自由を尊重するものであることが条件となる。内相は具体的に、不動産を所有できる権利者を制限する(コルシカ島民のみにするなど)ようなことは認められないと言明した。内相はまた、法令の修正に当たっては、行政最高裁(コンセイユデタ)による事前審査を必要とし、憲法評議会による違憲審査の対象ともなると説明した。 憲法改正案においては、「コルシカ人民」という概念は採用されず、コミュニティという言葉が用いられた。また、コルシカ語を島の公式言語とすることも盛り込まれなかった。ダルマナン内相は、共和国の下で2種類の市民がいるという状況は許されないと言明。コルシカ島の分離も認められないと述べた。憲法改正案は、コルシカ島議会の正式承認を経て、上下院のそれぞれで採択の上、両院合同会議で5分の3以上の賛成を得られれば発効する。内相はその時期については、マクロン大統領が決定すると述べた。コルシカ島自治強化を巡っては政界内の反発が根強くあり、国会審議で賛成が得られるとは限らない。 KSM News and Research -
2024.03.12
スペイン政府、労働時間短縮を計画:反発も
スペイン政府は労働時間の短縮と就労時間帯の見直しを計画している。感情的な反発も生じている。 左翼政党Sumarに所属するディアス労相は、週労働時間数を現行の40時間から2025年に37.5時間へ引き下げることを目指している。賃金水準を維持しつつ労働時間の短縮を実現する計画。公務員部門で導入済みの労働時間と横並びになる。労相はさらに2032年までに週32時間労働制への移行の実現を目指しているが、労働時間の短縮には消極論もあり、サンチェス左派政権に協力する地方主義諸政党の賛成を確保することが鍵になる。 ディアス労相は、就労時間帯の見直しにも意欲を示しているが、こちらはさらに反対論が根強い。労相は、「20時に会議を開くとか、飲食店が午前1時まで開いているのはまともではない」と言明、就労者の生活水準の向上という観点から就労時間帯の規制を目指している。ただ、スペインでは、他の近隣諸国と比べて就労時間帯が大きくずれており、習慣上の理由からそれに愛着を示す人も多い。スペインでは、フランスを含むより東側に位置する諸国と同じ子午線を採用している関係から日没の時間が遅く、それもあってか就業時間が遅くに偏る傾向がある。昼休みは14時から16時で、19時以降も勤務を続ける人が全体の30%近く、21時以降も10%近くと多い。それにあわせる形で飲食店も遅くまで営業しており、欧州の近隣諸国とは状況が大きく異なる。これをナイトライフの充実であり国の誇りとみなす向きもあり、就労時間の規制には抵抗も多い。宿泊・飲食業界団体は事業機会を失うことを恐れて規制に反対しており、保守勢力や極右勢力もディアス労相の姿勢を厳しく批判している。 KSM News and Research -
2024.03.12
管理職の67%がリモート就労:懸念もあるが肯定的に評価
新型コロナウイルス危機時にリモート就労は大きく普及し、現在ではすっかり定着した。管理職雇用協会(APEC)の調査によると、管理職のうち67%が、週に1日以上はリモート就労をしていると回答した。就労者全体に占めるこの割合は2022年に19%(INSEE調べ)となっており、管理職での普及ぶりがうかがわれる。ただし、リモート就労のデメリットに対する意識も高まっている。39%の管理職が、リモート就労のために重要な情報を得ることができなくなる懸念があると回答。35才未満の層に限るとこの割合は50%に達した。昇進や増給の機会を逃すという懸念もある。米国の調査によると、リモート就労者は通勤者に比べて31%も昇進のチャンスが減るという。フランスでの別の調査によると、8割の企業が、ハイブリッド就労はキャリアの展望を損なう恐れがあると回答している。それでも、管理職の69%は、全体としてみるとリモート就労には不都合よりも利益の方が多いと回答。「使用者がリモート就労を廃止するなら転職を考える」と答えた人も45%に上った(35才未満に限ると57%)。 KSM News and Research -
2024.03.12
商業不動産見本市(MIPIM)が開幕
カンヌ市で12日に商業不動産見本市(MIPIM)が開幕する。15日まで開催される。市況が優れない逆風の中での開催となる。 BNPパリバ・レアルエステートの集計によると、2023年に商業不動産への投資額は140億ユーロ程度にとどまった。2020-22年には年間で280億-290億ユーロに達していたが、2023年には急速に減少した。賃貸物件は全体的には比較的堅調に推移しているが、物件により状況はかなり異なり、都市部の中心に位置するオフィス物件に需要がシフトし、周縁部にある物件は需要が後退している。 その背景にはまず金利の上昇がある。金利上昇に伴い投資資金の確保が困難になり、プロジェクトが冷え込んでいる。それに加えて、オフィス需要そのものが様変わりしたことが大きい。新型コロナウイルス危機を経て、リモート就労が本格化したことから、オフィスの需要はぐずついている。中心部の物件は利便性から需要が大きく、空いた物件には郊外から企業が移転してくるが、そうして空いた郊外の物件の需要は途絶える。2023年末時点で、パリ首都圏には476万平方メートルの空き物件があるというが、実際にはそれ以上の規模とみる向きもある。 KSM News and Research -
2024.03.11
イスラム教の断食月、3月11日に開始
イスラム教の断食月であるラマダンが3月11日に始まった。10日に正式発表された。4月9日頃に終了する見通し。 ラマダンは陰暦を用いるため毎年少しずつ開始が早まることになる。開始時期は国ごとに、宗教関係者らが月などの観測を行い決定する。終了日も直前に観測結果を踏まえて決定される。フランス国内のイスラム教徒の数は500万人程度とされており、戒律によると、日の出から日没までの飲食が禁止される。 ルモンド紙によると、ラマダンの断食は若い世代ほど熱心に取り組む傾向がある。子どもは12-15才から開始することになっているが、それよりも早く始める子どもも少なくない。正式な調査はないが、25才未満の層で最も遵守率が高く、年齢層が高くなるにつれて遵守率は低くなる傾向があるという。グループへの帰属意識と、グループ内で卓越した者になりたいという功名心や競争心から、遵守に特に熱心になると考えられる。世代的な違いが作用している可能性もある。移民第1世代においては、フランス社会への帰属を示す意味もあり、自己主張が控え目だが、第2世代以降は、自身をフランス社会の一員であるのが大前提で、その上で自己主張の手段としてラマダンを捉え、熱心に遵守するのだという。この時期にコーランを読むなど、精神性の探求を志向する者も多い。 KSM News and Research -
2024.03.11
政府、住宅断熱リフォーム援助制度の見直しに応じる
政府は8日、住宅の断熱リフォーム援助制度「MaPrimeRenov’」の見直しを決めた。施工業界団体CAPEBとの協議を経て見直しに応じた。 同援助金制度は年頭に改正されたが、それ以来で申請数が40%の大幅減を記録しているといわれる。制度改正は、支援対象を、複数の工事を一元的に行う場合に限定した上で、援助額については増額するという趣旨だったが、改正を経て申請が急速に後退した。例えば、改正を経て、MARと呼ばれる有資格のアドバイザーに依頼することが条件として求めらるようになったが、MARの資格を有する当業者が少なく、ボトルネックが生じるなど問題があった。業界側では、需要急減で業界の存続が危ういと政府に働きかけ、政府も見直しに応じた。 政府は今回、1項目のみの工事も援助金支給の対象に戻すことに応じた。窓の断熱工事については年末まで認める。暖房装置のみの工事については、今年夏まで認められていたが、これを年末まで認めることに改めた。MARアドバイザーの不足については、養成と認定の方法を見直して早期に確保を図る。また、申請の手続きも簡素化を決めた。 KSM News and Research -
2024.03.11
マクロン大統領、「生命の終わり」法案の骨子を公表
マクロン大統領は10日、日刊紙のリベラシオンとラクロワとのインタビューの中で、「生命の終わり」に関する法案の骨子について説明した。4月に閣議決定し、国会審議を開始すると予告した。 安楽死の是非を含む「生命の終わり」に関する法案の策定は、2022年の大統領選におけるマクロン大統領の公約だった。市民が参加する協議会の結論は1年前に出ていたが、対立も多い案件であることから、大統領は法案策定を遅らせて各方面からの意見聴取を続けていた。それがようやく終わり、法案策定が完了する段階に入った。 法案は、ターミナルケアを拡充する一方で、「死を助ける」可能性に道を開く内容となる。ターミナルケア病棟がない21県にこれを新設し、支援体制の強化のために10年後をめどに10億ユーロの予算を設定する。「死を助ける」可能性については、安楽死や自殺ほう助という言葉は使わず、一定の条件下で、自ら死を選ぶ人に手段を与えることを可能にする規定が盛り込まれる。成年で十全な判断力を備えた人(認知症患者は除外)について、短中期的に死に至るのが確実で、軽減の可能性がない苦痛が伴う人に、本人による申請を経て致死性の医薬品を提供できるようにするという趣旨。医療スタッフによる承認が必要であるなど縛りが多く、現実的ではないとする批判の声も既に上がっている。法案の国会審議は難航も予想される。 KSM News and Research -
2024.03.08
仏主要労組CGT、パリ五輪開催中の公務員ストを予告へ
仏主要労組CGTのビネ書記長は3月7日、国営ラジオ「フランス・アンフォ」とのインタビューで、7月27日にパリで開幕する五輪の期間を対象に公務員ストを実施する予告を、4月初旬に正式に提示すると言明した。書記長は、五輪開催中には公務員の超過勤務や、地方勤務者の長期出張による人員補強などがなされるが、政府はそれに伴う十分な対応を準備していないと主張。書記長は12日にゲリニ公務員担当相と面会し、動員される公務員のための託児の確保、長期出張の公務員の住居問題、発生する費用の負担の問題などについて解決を求める予定。さらに、動員されるすべての公務員への賞与の支給を求める意向。 警察官に関しては1900ユーロ以内の追加手当支給が決まっている。医療分野では、パリ首都圏の公立病院を統括するAP-HPの職員に対して、休日出勤や超過勤務の手当として、1200ユーロから2500ユーロの賞与が支給される。 2月末、パリ五輪組織委のエスタンゲ委員長は、五輪開催中の労働争議の「休戦」を呼びかけたが、CGTは、RATP(パリ交通公団)で9月9日までという長期を対象とするスト予告を、労組シュッド・ソリデールは消防部門で開催期間中を対象とするスト予告を提示している。 KSM News and Research -
2024.03.08
パリ株式市場CAC40指数、初めて8000ポイント台に
パリ株式市場CAC40指数は2日、初めて8000ポイントを上回った。同日の取引中に史上最高値の8029.37ポイントを記録。終値は前日比0.77%高の8016.22ポイントとなり、終値も初めて8000ポイント台に乗った。 CAC40指数は2021年11月に7000ポイント台に乗った。それから2年余りで8000ポイント台まで上昇した。株価上昇は世界的な傾向だが、パリ市場は欧州諸国と比べても特に上昇率が大きい。足元の企業の業績発表が軒並み良好であることが材料になっている。仏大手企業は、コロナ危機からウクライナ情勢に至る混乱の中で、コスト節減の取り組みを成功させており、それが株価を押し上げる材料となっている。CAC40指数の構成銘柄のうちトップ3社は高級ブランド関係が占めており、時価総額はLVMHが4175億ユーロ、エルメスが2398億ユーロ、ロレアルが2343億ユーロに上る。 これとは別に、欧州中銀(ECB)は同日に定例理事会を開き、金利の据え置きを決めた。決定は予想通りで、株価の推移に悪影響は及ぼさなかった。欧州中銀は、ユーロ圏のインフレ率予測を、2024年に2.3%、2025年に2%、2026年に1.9%とし、これまでの予測を下方修正した。ユーロ圏の経済成長率予測も、2024年に0.6%、2025年に1.5%、2026年に1.6%とし、やはり下方修正した(2024年予測は12月時点で0.8%)。市場は欧州中銀が利下げに転じるタイミングを窺っている。 KSM News and Research -
2024.03.08
Qonto、Regateを買収
仏Qonto(ネオバンク)はこのほど、仏Regate(フィンテック)を買収すると発表した。買収額は未公表。 Regateは2020年の設立。零細・中小企業向けに財務・会計管理の一元的なソリューションを提供している。1万社を顧客としており、従業員数は100人程度。これまでに2700万ユーロの資金調達を行ったが、主要な出資者となったValar Ventures(著名投資家ピーター・ティール氏のファンド)は、Qontoの出資者でもある。 Qontoは、やはり零細・中小企業と自営業者向けにカード決済と請求書発行等のソリューションを提供している。顧客は45万社を数える。従業員数は、Regateの買収を経て1500人に増える。Regateの統合によりサービスの強化を図る。Regateにとっては、Qontoの進出先であるドイツ、スペイン、イタリア市場での足がかりが得られる。 仏フィンテック業界は再編期を迎えており、今後数年間で企業買収が増えるものと予想される。Qontoは2022年に4億8600万ユーロの資金調達を実施しており、資金力では優位に立てる。収支は公表されていないが、2023年には50%の増収を達成した。 KSM News and Research -
2024.03.07
M6、ストリーミングサービス「M6+」を5月半ばに開始へ
仏民放大手M6がストリーミングサービス「M6+」を5月半ばに開始する。キャッチアップTVサービス「6play」を後継し、同様のサービス「TF1+」を開始した民放最大手TF1を追撃する。 民放テレビ局にとって、成長が著しいストリーミングサービスの需要を取り込み、インターネット大手等との競争に勝ち残ることが課題となっている。M6は、サッカー欧州選手権(ユーロ2024)が始まる直前のタイミングでストリーミングサービスをリニューアルし、認知を高めることを狙う。次回のサッカーW杯の無料放送枠の入札では、TF1を抑えて単独で獲得する見通しであり、ここにもコンテンツ拡充に向けた意欲が現れている。 テレビ局の広告収入にストリーミング配信が占める割合は既に7%程度に達しているという。M6は、ストリーミングで2023年に7400万ユーロの収入を達成したが、2028年には広告収入に占めるストリーミングの割合を20%に引き上げ、年間2億ユーロの収入を達成する方針で、「M6+」はその達成に向けた要になる。投資額は、2024年に4000万ユーロを予定。その後、段階的に引き上げて、2027年時点では年間1億ユーロとする。ストリーミング専用のコンテンツを用意し、全体の3分の1に当たる1万時間分をストリーミング専用とする方針。人工知能(AI)を活用した検索エンジンなどサービスも充実させる。 KSM News and Research -
2024.03.07
ルメール経済相、2023年の財政赤字の膨張(対GDP比4.9%超)を予告
ルモンド紙は6日付でルメール経済相のインタビューを掲載した。経済相はこの中で、100億ユーロの節減を先に決めたことについて、緊縮というにはほど遠く、景気の腰を折る懸念はないと説明。公的支出が対GDP比で58%に相当する4960億ユーロに上ることを挙げて、100億ユーロという節減規模は、健全な財政運営を目指す適正なものだと強調した。経済相はその上で、税収が減少しており、2023年の財政赤字の対GDP比は当初予定の4.9%を明確に上回ることになると予告。その意味でも適正な節減を実施することは不可欠だと説明した。100億ユーロの節減は第1段階で、次いで必要ならば第2段としてこの夏に補正予算法案を提出すると説明。第3段として、2025年予算法案には120億ユーロ以上の節減を盛り込むと予告した。なお、カズナーブ予算担当相やルメール経済相は、6日の国会聴聞では、2025年予算法案における節減規模を200億ユーロ以上と言明した。 経済相はそれとの関係で、構造改革を進める必要性を強調。アタル首相が予告した失業保険制度の改革を支持し、現在は労使共同運営が建前の失業保険を国の責任下に置いて調整を図るべきだとの考えを示した。行政手続きの簡素化については、行政手続きの各種書式を2030年までに全廃すると言明。現在は1800種(うち1200種は企業が対象)があるが、2026年までに8割の書式について、所得申告のように当局により記入済みのものに改めて手続きの簡素化を図り、その後に書式そのものを廃止するとした。また、全7000条と肥大化した商法典の抜本的な見直しを図り、2027年までにボリュームを半分に減らすと約束した。財政収支については、現政権が任期満了を迎える2027年時点で、対GDP比3%以内を達成し、次いで2032年に赤字解消を目指す考えを示した。収支改善は増税によらずに実現するとし、中産階級向けの減税の公約と、法人向けのいわゆる「生産に係る税」の減税の実現にも意欲を再確認した。 KSM News and Research -
2024.03.07
フランスの新ユーロセント硬貨、デザインが公表に
仏政府はこのほど、新しいユーロ硬貨のデザインを公表した。10ユーロセント、20ユーロセント、50ユーロセントの3種を新しいデザインに切り替える。今年夏までに流通を開始する予定。 ユーロの硬貨はユーロ圏の加盟国がそれぞれ鋳造する。金額を刻印した面が全加盟国共通で、もう一方の面が各国の独自のデザインとなっている。2002年のユーロ貨幣導入以来で、フランスはデザインを変更していなかったが、1ユーロ及び2ユーロ硬貨については2022年年頭より新たなデザインの硬貨の流通を開始していた。今回、黄色の硬貨3種(10、20、50ユーロセント)でもデザインを変更した。 現行デザインは、種を播く女性という硬貨において伝統的なモチーフを用いており、3種のすべてで共通となっている。新デザインは、それぞれが歴史上の女性の肖像をあしらい、種を播く女性も中心からは外れる形で刻印されている。「フランス共和国」を意味する「RF」という文字と、欧州連合(EU)を表す12の星が入っているのは現在と変わらない。肖像は、10セントがシモーヌ・ベイユ、20セントがジョゼフィーヌ・バケル、50セントがマリー・キュリーで、いずれもパンテオン(共和国の霊廟)入りした女性たちとなっている。シモーヌ・ベイユはナチスの強制収容所で生き残り、厚相として妊娠中絶の解禁を実現した。ジョゼフィーヌ・バケルは、米国出身の黒人女性でダンサーとして活躍、第2次大戦中にはレジスタンス運動に加わった。キュリー夫人はもちろんノーベル賞を2回受賞した科学者。誕生日で降順に採用した。フランスのユーロ硬貨で実在の人物の肖像が用いられるのは、記念硬貨を除くとこれが初めて。 KSM News and Research -
2024.03.06
PMU、オンライン賭博業界団体Afjelに加入
オンライン賭博事業者の仏連合組織Afjelに馬券販売のPMUが加入した。3月4日付で正式加入が発表された。 PMUは場外馬券販売の独占事業者で、オンライン馬券でもフランスの大手。これまでAfjelへの加入は控えてきたが、方針を変えて、オンライン賭博業界によるロビー活動に加わることにした。加入に伴い、PMUのマルカーズドゥブレCEOはAfjelの副会長に就任。会長職にはベットクリックのベローCEOが再選された。 業界側は、賭博の社会的価値を強調し、依存症対策などの取り組みをアピールしている。納税により国の財政にも貢献していることも強調しつつ、共同戦線を敷いて政府や当局の動きに対応することを目指す。業界の当面の最大課題はオンラインカジノ対策で、業界側は、フランスでは禁止されているが、欧州諸国の多くで解禁されているオンラインカジノを不当競争と見据えて、しかるべき規制を導入するよう要求している。FDJ(宝くじ)によるKindred(スウェーデン)へのTOBも業界の関心事で、宝くじを独占するFDJが買収を通じてオンライン賭博事業に乗り込んでくることへの脅威論があるが、そのKindred(Unibetなどのブランドを展開)もAfjelに加入していることから、業界団体として提訴などには動きにくい状況だという。 KSM News and Research -
2024.03.06
男女の賃金格差、なお大きく残存
5日発表のINSEE統計によると、2022年の平均賃金では、女性の方が男性よりも23.5%低かった。年間所得で比べると、男性が2万6110ユーロ、女性が1万9980ユーロとなる。この格差は、パートタイム労働が多いなど、女性の労働時間が少ないことにも由来している。ただし労働時間を同じにして比較すると、男女間の賃金格差は14.9%と、かなりの規模で残存している。1995年以来では、男女の賃金格差(補正前)は10ポイントの縮小を記録。労働時間を同じにして比較した場合は7ポイントの縮小を記録した。これには、就労時間の増加と賃金の上昇の両方が貢献したが、それでも格差は依然として大きい。 賃金の格差は、職業や職種に男女で偏りがあり、女性が比較的に賃金の低い職業・職種に多く就いていることにも由来している。ただし、条件を同じ(同じ使用者の下で同じ職業・職種に就いており、労働時間が同じである場合)にしても、4.0%の格差が残存している。 家庭状況も賃金格差を発生させる要因になっている。母親と父親を比較すると、条件を同じにしても賃金格差は通常より大きくなる。子どもの数が増えるにつれて、格差はさらに拡大する。 KSM News and Research -
2024.03.06
EDF、パリオリンピックで再生可能エネルギー電力の供給を約束
仏電力大手EDFは、今夏に行われるパリオリンピック・パラリンピックに、公式のパートナーとして電力を供給する。同社は3月5日、大会において100%再生可能エネルギー由来の電力を供給するという約束を再確認した。 EDFは、8ヵ所の再生可能エネルギー施設(風力発電施設6ヵ所、太陽光発電施設2ヵ所)を選び、電力を供給する。再生可能エネルギー電力の供給にあたっては、通常「再生可能エネルギー由来電力保証」が販売され、それに応じた量の再生可能エネルギー由来電力が電力網に注入されたことを証明するが、EDFは発電と消費が時間的により正確に対応することを目指し、「TrackElec」と名付けられたブロックチェーンのツールを開発した。選ばれた施設において発電がなされ、それに対応する消費量が発生した場合に、直ちにその証明がブロックチェーン上に記録されるようにした。オリンピック・パラリンピックで消費される電力の8割は「TrackElec」により保証され、残りは、通常の再生可能エネルギー由来電力保証でカバーする。なお「TrackElec」は、Energy Web Foundationが開発した技術に基づいている。 EDFはまた、選手村や水泳競技会場に太陽光パネルや熱回収施設を設置した。 100%再生可能エネルギー由来の電力を供給するという約束は、パリがオリンピック開催に立候補した2015年に遡る。当時は、フェッセンアイム原子力発電所の閉鎖が決まるなど、原子力発電にとっては逆風が吹いた代わりに、再生可能エネルギーが追い風に乗っていた時代だった。 なお、パリオリンピック・パラリンピックにおいてEDFの配電子会社エネディスは1億ユーロを投資し、42ヵ所の会場と200ヵ所のパブリックビューイング会場の電力網への接続又は接続強化を完了した。ディーゼル発電機の使用を避け、排出量を削減する。 KSM News and Research -
2024.03.05
パリ18区にアフガニスタン通り、当局は警戒
日刊紙ルパリジャンは5日付で、パリ市内に形成された「アフガニスタン通り」について報じた。パリ五輪を前に当局が警戒を強めているという。 パリの北駅と東駅から発する線路に挟まれた細長い地区の中に位置し、メトロのラシャペル駅からマックス・ドルモワ駅までを結ぶ「マックス・ドルモワ通り」が、「アフガニスタン通り」と化しているという。この地区は歴代の移民街で変遷も激しい。現在は、道に面した店舗のうち21軒にアフガニスタンの旗が飾ってあり、所有者ではアフガニスタン人のほかに、スリランカ、ソマリア、パキスタンなどを数えるが、就労しているのは専らアフガニスタン人だという。路上ではたばこの密売などが横行しており、パリ五輪の会場となる「アディダス・アリーナ」が至近距離ということもあって、パリ警視庁は「整頓地区」に指定して、警戒と違法行為の摘発を進めている。地元18区のルジョワンドル区長(社会党)は、特定のコミュニティーを問題視するわけではないと前置きした上で、不審な点が多い店舗買収の案件がみられるとし、地検に通報を行ったことを明らかにしている。密売等の不正行為の資金が店舗買収で洗浄された疑いなどがあるという。 KSM News and Research -
2024.03.05
EU理事会と欧州議会、容器包装の規制で暫定合意
欧州連合(EU)理事会と欧州議会は3月4日、容器包装の削減・再利用・リサイクルのための暫定合意を成立させた。飲食店におけるプラスチック製の使い捨て容器包装が2030年から禁止になる。 EUの「グリーンディール」では域内の容器包装廃棄物を2030年までに2018年比で5%、2040年までに15%削減することを目標として定めている。また、2030年以降はすべての容器包装をリサイクル可能にして、2035年からは実際に大規模なリサイクルを行わなければならない。 今回の合意により、2030年1月1日以降、店内飲食用のプラスチック製使い捨て容器の使用は禁止されることが決まった。紙製・厚紙製の容器包装は引き続き使用可能。これ以外に、ホテルのソープ・シャンプー用ミニボトル、ソース類・砂糖などの少量個別包装、空港でのスーツケース保護用ラッピング、青果のプラスチック包装も禁止になる。衛生上の理由で用いられる場合などを除き、超薄型プラスチック袋も禁止される。また、リサイクル可能とするだけでなく、ECや家電、飲料など、さまざまな部門における容器包装の再利用に関する基準も定められた。ワイン製造と零細企業は対象外。 飲食店の容器包装をめぐっては、ファーストフード業界と製紙業界が、リサイクル可能な厚紙製容器包装の方が、プラスチックや、多くの水とエネルギーが必要になる再利用よりも環境にやさしいと主張して、激しい交渉が繰り広げられた。最終的に、テイクアウト用容器包装は再利用可能でなければならないとの条項は削除され、10%の達成に努めるとの形に収まった。ただし、飲食店側は顧客が持ち帰り用の容器を持ち込むことを認めなければならない。 このほかに、有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」を食品用容器包装材に意図的に加えることも2026年より禁止される。PFASは「永久に残る汚染物質」と呼ばれ、専門家らが有害性を指摘しているが、ピザの箱などに多用されている。 KSM News and Research -
2024.03.05
金権政治家パトリック・バルカニ氏、ビデオクリップ出演で「復帰」
保守政界の大物汚職政治家として知られるパトリック・バルカニ氏(75)がビデオクリップ出演で「復帰」した。あの悪びれない笑顔が戻ってきた。 バルカニ氏は1970年代より頭角を現し、後に大統領となるシラク(在任期間:1995-2007年)やサルコジ(2007-12年)の両氏ともそれぞれ関係を構築。パリ西郊ルバロワペレ市の市長として、また代議士などとして活躍した。最小支払い単位が500ユーロ札という噂もある豪快な金離れの良さで有名で、公私混同は甚だしく、脱税・資金洗浄等の容疑で有罪判決を受けて、2019年以降に数度にわたり、数ヵ月間に及ぶ収監生活を送ることとなった。2022年8月に出所し、現在は、ノルマンディーのジベルニー市に居住し、地元のルバロワペレ市に出ては支持者らに会う日々を送っているという。 バルカニ氏に出演を要請したのは、スター発掘番組出身の歌手アルノー・サンタマリア氏(Arno Santamaria)で、新アルバムの収録曲「C’est pas demain la veille(おととい来やがれ)」に出演した。サンタマリア氏が白と黒の衣装をそれぞれ着て扮した2人の男の抗争を仲裁に来る親分役で、「白黒などつけられるものじゃない。人生とは白でもあり黒でもあるんだ」と決め台詞を言って去って行く役回りとなっている。サンタマリア氏はルバロワペレ市在住で、カリスマとエネルギーのある分厚い人物をと考えて、バルカニ氏に出演を要請したと述べている。 KSM News and Research -
2024.03.04
極右RNのバルデラ党首、欧州連合(EU)の弱体化を視野に
極右RNのバルデラ党首は2月29日、6月9日に投票日を迎える欧州議会選挙に向けて、党の欧州政策について公表した。欧州連合(EU)の弱体化を図る政策を打ち出した。 RNは国家主義と反欧州を旗頭としており、以前はEUからの脱退を公約に掲げていた。現在はそうした尖った政策が有権者離れを招かないようにする目的もあり、EU離脱という言葉を避けつつ、仕分けをして一部の政策には従わず、独自路線を歩むという方針を示した。留学制度や消防協力などは維持、域内の人の往来の自由については、EU市民以外の外国人について制限措置を適用するといった展望を示している。EU条約を改正し、EUを自由な主権国家の協力組織に改め、案件ごとに協力に参加するか否かを決めることができるようにするとし、EUを離脱した英国も参加できるような枠組みにするなどと説明した。 極右RNは前回の欧州議会選でも第1党となっており、今回の選挙でも、世論調査で与党勢力に大きく差をつけている。欧州連合(EU)が統合強化に向けた勢いを失っている中で、フランスを含む各国の反欧州勢力が台頭すれば、EUの今後にとって脅威になる。 KSM News and Research -
2024.03.04
大西洋岸で海鳥が大量死、悪天候が原因か
大西洋岸で海鳥が大量死するケースが報告されている。悪天候が続いたことが原因とみられている。 当局機関OFBの集計によると、年頭以来で400羽を超える海鳥が、ブルターニュ地方からスペインとの国境までの大西洋岸にて死体で発見された。うち150羽が2月末に集中している。特に、ウミガラスで被害が多く、各種のカモメの被害も報告されている。 検査の結果、鳥インフル等の感染症の被害ではないことが判明しており、死には至らずに保護された個体も含めて、衰弱が激しいことが確認されている。通常なら体重が900グラム程度であるのに、600グラム程度まで痩せており、解剖では消化器内が空であることから、捕食ができずに死んだ可能性が高い。このような衰弱死は悪天候の際に増えることが知られている。正確なシナリオは不明な点も多いが、悪天候時には、通常よりも体力を酷使し、カロリーの消費が著しいのに、その一方で、餌となる魚などが悪天候の影響で少なくなり、衰弱が進むのだという。このところは暴風雨がかなり頻繁に続いたことで、影響が増幅された可能性がある。こうした大量死は過去にも発生の例があり、例外的とは言えないが、気候変動に伴う影響で頻度や規模が拡大する可能性もあり、識者らは警戒が必要だとみている。 KSM News and Research -
2024.03.04
格安TGVの仏ケビン・スピード、参入に向けて運行枠を予約
格安高速鉄道を目指すスタートアップ、ケビン・スピード(Kevin Speed)は2月29日、仏鉄道インフラを監視するSNCFレゾー(国鉄SNCF子会社)との間で国内3路線での高速鉄道(TGV)運行を開始するための枠組み合意に調印した。運行開始から10年期限(更新可)の契約を結ぶことを取り決めた。 ケビン・スピードは2028年末からパリ・リール、パリ・ストラスブール、パリ・リヨンの3路線でTGVを運行する計画。合計で途中駅6駅にも停車する。SNCFレゾーは、貨物輸送関係ではこうした運行枠付与の保障を与えた実績があるが、旅客輸送では今回が初めてとなった。今回の合意により、開業に必要な約10億ユーロの投資資金の調達に弾みがつくことが期待される。同社はすでに公的金融機関BPIフランスから融資を取り付けている。 将来的には各路線で1日16往復を運行する計画で、1路線につき年間600万人の利用者達成を目指す。補助金を得ずに事業を成立させる方針。利用回数が増えるほど料金が安くなる方式の顧客定着戦略を採用する。将来的には20本の列車が必要となるが、開業時には各路線3本で開始する。サービスの商標は「ilisto」、列車はアルストムから新造にて調達する予定で、アルストムは保守も担当する。1階建て車両で定員760人を実現し、最高時速は300キロ、各駅での停車時間を減らすため乗り口と降り口を分けて設置する。 同社は、TGV路線と並行する高速道路を利用する自家用車(現在は旅客輸送量の80%超を占める)から旅客を鉄道に引き寄せることを目指している。自家用車の台数を3%減らすためには、列車の座席数を25%増やす必要があるとして、参入を正当化した。 KSM News and Research -
2024.03.01
対仏直接投資、2023年にも堅調に推移
大統領府は2月29日、2023年の対仏直接投資の誘致実績に関する集計結果を公表した。1815件の投資案件が決定され、その雇用創出・維持の効果(今後3年間)は5万9254人に上った。前年の実績(1725件・5万8810人)を上回った。ただし、集計方法は2023年から変更されており、従来なら合算されなかったデジタル化と脱炭素化の122件が今回の集計では追加されている。 投資国別では、米国が件数で全体の17%、雇用数では29%を占めて最も多かった。欧州諸国は合計で、件数の65%、雇用数の56%を占めた。ドイツ(件数で14%)、英国(同9.5%)、ベルギー、イタリア(共に7%)が多い。投資の種類別では、854件が企業設立、823件が既存拠点の拡張、などとなっている。公的投資プラン「フランス2030」における重点分野を対象とした投資案件も全体の31%を占めて多かった。工業部門では、自動車・自動車部品、保健、機械、食品加工への投資が目立った。人口2万人未満の市町村への投資が全体の半分近くを占めており、対仏直接投資は国土整備の観点からも貢献が大きい。 KSM News and Research -
2024.03.01
2月のインフレ率、2.9%まで減速
29日発表のINSEE統計によると、仏消費者物価指数は2月に、前年同月比で2.9%上昇した。前月の3.1%から低下した。食品、工業製品、サービスで価格上昇の勢いが鈍化したが、エネルギーは逆に上昇の勢いが加速した。消費者物価指数は前月比では0.8%の顕著な上昇を記録。エネルギーが、電力料金の引き上げの影響で大きく上昇したほか、家賃や交通費を中心にサービス料金の上昇が目立った。欧州連合(EU)基準によるインフレ率(前年同月比)は3.1%となり、前月の3.4%からやはり減速した。 INSEEは同日に、10-12月期のGDP統計の詳細も発表した。同期の経済成長率(前の期比)は0.1%となり、速報値の0.0%がわずかに上方修正された。個人消費支出は前の期並みとなり、0.5%増を記録していた前の期から減速が目立った。固定資本形成は全体で前の期比0.9%減と、0.2%増を記録していた前の期から後退に転じた。企業設備投資が0.9%減と減少に転じ(前の期は0.3%増)、家計投資(主に住宅)は1.4%減と後退幅が大きくなった(前の期は1.1%減)。外需はGDP成長率を0.9ポイント押し上げて貢献したが、内需(在庫変動除く)は0.1ポイントのマイナス貢献となった。在庫変動も0.7ポイントのマイナス貢献となった。 KSM News and Research -
2024.03.01
ネクシティ、人員削減を計画:住宅販売の不振で業界全体にも影響
仏不動産大手ネクシティは28日、従業員代表との会合の機会に人員削減計画を開始する方針を伝えた。新築住宅の販売不振に対応してコスト削減を図る。 ネクシティは2023年に43億ユーロの売上高を記録。これは目標に沿った数字だが、新築住宅の購入申し込みは2023年に件数で19%、価額では24%の大幅減を記録。成約数も30%の後退を記録した。会社側は、困難な市況で販売を支えるにはコスト削減以外に道はないと説明している。人員削減の規模や方法については4月半ばに提示される。ネクシティの従業員数は8200人で、開発・建設の従業員数は3000人。同部門では既に、採用取りやめなどで従業員数を1年間で350人絞り込んでいる。人員削減計画は、同業のバンシ・イモビリエが1月半ばに予告、ブイグ・イモビリエも、14%の減収を背景に人員調整の必要があることを認めている。大手開発業者の事業が冷え込むと、業界の下請け企業の雇用に影響が波及する恐れが強まる。 なお、29日に発表の公証人統計によると、中古住宅の取引価格は10-12月期に前年同期比で4%の低下を記録。集合住宅(4.1%低下)と一戸建て(3.8%低下)のいずれでも低下を記録した。地域別では、パリ首都圏で6.9%の低下と、特に後退が目立った。 KSM News and Research -
2024.02.29
妊娠中絶の権利を保障の憲法改正案、上院を通過
上院は28日、妊娠中絶の権利を憲法において明文化するための憲法改正法案を賛成多数で採択した。政府は3月4日に両院合同会議を招集、この機会に改憲法案が最終的に可決される見通しとなった。憲法における妊娠中絶の権利の明文化は世界でも初めて。 上院で多数派を占める保守・中道勢力内には、この憲法改正を不要だとして反対する動きがあった。規定により、上院と下院が同じ文言で改憲法案を採択しない限り、両院合同会議の招集には進めないことになっており、上院が改憲に協力するかどうかは不確かだった。上院で法案説明に立ったデュポンモレティ法相は、差し当たり人工中絶の権利がフランスで脅かされているということはないが、諸外国の例を見る限り自明とは言えないとし、フランスが内外に明確な意思表示をすることの重要性を強調。数日前に、ニュース専門地デジテレビ局のCNewsが、「妊娠中絶の死はがんとたばこと同じ」などと報じた(局側は後に謝罪)ことを引き合いに出して、フランスにも脅威はあると言明。さらに、改憲は、妊娠中絶の権利の拡大を目指すものではなく、権利の保護を目的としたものだと説明し、慎重派を説得した。投票では、「女性が人工中絶を利用する権利を保障する」との内容の改憲法案が、賛成267、反対50で採択された。保守野党の共和党でも、賛成が72票、反対が41票となり、賛成が反対を上回った。 3月4日に開かれる両院合同会議では、上下院議員の5分の3の賛成を以て改憲法案が採択される。上下院の賛成票の数をみる限り、法案の可決成立は確実とみられる。 KSM News and Research -
2024.02.29
仏政府、ベジタブルミートの品名規制を導入
仏政府は27日付で、ベジタブルミートの品名規制に関する政令(デクレ)を公示した。農民による抗議行動が目立つ中で、畜産業界の要求に沿った規制を導入した。 政令はまず、21種の品名のリストを示し、植物性たんぱく質を含む製品への使用を禁止した。禁止対象の品名には、「ステーキ」や「ハム」などが含まれる。政令はさらに、100種程度の肉類加工品の品名のリストを示し、品目により植物性たんぱく質の含有率の上限(0.5-5%)を設定。上限を超える製品について、リスト内の品名の使用を禁止している。こちらには、「ベーコン」、「ナゲット」、「ソーセージ」といった品名が含まれる。禁止措置が適用されるのは国産品に限られ、輸入品については引き続き、肉類の伝統的な呼称の使用が認められる。また、1年間の移行期間が設定され、その間は在庫の販売が引き続き認められる。 呼称制限を導入する政令は、2022年6月に既に公示されていたが、これは反対派による提訴を経て、行政最高裁(コンセイユデタ)により無効化の仮処分が下っていた。この訴訟の本件審理は継続中で、行政最高裁は欧州司法裁判所の判断を仰ぐことを決定。欧州司法裁の判断は2024年中に下る予定で、新たな政令についても提訴の対象となる可能性がある。ベジタブルミートの国内メーカーらは、環境配慮で肉類代替品へのシフトを進めるべき時であるのに時流に逆行していると主張、輸入品が規制の対象外であることも問題視している。 KSM News and Research -
2024.02.29
LVMH、写真週刊誌パリマッチの買収で独占交渉を開始
ラガルデール・グループ(メディア大手ビベンディ傘下)は27日、2023年の業績を発表した機会に、芸能・写真週刊誌「パリマッチ」の売却に向けて、高級ブランド大手の仏LVMHと独占交渉を開始したと発表した。 パリマッチの有料発行部数は2023年に平均で45万部程度となっており、前年比で6%の減少を記録した。ラガルデールは、メディア事業としてはこのほかに、日曜紙のJDDやラジオ局(ヨーロッパ1、RMCなど)を保有。それぞれの収支は公表していないが、パリマッチは黒字であるという。他方、LVMHは、メディア事業としては、経済紙レゼコー、日刊紙ルパリジャン、ラジオ・クラシック、各種週刊誌(芸術、歴史、投資関係など)を保有している。 ラガルデール・グループは、2020年から投資ファンドのアンバーに揺さぶりをかけられ、続いてビベンディの買収攻勢にさらされ、結局買収を受け入れたが、この期間を通じてLVMHのアルノーCEOはラガルデール・グループとそのCEOのラガルデール氏の支援を続けた。その縁もあり、LVMHはラガルデール・グループの8%株式をまだ保有している。ラガルデール・グループは2023年にトラベルリテール事業が好調で、全体で14%の増収(売上高81億ユーロ)を達成。出版部門(アシェットなど)は1.9%の増収(売上高28億ユーロ)を達成した。これに対してメディア部門は苦戦が続いており、3%の減収(売上高2億5400万ユーロ)を記録。2600万ユーロの赤字を出していた。 KSM News and Research -
2024.02.28
アタル首相、失業手当の支給条件厳格化を示唆
アタル首相は27日、民放ラジオ局RTLなどとのインタビューの中で、失業手当の支給条件を厳格化する方針を示唆した。UNEDIC(失業保険管理機関)を共同運営する労使に交渉開始を求める考え。 アタル首相は、「働かないよりも働く方が多くを得られるようにする」という原則を掲げて、制度の再修正が必要との見解を示した。首相は理由として、失業保険の収支が、黒字は続くものの当初見込みより悪化する見通しであることと、企業が相変わらず求人難に直面していることを挙げた。 失業保険については、2023年2月1日に発効した前回改革により、支給期間が短縮されたばかりだった。この改革では、景気拡大局面では支給期間を短く、逆に景気後退局面では支給期間を長くするという原則を導入。現時点で支給期間は、53才未満で18ヵ月、53-54才で22.5ヵ月、55才以上で27ヵ月と定められている。ルメール経済相は以前から、これを18ヵ月に一本化することを提唱していた。 労使は現在、年金改革により定年年限が2年間引き上げられることに伴い、失業保険制度を手直しするための交渉を行っている。この交渉は3月26日を期限とする。政府はこれが終了するのを待って、労使に新たな交渉開始を要請する見通しという。現行交渉の結果をどう扱うかなどについては不明な点もある。政府はその一方で、失業手当に係るCSG(社会保障会計の財源となる目的税で、所得に幅広く課税される)の増税(失業手当に係る税率は3.8-6.2%だが、これを給与所得並みの9.2%に引き上げる)も検討しているといい、こちらでは年間6億ユーロの税収を確保できる。政府は、中産階級向けの20億ユーロの減税措置の財源としてこれを充当する計画だとする報道もある。 KSM News and Research -
2024.02.28
パリ五輪、観光業界には期待外れか
2024年のパリ五輪は、パリの宿泊・飲食業界にとって期待外れに終わりそうな公算だ。現時点で五輪開会式のチケットがまだ売れ残っているが、パリ市内のホテルの予約状況も満室には程遠い。 2023年秋、ホテルや民泊型宿泊施設が、通常の4-5倍の料金で五輪期間の予約受付を開始し話題になったが、現在の提示価格はファッションウィークやエアショーといった大型イベント時並みに落ち着いてきた。パリ観光局によると、五輪期間中のパリ首都圏の宿泊料金は平均481ユーロで、通常の2倍ではあるが、過去に五輪を主催した他の都市の状況と変わらない。パラリンピック期間の宿泊料金はほぼ平常価格。客室稼働率も平年並みの60-70%と予想される。 例年、夏にパリを訪れる観光客の20-25%が外国人だが、今年はこれが10-15%に低下するとパリ市は見ている。その分観光施設の入場者数も減少する。フランス人観光客に比べて多くの支出を期待できる外国人観光客が減少する上、五輪の喧騒を避けてパリを離れるというパリ市民も多い。 飲食業者は、五輪期間中に開店するのが得策かどうかを真剣に考えている。開店を決めたものの予約が入ってこない。交通規制や渋滞で食材の配達が滞る恐れがある。テラス営業の時間延長や深夜営業の申請にパリ市が許可を出すかどうかが、鍵になるかも知れない。 KSM News and Research -
2024.02.28
マクロン大統領、ウクライナへの地上部隊派遣の可能性に言及
マクロン大統領は26日、パリで開いたウクライナ支援の国際会議の機会に、ウクライナへの地上部隊の派遣の可能性について言及した。大統領は、プーチン大統領のロシアが勝利することがあってはならないとした上で、ウクライナへの部隊の派遣について、コンセンサスはないが、今後の展望ということを考えた場合に、いかなる可能性も除外するべきではない、と言明。ウクライナ侵攻の開始当時には、武器は供与しないといった反応があったが、現在では状況は変化している、とも付け加えた。 大統領の発言の狙いは、ロシアの侵攻開始から2年を経て、厳しい状況にあるウクライナを支援する意志を明確に示し、ロシアをけん制することにあると考えられる。そのロシアは、部隊の派遣は派遣する国の利益にならない、との恫喝ともとれるコメントを発表。他の欧州諸国も消極的な姿勢を示し、部隊派遣の可能性をひとまず否定している。 フランス国内では、野党勢力が揃って大統領の発言を批判。保守野党の共和党は、「議会での審議を一切経ずになされた発言。熟慮の上の発言であるのか」(シオティ党首)と批判、社会党のフォール第一書記も、ロシアとの戦争は「狂気の沙汰」だとして、国会での審議と各政党の代表との会談を行うよう要求した。それぞれ伝統的にロシア寄りの立場で知られる極右RNと左翼LFI(不服従のフランス)も厳しく大統領を非難している。政府は沈静化を図る目的で、先にウクライナとの間で結んだ二国間協定の是非に関する議決の伴う国会審議を行うことを約束した。 KSM News and Research -
2024.02.27
カジノの再建策、パリ商事裁が承認
パリ商事裁判所は26日、民事再生の手続き下にある食品小売大手カジノの再建策を承認した。チェコの実業家クレティンスキー氏による経営権掌握に道が開かれた。 カジノは78億8000万ユーロの純負債を抱えて経営が行き詰まった。紆余曲折の末に、クレティンスキー氏が仏実業家のラドレドラシャリエール氏と結んでカジノを買収する再建案が浮上し、それが裁判所の承認を得た。カジノはこの決定に先立ち、中型・大型店舗網の大部分(288店舗)を同業オーシャン及びアンテルマルシェに売却。新生カジノは、都市部に展開する小型店舗(モノプリ、フランプリ、オーガニック食品販売のナチュラリアなど)を中心とした小売グループに生まれ変わる。今後、合計48億ユーロ相当の債務の株式への書き換えと、2度にわたる総額12億ユーロ以上の増資を経て、クレティンスキー氏らが経営権を掌握する。任命済みのフィリップ・パラジCEOの下で4月より新戦略の遂行が着手される。2024年のEBITDA目標は1億2400万ユーロで、2028年にはこれを9億2000万ユーロに引き上げることを目指す。 KSM News and Research -
2024.02.27
欧州議会選:マクロン大統領のルネサンス党、アイエール欧州議員を筆頭候補に
6月9日に投票日を迎える欧州議会選挙で、マクロン大統領のルネサンス党は、自党の筆頭候補として、バレリー・アイエール欧州議員(女性)を擁立する方針を固めた。マクロン大統領が決断した。近く正式に発表される。 アイエール氏は37才。かつては中道政党UDIに所属し、地元のマイエンヌ県で副議長を務めた後、2019年にマクロン大統領派として欧州議員に当選した。ルネサンス党が所属する自由主義派の「欧州刷新」の議員団団長職に、先頃アタル内閣に外相として入閣したセジュルネ氏の後任として就任したばかりだった。 マクロン大統領は、ルドリアン元外相に筆頭候補就任を打診したものの断られたといい、一般の知名度は低いが、アイエール氏の人選に落ち着いたという。同氏は農家の出身で、農民の抗議行動に揺れる状況の中で、支持挽回を狙える人材という期待も込められている。若い世代に属する女性である点もアピール材料になる。 欧州議会選挙は各国ごとに異なる選挙で行われ、投票日も多少異なる。フランスでは、全国を一つの選挙区として、各党の候補者リストに投票する完全比例代表制にて争われる。得票率5%以上のリストに全81議席が配分される。世論調査では、極右RNが27%の得票率でトップとなっており、ルネサンス(19%)に大きな差をつけている。RNは2019年の前回選挙でも第一党だった。以下、社会党(10%)、環境派EELV(8%)、保守「共和党」(8%)、極右「ルコンケット」(8%)、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」(7%)が続いている。 KSM News and Research -
2024.02.27
イリアッドとニエル氏、スウェーデンのテレ2に出資
仏イリアッド(通信フリーの親会社)とそのオーナーの実業家グザビエ・ニエル氏は26日、スウェーデンの通信事業者テレ2の19.8%株式を取得すると発表した。11億6000万ユーロ程度。テレ2の最大株主であるスウェーデンの投資会社Kinnevikが、保有株式の一部譲渡に応じた。 テレ2は1993年に発足。当時のいわゆる新電電として、本国のスウェーデンだけでなく、フランスを含む欧州諸国に幅広く進出した。欧州事業はそのほとんどが売却されており、現在は、スウェーデンとバルト3国の合計4ヵ国で、固定・携帯サービスとIPテレビ等のサービスを展開している。2023年の年商は290億スウェーデンクローナ(26億ユーロ)、従業員数は4400人。 イリアッドはフランスのほか、ポーランドとイタリアに進出している。ニエル氏はこのほかに、持株会社などを通じて、アイルランド(Eir)とモナコ(モナコ・テレコム)の通信事業者を保有、最近ではベルギー(Proximus)にも投資した。こうした出資先の事業も広く含むと、加入者数は5000万人、年商は100億ユーロを超える規模に達する。欧州における国際進出に積極的で、最近ではボーダフォンのイタリア事業の買収を試みたが、こちらは失敗に終わっていた。ウクライナの携帯事業者Lifecellの買収案件(5億ドル)も進めている。 KSM News and Research -
2024.02.26
農業見本市が開幕:農民の抗議行動で初日は大荒れ
パリ市内のポルトドベルサイユ見本市会場で24日、農業見本市が開幕した。農民らによる抗議行動の余波で、初日には大きな混乱が生じた。 マクロン大統領は同日に、恒例通りに開幕式を挙行したが、それを前に、会場の内外で抗議行動の農民らと治安部隊が衝突する場面があった。300人から400人のデモ隊が会場に押し寄せたとされる。6人が逮捕され、治安部隊員のうち8人が負傷した。大統領の序幕式は実施が予定より2時間半遅れ、大統領の会場訪問は一時、実現が危ぶまれたが、厳重な警戒態勢の下で行われた。至るところで大統領がブーイングを受ける場面もあり、予想通り荒れ模様の開幕となった。 大統領は、訪問に先立って農民らと2時間にわたり懇談し、農民らの要求に答えて見解を披露した。規制や手続き等の枠組みの簡素化や、農薬削減プランの実施方法の見直しといった、発表済みの措置について説明すると共に、農産品の価格最低限の導入に前向きの姿勢も示した。大統領は、設定した価格最低限に法的効力を持たせ、食品メーカーや小売業者等の需要家との交渉において実効ある形で生産者が依拠できるようなものとする考えを示した。 大統領は訪問時に、欧州からの離脱が解決になると農民たちに吹聴するものもある、などと述べて、農民の不満に付け入って集票を狙う極右RNを批判。そのRNのバルデラ党首は25日に農業見本市の会場を訪れ、農民らに向けて、国産品の優先を実現するために規則を改めるなどと約束した。6月の欧州議会選挙を前に、政治的な駆け引きも活発化している。 KSM News and Research -
2024.02.26
商店の外壁に花の装飾、パリ市議会が規制を検討
カフェなどの商店の外壁に花の装飾を配置する工夫が増えている。パリ市議会はその規制の検討に着手した。 外壁を花で飾る工夫は、インスタ映えが集客力の要となる昨今、世界的に増えており、フランスでも数年前から目立つようになった。新型コロナウイルス危機後の回復期には特に大きく増え、パリ市の調査によると、2023年4月時点で、パリ市内には325軒の商店がこの装飾を採用していた。うち、カフェ・レストランが220軒で特に多いが、インテリア店など他の商店にも広がりつつある。 パリ市議会では、先頃の審議で、その規制の是非を検討。イダルゴ市長(社会党)が率いる左派の議員グループは、パリの伝統的な美観を損ねるし、プラスチック製の造花は可燃性が高く、火災時に危険だとして、その規制を要求。MODEM(中道政党)も、プラスチック汚染を防止するためにも規制が必要との見解を示した。パリ市側は、業界側と協議を進めて憲章を策定し、ガイドラインを設ける方針を確認した。 KSM News and Research -
2024.02.26
反フランスのイスラム教導師がスピード追放
仏内務省は22日、反フランスの説法を行っていたことを理由に、南仏ガール県在住のイスラム教導師マジュブ・マジュビ氏を本国のチュニジアに送還した。先に施行された移民法の規定を利用した最初の送還となった。 マジュビ氏は、三色旗を悪魔の旗であるなどとして、神の下にいかなる価値もないと糾弾していた。この件で、マジュビ氏は、「三色旗」というのは「多色旗」の言い間違いであり、先に開催されたサッカーアフリカネイションズカップに寄せて、国家間の対立に終止符を打ち、神の国の到来を祈念するための言葉だったなどと釈明していたが、地元ガール県のボネ県知事(地方における国の代表者)は、マジュビ氏の発言は三色旗関係にとどまらず、女性蔑視やユダヤ人排斥主義を称揚するなど、共和国の価値を著しく毀損するものだったとして、国外退去処分を正当化した。 マジュビ氏は22日にガール県の自宅で逮捕され、パリの入管施設に送られ、そこから同日中にチュニジアに送還された。マジュビ氏は1980年代よりフランスに居住し、仏国籍の女性と結婚し、仏国籍の4人の子どもの父親となっている。2029年まで有効の滞在許可証を所有していた。このため、従来の制度なら、国外退去処分の執行は事実上不可能だったが、先に施行された移民法は、「共和国の諸原則に意図的かつ重大なやり方で違反する」外国人を国外退去処分とすることを認めており、この規定を利用した初めての事例となった。ダルマナン内相はこの件について、移民法の制定により迅速な送還が可能になったとして、政府の施策の成果を強調した。政府はまた、国外退去処分とは別に、マジュビ氏を「テロ称揚」の容疑で検察当局に提訴した。これに対して、マジュビ氏の弁護士は、退去処分の取り消しを求める行政訴訟を起こすと予告した。 KSM News and Research -
2024.02.23
欧州中銀、2023年に赤字
欧州中銀(ECB)は2023年に13億ユーロの純損失を記録した。2004年以来で初めての赤字となった。インフレ対策で金利を引き上げたことが逆風になった。 欧州中銀は2004年にも16億ユーロの赤字を記録していたが、この時は、当時のユーロの上昇が原因だった。今回は、2022年に開始した金利の引き上げの影響で、市中銀行の中銀口座における法定準備金等の預金に係る利払いが増加したのが響いた。その一方で、中銀が量的緩和で買い入れて資産としている国債等は、低金利時代のものであるため稼ぎが小さく、差し引き後で損失が拡大した。2022年にも同様の状況が発生しており、欧州中銀は16億ユーロの引当金を取り崩して損益均衡を達成していたが、今回は、取り崩し後でも損失を補填するには至らなかった。引当金の取り崩しがなかったら、純損失額は79億ユーロに上っていたという。 これとは別に、欧州連合(EU)は22日、新設予定のAMLA(資金洗浄・テロ資金対策機関)の本部をドイツのフランクフルトに置くことを決めた。欧州中銀の本部があるフランクフルトが選ばれた。 KSM News and Research -
2024.02.23
政府、医薬品不足の対策プランを公表
政府は21日、医薬品不足の対策プランを公表した。2024-27年の期間を対象に、在庫状況の情報共有を柱とした効果的な対策を目指す内容となった。 国内の医薬品不足はこの数年来、深刻さを増している。当局機関の集計によると、2023年になされた品薄・品切れの通報は前年比で30%を超える増加を記録している。政府は既に、重要医薬品450品目程度のリストを策定し、当局機関ANSMにその在庫状況等の把握を、製造から流通に至る各段階の当事者らから吸い上げて監視させている。この監視体制をさらに進めて、データを一元的に管理し、特に医師と薬局にアクセスを提供することで、上流から医薬品不足を回避する取り組みを進める。具体的には、医師がデータベースを参照し、不足傾向にある医薬品を可能な限り処方せず、代替医薬品の処方に切り替えることができるようにする。様々な状況に対応する代替医薬品のリストやその説明などの情報もあわせて提供される。 関係者らはこの対策を歓迎しているが、患者に対する情報提供(代替医薬品の副反応のリスクの情報など)が重要だとする声も聞かれる。レスキュール工業担当相は、医薬品不足を解消する最良の方法は、国内や欧州内で十分な生産を確保することだと言明。政府は、EU域外への依存が目立つ147品目の調達に向けた入札を開始しており、5月までにプロジェクトを選定する予定。 KSM News and Research -
2024.02.23
小学生に五輪2ユーロ記念硬貨を配布、教職員らは反発
教育省は、パリ五輪の開催にあわせて、記念の2ユーロ硬貨を目玉とする「五輪セット」をすべての小学生に配布するキャンペーンを開始する。これに教職員が猛反発している。 このセットは、記念2ユーロ硬貨とその説明のパンフレットからなる。報道によれば、その費用は1600万ユーロに上る。全国の小学生の数は630万人程度であり、一人2ユーロの記念硬貨だけで1260万ユーロがかかる。これにパンフレットの製作費やら諸々が400万ユーロ弱という計算になるのだろうか。このセットが1週間ほど前から全国の学校に納品されるに及んで、教職員側の怒りが高まっている。折しも、政府は経済成長率予測の下方修正に伴い、100億ユーロの節減を決めたばかりというタイミングでもあり、教職員側は、教育的な要素がまったくないキャンペーンに予算を使って、肝心のことをおろそかにしている、などと政府を攻撃している。 政府の側では、以前から決まっていたキャンペーンであり、五輪という歴史的なイベントを子どもたちと共有できる意義は大きいなどと釈明。大革命から200周年を迎えた1989年に、当時のミッテラン政権が1フランの記念硬貨を小学校最終学年の生徒に配布した前例があるとも説明している。 KSM News and Research -
2024.02.22
RATP(パリ交通公団)の労使合意、「週4日労働制」を試験導入
RATP(パリ交通公団)で就労条件に関する労使合意がこのほど締結された。「週4日労働制」の試験導入が盛り込まれて注目されている。 労使合意は3年間を期限として、RATPの主要4労組のうちFO、CFE-CGC、UNSAの3労組との間で調印された。最大労組のCGTは調印しなかった。「週4日労働制」は、メトロ5号線、7号線、9号線とRER(郊外連絡急行)B線の駅勤務の職員のうち希望者を対象に1月末から始まった。170人がこの制度を選択した。4日連続で勤務の後に2日連続の休日が来るというサイクルを続けるというもので、1日の勤務時間(7時間15分)に変更はない。駅勤務の職員のうち、検札係等については別の体制(4日勤務で3日休日、1日の就労時間は1時間30分増)が適用される。経営側は、全体として年間の就労時間は据え置きになると説明している。試験導入の成果が良好なら、駅勤務の職員6000人のすべてについて適用を認める計画。 勤務体制を理由とする退職者が最も多いのが駅勤務の職員だといい、休日の日程を予見可能にして私生活との折り合いをつけやすくする工夫として、この「週4日労働制」の試験導入が決まった。RATPでは職種により人手不足が鮮明になっており、就労条件の改善は人材の誘致力確保の上でも不可避の課題となっている。 KSM News and Research -
2024.02.22
オルリー空港、2035年へ向け新整備プロジェクト
ADP(パリ空港公団)は2月21日、2035年をメドとしたパリ・オルリー空港の新たな整備プロジェクトを発表した。プロジェクトについての3ヶ月間にわたるパブコメ(任意)が26日からスタートする。 ADPはこのプロジェクトにおいて、2035年の発着回数を2018年並みの22万9000回/年に抑えつつ、利用旅客数については、より大型の新世代旅客機の登場と座席利用率の上昇をテコとして2023年比で16%の増加を目指す。また、脱炭素化の推進が構想の柱となっており、2030年のネットゼロ達成が目標に掲げられた。そのための主な方策が自家用車利用の大幅削減で、2030年以降、空港ターミナル前への乗り入れをタクシー、ハイヤー、障害者の自動車、長期駐車の予約を行った旅客の自動車のみに限定し、その他の旅客は公共交通機関によるターミナルへのアクセスを求められる。駐車場スペースの大幅縮小でできる空き地(80ha)にはオフィスビルを新設し、駐車料金収入の減少をオフィス賃貸収入で補う。 公共交通機関としては、地下鉄14番線が今年6月にオルリー空港まで開通し、2027年には18番線が新たに開通する予定となっている。ただし、地下鉄車両内に大型スーツケース用スペースが予定されていない、本数が少ない、早朝勤務の職員にとって必要な始発時刻繰り上げが予定されていないといった課題は残る。エネルギーのグリーン化に関しては、空港敷地内で太陽光、地熱、メタン化によるエネルギーの生産を行って周辺住民向けに提供することのほかに、旅客機向け水素やバイオ燃料の新ステーション建設が計画されている。また、生物多様性保護のため敷地内に30%の草地を残す。 なお、旅客増に対応するため、オルリー第2ターミナルと「スカイブリッジ」で結ばれる新たな搭乗ゲートが建設される予定。 KSM News and Research -
2024.02.22
アタル首相、農業部門向けの追加支援策を発表
アタル首相は21日朝に記者会見を開き、農業部門向けの追加支援策を発表した。パリ農業見本市が24日に開幕し、マクロン大統領が会場を訪れることになっているが、これを前に、農民の不満を和らげる狙いがある。 アタル首相は、今後に提出される農業基本法案の中に食糧主権の目標を明文化すると約束。治安や防衛と同様の国の基本的利益として農業を位置付ける考えを示した。この法案には、農地を区切る生垣に関する規制など、複雑すぎる規制を簡素化し、農民の無用な負担を減らすための措置も盛り込むと説明した。首相はまた、季節労働力不足の解消を目的に、外国人季節労働者への査証発給を容易にする措置を講じると約束。農薬については、その削減義務の尺度として、フランスで用いられている「Nodu」と呼ばれる規格を廃止し、欧州連合(EU)の標準的な規格の適用に切り替えると発表した。Noduについては、農民団体のうちFNSEAと、農薬業界が、以前から廃止を求めており、環境派と対立していた。 首相はまた、農民の適正収入の確保を目的として、通称EGALIM諸法令の定める措置を強化する目的で法案を今夏までに提出すると予告。小売業者や食品メーカーとの交渉で、農民に十分な収入が確保されるように制度を改めると説明した。公共部門や自治体によるオーガニック食品の調達拡大等の措置についても予告した。また、この機会に、ルメール経済相は、農作物の原産地表示の義務の遵守状況を調べるため、小売業者等1000ヵ所でこれまでに調査を実施し、372件の義務違反を発見したと説明。法令の遵守を徹底するために厳しい姿勢で臨む方針を示した。アタル首相はまた、農民の抗議行動の収拾に当たり約束した各種の緊急支援について、CAP(欧州共通農政)関係の補助金については99%強の支給が完了しており、3月15日までにすべての支給完了を目指すと説明した。 農民団体の側では、一部にまだ不満がくすぶっており、事態が鎮静化に向かうかどうかは微妙な情勢。 KSM News and Research -
2024.02.21
温室効果ガス削減:欧州連合(EU)では投資の2倍増が必要
環境問題の仏シンクタンクI4CEは2月21日、2030年までに欧州連合(EU)において必要な温室効果ガス削減対策の投資に関する報告を公表する。この報告は、エネルギー、建物、輸送の3項目を対象としており、データが不揃いな農業部門と工業部門は除外されている。この集計によれば、EU全域における関連投資は2022年に4070億ユーロに上り、前年比で9%増を記録した。ただ、現状では不十分で、2024-30年の期間に年間平均で8130億ユーロの投資が必要になる。現状比での不足分は4060億ユーロということになるが、I4CEは、これがEUの国内総生産(GDP)の2.5%に相当することを指摘、支えられない規模ではないと説明している。部門別の投資不足分は、輸送で1470億ユーロ、建物で1370億ユーロ、エネルギーで1220億ユーロとなる。より細かい項目(全22)別では、水力発電とエネルギー貯蔵の2項目のみで必要な投資が確保できる見通しとなっており、それ以外では不足が予想される。不足分は、建物のエネルギー効率改善で940億ユーロ、EVで790億ユーロ、グリッドで420億ユーロ、陸上風力で410億ユーロ、洋上風力で330億ユーロ、鉄道で290億ユーロなど。I4CEは、目標達成に向けて各国政府に対してしかるべき選択をして投資の活性化を図るよう促した。 KSM News and Research -
2024.02.21
欧州委、スペインにおけるオレンジとマスモビルの統合を許可
欧州委員会は20日、仏通信大手オレンジによるスペインのマスモビル(携帯キャリア)の買収を条件付きで許可した。欧州委はこれまで、携帯キャリアの統合を認めない厳しい姿勢を示してきたが、それに風穴を開ける判断として注目されている。 オレンジは子会社を通じてスペイン市場における第2位の携帯キャリアであり、マスモビルは第4位の携帯キャリア。合併後には、携帯ユーザー3000万人、固定サービスでは730万人の規模となる。両社は統合に当たり、一部の周波数資産を、MVNO(仮想移動体通信事業者)であるDigiに譲渡することを約束。Digiは現在、テレフォニカのネットワークを借りて事業を展開しているが、欧州委は、オレンジ・マスモビルに対して、Digiとのローミング契約締結に応じるよう、あわせて命じた。この契約は任意であり、締結の是非はDigiの判断に委ねられる。オレンジは買収を3月末までに完了する予定。 欧州の携帯通信業界では、高い投資費用をカバーできる十分な事業規模を確保するために、業界再編を進めるべきだという議論がある。ポルトガル(ボーダフォンとNowo)やデンマーク(テリアとNorlys)でも同様の合併の動きがあり、スペインでの合併計画の行方は業界が注視していた。 KSM News and Research -
2024.02.21
気候変動対策に肉食半減を、環境派NGOが提言
フランスでは食肉の消費を半減すれば気候変動目標を達成できるとする調査結果が20日に発表された。環境派のNGOがまとめた。 この調査は、環境派の30団体が集まるレゾー・アクション・クリマが、栄養部門の「学識経験者団体」であるSNFの協力を得て行った。これによると、フランスにおいて、各種の食肉の消費を50%削減し、適正な栄養を確保することは可能であり、この削減を実現すれば、カーボン・フットプリントを20-50%削減することが可能だという。削減率に幅があるのは、食肉を代替するためにどのような食生活を選択するかにより、効果が異なるためだという。 フランスは農業部門の温室効果ガス排出量を2050年までに46%削減するとの目標を定めている。団体側によると、フランスでは現在、カーボン・フットプリントの22%を食糧部門が占めており、その6割は農業生産に由来している。国連食糧機関(FAO)によると、温室効果ガスの人為的な発生の12%は畜産に由来している。 この調査によれば、フランスにおける食肉の消費量(住民1人当たり)は世界平均の2倍に上るという。団体側は、政府の栄養関連の勧告において、1週間の食肉消費量の上限を450グラムに設定するよう求めている。 KSM News and Research -
2024.02.20
パリの新ショッピングモール「アトリエ・ゲテ」が不振
パリ・モンパルナス駅付近に2022年末にオープンしたショッピングモール「アトリエ・ゲテ」が不振に陥っている。撤退店が相次いでいる。 アトリエ・ゲテは、モンパルナス駅の東側、メーヌ大通りに面した区画に位置する。1970年代に整備された商業区画を取り壊して、不動産大手ユニバイユ・ロダムコ・ウェストフィールドが5億ユーロを投資して整備した。ルクレール(食品小売)、トリュフォー(園芸)、ダルティ(家電)など大型店と、フードコート型の飲食店があるが、客足は伸びていない。入居している店舗の撤退も目立ち、10店舗程度が閉店となった。その中には、会社更生法の適用下となったナフナフ(アパレルチェーン)なども含まれ、消費低迷の全般的な逆風が背景にあるとはいえ、倒産のGo Sport(スポーツ用品)を引き継いだIntersportの店員も、「ここはお客さん少ないわね」と証言しており、「アトリエ・ゲテ」全体の不人気は本物となっている。買い物客に聞くと、フードコートが注文と支払いをQRコードの読み取り方式一択にしていることに不満の声が聞かれる。スマホを持ち、アプリを落としておかないと注文できないというので、年配の人を中心に引き返す客も多いという。6月にはボーリング場がオープンする予定で、集客力増強に貢献するものと期待されているが、古い考え方で巻き返しが図れるものなのか、注目される。 KSM News and Research -
2024.02.20
パリ五輪の「空飛ぶタクシー」試験導入、実現なるか
パリ五輪の開催にあわせて「空飛ぶタクシー」の試験導入を行う計画の実現が危ぶまれている。パリ市議会も計画に消極的な姿勢を示している。 計画では、大会期間中を含む6月から年末まで、シャルルドゴール空港・ルブルジェ空港間、イシーレムリノー市のヘリポートとベルサイユ市近郊のサンシールレコール空港までの間、また、イシーレムリノーからパリ市内のオーステルリッツ駅付近の発着場までの間の3路線を対象に、独Volocopter社が開発の小型垂直離発着機(乗客1人乗り)を運航することになっている。1日に2000-2500便程度の運航を予定する。料金設定は、通常のタクシーの2倍程度とされ、これは110ユーロ前後に相当する。計画主体のADP(パリ空港会社)は19日に、脱炭素モビリティの新機軸の有用性を検証するためにも試験導入が必要だと強調し、計画の実現に向けた意志を再確認した。ただ、2月初頭に発表されたパブコメの結果は否定的で、渋滞解消といった公益上の利点に乏しいとする意見書が提出された。欧州航空安全機関の型式証明取得もまだ完了していない。また、パリ市議会では、特にオーステルリッツ駅付近の発着場について、騒音問題や美観を損なうといった批判の声が上がっている。 KSM News and Research -
2024.02.20
極右RNに欧州国境沿岸警備機関のレジェリ元局長が合流
極右政党RNは、6月9日に投票日を迎える欧州議会選挙に向けて、欧州国境沿岸警備機関(FRONTEX)の局長を務めた高級官僚のファブリス・レジェリ氏を候補に擁立した。筆頭候補のバルデラ党首はレジェリ氏を伴い、19日に南仏を遊説のため訪れた。 レジェリ氏は55才で、2015年から2022年まで欧州国境沿岸警備機関の局長を務めた。NGOから渡航者らの違法な排除を行ったと告発され、内部調査の対象となったことに伴い辞任していた。レジェリ氏は、保守野党の共和党からも接触を受けていたとされるが、極右RNの申し出を受け入れた。 RNは、前回の欧州選挙では第1党となっており、今回の選挙でも、世論調査で29%の支持率を確保してトップとなっている。南仏地方では、エリック・ゼムール氏が率いるもう一方の極右政党「ルコンケット」の勢力が強い。ルコンケットが議席獲得に必要な5%以上の得票率を達成するには、この地方での伸張が必須条件となる。RNとしては、ルコンケットを排除して票の流出を防ぐことが課題の一つで、移民問題にも敏感なこの地方で、レジェリ氏の力を借りて票を伸ばすことを狙っている。 KSM News and Research -
2024.02.19
仏政府、経済成長率を下方修正:100億ユーロの追加節減を予告
ルメール経済相は18日夜、民放テレビ局TF1とのインタビューに応じた機会に、経済成長率予測の下方修正を発表し、100億ユーロの追加節減を予告した。 経済相は、2024年の経済成長率予測を、これまでの1.4%から1.0%へ引き下げた。2023年の成長率(0.9%)とほとんど変わらない低成長にとどまると予測した。修正後の予測は、国際通貨基金(IMF)と同じで、欧州委員会の予測(0.9%)よりわずかに高い。経済協力開発機構(OECD)はさらに厳しく0.6%と予想している。経済相はこの下方修正を、世界的な経済の減速傾向を反映したものだと説明した。経済相はその上で、財政赤字の対GDP比を4.4%まで圧縮するとの目標は維持。それを実現するために、100億ユーロの追加節減を予告した。 経済相は、節減はすべて国の予算から実施すると説明。具体的には、規定の予算項目の取り消しで50億ユーロを捻出。各省庁がこれに応分の貢献をする。このほか、特殊法人(貿易・投資振興組織のビジネス・フランス、国立宇宙研究センターCNESなど)に合計で10億ユーロの節減を求める。政府開発援助(ODA)は8億ユーロの減額となる。さらに、「MaPrimeRenov’」(住宅のエネルギー効率改善向けの奨励金)については、2023年の35億ユーロが2024年には50億ユーロへ増額される予定だったが、これを40億ユーロに抑制する。 格付け会社各社は、仏長期債務の格付け見直しについて今春に発表する予定で、政府はここで格下げとなるのを回避することを望んでいる。そのため、早めの下方修正と節減策の発表に踏み切った。ルメール経済相は、節減のために補正予算法案を提出する可能性については否定。状況を見て必要なら今夏に提出する可能性はあるとした。 KSM News and Research -
2024.02.19
学校の制服導入、準備に遅れも
政府は学校において制服の試験導入を計画しているが、その準備が遅れている。2月15日に締め切る予定だったモデル校の募集が、6月半ばまで延期された。 高校以下の学校における制服の導入はマクロン大統領が後押しする学校教育改革の一つ。この9月に始まる新学年より全国の100校程度で導入を開始し、その成果を見て2026年9月の新学年よりすべての学校で導入する予定となっている。政府は制服導入について、不平等をなくして、帰属意識を高める効果が期待できるとしており、その理念ゆえに、制服は完全支給制として費用は全額を公費で負担する。国が50%の費用を負担し、残りを自治体が負担する。 制服導入には概して右派の自治体が関心を示しており、ピュトー市(パリ首都圏)とベジエ市(南仏)では、近く正式発表に踏み切る予定と力が入っている。ただ、全国で100校程度のモデル校を集めるはずが、教職員などの反対もあり準備が整っていないところが多いといい、政府は導入校のリストの発表を遅らせた。 反対派は、政府によるイデオロギー的な決定を押し付けるものだとして反発している。政府の念頭には、このところ目立っているイスラム教の伝統的衣装のような服装の排除(政府は別途、服装の制限を強化している)があるのは間違いない。右派が導入に積極的なのもそれと関係があるが、移民が多く、この種の問題を抱えるパリ北郊のセーヌ・サンドニ県でも、保護者らはともかく、教職員にも強い反発がある。 KSM News and Research -
2024.02.19
ウクライナのゼレンスキー大統領、独仏を訪問
ウクライナのゼレンスキー大統領は17日、ドイツとフランスを相次いで訪問した。ロシアのウクライナへの侵攻開始から2年近くが経過したが、独仏両国はこの訪問の機会にウクライナ支援を継続する姿勢を再確認した。 ゼレンスキー大統領はドイツでショルツ首相と会談。両国はこの機会に、10年期限の安全保障合意に調印。ドイツはこの中で、長期的な見地から軍事・経済面での支援を約束し、特に、ロシアによる新たな軍事攻撃があった場合に、24時間以内に対応することを取り決めた。ショルツ首相はこの機会に、36台の装甲迫撃砲(兵器メーカーの在庫から供給)、12万発の砲弾、防空システム2基、IRIS-Tミサイルを含む総額11億ユーロの追加供与を予告した。 ゼレンスキー大統領は続いてフランスでマクロン大統領と会談した。両国はこの機会にやはり安全保障合意に調印した。二国間合意としては、1月末に英国との間で結ばれた合意に続き、同日の独仏で3件が調印された。フランスは2024年に30億ユーロの追加軍事支援を供与することを約束した。マクロン大統領は、フランスはロシアやロシア国民と戦争をしているわけではないとした上で、ロシアに責任があるウクライナ侵攻を失敗に追い込むことへの決意を示した。3月半ばまでにウクライナを訪問する方針も示した。 KSM News and Research -
2024.02.16
アタル首相、住宅不足の解消プランを公表
アタル首相は14日、住宅不足の解消に向けたプランを公表した。 首相はこの中で、全国に22ヵ所の地域を指定し、住宅建設を後押しする方針を公表した。向こう3年間に、指定の各地域において1500戸程度の住宅を新設する(うち25%以上を低家賃住宅に)。合計で3万戸を超える住宅が整備される。公的資金を投入して、損益均衡が得られないプロジェクトの損失を補填することで住宅建設の実現を図る。指定された22地域には、パリ近郊のビルジュイフ(バルドマルヌ県)とベルサイユ(エソンヌ県)、ダンケルク(ノール県)、ディエップ(セーヌ・マリティム県)、トゥールーズ、ボルドー、ニース、マルセイユ、サンテティエンヌ、ストラスブール、サンマロ(イルエビレーヌ県)、ナントなど、大都市と地方都市が含まれる。住宅不足が目立つ地域が選定対象となった。 首相はこのほか、一戸建ての住宅地の再編による住宅増設を唱道。全国の1%の住宅地で、土地を整理して増設を図れば、合計で16万戸を整備できるとの試算を示し、その実現を容易にするための手続き簡素化を行うと約束した。 KSM News and Research -
2024.02.16
グーグル、AI新拠点をパリに開設
米グーグル(アルファベット)が2月15日、AI部門の新拠点をパリに開所した。ピチャイCEOがパリを訪れて開所式を執り行い、ルメール経済相、ボートラン労相、イルドフランス(パリ首都圏)議会のペクレス議長らも列席した。グーグルは2011年と2018年にパリに研究開発拠点を開いているが、今回、AI関連の新たなハブとなる拠点を、パリ9区の6000m2の建物に開いた。エンジニア200人と研究者100人(グーグル・ディープマインド、グーグル・リサーチ、ユーチューブ、クローム等に所属)を集める。基礎研究促進のため大学・研究機関とも協力する方針で、CNRS(仏国立科学研究センター)との提携が既に決まっている。講演会や会議、マスタークラス、学生・研究者・NGO・スタートアップを対象としたコンテスト等も実施する。人材のトレーニングでは、2025年末までに10万人を育成する計画。ピチャイCEOは開所式の後、市内のキュリー研究所を訪問した。 パリでは、2015年の米メタによるAI研究所の設置を皮切りにAI部門のエコシステムが急速に発展している。最近では、ディープマインド(現グーグル・ディープマインド)の元エンジニアらが新スタートアップ「ホリスティック」の立ち上げへ向け2億ドルの資金調達を進めている。グザビエ・ニエル(仏通信フリー)、ロドルフ・サーデ(仏海運CMA CGM)らの投資家も2023年末、非営利のAI研究所プロジェクトに3億ユーロを投資すると発表した。また、2023年に創業した米スタートアップのプールサイドは、同じくグザビエ・ニエル、ロドルフ・サーデらの投資を得て本社をパリに移転した。 KSM News and Research -
2024.02.16
パリ株式市場CAC40指数、最高値を更新
パリ株式市場CAC40指数が15日に最高値を更新した。取引中に7752.35ポイントを記録。終値も前日比0.86%上昇の7743.42ポイントで、終値の過去最高を記録した。 米国で金利低下の展望に関する楽観論が広まったこともあり、世界的に株式市場は同日に好調だった。パリ市場では、足元の業績発表が軒並み好調であることが材料になり、株価が上昇した。特に自動車メーカーの業績が予想外に良好で、15日にはルノーの株価が6.5%の上昇を記録。CAC40指数の構成銘柄中で最大の伸び率を記録した。同日に業績を発表したステランティスも、2023年に186億ユーロの純益を達成し、最高益を更新するなど好調だった。ステランティス株価も5.7%高を記録した。 CAC40構成銘柄はこれまでに25社が2023年の業績を発表したが、その利益額合計は既に1200億ユーロを超えた(純益1239億ユーロ)。自動車メーカーの復調に加えて、CAC40指数の主力である高級ブランド部門の業績好調が目立つ。 KSM News and Research -
2024.02.15
仏国鉄SNCFでスト、高速鉄道など半数が欠便に
仏国鉄SNCFで16日(金)から18日(日)までストが行われることが確定した。会社側の発表によると、3日間で高速鉄道(TGV)は通常の半数が運行される(inOui、Ouigoとも)。長距離在来線(アンテルシテ)も通常の半数の運行となる。格安在来線サービス(Ouigo名義)は通常通りに運行される。国際高速鉄道(ユーロスター)の運行にも支障が出る。SNCFは15日中にSMS等で運行が停止される便の予約客に通知を行う。運行停止便の予約客には100%を払い戻し、次回の購入に50%の割引を適用する。 今回のストは、SUDライユとCGTが、車掌が作る非公式団体を肩代わりする形で予告した。車掌らは、2022年のクリスマス期にもストを行い、一連の措置を経営側から取り付けたが、それが履行されていないとして今回のストを計画した。今回のストは、学校休暇中で家族連れの移動が増える時期だけに、旅客への影響が大きい。そうした時期を狙ってストが行われる。 この労働争議をパリ五輪に向けた前哨戦とみる向きもある。パリ五輪時の労働強化の代償を直接の対象として、不満を強める従業員が抗議行動を頻発させる恐れがある。農民の抗議行動が示すように、足元で社会の緊張は全般的に高まっている。 KSM News and Research -
2024.02.15
サルコジ元大統領、ビグマリオン事件で再び有罪判決
パリ高裁は14日、「ビグマリオン事件」の控訴審裁判で、サルコジ元大統領に禁固1年(うち6ヵ月は執行猶予付き)の有罪判決を言い渡した。元大統領は判決を不服として上告すると予告した。 ビグマリオン事件は、サルコジ氏が再選を狙って出馬した2012年の大統領選挙時の選挙資金不正事件。選挙費用が法定上限を超えていたにもかかわらず、協力会社ビグマリオンが、関連費用を別の名目に偽装して請求するなどの手口で、法令順守を偽装していた。元大統領は、選挙費用の上限超過について選挙法違反の罪を問われ、パリ高裁は、下級審の判決である「執行猶予なしの禁固1年」を軽くした上で、有罪判決を維持した。ビグマリオン社やその責任者、サルコジ大統領のUMP党(現在の共和党)の幹部ら、残りの9人の被告人は、文書偽造などの罪で、執行猶予付きの禁固1年から2年の有罪判決を受けた。被告人のうち6人には被選挙権の5年間停止、2人には会社経営の5年間の禁止処分も言い渡された。 サルコジ元大統領は、不正の事実について一切知らなかったと主張。虚偽と作り話にほかならないとして容疑事実を全面的に否定した。なお、元大統領は、別の不正事件である通称「ビスミュート事件」(自らの権限を利用して司法関係者に褒章を約束して厚遇を取り付けようとした疑い)で去る5月に禁固3年(うち1年が実刑部分)の有罪判決を控訴審で受けた。こちらも上告中となっている。また、リビア政治資金疑惑の第1審裁判が2025年に予定されており、この事件に絡んだ別事件の捜査でも容疑者認定を受けている。 KSM News and Research -
2024.02.15
デジタル免許証の本格運用始まる
運転免許証のデジタル版の本格運用が始まった。全国を対象に14日より、検問などの際に実物ではなくデジタル免許証の提示も認められるようになった。 デジタル免許証は、本物の免許証のコピーとしての価値を持つ。3県(ローヌ、オードセーヌ、ウールエロワール)で試験導入されていたが、これが全国で通用するようになる。本格運用を前に10万人程度が使用していた。 デジタル免許証を使用するには、公式サイト( www.france-identite.gouv.fr )から、同名のアプリをダウンロードする必要がある。最新世代の本人確認書類(クレジットカードと同じサイズのもの、2021年8月より発行開始)を所有し、成年に達していることが条件で、このアプリが本人確認書類の代わりとなり、そこに免許証も紐づける形になる。アンドロイド8以上かiOS 16以上を搭載するスマホで使用できる。なお、外国人の滞在許可証では今のところサービスを開始できないが、近く対応するとの予告がなされている。 アプリは欧州連合(EU)の全域で使用可能な本人確認書類の導入に向けた第1歩と位置付けられている。これに免許証を含む様々な書類を紐づけて使用する。政府は、デジタル版は正規の書類を置き換えるものではなく、その取得は義務ではないと説明。デジタル版導入の意義としては、紛失や盗難を減らし、各種の手続きの実行を容易にし、不正を防止することを挙げている。レンタカーの契約などにも順次使用できるようになる見通し。 KSM News and Research -
2024.02.14
行政最高裁、ARCOMに報道多様性の監督見直しを命令
行政最高裁(コンセイユデタ)はこのほど、ARCOM(放送行政監督機関)に対して、報道の多様性と独立性の確保に関する義務の履行を求める判決を下した。1986年に制定の放送法の解釈を明確化した。 行政最高裁は、ニュース専門地デジ局CNewsの偏向報道を問題視するNGO「国境なき記者団(RSF)」が起こした提訴で判断を下した。RSFは、ARCOMがCNewsに対する監督義務を十分に果たしていないとして訴えていた。行政最高裁はこの訴えを認める形で、発言時間のカウントを広げるよう命令。発言時間のカウントは、表明される意見の多様性の尺度とする目的で、政治家について適用されているが、行政最高裁はこれを広げて、討論番組の司会やゲストの発言時間もカウントするよう求めた。行政最高裁はまた、報道の独立性の確保について、局の運営条件の全体と番組編成の特徴まで含めた評価と監督を実施するよう求めた。ARCOMは6ヵ月以内に対応を改める義務を負った。 CNewsはメディア大手ビベンディ傘下のカナルプリュス・グループに属する。ニュース専門地デジ局としてはBFM TVに次ぐ第2位だが、視聴率は上昇傾向にある。ビベンディを所有するボロレ氏の政治的傾向を反映してか、右翼・極右系の論客が多く出演することで知られる。発言時間カウント制度の見直しはCNewsに限らずに報道に関わる局に広く適用されることになる。 KSM News and Research -
2024.02.14
ファストファッション課金法案、保守野党が提出
保守野党の共和党は、ファストファッションのインターネット販売を対象にした課金制度の導入を盛り込んだ議員立法法案を提出する。3月に下院で審議される。 法案は、共和党のベルモレルマルク下院議員が準備した。1日に1000点を超える新製品を投入する「超ファストファッション」のインターネット・プラットフォームを対象に、1点の販売につき5ユーロの拠出金を徴収するという内容。中国大手SHEIN(シーイン)などを念頭に置いている。拠出金の収入は、実店舗におけるフランス製や欧州製の衣類の販売を支援するため、小売価格を引き下げる奨励金として支給される構想だという。 ファストファッションは環境負荷が高く、過剰消費を招くという批判の声がある。その一方で国内ではアパレルチェーンの不振や倒産が目立ち、業界団体は年間1万人を超える雇用の破壊が生じていると問題視している。課金法案はそうした現状の是正を目的としたものだが、実現の可能性については疑問の余地もある。 KSM News and Research -
2024.02.14
仏失業率、10-12月期に前の期並み
13日発表のINSEE統計によると、仏失業率(ILO基準)は10-12月期の平均で7.5%となり、前の期並みにとどまった。失業者数は233万人となり、前の期から2万9000人の微増を記録した。 失業率は2022年10-12月期に1982年以来で最低の水準に下がったが、その後は上昇に転じた。1年間で失業率は0.4ポイントの上昇を記録した。それでも、直近のピークだった2015年半ばの10.5%に比べると、かなり低めの水準で推移している。 2023年10-12月期には、15-24才の層の失業率が17.5%となり、前の期から0.2ポイント低下した。ただし、前年同期に比べると0.6ポイント高い水準にある。25-49才では7.0%となり、前の期比で0.2ポイント、前年同期比で0.5ポイントの上昇を記録した。50才以上では、失業率は5.0%で、前の期比で0.1ポイント減、前年同期比で横ばいと、大きな変化はなかった。 民間部門の雇用数は10-12月期を通じて8300人の微減にとどまり、今のところ大崩れしていない。2023年通年では、雇用の純増数は11万3800人(0.5%増)と、増加の勢いは前年(34万6600人増)と比べて目立って鈍化している。 政府は2027年に完全雇用(失業率5%前後)を達成することを目標に掲げているが、足元の景気低迷が続けば失業減を維持するのは難しい。政府は失業保険制度の追加改正など、労働市場の「第2次改革」を進める意欲を示しているが、労組側の反発もあり、改革には困難も伴うことが予想される。 KSM News and Research -
2024.02.13
ビリーブ、上場廃止を計画
仏新興レコード会社のビリーブ(Believe)が上場廃止を計画している。創業者のラドガイユリCEOがファンド2社(EQT、TCV)の協力を得て株式を買い取る。 ビリーブは2021年に上場した。ラドガイユリCEOらは、1株15ユーロと、9日終値(12.40ユーロ)より21%高い価格で株式を買い入れる。評価額は15億ユーロ程度に上る。主要株主(TCV Luxco BD、XAnge、Ventech)から合計60%程度の株式をまず買い入れ、ラドガイユリCEOも保有株10%余りを持ち寄り、まず75%の株式を確保。次いで残りの流通株を対象にTOBをかける。90%以上を確保できたら上場廃止のTOBを実施する。 ビリーブが2021年6月に上場した際の価格は19.5ユーロで、それに比べると買収提示価格はかなり低い。似たような時期に上場した大手レコード会社2社(ワーナーミュージック、ユニバーサルミュージック)が40%を超える株価上昇を記録しているのと明暗を分けている。ラドガイユリCEOは、ストリーミング配信の伸び代が大きい新興市場(アフリカ、アジア、東欧など)に軸足を置いた成長戦略を継続すると説明している。 KSM News and Research -
2024.02.13
メトロのカラス、救出が成功
パリ・メトロの構内に数ヵ月前から生息していたカラスが9日未明に救出された。専門家チームが捕獲に成功、屋外に放された。 問題のカラスは去る11月初頭にパリ東部11区内のメニルモンタン駅(2号線)に現れた。いつまでもそこにいるので、通行人らが餌や水をやるなどしていた。メトロを運営するRATP(パリ交通公団)はカラスを外に出そうとしたが果たせず、12月末にパリ自然史博物館の専門家であるフレデリック・ジゲル氏に依頼して、救出作戦に本腰を入れた。1月31日夜に捕獲作戦が計画されたが、その直前の26日にカラスはなぜか姿を消した。それと同時に、新たなカラスが同じく11区のパルマンティエ駅に出現した。同駅は3号線で、同じカラスであるという保証はないが、ジゲル氏は、同じカラスに間違いなく、通用のトンネル経由で「乗り換え」たのだろうと説明している。捕獲作戦は場所を移して引き続き31日に計画されたが、工事などの作業が行われていたのに嫌気がさしたのか、カラスは隣のサンモール駅まで再び移動し、作戦は実行できなくなった。仕切り直しの8日夜の作戦では、嫌なことがあるとどこかへ飛んでゆくというこのカラスの習性を利用し、嫌がらせをして逃げた先に網を構えておくという戦略が奏功し、9日未明に捕獲に成功した。 カラスはストレスを受けてはいるが、健康状態は良好だった。検量を行い、「150」の番号が入った足輪をつけて、至近距離にあるペールラシェーズ墓地に放された。 KSM News and Research -
2024.02.13
すべての道には名前がある:住所規制が徹底へ
すべての住居に正確な住所をつけることができるようにするための改正作業が市町村に義務付けられる。6月1日が完了期限となる。 フランスの住所は、基本的に道の名前と番号、そして市町村名により構成されるが、人口2000人未満の村については、道に名前をつける義務が免除されていた。また、道の名前はあっても番号は割り当てられていない場合もある。「lieu-dit」とよばれる字(あざ)のような名称も用いられる。これが、2022年2月の地方自治関連法(通称3DS)により改められ、村を含めたすべての自治体について、それぞれの住居に唯一の道と番号のセットが割り当てられるようにすることが義務付けられる。 郵便局によると、現在も国民のうち180万人が規格内の住所を割り当てられていない。2017年にこの数は350万人に上っており、減ってはいるもののかなりの数が残っている。番号のついていない道が少なくとも一つある市町村の数は2万に上る。人口2000人未満の村の45%が新規則に既に合致しているが、半数以上がこれからということになる。字のような名称は改正で消えることはなく、消防や救急の出動の際などに活用される。 KSM News and Research -
2024.02.12
仏政府、低所得者向けの「月額100ユーロのEVリース」の年内募集を終了
報道によると、仏政府は低所得者向けの「月額100ユーロのEVリース」措置の適用希望者の2024年分の募集を終了する。同措置は、電動化支援の一環として、政府が補助金を支給して安値でのリースを実現するもので、マクロン大統領の肝いりで1月1日に開始していた。政府は2万台程度のリースを見込んでいたが、見込みを大きく上回る応募があり、すでに5万台以上の受注が承認された。当初は期間や台数に制限は設けられていなかったが、予算超過のリスクが生じたため(2024年の自動車グリーン化予算は全体で15億ユーロ)、急遽募集を締め切ることになった。政府は2025年の第2弾の準備に着手する方針を決めている。 なお、同措置の2024年の対象モデルは20種類ほど。ステランティス(仏伊)の12種類のモデル、ルノーの3種類のモデルのほかに、外国メーカーの複数のモデルのうちから選択できる。これらのモデルは欧州製であることを基準に選定されたが、仏国内で生産されているのは「ルノー・メガーヌE-Tech」のみ。 KSM News and Research -
2024.02.12
ダルマナン内相、マヨット海外県に「血統主義」適用を予告
ダルマナン内相は11日にマヨット海外県の訪問を開始した。マヨット海外県において、新生児の国籍付与の方式を、出生地主義から血統主義に切り替えると発表した。 マヨット海外県はインド洋上にあり、コモロ諸島の一部をなしている。コモロ諸島の独立に当たり、マヨット島のみはフランスへの帰属を選択した。マヨット海外県では、コモロ共和国経由の不法入国が多く、これが島内の治安悪化を招く要因となっている。マヨット海外県では最近に、水不足の被害が拡大し、島民らによる抗議行動が頻発したが、抗議行動を展開する勢力は特に、不法入国問題の解決と治安の改善を要求しており、内相はこれに答える形で、今回の発表を行った。 フランスは、両親の国籍を問わず、国内で生まれた子どもに仏国籍の取得を認めている(出生地主義)。この制度を利用する形で、マヨット島での出産を目指して不法入国する女性も多いといい、これが不法移民の増大の要因になっているという指摘もある(子どもがいる人には、国外退去処分の対象外になるという「利点」がある)。ダルマナン内相は、マヨット海外県に限定して、親の国籍に依拠する「血統主義」を適用するとし、そのために必要な憲法改正を実施することを、政府の方針として公表した。また、この改正を経て、島民に評判が悪い特別査証制度(島民が本土に入る際に査証の取得を義務付ける)を廃止すると約束した。 この発表について、出生地主義の擁護を掲げる左派勢力は政府の方針を強く批判。極右RNは逆に、マヨット海外県だけでなく全国に血統主義を広げよと要求している。 KSM News and Research -
2024.02.12
仏クラウドファンディング、2023年に初めて後退
業界団体FPFがクラウドファンディングの2023年実績集計を8日に発表した。規制の枠組みが整った2014年以来で成長を続けてきたクラウドファンディングが2023年には初めて減少に転じた。 これによると、2023年にクラウドファンディング事業者が集めた資金は20億8900万ユーロとなり、過去最高を記録していた前年(23億ユーロ)から11.3%減少した。2015年と比べると12倍に増えているが、2023年には成長が小休止した。その最大の原因は、金利上昇に伴う不動産投資の冷え込みで、クラウドファンディングがこの分野で集めた資金は前年比で28%減の11億6100万ユーロにとどまった。不動産投資は2022年にはクラウド全体の68.2%を占めていたが、これが2023年には55.6%まで後退した。ファイナンスの対象となった不動産案件(大部分が住宅)数も、前年の1628件が1237件まで低下した。 また、3年前から、クラウドファンディング事業者の許認可制度が厳しくなったが、これに伴う費用増で撤退する事業者が増え始めており、これもマイナスになったと考えられる。 好調な分野もある。再生可能エネルギー分野の案件数は2023年に351件となり、前年比で11.5%増を記録。調達額は3億6800万ユーロとなり、全体の17.6%を占めた。 KSM News and Research -
2024.02.09
仏経済は緩やかな成長=INSEE予測
INSEEは8日に発表した報告の中で、仏経済が緩やかな成長を続けるとの予想を示した。1-3月期と4-6月期の経済成長率(前の期比)を共に0.2%と予想した。 仏経済は、2023年7-9月期以来、ゼロ成長にとどまっており、2023年の通年経済成長率は0.9%と、前年の2.5%から目立って減速していた。INSEEは今年に入り、緩やかな経済成長が始まり、それが4-6月期まで持続すると予想した。INSEEは7-9月期以降の予測はしていないが、7-9月期以降がゼロ成長だったと仮定した場合で、2024年の通年成長率は0.5%となり、前年と比べて成長の加速は期待できない。 INSEEは、インフレ率が6月時点で2.6%まで減速すると予想。1月の3.1%と比べて物価上昇の勢いが鈍ることになる。エネルギーの後を受けて物価を押し上げている食料品で値上がりが一段落する見通しで、1月の5.7%の上昇(前年同月比)に対して、6月の上昇率は1.5%まで減速する。反面、サービス料金の値上がりは6月に3%となる見通しで、人件費上昇の影響が色濃く出ることになる。全体的な物価の沈静化を受けて、個人消費が活性化し、これが経済成長のけん引役を果たすことが期待できる。 いずれにしても、この調子だと、仏政府が2024年予算法の前提とした1.4%という同年経済成長率は達成が難しい。政府が早い時期に補正予算法案を組む方針で、100億ユーロ程度の追加措置を準備しているとする報道もある。 KSM News and Research -
2024.02.09
アタル内閣、追加の閣僚人事を発表
政府は8日夜、アタル内閣の閣僚人事を発表した。1ヵ月ほど前に発足したアタル内閣の全容がこれで整った。 アタル首相は就任後、ひとまず少人数の内閣を構成し、後に担当相・閣外相を中心に追加の任命をして内閣を完成させる方針だった。閣僚人事は難航した模様で、発表まで1ヵ月ほどを費やした。最終局面で、連立政権に加わるMODEM(中道)のバイルー党首が入閣を希望して一波乱あり、こちらは入閣なしで決着したものの、連立与党内にしこりを残した。 今回の任命では20人が新たに内閣に加わった。総勢で35人と、ボルヌ前内閣の42人に比べてわずかに減った。主任の大臣としては、教育相として、ベルベ元法相が再入閣。ウデアカステラ教育・スポーツ相を巡るバッシングがあり、ウデアカステラ氏はスポーツ・五輪相としての職務に専念する形で内閣にとどまり、教育相としてベルベ氏が復帰した。このほか、ボルヌ前内閣で公務員相を務め、アタル内閣発足時には一時内閣を離れていたゲリニ氏が同じポストで復帰した。 再入閣者がかなり多く、レスキュール(産業・エネルギー担当相)、グレゴワール(企業・観光・消費担当相)、カズヌーブ(予算担当相)、エルアイリ(若年者・家族担当相)、バロ(欧州担当相)、リエステル(貿易・誘致力・フランス語圏・海外在留フランス人担当相)などがそれに当たる。アタル内閣発足時に内閣を離れたパニエリュナシェ・エネルギー移行相は農業・食糧主権相の下で担当相として復帰したが、無任所の担当相としての復帰で、残念賞の処遇という感が強い。左派出身のベラン(報道官)、ボーヌ(運輸担当相)、デュソプト(労相)の各氏は復帰できなかった。 不当利益取得の容疑で捜査対象となっていたフィルマンルボド保健相に代わり、バルトゥー氏が保健担当相に就任。住宅担当相にはカスバリアン下院議員が新入閣で就任した。バイルー党首との軋轢があるものの、内閣の布陣は、MODEMを含めて連立各党の人材を登用する均衡型の人事となった。 KSM News and Research -
2024.02.09
DV事件で元夫が銃撃戦の末に死亡、被害者支援の専用端末が成果
暴力的な元夫に自宅まで押しかけられた女性が警察に専用端末経由で通報し、急行した警官らと元夫との間で銃撃戦になる事件があった。元夫は死亡、警官1名が負傷した。 事件は7日の19時頃、パリ近郊セーヌ・サンドニ県内のノワジールグラン市で発生した。女性は、元夫が押しかけてきたのを覗き穴越しに見つけて、「TGD」と呼ばれる専用端末で警察に通報した。2人組の警官が現場に急行すると、元夫は階段の上から警官らに発砲。応戦した警官らの発砲で被弾し、元夫はその場で死亡した。警官のうち1名が腕部に被弾して負傷した。この件で、警察の監察組織は状況を正確に把握する目的で規定に従い調査を開始した。 死亡した元夫は26才で、過去にDVの前歴があった。元妻は1999年生まれで、去る1月18日に裁判所より子ども1人の独占的親権を認められたばかりだった。この際、専用端末「TGD」の付与も認められており、これが早々と役に立った。この端末は、警察に随時連絡可能で、支援を要請することができる。所有者の位置情報を警察は取得可能で、迅速な介入に役立つ。DV被害者等の保護を目的に開発され、裁判所の決定により6ヵ月(更新可)の期限で付与される。現在は4000台余りが稼働しており、うち2000台はDV被害者に割り当てられている。 KSM News and Research -
2024.02.08
仏貿易赤字、2023年に大きく改善:それでも大幅赤字は変わらず
7日発表の税関統計によると、2023年通年の貿易赤字は996億ユーロとなった。過去最大を記録した前年の1627億ユーロと比べると630億ユーロの大幅な改善を記録した。エネルギー価格の高騰が一段落したことで、貿易赤字も改善した。2023年の輸出額は6073億ユーロで、前年の5981億ユーロからわずかに増加。同輸入額は7069億ユーロとなり、エネルギー価格の低下により、前年の7608億ユーロから目立って低下した。 ただ、コロナ危機前の2019年には、貿易赤字は586億ユーロとなっており、それに比べると現在の貿易赤字は極めて大きな額に上っている。エネルギー貿易赤字は2023年に690億ユーロとなり、2019年の450億ユーロに比べてはるかに大きく、これが貿易赤字を押し上げる最大の要因になっている。自動車の貿易赤字も、2019年の160億ユーロに比べて、2023年には238億ユーロへ拡大。EVの輸入依存が拡大していることが響いていると考えられる。情報処理・電子製品の貿易赤字も、同じ期間に170億ユーロから200億ユーロへ拡大。食品部門の貿易黒字は20億ユーロの縮小を記録した。また、コロナ危機を経て医薬品の輸入が増大したことから、同部門の貿易黒字はほぼゼロとなった。反面、航空機の貿易黒字は2019年以来で10億ユーロ程度増えて308億ユーロに達した。高級ブランド部門も輸出の柱になっており、香水・化粧品は164億ユーロ、皮革製品は46億ユーロの貿易黒字をそれぞれ確保した。 KSM News and Research -
2024.02.08
仏乳業大手ラクタリス、脱税捜査で捜索受ける
乳業大手ラクタリスが6日、警察による捜索の対象となった。脱税捜査の一環とみられている。 ラクタリスはフランス屈指の大手企業だが、一族経営の非上場企業で、不透明なガバナンスが批判の対象になることも多かった。6日には、ラバル市(ブルターニュ地方)の本社と、パリ市内のモンパルナスタワー内の事務所を対象に捜索が行われた。ベニエCEOのパリ市内の自宅(7区)も捜索の対象になったと報じられているが、ラクタリス社はそちらについては事実関係を確認していない。同社は捜索について、過去の事件を対象にしたものと説明している。 全国管区金融犯罪検事局(PNF)は2018年に、一連の報道をきっかけとしてラクタリスに関する調査を開始していた。報道によると、ラクタリスは、ベルギーとルクセンブルクの子会社に利益を移転する形で、本国フランスでの課税標準を不当に小さくしていた疑いがある。2013-18年にかけて2億ユーロ以上の脱税がなされていたともいわれる。 これと並行して、税務当局はラクタリス社の税務調査を進めており、2019年7月に本社の立ち入り調査を実施している。2022年時点で調査結果をPNFに通知したという。 KSM News and Research -
2024.02.08
リモート就労時の事故、仕事に関係がなければ労災認定外=パリ行政裁判決
リモート就労中に発生した負傷の労災認定を求める訴訟で、原告側敗訴の判決が下された。11月9日付のパリ行政裁判所の判決内容がこのほど報じられた。 この事件では、パリ市職員の助産師の女性が、労災認定の却下を不服として訴えていた。事件は2021年3月22日に発生。この女性が、リモート方式でトレーニングを受けていた際に、落下物にぶつかって足指を骨折した。この女性は労災認定を申請したが、当局側は就労とは無関係の事故によるものとして認定を同年に却下。女性側がこれを不服として行政訴訟を起こしていた。 事故は、当日の午前10時過ぎに発生。休憩後に女性が靴を履くためクローゼットを開けたところ、アイロン台が倒れかかって足を直撃した。このため足指の複数個所を骨折した。裁判所は、勤務時間中に発生した事故ではあるが、職務の遂行に関係があるとはいえないと認定。労災認定の要件を満たしていないとして、訴えを退けた。 職場で発生した事故の場合は、状況はどうあれほぼ自動的に労災認定が与えられる。ただ、リモート就労においては、職務遂行と事故発生に直接の関係がないと労災とは認定されない。本件は公務員が対象だが、民間部門の従業員でも事情は変わらない。法律専門家によると、例えば仕事中になした動作がきっかけとなって落下物に当たったというような状況なら、労災認定は得やすくなるという。 KSM News and Research -
2024.02.07
仏会計検査院、スキーリゾートの温暖化対策を提言
仏会計検査院は2月6日、スキーリゾートへの温暖化の影響に関する報告書を公表した。 アルプス地方では、1971年から2019年の間に標高2000メートル以下の地域の積雪期間が約1ヵ月短くなった。温暖化の影響で滑走可能コースが減っていく中、会計検査院は2018年の報告書で既にスキーリゾートの未来の脆弱さを案じ、新たな開発モデルの必要性を指摘していた。スキーリゾートの多くは1960-70年代に国家援助で開発されたが、現在では、地域経済がスキー場に過度に依存する状況を招いている。 今回の報告書では、人工降雪機に依存した対応を、補助金に頼るもので長期的な解決策にはならないと指摘。スキー以外の多角化については、スキーリフトがなければできないレジャー活動(サマーリュージュやジップラインなど)が多く、多角化として不十分だとも指摘した。その上で、本格的な多角化推進とスキー場施設の解体を支援する基金の導入を提案した。 KSM News and Research -
2024.02.07
仏経済省、輸出振興措置を予告
仏経済省は6日、輸出振興カンファレンス「フランス・エクスポール」を開催した。ルメール経済相はこの機会に輸出振興措置について説明した。 政府の輸出信用制度は2023年に190億ユーロの規模に上った。これは、武器輸出の大型契約が多かった前年の300億ユーロに比べると後退したが、その前年の2021年の170億ユーロに比べると増加しており、歴代2位の成績となった。政府は、輸出企業15万社の達成(2023年7-9月期には14万6000社)に向けて、同制度の利用拡大のための諸措置を導入すると予告した。 具体的には、中小・中堅企業の定義を見直し、年商上限を1億5000万ユーロから3億ユーロへ引き上げることにより、優遇措置の適用を受けられる企業を増やす。簡易式の申告制度の適用を受けられるようになり、また、カバー率も、大企業の50%に比べて85%と高い率が認められる。支援制度の適用を受けるには、フランス製最低限(輸出信用の場合で20%、外国政府によるインフラプロジェクト向け融資で50%、実証研究向け贈与Fasepで85%)の規定があるが、それは変更せずに、手続き簡素化などで利用拡大を図る。フランス企業を下請けとする外国企業のプロジェクトも今後は支援の対象として認められる。 KSM News and Research -
2024.02.07
パリ五輪組織委のエスタンゲ委員長、過剰報酬の疑いで調査の対象に
全国管区金融犯罪検事局(PNF)が、パリ五輪競技大会組織委員会(COJOP)のエスタンゲ委員長を対象にした調査を最近に開始したことが明らかになった。司法筋が調査の存在を認めた。過剰な額の報酬の適法性が焦点になっているという。 エスタンゲ委員長は2020年まで、組織委委員長として年間27万ユーロ(現金給与総額ベース)の報酬を得ていた。この金額は、団体の法定報酬上限を大きく上回っており、その適法性が調査の対象となっている。組織委側はこれについて、組織委は非営利団体とは異なり、収入の96%を商業活動により確保しており、付加価値税(VAT)も免除されていないなど、通常の団体と比べて事情は大きく異なると説明。組織委の非営利団体ではない事業の性格は、当局によるタックスルーリングにおいても認められていると主張した。委員長の報酬については、諮問組織の提案を経て、委員長が加わらない投票で議決されたものであるとし、法律違反ではないと主張している。 エスタンゲ委員長を巡っては、これまでにも、自身の関係する会社が組織委に役務を提供し、報酬を得ていたことが、利益相反などに当たる疑いがあるとする報道が浮上していた。 KSM News and Research -
2024.02.06
アトス、債務再編交渉に向けて補佐役の任命を商事裁判所に請求
仏アトス(情報処理)は5日、債権銀行団との債務再編交渉を補佐する独立調停人の任命をポントワーズ商事裁判所に請求したことを明らかにした。この発表を受けて、アトス株は30%近くの急落を記録した。 アトスは、情報処理事業を束ねて売却し、将来的な展望のある事業に集約して立て直しを図る計画を発表していたが、その実現可能性に疑念が浮上していた。情報処理事業を束ねた「Tech Foundations」はチェコの実業家クレティンスキー氏に売却する計画だったが、こちらの交渉は困難に直面しているといい、返済期限が迫る債務に対応する展望が立たなくなった。アトスは、選択肢の一つだった増資計画を断念し、債務再編の交渉を優先することを決め、独立調停人の任命を請求した。2025年のはじめには15億ユーロのタームローンの返済期限を迎え、2025年半ばまでには12億5000万ユーロの社債返済の期限が来る。2029年までだと合計で48億ユーロの債務返済に対応しなければならず、そのめどをつけるため、銀行団との間で債務再編の交渉を行う。 アトス社の問題について、ルメール経済相はこれまでの沈黙を破り、6日付のレゼコー紙に対して見解を表明。雇用面での重要性(世界従業員数は11万人、仏国内では1万人)を指摘しつつ、なすがままにするつもりはないと言明。さらに、アトスの戦略的事業の維持にあらゆる手段を尽くすとも言明した。アトスは、ビッグデータ・セキュリティ事業(BDS)をエアバスに売却する方向で交渉を進めているが、経済相は、アトスの重要資産について、外国企業による買収は阻止する考えを示したものと考えられる。 KSM News and Research -
2024.02.06
コニャック輸出、2023年に22%減
コニャックの業界団体BNICが発表した集計によると、コニャックの輸出は2023年に1億6530万本となり、前年の2億1250万本から大きく後退した。22.2%の減少率となり、前年の4.8%減から後退幅がさらに大きくなった。 地域別では、主力市場である米国向けが45.4%減と大幅な後退を記録。新型コロナウイルス危機時に積み上がった在庫を整理する動きが続き、大幅減を招いた。反面、アジア向け輸出は14.8%増と好況を維持した。 前年の2022年は、前年比で後退したものの、過去30年間で第3位の輸出量を記録していた。それと比べての2023年の大幅減であるだけに、業界は今のところ強気の見方を崩していない。ただ、欧州市場では、コニャックを含むアルコールの全般的な消費後退が続いているなど懸念材料も多い。BNICは2024年の展望について、一進一退という展開になりそうだが、米国市場で改善の兆しも見えるとして、回復に向かうことを期待している。なお、2023年の収穫は30年来で最大という当たり年だったという。 KSM News and Research -
2024.02.06
MODEMのバイルー党首、架空雇用事件裁判で無罪判決
パリ地裁は4日、中道与党MODEMの架空雇用事件で判決を言い渡した。被告人のうち8人に有罪判決を言い渡した。MODEMのバイルー党首は無罪判決を得た。 この事件では、MODEM所属の欧州議会議員らが、議員秘書として党の職員を雇用し、欧州議会とは関係のない党の職務を遂行させていた疑惑が浮上し、公金横領などの容疑で合計11人が起訴されていた。裁判所は、メルシエ元法相やベナミアス元欧州議員を含む8人の被告人について、執行猶予付き禁固10ヵ月から18ヵ月の有罪判決を言い渡し、1万ユーロから5万ユーロまでの罰金刑をあわせて言い渡した。また、被選挙権の2年間の停止処分を執行猶予付きで下した。MODEMとその前身のUDFには、前者が35万ユーロ(うち30万ユーロは執行猶予なし)、後者が15万ユーロ(うち10万ユーロは執行猶予なし)の罰金刑を下した。反面、バイルー党首とあと2人の被告人には、証拠不十分を理由に無罪判決を言い渡した。バイルー党首については、一連の架空雇用を了承していた疑いで起訴されたが、裁判所は、党首が了承していた可能性はごく高いとした上で、党首が違法行為を知らされていたという証拠が示されなかったとして、無罪判決を下した。裁判所はまた、組織的な違法行為であるとは認められなかったとし、個人が不正に利益を得たこともなかったと認めた。 起訴状によると、問題の違法行為は、欧州議会の3期に渡り6人の議員秘書の雇用に係りなされた。横領総額は26万2000ユーロに上る。 バイルー党首はこの疑惑の浮上に伴い、マクロン大統領の就任からほどなく、2017年6月の時点で法相を辞任していた。無罪判決を得たことで、アタル内閣に入閣する可能性を含めて、政治の表舞台への復帰を目指す可能性がある。バイルー党首は72才で、大統領選挙のかつての常連候補でもあり、大統領就任の意欲をまだ捨てていないという見方もある。 他方、極右政党RNも、同じ欧州議会を舞台にした架空雇用問題で追及を受けており、マリーヌ・ルペン前党首を含む数人が起訴されている。9月に裁判が行われることになっており、その行方も注目される。 KSM News and Research -
2024.02.05
パリ市のSUV駐車特別料金導入案、住民投票で賛成多数
パリ市は4日、SUVの駐車料金引き上げの是非を問う住民投票を実施した。賛成が多数派を占めた。 パリ市のイダルゴ左派政権がこの住民投票を企画した。「大重量、大容量で汚染度が高い乗用車の駐車に特定の料金体系を導入する」ことに賛成か否かを尋ねた。同日夜に発表の開票結果によると、54.55%の人が賛成と回答し、賛成が過半数を占めた。パリ市内に居住する有権者(130万人)が投票権を有するが、投票したのは7万8000人で、投票率は5%余りに過ぎなかった。パリ市は4月にも、電動キックスケーターのシェアリングサービスの継続の是非を問う住民投票を実施したが、この際の投票者数は10万人を超えており、それよりもさらに関心が低かった。 イダルゴ市長はこの住民投票の結果を後ろ盾として、5月に駐車料金改定案を市議会に提出する。エンジン車について1.6トン超、電動車両についても2トン超の自家用車を対象に、駐車料金割り増しを適用する。1-11区では1時間18ユーロ、12-20区では同12ユーロとなり、6時間の料金では、前者が225ユーロ、後者が150ユーロと、通常の駐車料金(75ユーロと50ユーロ)に比べて3倍の割り増しになる。居住者が自宅付近に駐車する場合にはこの料金は「当面の間」適用されない。パリ市の試算によれば、この改定により3500万ユーロ程度の追加収入が見込める。 パリ市の野党勢力は、住民投票には何の正統性もないと批判。ドライバー団体は、料金改定がなされるなら提訴すると予告している。 KSM News and Research -
2024.02.05
パリ・リヨン駅で通り魔事件、3人が負傷:逮捕の犯人はマリ人、精神病で通院歴
パリのリヨン駅で3日朝、刃物により通行人が襲撃される事件が発生した。3人が負傷し、うち1人は重傷を負った。犯人は国鉄SNCFの警備員らに取り押さえられ、逮捕された。警察はテロ攻撃の可能性は薄いと判断している。 事件は3日8時前に発生。犯人の男は、エスカレーターでリュックサックを燃やした後、刃物とハンマーで通行人を襲撃した。逮捕された男は32才のマリ人で、2016年以来、イタリアに正規滞在していた。トリノで精神科に通院しており、過去には入院歴もあったという。警察は容疑者の精神状態に鑑みて、取り調べを中断して警察病院にひとまず収容した。 容疑者は2月1日に列車でフランスに入り、犯行に至るまでパリで路上生活を送っていた。警察の取り調べに対して、容疑者は、自身の精神病病歴を明らかにした上で、人を殺すつもりだったと言明。フランスの植民地経営の過去に言及するなどしたが、宗教的な理由については言及しなかった。容疑者は、イタリアで過激派としてリストアップされておらず、犯罪歴もなかったという。警察では、テロ攻撃である可能性は薄いとみているが、容疑者のTikTokのアカウント上にイスラム原理主義系(サラフィスト)のコンテンツも発見されているため、犯行の動機について慎重な見方を保っている。 KSM News and Research -
2024.02.05
欧州連合(EU)加盟国、人工知能法の制定巡り合意
欧州連合(EU)加盟国の大使級会合は2日、人工知能法(AIアクト)を巡る妥協案で合意した。フランスは修正を求めて働きかけていたが、実らなかった。 人工知能法は、人工知能の開発について規制の枠組みを定めることを目的とするもので、世界でも初めての法制化となる。その制定を巡っては、厳しすぎる規制を導入すると、米中などとの競争において不利になるとする意見があり、国内のAI開発の推進を目指すフランスは、その修正を求めて画策していた。ただ、主要国の賛同は得られず、フランスは部分的な修正を得たことを土産として引き下がることを決めた。 具体的には、人工知能法においては、一定以上の性能を持つAIの基盤モデルを「システミック」に分類し、より厳しい規制を適用することになっているが、フランスは分類の最低限を引き上げることを求めていた。妥協案でこの要求は認められなかったが、代わりに、毎年状況を検討して、最低限を見直す可能性が盛り込まれた。 著作権保護を目的に、AIモデルを育てるためのデータの概要開示の義務も人工知能法で導入されることになっている。フランス政府は、AI開発業者の「職業上の秘密」を考慮するよう求めて働きかけていたが、この点ではフランス側の働きかけは実らなかった。 人工知能法案は今後、欧州議会の承認を得て正式に成立する見通し。6月の欧州議会選挙前の成立を目指す。 KSM News and Research -
2024.02.02
アタル仏首相、農民向け追加支援措置を公表:主要農民団体は抗議行動を中断
アタル首相は1日、首相府で農民向け支援措置を公表した。主な農民団体は首相の発表を肯定的に評価し、抗議行動を中断することを決めた。 アタル首相は1月27日の所信表明演説でも農民向けの支援措置を予告していたが、農民団体側は発表を不十分として抗議行動を継続していた。首相は今回、3人の関係閣僚(フェノー農相、ルメール経済相、ベシュ・エコロジー移行相)を伴い、追加の支援策を公表。政府のこれまでの対応に誤りがあったと認めつつ、食糧主権の確立に努める姿勢を打ち出し、そのための一連の支援措置を予告した。 首相は特に、状況が厳しい畜産業者向けに1億5000万ユーロの支援(公租公課・社会保険料を通じた支援)を約束した。若年者の農業起業と農業経営体の継承支援には2000万ユーロの予算を設定した。首相府によると、このほかの一連の措置を含めて合計で4億ユーロの予算が投入されるといい、発表済みの2億ユーロの資金繰りの援助はそれとは別になされるという。 首相はまた、農薬使用量の削減を目的とした「Ecophyto」プランを一時中断し、内容を見直すと約束。欧州連合(EU)よりも厳しい規制は設けず、代替手段を確立した上で農薬の削減を進めると約束した。 首相の発表について、合計で多数派を占める農民団体のFNSEAとJAは揃って、これまでに発表された措置の実行を見届けることを優先するとして、現行の抗議行動はひとまず中断すると発表。新興の農民団体CRも抗議行動の「休止」を決めた。反面、左派系の農民団体CPは政府の発表を不十分として批判しており、「原価割れの農作物の仕入れの禁止」を求めて抗議行動を継続すると発表した。アタル首相は、環境問題で譲歩を重ねて農民の不満を緩和した格好だが、これに環境派は反発を強めており、これが新たな火種になる可能性もある。 KSM News and Research -
2024.02.02
仏大手銀行BNPパリバ、2023年に最高益:株価は急落
仏最大手銀行BNPパリバが1日に2023年業績を発表した。最高益を達成したが、市場は業績目標の下方修正等を嫌気し、同行株価は同日終値で9.21%の急落を喫した。 2023年の純利益は109億8000万ユーロを記録。前年比で11.4%の増益を達成した。経常収益は1%増の458億7000万ユーロ(プロフォーマベースでは3.3%の増収)を記録した。ただし、10-12月期に限ると、利益は10億7000万ユーロとなり、事前の予測を下回る水準にとどまった。BNPパリバはまた、有形自己資本利益率(ROTE)の目標を下方修正。「2025年に12%」を「2026年に12%」へ改めた。ベルギーの銀行課税導入と、欧州中銀(ECB)による準備預金の無利子化決定を折り込んで目標を修正した。市場はこれらの材料を悲観、同行の株価の急落を招いた。つられる形で、ソシエテジェネラルは4.10%、クレディアグリコルSAは2.81%の株価下落を記録した。 BNPパリバは、多角的な事業展開により、安定した業績を確保することに成功。2023年には、投資銀行部門が57億ユーロの税引き前利益を達成して牽引力となった。反面、消費ローン部門は再編途上にあり、業績が振るわなかった。また、不動産部門は市況不振の影響が目立った。フランスでは、固定金利による融資が主流であるため、足元の金利上昇の利益が出るのが遅れることも逆風となった。 KSM News and Research -
2024.02.02
マクロン大統領の支持率、2ポイント後退の25%:アタル首相は32%でスタート
レゼコー紙の依頼による月例調査によると、マクロン大統領の支持率はこの2月に25%となり、前月から2ポイント後退した。2022年の再選以来で最低の水準に並んだ。この調査は、「政策遂行の能力について信頼する」かどうかを尋ねて、その結果を集計している。最新調査は1月30日から31日にかけて1001人を対象に行われた。 マクロン大統領は1月には記者会見をテレビ中継するなど、国民に向けた広報に力を入れた。内閣改造を行い、若手のアタル新首相を起用した。そうした努力にもかかわらず支持率は低下した。支持層である管理職(支持率が33%)や年金受給者(27%)でも支持率が後退。調査では、国民の声に耳を傾けていないといった批判の声が多く聞かれたという。 アタル首相の支持率は32%となり、前任者のボルヌ首相の最後の支持率(1月の23%)に比べるとかなり高くなった。ボルヌ首相の就任時の支持率(27%)も上回った。ただし、それより前のフィリップ首相とカステックス首相(共に36%)に比べると低めのスタートとなった。アタル首相は、右寄りの有権者層で支持率が46%と高く、年金受給者でも43%と高かった。 KSM News and Research -
2024.02.01
フランスのインフレ率、1月に3.1%:前月から減速
31日発表のINSEE速報によると、フランスの消費者物価指数は1月に前年同月比で3.1%上昇した。インフレ率は12月に上昇に転じ、3.7%を記録していた(11月には3.4%)が、1月には再び低下に転じ、著しい減速を見せた。12月のインフレ亢進が一時的な現象であった可能性が強まった。なお、前月比では、消費者物価指数は1月に0.2%の低下を記録した(12月には0.1%上昇)。また、欧州連合(EU)基準のインフレ率は、1月に3.4%となり、前月の4.1%からやはり目立って減速した。 1月には、エネルギー価格が前年同月比で1.8%上昇。12月の上昇幅である5.7%と比べて減速が目立った。食料品価格は5.7%とかなりの上昇を示しているが、こちらも前月の上昇率(7.2%)と比べると鈍化した。工業製品価格の上昇率は0.7%まで鈍化。反面、サービス料金は3.2%の上昇を記録し、上昇率は前月より0.1ポイント高くなった。 なお、食料品・日用品等の大手メーカーと流通業者の間の年次価格交渉が31日に期限を迎えた。政府は、この交渉期限を例年より早めて、物価抑制に貢献する結果を得ることを望んでいたが、足元の農民の抗議行動もあり、農民の収入保障を優先する姿勢を見せるなど、方向が必ずしも定まっていない感もある。 KSM News and Research -
2024.02.01
RATP(パリ交通公団)で長期間スト予告、その本気度は?
RATP(パリ交通公団)の最大労組であるCGTは29日、2月5日から9月9日までという長期間のストを予告した。パリ五輪(7月26日から8月11日まで)とパラリンピック(8月28日から9月8日まで)を念頭に置いて、大会期間中にストを行う可能性を示唆するのが狙いとみられる。CGTは賃金関連の措置が不十分だと主張し、経営側に交渉の開始を要求している。 7ヵ月間という長期のスト予告期間は異例だが、専門家によると、法令と判例は、スト予告期間の長さについて制限を設けていないといい、今回の予告期間は適法であるという。スト予告を行う義務は、公共部門と公共サービスについて定められているものであり、それ自体がスト権の制限に当たるため、期間の制限を設けることは法律論的に難しいのだという。公共交通機関におけるスト時の最低限のサービスの確保は、法律上の義務ではないが、公共交通機関の運営主体(自治体連合等)は、事業者との間で結ぶ委託契約において、契約上の義務としてこれを設定することができる。パリ首都圏の場合は、事業者がラッシュアワーについて通常の50%の運行を確保することを約束している。ストの48時間以上前に、当日に就労するか否かを各従業員は会社側に通知しなければならず、会社側は就労状況を把握の上で、最低限のサービスを確保するための手配を行う。契約上の義務を達成できなかった場合にはペナルティが発生する。 労組側がストを予告した場合、経営側は交渉に応じる義務がある。ストの予告は交渉開始を求める手段であり、必ずしも実行されるとは限らない。今回の予告では、五輪期間中のストの可能性をちらつかせて、交渉を有利に進めるのが労組側の目的だと考えられる。 KSM News and Research -
2024.02.01
XPOロジスティクス、電動トラクターをルノートラックスから購入
米XPOロジスティクスのフランス子会社はこのほど、電動トラクター(牽引自動車)の導入に乗り出した。ルノートラックス(スウェーデンのボルボ・グループ傘下)から44トントレーラーをけん引可能なトラクターを調達する。 XPOロジスティクスのフランス子会社(旧ダントレサングル)は、2023年初頭にルノートラックスに16-19トントラック65台を発注。60台の追加発注も行っていた。今回、さらに大型の電動トラクター105台を発注。トラクターはルノートラックスのブールカンブレス工場で組み立てられ、2026年までに引き渡される。 電動トラクターは航続距離がバージョンにより200-300kmと小さく、XPOロジスティクスはこれを、物流拠点間の輸送など、短距離の輸送に使用する。電動トラクターの価格は1台30万ユーロと高く、同社は、ADEME(仏環境・省エネ庁)のプロジェクト募集に応募し、830万ユーロの補助金(108ヵ所の充電器整備含む)を得た。 同社はフランスで3000台を保有し、欧州563ヵ所の拠点を経由して5万社弱の顧客にサービスを提供している。電動車両の導入については、振動や騒音、排気ガスがないことから、運転手の間で評判がよいことを指摘。人材確保が難しくなる中で、人材誘致力の切り札としても電動化に期待している。脱炭素化については、電動化一辺倒では対応せず、顧客のニーズやそれぞれの役務の特殊性を踏まえて、液化ガス燃料、圧縮ガス燃料、バイオディーゼル燃料、HVO(水素化分解植物油)などの様々なソリューションを組み合わせて提供することを目指している。 KSM News and Research -
2024.01.31
仏経済、10-12月期にゼロ成長
30日発表のINSEE統計によると、仏経済成長率は10-12月期に前の期比で0.0%となった。2023年の通年成長率は0.9%となり、政府の公式予測に近い数字を確保できたが、前年の2.5%と比べて顕著に減速した。 経済成長率は7-9月期にも0.0%だった。速報値のマイナス0.1%が上方修正された。2023年には、4-6月期に0.7%の成長率を記録した以外はすべてゼロ成長となり、4-6月期の実績が成長を支えた格好になった。 10-12月期には、内需(在庫変動除く)のGDP成長率への貢献がマイナス0.1ポイント分となり、景気後退の要因となった。固定資本形成は0.7%減となり、前の期の0.2%増から減少に転じた。個人消費支出も0.5%増から0.1%減と減少に転じた。 反面、外需のGDP成長率への貢献はプラス1.2ポイントと、前の期の0.1ポイントのマイナス貢献から一転して大幅な貢献となった。輸入の減少(3.1%減)が主因であり、輸出は0.1%減とほぼ現状維持だった。このほかに、在庫変動がGDP成長率を1.1ポイント押し下げる役割を果たした。石油精製品、設備財、その他工業製品で在庫変動が特に優れなかった。固定資本形成のうち企業の投資は0.7%の減少を記録しており(前の期には0.2%増)、景気低迷が企業の活動に浸透してきた可能性もある。 KSM News and Research -
2024.01.31
仏広告市場、2030年にはデジタルのシェアが既存メディアの2倍に
2030年までの仏広告市場予測に関する調査報告が1月30日に公表された。調査はARCOM(放送行政監督機関)と仏文化省の依頼で民間調査会社のPMPストラテジーが行った。 報告書によると、仏広告市場は2030年まで年間2.3%の成長を続け、183億ユーロに達する見通し。デジタルメディアのシェアは2022年の52%が2023年には65%へ上昇する。デジタル分野の4大大手(グーグル、メタ、アマゾン、TikTok)は、全広告市場の45%のシェアを握ることになる。一方、既存メディア(テレビ、ラジオ、出版、映画)のシェアは同じ期間に48%から29%へ低下する。その年間広告収入の減少幅は2030年時点で8億ユーロに達する。 既存メディアのうち、テレビとラジオは、2030年までの年間減少率がそれぞれ1.4%と1%で底堅いが、出版広告では年間5.4%の減少が見込まれる。 今回の調査結果は、2018年に行われた初回調査で予測された傾向を裏付けるものとなった。政府は今週にも、文芸出版にテレビ広告を許可すべきかと、EUと国内の広告規制の兼ね合いの2件のテーマで、関係者からの意見聴取を開始する。 KSM News and Research -
2024.01.31
アタル首相の所信表明演説:農民らは納得せず、抗議行動を継続
アタル首相は30日、就任以来で初めての所信表明演説を下院で行った。 首相はこの中で、新たな改革は示さず、国民の力の発現を妨げている規制や煩雑な行政手続き等を緩和することに力を注ぐ考えを明らかにした。若い世代が未来を切り開くのを助け、中産階級が抱く懸念に答え、「働く者が働かない者より多くを得る」社会の実現を目指すと説明した。各論では、失業手当の支給期限が切れた失業者に支給される手当であるASSを廃止し、生活保障手当のRSAに一本化する方針を表明。住宅不足の対策では、自治体と協力して供給面から問題解決を探るとし、規制緩和をその柱に据える考えを示した。このほか、硬直した規制により既得権を得ている業界の風通しを良くするための規制緩和法案の準備も約束した。医療問題では、外国人医師の採用等の規制を緩和する方針などを確認した。 アタル首相は、抗議行動を続けている農民向けには、特に援助金の支給の迅速化を約束。農機燃料の課税還付など数日前に発表した諸措置に加えて、欧州共通農政(CAP)関係の補助金についても、3月15日までに支給すると約束した。このほか、若年農業経営者の開業支援措置、物価上昇に苦しむ畜産業者向けの税制優遇措置(2億ユーロ規模)、ワイン向けぶどう農家の支援基金の設置、外国産農作物の産地表示義務等の徹底を図るための検査の強化などを予告した。これに加えて、マクロン大統領も、訪問先のスウェーデンから農業問題について言及し、ウクライナ産農作物の過剰流入について欧州連合(EU)のレベルで対応を働きかけることを約束。メルコスルとの貿易協定案を現状では承認しない姿勢も再確認した。これらの発表について、抗議行動を展開する農民団体側は納得しておらず、道路封鎖等の抗議行動を継続する構えを示している。 KSM News and Research -
2024.01.30
カルマット、増資で1490万ユーロを確保
完全置換型の人工心臓を開発する仏カルマットは29日、1490万ユーロの増資を完了したと発表した。資金繰りに3ヵ月間の余裕を確保した。カルマットは2008年に設立。現在は上場企業だが、生産体制の確立が不十分であることなどから、経営が厳しい状況にある。今回の増資は1株3.99ユーロの価格で実施され、グリーンシュー行使後の総額規模は1650万ユーロに上った。増資後の希薄化は17%程度とみられており、カルマットの株価は29日の取引中に5.4%低下の4.21%で推移している。カルマットは、当面の資金繰りの確保により、生産と販売の拡大を継続することが可能になると説明。国内の臨床試験「EFICAS」も継続できるとした。カルマットは現在、欧州投資銀行(EIB)との間で、2018年に得た3000万ユーロの融資の返済繰り延べについて交渉中で、一部の債務が株式に書き換えられる見通しだが、これが成立すれば、向こう12ヵ月間で追加の資金確保の必要は3500万ユーロで済むという。債権銀行団との交渉は3月末までの完了を目指す。今回の増資の完了でも、目先の資金繰りしか確保できていない状況にかわりはない。 KSM News and Research -
2024.01.30
ユーロ偽札がわずかに増加
欧州中銀(ECB)が29日に発表した集計によると、2023年に押収されたユーロ偽札は46万7000枚となり、前年比で24%増加した。市中に流通する紙幣の数は12月末時点で298億枚となっており、押収偽札が占める割合は、100万枚につき16枚とわずかではあるが、前年の13枚に比べて増加している。偽札の押収量は、2021年に34万7000枚と過去最低の水準まで下がっていたが、この2年間では反転して増加傾向が続いている。偽札では、20ユーロ札と50ユーロ札が圧倒的に多く、押収偽札の7割強を占めた。欧州中銀は2013年から2019年にかけて、紙幣のデザインを刷新し、偽造防止の工夫も増やした。資金洗浄に利用されているとの判断から、500ユーロ札の発行は2018年末で打ち切られ、現在は5ユーロから200ユーロまで6種の紙幣が発行されている。当局によると、偽札の流通においてはインターネットが果たす役割が大きく、メッセンジャーソフトやSNS経由で偽札が売買されることが多い。また、フランスに出回る偽札の多くが「イタリア製」であるといい、主にナポリ地方の犯罪団がこの分野で暗躍しているという。 KSM News and Research -
2024.01.30
民泊規制の議員立法法案、下院を通過
下院は29日、民泊型の賃貸規制に関する議員立法法案を採択した。法案は今後、上院で審議される。法案は、与党ルネサンスと左派野党の社会党の議員が共同で準備した。政府は、影響調査を実施した上で規制を決めるべきだとして、法案には消極的だったが、下院は賛成多数で同法案を採択した。目玉は税制優遇措置の削減で、セカンドハウス等を家具付き物件として短期賃貸する場合の課税標準控除率が、現在の50-71%から、家具なしの長期賃貸物件と同様に30%にまで引き下げられる。上限も、従来の物件により7万7700-18万8700ユーロが、1万5000-3万ユーロへと引き下げられる。人口密度が低い地方とスキー場に限り、71%・5万ユーロの特例制度が維持される。このほか、市町村による物件数上限規制の導入を助ける目的で、物件の網羅的な登録制度が導入される。セカンドハウス等をプラットフォーム経由で賃貸する人はすべての自治体において登録が義務となる。また、市町村は、短期賃貸物件への転用の場合に、事前の申請を義務付けることを認められる。市町村が上限を定めて、物件の増加に歯止めをかけることが可能になる。上院における審議を含めて、法案が最終的に可決されるかどうかはまだ決まっていない。法案推進派は、パリ五輪以前の施行も視野に法案の可決を急いでいる。 KSM News and Research -
2024.01.29
エアバス・ヘリコプターズ、インドでの組み立てでタタと提携
エアバス・ヘリコプターズはインドの大手企業タタ・グループ傘下のTASL(Tata Advanced Systems Limited)との間で、軽量ヘリH125の民生用バージョンのインド国内での組み立てに関する合意を結んだ。マクロン大統領のインド公式訪問の最終日となった26日に調印された。 エアバスとタタは、戦術軍用輸送機C295の共同生産で既に提携しており、モディ首相の地元であるグジャラート州内に工場を置いている。H125は最大6人乗りで、エアバスでは、チョモランマ山上に着陸できる唯一のヘリコプターを自称している。インド国内での組み立ては2026年の開始を予定する。 フランスはインドへの兵器輸出では第2位で、欧州諸国中では特に結びつきが強い。今回の大統領の訪問では、仏サフランがインド側と交渉を進めている戦闘機エンジンのインド国内生産についても協議がなされたものとみられる。インド側によると、「100%技術移転」が伴う事業であるという。 KSM News and Research -
2024.01.29
アタル首相、農民向け支援措置を発表:農民側は「パリ包囲」の抗議行動を予定
アタル首相は26日、農民の抗議行動の発端になった南仏オートガロンヌ県を訪問し、農民向けの支援措置を発表した。同県内の道路封鎖の抗議行動はこれで終息したが、農民団体のFNSEAとJAは発表に納得しておらず、29日(月)より「パリ包囲」の抗議行動を展開すると予告した。 アタル首相にとっては就任直後に早々と危機が訪れた格好になった。首相はこの訪問の機会に、地元農民らが特に要求していた3点(農機燃料課税に係る助成継続、農業用水確保への支援、牛流行性出血病被害の補償)に応じることを明らかにした。首相はこのうち、農業用水の確保について、2000万ユーロの支援基金の設置を約束。反対運動などで整備事業が遅れる状況があることに配慮し、訴訟の期間制限等を通じた迅速化や手続きの簡素化を行うと約束した。首相はより一般的に、通称EGALIM諸法案が定める、農作物の仕入れ価格を適正水準に保つための措置の遵守を目的に、検査や違反の処罰等を徹底すると約束した。また、資金繰りに困難を覚える農家の支援を目的に、5000万ユーロの予算を即時に支出するとも予告した。 この発表を受けて、オートガロンヌ県内の封鎖ポイントを含めて、全国の10ヵ所余りの道路封鎖が27日中に解除されたものの、28県の38ヵ所では同日中に抗議行動が続いた。この後、主要な農民団体のFNSEAとJAが、「パリ包囲」の抗議行動を29日に開始することを決めたことから、28日には地方の抗議行動は下火になったが、29日以降はパリ首都圏を中心に抗議行動がぶり返すものとみられている。農民団体側は、アタル首相の発表を不十分としており、特に、欧州連合(EU)の環境等の規制がフランスでは過剰に適用されていると主張し、改善を求めている。EUの規制そのものを問題視する動きもある。団体側はまた、農作物の輸入制限も要求している。抗議行動は、29日午後から、パリに通じるすべての高速道路を封鎖する形で行われるといい、長期化すると影響が拡大する。また、農民団体のうちCRは、パリ郊外のランジス食品卸市場を包囲する抗議行動を準備しているといい、影響が懸念される。 KSM News and Research -
2024.01.29
医薬品不足、2023年に一段と深刻に
国内の医薬品不足が厳しさを増している。当局機関のANSM(医薬品安全庁)が26日に2023年の集計結果を発表した。 これによると、医薬品の品薄・品切れの通報が2023年通年で4925件寄せられた。これは前年比で30.9%増となり、2021年比では実に128%の増加に相当する。医薬品不足は、欧州諸国の全体でも見受けられる傾向で、生産の問題や生産能力の不足に加えて、人口高齢化に伴う需要の増大に生産が追い付かない状況も生じている。通報のうち40%では、量的制限や、投薬基準の厳格化、輸入拡大などの対応が必要となった。不足が目立つ医薬品としては、心臓病・循環器疾患、神経疾患、感染症、がんの関連医薬品が多い。 ANSMは、医薬品在庫等の情報共有の体制を強化し、製造者に対して在庫水準の引き下げを促すなどの対策を進めた。その成果もあり、アモキシシリン(感染症治療薬)の不足はこの数ヵ月間で徐々に改善してきた。反面、アジスロマイシンやセフポドキシムは、小児用を中心に状況が悪化している。 KSM News and Research -
2024.01.26
仏失業者数、減少傾向がストップ
25日発表のフランス・トラバイユ(ハローワーク)統計によると、仏失業者数(マヨット海外県除く)は10-12月期に前年同期比で1万9400人、率にして0.6%減少した。同期の失業者数は平均で303万3000人となった。 失業者数は2022年末までは顕著な減少が続いていた。2022年10-12月期には、前年同期比で31万人の減少を記録していたが、2023年に入ってからは減少の勢いが明確に鈍化した。コロナ危機前の2019年10-12月期と比べると、これまでの貯金のおかげで50万人の大幅減が達成されているものの、大台の300万人割れを前に足踏みが続いている。前の期比では微増の傾向を示している。景気低迷の影響が雇用にも及んだものと考えられる。 年齢別で見ると、50才以上の層では失業者数が減少、25-49才では横ばいで、25才未満では増加を示している。当該月に一定の就労実績がある失業登録者は増加しており、カテゴリーB(78時間未満の就労実績)は1万8000人増、カテゴリーC(同78時間以上)は3万9000人増を記録した。これらを加えた失業者総数は10-12月期に540万人となり、1年前の538万人からわずかに増加した。1年以上の長期失業者が失業者に占める割合は43.6%となり、低下傾向が続いた。 KSM News and Research -
2024.01.26
欧州中銀、政策金利を据え置き
欧州中央銀行(ECB)は25日に定例理事会を開き、政策金利の据え置きを決めた。下限金利(中銀預金金利)を4%、上限金利を4.75%、リファイナンス金利を4.5%に据え置いた。 欧州中銀は10月以来、これで3回連続にて金利を据え置いた。それまでは、インフレ抑制を目的に2022年7月以来10回連続で利上げを行ったが、インフレ率減速の展望が立ったことを理由に金利を維持している。市場は今回の据え置きを折り込み済みで、今後の利下げのタイミングが最大の関心事となっている。 欧州中銀のラガルド総裁は、理事会後の記者会見において、現行の金利水準を十分に長く維持すれば、インフレ率目標(2%)の達成に大きく貢献するものと理事会は判断している、と言明。総裁はその一方で、「利下げについて議論するのは時期尚早」との判断で理事会内にコンセンサスがある、とも付け加えた。総裁はその上で、経済指標を極めて注意深く観察し、データに依存した政策運営を続けると説明した。 ラガルド総裁は数日前に、夏までに理事会の過半数が利下げに賛成する可能性があるかと問われ、「それもまた可能だと思う」と言明。初めて利下げのタイミングに言及する発言をしていた。市場では、6月から利下げが始まるという期待があり、中には3月からの利下げを予想する向きもある。 KSM News and Research -
2024.01.26
憲法評議会、移民法案の違憲審査で大幅な削除を命令
憲法評議会は25日、先に国会で可決された移民法案の違憲審査の結果を公表した。右派の要求で法案に追加された措置のほとんどについて削除を命じた。 政府が準備した移民法案は、不法滞在者の国外退去処分の執行を容易にすることを目的としており、その一方で、就労する不法移民への滞在許可証の発行による移民の受け入れ拡大措置も含んでいた。下院で与党が過半数を失っていることから審議は難航し、右派勢力の賛成を取り付ける目的で、各種の措置を追加した上で法案は可決された。採決では保守野党の共和党だけでなく、極右政党RNも賛成票を投じて物議を醸した。マクロン大統領は法案全体の違憲審査を憲法評議会に請求。憲法評議会は、追加条項のほぼすべてを削除し、政府案に近い形に戻した上で法案を承認した。 憲法評議会は、全86条項のうち、35条項の削除を命令。うち32条項は、法案の本来の趣旨と関係がない条項であるという理由を挙げて却下した。具体的には、一連の社会給付について、外国人に待期期間を設定する条項が、社会保障会計予算法案に盛り込まれるべき条項であることを理由に削除された。また、外国人留学生に対する保証金納付義務の導入、移民の家族呼び寄せの制限、フランスで生まれた子どもの国籍取得の申請制度の導入、国外退去処分を言い渡された者に対する住居斡旋の廃止、外国人への医療援助の制限、外国人受け入れ上限設定に関する年次国会審議の実施、などに関する条項がやはり削除を命じられた。 ダルマナン内相は憲法評議会の決定を歓迎。移民法を迅速に施行し、不法滞在者の国外退去の加速に取り組むと言明した。法案修正を後押しした共和党と極右RNは、憲法評議会の決定を、政治的な意図が込められたものだと批判。移民に関する憲法改正を問う国民投票の実施を要求する声などが上がっている。 KSM News and Research -
2024.01.25
カジノの店舗網の売却が正式決定:一部店舗はカルフールに転売へ
経営難の食品小売大手カジノの再編計画で、カジノ名義のスーパーマーケット及びジェアン名義の大型店舗の売却に関する正式合意が成立した。311店舗を売却する方向で交渉を進めていたが、最終的に288店舗の売却が決まった。 同業オーシャンが大型店舗を中心に98店舗を買収。ムスクテール・グループ(アンテルマルシェ)が190店舗を買収する。ムスクテールはうち26店舗を同業カルフールに転売する。競争上の問題が発生しうる地域の店舗を転売する。6月までの売却完了を見込むが、まだ必要な許可の取得は終了していない。売却資産の資産価値は13億-13億5000万ユーロに設定される。 カジノの手元には23店舗(うち7店が大型店舗)が残ることになるが、その今後についてはまだ決していない。事業の継続は難しいと考えられている。カジノのスーパーマーケット網の従業員数は5万人程度で、うち1万2000人が売却に伴い移籍するが、労組側は、雇用条件が悪化することを懸念している。買収2社は、法定最低限である15ヵ月間の雇用条件維持を約束した。 カジノ・グループは、小型店舗のモノプリ及びフランプリを中心とする小売業者に生まれ変わり、チェコの実業家クレティンスキー氏の傘下に入る。経済省は先頃、外資による戦略的企業の買収案件としてこれを審査の上で承認した。クレティンスキー氏による買収は4月までの完了を目指す。 KSM News and Research -
2024.01.25
国民の半数が中産階級=モンテーニュ研究所が定義を提案
経済界寄りのシンクタンク「モンテーニュ研究所」は24日、「中産階級」に関する報告書を公表した。マクロン政権が2025年にも中産階級向けに20億ユーロの減税を行うと予告する中で、中産階級の定義を提案し、政策運営の留意点を示す内容となった。 報告書は、中産階級の定義として、可処分所得が下から30%以上、上から20%以下の層(国民全体の半数に相当)を採用するのが妥当であるとした。職業上の区分を用いると、年金受給者など定義できない人が多くなることをその理由として挙げた。この定義では、月額の可処分所得が1440ユーロ(世帯の成員をウェイト付けして頭割りにした額。例えば夫婦2人の世帯は世帯の可処分所得を1.5で割って得られる)以上、3110ユーロ以下が中産階級となる。報告書は、中産階級を2つに分けて、「下位中産階級」(1440-2260ユーロ)と「上位中産階級」(2660-3110ユーロ)に区分することも提案。前者は全国民の30%、後者は同20%に相当する。 国民を対象に2023年に行われたアンケート調査では、全体の63%の人が自らを「中産階級」に属すると回答しており、イメージの上では、中産階級の広がりは、「モンテーニュ研究所」の定義するところよりも大きい。報告書は、中産階級が、子どもの世代において階級の低下に見舞われることを恐れており、教育と労働の価値を通じた社会的地位向上を求めていると分析。また、所得再分配が貧困層を優先する余りに中産階級に多くの負担を求める形になっていると不満を持っているとした。報告書は対策として、労働の価値が所得により反映されるような制度作り、持ち家支援の住宅政策、教育へのアクセスの改善、気候変動対策の家計への負担への配慮、などを挙げた。 KSM News and Research -
2024.01.25
仏政府財政赤字、2023年に1733億ユーロ:予想より20億ユーロ増
24日の経済省報告によると、2023年の国の財政赤字は1733億ユーロとなった。税収が振るわず、11月時点での予測に比べて財政赤字は20億ユーロ程度膨張した。当初予算法の予測と比べると84億ユーロ膨張した。 足元の景気低迷を反映し、税収は11月予測比で78億ユーロの減少を記録。内訳をみると、所得税が14億ユーロ、法人税が44億ユーロ、付加価値税(VAT)が14億ユーロ、それぞれ11月予測を下回った。所得税では、源泉徴収税率が見込みよりも低く、法人税では、12月の前納分の税収が見込みを下回った。 他方、支出面では、11月予測よりも支出額が62億ユーロ小さくて済み、全体として財政赤字の膨張分は税収の減退分よりも小さくなった。支出の抑制は、省庁の予算項目の未消化(38億ユーロ)や、自治体交付金が予想より小さかった(13億ユーロ)ことなどに由来している。前者では、軍用資材の納入遅れに伴う支出の延期と、エネルギー価格抑制措置の負担が予想より小さかったことが貢献した。 政府は、2023年の財政赤字総額(自治体、医療部門含む)の対GDP比を4.9%まで圧縮することを目標としているが、その達成に失敗する可能性がある。2024年の目標は4.4%だが、こちらの達成は追加の努力がない限りは一段と難しくなった。 KSM News and Research -
2024.01.24
CNIL、アマゾンに3200万ユーロの罰金処分
仏CNIL(個人情報保護機関)は23日、アマゾンに対して3200万ユーロの罰金処分を決定したことを明らかにした。物流拠点において従業員対象の過剰な監視体制を敷いていたと認定した。 CNILは4年前に提訴を受けて調査を開始し、去る12月に処分を決定した。処分の対象は、フランスでアマゾンの物流を担当する子会社のアマゾン・フランス・ロジスティックで、物流拠点内に導入していた監視体制が、個人情報保護の法令に違反すると判定された。会社側は、従業員の各人について、荷物のバーコード読み取りのデータを収集し、2回の読み取りの間の最大時間を設定して従業員の能率を監視。また、10分以上の読み取りのない時間も把握して、実労働時間をほぼリアルタイムで追跡する体制を整えていた。データ保存の期間も法定上限の31日間を超えていた。CNILは、個人情報を侵害する手段により従業員に不当な圧力を加えていたと認定。アマゾンがこの方法により得た利益と被害を受けた従業員数(数千人)などを踏まえて罰金額を決めた。この罰金額は、アマゾン・フランス・ロジスティックの年商の約3%に相当する。アマゾン側は是正を約束したが、CNILは、是正がまだ実行されていないことを理由に、罰金額の減額には応じなかった。 アマゾン側は、CNILが事実誤認に基づいて決定を下したと遺憾の念を表明。異議申し立てを行う可能性を示唆した。アマゾンは2ヵ月以内に行政最高裁(コンセイユデタ)に上訴できる。 KSM News and Research -
2024.01.24
オレンジ、管路・電柱の使用料金を大幅引き上げ
通信大手オレンジは、管路・電柱の使用料金の大幅引き上げを通知した。通信事業者を介してサービス料金の引き上げとしてユーザーに転嫁される見通し。 管路・電柱は、国営事業者だったオレンジ(旧フランス・テレコム)が国から引き継いだ資産を原点としている。オレンジは光ファイバー回線網を含めて、競合事業者が展開する通信網のために管路・電柱へのアクセスを認めて、使用料収入を得ている。オレンジは3月1日付で、管路・電柱の使用料を67-72%引き上げる方針で、これを顧客である事業者らに通知した。2025年にも続いて22-28%の引き上げを実施し、2年間の合計で2倍に料金を引き上げる。 料金引き上げについては、当局機関ARCEPが承認を与えており、2017年の時点で引き上げの計算方式について定めていた。ただ、特に事業者の側では、1ヵ月余りという短い予告期間で大幅な引き上げを実施するのは不当だと反発している。特に、地方の通信事業者が加わる業界団体AOTAは、オレンジが過去20年間で管路・電柱の使用料として400億ユーロの収入を得たが、保守等の費用ははるかに小さいとして、オレンジが不当な利益を上げていると非難。ARCEPの承認の取り消しを求める行政訴訟を起こす構えを見せている。また、最近では、自治体主導の通信網整備事業で、管路等の所有権を自治体が主張するケースが増えている。2022年にはマルセイユ高等行政裁判所が、エクサンプロバンス市にインフラ所有権を認める判決を下している。 KSM News and Research -
2024.01.24
中学生の企業研修の悲しい実態
フランスでは、中学校の最終学年の生徒に企業研修が義務付けられている。通常、12月から2月までの期間に、5日間に渡り受け入れ先の企業で職業の「観察」を行うという趣旨で、レポートを学校に提出する。研修先は生徒が自ら見つけてくることになっている。まずそこからが勉強ということなのだろうが、実際には、両親のコネで何とかねじ込むというのが常態で、結局は社会的な序列がそのまま維持されるのだなあと中学生に実感してもらうイベントとして機能している。郊外の民衆地区などに住み、フランス人らしくない名前であれば猶更で、弁護士志望でパリの弁護士事務所にたくさん志望書を送ったが、すべて断られたという奇特な証言もある。たいていは最初から諦めて、身内がやっている商店などで見習いをする。「ケバブ研修」という正鵠を得た蔑称も定着している。月曜日は揚げ菓子を砂糖の中で転がす手伝いをした、火曜日はもっとたくさん転がして上達した。以下同文の日々を送り、「研修に行きました」という以外の内容はほとんどないレポートを提出することになる。 政府もこの問題について認識しており、マクロン大統領の発案で、2018年には、都市郊外の教育重点地区を対象とする研修先斡旋のプラットフォーム「Monstagedetroisieme.fr」が立ち上げられた。今年も3万件の研修先が用意されたが、どういうわけか候補者が見つからないオファーも多いという。転がし上手になる研修よりも魅力がないということなのだろうか。 KSM News and Research -
2024.01.23
FDJ、オンライン賭博のKindredに友好的TOB
フランスの宝くじを独占するFDJは22日、欧州のオンライン賭博大手Kindredに対する友好的TOBに着手すると発表した。総額で26億ユーロに上る買収案件となる。 Kindredはナスダック・ストックホルムの上場企業。Unibetをはじめとする9ブランド(bingo.com、32 Red、Maria Casinoなど)を通じて、欧州、北米、オーストラリアで事業を展開している。従業員数は2500人程度で、顧客数は3000万人近くに上る。 FDJは、1株130スウェーデンクローナでTOBを実施。この価格は19日の終値に対して24%高い。2月19日に開始し、最大で9ヵ月後に完了する。 FDJはかつての仏国営企業で、現在はパリ株式市場の上場企業。2023年には、アイルランド同業PLIを3億5000万ユーロで買収し、初めて外国の宝くじ事業への進出を果たした。フランスの賭博部門における最大手企業で、オンライン賭博(ポーカー、馬券、スポーツくじなど)の強化を狙っており、今回のTOBに乗り出した。FDJによると、Kindredの吸収後に同社は欧州の賭博市場で第2位となる。また、買収は利益の増加をもたらし、2025年から配当金を10%押し上げる効果をもたらす。市場はTOBの発表を歓迎し、FDJの株価は22日の終値で6.23%の上昇を記録した。 KSM News and Research -
2024.01.23
12月のフランスの航空旅客数、2019年レベルに回復
フランス民間航空総局(DGAC)の発表によると、2023年12月のフランスの航空旅客数は、コロナ禍前の2019年のレベルにまで回復した。ただし、2023年通年の旅客数は1億6960万人と、2019年通年の94.5%に過ぎず、完全な回復には至らなかった。 コロナ禍が世界の航空各社に与えた影響は甚大だった。フランスの航空旅客数は2020年、2019年値の3分の1以下(30.2%)にまで落ち込んだ。その後2021年には2019年値の39%、2022年には2019年値の80.5%と、次第に回復していった。2023年には回復が確実なものとなったわけだが、路線により差がみられた。国際線が好調で、2023年には、2019年旅客数比で97%のレベルにまで回復した。アフリカ路線に関してはコロナ禍前を上回った(113.1%)。EU路線(98.9%)とアメリカ路線(97%)も好調だった。一方で、海外県・領土路線(99.7%)を除く国内路線(79.4%)は、鉄道とビデオ会議に客をとられ、コロナ禍前のレベルには程遠い状況となった。また、パリと地方都市を結ぶ路線よりも、地方都市間を結ぶ路線の方が勢いがある。2023年は、中国路線(34.8%)や日本路線(57.2%)の回復の遅さも目立った。 KSM News and Research -
2024.01.23
育児休暇の制度改正、2025年中に施行へ:処方薬自己負担2倍増は3月末から
マクロン大統領が16日の記者会見で予告した育児休暇の制度改正について、大統領府は22日、2025年社会保障会計予算法案に盛り込み、2025年中に施行する方針を確認した。新制度は、1977年に導入され、利用が振るわない現行制度を後継する形で導入される。現行制度は、誕生から3年間の間取得することが可能で、家族手当公庫から月額429ユーロが支給されることになっているが、金額が低いために特に父親の取得が少ないことが問題視されていた。新制度では、誕生から6ヵ月までと期間を短くして、代わりに支給額を増やす形に改められる。手当は、1800ユーロを上限として社会保障会計から支給される分と、使用者による任意の上乗せ分により構成される。現行制度ではほかに、母親の出産休暇(16週間)と父親休暇(28日間)があり、新制度はこれを補完する形で利用可能となる。父親と母親が同時に取得できるかなど細部はまだ固まっていない。 大統領は記者会見で、処方薬等の自己負担額の2倍引き上げも予告したが、こちらについては、政府が関係者との協議を開始した。処方薬の自己負担額引き上げ(1箱0.5ユーロから1ユーロへ)は3月末にも、診察料等の自己負担額の引き上げ(1ユーロから2ユーロへ)等は6月初頭までに施行されるという。 KSM News and Research -
2024.01.22
農民の抗議行動、拡大の恐れも
農民による抗議行動が国内の一部で展開されている。農民による抗議行動はドイツなど近隣諸国でも展開されており、仏国内の抗議行動も規模がさらに拡大する可能性がある。 抗議行動はオートガロンヌ県で展開されている。高速道路を農民らがトラクターなどで実力封鎖し、居座り続ける抗議行動を行っている。高速道路A62における抗議行動は19日未明に解除されたが、A64における抗議行動は、250人程度が加わり、20日にも継続された。同日には、県庁の責任者と農民らの代表が会談したが、状況の打開には至らなかった。 抗議行動に加わる農民らは、牛乳買い取り価格など製品価格の引き下げ圧力が高いことに抗議。エネルギーなどインプットの価格高騰が続く中で農業が立ち行かなくなっていると主張している。より一般的には、欧州連合(EU)による環境規制等が厳しすぎ、農業活動を妨害していると主張している。極右勢力は農民のこうした主張を取り入れて支持拡大を狙っており、極右RNのバルデラ党首は20日にジロンド県内の乳牛農家を訪問し、「マクロンの欧州」がフランスの農業の死を望んでいる、などと糾弾した。同日にはアタル首相も地方訪問の際に農民への感謝の念を表明。農民の煩雑な行政手続きを緩和することなどを約束した。 KSM News and Research -
2024.01.22
家庭廃棄物の従量制料金、減量に成果
一部の自治体は、家庭廃棄物の減量を目的に、従量型の料金徴収を導入して成果を挙げている。ADEME(環境・省エネ庁)が調査結果を発表した。 これによると、2021年年頭時点で、全国の200程度の自治体がこの制度を取り入れている。自治体税として徴収する廃棄物収集税を、固定部分と変動部分に分けて、変動部分については、廃棄物の量に連動する形で徴収額が決まる。変動部分は主に、収集回数をカウントして徴収額算定の根拠とする。全体として、この制度を導入した自治体では、家庭ゴミを30%程度削減する効果が得られた。これは専ら、分別が強化され、リサイクルに回る廃棄物が増えたことによる。リサイクル向けの廃棄物は、住民1人当たり平均で、農山漁村地方で年間93kgとなっているが、従量型料金の自治体では105kgに上る。 重量の把握は主に収集回数によりなされるため、集合住宅の少ない自治体でないと導入が難しいという難点がある。それでも、対象自治体の住民数の合計は、2016年から2022年にかけて44%増加し、660万人に達した。ただし、2025年までに2500万人という目標にはまだ遠く及ばない。 KSM News and Research -
2024.01.22
仏政府、2月1日付で電力料金を8.6-9.8%引き上げへ
ルメール経済相は21日夜、民放テレビ局TF1とのインタビューの中で、2月1日付の電力料金引き上げ幅について発表した。通常料金の個人(1060万人)について8.6%、夜間割引がある契約の個人(930万人)について9.8%の値上げになると予告した。 政府は、2月1日付の電力料金引き上げ幅を10%未満に抑えると約束していたが、その中で高めの引き上げ幅を選んだことになる。電力卸価格は、高騰した1年前と比べて、足元で30%の低下を記録しているが、政府は、2021年に導入したエネルギー価格抑制措置を2025年までに段階的に廃止する方針を決めており、同措置の枠内で決めた減税措置を縮小することで、電力料金を引き上げる。 政府は具体的には、TICFEと呼ばれる消費税を、通常の1MWh当たり32ユーロから、個人について1ユーロへ引き下げており、これにより年間に90億ユーロの負担が国に発生していた。2月1日付では、このTICFEが1MWh当たり21ユーロまで引き上げられ、国は年間ベースで60億ユーロの増収を得る。電力卸価格の低下分を、国が減税幅の追加縮小により消費者から吸い取る格好になる。 KSM News and Research -
2024.01.19
仏の企業倒産件数、2023年は前年比35.8%増
1月18日に発表されたアルタレス・グループの調査によると、2023年の仏の企業倒産件数は5万7729件で、前年(2022年)比35.8%の増加を記録した。10-12月期の倒産件数は1万6820件と、前年同期比37.2%増になり、10-12月期にこの水準の増加率が記録されたのは1992-93年の不況期にまで遡る。2022年通年では、2023年をはるかに上回る前年比49%の増加率が記録されていた。この倒産の急増は、コロナ危機下で国が実施した広範な資金援助の反動が一因だが、それだけではなく、財務体質の財弱な多くの企業が極めて厳しい経済環境下で経営を強いられているという構造的問題が背景にあると分析されている。他方、BPCEグループは、「2023年は中小企業・中規模企業にとって極めて困難な年であった」と分析しており、企業倒産によって脅かされる雇用数の規模を24万人と試算している。これは2019年比では1/3増に相当する。2024年も引き続き25万人の雇用が脅かされるリスクがあり、部門別では特に、金利上昇に直撃された不動産・建設部門、マージン減少に圧迫される外食・企業向けサービス部門で苦しい状況が続く。 KSM News and Research -
2024.01.19
RSA受給者への就業努力義務付け、試験導入で一定の成果
主な生活保護手当であるRSAの受給者を対象にした就業努力等の義務付けについて、試験導入が開始から1年目を迎えた。既に一定の成果が上がっているとレゼコー紙が報じた。 この制度は、2025年の本格導入開始を目指して準備が進められている。1年前に18県が試験導入を開始。近く新たな県が追加される見通しだが、40程度の県が導入を希望しているという。 この制度は、RSAの受給者に対して、一部の例外を除いて職業安定の公的機関への登録を求め、週15時間の就業努力等を義務付けるという趣旨。義務化を前に、業績評価を行う目的で試験運用がなされている。この年頭時点では、試験地域における4万人の受給者のうち、1万6300人が登録と就業支援の対象となっている。うち半数が、就業の見込みが高いと判定され、就職活動や研修、起業支援などの対象となっている。全体的な結果はまだ出揃っていないが、去る6月に就業等支援を受けた人のうち3割は5ヵ月後に1ヵ月を超える雇用契約を得るなど、一定の成果がみられるという。 登録と支援は年頭に発足したフランス・トラバイユが担当することになる。担当者1人につき60人の登録者を上限に設定、このため、制度が本格化するにつれて人員を増やす必要があり、費用負担も大きくなる。2023年には2100万ユーロの予算が設定され、2024年には1億7000万ユーロの予算が予定されている。2025年に義務化されるとさらに大きな予算が必要になる。 KSM News and Research -
2024.01.19
ウクライナ支援国際会議:フランスはカエサル自走榴弾砲の供給拡大を約束
ウクライナ軍事支援に関する国際会議が18日にパリで開かれた。砲撃兵器の供給について協議した。 この会議は、ウクライナ防衛諮問グループ(通称「ラムシュタイン・グループ」)に加わる50ヵ国程度のうち、砲撃兵器部会に加わる23ヵ国の参加を得て開かれた。同部会はフランスが座長を務めている。ロシアによるウクライナ侵攻開始からもうすぐ2年が経過することになり、兵器供給の支援を強化する必要が強まる中での開催となった。ウクライナのウメロフ国防相は、安全上の理由から出席を見合わせ、リモート方式で参加した。 会議の際に、フランスは、ウクライナ側の要請に応えて、仏ネクスター(KNDS傘下)が製造するカエサル自走榴弾砲の供給拡大を提案した。ウクライナ軍は現在、カエサルを49台(フランスが30台を、デンマークが19台を提供)保有している。ウクライナはさらに6台を購入しており、こちらは近く引き渡される予定となっている。ネクスターの仏工場は、月産6台と従来の3倍に生産能力を引き上げており、製品を優先的にウクライナに供給する。仏政府は、ウクライナ支援予算から5000万ユーロを支出し、12台を提供すると約束。会議の参加国は、あと60台の提供の資金分担(2億5000万ユーロ)について協議した。 KSM News and Research -
2024.01.18
EUへの不法越境者、2023年も増加
欧州国境沿岸警備機関(Frontex)によると、欧州連合(EU)の域外から域内への不法越境者の数は2023年に38万人に達し、前年比で17%増加して、2016年以来での最高を記録した。過去3年間にわたり増加傾向が続いた。 このうち41%は中央地中海ルート、26%は西バルカン・ルート、16%は東地中海ルートで越境した。また、出身国別ではシリア人が10万人超と最多で、ギニア人とアフガニスタン人がそれに続いた。これら3ヵ国の出身者が全体の3分の1以上を占めた。不法越境者に女性が占める割合はほぼ10%、未成年が占める割合もほぼ10%だった。 KSM News and Research -
2024.01.18
ラポスト、携帯子会社ラポスト・モバイルを売却か
仏経済紙レゼコーによると、仏ラポスト(郵便)がMVNO(仮想移動体通信事業者)子会社のラポスト・モバイルの売却を検討している。売却後もブランドを維持し、郵便局での販売を続けるという。 ラポスト・モバイルは2011年に発足。現在はラポストが51%、キャリアのSFR(アルティス傘下)が49%を出資する合弁で、ネットワークはSFRから借りている。顧客数は230万人、市場シェアは4%で、キャリア4社に続く第5の事業者となっている。ラポストの多角化事業としては一応の成功例で、年間8%の増収を記録、2022年に黒字化した。2024年には、4800万ユーロのEBITDAに対して、3億3600万ユーロの売上高を見込んでいる。 SFRは売却先の決定に拒否権を発動することが可能で、先買権も保有している。SFRは顧客数の減少が続いており(7-9月期には11万8000人減の2040万人に)、ラポスト・モバイルの買収により加入者数を一気に200万人余り増やせるという利点があるが、利益率の改善も課題であるだけに、買収価格が決め手になる。キャリアではほかに、ブイグ・テレコム(加入者数1540万人)が、MVNOの買収に積極的であり、2021年には5億ユーロで加入者数200万人のユーロ・アンフォルマシオン・テレコム(オーシャンテレコム、NRJモバイル、Cdiscount Mobile、クレディミュチュエル・モバイル、CICモバイル)を、CIC(クレディミュチュエル銀行傘下)より買収している。反面、キャリア第4位のフリー(イリアッド傘下)は外国進出に熱心で国内のMVNO買収には関心を示していない。最大手のオレンジ(顧客数3550万人)も買収に関心がないものとみられている。 KSM News and Research -
2024.01.18
デュソプト前労相に無罪判決
パリ地裁は17日、デュソプト前労相を被告人とする不正容疑の裁判で、被告人に無罪判決を言い渡した。 デュソプト氏は、アノネー市(アルデッシュ県)の市長を務めていた2009年に付与した水処理契約を巡り、契約先のSaur社を不当に優遇した容疑で起訴されていた。検察側は、執行猶予付き禁固10ヵ月と1万5000ユーロの罰金刑を求刑していた。パリ地裁は、契約の付与が公共調達法典の規定に則って行われ、市長が特権的な情報をSaur社に対して供与した事実はないと認定。無罪判決を下した。 デュソプト氏は2007年より下院議員を務め、2018年にマクロン政権下で公務員閣外相として初入閣。予算担当相を経て労相に就任し、労働市場改革など困難な案件を担当した。アタル内閣発足に伴い、閣僚職から退いていたが、無罪判決を得て、アタル内閣が近く発表する追加の入閣者リストに連なる可能性を含めて、政治の表舞台に復帰する土台が整った。 KSM News and Research -
2024.01.17
2023年人口統計:出生数が戦後最低に
16日にINSEEが発表した人口統計によると、フランスの人口は2024年年頭に6840万人となった。1年前から0.3%増加した。 出生数は67万8000人となり、前年から4万8000人減少した。戦後(1946年以来)で初めて70万人台を割り込んだ。最近の出生数のピークだった2010年と比べると15万人減で、2割近くの減少となった。 他方、死亡数は63万1000人となった。前年を4万4000人下回り、率にして6.5%減少した。新型コロナウイルス危機前の水準と比べるとまだ高めだが、顕著な改善がみられた。平均余命は男性が初めて80才に到達。女性は85.7才まで伸びた。75才以上の層が全人口に占める割合は10%を越えて、社会の高齢化が一段と進んだ。 人口の自然増減は4万7000人の純増となった。移民の流出入は暫定値で18万3000人の流入超となり、この幅は前年の16万1000人を上回った。 合計特殊出生率(1人の女性が生涯に出産する数で示す)は1.68となり、前年の1.8を下回った。1993年以来で最も低い水準まで下がった。出産が最も多いのは30-34才となっており、出産年齢の高齢化が進んだ。インフレ亢進や社会不安も出生率の低下に影を落としているものと考えられる。 KSM News and Research -
2024.01.17
マクロン大統領の記者会見:改革路線の継続など予告
マクロン大統領は16日夜、大統領府で記者会見を開いた。政策運営の今後の展望を示した。記者会見の模様はテレビで放送された。 マクロン大統領はアタル首相を起用して内閣を改造し、巻き返しを図っている。6月の欧州議会選挙が当面の焦点になる。大統領は、改革路線を改めて打ち出し、支持回復に向けてリーダーシップを発揮する姿勢を示した。 大統領は、2017年の就任以来で自らが進めた改革により、今後の成長のための土台が築かれたとし、衛生危機に始まる一連の危機を乗り越える上でも有益だったとの見解を示した。その上で、成長促進のための新たな改革法案を準備すると予告。行政手続きの簡素化や、規格や規制等の整理を通じて、成長やイノベーションを阻害する要因を取り払い、また、既得利権の排除を進めるなどと説明した。労働市場改革も完全雇用の実現に向けて第2段階に入ると予告。移動と住居面の支援を通じて就労を促進することを目指すと説明した。 大統領はまた、出生率が目立って低下している点について、対策に乗り出すと予告。両親ともに6ヵ月の出産休暇を認めて、その間の収入の改善も図ると説明。不妊治療にも力を入れると約束した。 公平な社会の実現では、教育の重要性を改めて強調し、制服導入などを含めた教育改革の推進を図るとした。公務員報酬には能力・業績への連動を強めると説明。中流階級向けの20億ユーロの減税措置も再確認した。医療問題では、外国人医師の誘致に取り組む姿勢を示し、医薬品については患者自己負担枠の2倍増を予告した。 大統領は記者会見において、「フランスがフランスであり続ける」ために努めるなどと言明したが、こうした言辞については、極右にも通じるものだとする批判の声が左派野党などから上がっている。 KSM News and Research -
2024.01.17
フランス、2023年に欧州最大の電力輸出国
S&Pグローバルコモディティインサイツの統計によると、フランスの電力貿易は2023年に50.1TWhの出超を記録した。欧州諸国中で最大の電力輸出国となった。 出超幅は、スウェーデン(28.6TWh)とノルウェー(17.3TWh)を大きく上回った。これら2ヵ国は水力発電が盛んで、電力輸出国として常に上位にあるが、フランスは両国を抜いてトップに立った。4位はスペイン(13.9TWh)で、同国の場合は、再生可能エネルギー(風力及び太陽光)の好調に加えて、電力価格抑制に関する欧州連合(EU)の合意により、価格引き下げをもたらす特例措置を認められたことで、価格競争力が高まったことも追い風になった。 フランスの場合は、原子力発電の回復の効果が大きい。国内の多くの原子炉に故障が見つかったことで、原子力発電量は2022年には279TWhと極めて低い水準に下がっていたが、修理が進み、2023年には320.4TWhまで回復した。これに加えて、再生可能エネルギーの成長も貢献。12月に1日間の電力輸出が最高記録を更新した時には、風力発電が17GW超の稼働と過去最大に達していた。 電力需要が全般的に優れない中で、だぶついた電力が近隣諸国に輸出されているという側面もある。原子力廃止に踏み切ったドイツでは、電力貿易が2023年に10TWhの入超と、2002年以来で初の入超に転じた。S&Pによると、フランスの電力輸出は、2024年から2025年にかけて、6-8TWh程度増えることが予想される。ただ、こうした市況が今後も続くなら、電力の余剰が価格を押し下げる効果を及ぼし、再生可能エネルギー等への投資意欲を削ぐ要因になる懸念もある。S&Pは、2030年時点で電力価格が1MWh当たり50-60ユーロ程度となり、フランスの出超幅は現在の2倍の100TWh超に達すると予測している。 KSM News and Research -
2024.01.16
モネドパリ、性急な新硬貨製造で大失態
仏造幣局(モネドパリ)が新たな硬貨の製造を急ぐあまり、多数の硬貨を無駄に製造してしまうというミスをおかしていたことが報道で判明した。造幣局は2024年はじめまでに10ユーロセント、20ユーロセント、50ユーロセントの新硬貨を合計2700万枚製造し、1月7日にはルメール経済相の出席の下に新硬貨を披露する予定で、招待状まで発送済みだったという。予定に間に合わせるために、硬貨の新たな図柄に関して欧州委員会の許可がおりないまま、11月はじめに製造を開始してしまった。 ちなみにユーロ硬貨の図柄は片面が全加盟国共通で、もう片面は各国が独自に決めるが、欧州委員会の許可取得が義務付けられている。また独自の図柄をあしらう面の縁には欧州連合(EU)のシンボルである12の星を必ず刻印する必要がある。ところが、欧州委員会は12月はじめに新硬貨の星のデザインが見えにくいとの理由で、新たな図柄を却下した。そのため造幣局は2700万枚をさらに大急ぎで作り直さざるをえない状況に追い込まれたという。 造幣局では、2700万枚は年間生産枚数の2%未満に過ぎないと弁明しているものの、このミスの費用は70万ユーロから120万ユーロ程度と推定される。 KSM News and Research -
2024.01.16
アトス、嵐の中でCEOが交代:株価は急落
仏アトス(情報処理)が15日に経営人事異動を発表した。10月に就任したばかりのベルネールCEOが辞任した。同社株価は同日の取引開始直後に15%を超える急落を記録し、株価は4ユーロ程度まで下がった。 アトスは債務返済に行き詰まっており、経営立て直しのために事業の再編を進めている。情報処理部門を「Tech Fondations」として分社化し、チェコの実業家クレティンスキー氏に売却する計画だが、最近になり、サイバーセキュリティ・ビッグデータ事業についても、エアバスに売却する方向で交渉を開始したことも明らかにしていた。アトスは、1年以内に15億ユーロの銀行融資を返済する必要があり、2年以内の要返済額は20億ユーロを超える。事業売却は債務再編と立て直しに必須の条件となるが、報道によると、クレティンスキー氏への売却交渉は実現可能性に黄信号が灯っているという。債権銀行団との交渉も間近に迫っているが、その行方も混とんとしてきた。 ベルネール氏はコンサル大手アクセンチュアの出身で、事業再編を指揮する目的でCEOに起用されたが、「戦略の調整と実行のためのガバナンスに関する見解の相違」を理由に退社した。CEOの後任には、ポール・サレ財務部長が昇格。財務部長の後任には、ボーダフォンなどで勤務経験があるドプレスト氏が社外から起用された。ミュスティエ会長は、サレ財務部長のCEO就任について、企業再編等で実績ある人物が変革の時期にあるアトスの経営者としてふさわしいとコメントした。銀行団やクレティンスキー氏との会合を控えた今週がアトスの正念場になる。 KSM News and Research -
2024.01.16
LEPの利回り、5%に引き下げ:定額生保は2023年に利回り上昇
経済省は15日に、利息非課税の貯蓄口座の利回り改定について発表した。2月1日付で、所得制限がある貯蓄口座LEPの利回りが、6%から5%へ引き下げられる。所得制限がないリブレA及びLDDSは公約通りに3%のまま据え置かれる。両口座の利回りは2025年1月31日まで3%のまま据え置かれることになっている。 利息非課税の貯蓄口座の利回りは年2回、2月と8月に改定される。インフレ率などに連動する形で改定される規定になっている。インフレ減速を経て、本来の規定に基づけば、LEPの利回りは4.4%まで引き下げられるはずだったが、5%という高めの水準に維持された。 他方、競合する貯蓄商品である定額生保の利回りも上昇傾向を示している。発表された2023年利回りは、会社や商品により2.75-3.7%に上った。平均では2.5-2.7%となる見通しで、これは前年と比べて0.8ポイント程度の上昇となる。金利上昇により運用の可能性が広がったことに加えて、競合するリブレAとの格差を広げることはできないという事情もあり、各社とも努力して利回りを引き上げている。 KSM News and Research -
2024.01.15
ウデアカステラ教育相、子どもを私立学校で物議に
発足早々のアタル内閣が大臣の失言問題で批判を受けている。ウデアカステラ教育相の発言が物議を醸した。 ウデアカステラ教育相は、ボルヌ前内閣ではスポーツ相を務めていたが、アタル内閣では、教育・青少年・スポーツ・五輪相に昇格した。教育相は、アタル首相がこれまで務めていた職務であり、首相が教育問題を優先課題に据えていることもあって、ウデアカステラ氏の抜擢は特に注目されていた。 ウデアカステラ氏については、実子がパリ市内のカトリック系私立名門校スタニスラスに通っていることがニュース専門サイト「メディアパルト」により報じられていた。ウデアカステラ氏はこれについて、公立学校では病欠等の教員の補充が不十分であり、不満に思って私立学校を選んだと説明したが、この発言に対して、教職員組合などが、行政の貧困の責任を教員に押し付けるものだとして強く反発。教育相は13日までに、一部の教員を傷つける発言だったと認めて謝罪し、担当大臣としてこの問題にも取り組み、既に上がりつつある成果をさらに大きくすると決意を示した。元スポーツ選手のウデアカステラ氏については、教育相の器ではないと力量を疑問視する声も聞かれる。近く任命される予定の担当相・閣外相に、教育関連でどのような人材が起用されるかが注目される。 KSM News and Research -
2024.01.15
容器包装前面表示制度「ニュトリスコア」、基準が厳格化へ
フランスの容器包装前面表示制度「ニュトリスコア(Nutri-Score)」の基準が近く改められる。糖分、塩分、甘味料の含有量に関する評価が厳しくなる。 ニュトリスコアは、食品の栄養表示の任意制度として2017年に導入された。食品を栄養についてAからEまでの5段階に分類し、色分けをして容器包装上に表示するという趣旨で、フランスのほかに欧州6ヵ国が採用している。フランスでは近く基準の見直しを定める省令(アレテ)が公示される予定で、公示から2年以内の表示修正が求められる。 基準改正では、糖分が多く含まれている製品が降格となる。ネスレのシリアル「Chocapic」の場合は、原材料に含有の糖分も評価基準に含める改正により、ランクが最高のAから2段階降格のCとなる。また、「飲むヨーグルト」のような製品は、固形物から液体へと分類が切り替えになり、これも降格を招く要因になる。ダノンの「Actimel Multifruit」は、Bから最低のEにまで降格される。 ニュトリスコアは任意制度だが、1200社近くが採用しており、食品の6割程度がスコアを表示している。基準改定により全体の3分の1程度の食品が降格になるとの見方もある。スコアが販売に影響を及ぼすことも知られており、2023年秋までの1年間で、A及びBの製品の販売は1.1%伸びたが、D及びEは同程度の減少を記録したという。 KSM News and Research -
2024.01.15
ダティ文化相就任で揺れるパリ政界
アタル新内閣にダティ氏が文化相として入閣した件が、地元のパリ市の政界を揺るがせている。2026年の次期パリ市議会選挙の行方を大きく左右する可能性がある。 ダティ氏はパリ7区の区長として、保守野党「共和党」のパリ市議会におけるリーダーを務めていた。イダルゴ市長(社会党)のライバルとして、厳しい市政批判を展開してきた。イダルゴ市長はダティ氏について、「罵倒と侮辱と恒常的な挑発」を市議会に持ち込んだと評しているが、論敵による評であることを割引しても、これがダティ氏の人となりの通常の評価であることは大方が認めるところだろう。ダティ氏が文化相就任を引き受けたのは、マクロン大統領から、2026年のパリ市議会選挙において大統領のルネサンス党と共和党の選挙協力を実現し、ダティ氏を市長候補に据えるとの約束を得たためだとの噂も流れている。共和党のシオティ党首は、ダティ氏の除名手続きを開始すると予告したが、パリ市議会の共和党は、ダティ氏の支持派と敵対派、そして様子見の勢力の3つに分裂しており荒れ模様となっている。与党内にもダティ氏を担げないと考える勢力があり、この人選が正解であるかどうかの見極めはまだ難しい。 KSM News and Research -
2024.01.12
仏ベンチャー企業の資金調達、2023年に大幅減
EYの集計によると、フランスのベンチャー企業による資金調達額は2023年に合計で83億2000万ユーロとなった。例外的な好況だった前2年に比べて大きく後退、前年比では38%減、2021年比では28%減を記録した。2020年に比べると54%高い水準にある。 新型コロナウイルス危機が発生した2020年以降は、危機の影響を背景に急速にデジタル化が進んだこともあり、ソフトウェア関連を中心にベンチャー企業への投資が大きく伸びた。2023年にはそうした動きが一段落し、調達額が常識的な水準に戻った感もある。 調達件数は2023年に715件となり、前年の735件から減少したものの、金額の推移と比べると後退幅は小さい。全体として大規模な案件は少なくなり、1億ユーロ超の案件数は55%減(調達額では57%減)、5000万-1億ユーロの案件数は40%減(調達額では41%減)を記録した。反面、1000万ユーロ未満の小規模な案件数は6%増を記録。これは、アーリーステージの企業への資金供給を行うエコシステムが育ってきていることを示唆している。 分野別では、ソフトウェア・IT(案件数198件、調達額20億7700万ユーロ)が調達額で首位から2位に後退。入れ替わりで、グリーンテック(案件数105件、調達額27億400万ユーロ)が首位となった。エネルギー価格の高騰や供給懸念が技術投資への関心を高めたものとみられる。平均して案件の規模が大きいことにも特徴がある。他方、ソフトウェアは後退したものの、人工知能(AI)関連への関心は高く、同分野における資金調達の25-30%がAI関係となった。ミストラルAIによる2度の大型調達(1億500万ユーロと3億8500万ユーロなどの案件も目を引いた。 KSM News and Research -
2024.01.12
アタル新内閣の閣僚名簿発表、ダティ元法相が文化相として入閣
アタル新首相の内閣の顔ぶれが11日に発表された。12日午前に初閣議が行われる。 11日には、11人の大臣と、3人の担当相の名簿が発表された。その他の担当相及び閣外相の名簿は追って発表される。大臣の数はこれまでよりも少なくなり、少数精鋭のイメージを打ち出した。アタル首相は11日夜のテレビインタビューの機会に、行動し、成果を挙げることが内閣の務めであるとし、閣僚には国民に尽くすため200%の働きを求めるなどと説明した。 発表された14人の閣僚は、男女7人ずつで同数を保ったが、11人の大臣に限ると、男性が7人、女性が4人という構成になる。新内閣では、ルメール経済相、ダルマナン内相、フェノー農相、ルコルニュ軍隊相、デュポンモレティ法相、ルタイヨー高等教育相が留任。主要閣僚の多くが留任という形になった。その中では、パニエリュナシェ・エネルギー移行相が担っていたエネルギー問題の権限が、ルメール経済相の権限に追加されたことが注目される。パニエリュナシェ氏は、14人の閣僚リストの中には入っていない。 新入閣の中では、やはりラシダ・ダティ元法相(女性)が文化相に起用されたのが目を引く。ダティ氏は北アフリカ系で、サルコジ右派政権で法相に抜擢され、現在はパリ市市議を務め、パリ市議会の保守野党「共和党」グループを率いていた。歯に衣着せぬ尖った性格で知られ、マクロン政権についてもこれまで裏切者の集まりだなどと厳しく罵倒していただけに、今回の入閣には意外の念が付きまとう。共和党のシオティ党首は入閣の発表を受けてダティ氏を除名すると予告した。ダティ氏は、カルロス・ゴーン事件絡みで収賄容疑にて予審開始通告(担当の予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続き)も受けており、同氏の起用が論争を引き起こすのは避けられない。いずれにせよ、この人選は、内閣が右寄りの方向を探っていることを表しているものと考えられる。 右寄りの人選ということでは、やはりシラク右派政権下で閣僚経験があるカトリーヌ・ボートラン氏(女性)が、労働・保健・連帯相として入閣したことも注目される。幅広の権限を伴い、席次では第3位の閣僚として処遇された。 他方、外相には、与党ルネサンスのステファン・セジュルネ幹事長が起用された。セジュルネ氏はアタル首相の内縁の夫でもあったことで知られる。マクロン大統領の信任も厚く、求心力強化を目指した人選と考えられる。 ウデアカステラ・スポーツ相は留任の上、アタル首相の前職である教育相の職務を引き継ぎ、昇格となった。アタル首相が、重要政策課題として位置づける教育改革を自ら統制することを念頭に置いた人事とみられる。 KSM News and Research -
2024.01.12
仏大手3銀行、ATM網の共同化に着手
仏大手銀行3社が、共同運営のATM網の展開に着手した。昨年末に最初のATMが設置された。 共同運営には、BNPパリバ、ソシエテジェネラル、クレディミュチュエル(アルケアを除くリテール銀行とCIC)の3社が加わる。折半出資の合弁会社2SFが「キャッシュ・サービス(Cash Services)」のブランド名で展開・運営する。初号機がミュルーズのメッセ施設内に設置され、続いてこれまでに7台が、いずれも銀行支店外の場所に設置された。6月末までに60ヵ所程度が試験的に整備される。この期間中に提供されるのは現金引き出しのサービスのみだが、将来的には小切手入金や現金預入、振込等のサービスも可能にする。最終的には、参加する各銀行が自前で運営している1万ヵ所をキャッシュ・サービスの拠点7000ヵ所にすべて鞍替えする。 現金決済は減少傾向をたどっており、2022年には、決済全体に占める現金の割合は50%まで低下した(2016年は68%)。国内のATMの台数は2022年末に4万6292台となり、5年前に比べて7000台近く減少した。大手3行は経費節減をにらんで、重複の多い都市部を中心に、需要減少に即してATMを減らしてゆく考えで、共同運営が動き出した。 KSM News and Research -
2024.01.11
ルメール経済相、「麻薬密売団も資産凍結の対象に」
ルメール経済相は8日に開いた記者会見の機会に、麻薬密売団の資産凍結を可能にする方針を明らかにした。法律を改正し、戦争犯罪の容疑者やテロ資金と同列の扱いで凍結を可能にする。経済相によると、国際的な大規模密売団の指導者等を対象に、銀行預金や不動産を中心とする資産を凍結する。凍結の決定は内務省との協調の下で下される。 国内の麻薬押収量は2022年に157トン強となり、過去最高を記録した。大麻(129トン)とコカイン(28トン)が中心となっている。当局機関Ofastによると、麻薬関連で直接・間接に24万人が国内で「就労」しており(うち2万1000人が「フルタイム」)、その経済・社会的な規模はかなり大きい。依存症対策機関OFDTによると、国内には500万人を超える常習消費者がおり、麻薬密売の年商規模は30億ユーロに上ると推計されている。麻薬取引に絡む犯罪も増加しており、特に凶悪化が目立っている。警察の集計によると、麻薬取引関係で生じた殺人事件で昨年1-11月には315人が死亡。この数は前年比で57%増加している。 戦争犯罪やテロリズム関係の資産凍結は国内で現在、4600を超える個人・団体が対象となっている。うち4分の3は欧州連合(EU)の制裁対象(うちウクライナ侵攻関連は2000者)、残りのほとんどは国連の制裁対象となっており、仏当局による凍結決定は50者程度と少ない。 KSM News and Research -
2024.01.11
郵便局で試着、ラポストがサービスを試験導入
ラポスト(郵便)が、試験的な取り組みとして、郵便局内に試着スペースの設置を進めている。顧客は、ネットショップで購入した製品を郵便局で試した上で受け取りの是非を決められる。 ラポストはサービス多角化の一環としてこの取り組みを開始した。購入品を受け取った人が返品のために郵便局に来るケースが多いことを踏まえて、サービス向上を目的に開始した。パリ市内の2ヵ所と、ラニオン(コートダルモール県)及びラロシェル(シャラント・マリティム県)の合計4ヵ所で開始。近く、バランシエンヌ(北仏)、サンテティエンヌ(リヨン近郊)、アミアン(パリ北東)に導入を広げる。 衣類や靴などのほか、電気・電子製品等についても試用ができるよう設備を整えた。ラポスト側の広報には言及がないが、配達を減らして郵便局での受け取りを増やせれば、ラポスト側の経費節減に向けた展望も開ける。この試みについて、独立系商店主の連合組織などは、インターネット販売を後押しして商店の顧客を奪う行為だと批判。試着スペースの衛生管理が行き届いているのか、などと疑念を呈している。 なお、通信販売業界団体FEVADの集計によると、2023年7-9月期のEC売上高(商品・サービスとも)は383億ユーロとなり、前年同期比で9.8%増加した。商品販売に占めるECシェアは2023年に12.5%に上ったとみられている。 KSM News and Research -
2024.01.11
レンヌのメトロB線、故障で長期運休に:シーメンス・モビリティが開発
レンヌ市のメトロB線が故障により長期の運休に追い込まれた。原因はまだ判明していない。 レンヌ市のメトロB線は2022年9月に開業した。既存のメトロA線と交差する形で新線が整備され、レンヌ都市圏では、住民の4分の3がメトロ駅から600メートル以内に居住という利便性が達成されていた。新線は、独産業大手シーメンス子会社のシーメンス・モビリティが自動運転システム「Cityval」と車両を供給。これは、フランスで開発されたVALシステムと呼ばれるゴムタイヤで走行する自動案内軌条式の旅客輸送システムで、全部で25本の列車が納入された。 メトロB線は1年余りに渡り支障なく運行されていたが、昨年11月18日に故障が発生し、12月22日まで運休となった。年末にようやく運行が再開されたが、1月3日に再び故障が発生。修理のために少なくとも3月末まで、再び運休という事態になった。今回の故障は、線路の中央にある案内軌条と接触するボギーの一部部品の摩耗が原因で発生。シーメンス・モビリティは対策として、問題の部品をすべての車両について交換することとしたが、これほどの短期間で予想外の摩耗が発生した理由については明らかになっておらず、調査した上で根本的な対策を講じることになる。 レンヌのメトロB線については、納入遅れに伴う3000万-4000万ユーロのペナルティが未払いであるともいわれている。新たな故障の発生で、会社側と都市圏側の間の緊張が高まるものとみられる。 KSM News and Research -
2024.01.10
仏貿易赤字、2023年に縮小:それでも1000億ユーロ超に
8日発表の税関統計によると、2023年11月までの12ヵ月間の仏貿易収支は1103億ユーロの赤字となった。同赤字は2022年通年では過去最大の1640億ユーロに上っていたが、2023年にはこれを顕著に下回ることが確実になった。 政府は、貿易赤字が2023年に1050億ユーロ、2024年には950億ユーロまで縮小すると予想している。ただ、コロナ前の2019年には、貿易赤字は600億ユーロを下回っており、危機前と比べて高めの水準が続くことになる。 11月の月間貿易赤字(直近3ヵ月間の平均で示す)は74億ユーロとなり、10月の77億ユーロから減少した。輸出は2億ユーロ増の496億ユーロを記録。輸入は1億ユーロ減の570億ユーロとなった。貿易赤字の縮小は、炭化水素価格が一時と比べて落ち着いたことに由来している。それでも、エネルギー製品の貿易赤字は月間で50億ユーロに上っており、赤字の大部分がエネルギー製品の輸入に由来していることになる。輸出面では、電力収支が黒字を続けているものの、価格低下を受けて、同輸出額は横ばいとなった。 経済省の予想によると、外需は2023年の経済成長率に0.6ポイントのプラス貢献をもたらす見込み。輸出が回復(2.1%増)する一方で輸入はほぼ前年並みとなり、全体で経済成長を押し上げる役割を果たした。 KSM News and Research -
2024.01.10
仏中古住宅の取引件数、2023年に22%減
不動産業連合組織FNAIMの集計によると、中古住宅の取引件数は2023年に87万5000件となり、前年比で22%減少した。住宅売買は好況を続けてきたが、足元の金利上昇の影響が浸透し、2023年に入って大幅に冷え込んだ。 取引価格の低下はパリ首都圏で特に目立った。不動産仲介大手センチュリー21の集計によると、パリ市内の物件の平均取引価格は1平方メートル当たり9774ユーロとなり、前年比で5.5%低下した。首都圏では、一戸建てで3656ユーロ(5%低下)、アパートで4445ユーロ(7.8%低下)と、やはり値下がりが目立った。 ただし、フランス全体で見ると、一戸建ての取引価格はほぼ横ばい、アパートでは1.5%低下と、取引件数が大きく縮小した割には、価格はさほど下がっていない。地域により推移にばらつきも目立ち、ボルドーやリヨンなど、近年価格高騰が目立った一部の大都市では、反動で値下がりが顕著だが、ルマン、トゥール、ポワティエ、ナント、ラロシェル、アヌシーなどでは、6-7%の値上がりが続いており、全体でみると、2008年の金融危機時のような価格の急落は生じていない。買い手の側では、金利上昇に伴う購買力の縮小にあわせて、購入物件の面積を小さくするといった動きがみられるという。 KSM News and Research -
2024.01.10
アタル新首相、6月の欧州議会議員選挙が最初の関門か
1月9日に任命されたガブリエル・アタル首相は、9日午後に首相府においてボルヌ前首相との引き継ぎ式を行った後、洪水で多大な被害が出ている北仏パドカレ地方を視察に訪れ、被災した住民らと面会した。 アタル首相はマクロン大統領の第1期就任後まもなく、教育・青年担当閣外相、政府報道官、予算担当相、教育・青年相を歴任して現在に至っており、首相就任後の演説の中では、昨年7月以降に教育相として発表した「学校でのアバーヤ(イスラム教の女性の黒い長衣)着用の禁止」、「生徒の学力増進策」、「いじめ対策」といった措置に触れ、こうした「学校の大義」を首相府に持ち込むと述べて政策継続への意気込みを強調した。首相はまた、特に極右陣営が取り沙汰する「フランスの衰退」という見方に触れてこれに反論。国の「権威」と「治安」を絶対的優先課題として挙げ、「フランスの社会モデルの維持」「移民のより良い管理による国家及び欧州の主権の強化」、「労働の優先などによる経済変革」といった方向性も強調した。 マクロン大統領が弱冠34才のアタル首相を任命したことについては、まずは今年6月の欧州議会議員選挙へ向け、支持率が急上昇している極右RNのジョルダン・バルデラ党首(28歳)に対する砦とし、さらには2027年の次期大統領選挙へ向け与党陣営の建て直しを進めるための心機一転をはかることを狙った人選との見方が多い。国内の左派陣営からは、「マクロン大統領の報道官/クローン」、右派陣営からは「マクロン大統領の操り人形」と、いずれからも同じような批判の言葉が出ている。与党陣営でも当初は人選に驚く声が多かったとされるが、政治センスとコミュニケーション力には定評のあるアタル氏が、新たな飛躍をもたらすことへの期待は大きい。 また、西エル・パイス、米ニューヨークタイムズ等の国外各紙も、その早熟な政治キャリアを始めとしてマクロン大統領との相似性を指摘し、将来の後継者を見る論調で一致している。独デアシュピーゲル誌は、6月の欧州議会議員選挙において、世論調査でトップに付けるRNとの差を縮めることが第1の課題と指摘している。 新首相はまず閣僚人事に取り組むが、今週中にも労組や市民団体との会合を行うと発表している。 KSM News and Research -
2024.01.09
「フランス・トラバイユ」発足、国民は政府の雇用対策を支持
1月1日付で、ポール・アンプロワ(ハローワーク)が「フランス・トラバイユ」に改称された。新組織として就業促進の機能を強化し、政府が掲げる「2027年までに完全雇用を実現する」という目標達成に向けた柱になる。世論調査によると、国民の多くが政府の打ち出した政策を支援している。 レゼコー紙とシンクタンクのモンテーニュ研究所の依頼で行われた世論調査によると、フランス・トラバイユの下で進められる政策のうち、「生活保障手当の一つであるRSA受給者について、フランス・トラバイユへの登録を義務付ける(2025年から)」を支持する人(当該政策が失業率を引き下げるのに役立つか、という問いへの答えを集計)は、全体の64%に上り、かなりの多数派を占めた。「求職者への統制の強化」も、62%の人が支持を表明した。「雇用関連の組織(フランス・トラバイユ、若年者向け斡旋組織のミッション・ローカルなど)の間の連携強化」にも61%の人が支持を表明した。「RSA受給者に対して、週15時間の職業体験や研修、就業活動等に当たることを義務付ける」という、物議を醸した措置にも、60%の人が支持を表明した。 他方、失業者の就業を妨げている要因としては、50%の人が、「就職先の賃金が低すぎる」ことを挙げており、この割合は、8月初頭に行われた世論調査と比べて7ポイント上昇した。このほか、「失業手当制度の存在が就業促進を妨げている」は45%(11ポイント低下)、「企業の社会保険料負担が大きい」は40%強(5ポイント上昇)となった。これらの回答においては、回答者の政治的な傾向により大きな差がうかがわれた。 KSM News and Research -
2024.01.09
仏政府の準備する「エネルギー主権法案」の内容が明らかに
仏政府は現在「エネルギー主権法案」を準備しており、1月末から2月頭頃に閣議への提出を目指している。同法案は1月8日に諮問に付され、その内容が明らかとなった。原子力発電の推進を中心に据えている一方、再生可能エネルギーについては具体的な目標が設定されていないのが特徴となっている。 原子力発電に関しては、2026年までに、EPR(第3世代加圧水型炉)6基分にあたる9.9GWの建設を開始すること、その後、13GW(8基分のEPRに相当)を追加することが明記された。また国内の原子力発電の総容量については「63GW以上」と設定し、オランド大統領下で定められた「2035年までに原子力発電が電源構成に占める割合を50%に引き下げる」という目標や、63.2GWという原子力発電所の総容量上限を撤廃する。 一方で政府は、再生可能エネルギーについて、法案の提案理由書に「洋上風力発電を2035年までに18GW設置、太陽光発電を2035年までに75GW超設置、陸上風力発電では現在の設置ペースを維持」といった目標を掲載しているものの、法律内に目標の言及はない。政府はその代わりに、CO2排出量削減、再生可能熱生産の増加、省エネ強化、化石燃料使用量削減に関して野心的目標を設定した点を強調している。政府関係者は、「(原子力発電をはじめとする)既存のエネルギーでできる限りのことをしてから、それでも足りない部分を再生可能エネルギーが補完することになる」と説明。また再生可能エネルギー目標については、夏までにデクレ(政令)を通じて発表すると予告している。 このほか、「エネルギー主権法案」は消費者保護を強化。エネルギー小売事業者がユーザーに契約内容をより明確に示すことを義務化する。また昨年11月に政府と仏電力大手EDFとがARENHの後継制度に関して合意した内容に基づき、1MWhあたり70ユーロという基準価格を大きく超えてEDFが卸売市場で収入を得た場合、これを消費者に還元する、という措置を法制化する。 KSM News and Research -
2024.01.09
ボルヌ首相が辞任、後任はアタル教育相か
ボルヌ首相が8日に辞表を提出した。後任の首相はマクロン大統領により9日に発表される見通し。 内閣改造はしばらく前からささやかれていたが、ボルヌ首相の続投の是非については大統領の側でも逡巡があった。ボルヌ首相は7日にマクロン大統領と会談したが、この時は進退の話はなかったという。大統領は8日午後に首相を大統領府に呼び、首相交代の決定を伝えたという。 ボルヌ首相は、2022年5月、マクロン大統領が再選を決めた直後に任命された。フランスでは歴代2人目の女性首相の就任だった。大統領選後の総選挙で、連立与党は過半数を失ったが、ボルヌ首相は留任し、困難になった国会運営に取り組んだ。首相はこのため、内閣の信任をかけて、採決をせずに法案の採択を宣言する強制措置(憲法上の条文の名前をとって、俗に「49-3」と呼ばれる)を多発。合計で23回の発動は、ロカール内閣(1988年から1991年までに28回)に次ぐ歴代2位となった。ボルヌ首相はこのため、野党側から批判の矢面に立たされたが、2023年には、大荒れの国会審議の中で、年金改革、失業制度改正、エネルギー関連の改正、そして移民法案を成立させた。マクロン大統領は、手札を擦り切れるまで使ったところで交換を決めた格好になる。 後任人事は8日時点では発表されず、9日に持ち越された。これまでに数人の名前が取り沙汰されたが、アタル教育相の起用が有力視されている。教育相は34才と若く、広報戦略にも長けていることが評価されているという。 KSM News and Research -
2024.01.08
中国政府、フランス産コニャックなどを対象にダンピング調査を開始
中国政府は5日、欧州連合(EU)産のワインを原料とする蒸留酒を対象にしたダンピング調査を開始したと発表した。中国の酒造業界団体の提訴を受けて調査を開始するという。 コニャックなどフランス産の蒸留酒が主要な対象となる。折しも、2024年の「仏中文化観光の年」開始に当たり、仏グレゴワール観光担当相が中国を訪問する中での発表となった。また、EUは去る9月に、中国のEVへの補助金を対象とする調査を開始したが、調査開始に当たってはフランスの強い後押しがあり、今回の中国の調査開始はフランスへの意趣返しとも考えられる。 中国政府の発表によれば、酒造業界団体は去る11月にこの問題を提訴した。団体側は、2022年10月から2023年9月にかけてダンピングの被害があったと主張。不当廉売幅は15.88%に上るとして、応分の制裁関税の導入を要求している。コニャックの業界団体BNICのデルペッシュ理事長は、中国が2020年にオーストラリア産ワインを対象にした調査を開始した際には、不当廉売幅が200%超とされており、今回の提訴は幅が極めて小さいと指摘。不当行為の事実はないとも説明している。なお、中国はコニャック輸出の4分の1(数量ベース)を占める重要市場。調査は12ヵ月から18ヵ月程度続けられる見通し。 KSM News and Research -
2024.01.08
アラン・ドロンさん一家に争い、提訴の応酬に
俳優のアラン・ドロンさんの実子の間の争いが表面化した。ドロンさん本人を含めた提訴に発展した。 ドロンさんの長男でやはり俳優のアントニー・ドロンさんが3日、雑誌とのインタビューの中で、妹のアヌーシュカさんに関して去る11月に被害届を出したことを公表。アントニーさんによれば、ドロンさんの認知症テストの結果が悪かったことをアヌーシュカさんは周囲に隠しており、そのために被害が生じたとして被害届を出した。これに対してアヌーシュカさんは、中傷、虚偽の告発、ハラスメントの疑いで、4日にアントニーさんを相手取り提訴したことを公表。それに先立ち、ドロンさん本人も、弁護士を通じてアントニーさんを相手取り中傷容疑で提訴したことを明らかにした。 ドロンさんを巡っては、ドロンさん自身が「伴侶」と呼んだ日本人女性ヒロミ・ロランさんを相手取った提訴がなされ、この時はアントニーさんとアヌーシュカさんが協調して提訴に加わっていた。ドロンさんの虐待などがあったという疑いでの提訴だったが、こちらは4日に、検察当局が不起訴を決定。捜査では、ヒロミさんの自宅捜索で発見された11万ユーロの現金の出所なども追及の対象になったというが、ヒロミさんによる虐待などの証拠や証言は得られず、当局は、ドロンさんの健康状態の悪化をヒロミさんが引き起こしたとはいえないとして、事件性はないと判断した。同時に、ヒロミさん側が、ドロンさん宅から暴力的に追い出されたと主張した点については、防犯カメラの映像などからそうした事実はなかったと結論し、ヒロミさん側の主張を退けた。 報道によれば、ドロンさんの実子の間では以前から遺産分割を巡る遺恨があった。ドロンさんの精神状態の悪化を経て、対立が一段と深まったものと考えられる。 KSM News and Research -
2024.01.08
企業倒産件数、2023年にコロナ前の水準に戻る
仏中銀が5日に発表した統計によると、企業倒産件数(民事再生等含む)は2023年通年で5万5792件となり、前年比で34%の増加を記録した。新型コロナウイルス危機前の2019年の水準まで戻った。ただし、2010-19年の期間の年間平均である5万9300件と比べるとまだ低い水準にある。 企業倒産は、新型コロナウイルス危機時に導入された支援措置の影響で低い水準に抑え込まれた。その後、常態復帰に伴い企業倒産件数も増加し、2023年には危機前の水準に戻った。部門別では、不動産(40.4%増)と建設(38.7%増)で、金利上昇の影響が色濃く出て倒産が顕著に増加。外食・宿泊業でも44.6%の大幅増を記録した。同部門は危機時に手厚い支援を受けたが、その終了に伴い、一時的に中断されてきた社会保険料の納付再開を含めて、危機時に膨らんだ債務への対応が困難になったことが背景にあると考えられる。規模別では、中小企業以上の規模の大きい企業で倒産が増えているのも懸念材料で、足元では、Habitat(デザイン家具)の会社清算が決まるなど、小売分野での倒産案件も目立っている。 KSM News and Research -
2024.01.05
仏インフレ率、12月に加速:3.7%まで上昇
4日発表のINSEE速報によると、12月の消費者物価指数は前年同月比で3.7%上昇した。前月の3.5%を上回った。減速を続けていたインフレ率がわずかながら再び上昇した。 12月には、エネルギー価格が前年同月比で5.6%の上昇を記録。前月の3.1%と比べて上昇率が増大した。サービス料金も3.1%の上昇を記録、前月の2.8%から上昇し、エネルギーと共に物価を押し上げる要因となった。逆に、食料品は7.1%の上昇で、上昇の勢いは前月(7.7%)よりも鈍った。工業製品の価格は1.4%上昇し、前月の1.9%より減速した。 前月比では、消費者物価指数は0.1%の上昇を記録。前月の0.2%の低下からわずかながら上昇に転じた。輸送を中心にサービス料金が上昇。食料品価格は、生鮮品の値上がりをその他製品の値下がりが補い、全体として前月並みにとどまった。工業製品とエネルギーは前月よりも価格が低下した。 欧州連合(EU)基準のインフレ率は、12月に4.1%となり、こちらも前月の3.9%よりも大きくなった。前月比では、前月の0.2%低下に対して、12月には0.1%の上昇を記録した。 2024年にインフレ率は減速傾向を示すと予想されているが、減速のペースがどの程度になるかは諸説ある。INSEEは6月時点でインフレ率が2.6%まで低下すると予想しているが、エコノミストのパトリック・アルチュス氏の場合は2024年平均で3.4%前後と、かなり厳しい見方をしている。足元では、中東情勢の緊張化を反映した海運運賃の上昇や、高めで推移を続ける石油価格など懸念材料もある。 KSM News and Research -
2024.01.05
電気電子製品等の修理費が値上がり、奨励金制度の導入が影響か
2022年末に導入された電気電子製品等の修理奨励金制度について、消費者団体CLCVはこのほど、修理代金の上昇がみられると指摘する調査結果を発表した。 修理奨励金制度は、電気電子製品等の廃棄物削減を目的に導入された。新品購入時に上乗せ徴収される拠出金を財源として、指定修理業者による修理に係り奨励金が支給される。奨励金は業者に直接に支給され、顧客は奨励金を差し引いた額を支払う形になる。 CLCVは、2023年になされたテレビ受像機や洗濯機などの修理案件を調査した上で、修理料金の上昇がみられ、平均料金は上昇傾向にあると指摘。1-11月の期間には、洗濯機・オーブン(システムキッチン)・調理器で12%、テレビ受像機で14%、携帯電話で18%の修理料金の上昇がみられた。ノートパソコンでは逆に4%の低下がみられた。CLCVは値上がりについて、奨励金があるため値上げした分もあるだろうが、それだけでなく、インフレによるコストの上昇などほかの要因もあると指摘。消費者には、料金を比べて競争を利用するよう促した。 2023年の修理案件数は16万5000件となり、奨励金額は400万ユーロに上った。ただ、目標となっていた50万件には遠く及んでいない。奨励金を受けるには、「QualiRepar」のラベル認定を受けた業者に修理を依頼することが必要で、認定業者数はようやく4700にまで増えた。業者の検索は「annuaire-qualirepar.ecosystem.eco」などのサイトを通じて行うことができる。 KSM News and Research -
2024.01.05
フィンランドの研究所、6Gを準備
1月5日付の仏経済紙レゼコーは、フィンランド・オウル大学にある研究所「6G Flagship」を紹介した。同研究所では、54か国出身500人の研究者が2018年以来6G開発に向けた研究を行っている。同プロジェクトの予算は2018-2026年にかけて2億5100万ユーロ。フィンランド通信大手ノキアなども参加する。 6Gは、2030年代初頭の使用開始が目指されている。その具体的な内容は現在のところ明確ではないが、5Gに比べて▽10倍高速(10Gbps)、▽反応時間が10分の1に短縮(レイテンシーは0.1ミリ秒)、▽より多くの物体を接続できる、といった利点を持つほか、データだけでなく、3Dマップ、デジタルツイン、ホログラムなどの通信も可能になることが見込まれている。娯楽のほか、遠隔医療における活用も期待される。同プロジェクトに参加する研究所VTTの研究者は、「6Gでは、スマホではなくVRヘッドセットが主流の媒体になるかもしれない」と指摘。その場合、VRヘッドセットが現在に比べ小型になり、ワイヤレスとなる可能性もあると述べている。 6Gの開発を巡っては、米国や中国も研究を進めている。 KSM News and Research -
2024.01.03
マクロン大統領のテレビ演説:内閣改造の噂も浮上
マクロン大統領は12月31日夜、恒例の年末のテレビ演説を放送した。大統領はこの中で、年末に可決の移民法案を含めて、2023年の政府の一連の取り組みとその成果を強調。2024年の展望については、パリ五輪の開催、ノルマンディ上陸作戦80周年記念(6月)、火災があったパリ・ノートルダム寺院の再建セレモニー(12月)など、重要なイベントがあることを挙げて、これらを国民の結集を図る機会にする意欲を示した。政策面では、学校教育改革をはじめとして、改革路線を継続する決意を再確認。また、欧州議会選挙(6月9日)について触れ、数日前に逝去した欧州委のドロール元委員長の名前を挙げつつ、民主的な欧州の推進を進めるか、それとも虚偽の情報が招くカオスに陥るか、ロシアを止めてウクライナを支援するか、それとも強権的な大国に屈するのか、いずれかを選ぶ機会になると言明。世論調査で支持を伸ばす極右RNを念頭に置いて、選挙で巻き返しを図る意欲をにじませた。政府は1月3日に新年の初閣議を予定していたが、招集を1週間延期し、10日とすることを決めた。この決定を受けて、内閣改造の噂が浮上している。旧年中に国会で可決された移民法案を巡っては、閣内に大きな軋轢があり、法案に反対してルソー保健相が辞任、ルタイヨー高等教育相も辞表を提出したが拒否されたという経緯がある。閣内の動揺は大きく、マクロン大統領が、欧州議会選挙も控えた重要な年に、再スタートを切るため人心を一新する可能性がある。ボルヌ首相の続投の是非も焦点の一つで、マクロン大統領は、年末のテレビ演説の中で、ボルヌ首相の名前を出さずに政府の努力に感謝の念を表明していたが、これを「お別れの挨拶」と解釈する向きもある。 KSM News and Research -
2024.01.03
1月1日付で一連の改定
1月1日付で一連の改定が実施された。法定最低賃金(SMIC)は1.13%の引き上げの対象となった。インフレ率に連動して自動改定された。月額手取りで1383.08ユーロから1398.69ユーロへ引き上げられた。断熱リフォーム向けの奨励金「MaPrimeRenov’」は、断熱効率が特に低い住宅(分類がF又はG)に対象が絞り込まれた。分類の2段階以上の改善が要求されるなど、条件が厳しくなった。ポールアンプロワ(ハローワーク)が「フランス・トラバイユ」に改称された。職業高校の企業研修は有給となった(学年により1週間につき50-100ユーロ)。自動車の速度上限の超過が時速5km以内であれば、減点の対象から除外され、罰金(68-135ユーロ)のみの適用となる。また、運転免許取得の最低年齢が満17才に引き下げられた。月額100ユーロ未満(保険除く)のEVリース制度が発足した。政府が支援を与える新制度で、年間標準所得額が1万5400ユーロ以下(1人当たり)であることが条件となる。職場との距離が15km以上であるか、年間の職業上の走行距離が8000km以上である人が優先される。電気電子製品等の修理奨励金制度で、対象製品が拡大(49から73へ)されると共に、支給額が増額された(洗濯機・食洗機・乾燥機は50ユーロ、掃除機は40ユーロ、テレビ受像機は60ユーロ)。 KSM News and Research -
2024.01.03
缶入りワインが普及、若い世代に浸透か
缶入りワインが普及しつつある。若い世代のワイン離れに歯止めをかける手段になることが期待されている。業界団体の調べによると、缶入りワインの販売量は2022年に前年比で3.2%増加した。ボルドーのCacolac社は、需要増に対応するため、ジロンド県レオニャン市に1000万ユーロを投資して新工場を建設することを決めた。同社は既存の工場で年間500万-600万本を製造しているが、新工場は年産2000万-4000万本の規模となる。需要に応じきれない状況の解消を目指す。2022年6月に設立の同業Canetta社は、185ml入りの缶ワインを5ユーロ程度の価格で販売。熟成が可能なガラス瓶入りのワインに対して、缶入りは新鮮さと品質がそのまま保たれるという利点があり、それぞれの利点を補い合う形での成長が見込めると説明している。「アペロ」と呼ばれるおつまみとアルコール飲料を供するパーティーでの消費や、ファーストフードとあわせる飲み物にするなど、若い世代の消費形態にあった製品として拡販が期待できる。 KSM News and Research -
2023.12.22
TF1、動画配信サービス「TF1」を開始へ
民放大手TF1は新たな動画配信サービス「TF1+」を1月8日に開始する。従来のテレビ放送に代わる収入源の確保を目指す。 TF1は、キャッチアップTVサービスの「MyTF1」のサービスを展開。ここで年間1億ユーロ程度の広告収入を稼いでいる。これに対して、グループのテレビ局の広告収入の合計は15億ユーロ強に上る。新たに開始するTF1+は、将来的に「MyTF1」を後継するサービスとなる。広告なしの月額5.99ユーロの有料サービスも用意するが、無料ユーザーが主流になると予想し、新たな広告収入源として期待する。常時、1万5000時間のコンテンツを用意。具体的には、映画200本、テレビドラマ200本、エンタメ番組80タイトルなどを提供。コンテンツは最短でも1ヵ月間に渡り提供し、キャッチアップTVとは差別化を図る。テーマ別の50チャンネルも配信。また、ニュース番組には力を入れて、的を絞って5テーマを厳選して簡潔なニュース解説を制作して随時配信する。 TF1によれば、ネットフリックスは4万時間のコンテンツ提供で月間平均で22時間の視聴時間を得ている。アマゾンとディズニー+は1万5000時間程度という。MyTF1の月間平均視聴時間は3時間程度といい、TF1はアマゾンやディズニー+に匹敵するオーディエンスを達成することを目指す。TF1+の配信では、オレンジ、SFR、ブイグとの契約を締結済みで、フリー及びカナルプリュスとは交渉を継続中。テレビ受像機メーカーでは、中国のハイセンスと契約し、スマートテレビのリモコン上に専用ボタンを確保した。TF1グループは年間4000万ユーロの経費節減に着手しており、浮いた資金をTF1+の投資(技術及びコンテンツ)に充当する計画。 KSM News and Research -
2023.12.22
欧州委、ポルノサイト3社を大手プラットフォーム(VLOP)に指定
欧州委員会は20日、デジタルサービス法(DSA)においてより厳しい規制の対象となる大手プラットフォーム(VLOP)として、ポルノサイト3社(Pornhub、Stripchat、XVideos)を新たに指定した。4ヵ月以内にデジタルサービス法の規定を順守することが求められる。 VLOPには、欧州連合(EU)における月間ユーザー数が4500万人以上のプラットフォームが指定される。グーグル、フェイスブック、アマゾンをはじめとする22社が既に指定を受けている。新たに指定を受けたポルノサイト3社は、ユーザー数に関するデータ提出を拒否するか、疑わしいデータを提出しており、欧州委は調査を経て、ユーザー数が規定を超過していると認定。追加で指定を決めた。 VLOPに指定されたプラットフォームは、問題のあるコンテンツに対する対策、未成年者の保護、透明性の確保と開示義務の点で、厳しい規制に適合することを求められる。ポルノサイトの場合に特に問題になるのが未成年者の保護で、未成年者によるアクセスを排除するための年齢確認の有効な手段を整えて実施することが求められる。これは、フランスを含む複数の国で法的義務が導入されたものの、技術的な問題もあっていまだに実現していない点であり、欧州委による今回のVLOP指定によりどのような動きがあるかが注目される。 これとは別に、デジタルサービス法の一連の規定(VLOPに適用される特別な規定を除く)は2月17日付で、中小企業を除くすべての事業者に適用される。その監督は、欧州委が加盟各国の当局機関と協力して行う。 KSM News and Research -
2023.12.22
エタルモビル、移動販売車両の電動化バージョンを開発
移動販売用の車両改造を専門とするエタルモビル(Etalmobil)はこのほど、電動化バージョンを開発した。試験運用を開始した。 エタルモビルは、常設市場に乗り入れて移動店舗を出店する業者(精肉店、チーズ販売店、惣菜店、鮮魚店など)向けの改造車両の販売を1955年に開始した老舗。2010年に現在のプリュドム社長が買い取り、今日に至っている。現在の従業員数は65人、年商は1000万ユーロ。ルノーの商用車「マスター」(3.5-6トン)を買い入れて、車台とエンジンを残して車体を一新して、移動販売用の店舗に改造。冷蔵・冷凍ユニットなど必要な装備を一体的に追加し、8万ユーロからの価格で販売している。ちなみに、移動販売の小売業者は全国に8万5000人を数え、エタルモビルはこの分野で最大手のユーロマグ(Euromag)のチャレンジャーという立ち位置になる。 新開発のフル電動バージョンは、やはりマスターのEVバージョンをベースにしている。重量3.5トン、全長6メートルで、航続距離は140kmを確保。なお、移動販売車は通常、1日の走行距離が50kmを超えることはほとんどないという。配線等についてメーカー保証継続の承認を得た。 環境規制の強化に伴い、市街地における車両乗り入れ制限地区ZFEの設定が進む見通しであることから、ZFE適合の電動車両の需要は増加が見込める。費用は従来バージョンと比べて3万ユーロ程度高くなるが、エタルモビルでは、地元自治体等の補助金支給に期待を寄せている。 KSM News and Research -
2023.12.21
銀行各社が提供のキャッシュバック
銀行各社が「キャッシュバック」のサービスを提供するようになって久しい。顧客に購入額の一部を還元するサービスを提供している。 キャッシュバックを提供している業者は銀行以外でも多いが、有料のサブスクサービスとしての提供がほとんどで、料金分の利益を出すのが難しいようなものも多い。業者の提携先の小売・サービス業者で買い物をすると、支払い額の一部が現金で戻ってくる形になる。顧客が商品券を割安で購入し、それを自ら支払いに充てるという形式の場合もある。キャッシュバック業者は、提携先の小売・サービス業者に顧客を呼び込む役務を提供し、その代価として手数料を得ており、その一部を顧客に還元するという仕組みになる。銀行の場合も、もちろん契約先のキャッシュバック業者が介在しているが、加入無料のオプションサービスとして提供している場合が多く、顧客は安心して利用できる。ただ、代償として、多くの場合、個人情報の使用をキャッシュバック業者に認めることを求められる。 大手銀行のほとんどが、アプリを通じてキャッシュバックを提供している。ハローバンク(BNPパリバ)やブルソバンク(ソシエテジェネラル)などネット専業銀行でも普及している。ハローバンクの場合は現金でのキャッシュバックを提供、購入から3ヵ月後に口座に現金が振り込まれる。年間で100万ユーロが顧客に支払われている(BNPパリバ全体)といい、600ユーロを得た顧客もあるという。ブルソバンクの場合は商品券方式がほとんどで、1人当たり年間75ユーロの還元があると説明している。 KSM News and Research -
2023.12.21
ラ・バンク・ポスタル、モバイルバンキング事業の中止を検討
ラ・ポストの銀行部門子会社ラ・バンク・ポスタルは12月20日、2019年に開始したモバイルバンキング事業「Ma French Bank」の中止を検討していることを公表した。プレスリリースによると、Ma French Bankは採算性が確保できず、適切なビジネスモデルを確立できない状況にあり、非常に競争の激しい国内市場で採算性確保を求めて規模を拡大し多額の投資を行うことは、ラ・バンク・ポスタルの戦略プランと相入れないと判断された。従業員代表への通知・諮問の手続はすでに始まっており、事業中止が確定した後は12-18ヵ月をかけて必要な手続を進める。業務を担当している職員161人はバンク・ポスタル内に配置転換される。 フランスのモバイルバンキング部門では最近INGとオレンジがやはり事業中止を発表。それぞれ利用者に対しては、INGは競合大手のブルソラマへ、オレンジはBNPパリバ子会社ハローバンクへの移動を推奨していた。なお、ラ・バンク・ポスタルではMa French Bank事業を他社に売却する可能性も否定していない。 2019年にスタートしたMa French Bankは、競合企業がひしめきあう国内モバイルバンキング市場で思ったように利用者数を伸ばせず、2025年の利用者数目標100万人に対して、現時点の利用者数は75万人にとどまっている。事業中止後、利用者の口座はラ・バンク・ポスタルに移管することが可能で、利用者の資金の安全性に問題はない。 ラ・バンク・ポスタルは近年、各種のサービス多様化を進める一方、リスク評価が十分でなく、最近の金利上昇で苦境に陥っていた。これを受けてCEOが交代となり、2ヵ月前に就任したステファン・デデヤン新CEOが今回のモバイルバンキング事業の中止決定を下した。 KSM News and Research -
2023.12.21
移民法案可決:政府、違憲審査を憲法評議会に請求へ
国会で移民法案が最終的に可決されたのを受けて、政府は20日、同法案の違憲審査を憲法評議会に請求する方針を明らかにした。マクロン大統領が請求を決めた。 移民法案は、両院協議会による妥協案策定を経て、保守野党「共和党」の意向を反映して厳しい修正を施された上で可決された。極右RNは同法案について、長年の主張が採用された内容になったと歓迎し、下院での採決では賛成票を投じた。左派勢力はマクロン政権が右傾化したとして強く批判。政府与党内でも対立が表面化しており、ルソー保健相が法案に反対して辞任した(フィルマンルボドー担当相が臨時代行に就任)。政府は、修正により追加された措置のいくつかは、憲法の規定に抵触する疑いがあるとみており、明確化を図るため、自ら違憲審査を請求することを決めた。移民受け入れ数の上限設定や、出生地主義による国籍付与に制限を加える条項、住宅補助手当(APL)の外国人向け支給の待期期間設定などの措置が違憲と認定される可能性がある。このほか、欧州連合(EU)域外からの留学生を対象にした保証金供出義務の導入には、大学関係者らが強い懸念を表明しているが、ボルヌ首相は、金額を少額に設定することが可能だなどと述べて、その適用に配慮する考えを示している。 マクロン大統領は20日夜、国営テレビのフランス5とのインタビューに応じて、移民法案を擁護。我々に欠けていた防護の盾であると述べて、移民法制定の必要性を強調。極右思想が浸透した内容であるとする主張にも反論した。なお、マクロン大統領はこのインタビューの機会に、婦女暴行疑惑の俳優ジェラール・ドパルデュー氏のレジオンドヌール勲章はく奪の是非について、有罪判決が確定していない現状で懲罰を決めるのはおかしいと言明。個人攻撃には与せないと述べて、ドパルデュー氏を擁護した。この発言には大統領を批判する声も上がっている。 KSM News and Research -
2023.12.20
アフリカのお面を転売で大儲けの古物商、もとの所有者の訴えは却下に
アフリカのお面を競売にて高値で転売した古物商を相手取ってもとの所有者が訴えていた件で、アレス地裁(ガール県)は19日、原告の訴えを退ける判決を下した。古物商が価値を偽って購入した証拠はないと認定した。 この事件では、引退前に裁判所書記を営んでいた88才の男性とその妻の81才の女性が、古物商を相手取り、売買契約の取り消しと、競売により得られた利益の支払いを求めて裁判所に訴えた。この夫妻は、別荘の物置にあったアフリカ製のお面などの古物を、古物商を呼んで買い取らせた。古物商は150ユーロにて買い取ったが、その後に、お面が現在のガボンで作られたファン族の面であることが判明。もとの所有者の先祖が植民地総督を務めていた際に持ち帰ったものと考えられ、現存のものは少なく、貴重な美術品であることがわかった。競売では、30万-40万ユーロの評価額に対して、420万ユーロの高値にて落札されたが、もとの所有者夫妻は、欺瞞による取引であると主張して、取引の無効化を請求。ガボン政府もこの訴えに加わり、取引の無効化とお面の返還を請求していた。 裁判所は、もとの所有者が、何らの鑑定も依頼せずに取引を手配したことを挙げて、無効化を請求する資格はないと判断した。古物商については、アフリカ美術品の専門的知識を有していたわけではなく、その時点で知り得た材料で判断したに過ぎず、不当性は認められないとした。ガボン政府の請求については、裁判所が受理できる内容ではないとして、門前払いとした。 KSM News and Research -
2023.12.20
ローマ教皇庁、同性愛カップルにも祝福認める
ローマ教皇庁は19日、同性愛カップルに祝福を与えることを認める内容の公式文書を公表した。教義の内容を定める文書により新たな方針を明文化した。 カトリックは、同性愛者間の結婚を認めておらず、また、離婚者の再婚も結婚として認めていない。結婚は全部で7つある「秘跡」と呼ばれる特別な儀式に属し、同性愛者の間の婚姻はもとより、離婚者の再婚も、秘跡に相当する結婚としては扱われていない。これらに教会が一定の認知を与え、聖職者による祝福を受けられるようにするのが公式文書の狙いだが、具体的には、結婚と紛らわしい衣装の着用は認めない、ミサによる結婚式と同じ形式は採用しない、といった制限を明示し、結婚とは別の形での司祭による祝福を授けることを認めている。 この公式文書は、ダイバーシティに積極的な教皇フランシスコの意向を反映した内容と考えられる。現場の司祭の中には、非公式な形で既にこの種の祝福を行っている人も多く、現状を追認する内容だとする評もある。その一方で、熱心な信者が反発するリスクを指摘する向きもある。熱心な信者ほど寄付金額が多いことから、教会の収入に悪影響が生じる恐れもある。他方、今回の文書は、同性愛婚の解禁というにはほど遠く、同性愛を「罪」と認める教義は今日まで改正されていない。 KSM News and Research -
2023.12.20
仏国会、移民法案を可決:移民制限を強化、極右RNが賛成票を投じる
移民法案が19日夜、国会で最終的に採択された。政府は保守勢力に譲歩して法案の大幅修正に応じ、下院での採決では極右RNも法案に賛成票を投じた。左派勢力は政府の右傾化を非難。政府与党内にも法案採択を巡り大きな亀裂が生じた。 これより前、下院は法案の一括否決の決議案を採択していた。この決議案は、左派の環境派が提出し、この時は、保守野党の共和党と極右RNが共に決議案に賛成票を投じていた。政府は、両院協議会を招集して妥協案の策定を求めることを決め、背水の陣を敷いて法案の可決を目指した。両院協議会は、保守勢力が多数派を占めており(上院で保守勢力が過半数を占めており、政府与党は下院でも過半数を失っている)、厳しい協議の末に、移民制限を厳しく強化する内容の妥協案が19日に策定された。 同日夜に行われた下院での最終的な採決で、法案は賛成多数で採択されたが、政府与党の中には反対票を投じる者もあり、与党勢力内の亀裂が鮮明になった。共和党は揃って賛成票を投じたが、極右RNも賛成票を投じており、物議を醸した。政府はこれについて、RNが賛成票を投じなくても法案は可決されていたと主張しているが、RNは、極右の思想が浸透した結果の法案成立であり、RNが果たした役割は決定的だったと主張している。 採択された法案には、修正点として、まず、外国人への一部社会給付の制限が盛り込まれた。非就労者については、正規滞在5年以上の実績があることが受給資格として求められる(就労者の場合は30ヵ月)。なお重要な争点だった住宅補助手当(APL)の受給資格は、非就労者については5年以上、就労者の場合は3ヵ月の正規滞在実績が求められることになった(現行制度では正規滞在期間に関する条件はなく、滞在許可証取得後すぐに収入に応じて受給可能)。就労している不法滞在者の身分正規化については、各県庁が審査の上で正規化を決める制度を、2026年末までの時限措置として導入することで合意した。移民受け入れ上限を別途、設定する(3年間の期間を対象とする)ための国会審議を行うことでも合意がなされた。警察官等を殺害した二重国籍者の仏国籍はく奪、仏出生者への国籍の自動的な付与の廃止(申請制を復活)、重罪で有罪判決を受けた仏出生者への国籍付与の禁止なども盛り込まれた。外国人向けの医療支援制度(AME)の適用制限については、政府が2024年初頭に改革を実施することを約束してひとまず決着した。このほか、欧州連合(EU)域外からの外国人留学生を対象とした保証金納付義務の導入も盛り込まれた。 KSM News and Research -
2023.12.19
イリアッド、ボーダフォンにイタリア事業の統合を提案
仏イリアッド(通信フリーの親会社)はこのほど、英携帯大手ボーダフォンのイタリア子会社に統合を提案した。イリアッドのイタリア子会社と折半出資の合弁事業とする。提案において、ボーダフォン・イタリアの評価額は104億5000万ユーロに設定された。 イリアッドは2022年2月にもボーダフォン・イタリアの買収を提案したが、退けられていた。その時の評価額は112億5000万ユーロで、今回の提案はそれよりも低いが、EBITDAAL(営業利益)倍率では7.8と、当時の7.1を上回っている。ボーダフォン・イタリアの業績低下を折り込んで評価額を設定した。 イリアッド・イタリアの評価額は44億5000万ユーロに設定され、折半出資合弁化に当たっては、イリアッドが60億ユーロの精算金をボーダフォン株主に支払う。イリアッドは、毎年10%ずつ合弁の株式を買収するオプションも提案。中期的に完全子会社化する展望も確保する。 イリアッドは本国フランスのほか、イタリアとポーランドで事業を展開。欧州大手に食い込むことを目指している。ボーダフォンは非戦略事業を売却する方針で、スペイン事業は売却済み。イタリア事業の売却も検討中だが、報道によると、スイス同業スイスコムも買収を打診しているといい、イリアッドがすんなり買収できるとは限らない。イタリアの携帯市場シェアでは、ボーダフォンが22.6%、イリアッドが12.2%となっており、欧州委員会が競争問題でこの統合に難色を示す可能性もある。 KSM News and Research -
2023.12.19
政府、地域圏と輸送投資プランを策定
ボーヌ運輸担当相は全国を回り、地域圏との運輸関連の投資プランの調印を進めている。2027年までの期間を対象に、総額で200億ユーロ近くの投資を実現する。 ボルヌ首相は去る2月に、2040年までの目標として、1000億ユーロを輸送・モビリティ分野に投資すると約束した。2027年までのプランはその実現の第1歩となる。具体的には、国が合計で90億ユーロの拠出を約束。各地域圏は、国の拠出金と同額の拠出を約束。さらに、案件により地元の都市圏や国鉄SNCFのインフラ部門が追加の拠出に応じる。合計で200億ユーロ近くの投資となる。 鉄道への投資や、自転車専用レーンの整備といった事業が主な対象となる。都市圏における郊外連絡急行(RER)の整備も重要課題として浮上している。気候変動対策を視野に収めた投資が中心となり、道路インフラの建設は優先課題から外されている。 国は、投資の資金確保をにらんで、高速道路運営会社・空港を対象とする課税を導入。この資金は、運輸部門の投資計画に資金を供給する当局機関AFITの財源となり、年間6億ユーロの税収増が見込まれている。 KSM News and Research -
2023.12.19
欧州委、Xの正式調査を開始:デジタルサービス法(DSA)違反の疑いで
欧州委員会は18日、米SNS大手のX(旧ツイッター)に対する正式調査を開始したと発表した。先に制定されたデジタルサービス法(DSA)違反の疑いで開始した予備調査を正式調査に切り替えた。DSA違反の疑いで正式調査が行われるのはこれが初めて。 ハマスとイスラエルの間の紛争が勃発して以来で、X上にはテロリズム的な性質を有する暴力的なコンテンツやヘイトスピーチが投稿された。欧州委は、偽ニュース流布の対策が不十分とみて、Xに対して説明を請求。X側が公表済みの資料などを含めて検討の末、今回の正式調査の開始を決めた。欧州委は、Xによるリスク評価と違法コンテンツ排除の取り組みが不十分であり、また、研究者が評価を行えるようにするためのデータ開示の取り組みも不十分であるなどの疑いを示しており、DSA違反の事案として調査する。調査によりエビデンスの収集を進めて、制裁手続き開始の是非を決める。 Xの側では、調査に協力するとコメントし、法令を順守する姿勢を確認。政治的影響を一切排除して調査を行うことが大切だともコメントした。 KSM News and Research -
2023.12.18
仏政府、航空機部門の支援基金を新たに設立へ
仏政府は、航空機部門の技術革新を支援する目的で、官民の拠出による新基金を設立する。中小・中堅企業を支援する。 フランスに本社を置くエアバスは、2030年までに新型の低炭素旅客機の就役開始を計画している。2035年までには水素燃料の航空機の開発も目指している。こうした技術革新や増産の動きについてゆけるように業界を育成する目的で、政府は業界への資金供給を計画。その一環として、新基金「Ace Aero2」を2024年初頭に設置することを決めた。前代の「Ace Aero 1」(7億5000万ユーロ)を後継する形で、手始めに4億ユーロを確保。将来的には8億ユーロまで規模を拡大し、業界の中小・中堅企業を支援し、業界再編の動きも後押しする。基金の資金は、国がBPIフランス(公的投資銀行)を通じて3分の1を負担。このほか、業界の大手企業であるエアバス、ダッソー・アビエーション、サフラン、タレスが拠出し、金融機関のティケハウ・キャピタルとクレディアグリコルも協力する。 フランスの航空機部門は22万人を雇用。2023年には2万5000人を採用した。重要な輸出産業であり、政府はその支援に力を入れている。 KSM News and Research -
2023.12.18
「生命の終わり」に関する法案、再び提出に遅れか
「生命の終わり」に関する法案の提出が遅れる見通しとなっている。マクロン大統領が決定を躊躇しているという。 「生命の終わり」に関する法案は、マクロン大統領の発案で準備が始まり、市民代表を交えた協議会なども開かれたが、正式な提出が遅れている。今のところ2月に提出される予定だが、遅れる公算が強まっている。保守系日刊紙ルフィガロは14日付で、ターミナルケアのスタッフ組合に提示された法案素案の内容を報道。スタッフ組合が強くその内容に反発していることも伝えた。 法案には、尊厳死を望む人の「死を助ける」ことを例外的な措置として認める上での条件を定める部分が含まれている。スタッフ組合側はこうした措置に反発しており、高齢者が家族への忖度から自らの死を認めることを半ば強制される可能性があるなどと主張している。マクロン大統領は、「安楽死」という言葉を使うことに自ら強い抵抗感を感じているといい、「自殺ほう助」という言葉も認めず、「死を助ける」という表現を使わせたとされるが、内容そのものへの反発は一部に根強い。その一方で、より踏み込んだ改革を求める声もある。治癒の見込みのないがんで闘病を続けている歌手のフランソワーズ・アルディさん(79)も先頃、インタビューの中で、呼吸困難のような苦しみに直面する前に、早期に命を終えたいと述べて、法案の準備に一石を投じた。 KSM News and Research -
2023.12.18
俳優ドパルデュー氏のレジオンドヌール勲章巡り物議に
アブドゥルマラク文化相は15日、俳優のジェラール・ドパルデュー氏に授与したレジオンドヌール勲章を取り消す手続きを開始すると予告した。ドパルデュー氏は弁護士を通じて、勲章を返上する考えを明らかにした。 レジオンドヌールはフランスに貢献した人に贈られる勲章で、19世紀初頭のナポレオン時代に創設された。フランス国家が贈る代表的な勲章として知られる。ドパルデュー氏は1996年のシラク政権時代にレジオンドヌール勲章を受けた。ドパルデュー氏は2020年以来、一連の性的暴行・強姦容疑の捜査の対象となっており、また、最近にフランス2局で放送された調査報道番組で、同氏が北朝鮮を訪問した際に女性蔑視の発言をした模様が報じられ、改めて物議を醸していた。アブドゥルマラク文化相はこれに反応し、懲戒手続きを開始する旨を明らかにした。 レジオンドヌール勲章の規定によると、「名誉に反する」行為があった場合には、譴責、資格停止、追放の処罰を決めることができる。これまででは、シリアのアサド大統領、パナマのノリエガ大統領、自転車ロードレースのアームストロング選手(ツールドフランスで7連覇を達成したがドーピングで取り消しに)、デザイナーのジョン・ガリアノ氏(ユダヤ人差別発言で有罪判決)などが、勲章を返上するか、はく奪されたことがある。ドパルデュー氏側は、刑事事件で有罪が確定していないのに処罰手続きを開始するのは不当だとした上で、自ら返上する用意があると説明している。 KSM News and Research -
2023.12.15
仏経済成長率、10-12月期に0%=INSEE予測
INSEEは12月14日の景況報告の中で、10-12月期の仏経済成長率見込みを前の期比で0%に下方修正した。前回発表ではこれを0.2%としていた。仏経済は7-9月期に0.1%のマイナス成長を記録したが、2四半期連続での減退は辛くも避けられる見込みとなった。INSEEは2023年通年での成長率は0.8%と予想。景気後退は年内に底を打ち、2024年年初からは緩やかに回復するとして、2024年1-3月期と4-6月期の成長率は共に0.2%になると予想した。INSEEによると、10-12月期に個人消費支出は、比較的穏やかな天候によりエネルギー支出の減少が見込まれることもあり、前の期と同じ水準にとどまる。鉱工業生産は0.2%の減少を記録する。企業設備投資は0.4%減少する見込み。物価動向に関しては、政府予想と同様に、物価上昇の勢いが鈍ると予想。2024年6月にコアインフレ率は2.0%まで低下すると予想した。インフレ減速を背景に、家計購買力は2023年通年では0.8%増加し、2024年1-3月期には0.6%増、4-6月期には0.3%増(いずれも前の期比)を記録する見込み。個人消費支出も年初から勢いを取り戻し、1-3月期には0.6%増、4-6月期には0.4%増を記録する。失業率は7-9月期の7.4%に対して2024年1-3月期には7.6%まで上昇、その後は同じ水準を維持すると予想した。KSM News and Research -
2023.12.15
仏政府、EV購入奨励金の対象モデルを選定:中国組み立て車は除外
仏政府は14日、2024年年頭から施行のEV購入奨励金制度について、支給対象モデルのリストを公表した。56モデルが選定された。新制度においては、購入につき5000ユーロ(低所得者の場合は7000ユーロ)の奨励金が支給される。政府は、製造や輸送段階を含めた環境負荷を選定の基準に設定。このため、中国で組み立てのモデルは支給対象から除外された。ダチア(ルノー傘下)のスプリングがその好例。また中国SAIC(上海汽車)傘下のMGは、選ばれないことを見越して、最初からMG4を申請しなかった(申請には、製造場所や調達率などのデータの提出が必要)。テスラの場合は、モデル3が中国組み立てのため選外となったが、モデルYはドイツ組み立てで対象に入った。中国大手BYDも申請した2モデル(Atto 3、Dolphin)のすべてが選外となり、韓国の現代グループも、チェコで組み立てのKonaのみが選ばれた。日本勢では、マツダのMX-30、日産のTOWNSTARとLEAF、トヨタのPROACEが入った。これとは別に、低所得者向けの「月額100ユーロのEVリース」についても詳細が発表された。同制度は、年間標準所得額が1人当たり1万5400ユーロ以下の人に利用資格があるが、EVの台数に限りがある(2024年に2万台強)ため、職業上の理由で年間8000km以上の走行実績のある人か、15km以上の距離を通勤する人に、優先的に申請する権利が認められる。対象モデルは、購入奨励金制度の対象に限られる。国は1件につき1万3000ユーロの支援を行い、月額100ユーロという低料金を実現する。KSM News and Research -
2023.12.15
電子書籍サービスのMangas.io、200万ユーロ弱を調達
電子書籍サービスの仏Mangas.ioはこのほど、200万ユーロ弱の資金調達を終えた。投資家グループのSociety of Entertainmentが中心となり、3A VenturesやSuper Capitalなど投資ファンド数社が出資。また、既存の株主を含めて、ビジネスエンジェル数者が出資した。Mangas.ioは2020年の設立で、これまでに100万ユーロを調達した実績があった。漫画専門の電子書籍サービスをフランス語で提供、漫画専門の出版社(Kana、Hariken、Ki-oon、naBan、Delcourt/Tonkam)などと契約を結び、230作のカタログを配信している。Mangas.ioは、月額7ユーロ(年間契約だと70ユーロ)のサブスク方式でコンテンツを提供。ユーザー数は20万人を数える。収入の7割を出版社に支払っており、絶版になった作品を含めた提供を通じて、出版社とユーザーの両方に益するサービスであることをアピールしている。フランスは日本の漫画にとって、本国に次ぐ世界第2の市場となっている。Mangas.ioは年商が3倍増を記録しており、2024年には100万ユーロを超える見込みという。黒字化にはまだ至っていない。調達した資金はカタログの拡充などに用いる。KSM News and Research -
2023.12.14
欧州連合(EU)、デジタル・プラットフォーム就労者に関する指令案で合意
欧州連合(EU)は13日、デジタル・プラットフォームの就労者に関する指令案を巡り合意した。一定の条件を満たすプラットフォーム就労者に従業員としての権利と義務を認める内容となった。ウーバーのような配車サービスやフードデリバリーをはじめとして、就労者を仲介・斡旋するプラットフォームについては、プラットフォーム側が本来支払うべき社会保険料等を逃れ、就労者を劣悪な環境に置いているという批判の声がある。就労者側が訴訟を起こして従業員としての認定を勝ち取るケースも、欧州諸国で発生している。欧州委は、こうした問題点を改善し、裁判所の判例を法令の形で明文化することで、法的安定性を確保することを目指して、今回の指令をまとめた。EU理事会と欧州議会が13日にその内容について基本合意を結んだ。指令案によると、就労者の従業員推定を可能にする指標をいくつか定めて、それに2つ以上合致している場合には、就労者が自営業者ではなく、プラットフォームの従業員である旨の推定を与えるという規則が導入される。従業員推定を受けた就労者は、従業員としての権利を得て(健康保険や失業保険の適用、待遇上の保障等)、また義務にも服することになる。これを覆すには、覆すことを望む側が挙証する義務を負う。アルゴリズムの使用については、透明性の確保を義務付け、就労条件等にかかわる決定に就労者が異議申し立てを行うことができるような制度が定められる。契約打ち切りやアカウント停止といった決定を自動処理で行うことが禁止され、人による自動処理システムの監督を義務付けることも盛り込まれた。プラットフォーム外からの個人情報の収集も禁止され、心理状態や労組に加入したりストに参加したりする可能性の予測といった情報収集と処理も禁止対象となる。越境就労の場合には、関係国への申告がプラットフォームに義務付けられる。アルゴリズムの管理目的での使用について、労組への通知と諮問を行う義務も設定される。指令案は今後、EU理事会と欧州議会の正式承認を経て発効する。加盟各国が国内法規を整備する義務を負う。 KSM News and Research -
2023.12.14
仏ワイン業界、踏み込んだ減反など提案
原産地統制銘柄(AOC)ワインの業界団体CNIVはこのほど、ワイン部門の振興プランを提示した。消費減に対応して踏み込んだ減反などを提案した。内容を詰めて、2月末にパリで開かれる農業見本市の際に政府に提示する。CNIVによると、ワイン(シャンパン含む)の国内消費量は、60年間で70%の減少を記録しており、このままだと10年後にはさらに20%減少する。CNIVは、構造的な生産過剰の問題を解消し、消費の活性化と輸出の拡大を図るための一連の措置を提案した。まず、国内のワイン用ぶどうの作付面積を10万ヘクタール減らす。現在は75万ヘクタールに上っており、13%の大幅減反となる。欧州連合(EU)の補助金を活用し、支給を迅速化するなどして農家を後押しする。同様の問題は、主要な生産国であるイタリアとスペインも直面しており、揃ってEUに働きかけ、減産で足並みを揃えることを提案した。米中など消費国向けの輸出振興では、「ワイン・オブ・フランス」というフランス製ワインの共同ブランドを立ち上げ、特に輸出市場において弱い中級ワインの売り込みで業界全体が協力する。国内消費の活性化では、ワイン離れが目立つ若い世代を取り込むための商品開発を提唱。ロバート・パーカー流の樽香志向は盛りを過ぎたとして、若い世代を取り込むには、ビールに対抗して低温で飲めて、より軽いワインを提供する必要があるとした。 KSM News and Research -
2023.12.14
新型コロナの感染が再拡大
新型コロナウイルスの感染が再拡大している。関係者らは、ワクチン接種や予防行動の励行を促している。検査が組織的に行われていないため、正確な状況を把握するのは難しいが、感染は高齢層を中心に増加傾向を示している。新型コロナウイルスの疑いで救急外来を訪れる人は週単位で4350人を超えており、うち1820人が入院している。12月初頭以来では、検査の3割が新変異体JN.1となっており、XBBの変異系統と同様に感染力が強いという。今のところ、他の変異株に比べて重篤化のリスクは大きくない。2022年冬季と同様、季節性インフルエンザと気管支炎の3種の感染症の拡大が同時進行する恐れもあり、家族が集まる機会が多いクリスマスの時期を前に、感染が大きく拡大するリスクがある。ワクチン接種は65才以上の人などについて勧告されており、10月初頭からキャンペーンが開始されている。ただ、この65才以上の層で再接種済みの人は25%にとどまっており、十分な規模に達していない。ワクチン接種は、勧告対象以外の人も含めて、無料で受けられる。当局機関はまた、マスクの着用、手洗いの励行、定期的な換気の実践を勧告している。 KSM News and Research -
2023.12.13
パリ株式市場CAC40指数、史上最高値を更新
パリ株式市場CAC40指数は12日の取引中に史上最高値を記録した。7582.47ポイントまで上昇した。ただし、終値は前日比0.11%安の7543.55ポイントに下がった。 CAC40指数は去る4月24日に最高値を更新していた。今回はそれを1.21ポイント上回り、最高値を更新した。 株価上昇は世界的な現象で、米国やユーロ圏におけるインフレ率の減速が主な材料となっている。インフレ率の減速に伴い、利下げ局面に転じるのではないかとする観測が広がっており、株式市場が強気の動きを見せている。12日には、11月の米国消費者物価指数が前月比0.1%の上昇と、予想よりも高めであったことが嫌気され、パリ株式市場では、この発表前に最高値を更新したが、その後は株価は徐々に低下した。 CAC40指数は最近では10月26日に上昇に転じ、それ以来で10%の上昇を記録している。年頭来の上昇率は20%を超えた。マクロ経済の展望が不透明な中での株価上昇であるだけに、安易な利下げ期待を戒める向きもあり、株価の推移にはブレも大きい。 KSM News and Research -
2023.12.13
年末はカレンダー訪問販売の季節
年末にはカレンダーの訪問販売者がやってくる。11月から12月末までがシーズンで、郵便配達人と消防士が「公認」扱いとなっている。 郵便配達人は自前で「ラポスト」のロゴの入ったカレンダーを購入し、自分の担当地域の家屋を回ってこれを提供する。これは「転売」ではなく、あくまでもチップを求める行為であり、その限りで、税務当局はこの収入を非課税としている。「ラポスト」印のカレンダーは、オベルチュールなど4社が製造しており、地元の地図や、満潮・干潮といった情報も掲載されているので、一部にはファンもいる。ほかの人がどの程度払っているのかが気になるところだが、南西地方に勤務する配達人は、「これまでに100冊程度を売って、1300ユーロ近く集まった」と証言していて、10ユーロか20ユーロというのが相場らしい。郵便配達人にとっては1ヵ月分のボーナスという位置づけになっている。 消防士の場合はカレンダーを口実に寄付を集めている。消防士の互助会等の収入となる。担当地区を決めて分担して各戸を回っているため、ラポストと同様、こちらも何度もやってくることはないという。パリで勤務する消防士の証言だと、「寄付金の平均は8ユーロ程度で、20ユーロ札から2ユーロ玉まで様々」で、数年来の推移を推し量るのは難しいという。消防士のカレンダーへの支払いが寄付として所得税の納税額から控除可能であるかどうかについては諸説あるが、やらない方が無難であると考えられる。カレンダーとは別に、消防士孤児の援助団体などの公益団体に直接に行った寄付はもちろん控除の対象になる。 街路の清掃員等のカレンダー売りは、パリにおいては禁止されており、周回しているのは騙りが多いと考えられる。ただし、ボルドーなど一部の自治体では許可されており、地域により事情は異なる。 KSM News and Research -
2023.12.13
パリ・メトロに「セルジュ・ゲンズブール」駅、反対運動の対象に
パリ・メトロ11号線の延伸で、新たに整備される駅の一つに歌手・作曲家のセルジュ・ゲンズブール(1991年没)の名前を付ける計画がある。反対運動が持ち上がっている。 延伸部分はパリ市の東側にある自治体を通過。うち、レ・リラ市が2013年にゲンズブールの名前を市内の新駅につけることを提案した。ゲンズブールのデビュー曲は、「リラの門の切符切り」というタイトルで、パリとレ・リラ市の境界に位置するメトロ駅「リラの門(ポルト・デ・リラ)」の切符切りにちなんだ歌だった。その縁で名前が選ばれた。 当時は特段の反対もなかったが、現在は性的暴力に関する論調が厳しくなり、命名に反対する署名運動が最近に始まった。3500人を超える署名が集まったという。ゲンズブールの場合、性的で挑発的な歌詞の作品が多く、また、近親相姦や未成年者との恋愛などをテーマにした作品群もあって、今の時流に照らすと旗色は悪い。性的暴行で追及を受けている俳優ジェラール・ドパルデュー氏の名前をつけるようなものだ、という声も聞かれる。 思えばゲンズブールは生前、酔っぱらって暴言を吐いたり、お札をテレビで燃やしたりと、「呪われた詩人」を意識した不良中年のキャラを熱心に演じていた。作品における様々な禁忌の表現は、当時の抑圧的な社会への挑戦という側面もあったろう。時代背景と歴史性を捨象して倫理感を適用するのはイスラム原理主義などと大差ない。もとより、不良中年として、メトロの新駅に自分の名前がつかないのは本人としても望むところであるだろうから、別の名前を付けることには賛成である。そもそも、メトロの駅に名前がつくことが名誉なのであろうか。 KSM News and Research -
2023.12.12
ノール県県庁、イスラム教系アベロエス高校の認可を取り消し
ノール県県庁は10日、リール市にある私立アベロエス高校の認可取り消しを決定した。教育内容と外国からの資金の受け入れを問題視した。 アベロエス高校は、国内で認可を受けている数少ないイスラム教系の私立学校の一つ。2003年の開校で、生徒数は473人に上る。認可を取り消されると、公的助成金が受けられなくなり、生徒は、高校卒業資格(バカロレア)を外部生として受験する以外に、同資格を取得する道を断たれる。県庁は以前から同高校の運営を問題視しており、否定的な報告書をまとめた上で、去る11月27日に教育委員会を招集して審議を行い、認可取り消しを認める答申を得ていた。県庁側は、同校が2014年にカタールの団体から得た90万ユーロの寄付を問題視しており、校内の図書館に同性愛や文化関連の書籍・文書が備えられていないことなど、教育上の問題点も指摘していた。 学校側は、外国からの資金はその後受け入れていないことなどを挙げて反論しており、決定を不服として異議申し立てを行う構え。リール市のあるオードフランス地域圏のベルトラン議長(共和党)は以前からアベロエス高校を標的と見定めており、この地方で強い極右RNも同校の閉鎖を求めて働きかけていた。半面、左派勢力には同校を擁護する論調もみられる。 KSM News and Research -
2023.12.12
パリ・ベルリン間の夜行列車、ほぼ10年ぶりに運行再開
パリ・ベルリン間の夜行列車の運行が再開される。再開を記念して、11日夜のパリ発の列車にはボーヌ仏運輸担当相も乗車する。 パリ・ベルリン間の夜行列車は2014年に廃止されていた。近年、環境配慮の観点から夜行列車が見直されており、仏政府はこの再開に、年間200万ユーロの補助金支出を約束した。列車は、オーストリア国鉄OBBが、「ナイトジェット(Nightjet)」のブランド名で運行。パリ発ベルリン行きは、火、木、金曜の毎週3本が運行される。19時12分にパリ東駅を出発し、ベルリン中央駅に翌朝8時26分に到着する。途中駅は、ストラスブール、マンハイム、エアフルト、ハレに停車する。座席、簡易寝台、寝台の3種があり、全312席で、料金は69.9ユーロから119.9ユーロ(寝台、朝食込み)まで、トイレとシャワー付きの個室も提供可能という。ブリュッセル・ベルリン間の夜行列車が並行して運行され、途中で連結されてベルリンに向かうことになる。OBBは関係国からの補助金確保を運行の条件としており、状況をみて、来年10月以降に本数を増やす是非を検討する。 なお、10日には、仏国内のパリ・オーリヤック間の夜行列車の運行が20年ぶりに再開された。仏国鉄SNCFが運行する。 KSM News and Research -
2023.12.12
下院で移民法案が一括否決、政府に打撃
下院は11日、移民法案の本会議審議に先立ち、環境派が提出した法案一括否決の決議案の投票を行った。左翼から極右までの野党勢力が揃って決議案に賛成票を投じ、決議案は賛成270、反対265で採択された。マクロン政権と与党にとって深刻な打撃となった。 移民法案はダルマナン内相が準備。上院先議で、上院を通過後に下院に送られ、小委員会審議を経て11日より本会議審議が始まる予定だった。法案は、不法滞在者の国外退去処分の強化といった措置を含み、同時に、人手不足の業種における不法滞在の就労者に滞在許可証発行の道を開くといった措置も盛り込まれていた。保守勢力が過半数を握る上院は、制限強化の方向で修正した上で法案を採択。下院小委員会では、政府案に戻す形で一部修正がなされ、本会議で審議される予定だった。 マクロン政権は下院で過半数を失っており、法案を通すには、野党勢力の一部の協力を得る必要がある。このほかに、「49-3」と呼ばれる採択強制措置(内閣不信任案が採択されない限りは、法案を採決なしに採択できる)もあるが、こちらは予算法案以外の法案については発動に縛りがあり(1会期につき1法案まで)、政府は、移民法案では「49-3」には頼らず、保守勢力の一部の賛成を得て法案を採択させる目算だった。しかし、一括否決の決議には、保守「共和党」の議員団も賛成に回り、野党の大同団結が実現した形となった。政府の国会運営の戦略にほころびが生じたことになる。 法案を準備したダルマナン内相は同日中に、マクロン大統領に辞表を提出したが、大統領はこれを受け入れず、ボルヌ内閣に対して、法案の可決成立に向けてしかるべき手段を講じるよう指示した。ただ、可能な方法は限られている。12日朝の時点で、両院協議会を招集して妥協案を協議させるのが有力なプランとなっているが、多数派を擁立しようとするなら、保守勢力に大幅な譲歩をするのが不可避となる。内閣改造論も浮上しているが、改造をしたところで、多数派が確保できるわけではなく、解決法にはなりえない。解散総選挙以外に道はないという見方もあるが、政府与党の不人気を考えると、さらに厳しい結果になりかねない。 KSM News and Research -
2023.12.11
パリ株式市場CAC40指数:ワールドラインに代わってビベンディが復帰
パリ株式市場は7日、CAC40指数の構成銘柄の入れ替えについて決定した。12月18日付で、ワールドライン(決済サービス)が外れ、代わってビベンディ(メディア)が構成銘柄に復帰する。 ビベンディは、傘下のユニバーサル・ミュージック(レコード会社)の譲渡を経て売上高が半減したのを受けて、6ヵ月前にCAC40指数から外れたばかりだった。ビベンディはその後、同業ラガルデール・グループの買収を完了し、年商は前年比で72%増の165億ユーロにまで拡大。短期間で指数復帰を果たした。発表を受けて、ビベンディの株価は8日に2.42%上昇し、8.89ユーロとなった。 指数落ちのワールドラインは、2020年には時価総額が230億ユーロにまで増大していたが、その後は株価の下落に見舞われていた。やはり株価推移が振るわないアルストム(鉄道機器)も、指数落ちの可能性が取り沙汰されていたが、今回は見送りとなった。 なお、CAC40指数は8日終値で1.5%の上昇を記録し、7547ポイントをつけた。過去6番目の高値となっており、去る4月24日に記録した史上最高値にあと0.4%に迫った。金利低下の展望が広がる中で、世界の他の株式市場と同様に株価上昇が目立っている。 KSM News and Research -
2023.12.11
保護者の監督不行き届きを処罰の対象に:ベルジェ連帯・家族相が予告
ベルジェ連帯・家族相は10日付のラトリビューン日曜版とのインタビューの中で、子どもを監督する責任を果たせなかった保護者を処罰する方針を明らかにした。新たな制度の導入を予告した。 5ヵ月前には、警察の検問時に青少年が警察官に射殺される事件が発生し、その余波で全国的に暴動の被害が広がった。暴動に参加した若者の多くが未成年者だったことから、保護者の責任を問う声が各方面から聞かれた。ボルヌ首相は10月の時点で、保護者の責任に関する法令を改正する方針を予告。連帯・予算相はその方針を再確認した。 具体的には、子どもが破壊行為などに及んだ際に、保護者を対象にした公益奉仕の懲罰を導入する方針を確認。器物破損等の場合に生じる費用・賠償の一部を保護者に負担させる方針も示した。子どもが裁判に出頭しない場合にも、保護者に罰金刑を適用するとした。 連帯・家族相はまた、この問題で「科学委員会」を設置し、6ヵ月後に対策案を提出するよう依頼すると予告。これに伴い、全国で会合を開いて広く問題を協議する方針を明らかにした。 KSM News and Research -
2023.12.11
イスラム過激派による中学校教員の殺害事件:中学生6人に有罪判決
中学校教員のサミュエル・パティさんがイスラム過激派により斬首された事件(2020年10月)で、パリ地裁は8日、事件に関わった当時の中学生6人に対して有罪判決を言い渡した。被告人らが事件当時に未成年につき、裁判は非公開で行われた。 被告人のうち5人(いずれも男子)は、事件当日に学校前で犯人の男(事件後に死亡)と接触し、パティさんが現れたら報告するよう依頼され、報酬を得て依頼を遂行していた。最初に犯人と接触した被告人には、最も重い禁固2年(実刑部分6ヵ月)の有罪判決が言い渡された。被告人には、当局の監視下で収監されずに刑期を務めることが認められる。そのほかの4人の被告人には、禁固14ヵ月から20ヵ月の執行猶予付き判決(保護観察処分を伴う)が言い渡された。 残る1人の被告人は、事件の発端を作った女子生徒で、パティさんの授業を欠席していたにもかかわらず、パティさんがイスラム教徒の生徒を教室外に出させて、残った生徒に預言者ムハンマドの戯画を見せた、などと虚偽の証言をしてパティさんを提訴するなどしていた。この女子生徒の父親がこの虚偽を材料に騒ぎ立てた結果、イスラム過激派が触発されてパティさんを殺害していた。裁判所は、虚偽の告発の罪で、被告人に執行猶予付きの禁固18ヵ月の有罪判決(保護観察処分付き)を言い渡した。 6人の被告人とも、求刑にほぼ即した有罪判決となった。被告人らの弁護士らは一様に判決に安堵の念を表明しているが、原告に加わった教員連合は、真相の究明に至らなかったと不満の念を表明している。なお、今回の被告人の女子生徒の父親などを含む8人の被告人については、パリ特別重罪院においてテロ容疑の裁判が2024年末に開かれる予定。 KSM News and Research -
2023.12.08
マクロン大統領、研究部門の抜本的改革を予告
マクロン大統領は7日、科学・研究界の代表を集めた会合を開いた機会に、研究・高等教育機関の抜本的な改革に着手すると予告した。研究事業の重複や無駄を省き、大きな目標に沿って効果的にリソースを投入できる体制を整えることを目指す。 大統領はまず、有識者からなる科学評議会を設置。評議会は年に数回会合を開き、研究の戦略的な方針を大統領に進言する。大統領はまた、研究事業の企画調整の任に当たる公的研究機関を指定する方針を明らかにした。テーマごとに7つの研究機関を選定。大統領は、農業についてINRAE、気候・生物多様性についてCNRS、保健についてINSERM、宇宙についてCNES、脱炭素エネルギーについてCEAという名前を挙げた。新型コロナウイルスワクチンの開発で遅れをとったことなどを教訓に、迅速に研究事業の協力と分担を手配できる体制を整える。大統領は、「フランス2030」投資プログラムから10億ユーロを振り向けることを約束した。 研究事業を進める手続きの簡素化も図られる。現在、例えば大学とCNRS(国立科学研究センター)の共同ラボの場合、予算の手続きを大学とCNRSの両方で行わなければならず、機材の購入などでも手間取ることが多いという問題があり、これを一元化する仕組みを整える。17大学(リール、エクス・マルセイユ、サクレー、グルノーブルなど)で試験導入を行う。また、大学は、地方単位で研究事業を組織するまとめ役の役割を担う。労組側は、地方単位での採用が進み、研究職の待遇にばらつきが生じることなどを警戒している。踏み込んだ改革の実現可能性を疑問視する向きもある。 KSM News and Research -
2023.12.08
政府、極右小グループ「ディビジョン・マルテル」に解散命令
ダルマナン内相は6日、極右の小グループ「ディビジョン・マルテル」(マルテル部隊)の解散命令を閣議に提示した。危険な団体として解散を命じる。 ディビジョン・マルテルは、カトリック原理主義・アイデンティティ系の極右グループで、イスラム教徒によりフランスのもとからの住民が一掃されるという危機感を抱き、武力による対抗を訴える過激勢力に属する。もとからのフランス民族の防衛という主張は、極右勢力のうち、ゼムール氏の「ルコンケット(失地回復)」に近い。先に、ドローム県クレポル村で喧嘩騒ぎの末に未成年者が刺殺された事件では、これを、外国から来た勢力がフランス人を差別して仕掛けた暴力だと断じる極右勢力の言説に呼応して、容疑者らが居住する地区で極右勢力によるデモが行われたが、ディビジョン・マルテルはこのデモの中核を担っていた。特に、このグループの構成員は、容疑者らの氏名や住所などの情報を入手しており、デモではなく、私刑を加えるために集結していた疑いが浮上している。 ディビジョン・マルテルは、ルーアン市に住むリーダーの下に結成され、パリ地方を中心に活動している。2022年に解散された「ズアーブ・パリ」の流れをくむグループとして知られる。その構成員は、催涙スプレーやこん棒などで武装し、極左活動家や移民系の人を狙った暴力事件を数回起こしている。 当局は、マクロン大統領が就任した2017年以来で、34団体の解散命令を下しているが、うち14が極右系のグループとなっている。解散命令が出るにつれて、小さなグループに細分化し、監視がかえって難しくなるという指摘もある。 KSM News and Research -
2023.12.08
職質は年間4700万件に=会計検査院報告
会計検査院は6日、警察官等による職務質問に関する報告書を公表した。身元確認を伴う職質が年間4700万件程度行われているとする推計結果を提示した。 警察官等による職務質問については、移民系の住民が専ら対象とされ、社会的な対立を煽る結果になっていると問題視する向きもある。今回の会計検査院の報告は、人権擁護庁の依頼を受けてまとめられたもので、これまでほとんど集計がなされたことがないこの案件に新たな光を当てる内容となった。 2021年を対象にした調査結果によると、憲兵隊員が2000万件(うち830万件が自動車対象)、警察官が2700万件(うち660万件が自動車対象)で、合計で4700万件という結果になった。2016年の下院報告書は1400万件という試算を示しており、それと比べても極めて多い数字となった。本人確認書類を提示させても、警察官が内容の照会を行わず、記録に残らないケースも相当数あると考えられることから、実際はさらに大きいことが予想される。 会計検査院は、外見を理由とする職質がどの程度あるかについては、人種等に依拠する統計を処理することが法律で禁止されているため、実態の把握は難しいと説明。会計検査院はその上で、英国で導入されて成果をあげている取り組みに倣って、身体検査が伴う職質の場合に、検査を行った旨の証明を発行し、異議申し立て等をしやすくすることを勧告。また、警察官にカメラを携帯させて、職質等の動画記録を残すことなども勧告した。政府がこれらの勧告に従う可能性は低いとみられている。 KSM News and Research -
2023.12.06
鳥インフルの感染再拡大、警戒水準が最高に
鳥インフルエンザの感染がフランスで再び広がっている。政府は5日付で、警戒水準を「中」から最高の「高い」に引き上げた。 フランスでは、2022年11月から2023年4月まで警戒水準が「高い」に維持されていた。2022年の処分数は2200万羽に上り、前年の330万羽を大きく上回った。その後は下火となり、警戒は解かれていたが、11月末に「中」に改められ、そのすぐあとに「高い」まで引き上げられた。国内の数ヵ所の飼育場で感染が確認された。 政府は前回流行の教訓を踏まえて、鳥インフルのワクチン接種キャンペーンを開始。アヒルの飼育数が250羽を超える施設(孵化場除く)のアヒルを対象に、10月1日よりワクチン接種を義務付けた。アヒルを対象に選んだのは、症状が出るまで数日間の潜伏期間があり、感染が広がる起点となりがちであることが理由となっている。6400万羽が接種を受けることになっている。 国内の家禽の飼育場及び加工場は1万4000を数え、産業部門としての規模は大きい。ワクチン接種に踏み切ったのはフランスが初めてといい、どの程度の効果があるのかが注目される。ワクチン接種には懐疑的な国も多く、カナダ、日本、香港、台湾は、接種を受けた家禽製品の輸入を認めていない。 KSM News and Research -
2023.12.06
アタル教育相、生徒の学力増進策を提示
アタル教育相は5日、学力増進を目的とする諸措置を学校関係者らに提示した。 教育相はこれまで、学力増進のための措置をまとめるため、関係各方面と協議を重ねていた。同日に発表された経済協力開発機構(OECD)のPISA(生徒の学習到達度調査)では、フランスの数学的リテラシーの結果が特に優れなかったが、それにあわせて発表を行うことで、対策を進める意志を明確に打ち出した。 具体的には、新たなカリキュラムを9月の次の新学年より、幼稚園から小学校までを対象に導入。PISAで高得点を達成しているシンガポールのメソッドを導入するなどの新機軸を打ち出す。中学校では、能力別の国語及び数学の授業を、やはり次の新学年から1年生と2年生を対象に導入し、2025年9月からは3年生と4年生(フランスは5-4-3制で、中学校は4年間)にも導入する。中学卒業時に行われる「ブルベ」と呼ばれる試験については、今後はその合格が高校進学の条件として求められることになる。不合格者は「高校準備級」に入って合格を目指すことになる。小学校における落第制度については、何かと議論があるが、教育相は、落第の是非の最終的な決定権を保護者に委ねている現行制度を改め、教員に最終的な決定権を与えることを提案した。このほか、高校卒業資格(バカロレア)試験に、数学及び科学的リテラシーを全員対象として追加し、その試験を高校2年次に行う(2025年9月に始まる新学年より実施)ことも提案した。 なお、PISAでは、フランスの数学的リテラシーの平均点が474となり、前回2018年の調査から大きく後退。OECD平均の480を下回った。 KSM News and Research -
2023.12.06
欧州連合(EU)、売れ残りの衣料・靴の廃棄を禁止へ
欧州議会と欧州連合(EU)理事会は11月5日、欧州委員会が2022年に提出した持続可能な製品のためのエコ設計に係る新規則案を巡り合意した。両者がそれぞれ承認すれば正式に発効する。 新規則では、売れ残った新品を廃棄する業者に対して、その量と、廃棄の理由を毎年申告することが義務付けられる。新規則発効から2年後(中規模の企業の場合は6年後)から、衣類・アクセサリー・靴については廃棄処分そのものが禁止される。小規模の企業は禁止措置の適用を受けない。 欧州委員会は2022年3月、持続可能な製品のためのエコ設計促進を目指す新規則案を提案。規則案は、各種製品の製造による環境へのインパクトを軽減するため、信頼性が高く、リユースと修理がより容易で、リサイクルもしやすい製品の設計上の要件を定めている。 規制案はまた、QRコードでアクセスできる製品の「デジタルパスポート」導入を定めている。製品の製造・購入が環境に及ぼす影響に関する情報を、随時更新して提供し、消費者が環境面での特性を比較し、選択することができるようにする。欧州委が一般向けの情報提供のポータルを運営する。 なお、フランスでは、2022年1月に発行した循環経済法により、食品以外の製品について、新品製品の廃棄処分が既に禁止されている。 KSM News and Research -
2023.12.05
ルメール経済相に大統領就任の秘策あり
まずはこの写真を見てほしい(https://www.europe1.fr/dossiers/bruno-le-maire)。ブリュノ・ルメール経済相の写真だが、このポーズに見覚えはないだろうか。そう、「七年殺し」のポーズである。日刊紙ルパリジャンの3日号(日曜版)をお持ちの方がいたら是非そちらも見てほしい。一面トップの写真で同じ形を作っている。これはお得意のポーズなのだろう。安定感のあるピラミッドのような形といい、肘をしっかり締めた姿勢といい、実際に用いたらかなりの破壊力を発揮するのは間違いない。 ルメール経済相が「七年殺し」を意識しているとは思えないが、政治家の決めポーズとしては、ドイツのメルケル前首相が後期によく見せていた、指を体の前で逆三角形に組むポーズが思い出される。これはあまり関係ないが、1969年生まれのルメール経済相(54)も知独派でドイツ語が堪能、パリのルイルグラン高校から高等師範学校(ENS)に進み、文学を学んだ。その後に、パリ政治学院(IEP)から国立行政学院(ENA)という政治家のエリートコースを進んだ。似たような経歴の大物にはジュペ元首相がおり、いずれも保守政界の顔である。ルメール経済相はノルマンディ地方ウール県で下院議員等を務め、サルコジ右派政権においても農相(2009-12年)など閣僚経験があるが、2017年の大統領選挙ではマクロン支持に転じた。マクロン大統領就任からこれまで、一貫して経済相を務め、内閣の重鎮となっている。 ルメール経済相が抱く次期大統領就任への野心は知らぬ者もないが、ライバルは多い。経済相としても、財政の健全化と景気対策や政策課題の両立など、困難なかじ取りを迫られ、失敗すれば足元をすくわれるだろう。「七年殺し」が果たして4年後の大統領選に効いてくるのか、刮目して見守ろうではないか。 KSM News and Research -
2023.12.05
ソシエテジェネラル、グリーンボンドをデジタル証券で初めて発行
仏大手銀行ソシエテジェネラルは4日、同行として初めて、グリーンボンドをセキュリティ・トークン(デジタル証券)の形で発行したと発表した。11月30日に私募の形で1000万ユーロ相当を発行した。 発行されたグリーンボンドは償還期限3年のシニア債。いずれも保険会社系の資産運用会社であるアクサIMとゼネラリ・インベストメンツが引き受けた。セキュリティ・トークンは、ソシエテジェネラル子会社のSG-FORGEを通じて直接にEthereumブロックチェーン上に記録された。ESG(環境・社会・ガバナンス)関連情報がトラッキング可能で透明度の高い形にて提供される。調達した資金は、ソシエテジェネラルが持続可能なインパクト投資として定義した事業のファイナンス及びリファイナンスに用いられる。ソシエテジェネラルは、ESG投資のデジタル資産に対する発行主体及び機関投資家の需要に対応できる先進的なサービスを提供する努力の一環として、今回の発行に踏み切った。 なお、先週には、欧州投資銀行(EIB)がユーロ建てのデジタル債券をブロックチェーン上で発行。同行として2回目の発行となったが、ソシエテジェネラルはこれに、ゴールドマンサックス及びサンタンデールと共に協力していた。 KSM News and Research -
2023.12.05
住宅ローンの与信規制が緩和に
フランス中銀下に設置されたHCSF(金融安定高等評議会)は4日に会合を開き、住宅ローンの与信規制の緩和を決定した。金利上昇に伴い、家計の住宅購入が冷え込んでいることの対策として、一連の規制緩和を決めた。2週間以内に施行される見通し。 緩和は3点からなる。まず、大規模なリノベーションを伴う場合のローン償還期限上限の引き上げ(25年から27年へ)についての制約を緩和。従来は、与信額の25%以上がリノベーション工事費である必要があったが、この上限が10%へ引き下げられる。また、本宅を売却して新居を購入する場合のつなぎ融資については、住宅ローン返済比率上限(35%)に含めないようにすることを決めた(つなぎ融資が与信額全体の80%を上回らないことが条件)。最後に、銀行側には、与信全体の20%までを、特例融資(償還期限25年、返済比率35%という上限を超える融資)とすることが認められているが、この規則の適用を緩和し、3ヵ月間の実績ではなく、9ヵ月間の実績で、20%までという上限を評価することを決めた。 不動産業者などはこの規制緩和について、およそ不十分な措置であり、住宅購入を後押しするものにはなりえないと不満を表明している。HCSFの側では、上記の20%ルールの活用が不十分で、銀行は14%までしか特例融資を認めていないと指摘し、まだ与信拡大の余地は大きいと説明している。 KSM News and Research -
2023.12.04
パリ五輪の制限地区案が公表に
パリ警視庁はこのほど、2024年のパリ五輪時の制限地区設定案を公表した。会場やプレスセンターなど関連施設がある場所の近くのエリアを指定し、数段階に分けて制限を適用する。細部は当事者らとの協議を経て来春までに詰める。 期間中は、セーヌ川に面したコンコルド広場、アンバリッド、シャンドマルス、トロカデロ宮等が制限区域に指定され、立ち入りが制限される。その周りに、車両の通行が原則的に禁止される赤地域が設定される。その周囲にはさらに、区域外からの車両の通過が禁止される青地域が指定される。住民には特例許可が与えられるが、事前の登録が必要になる。登録のためのプラットフォームは遅くとも3月までに稼働する。同じようなエリア設定が、パリ西部のローランギャロス及びパルクデプランスの周辺地区、パリ南部のポルトドベルサイユのアリーナ周辺地区、ベルシーのアリーナ周辺地区に設定される。もちろん、メイン会場があるサンドニ市(パリ北郊)を中心とするエリア、そして、副都心ラデファンスの西側にある会場周囲にも設定される。セーヌ川を会場とする開会式(7月26日)では、10kmに渡りセーヌ河岸が通行禁止となり、セーヌ川に対して眺望がある付近の建物もすべて、テロ警戒の対象地区に指定されて、安全確保の対象となる。エリア指定の概要は以下のURL(https://www.paris.fr/pages/perimetres-de-securite-et-circulation-pendant-les-jeux-comment-ca-marche-25203 )で確認できる。 KSM News and Research -
2023.12.04
パリ市内でテロ攻撃、1人が死亡
パリ市内のエッフェル塔近くで12月2日夜、通行人が刃物で相次いで襲撃される事件が発生した。1人が死亡、2人が負傷した。犯人は警官隊により現場付近で逮捕された。当局はテロ容疑で捜査を開始した。 事件は22時頃に発生。グルネル河岸(15区)の路上で、通行人が刃物とハンマーで襲撃され、ドイツ・フィリピンの二重国籍の男性が死亡した。犯人はビルアケム橋を渡って右岸(16区)に移動し、家族と共に通りかかった英国籍の男性観光客が、ケネディ大統領通りで襲撃を受けて負傷した。このほかに1人が負傷した。その直後に警官隊が犯人を追い詰め、テーザー銃(電撃を与えるスタンガンの一種)を使って身柄を取り押さえた。逮捕の際に犯人は「アラー・アクバル」と叫んだといわれる。 警察の発表によると、逮捕されたアルマン・ラジャブプールミヤンドアブ容疑者は、フランスで1997年に生まれ、フランス国籍を持つイラン系の男性で、過激派を網羅する通称「Sファイル」に登録され、当局による監視下に置かれていた。2016年には、暴力行為を準備していた罪で禁固4年の有罪判決を受け、2020年に出所していた。精神障害で治療も受けており、最近では、パレスチナ・ガザ地区の情勢に触発され、フランスをイスラエルの共犯者と見据えて、殉教者として死ぬことを望んでいたという。「イスラム国」に対して忠誠を誓う動画も発見されている。 犯行を抑止できなかったことで政府に対する批判の声が高まっている。2024年のパリ五輪を控えて、十全な警備体制を確保できるのか、懸念する声も上がっている。 KSM News and Research -
2023.12.04
S&P、フランスの長期債務格付けを据え置き
大手格付け会社のS&Pは1日、フランスの長期債務格付けを「AA」に据え置くことを決めた。格付け見通しは「ネガティブ」のまま維持した。フランスは格下げを免れた。 3大格付け会社のうち、ムーディーズは10月の時点のフランスの長期債務格付けを「Aa2」に据え置き、格付け見通しも「安定的」に維持していた。これに続いてフィッチも、格付けを「AAマイナス」に据え置いていた。S&Pは2022年以来、フランスの格付け見通しを「ネガティブ」のまま維持しており、今回の見直しで格下げが決まることを仏政府は特に恐れていた。それだけに、格付け維持で安堵の念が広がっている。 フランスの公的債務残高は3兆ユーロを超えており、2024年にも過去最高額の2850億ユーロを起債することになっている。格下げで長期金利の上昇に見舞われれば、調達条件が大きく悪化する恐れがあった。ただ、S&Pは、格付け維持を決めたものの、「緩慢な減少に向かっているとはいえ、財政赤字は大きく、公的債務残高も大きい」と指摘し、今後に不透明性が残るとの見方も示している。中期的には格下げの可能性も残る。 KSM News and Research -
2023.12.01
仏経済成長率、7-9月期にマイナス0.1%:インフレ率は11月に3.4%
30日発表のINSEE統計によると、フランスの経済成長率は7-9月期に前の期比でマイナス0.1%となった。前の期のプラス0.6%からマイナス成長に転じた。 INSEEは速報値を下方修正し、7-9月期を0.1%のマイナス成長とした。個人消費支出は前の期比で0.6%増を記録。前の期の0.1%減から増加に転じた。政府消費支出も0.5%増を記録した。固定資本形成は全体で0.2%増を記録。うち企業設備投資は0.5%増を記録したが、前の期の1.2%増から勢いが鈍った。家計の固定資本形成は1.1%減(前の期は1.3%減)と後退が続いた。輸入は0.1%増を記録したが、輸出は1.0%減と、前の期の2.5%増から減少に転じた。この結果、外需の経済成長率への貢献は0.4ポイントのマイナス貢献を記録。内需は0.5ポイントのプラス貢献を記録したが、在庫変動が0.2ポイントのマイナス貢献となり、全体として経済成長率はマイナスに転じた。 経済協力開発機構(OECD)は、最新の予測において、フランスの経済成長率を、2023年に0.9%、2024年に0.8%と予想しており、景気の先行き見通しはより厳しくなっている。 これとは別に、30日発表のINSEE速報によると、フランスのインフレ率は11月に3.4%となり、前月の4.0%を下回った。欧州連合(EU)基準のインフレ率は3.8%となり、やはり前月の4.5%と比べて鈍化した。 KSM News and Research -
2023.12.01
中古住宅取引価格、7-9月期に低下に転じる
30日発表の公証人統計によると、全国の中古住宅取引価格が7-9月期に低下に転じた。前年同期比で1.8%低下した。同価格が低下するのは2015年以来で初めて。 金利上昇に伴い、住宅を購入する家計の資金力に陰りが出て、これが取引価格の下げ圧力になっている。中古住宅取引価格は、2022年4-6月期には6.8%の上昇を記録しており、上昇が始まった2015年以来で、累積で32%の上昇を記録していた。しかし、上昇幅はそれ以来で小さくなっており、2023年4-6月期には0.5%まで鈍化していた。7-9月期にはついに低下に転じた。 パリ首都圏では既に、4-6月期に3.1%の低下を記録していたが、低下幅は7-9月期には5.3%まで拡大した。特に一戸建ての取引価格が5.4%低下しており、値下がりが目立つ。パリ市内の平均取引価格は11月末時点で9920ユーロ/平方メートルとなり、1万ユーロ台を割り込んでいる。地方の取引価格は7-9月期に0.5%の低下に転じた(4-6月期は1.8%の上昇)。一戸建てが1.0%の値下がりを記録、アパートは0.5%の上昇を記録しているが、上昇幅は前の期の2.8%からかなり縮まった。 全国の取引件数は7-9月期に92万8000件となり、100万件台を割り込んだ。取引後退の背景には、家計が銀行融資を得られにくくなっている状況がある。金利上昇に伴い、信用力の低い債務者に設定される金利が法定上限に収まらなくなっている。政府は12月1日付で、上限金利を6.11%(償還期限20年)に引き上げることを決定。ついに6%台に突入することになるが、住宅購入の冷え込みを解消するのは容易ではないとみられる。 KSM News and Research -
2023.12.01
家具・インテリアのアビタ、仏で会社更生法を申請
フランスでは1964年からデザイン家具・インテリアの店舗を展開してきたアビタ(Habitat)が11月30日、ボビニー商事裁判所に会社更生法の適用を申請した。英国のデザイナー、テレンス・コンラン氏のブランドとして発足したアビタは1964年に仏に進出。現在は仏国内で25店舗を展開し、450人を雇用している。2022年の年商は連結で8000万ユーロと、コロナ危機前2018-19年度の1億ユーロと比べて後退していた。3年前にCafomグループから仏アビタを買収した実業家ティエリー・ルゲネック氏によると、以前からの経営上の問題に加えて、来店客数の顕著な減少、ストックの不足、社内の労働争議、さらに最近のエネルギー価格や原材料価格の高騰を含むコストの急騰、インフレ亢進下での消費者の買い控えといった複数の要因が同社の現在の苦境を招いている。会社更生法の適用を申請することで、サプライヤーへの支払と顧客への注文品の納品への支障を防ぎ、長期的な経営健全化を目指すという。同氏によれば、アビタはフランスでは十分な収益性を確保できたことがなく、すでに戦略面での見直しを開始していた。同社は今年6月に、家具・インテリア商品の販売のほか、中古品販売、喫茶、食品販売のコーナーを併設した新コンセプトの店舗をリールに開設している。 なお、テレンス・コンラン氏創設の別ブランド「ザ・コンラン・ショップ」も11月末にフランス事業から撤退すると発表した。パリの百貨店ボンマルシェの至近距離にある店舗とオンライン販売で在庫を処分し次第、事業を打ち切る。同ブランドは1992年からフランスに進出していた。 KSM News and Research -
2023.11.30
仏雇用数、7-9月期も純増を維持
29日発表のINSEE統計によると、給与所得者総数は9月末時点で2703万8600人となり、3ヵ月前から3万6700人増加した。増加幅は4-6月期の2万6800人を上回り、景気低迷が鮮明となる中でも、純増を維持した。 6-9月には、民間部門で3万700人増の2109万8300人、公共部門では6000人増の594万400人をそれぞれ記録した。部門別では、工業部門で1万1900人増を記録(前の期は5600人増)。サービス部門でも1万7000人増(前の期は1万6500人増)を記録したが、うち派遣雇用は1万6300人の純減を記録。純減幅は前の期の6900人を上回った。農業部門は3000人の純減(前の期は1100人の純減)を記録した。非営利サービス部門では1万5800人の増加を記録、逆に建設部門では5500人の純減を記録した。 1年前と比べると、給与所得者総数は20万7000人の純増を記録している(民間部門が18万900人増、公共部門が2620人増)。 雇用数は7-9月期には純減に転じると予想されていたが、予想に反して増加が持続した。ただ、INSEEでは、雇用の全体的な減速傾向は明らかだと指摘。多くのエコノミストらは、2027年の任期末の時点で完全雇用を実現するとのマクロン大統領の公約の実現は難しくなったとみている。 KSM News and Research -
2023.11.30
デュポンモレティ法相、共和国法廷で無罪判決
デュポンモレティ法相を被告人とする裁判で、共和国法廷(CJR)は29日、被告人に無罪を言い渡した。被告人に法相の立場を乱用する意図はなかったと認定した。 デュポンモレティ法相は弁護士出身で、2020年夏にマクロン大統領により法相に抜擢された。法相は就任後、弁護士時代に遺恨があった検察官4人を対象に、懲罰決定に至る可能性がある内部調査の開始を決定していたが、これについて、検察官組合が、職権を乱用した不当な決定であるとして提訴していた。 共和国法廷(CJR)は、閣僚が職務遂行に絡んで犯した犯罪を裁く特別法廷で、裁判官は、12人の国会議員(上下院から6人ずつ)と最高裁裁判官3人の合計15人で構成されている。共和国法廷は、法相が調査を決定したことについて、利益相反の状態にあったことを認めたが、法相がそれにより自らの復讐を企画したという意図の発現はなく、そのような意図があったと認めるに足る証拠がないとの理由を挙げて、被告人に無罪判決を言い渡した。 無罪判決により法相は辞任を回避し、マクロン政権も不安要因を一つ取り除くことができた。共和国法廷は、その構成から不偏不党とはいえないという批判の声があり、マクロン大統領も以前から廃止を希望していたが果たせずにここまで来たという経緯がある。その共和国法廷に今度は救われた格好になったが、野党勢力からは共和国法廷の改革を求める声が再び上がっている。 KSM News and Research -
2023.11.30
食品メーカーと小売業者の価格交渉、値下がりは期待薄
食品メーカーと小売業者の間の年次価格交渉が近く開始される。小売価格の低下は期待薄の展開となっている。 メーカーと小売業者の間では、毎年、仕入れ価格に関する交渉が行われる。今年は、政府が早期の値下げ実現を目的に、立法措置を通じて交渉日程を前倒しにした。中小のメーカーの場合は11月21日まで、仏国内の年商が3億5000万ユーロ超の大企業の場合には12月5日までに、小売業者に対して金額を提示し、交渉に入ることになる。前者については2024年1月15日まで、後者については同1月31日までに交渉をまとめなければならない。 政府の思惑とは別に、食品価格の値下がりは実現しそうにない。交渉筋によると、30%の値下げを求める小売業者もあるというが、対する食品メーカーの業界団体ANIAは、2024年には全体で食品価格は2-4%上昇するとの展望を示し、値下げには応じない構えを見せている。 そうした中で、消費者団体(フードウォッチ、ファミーユリュラル、UFCクショワジール、CLCV)は29日、マクロン大統領に宛てた公開書簡を公表。食品メーカーと小売業者の両方が不当な利益を値上げにより取得しているとし、マージンの透明性を確保すると共に、過剰な利益を抑止する措置を講じるよう呼びかけた。 KSM News and Research -
2023.11.29
欧州委、アイロボット買収に関してアマゾンに異議告知書を送付
欧州委員会は27日、アマゾンに異議告知書を送付した。アマゾンによるアイロボット(iRobot)の買収計画を問題視した。 アイロボットは、「ルンバ(Roomba)」ブランドのロボット掃除機で知られる。アマゾンはアイロボットを16億5000万ドルで買収する計画を発表。既に英国では去る6月に許可を取得したが、欧州委は本格調査を継続していた。 欧州委は異議告知書において、アマゾンが買収を経てアイロボットの競合製品の排除を進める可能性があると指摘。特に、アマゾンのECサイト上で、競合製品の扱いを小さくするなどの制限を適用する可能性があるとした。「アマゾンチョイス」から競合商品を外したり、また、アマゾンのAlexa(音声サービス)対応でルンバを厚遇することが可能だと指摘し、アマゾンに対して改善策を示すよう求めた。 アイロボットの株価は、欧州委による許可間近との報道を受けて、24日には30%を超える上昇を記録していたが、欧州委の発表を受けて17%の反落を記録、1株34.35ドルまで下がった。 KSM News and Research -
2023.11.29
政府、喫煙対策プランを公表
ルソー保健相は28日、2027年までを対象にした喫煙対策プランを公表した。2032年に「たばこゼロ」世代を実現するとの目標を再確認し、一連の措置を盛り込んだ。 喫煙に由来する疾患で死亡する人は年間に7万5000人を数える。1日に200人が死亡している計算になる。政府はまず、たばこの販売価格の段階的な値上げの方針を確認。現在、1箱が11ユーロ程度となっているが、これを2027年に13ユーロまで引き上げる。中間の2025年時点では12ユーロに引き上げる。2024年年頭には、40-50ユーロセント程度の値上げが実施される見通し。なお、2024年にはたばこ税の増税は予定されていない。ただし、この値上げペースでは抑止効果が薄いという批判の声もある。 禁煙地域の設定も拡大される。浜辺、森林、公園、さらに学校等の一部の公共施設の周辺が、新たに禁煙地域に指定される。これまでは、自治体等が任意でこうした禁止措置を決めることはあったが、法令による全般的な禁止はなされていなかった。なお、時間帯等を決めて喫煙を認める措置を県単位で決めることが認められる。 パフと呼ばれる使い捨て電子たばこについては、未成年者が喫煙を始めるきっかけになるとする批判の声があり、政府も禁止措置を予告していた。28日には、超党派の下院議員らが販売禁止を盛り込んだ議員立法法案を提出した。12月4日に審議される予定。 政府はこのほか、禁煙を望む喫煙者の支援措置を強化することを決めた。 KSM News and Research -
2023.11.29
BNPパリバ、「エルベ・インモ」事件で再び有罪判決
BNPパリバ銀行のローン子会社BNPパリバ・パーソナルフィナンスを被告人とする刑事事件裁判で、パリ高裁は28日、下級審の判決を支持し、不当な商行為があったとする有罪判決を言い渡した。最高刑である18万7500ユーロの罰金刑を言い渡すと共に、被害者の原告に対する損害賠償に応じるよう命じた。 この裁判は、BNPパリバが「Helvet-Immo」社を通じて、2008年から2009年にかけて販売したスイスフラン建ての住宅ローンを巡り争われた。この商品は、スイスフラン建てで融資し、ユーロ建てで返済するというものだったが、金融危機の影響で2011年にユーロが対スイスフランで下落したことから、ローンを組んだ顧客は返済額が急増した。顧客側が、リスクに関する十分な説明がないまま商品を売りつけられたと主張して訴えていた。 この事件では、これまでに、契約の取り消しなどを求める民事訴訟が複数争われている。当初は銀行側が優勢だったが、欧州司法裁判所が示した法令解釈と、最高裁が下した差し戻し判決を経て形勢が逆転し、顧客側の勝訴が続いていた。今回の刑事事件裁判では、2020年の下級審判決を支持し、パリ高裁が、罰金刑を言い渡し、損害賠償の支払い(現在価値で2億ユーロ)を命令。顧客への説明義務が十分に尽くされていなかったと認めた。BNPパリバ側は、判決には誤りがあるとの見解を表明。判決文を精査した上で対応を決めると説明した。 問題のローンは4655件に上り、融資総額は8億ユーロ程度に上っていた。なお、2013年には法令が改正され、外貨建てのローンは、当該外貨による収入が債務者にない限りは、販売が禁止されている。 KSM News and Research -
2023.11.28
音楽ストリーミング対象の拠出金制度導入案、上院を通過
上院は26日未明、2024年予算法案の一部として、CNM(音楽国立センター)の財源確保を目的に、音楽ストリーミングサービスに拠出金の支払いを義務付ける条項を採択した。 CNMは2020年に設立された公的機関で、既存組織であるCNC(国立映画センター)が映画産業に対して行っている活動に倣って、音楽産業とクリエーションへの資金供給を担当することになっている。これまで独自財源がなく、長期的な運営の基盤が整っていなかった。2024年予算法案では、CNMの同年予算は6700万ユーロ強に設定されており、これでは、制作向け補助金はせいぜい3000万ユーロが確保できるのみで、目標の6000万ユーロには足りない。マクロン大統領はこれまでに、ストリーミングサービスへの課税による恒久財源の確保を示唆してきたが、具体的な措置は示されておらず、上院で過半数を握る保守・中道勢力が修正案の形で、拠出金制度の導入を追加した。 採択された条項によると、拠出金は、無料・有料を問わず、ストリーミングサービス事業者から徴収され、その金額は、事業者の売上高及び広告収入をベースに決定される。拠出金制度により、年間で合計1500万ユーロの収入が見込めるという。条項の最終的な可決の是非は下院に委ねられる。 KSM News and Research -
2023.11.28
パリ首都圏の公共交通機関の運賃改定:五輪期間中は特別料金
パリ首都圏の公共交通機関を統括するIDFMはこのほど、2024年の運賃改定について発表した。12月7日に正式決定する。 NAVIGO(定期券)は月額で86.4ユーロに引き上げられる。同料金は2023年には11.8%の大幅な引上げの対象となっていたが、来年にも2.3ユーロの値上げが実施される。1回券は1.69ユーロから1.73ユーロへ引き上げられる。NAVIGOは、1日券では20.10ユーロが20.60ユーロへ、1週間券では30ユーロが30.75ユーロへ、年間券では925.10ユーロが950.40ユーロへ、それぞれ引き上げられる。 2024年6月にはメトロ14号線の延伸部分が開業する。パリ南方のオルリー空港まで直通で行けるようになるが、市内からオルリー空港までは11.50ユーロの料金が設定された。この料金設定は、市内から北方のシャルルドゴール空港までの料金と横並びだが、シャルルドゴール空港までを結んでいるのはメトロではなくRER(郊外連絡急行)という違いがある。メトロは1回券でどこまでも乗れるのが建前であり、14番線でこの原則が初めて崩れることになる。この料金設定には批判の声もある。 パリ五輪期間中となる7月20日から9月8日までは特別料金が適用される。NAVIGOの1日券及び1週間券は期間中に販売が停止され、代わって、1日16ユーロ、1週間では70ユーロの「Pass Paris 2024」が販売される。1日券は有利だが、1週間券は大幅に高い料金設定となる。期間中は1回券も4ユーロと高くなるため、1回券のチャージができるNAVIGO Easyに多めにチャージしておくとよい。 KSM News and Research -
2023.11.28
政府、失業保険の労使合意の立法化を見合わせ
政府は27日、先に労使がまとめた失業保険の制度改正合意の立法化を見合わせることを決めた。年金改革の影響が折り込まれていないことを理由に、合意の施行を先送りとした。失業手当支給額等については現行規則の適用が継続される。 失業保険は労使同数の組織UNEDICにより管理されている。労使共同運営が建前だが、近年は政府が制度の内容を決める上で指導力を強めている。政府は先に、収支の均衡に影響が及ばない範囲で制度の手直しを協議することを、労使に対して認めており、その結果、経営者側の全団体と、CGT及びCFE-CGCを除く全労組の間で合意が成立していた。政府がその内容を立法化することにより合意は施行されるが、政府はそれを見合わせることを決めた。 政府は、年金改革の影響が合意において考慮されていない点を問題視した。改革では、定年年限が62才から64才へ段階的に引き上げられることになっているが、この影響を折り込むとすると、そのままなら失業手当の支給条件を厳しくすることが不可避になり、それは労組側が承知しなかった。合意では、開始を予定していたシニア層の就業促進等に関する交渉の結果を踏まえて決める旨が盛り込まれたが、政府はこれでは不十分とみて、立法措置を先送りすることを決めた。政府が独自の判断で制度の手直しに踏み切る可能性もあるとみられる。労組側の反発も予想される。 KSM News and Research -
2023.11.27
フランスで極右グループによる暴動、未成年者の刺殺事件を受けて発生
ドローム県ロマンシュルイゼール市で25日夜、極右グループによる暴動が発生した。80人程度が全国から結集し、警官隊と衝突するなどした。20人が逮捕され、17人の勾留継続が決定。また、暴動に加わった20才の男性1人が、他の若者グループから暴行を受けて負傷した。この暴動は、同市近郊で数日前に発生した未成年者の刺殺事件に端を発している。クレポル村の公民館で開かれたパーティーの機会に事件は発生。ロマンシュルイゼール市に住む若者らが容疑者として逮捕されたが、実行犯がアラブ系の名前であることが報じられたのを受けて、極右勢力が今回の暴動を企てた。参加者らは、「トマ(刺殺された未成年者の名前)のために裁きを」、「イスラムを追い出せ」などと叫んで、容疑者のグループが居住していた地区で示威行動を展開した。刺殺事件の詳細はまだ判明していないが、不良少年団が大挙して襲撃に来たというよりは、パーティーに参加した若者たちの間で喧嘩になり、殺傷沙汰に発展したというのが真相らしい。その限りで不幸だが「平凡な事件」であるのだが、近年はマスコミなどでも極右の論客らがメインストリームで活躍しており、こうした事件を材料に憎悪を焚きつけるような風潮がある。SMSを通じた増幅効果で過激なグループが結集して行動を起こしやすい状況もある。アイルランドのダブリンで23日に発生した暴動事件とも共通性があり、極右思想の浸透が欧州全体で広がっていることを示唆している。 KSM News and Research -
2023.11.27
住民税の課税請求に誤り、未成年者への誤った請求目立つ
住民税の課税請求書が誤って送付される事案が多発している。経済省は納税者に不利益が生じないよう、迅速に対処すると約束している。住民税は数年間をかけて段階的に廃止され、今年は全廃元年となった。全廃といっても、廃止は本宅が対象であり、セカンドハウスは今後とも課税が継続される。この秋にはそのセカンドハウス対象の住民税の課税請求書が送付されたが、課税対象ではありえないのに請求書を送付されるケースが多く発生しているといい、盛んに報道されている。被害を受けた人は若年者が多く、特に、1万6500件で未成年者が請求先となっているのが目立つ。この中には、2才の幼女が663ユーロの請求を受けたケース(ウール県)など、極端な事案も含まれる。税務当局は、セカンドハウス対象の住民税に関する係争は年間25万-44万件が発生しているとし、今年は前年比で3%の増加にとどまると説明している。未成年者への誤送の理由はまだはっきりしていないが、再発の防止に全力を尽くすとも説明した。今年から、住民税廃止にも関係して、保有する住宅等不動産の申告義務が導入されたが、不具合の発生はそれと関係しているとみる向きもある。 KSM News and Research -
2023.11.27
ディアジオ、フランスでのLVMHとの販売提携を見直し
英酒造大手ディアジオは、フランスにおける販売事業の大部分を社内で行うことを決めた。仏高級ブランド大手LVMHとの提携関係を見直す。ディアジオは、LVMH傘下のモエヘネシー(ワイン・スピリッツ)の株式34%を保有。ディアジオが保有するブランドの仏国内での販売は、モエヘネシーとの合弁会社MHD(モエヘネシー・ディアジオ)を通じて行っている。ディアジオは、3月1日より自前の子会社を通じて、段階的にほぼすべてのブランドの販売権を取り戻す計画で、手始めに、ウイスキーのカーデュ(Cardhu)、ジンのタンカレー(Tanqueray)、テキーラのドンフリオ(Don Julio)、ラムのサカパ(Zacapa)の販売事業を引き取り、2025年にはウオッカのスミノフ(Smirnoff)などに広げる。量販店での販売が大きいウイスキーのジョニーウォーカーとJ&B、ジンのゴードンについては、MHDが引き続き販売事業を担当する。ディアジオはこの見直しで、特に、バー・ホテル・レストラン等の外食産業向けの販売を強化する。ディアジオは外食産業向けの販売が通常は6割程度を占めているが、フランスに限ると2-3割程度と少なく、高級感を演出できる店舗向けの販売を拡大し、イメージの向上を図りたい考え。スピリッツのプレミアムブランドのフランスにおけるシェア(全販路)を、3年後に10%へ引き上げることを目指す。 KSM News and Research -
2023.11.24
仏経営者景況感指数、11月に97.2ポイントまで後退
11月23日発表のINSEE統計によると、11月の仏経営者景況感総合指数は97.2となり、前月の98.2から低下した。長期の平均である100を2ヵ月連続で下回った。小売部門(2ポイント低下の96ポイント)と卸売部門(2ヵ月前から4ポイント低下の90ポイント)で後退が目立った。建築部門は1ポイント低下の102ポイント。工業部門(99ポイント)とサービス部門(100ポイント)は横ばいだった。企業の雇用に関する見方を示す雇用指数は、9月に105.3ポイント、10月に102.7ポイント、11月に100.6ポイントと順次低下。長期の平均(100)近くまで下がっている。10-12月期のフランスの経済成長率について、中銀は小幅なプラス成長が持続すると予想しているが、エコノミストの中にはより悲観的な見方をする向きもある。ここ数週間、景気の悪化を示す指標がいくつか示された。11月の中銀の月次報告によると、工業部門では受注減が目立ってきており、建築工事もより一層、低水準に後退した。サービスを含め、全体的に企業の資金繰りは悪化した。社会保険料の徴収機関URSSAFが今週に発表したデータによると、この1年間で会社更生法の適用を申請した企業は48.4%の増加を記録、新型コロナ危機以前を上回る水準に達している。倒産企業の雇用数合計もコロナ前の水準を上回った。 KSM News and Research -
2023.11.24
ノボノルディスク、仏シャルトル工場に21億ユーロを投資
デンマークの製薬大手ノボノルディスクは23日、仏シャルトル工場の拡張計画を正式に発表した。21億ユーロを投資して2倍の増産を図る。仏国内の保健分野の投資計画としては過去最大規模となった。発表にはマクロン大統領も列席。大統領は、国内製造業の振興を主要な政策課題に掲げており、完全雇用に向けた製造業の再振興のために政府が様々な改革を進めてきたことを強調した。ノボノルディスクは糖尿病治療薬の大手で、このところ、肥満症治療剤の認可取得が弾みとなり、時価総額が大きく増加している。1961年に開所のシャルトル工場では、ペン型皮下注射薬の調合・充填が行われている。投資計画では、2つの生産ラインを有する建屋2棟を建設。拠点の総面積は2倍の23万平方メートルに拡張される。主力のオゼンピックの増産に加えて、売り出し中の肥満症治療剤「ウゴービ」の調剤・充填も行われる。将来に開発の新薬にも切り替えられる柔軟な生産ラインを整備する。拡張される施設は2026年から2028年にかけて操業を開始する予定。シャルトル工場には現在、1600人が勤務しているが、新施設の開所に伴い500人強が増員される。 KSM News and Research -
2023.11.24
従業員への利益分配法案、最終的に可決
国会は22日、従業員への利益分配制度に関する法案を最終的に可決した。利益分配には、パルティシパシオンとアンテレスマンなど複数あり、従業員数50人以上の企業では導入が義務付けられている。法案は、利益分配の利用拡大に関する労使合意に法的根拠を与える目的で提出された。具体的には、従業員数が11-49人の企業にも、3年連続で黒字(対売上高比で1%以上)を記録した場合に、パルティシパシオン、アンテレスマン、利益分配手当のうちのいずれか1つを導入することが義務付けられる。2025年から義務が生じる。このうち、「利益分配手当」とは、いわゆる「マクロン手当」のことだが、これにまつわる税制優遇措置は2023年末で、従業員数50人以上の企業においては廃止されることになっている。他の制度よりも実行が容易であり、零細企業にも利用がしやすい措置として特に条文中に明示された。従業員数50人以上の企業については、利益分配を必ず実施しなければならない「特別利益」の定義を定める労使交渉の実施が義務付けられた。交渉が合意に至らない場合には、経営側に決定権が委ねられることになる。民間部門の雇用数1800万人のうち、利益分配の対象となっている従業員数は700万人に上り、その平均分配額は1409ユーロとなっている。うち670万人が従業員数50人以上の企業に勤務、50人未満の企業の従業員は30万人となっている。新法の規定により、さらに150万人の従業員が利益分配の対象に加わる見通しだという。 KSM News and Research -
2023.11.23
過剰消費抑制を呼びかける政府広報が物議に、商店側は営業妨害だと反発
過剰消費の抑制を呼びかける政府広報が物議を醸している。経営者団体等が営業妨害だと反発しており、政府部内にも広報への批判が広がっている。問題の広報は、ブラックフライデーにあわせて、ADEME(環境・省エネ庁)とエコロジー移行省が共同で準備した。4本のコマーシャルがテレビ等を通じて公開された。いずれも、「反販売員」を名乗る店員等が、商品購入を相談する顧客に対して、「買わないで借りればいい」とか「本当に必要か」などと購入を抑止する内容で、「現実世界には反販売員はいないので、一人一人が考えて消費をしましょう」といったメッセージが流れる。経済団体(MEDEF、CPME)は揃って、「商店を悪者にする」悪意ある広報だと反発。経済省に対して抗議のメッセージが殺到しているという。与党内や政府部内からも批判の声が上がっている。経済省からは、事前に一切の打診なしに広報キャンペーンが開始されたとする不満の声が聞かれる。首相や大統領の裁可も得ていないといい、マクロン政権の足元の定まらなさを象徴した事案だとする評もある。キャンペーンを決めたベシュ・エコロジー移行相の周辺は、問題の広報の取り下げは予定していないし、閣内で取り下げを求める声はないと説明している。 KSM News and Research -
2023.11.23
「ガストン・ラガッフ」の新作が刊行に
往年の人気BD(フランス語の漫画)、「ガストン・ラガッフ」シリーズの最新刊が22日に発売された。1997年に作者のアンドレ・フランカンが死去して以来で初めての刊行となる。ガストン・ラガッフは1957年にBD雑誌「スピルー」に初めて掲載された。怠け者でうっかりした夢見がちな青年が失敗を繰り返すストーリーのこの作品は人気を博し、1996年までに全21巻が販売され、世界で3000万部以上が売れた。最新作「帰ってきたラガッフ(Le retour de Lagaffe)」は、実績のあるカナダ・ケベック州のBD作家マルク・ドラフォンテーヌ(通称ドラフ)が制作を請け負った。BD出版大手のデュピュイ(メディア・パルティシパシオン傘下)は初版80万部を用意。これは、当初予定の120万部よりも少ないが、例えばフランスの最大の文学賞であるゴンクール賞の受賞作が50万部程度の売り上げであることを考えると、破格の力の入れようであることがわかる。この最新作は2022年3月に予告されたが、フランカンの相続人である実娘が出版に反対して訴訟を起こしたことから、発売が延期されていた。仲裁裁判で相続人側の訴えが退けられ、今回の発売に至った。デュピュイでは、新作発表による話題作りで既刊の売れ行きに弾みがつくことに期待している。 KSM News and Research -
2023.11.23
パリ市、環状自動車専用道の速度制限強化を予告
パリ市は22日、新たな気候プラン(2024-30年)の一環として、環状自動車専用道(ペリフェリック)の速度制限強化等の方針を明らかにした。パリ五輪が終了した2024年9月より適用する。パリ五輪においては、ペリフェリックに五輪関係者の専用レーンが整備されることになっている。パリ市はこの専用レーンを五輪終了後も維持し、これをライドシェア・公共交通機関の専用レーンに改めることを決めた。さらに、ペリフェリックの速度制限は、時速70kmから50kmへ引き下げられる。パリ市のレール助役(エコロジー移行担当)はこれらの措置について、大気汚染の軽減をその主な目標として掲げた。近隣に住む児童が喘息にかかることが多いことを挙げて、道路沿いの大衆的な地区に住む子どもが苦しむようなことがあってはならないと述べて、制限措置を正当化した。なお、ペリフェリックの速度制限は、1993年に時速90kmから80kmへ、2014年には70kmへと引き下げられており、さらに一般道並みの速度に引き下げられることになる。導入には反発も予想される。 KSM News and Research -
2023.11.22
アルティス・フランス、データセンター事業を売却へ
アルティス・フランス(通信SFRの親会社)は21日、データセンター事業の売却に向けて、モルガンスタンレー・インフラストラクチャー・パートナーズと独占交渉を開始したと発表した。債務削減に向けた資産売却の一歩となる。発表によると、モルガンスタンレーが70%を出資する合弁会社ウルトラエッジ(UltraEdge)が設立され、アルティスが仏国内に保有する257ヵ所のデータセンターがこの合弁に移転される。アルティス傘下のSFRがウルトラエッジの30%株式を維持する。取引は評価額を7億6400万ユーロとして行われ、SFRは5億ユーロを超える売却収入を得られる。ただし、9月初頭にこの交渉が取り沙汰された際には10億ユーロ程度の評価額になると報じられており、それよりは低めの額に落ち着いたことになる。データセンター事業は、SFRを主要顧客とするが、グループ外の顧客にも役務を提供している。EBITDAは2023年に2600万ユーロに上るという。SFRは売却後も設備投資の負担に応じ、合弁からの収入確保に期待している。アルティス・グループの債務は全体で600億ユーロに上り、今回の取引から得られる債務の削減効果はわずかにすぎないが、2025年に償還期限が来る16億4000万ユーロの返済を乗り切る上では助けになる。資産売却はしばらく続く見通しで、不祥事があったポルトガルの通信事業のほか、ドミニカ共和国の通信事業や、Teads(行動ターゲティング広告)などが検討の対象になっている模様。SFRへの出資者探しも否定されていない。 KSM News and Research -
2023.11.22
マクロン大統領、中小企業支援策を公表
マクロン大統領は21日、100社程度の中小企業の経営者を大統領府に集めて会合を開いた。成長株の中小企業を支援する新プログラム「ETIncelles」を正式に開始した。ETIncelles(エタンセル)は「閃光」を意味し、中堅企業(従業員数250人超・年商5000万ユーロ超)を意味する「ETI」とかけた名称となっている。フランスは中堅企業数が5600社で、ドイツ(1万2000社)はもとより、イタリア(8000社)と比べても層が薄い。それでも、フランスで中堅企業が輸出に占める割合は33%、雇用数に占める割合も25%と大きく、中小企業を中堅企業へと育成することが重要な政策課題となっている。全国の中小企業数は14万6000を数えるが、政府はうち2万社に、中堅企業に成長を遂げるポテンシャルがあると見据えている。マクロン政権は2020年に、2027年までに中堅企業数を6000社に増やすことを目標に掲げた「Nation ETI」戦略を発表。その延長線上に新プログラムを用意し、2027年までに中堅企業数を1000社増やすとの目標を新たに掲げた。新プログラムは1年前から50社を対象に試験導入されており、これを本格化する。中小企業から中堅企業に切り替わる際には、規制上の分類が変わり、新たな義務などが発生する。それへの対応は想定していなかった負担を招くことになり、これが成長を妨げる要因の一つになっている。新プログラムは、この移行段階に差し掛かった企業を、12-18ヵ月間の期限でサポートするという趣旨で、地域圏レベルの出先機関に45人の担当者を置き、担当企業の相談に直接に対応して支援を与える。2027年までに500社を支援の対象とする予定。 KSM News and Research -
2023.11.22
ビベンディによるラガルデール・グループの買収がようやく成立
ビベンディ(カナル・プリュス、アバス、プリスマ・メディア等)は11月21日、傘下のプリスマ・メディアが保有する芸能週刊誌「ガラ」をルフィガロ・グループへ売却した。傘下の出版社エディティスをクレティンスキー氏に売却したのに続いて「ガラ」の売却も完了したことで、欧州委の競争当局がビベンディによるラガルデール・グループ(アシェット、ユーロップ1-2ラジオ、RFMラジオ、パリ・マッチ、ジュルナル・デュ・ディマンシュ、トラベル・リテール)の買収を許可する条件として提示した2点をクリアし、ビベンディによるラガルデールの買収が成立した。ラガルデールは合資会社という形態により創業者子息のアルノー・ラガルデールCEOに安定した経営権を付与していたが、2021年に株式会社へ改組し、同社の買収を望んだビベンディは3年以上にわたる紆余曲折を経てようやく今回、ラガルデール株式57.95%、議決権50.50%を公式に取得した。ビベンディのヤニック・ボロレ監査役会会長は、ラガルデールはビベンディの子会社として決算に連結されるが、経営の独立をあくまで尊重すると言明。ラガルデールの公開株式もそのまま上場を維持する意向を明らかにした。ラガルデールの事業のうち売上の半分を占めるトラベル・リテール(駅・空港の売店Relayチェーンの展開)はビベンディにとって未知の部門だが、新たな成長部門として維持していく計画だ。ビベンディは、欧州委の許可が降りた後での株式売却を望むラガルデール株主を対象に、当初12月15日としていたTOB枠での買取期限を2025年6月まで延長する。株式11.11%、議決権12.76%を持つアルノー・ラガルデールCEO は株主として残る意向を表明。株式7.7%を保有するLVMHのベルナール・アルノーCEOは意向を明らかにしていない。ラガルデール氏は2027年までラガルデールのCEOであるほか、出版大手アシェット(世界3位)のCEOにも任命されている。ラガルデールの買収によりビベンディはコミュニケーション部門で世界トップに踊り出る。総売上は96億ユーロから165億ユーロへ、従業員数は3万8300人から6万5700人へ膨れ上がり、売上に占める国際事業の比率も54%から63%へと上昇する。 KSM News and Research -
2023.11.21
マクドナルド、フランスでEV急速充電器の設置に着手
マクドナルド・フランスは、EDF(仏電力)子会社のIziviaとの協業で、国内店舗にEV急速充電器を設置する取り組みに着手した。2025年までに、全国700ヵ所の店舗駐車場に2000基を設置する。実際の展開は既に始まっており、21日には初号機の除幕式がパリ郊外ノワジールグラン市内の店舗で行われる。マクドナルドは集客力向上を目的にこの展開に着手した。20分間で80%までの充填ができるよう、出力150kWという超高速充電器を採用した。料金は1kWh当たりで35ユーロセントで、これは、100km走行につき5-6ユーロ程度に相当。自宅での充電の場合の2-3ユーロより高いが、公共施設の10-12ユーロと比べると安い。供給される電力にはグリーン電力を用いる。Iziviaとは12年契約を結んだが、契約期間中に94億km相当の販売を見込んでおり、これは、二酸化炭素の170万トン分の排出量回避に相当するという。流通業者によるEV充電器の整備は既に動き出しており、例えば食品小売大手カルフールは、大規模店舗に併設する形で、2025年までに5000基を設置する目標を立てている。やはり集客力の切り札とする方針で、ポイントカード所有者には1時間まで(22kW充電器)を無料とし、それを超える分は有料としている。 KSM News and Research -
2023.11.21
政府、高齢者支援の戦略プランを公表
ベルジェ連帯・家族相は17日、高齢者支援の戦略プランについて公表した。多年次の計画法を制定して、本格的に政策を推進する考えを示した。多年次計画法と並行して、高齢者支援に取り組む省間委員会が設置される。住居、輸送、スポーツなど、関連する省庁の代表を幅広く集めて、総合的な見地から対策を推進する。高齢者支援団体等は、政府が人口高齢化に本格的に取り組む決意を示したものだとみて、この方針を歓迎している。ただし、17日の発表では、財源面についてはまったく示されておらず、この点については懸念の声も根強くある。連帯・家族相は、自宅介護サービスの財源を整理し、県単位で、ホームヘルパーに対する適正な報酬確保の体制作りを進める方針を示している。これについては、財源が確保されないまま、県ごとの格差が広がることを懸念する向きもある。マクロン政権はこの問題では、これまでに、介護を扱う社会保障会計の第5の収支部門を設けている。研究機関IPPの推計によると、2040年時点で介護関連の手当の費用負担は2020年と比べて80%増加し、年間100億ユーロを超える見通しという。 KSM News and Research -
2023.11.21
仏サフランの買収案件にイタリア政府が拒否権発動
仏サフラン(航空機エンジンなど製造)が米コリンズ・エアロスペースのアビオニクス事業部門の買収を計画している件で、イタリア政府は20日、買収対象事業のイタリア資産の買収に拒否権を発動することを決めた。重要部門企業の外資による買収への政府拒否権制度は、フランスを含む欧州の多くの諸国が採用しているが、欧州諸国企業による買収案件に適用されるのは異例。サフランによる買収計画は去る7月に発表された。全部で欧州の8拠点(フランス、英国、イタリア)を18億ユーロで買収する計画で、対象事業の従業員数は3700人に上る。2024年後半に買収完了を予定していたが、イタリア政府により、イタリア資産(ミクロテクニカ名義の3拠点、売上高で買収対象全体の15%に相当)の買収に限り禁止された。イタリア政府は、国防上重要なイタリア国内の生産ラインの維持などにサフランが応じるという確証がないことを理由に買収を禁止した。この件では、ドイツ政府も、イタリア政府に対して、ユーロファイター戦闘機等の交換部品の調達に懸念が生じる恐れがあるとする見解を伝えていたという。サフランは、事前にイタリアとドイツの両政府から接触がないまま禁止決定を受けたことに驚いているとコメント。買収計画は断念せずに関係各当事者らと協議を重ねて次の段階をどうするか決めると説明している。 KSM News and Research -
2023.11.20
マクロン大統領、移民関連の国民投票を断念
マクロン大統領は17日、パリ北郊サンドニ市で政治勢力の代表者を集めた会合を開いた。大統領はこの機会に、移民関連の案件を国民投票に諮ることを断念することを決めた。大統領は8月末にこの種の会合を初めて招集。憲法改正を含む国家制度の改革など重要問題を、すべての政治勢力の代表と共に協議するという趣旨で、政府はこれを重要会合と位置付けていた。今回は3回目を迎えたが、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」、社会党、そして保守野党の共和党の3党の党首級が欠席することを決め、招集された14人のうち、11人のみの出席を得て開催された。移民関連の案件を諮る国民投票を行なえるよう憲法を改正するという案は、共和党のシオティ党首が熱心に要求していたものだったが、大統領は、十分なコンセンサスが得られなかったことを理由に廃案とした。会合の欠席を決めたシオティ党首に対する意趣返しでもあるとみられる。今回の会合では、地方分権政策の検討を政府から依頼されたブルト下院議員(与党ルネサンス所属)が途中から合流し、同問題に関する意見交換も行われた。ブルト議員はこの機会に、自治体の階層を整理する改革は提案しないと約束。3ヵ月後に再度会合を開くことを申し合わせた。 KSM News and Research -
2023.11.20
仏弾道ミサイルM51.3、飛行試験が実施に
仏兵器総局(DGA)は18日、弾道ミサイルM51.3の飛行試験を実施した。2年後の配備を予定する。M51.3は、戦略原子力潜水艦(SNLE)に配備され、核弾頭を搭載する。M51の改良バージョンとして2014年に開発が開始された。射程距離は1万km程度まで引き上げられ、既存の防空システムをかいくぐることができる性能を備えているという。飛行試験は、南西地方にあるビスカロス試験場から海洋に向けて行われ、熱や赤外線による把捉に対抗する性能を評価する目的で行われた。機体の残骸は海軍の艦艇により回収された。M51.3の開発は、アリアングループが請け負った。既に後継バージョンのM51.4の開発計画が検討段階にあり、今世紀後半に予想される技術開発の状況に適合したミサイルの開発が射程にある。 KSM News and Research -
2023.11.20
駅舎に遠隔診療スペース、医療砂漠対策で
仏国鉄SNCFは17日、医療砂漠地帯に位置する駅舎に遠隔診療スペースを設置する計画を発表した。2028年までに300駅程度に設置する計画という。計画はSNCFの一部門で、駅舎等の管理・活用に当たるリテール&コネクションが推進する。遠隔医療で実績があるLoxamed社との提携事業として行う。具体的には、政府が医療砂漠対策の重点地域に指定する地域内の1735の駅舎から、300程度を選んで整備を進める。遠隔診療スペースには必ず看護師を常駐させて、本格的な医療を提供できるように配慮する。受け入れ側の自治体の承認を得て、遠隔聴診器等の配備を行い、看護師が操作を行うことで、精度の高い診察を可能にする。遠隔診療に携わる医師は、フランス国内で養成された医師のみに限定されるという。具体的な立地は当局等との協議の上で決定する。SNCFによると、全国の駅舎の利用者は1日につき1000万人に上り、国民の9割は駅から10km以内の場所に居住している。SNCFは、駅舎を国土整備に役立てることが会社の使命でもあると説明。その一方で、医療ユーザー団体のフランス・アソ・サンテは、遠隔診察に対応する医師はその分、実際の診察ができなくなるわけで、医師不足を解消する手段にはなりえない、とコメントしている。 KSM News and Research -
2023.11.17
ボルヌ首相、住宅建設振興策を公表
ボルヌ首相は16日、北仏ダンケルク市を訪問した機会に、住宅建設振興策を公表した。首相には、ダンケルク市の前市長であるベルグリエト住宅相も同行した。住宅難は全国的な問題となっているが、ダンケルク市の場合は、EVバッテリー分野などで大規模工場の整備計画が多く、労働者向けの住居の確保が急務となっている。首相は、全国で20ヵ所を住宅整備重点地域に指定し、地域内の建築許可等の手続きの簡素化と迅速化を通じて住宅建設を推進する考えを示した。3年間で3万戸の建設という目標も掲げた。政府はこれと並行して、政府系金融機関CDC(預金供託金庫)の協力を得て、「中間賃貸住宅(LLI)」と呼ばれる、民間部門より家賃が10-15%安い物件の整備に5億ユーロを融資する方針を明らかにした。機関投資家など民間部門の協力も得て10億ユーロを確保し、2026年には年間3万戸のペースで整備事業を進める(現在は1万5000戸)方針を明らかにした。市況が逆風で新築住宅が売れないという問題では、公的機関を通じて4万7000戸を買い上げて、開発業者に、新たな建設に着手できる余裕を与えるという取り組みを進める。なお、7-9月期の新築住宅販売は1万2039件にとどまり、前年同期比で48.6%の大幅減を記録している。1-9月期でも30.8%減と大きく後退した。 KSM News and Research -
2023.11.17
「危険なパスワード」ランキング、トップは「123456」
個人情報保護の専門企業NordPassがこのほど、危険なパスワードに関する調査結果を公表した。よく使われているパスワードの世界ランキングを公表した。この調査は、同社が独立系専門家らの協力を得て、世界35ヵ国からテラバイトスケールのデータベースを集めて実施した。データは、ダークウェブで流通しているものを含めて、公開されているデータを利用。個人情報の取得は有償の場合を含めて行っておらず、個人情報と対応しない形でパスワードのみを調査の対象にしたという。これによると、最も多かったパスワード(ランキングに入っているのは何らかの盗難の対象となったパスワードであることに注意が必要)は「123456」で、パスワードクラッキングを行う場合の所要時間は1秒未満であるという。2位以下10位までは、「admin」、「12345678」、「123456789」、「1234」、「12345」、「password」、「123」、「Aa123456」、「1234567890」という考えなしのものが並び、やはり1秒未満でクラッキングが可能だという。トップ200位の中でクラッキングが最も困難なのが173位の「theworldinyourhand」(数百年)で、これは、十分に長く、文章に基づいたパスワードの安全性が高いことを暗示している。フランスに限ると、トップ3は「123456」、「123456789」、「azerty」(仏語キーボード配置における「qwerty」の対応物)で、7位の「loulou」、9位の「doudou」、11位の「marseille」(マルセイユ)などフランスらしく、まだ意外なものもみられる。 KSM News and Research -
2023.11.17
ボージョレ・ヌーボー解禁、今年は当たり年か
ボージョレ・ヌーボーが16日に解禁日を迎えた。ボージョレ・ヌーボーは毎年11月の第3木曜日が解禁日となっている。ボージョレの評判はさほど芳しいとはいえず、ワイン消費が減退する中で、メディア露出も以前と比べて小さくなっている。Lalvin71Bと呼ばれる酵母を多用してわずか数ヵ月で速成醸造されるため、酵母の「バナナのような味」が強いという悪評もある。ただ、2023年は気象条件も良好で当たり年になり、「酸味のある赤い実」という本来のあるべき姿が実現しているという。昨年は夏場が特に暑く、アルコール度が上昇したが、今年は夏場に雨が多く、フルーティでまろやかな味が得られた。ボージョレ・ヌーボーは生産量の半分(2022年には650万本)が外国向けに出荷されている。外国ではフランスを代表する製品というブランド力を得ており、ぶどう酒ではシャンパンに次ぐ知名度を誇る。2022年実績では、日本向けが230万本と最も多く、米国が120万本で続く。日本の「ボージョレ・ヌーボー風呂」などが、外国の珍奇な風俗の例として紹介されることも多い。 KSM News and Research -
2023.11.16
欧州委、2023年経済成長率見通しを下方修正
欧州委員会は15日、2023年の経済成長率見通しを下方修正した。欧州連合(EU)とユーロ圏の経済成長率を共に0.6%と予想。従来予測をそれぞれ0.2ポイント引き下げた。物価がまだ高めの水準にあり、金利上昇の下で投資が振るわず、外需も冷え込んでいることを踏まえて下方修正を決めた。加盟国のうち10ヵ国でマイナス成長となる見込みで、後退幅は、ドイツ(マイナス0.3%)、オーストリア(マイナス0.5%)、ルクセンブルク(マイナス0.6%)、チェコ(マイナス0.4%)、バルト3国(最大のエストニアでマイナス2.6%)、スウェーデン(マイナス0.5%)、ハンガリー(マイナス0.7%)、アイルランド(マイナス0.9%)となる。2024年にはEUで1.3%、ユーロ圏で1.2%の成長を記録すると予想。雇用情勢が良好(失業率が6%前後)で、賃金上昇と物価低下が経済成長の支えになると予想した。インフレ率はユーロ圏で10月に2.9%まで減速。2023年通年では5.6%とまだ高いが、2024年には3.2%、2025年には2.2%まで順次低下すると予想した。加盟国の財務状況は健全化が続き、財政赤字の対GDP比は、EU全体で2023年に3.2%、2024年に2.8%と低下する。欧州委は2024年のリスク要因として、エネルギー価格が地政学的な緊張の影響で上昇する可能性があることを挙げた。 KSM News and Research -
2023.11.16
アルストム、人員削減を含む立て直し策を発表:株価低下は止まらず
仏アルストム(鉄道機器)は15日に4-9月期(2024年3月期の上半期に相当)の業績を発表した。債務削減を目的とする措置も予告した。アルストムは4-9月期に100万ユーロの純利益を記録。ごくわずかな黒字にとどまった。他方、売上高は84億ユーロと大きく、期末の受注残は900億ユーロに達しており、事業そのものは順調だが、フリーキャッシュフローはマイナス11億ユーロと大幅な赤字となった。2024年3月期全体でも5億-7億5000万ユーロのマイナスになる見込み。増産努力の中で部品等の調達と在庫構築の努力に資金力を吸い取られている一方で、2021年に買収したボンバルディア・トランスポートに由来する契約のいくつかに引き渡しの遅れが目立ち、資金繰りを圧迫している。アルストムは立て直しを期して一連の改善策を発表。まず、ガバナンス面では、会長とCEOの兼務を廃止し、プパールラファルジュ会長兼CEOがCEO専任となり、会長にはサフラン(航空機エンジンなど製造)出身のフィリップ・プチコラン氏を任命する。2024年7月の株主総会で決定する。それとは別に経費節減を推進。営業・総務部門の従業員の10%に相当する1500人(フルタイム雇用換算)を削減する。また、資産売却を進めて財務を改善すると共に、増資の実施も検討するとした。格付け会社のムーディーズが最近にアルストムの格付け見通しを「ネガティブ」に修正しており、投資適格(Baa3まで)を失うリスクが生じている。同社株価は1年間で45%の低下を記録しており、債務削減の展望を示すことが急務となっていた。15日の発表を経て、同社株価は終値で15.81%の大幅安を記録。増資の展望などが嫌気されたものとみられる。 KSM News and Research -
2023.11.16
仏失業率、7-9月期に7.4%、前の期比で0.2ポイント上昇
15日発表のINSEE統計によると、仏失業率(マヨット海外県除く)は7-9月期に7.4%となり、前の期から0.2ポイント上昇した。前年同期比でも0.2ポイント上昇し、2022年4-6月期の水準にまで戻った。失業率は、新型コロナウイルス危機の影響で、2020年7-9月期には8.7%まで跳ね上がったが、その後は順調に低下を続けていた。それがここへ来て増加に転じた。ただし、ピークを迎えていた2015年半ばの水準との差は3.1ポイントと大きい。景気減速の影響が雇用市場に浸透した可能性がある。年齢別では、15-24才の層で失業率は17.6%と前の期比で0.7ポイント増大。ただし前年同期に比べると0.1ポイント低い水準にある。失業率は、25-49才では6.7%(前の期比0.2ポイント、前年同期比0.3ポイント増)、50才以上では5.1%(前の期と前年同期並み)だった。長期失業者(1年以上)に限ると、失業率は1.8%で前の期並みだった。INSEEの雇用統計はILO基準に依拠しているが、失業者数は7-9月期の平均で228万5000人となり、前の期比で6万4000人増加した。失業者には含まれない「失業者の予備軍」に分類される人の数は、前の期比で3万9000人、前年同期比で16万4000人増加し、200万人程度に達した。 KSM News and Research -
2023.11.15
クラリアーヌ(高齢者施設)、増資計画を発表
高齢者施設運営大手の仏クラリアーヌ(旧コリアン)は14日、支払停止を回避する目的で15億ユーロの資金調達を行うと発表した。現状では2024年4月末に資金繰りが行き詰まる恐れがあると説明した。計画ではまず、主要出資者であるクレディアグリコル保険(CAA)との間で、19ヵ所の施設の不動産資産に係り1億4000万ユーロの支援を得る。英国の資産についても9000万ユーロの支援を得る。2024年に入ってから総額10億ユーロ程度の資産売却に着手し、進出先(現在は7ヵ国)の整理を進める。また、3億ユーロの増資を実施する。24.75%株式を保有するCAAは2億ユーロまでの増資引き受けを保証。増資引き受けが振るわなかった場合には、クラリアーヌはCAAの傘下に入ることになるが、CAAは、救済が目的の措置であり、恒久的に子会社とする考えはないと説明している。高齢者施設の運営業は、大手オルペアの入居者虐待事件をきっかけとして困難に直面している。クラリアーヌは2023年から2024年にかけて16億ユーロの債務の返済期限を迎えるが、金利上昇など逆風もあり、借り換えを行うのが難しくなっている。業界逆風の発端となったオルペアも、債務の組換えの一環で39億ユーロの増資を行うと発表したばかりだった。 KSM News and Research -
2023.11.15
欧州連合(EU)、口座間の即時送金サービスの無料化を決定
欧州連合(EU)はこのほど、口座間の即時送金サービスに関する新たな法令案について合意した。ユーロ建ての即時送金を無料で提供することを事実上義務付ける内容となった。即時送金サービスは2017年に導入されたが、その本格的な普及は遅れている。2022年初頭の時点で、送金の11%を占めているに過ぎない。欧州委は、サービスの利用拡大と不正行為の排除を目的に新たな法令案をまとめ、このほどEUレベルで合意に至った。法令案によると、2024年半ばに新規則が施行される予定で、施行から9ヵ月後には、銀行はすべての顧客(法人・個人とも)に、即時送金の受け取りを可能にすることが義務付けられる。さらに、施行から18ヵ月後には、通常の送金と、即時送金の手数料に格差を設けることが禁止される。通常の送金は無料で提供されることがほとんどであるため、この規則は、即時送金が無料化されることを意味する。さらに、口座番号と名義人の名前が一致していることを確認し、不一致の場合には警告を出すサービスの導入も義務付けられる。これも無料での提供が求められる。この点について、銀行業界の側では、その実現とGDPR(EU一般データ保護規則)のコンプライアンスとの両立は困難であり、追加投資が必要になると問題視している。加盟国には、これらの規則について、違反の場合に年商10%以上の金額を最高額とする罰金処分を適用できるよう、制度を整えることが義務付けられる。 KSM News and Research -
2023.11.15
グザビエ・ニエル氏、ベルギーの通信大手プロキシマスの6%株式を取得
仏大物実業家のグザビエ・ニエル氏は11月14日、ベルギーの通信最大手プロキシマス(Proximus)の6%株式を取得した。ベルギー市場への関心が具現化した。ニエル氏は、仏フリー(通信)の創業者で、その親会社であるイリアッドを保有している。イリアッドは、ポーランドとイタリアでも通信事業を展開している。その一方で、ニエル氏は、持株会社Carraunを通じて、アイルランドの通信事業者Eirを所有しているが、そのCarraunを通じて、プロキシマスの6%株式を取得した。プロキシマスは現在、ベルギー国内で光ファイバー網の展開を進めており、その投資額は90億ユーロに上るとみられている。ベルギーの当局機関は1ヵ月前に、事業者間で地域を分割して敷設を進める合意を結ぶことを認めており、投資額を節減しつつ展開を進める条件が整ったところで、ニエル氏は出資に乗り出したことになる。プロキシマスは2022年の年商が61億ユーロ。2023年には増収を見込んでいる。ベルギーでは、2位のテレネット、3位のオレンジ・ベルギー(仏通信大手オレンジの子会社)を抑えて最大手で、ルクセンブルクとオランダでも事業を展開。最近では企業買収を通じてインドにも進出した。市場はニエル氏の出資を歓迎し、プロキシマスの株価は14日に一時6%の上昇を記録した。 KSM News and Research -
2023.11.14
パリ首都圏RER向けの新車両がお披露目に、アルストムが製造
イルドフランス地域圏(パリ首都圏)の公共交通機関を統括するIDFMは11月13日、RER(郊外連絡急行)に配置を予定する新型車両「RER NG」を公開した。予定より2年以上遅れて投入される。新型車両は仏大手のアルストムが開発。選定は2017年初頭になされたが、諸般の事情から開発は遅れた。当初計画では2021年半ばに就役開始の予定だったが、大きく遅れてようやく初号車両が完成した。IDFMから運行を委託されている仏国鉄SNCFは、開発遅れに伴い6400万ユーロの賠償金を現物支給(2023-24年の開発費用をアルストム側が負担)で得ている。新型車両「RER NG」(NGはニュージェネレーションの意)は、2連結の最大編成で1860人乗りと輸送力が大きい。定時運行率が低く、混雑が目立つという問題を抱えるD線及びE線のテコ入れを図る目的で導入される。「ボア(うわばみ)」と呼ばれる、車両間の移動が容易な構造を採用した。RER E線は現在、西部への延伸が工事中で、これが完成すると全長は56kmから111kmへ伸びる。新車両はまず125本が順次、E線に投入される予定で、これと並行して、D線(全長160km)にも130本が投入される。2024年上半期中に就役が始まる予定。合計では255本が導入されることになるが、開発の遅れもあり、これまでになされた確定受注は131本分となっている。製造はアルストムの北仏バランシエンヌ市近郊にある2工場でなされる。255本全体では、契約総額は37億5000万ユーロの規模になる。280本程度まで調達を増やす計画もあるといい、こちらの最終決定は2024年中になる見通し。 KSM News and Research -
2023.11.14
暴風雨の被害額、13億ユーロに
フランスを襲った暴風雨「Ciaran」と「Domingos」について、保険業界団体フランス・アシュルールは13日、被害総額を13億ユーロとする推計値を公表した。1-5日に発生した保険事故を集計した。暴風雨の被害では、3人が死亡し、50人余りが負傷した。それ以上に物的被害が大きく、本土で発生した暴風雨被害の中では、歴代第5位の規模となる。ちなみに、被害額が最大だったのは、1999年末にフランスの北半分に被害を及ぼしたLotharとMartinで、被害総額は138億ユーロに上った。被害の内訳をみると、住居が保険事故の91%、被害額の84%(11億ユーロ)を占めており最も大きい。自動車は保険事故と被害額の共に4%となり、さほど大きくなかった。職業上の資産・農業資産・自治体資産は保険事故の5%を占めるが、被害額では12%(1億5000万ユーロ)を占め、かなり大きかった。この集計には、6日以降に北仏パドカレー県を中心に発生した洪水の被害は含まれていない。被害は14日時点でも継続している。2万5000-4万戸が被害を受け、職業上の資産も7000-9000件の被害が出ている模様。被害額は、民間企業による推計で2億5500万-4億ユーロに上るという。 KSM News and Research -
2023.11.14
アトランティック造船所、MSCから大型クルーズ船2籍を追加受注
仏国営アトランティック造船所(サンナゼール)はこのほど、スイス籍の海運大手MSCから、LNG燃料で稼働できる大型クルーズ船2隻を受注した。全長333メートルの「ワールドクラス」クルーズ船2隻を追加で受注した。MSCはワールドクラス2隻を既に発注しており、初号船の「MSCワールド・ヨーロッパ」は2022年10月に引き渡されて就役中。2隻目の「MSCワールド・アメリカ」は2025年春に引き渡される予定となっている。追加発注の2隻は、2026年と2027年に引き渡される予定。クルーズ船は環境破壊で批判の的となっているが、MSCは、ワールドクラスが2隻目までで、国際海事機関(IMO)のエネルギー効率関連条約(EEDI)の要件を上回るパフォーマンスを達成している点を強調。新規発注分ではさらに進めて、廃熱回収・有効利用の推進と、バイオ・メタンやグリーン・メタノール等代替燃料を使用できるエンジンの採用、メタンスリップの軽減などを通じて環境配慮を徹底する。新造船は、基準年の2008年比で温室効果ガス排出量を2分の1に削減する。MSCはその一方で陸上給電への切り替えを進めて、2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロ達成を目指す。アトランティック造船所は従業員数3500人、2022年の年商は19億ユーロ。今回の契約で2026年以降まで手持ち工事量を確保した。ワールドクラスのあと1隻のオプションも取り付けている。 KSM News and Research -
2023.11.13
失業保険制度を巡り労使が基本合意
労使共同運営が建前のUNEDIC(失業保険管理機構)の次期協約案について、労使が基本合意に至った。8億1500万ユーロの支出増と15億ユーロの保険料減額で合意した。失業者への支援では、初めて就職した人について、失業保険の受給資格が得られるまでの期間を6ヵ月から5ヵ月に短縮することを取り決めた。短期の雇用契約を積み重ねた就労者の失業時の給付も増強される。失業保険の支給額を6ヵ月以降から逓減する制度の適用については、57才未満までという現行上限が55才未満までに引き下げられる。支援措置等の効果で、2024-27年の期間に8億1500万ユーロの支出増が累積で発生する見込み。その一方で、2017年に収支改善のために導入された使用者負担の保険料割り増し(0.05ポイント)は廃止され(料率合計は現在の4.05%から4%に低下)、これによる失業保険会計の減収効果は同じ期間の累積で15億ユーロに上る見込み。他方、節減策としては、失業手当の支給額算定を月間30日に切り替える方針が取り決められた(31日の月の分の差額は、失業手当支給終了時に一括支給する)。これによる節減効果は9億5000万ユーロ相当と予想されている。このほか、失業者が起業した場合の手当の取り過ぎを排除することで8億7000万ユーロの節減を達成する。 KSM News and Research -
2023.11.13
パリ・カーン間の高速道路、料金所全廃に向けて工事開始
パリとカーン(ノルマンディー地方)を結ぶ高速道路A14及びA13で料金所が全廃される。工事が開始された。この区間は全210km。Sanef(スペインのアベルティス傘下)が運営している。1億2000万ユーロを投資して、料金所を全廃して完全撤去し、通行中の車両の種類やナンバープレートを自動検出して記録するアーチを別途、随所に設置する。9月末にルービエ市(ウール県)近くでアーチ設置の最初の工事が行われた。現在、この区間には、本線に5ヵ所、インターチェンジに9ヵ所の料金所があるが、すべてが撤去される。うち2ヵ所の撤去工事が来年6月に終了し、2024年12月には残りの撤去が完了する見通し。料金所の土地は本線のみを残して緑地化される予定で(全28ヘクタール)、その工事は2027年に終了する。投資費用は、3年間に渡り料金を0.22%割り増しにすることで、ユーザーから回収される。全廃により、最も混雑する時間帯で、パリ・カーン間の所要時間が30分程度短縮されるといい、料金所前後の減速・加速により無駄に発生する二酸化炭素排出量の削減も図れる。A14及びA13の年間通行車両数は800万台に上る。料金収受は、ETC加入者なら従来通りだが、非加入者の場合は、Sanefのインターネットサイト等を通じて車体番号と支払い手段等の登録を行う(自動決済)か、通行後72時間以内に自らサイト等を通じて料金を支払わなければならない。未納の場合には車体番号の登録者に追徴(罰金額は最大で375ユーロ)がなされる。 KSM News and Research -
2023.11.13
老舗百貨店BHV、SGM社が買収
パリの老舗百貨店BHV(バザール・ド・ロテルドビル)の所有権移転が決まった。百貨店大手ギャラリー・ラファイエットが、商業不動産開発のSGM(ソシエテ・デ・グランマガザン)に売却した。売却額は公表されていない。BHVのマレ地区にある本店と、ベルサイユ近郊のショッピングセンター「パルリ2」内の店舗が売却の対象となった。BHVは1856年創業と、百貨店の中では最古の部類に入る。DIY用品の豊富な品揃えには定評があったが、近年は業績が振るわず、コロナ危機に加えて、店舗が隣接するリボリ通りの交通規制の変更も、客足が遠のく要因になった買収を決めたSGMは2018年に若手実業家のメルラン氏が設立。2021年にも、ギャラリー・ラファイエットから、地方の7店舗(アンジェ、ディジョン、グルノーブル、ルマン、リモージュ、オルレアン、ランス)を買収。失速する中心街の商業不動産の活性化を専門としており、地方都市のショッピングセンターも10ヵ所程度傘下に収めている。今回買収のBHVは従業員数が1300人程度。労組側は雇用維持を重視しており、新たな経営者の出方を窺っている。 KSM News and Research -
2023.11.10
コロナ危機時の保護マスク、仏メーカーが存続の危機に
2020年から21年にかけて新型コロナ危機が猛威を振るったおり、フランス国内で保護マスクを生産する設備・技術がないことが判明して大きな問題となり、Lemoine社など関連企業が公的支援を得て急遽生産拠点を立ち上げ、特にフィルター製造など必要な技術を確保して生産態勢を整えた。ところが、危機が沈静化すると同時に需要が減退、かつ、中国を中心とする外国メーカーの競争力が圧倒的に強く、コロナ危機時に創業した国内マスクメーカーの半分はすでに閉鎖し、残る会社も事実上生産を停止しているところが多い(直接・間接の1万雇用のうち、残存しているのは15-20%)。業界団体F2Mでは、これらフランスのマスク製造企業が消滅するのは時間の問題で、せっかく獲得したフィルター関連などのノウハウも失われてしまうと警告している。中国産マスクが1枚当たり2.5ユーロセントであるのに対して、仏製マスクは4-5セントと値段が高く、民間だけでなく公的発注者も入札で安い中国産マスクを発注する傾向が強い(例えば仏軍が中国産マスクを発注)。また、一部の公立病院では、製品の環境インパクト評価についても中国産マスクに高評価を付けている場合があり、業界側では、行政裁判の可能性を示唆して病院側に圧力をかけることを余儀なくされる場合もあるという。業界ではさらに、コロナ期の特別措置として導入されたVAT(付加価値税)の割引税率5.5%が撤廃されることを懸念しているが、いずれにしても、価格だけに焦点を当てるのならメイドインフランスの再興はありえないと指摘している。 KSM News and Research -
2023.11.10
管理職求人数、7-9月期に13%減(前年同期比)
APEC(管理職雇用協会)が9日に発表した集計によると、管理職求人数は7-9月期に12万3200人となり、前年同期比で13%の減少を記録した。ただし、新型コロナウイルス危機前の2019年同期の11万8000人をまだ上回っている。管理職求人は、新型コロナウイルス危機が生じた2020年7-9月期には8万2300人と大きく後退していたが、2021年同期には危機前の水準を上回る12万7700人に回復。2022年同期には14万1700人と記録を更新していた。それが今年にはかなり下火になった。特に、10月に限ると、前年同月比で16%減と、後退が加速する傾向がうかがわれる。また、向こう3ヵ月間に管理職の採用を計画していると回答した企業の割合は10%となり、6月末時点の12%から後退した。管理職採用数は2022年通年では30万8000人(無期契約又は1年超の有期契約)に上っていたが、今年は記録更新は困難な情勢となった。国内の管理職数は390万-440万人と推定され、全雇用に占める割合は2020年に19%と、15年間で5ポイント拡大している。管理職の失業率は今年に3.5%まで低下する見通し(2022年には4.1%)で、管理職の雇用市場は全体としては良好な水準を保っている。求人難の傾向もあり、管理職の転職のリスクを懸念すると答えた企業は、大企業では57%に上っており、有能な人材の確保が課題として浮上している。 KSM News and Research -
2023.11.10
行政最高裁、環境団体スレーブマンドラテールの解散命令を無効に
行政最高裁(コンセイユデタ)は9日、実力行使で知られる環境団体「スレーブマンドラテール(大地の蜂起)」の解散命令を無効とする判決を下した。行き過ぎた決定と判断した。スレーブマンドラテールは、サントソリーヌ村の農業用水地の建設計画に反対して治安隊と衝突するなど、過激な環境保護活動を展開してきた。政府は、同団体が暴力に訴えることを正当化し、それを教唆する活動を展開しているとの理由を挙げて、同団体の解散命令を6月21日付で公示したが、団体側はこれを不服として、取り消しを求める行政訴訟を起こしていた。行政最高裁は、緊急審理で決定を差し止めた上で、今回の本件審理でも、政府決定を不当として取り消す判決を下した。行政最高裁は判決理由の中で、2021年に発効の現行法令により、「人又は器物に対する暴力的な行動」を引き起こし、公の秩序に重大な混乱をもたらす団体である場合に限り、解散命令を下せると指摘。具体的には、かかる暴力的な行動を行うよう、言葉であるか行動によってであるかを問わず、明示的又は暗黙の形で扇動する行為、そうした暴力的行動を公の場で正当化する行為、又は、SNS上などでそのような扇動を抑制しようとしないこと、が解散命令の要件になるとの見解を表明した。その上で、同団体の場合、暴力的な衝突の動画を公表しただけでは、そうした暴力の正当化などに当たるとは言えないと指摘。また、器物への暴力的行為の扇動があったことは認めたが、結社・集会の自由に照らして、解散命令は比例の原則を満たしておらず、不当であると認定した。行政最高裁はその一方で、最近に解散命令の対象となったイスラム主義、極左、極右の3団体については、憎悪を扇動するメッセージの公表等の理由により、解散命令は適法であるとする判断をあわせて示した。 KSM News and Research -
2023.11.09
Cityscootが支払停止、出資者探しに着手へ
電動スクーターのシェアリングサービスを展開する仏Cityscootが8日、支払停止を宣言し、パリ商事裁判所に破産手続きを請求した。新たな出資者を探して事業の継続を目指す。Cityscootはパリ市及び近隣に2500台の電動スクーターを配置している。去る7月にパリ市が行った入札に勝利し、Yego及びCooltraと並んで、向こう5年間の事業許可を確保していた。Cityscootはこの事業に絡んで、2024年に車両を更新するプランを実行する必要があるが、十分な資金が確保されておらず、追加資金を拠出する出資者を探すため、裁判所の保護の下に入って事業を継続することを決めた。Cityscootは2014年に創業。現在は仏国内で168人を雇用。外国ではイタリアのミラノ(2019年から)とトリノ(2022年から)に進出している。創業以来で8000万ユーロ程度を調達しており、RATP(パリ交通公団)、アリアンツ(保険)、仏政府系金融機関CDC(預金供託金庫)が資金調達に応じていた。コロナ危機が逆風となりビジネスプランの実行に遅れが生じ、エネルギー価格高騰にも祟られた。 KSM News and Research -
2023.11.09
貯蓄口座リブレA等の資金、防衛産業にも融資へ
7日に下院で採択された2024年予算法案の一部に、利息非課税の貯蓄口座(リブレA及びLDDS)の資金を防衛産業に充当する旨を定めた条項が盛り込まれた。軍隊省はこれを歓迎しているが、経済省には一部に慎重論がある。リブレAとLDDSはいずれも利息非課税の貯蓄口座で、その資金の60%は、政府系金融機関のCDC(預金供託金庫)を通じて運用されており、残る40%が取扱銀行の手元に残され、各自運用がなされている。リブレAの場合は、CDCを通じて、公団住宅の整備事業を中心にした融資に回されている。世界情勢の不透明感が強まる中で、防衛産業の振興を図り、国防を固めるべきだという議論があり、リブレA資金等の活用を求める議員らが修正案を提出。政府もこれを支持し、修正案を追加した形で、いわゆる「49.3」(投票を経ずに法案の採択を強行することを可能にする憲法上の措置)を発動して採択を決めた。採択された条項は、中小企業を中心とする防衛産業の企業への資金供給にリブレA等の資金を活用できる旨を定めている。これに回される資金は、CDCの運用分ではなく、取扱銀行の運用分から捻出される。銀行は融資先の選定において自由度が認められているため、新たな条項は、単に、可能性を明文化しただけに過ぎないという見方もある。実際に防衛産業への融資拡大につながるかどうかは、銀行側の出方次第になる。 KSM News and Research -
2023.11.09
仏貿易赤字、7-9月期に改善
8日発表の税関統計によると、7-9月期の仏貿易収支は253億ユーロの赤字となった。赤字額は前の期と比べて3億ユーロ縮小した。同期の輸出額は1520億ユーロ、輸入額は1772億ユーロだった。いずれも前の期比で1.2%減少したが、金額が大きい輸入の方が後退幅も大きくなった。輸入の減少は、製造業製品、特に繊維・衣類、皮革・靴、化学製品で顕著で、機械設備、電気・電子機器でも後退した。その一方で、原油価格の上昇を背景に、エネルギー輸入は拡大したが、全体として輸入は縮小した。他方、輸出の減少は、前の期に特に好調だった輸送機械の輸出がその反動で後退したことに主に由来している。わずかな改善が見られたとはいえ、貿易赤字はまだ極めて高い水準にとどまっている。新型コロナウイルス危機前の2019年には、四半期平均で赤字額は144億ユーロとなっており、現時点でそれをかなり上回る水準が続いている。 KSM News and Research -
2023.11.08
パリ市のイダルゴ市長、「南の島でバカンス」で批判受ける
パリ市のイダルゴ市長(社会党)の仏海外領土訪問が物議を醸している。公私混同だと批判する声が一部から上がっている。イダルゴ市長は、数人の助役らと共に、10月15日にニューカレドニアに向けて出発した。1週間に渡り、ニューカレドニア及び仏領ポリネシアを訪問する公式日程をこなした後、2週間にわたる休暇を仏領ポリネシアの島で過ごした。11月5日に帰国し、6日に執務を再開した。何かと騒がしい時期に長期の休暇を遠隔地で過ごしたことが、論争を招く出発点になった。10月25日には、暴露報道で知られる週刊紙カナールアンシェネが、パリ五輪に関する20日の政府会合にイダルゴ市長が無断欠席し、南の島でバカンスを過ごしたとする趣旨の報道をして注目され、保守野党の共和党などが市長を攻撃する材料にするようになった。公式訪問では、目的の一つであったはずの、パリ五輪の一部競技が行われるポリネシアの会場の見学が見合わされたこともあり、無意味な訪問と私的な休養に公金が投入されたとする批判の声も上がっている。パリ市は批判に反論するため、6日に日程や費用等に関する詳細を発表。公式訪問の目的は、海外領土をテーマとする文化イベントの準備、気候変動対策、パリ五輪の準備にあったとし、会場訪問の見合わせについては、環境派による反対運動があったことに伴い現地の自治体側からの要請に応じたもので、代理人に訪問を任せたと説明した。代表団の費用総額は、交通費が4万955ユーロ、宿泊・飲食費が1万8545ユーロとし、イダルゴ市長は復路については自前で負担したと説明している。2週間の休暇については、ポリネシアに赴任した教員である娘とその家族を訪問するのが目的だったと説明した。 KSM News and Research -
2023.11.08
量子コンピューティングのQuandela、5000万ユーロを調達
量子コンピューティングを開発する仏Quandelaは7日、5000万ユーロの調達を完了したと発表した。仏政府が投資プラン「フランス2030」の枠内で拠出したほか、投資ファンドのSerenaとクレディミュチュエル・イノベーション、欧州連合(EU)から資金を得た。従来株主(公的投資銀行のBPIフランス、Omnes Capital、Quantonation)も拠出した。出資・融資等の内訳については明らかにされていない。Quandelaは、CNRS(仏国立科学研究センター)発のベンチャー企業で2017年に設立。本社をパリ南郊外サクレー(エソンヌ県)の研究都市内に置いている。フォトニクス技術の開発を原点に、光量子コンピュータへの応用へと進んだ。2022年には量子コンピューティングの計算力をクラウド方式で提供するベータテストを開始。2024年初頭には有料サービスも開始する計画。去る6月には、フランス政府から950万ユーロの援助を受けて、パリ南郊マシーに光量子コンピュータの製造工場を開所。先頃、初号機をOVHクラウド(データセンター)に納入した。同社の従業員数は80人程度で、1年後にはその2倍に増やす計画。2023年の年商は100万ユーロを超える見通し。 KSM News and Research -
2023.11.08
衣料・靴の修繕を対象とする奨励金制度が導入に
衣料・靴の修繕を対象にした奨励金制度が7日付で正式に発足した。1件につき6-25ユーロの奨励金が支給される。循環経済の推進を促す目的で、家電製品の修理を対象とする奨励金制度が一足先に導入されている。この制度の適用対象が衣料・靴にも拡大された。奨励金は、メーカーの拠出金により運営される基金から直接に修繕業者に支給される。支給されるのは認可を受けた修繕業者に限られる。顧客には、奨励金を差し引いた額が請求される。金額は修繕の種類により異なり、例えば穴あきの直しには1件につき7ユーロの奨励金が支給される。対象となる品目等には制限があり、例えば下着やリンネル類は対象外で、また、純粋な修繕ではない裾上げのようなサービスには奨励金は支給されない。政府から制度の運営を委託されている団体Refashionは、2028年までに修繕の案件数を35%増やすことを目標に掲げている。ただ、一足先に去る12月に導入された家電修理の奨励金制度では、年間50万件という政府が定めた目標に対して、4月までで2万件と、かなり少ない数にとどまっている。修理業者による認可取得の動きが鈍い(全国に4000業者)ことが一因で、政府は、2024年中に7500、2026年末には2万2000に増やすため、手続きの改善などに取り組むと約束している。衣類の修繕でも十分な業者が確保できるかがポイントになる。 KSM News and Research -
2023.11.07
アコーアリーナ、ロンドンのO2を抜いて世界2位に
米専門誌「Venues Now」と「Pollstar」が2002年から発表している世界各地のアリーナの有料入場者数による最新ランキング(2022年11月27日-2023年8月16日)において、収容人数1万5000-3万人のカテゴリーで、パリ12区にあるアコーアリーナ(収容人数2万人)が初めて2位となった。これまでの最高位は5位だった。トップは今年も圧倒的強さを誇るニューヨークのマディソンスクエアガーデン(MSG)。アコーアリーナは今回、ロンドンのO2と入れ替わりで2位となった。アコーアリーナは対象期間に71イベントを受け入れた。その有料入場者数は97万4000人、同収入は7000万ドルを超えた。首位のMSGは112万人・約 1億3900万ドルだった。3位のO2は、有料入場者数が96万8000万人だが、収入は9800万ドル超で、アコーアリーナよりも大きかった。アコーアリーナを運営するパリ・エンターテイメント・カンパニーによると、パリでは、若い世代を中心として、コンサートなど舞台芸術の人気回復が他の欧州の都市よりも著しいという。また、フランスのラップミュージシャンの動員力が高まったことで、12-15ヵ月前から日程が決まっている国際的大スターのイベントの間を縫って、若いラップミュージシャンのコンサートを2-3ヵ月前というタイミングでセットできるようになってきており、これによってアリーナの稼働率が高まった。また、近年は設備の拡充にも力を入れており、新しい4面ディスプレイが設置されたほか、セーヌ川を見下ろす100平米のVIPスペースも新たに整備された。アコーアリーナの年商は2023年8月期に5600万ユーロで、5年前と比べて35%増加した。2024年のパリ五輪では競技会場にもなっているが、五輪開催直前の6月25日まではコンサート等の開催が可能となる見通しで、来年も好業績を見込む。 KSM News and Research -
2023.11.07
INA、1970年代の番組をリニア配信するチャンネル「INA70」を開設
INA(国立オーディオビジュアル研究所)は8日、1970年代の記録映像によるストリーミングチャンネル「INA70」の配信を開始する。米パラマウントが運営する「Pluto TV」のプラットフォーム上で無料配信する。INAは、映像・音声のアーカイブの管理・有効利用を担当する公的機関。保管するアーカイブのうち、1970年代の3チャンネル(TF1、アンテンヌ2、FR3)の番組を用いて、夜の時間帯に実際になされていた番組編成を再構成し、リニア配信する。歌番組からクイズ、文化・報道番組、連続ドラマなど多岐にわたる番組で当時の様子を再現する。150時間の番組を配信、うち50時間程度を毎月入れ替える。ファストチャンネルと呼ばれる広告付きの無料リニア配信のインターネットチャンネルはこのところ成長が著しい。フランスでも500局余りを数えており、パラマウントの「Pluto TV」でも130局余りを取り扱っている。INAは、保有するアーカイブの有効利用の一環で、ユーチューブ上にチャンネルを開いており、自前のSVODプラットフォーム「Madelen」も立ち上げている。Pluto TVとの提携で視聴者の裾野をさらに広げることを目指す。 KSM News and Research -
2023.11.07
移民法案:EU域外の外国人に公務員登用を認めるよう求める声も
移民法案の上院本会議での審議が6日に始まったが、それにあわせて、欧州連合(EU)域外出身の外国人を公務員として採用することを認めるよう求める声が上がっている。公務員らが作る団体が陳情書を国会議員らに提示した。EU域外の出身者は、RATP(パリ交通公団)や国鉄SNCF、社会保障会計公庫では登用の道があるが、公務員部門においては採用が禁止されている。政府はこれについて、契約職員としての採用が可能であることを挙げて、公務員としての登用に応じる可能性を否定している。陳情書を作成した団体側は、契約職員での採用はほとんどの場合、有期雇用(CDD)としての採用であり、待遇面で正規の公務員と比べて格差が大きく、契約満了後に滞在許可証を更新できる保障もないと指摘。国内の雇用の15%に相当する部門から外国人が締め出されているのは不公平だと主張している。公務員部門も求人難に直面する中で、しかるべき能力を有する人々を除外するのは国のためにならないとも主張した。上院における移民法案審議においては、左派野党の社会党が、EU域外出身者の公務員部門へのアクセス条件に関する報告書の作成を求める修正案を提出。これとは別に、環境派の下院議員らは、EU域外出身者の公務員採用を求める議員立法法案を提出している。 KSM News and Research -
2023.11.06
卵の殻を有効利用、ベンチャー企業Circul’Eggが実証プラント開設
卵の殻の有効利用に取り組むベンチャー企業Circul’Eggが近く、ブルターニュ地方レンヌ市(イルエビレーヌ県)近郊のジャンゼ市内に実証プラントを開設する。実用化段階を準備する。実証プラントの設置に当たり、同社は500万ユーロの資金を確保した。200万ユーロを投資ファンドやビジネスエンジェルから集め、100万ユーロを銀行から借り入れた。残りは、ADEME(省エネ庁)やBPIフランス(公的投資銀行)からの支援金や、地元ブルターニュ地域圏や自治体からの補助金で賄った。1600平方メートルの施設に生産ライン2本と研究開発センターを整備。1日に15-20トンの処理能力を確保する。原料の卵の殻は近隣の加工工場から調達。加熱処理を経て、炭酸カルシウムとコラーゲン粉末の2種の製品を製造する。前者は塗料メーカー等に、後者は化粧品メーカーなどに供給する計画。サプリメントの開発にも取り組む。同社は、農業工学分野の仏名門校アグロパリテック出身のヤシン・カベシュ氏が起業。現在は従業員数が20人程度。既に合計で200万-300万ユーロ規模の契約の約束を取り付けているといい、2025年までに数千万ユーロの年商達成を目指す。 KSM News and Research -
2023.11.06
大統領経験者の特殊年金、廃止巡る議論が再燃
下院小委員会で審議中の2024年予算法案の修正案として、大統領経験者に対する特殊年金の廃止を盛り込んだ修正案が10月30日に採択された。左派野党の社会党が提出した。政府は、予算法案に、採決を経ずに採択させる強制措置(いわゆる「49.3」)を発動する見込みで、この修正案はその時に削除されるものとみられる。大統領への年金支給の廃止は、マクロン大統領が2019年に予告した公約だった。政府は当時、年金改革を進めていたが、大統領はそれにあわせて、自らは退任後に年金を受け取らないと約束していた。ただ、その後、現在まで具体的な法令改正が行われておらず、野党側は時折、今回のような形でこの問題を追及している。大統領経験者は、行政最高裁(コンセイユデタ)の評議員の報酬(2019年時点では月額・税引き前で6220ユーロ)と同じ額の年金を死亡時まで受け取れる規定になっている。死亡後にも配偶者に半額の支給が継続される。政府はこの問題で、大統領の約束を守るとし、制度を改正するには立法措置は必要なく、政令を定めることで改正できると説明している。具体的には、大統領について、閣僚等と同じく通常の年金制度の適用に切り替えることが検討されているといい、マクロン大統領とそれ以降の大統領に適用される。 KSM News and Research -
2023.11.06
民間部門雇用数、減少に転じる:7-9月に1万7700人減
3日発表のINSEE統計によると、民間部門雇用数は9月末時点で2112万6600人となり、3ヵ月前と比べて1万7700人の減少を記録した。0.1%の微減に過ぎないが、3月末から6月末までの3ヵ月間では1万2200人の増加を記録しており、7-9月期には減少に転じた。特に、派遣雇用の減少幅が拡大したのが目立つ。派遣雇用は、3月末から6月末にかけては4300人の減少を記録していたが、6月末から9月末にかけては1万5300人の減少と、減少幅が大きく広がった。9月末の数字を1年前と比較すると、雇用数が純減を記録しているのは、建設部門(1万300人減)と派遣雇用(3万8200人減)のみであり(全体では雇用数は1年間で13万8800人の純増を記録)、派遣雇用の後退が特に目立つ。後退は3四半期連続であり、今後の雇用情勢全般の悪化の先触れである可能性もある。派遣雇用以外では、工業部門では3ヵ月間で6400人の純増(0.2%増)を記録し、前の期の5300人増の後で増加傾向が続いた。農業部門では600人減(0.2%減)で、前の期(0.8%減)よりも後退幅が小さくなった。サービス業(商業除く)では4200人減(0.2%減)を記録。減少幅が大きくなった。 KSM News and Research -
2023.11.03
暴風雨によりフランス国内で2人が死亡、停電は一時120万世帯
暴風雨「Ciaran(キアラン)」が11月2日にフランス北西部付近を通過した。2人が死亡、50人弱が負傷した。エーヌ県で倒木の下敷きとなりトラック運転手1名が死亡。ルアーブル市(セーヌマリティム県)では、ベランダに出た70才の男性が風に吹き飛ばされて転落死した。負傷者には9人の消防隊員(いずれも軽傷)が含まれ、ルーベー市(ノール県)とボヌイユ市(バルドワーズ県)で2人の重傷者を出した。低気圧は大西洋より到来してフランスの北西部付近を通過。最西端に位置するフィニステール県(ブルターニュ地方)では時速207kmという過去最大級の風速が観測された。それでも、1999年12月にフランスの北半分を襲った2つの暴風雨では92人が死亡しており、今回の人的被害は小さかった。過去教訓が反映され、対応が適切だったことが被害を少なくすることに貢献したと考えられる。物的被害は甚大で、数千本の倒木が発生、家屋や自動車などに被害が出た。フィニステール県では、2日午後まで県内の道路を通行止めとして、倒木等の撤去に追われた。国鉄SNCFは、2日に前後して5地域圏(ブルターニュ、ノルマンディ、サントル・バルドロワール、ペイドラロワール、オードフランス)でローカル線(TER)の列車を全面運休としたが、数十地点でインフラに被害が出た。3日時点で、オードフランス地域圏での運行再開が遅れている。特に被害が大きかったのは電力網で、被害がピークを迎えた2日朝時点では120万世帯が停電となった。エネディス(配電網管理)によると、ブルターニュとノルマンディでは、1999年の暴風雨の際と比べて、停電の被害を受けた人が最大で3倍多かったという。エネディスでは、災害時の対策プランに従い、3000人を動員して迅速な復旧を心掛けたと強調している。保険加入者で被害を受けた人は推定で23万から27万に上る。保険会社側は保険事故申告の期限を12月1日まで延長して被災者をサポートすることを決めている。 KSM News and Research -
2023.11.03
国会報告書、外国による干渉を問題視
国会の情報代表部(DPR)は2日、年次報告書を公表した。外国の情報機関による干渉に警鐘を鳴らし、対策強化を提言する内容となった。DPRは、上下院の4人ずつの委員により構成される。調査権があり、国防上の機密文書を請求の上で閲覧する権限も与えられている。報告書は、ロシア(民主国家を揺さぶる情報操作)、中国(経済・企業を狙った情報活動)、トルコ(文化的影響力による浸透)などの諸国の様々な干渉を問題視。米国など友好国による通信監視といった問題も指摘し、政府に対して、一連の対策を提言した。具体的には、米国、カナダ、オーストラリアなどの例に倣って、外国の依頼でフランスの政財界に影響力を行使している活動家に登録を義務付ける制度の導入を提案。この制度の導入により、登録せずに活動する者の国外退去処分を実行することが容易になると説明した。また、外国の利益のために活動する個人や企業の資産凍結を可能にすることや、保護すべきフランス企業への外資による出資制限に基づいた監督の強化、また、アルゴリズムに基づいてインターネットの監視を行い外国のエージェントと思しき接続の特定を行うことも提案した。 KSM News and Research -
2023.11.03
アトスの株式9.9%をOnepointが取得、クレティンスキー氏による買収に待った
再編途上にある仏アトス(情報処理)の9.9%株式を仏Onepoint(DXコンサルティング)が確保した。アトスの筆頭株主となった。1日に発表された。アトスは、経営立て直しをにらんで、サイバーセキュリティ等の事業を束ねる「Eviden」と、情報処理サービス等の従来の本業を束ねるTech Fondationsへの分社化を計画している。後者についてはチェコの実業家クレティンスキー氏に売却、前者については上場し、クレティンスキー氏も増資引き受けで出資するという方向で交渉が進められていた。Onepointは、Evidenへの出資を打診したが退けられたという経緯があり、今回、再挑戦を図る目的でアトス株を買い進めた。アトスでは、先に会長が交代し、ミュスティエ会長が就任したばかりであり、Onepointの今回の動きに好意的に反応しているという。クレティンスキー氏の影響力が強まることについては、Evidenの戦略的重要性を鑑みて、政界にも計画に反対する動きがある。Onepointは、Tech Fondationsのクレティンスキー氏への売却には反対せず、Evidenの増資引き受けで自らが主導権を握ることを目指しているという。Onepointは従業員数3300人、年商5億ユーロ。ダビッド・ラヤニCEOはマクロン大統領にも近いといわれ、タキエディン事件(サルコジ元大統領のリビア資金疑惑で、元大統領への司法当局の追及をかわす目的で、証人のタキエディン氏に証言を翻させた事件)に連座した疑いも取り沙汰されている。 KSM News and Research -
2023.11.02
暴風雨「Ciaran」、フランス北西部に接近
暴風雨「Ciaran」が2日にフランス北西部に接近する。強風と波浪で大きな被害が出る恐れがある。仏国鉄SNCFは、暴風雨の被害が懸念される地域で、1日22時30分より3日5時までローカル線を全面運休とすることを決定。ブルターニュ、サントル・バルドロワール、ノルマンディ、ペイドラロワール、オードフランスの各地域圏で全面運休となる。高速鉄道(TGV)の運行は継続されるが、在来線の乗り入れ区間は運休となる。暴風雨は大西洋から到来。ブルターニュ地方のフィニステール県の海岸では8-10メートルの大波が生じる見通しで、その以北及び以南でも6メートルの大波が予想される。海岸地域では所により時速170km、内陸地域でも所により時速130kmを超える強風に見舞われる見通しで、大きな被害が出る恐れがある。フランスでは、1999年12月にMartinとLotharと命名された暴風雨で大きな被害があった。この時も北西地方が被害の中心となり、92人が死亡、森林の5-10%に倒木などの被害が発生。350万戸が停電となった。メテオ・フランス(気象協会)は、今回のCiaranについて、この数年間で最大級の暴風雨になると予想。当局は、過去の災害の教訓を踏まえて警戒態勢を敷いている。 KSM News and Research -
2023.11.02
金利上昇で貯蓄商品に動きか
金利上昇に伴い、貯蓄商品の動向に変化が生じている。代表的な貯蓄手段である生命保険では改善が遅れている。金利上昇に伴い、競合する貯蓄口座の利回りが上昇する中で、生保商品は利回りで劣っていることが影響している。9月の保険料純収入(解約分・支払い保険金控除後)は3億ユーロのマイナスを記録。3ヵ月連続での純流出を記録した。業界団体フランス・アシュルールでは、1-9月期でみると純収入が13億ユーロのプラスになっていることを強調。保険料収入は1-9月期では前年同期比で4%増加しており、定額・変額商品のいずれでも同程度の増加を記録しているとも説明している。他方、低所得者向けの利息非課税の貯蓄口座LEPは普及が目立っており、8月末時点で保有者数が1010万人と、はじめて1000万人を超えた。LEPは利回りが6%と極めて高く、預金限度額も10月1日より7700ユーロから1万ユーロへ引き上げられた。年間所得額(課税請求書に記されている標準所得額)が2万1393ユーロ(2023年に適用の上限。2年前の所得額に基づいて判断する)を超えない場合(独身者の場合。家族状況に応じて上限額は変わるが、1世帯について世帯主とその配偶者の2人のみ開設可能)に開設できる。このところ人気を博しているのが定期預金で、長らく忘れられていた感があった商品だが、金利上昇を背景に開設する人が増えている。8月時点で預金残高は4070億ユーロとなり、1年間で13%増を記録した。各行とも預金資金の獲得の柱として力を入れており、2年満期で4%程度の利回り(税引き前)を提供するところもある。 KSM News and Research -
2023.11.02
年金方針評議会(COR)の議長にジルベール・セット氏
政府は10月31日に開いた閣議で、年金方針評議会(COR)の議長にジルベール・セット氏を任命した。ピエールルイ・ブラ議長の後任として任命した。年金方針評議会は、首相府の下に置かれた諮問機関で、労使代表や行政機関の代表、国会議員、有識者の41人の委員により構成される。独立組織として運営され、年金制度の将来予測などを行い、政府に答申を提出している。ブラ前議長は2015年1月より現職にあったが、年金改革に際しては、改革に批判的な立場を表明することも多く、マクロン政権との関係が悪かったともいわれる。年金方針評議会に加わる労組の多くは、マクロン政権が気に入らない人物を切り、イエスマンに置き換えたと反発している。セット新議長は67才。大学等で教員を務めたエコノミストで、マクロン大統領の経済政策や年金改革について好意的な立場表明で知られていた。2017年からは法定最低賃金(SMIC)に関する専門家グループの座長も務めているが、労組側は、セット氏がSMICの底上げを認めない立場を貫いてきたことも問題視している。政府の側では議長人事について、9年間の在任を経てブラ議長の退任は適切な時期だったとして、遺恨絡みの解任だという見方を否定している。 KSM News and Research -
2023.10.31
2027年大統領選世論調査:極右RNのマリーヌ・ルペン候補が第1回投票でトップに
日刊紙ルフィガロなどの依頼で行われた2027年大統領選挙の世論調査によると、極右政党RNのマリーヌ・ルペン候補がいずれの組み合わせになってもトップで決選投票に進出する。30%を超える得票率を達成する見込みという。前回2022年の大統領選挙の第1回投票では、マクロン大統領が27.85%の得票率を達成。ルペン候補は23.15%の得票率で、両者の間で決選投票が争われた。第3位は左翼政党「不服従のフランス(LFI)」のメランション候補で21.95%。第4位はそれよりかなり離れて極右のエリック・ゼムール候補が7.07%で続いていた。次回の大統領選では、3選禁止の規定に抵触するため、マクロン現大統領は出馬できない。今回の調査では、連立与党の候補者を数人選んで、それぞれの場合で支持率を調べた。それによると、フィリップ元首相(「オリゾン」党)が大統領候補となった場合で支持率が25%と最も高く、アタル教育相が19%で続いた。ルメール経済相は18%で前回の同様の調査(3月末実施)と同程度、ダルマナン内相は16%で最も低いが、前回調査時からは5ポイントと大きな上昇を記録した。これらの4候補の誰になっても、RNのルペン候補は支持率31-33%でトップとなる。前回の大統領選挙で3位となったメランション候補は、支持率が14-15%となり、前回大統領選の得票率と比べてかなり後退する。それでも、左派陣営の全体を見渡して、他の候補に大きく勝っているのは確かで、さらに、今回の調査では、LFIがリュファン下院議員を候補に擁立した場合の支持率も調べたが、同候補の支持率は7%と、共産党のルーセル候補の7.5%に及ばないという結果になった。極右のゼムール候補(「ルコンケット」)は支持率が6-7.5%と大崩れしていないが、伸びもみられない。保守陣営の候補では、共和党がボキエ氏を擁立した場合で支持率が5-6%とゼムール候補にも及ばず、巻き返しの兆しはまだ見られない。 KSM News and Research -
2023.10.31
ビレールコトレ城館に「フランス語国際都市」がオープン
マクロン大統領は30日、パリの北東に位置するビレールコトレ城館(オードフランス地域圏エーヌ県)を訪問し、「フランス語国際都市」の開所式を挙行した。大統領はこの機会に、フランス語を普遍的な価値観を媒介する言語と位置づけ、国家の求心力の礎として称揚した。ビレールコトレ城館は、1539年に時の国王フランソワ1世が「ビレールコトレの勅令」と呼ばれる法律に署名したことで知られる。この勅令は、行政文書をラテン語ではなくフランス語で作成する旨を定めており、今日に至るまでフランス語の地位を固める根拠の一つとなった。ビレールコトレ城館は長年にわたる改修工事を経て、フランス語に関する常設展示を行う博物館や、フランス語に関係する学校や文化交流などの施設が入居する「国際都市」に生まれ変わり、今回の開所式に至った。マクロン大統領はこの機会に、先にアラス市の学校内でイスラム過激派により殺害された教員ドミニック・ベルナールさんの名前を挙げつつ、「憎しみが再び生まれ、宗教や出身によるコミュニティ間の対立を煽ろうとする人々がいる中で、フランス語は絆になる」などと言明。大統領はそれとは別に、「インクルーシブ正字法」(女性の存在が字面に現れるように表記を工夫する方法)を禁止する法案が保守野党「共和党」の発議で提出されたことに絡んで、「言葉の間にピリオドを入れるなどして読みにくくする必要はない」と言明し、インクルーシブ正字法を暗に批判した。 KSM News and Research -
2023.10.31
支払いサイト不順守の40社の名前が公表に
消費者保護や詐欺行為摘発などに当たる経済省下の当局機関DGCCRFはこのほど、支払いサイトの不順守が目立つ40社を対象に罰金処分を適用した。法令順守を促す目的で、会社名と罰金額を公表した。支払いサイトは、請求書の日付から60日以内か、請求書発行の月末から45日以内と定められている。支払いが遅れると、代金回収が遅れた企業は運転資金の確保を迫られ、金利など負担増を強いられる。資金繰りに行き詰まり倒産に追い込まれるリスクもある。政府はそうした悪影響が広がるのを防ぐ目的で、支払いサイトの順守徹底を図っている。40社のうち、罰金額が100万ユーロを超えたのは5社を数える。罰金額は、環境サービス大手のヴェオリアで160万ユーロと最大だった。これに、Showroomprive.com(ブランド品廉価販売サイト)が130万ユーロ、ブリコデポ(DIY)とM6(民放)がそれぞれ110万ユーロ、SFRフィーブルSAS(通信SFRの子会社)が100万ユーロで続いた。それ以外の大手企業には、GIFIディフュージョン(雑貨販売)の66万ユーロ、ボワロン(製薬)の25万ユーロ、プランタン(百貨店)の24万ユーロ、BRED(銀行)の22万ユーロ、マクドナルドの20万ユーロ、ロレアル(化粧品)の9万ユーロなどが含まれる。 KSM News and Research -
2023.10.30
マクロン大統領、妊娠中絶の保障で改憲を予告
マクロン大統領は29日、妊娠中絶に憲法上の保障を与えるための憲法改正を実施すると予告した。法案を数日中に行政最高裁(コンセイユデタ)に事前審査のために提出し、年内に閣議決定を終える。2024年6月までに国会審議を終えて、両院合同会議により改憲を完了するとの日程を示した。上下院の全議員により構成される両院合同会議で5分の3以上の賛成を得ることが改憲の条件となる。妊娠中絶の保障に関する改憲の動きは、議員立法法案の形で既に動き出していた。米国の最高裁が妊娠中絶の権利を制限する判決を下したことがきっかけとなり、与野党のかなりの範囲でコンセンサスが形成され、下院を通過の法案が上院で修正を経て下院で近く再審議される段階にまで至っていた。両院が同一の文言で採択しない限りは次の段階に進めないこともあり、マクロン大統領はこのタイミングで、政府提出の法案に切り替えて、2024年中の施行を目指すことを決めた。報道によると、改憲では、「妊娠中絶を行う自由を女性に保障し、その行使の条件について法律で定める」旨の文言が第34条に追加される。下院を通過の法案は「権利」という言葉を使っていたのに対して、保守勢力が過半数を占める上院は「自由」という言葉に改めて法案を採択しており、この点が一つの争点になっていた。政府は「自由」という言葉をそのまま用いつつ、その周囲の表現を工夫することで決着を図る方針とみられる。改憲を推進した左派勢力と、消極的な勢力を内部に抱える保守陣営の両方が賛成しない限り、改憲は成立しないが、左派勢力もおおむね政府の介入を歓迎しており、成立が有望視される。 KSM News and Research -
2023.10.30
ボルヌ首相、郊外地区の活性化プランを公表
ボルヌ首相は27日、都市省間委員会(CIV)の会合を開いた。郊外地区の活性化プランを公表した。首相はこの前日に暴動対策プランを公表していた。治安面を重視した対策が網羅されていたが、郊外の問題地区の振興策は、それを補完し、事件の発生の予防に重点を置いた内容になっている。まず、問題地区に貧困者の居住を斡旋しないようにする権限が各県の県庁に付与される。問題地区内にホームレスの収容施設等を設置することも禁止可能になる。特定の地区に特定の住民が集まらないようにする工夫を都市計画に組み入れる。教育面では、問題地区における中学校の開校時間帯を8時から18時までとすることが提案された。重点地区に指定された500地区においては、図書館の開館時間も延長される。教育重点地区が問題地区に正しく重なるように区割りの見直しを進めて、重点地区内の教育を強化。2歳児からの受け入れ定員数も増強する。問題地区における起業支援には4年間で4億5600万ユーロの予算を設定する。また、居住地による就職等の差別の対策として、年間500社を対象に覆面調査を実施して、差別廃絶の徹底を図る。雇用から遠ざかった層の就職支援を目的に、支援団体向けに3年間で3億ユーロの援助を行うことも決めた。気候変動対策では、気候変動に対する強靭性を強化するための予算を、年間1億ユーロから2億5000万ユーロに増額することを決めた。グリーン基金(20億ユーロ)の支出先の15%を問題地区向けにする(従来の2倍)ことも決めた。 KSM News and Research -
2023.10.30
歩行者専用道で自転車乗り入れ禁止、リール市など決定
市街地内の歩行者専用道で自転車等の乗り入れを制限又は禁止する自治体が増えている。北仏リール市も9日付で禁止措置を導入した。自転車や電動キックスケーター等の普及に伴い、こうした乗り物で歩行者専用道を通行する人が増えている。法令では、歩行者と同じ速度(時速4km以下)を保つ限りで、歩行者を妨害しないという条件で自転車等の通行は両方向について認められている。ただし、市町村は独自の制限及び禁止措置を導入することができる。市街地内の通行規制はアジャン市(ロットエガロンヌ県)が去る7月に導入。南仏ニース市でも夏季に限定して通行禁止地区を設定した。トゥールーズ市も導入を計画しているという。リール市の場合は、歩行者専用道路において、自転車から降りて、押して歩くことが義務付けられた。1日のほとんどの時間帯でこの措置が適用される。11月1日より、違反者に35ユーロの罰金処分(過度のスピードでの通行の場合や、イヤホン等を着用していた場合などには135ユーロ)が適用されることになっている。禁止措置の導入については、環境政策に逆行するなどとする環境派からの批判の声や、自転車ユーザー団体からの不満の声なども聞かれる。 KSM News and Research -
2023.10.27
量販店における消費財小売価格、10月に前月比0.6%低下
26日発表のCircana月例調査によると、量販店における消費財小売価格は10月に前月比で0.6%の低下を記録した。前年同月比では9.2%の上昇を記録、前月の11%から減速し、一桁台に戻った。ただし、2年前と比べると21.3%の上昇を記録しており、これは前月の21.2%からわずかに加速している。全体として、食料品価格は高止まりであり、わずかな低下が家計にとって目に見える形では現れていない。製品別では、プレーンヨーグルト(前年同月比16.3%上昇)、インゲン豆缶詰(3.6%上昇)、ハンバーグ(2.2%上昇)など値上がりが目立つ製品がある一方で、まぐろ缶詰(14.8%低下)、ヒマワリ油(4.3%低下)、いちごジャム(1.5%低下)などでは値下がりを記録した。政府は食料品価格の上昇の対策として、国会審議中の法案に、小売業者とメーカーの間の年次価格交渉の期限を前倒しに設定する方針を盛り込んだ。去る9日に下院を通過した時点で、交渉期限は2024年1月15日(中小企業のメーカーについては2023年末日)に設定された。26日からの上院審議では、この期限が15日間後ろ倒しとなる可能性がある。交渉期限を早めたところで値下げが決まるものではないと、効果を疑問視する向きもある。 KSM News and Research -
2023.10.27
ボルヌ首相、暴動対策プランを公表
ボルヌ首相は26日、去る6月に全国で発生した暴動を教訓として、対策プランを公表した。未成年者の処罰強化や保護者の責任の追及などを盛り込んだ。去る6月末に、パリ西郊ナンテール市で未成年者が警察官に射殺される事件が発生。これをきっかけに、全国で若者らを中心とした暴動が数日間続き、公共施設が破壊されるなどの被害が発生した。政府は、全国の自治体首長から意見を聴取した上で今回の対策プランを策定。500人余りの自治体首長を集めた会合を開いて同プランを公表した。具体的には、警察官、司法官、ソーシャルワーカーらを問題地区に配置し、治安維持に加えて、犯罪への処罰の徹底と教育を組み合わせた対応を強化すると約束。夜間外出禁止令に違反した未成年者に対する罰金額を150ユーロから750ユーロに引き上げることなども提案した。また、未成年犯罪者を、軍隊が管理する教育施設に置いて、公益事業奉仕に当たらせるという罰則の導入を予告。暴力的な動画をSNS上で流布するなどの犯罪行為には、アカウントの6ヵ月間停止という処罰を適用するとした。子どもを適切に指導しなかった保護者にも、公益事業奉仕の処罰を適用することを提案した。 KSM News and Research -
2023.10.27
欧州中銀(ECB)、金利を据え置き
欧州中銀(ECB)は26日に開いた定例理事会で、政策金利の据え置きを決めた。下限金利は4%、上限金利は4.75%、リファイナンス金利は4.5%にそれぞれ据え置かれた。欧州中銀は今回、本部のある独フランクフルトではなく、ギリシャのアテネで特別に理事会を開いた。欧州中銀は2022年7月に利上げを開始。去る9月の前回理事会まで10回連続で利上げを決めてきたが、ここへ来て利上げを小休止した。前回の理事会以来で、打ち止めを示唆する関係者らの発言が重なっており、金利据え置きは予想されていた。欧州中銀は、9月のユーロ圏インフレ率が4.3%と2年来で最低の水準まで下がったことを指摘。ユーロ圏の経済成長がぐずつき気味であることや、長期金利の上昇により加盟国の債務管理がより厳しい状況を迎えていることにも配慮して金利据え置きを決めたものとみられる。ただし、欧州中銀は、インフレ率はまだあまりに長い間、高すぎる水準にとどまる見通しであるとも指摘。2%という欧州中銀の目標にまで減速するには時間がかかるとの見方を示した。これは、当面の間は利下げはないことを示唆している。欧州中銀のラガルド総裁は26日、「金利は十分に高い水準にあると判断しており、インフレ率の目標達成のためにこの水準にとどめる必要があると考えている」と言明。どの程度の期間据え置かれるかについて、専門家の見方は分かれており、少なくとも2024年半ばまでとする見方や、2025年初頭までは続くとする見方などが出されている。ラガルド総裁はさらに、「利下げの議論をするのは現状では時期尚早」とした上で、「本日に金利を据え置いたからといって、今後にはもう利上げをしないということにはならない」とも付け加えている。 KSM News and Research -
2023.10.26
エイズ治療薬の第II相治験、フランスで年内に開始へ
エイズを緩解に導く可能性のある抗体を利用した治療法の第II相臨床試験が年内にフランス国内で開始される。エイズには今のところ、抗ウイルス薬の投薬を継続する以外の有効な対処法がないが、それに代わる有効な治療薬が実現する期待がある。パスツール研究所などの研究チームが発見した抗体「EPTC112」が治療に用いられる。Molinos-Albertを筆頭筆者とする研究成果が去る7月に、専門誌Cell Host & Microbeに掲載された。ウイルス感染後に投薬を受け、その後に投薬が中止されたのに病状が進行しない人がまれに存在し、研究チームは、そうした人の研究を行い、関与する抗体を同定した。この抗体は、エイズウイルスの外被糖タンパク質に取り付いて、感染を妨げる役割を果たす。変異株に広く対抗できる点も、治療薬として特に有望な特徴となっている。年内に仏国内で行われる第II相治験には、研究に協力したAP-HP(パリ首都圏の公立病院を統括)やINSERM(公的研究機関)も引き続き協力する。治療薬が実現しても、感染初期段階の患者向けという制約がある見通しというが、逆に、早期発見の検査への関心を高める効果が得られることも期待できる。 KSM News and Research -
2023.10.26
仏失業者数、7-9月期に微増
労働省の統計機関DARESが25日に発表したところによると、7-9月期の失業者数(マヨット海外県除く)は302万8000人となり、前の期から1万7400人の増加を記録した。失業者数は増加に転じた。ただ、前年同期比では12万人の減少(3.8%減)を記録している。年齢層別では、25-49才で7万3700人減(前年同期比、以下同じ)、50才以上で5万8500人減をそれぞれ記録したが、25才未満では1万2300人の微増を記録している。7-9月期には、当該月に78時間未満の就労実績がある失業登録者(カテゴリーB)は前の期比で2万5000人増を記録した。78時間以上の就労実績がある失業登録者(カテゴリーC)は3万3500人の減少を記録。すべてを合算した失業者総数は535万人を記録した。求人は好調な水準を維持しているが、派遣契約の終了などで失業登録をする人の数が増加傾向にあり、その一方で、再就職等で失業登録を抹消する人の数は減っている。全体として雇用市場はわずかに停滞しているが、顕著な悪化は今のところ生じていない。 KSM News and Research -
2023.10.26
「月額100ユーロのEVリース」、11月に申し込み開始へ
ルメール経済相は24日、仏自動車業界団体PFAが主催したカンファレンスに出席した機会に、電気自動車(EV)の「月額100ユーロのリース」の提供を11月から開始すると予告した。政府が補助金を支給して安値でのリースを実現する。電動化支援の一環として導入する。月額100ユーロという料金には保険料が含まれない。これを上乗せした実質料金は月額150ユーロ未満になるという。メーカー側の努力があればさらに低料金の実現も可能とした。11月から受付を開始し、最初の車両の引き渡しは2024年初頭になる見込みという。このリースを利用できるのは、所得水準で下位50%の世帯に限られる。頭金を国が負担し、利用者は月々の支払のみを負担する。対象となるモデルは、シトロエンe-C3、フィアット500e、ルノー「トゥインゴE-Tech」などで、対象モデルは今後に順次追加される。この措置は、需要活性化の支援措置の中に含まれる。政府は2024年に需要活性化のために15億ユーロの予算を設定(2023年には13億ユーロ)。報道によると、うち5000万ユーロがこの「月額100ユーロのリース」向けに充当されるという。 KSM News and Research -
2023.10.25
マクロン大統領、イスラエルを訪問
マクロン大統領は24日、イスラエルを訪問した。イスラエルのネタニヤフ首相と会談、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも別途会談した。マクロン大統領は、西洋諸国の首脳に遅れて訪問を果たした。大統領は到着直後に、フランス国籍を有する行方不明者の家族と会談。人質の解放に向けてフランス政府として可能なすべての努力をすると約束した。7日のハマスによる襲撃時には、フランス国籍者30人が死亡しており、9人がハマスの人質になっているとみられている。大統領は続いてネタニヤフ首相と会談。大統領はこの機会に、人質解放に向けて力を尽くす意向を表明すると共に、イスラエルの自衛権を再確認し、「文明と野蛮の間の戦い」においてイスラエルを支援すると言明した。大統領は同時に、「人道的休戦」への移行も呼びかけたが、ネタニヤフ首相は、「ハマスの破壊」が優先されると述べてこれには応じなかった。マクロン大統領はこの機会に、米国の呼びかけで2014年に発足した「イスラム国」に対する有志国の同盟を例に挙げて、「ハマスとその他のテロ組織」と戦う同盟を実現することを提案した。2014年の時のように一部アラブ諸国の合流が得られるかどうかは微妙で、大統領に近い筋も、必ずしも地上戦を念頭に置いたものではなく、訓練や情報共有、テロ資金対策などの協力を想定するものだと説明している。大統領はパレスチナ自治政府のアッバス議長とも会談。アッバス議長と会談したのはオランダのルッテ首相に続いて2人目となった。アッバス議長は、今回の紛争について、戦争の唯一の責任はイスラエルにあるとする主張を繰り返したが、マクロン大統領は、ハマスを非難しつつ、紛争がパレスチナにとって破滅的であることを強調し、アッバス議長とは多くの点で共通の認識があったとする考えを示した。大統領は続く25日にヨルダンを訪問する。 KSM News and Research -
2023.10.25
金融詐欺、最近の傾向は
日刊紙ルフィガロは24日付で、いくつかの金融詐欺の手口を紹介する記事を掲載した。このところ被害が増えているのが、身元詐称による詐欺事件で、これは、実在の人物の個人情報を詐取して、銀行融資を受けて踏み倒すなどするという流れになる。本人確認書類などを盗難したり、詐取するなどして入手し、その名前で銀行口座を開いたり、購入契約を結ぶなどして金品を詐取する。被害を受けている本人が気づきにくいのが特徴で、例えば銀行口座を開こうとしたら拒否され、理由を調べたら偽物の存在が判明したという場合も多いという。中銀が管理する信用情報のブラックリストに掲載されると5年間は融資を受けることなどができなくなり、詐称者の存在を立証できないと登録の取り消しも認められないことから、被害の状態が長く続く場合も多い。スプーフィング(番号偽装)を用いて、銀行担当者を装って電話をかけ、決済を実行するよう説得するという手口の詐欺も以前から続いている。また、「ラバ」と呼ばれている詐欺では、簡単に稼げる方法として、小切手入金の窓口となる名義貸しの人物を募集し、盗難小切手を入金させて、1割引で送金させるという段取りになる。捜査当局の追及が及ばないようにする工夫であり、「ラバ」になった人は、刑事責任を追及され、また、盗難小切手による入金分も没収されるので、二重に損をする格好になる。 KSM News and Research -
2023.10.25
仏政府、トラベルテックのスタートアップ支援に着手
仏政府は、旅行・観光分野のスタートアップ企業を支援するプログラム「フランス・ツーリズムテック」を開始した。毎年15社を選んで成長を支援する。最初の15社のリストが24日に発表された。グレゴワール観光担当相がパリ市内にあるインキュベーター「ステーションF」で開かれたイベントの機会に発表した。このプログラムは、観光振興分野などの公的機関(アトゥ・フランスなど)、観光分野の大手企業(アコー、パリ空港会社ADP、エールフランスなど)の協力を得て、観光分野のスタートアップ企業を選び、トラベルテックのエコシステム形成を目標に、規制面や資金面などで各社の成長を後押しする個別的な支援を与える。第1期で選ばれた企業には、資金調達の実績が既にあるものも多く、業務内容もかなり広い範囲に渡っている。このうち、Allthewayは、2点間の荷物の安全な輸送代行サービスを提供。Ctoutvertは、キャンプ場の予約ソフトウェアを開発している。Clorofilは、観光業者にカーボンフットプリントの計測手段を提供。Click&boatは、プレジャーボートの個人間賃貸借の仲介サービスを展開している。Cozy Cozyは、民泊プラットフォームのアグリゲーターサービスを提供。Greengoは、環境責任型の宿泊施設の予約サービスを提供している。Hostnflyは民泊のコンシエルジュリ・サービスを提供。Luniwaveは、ホテルにおける節水ソリューションの専門企業。Mobee Travelは身体障碍者向けのオンライン旅行代理店。Murmurationは、観光の環境負荷を計測するツールを提供している。Nannybagは、契約商店等による荷物一時預かりのサービス網を展開している。 KSM News and Research -
2023.10.24
半数以上の就労者が「職場の騒音気になる」と回答
調査会社IFOPが行った職場と騒音に関する意識調査(18才以上の層別抽出の就労者1103人を対象に9月12日から14日まで実施)によると、職場における騒音が気になると回答した人は全体の52%に上った。パリ首都圏に限るとこの割合は62%に上る。また、全体の20%の人が、騒音で迷惑を被っていると回答した。就労者が問題とした騒音の発生源としては、外部からの騒音が最も多かったが、これに、同僚の話し声、各種の装置から発生する音、人の往来と電話での話し声が続いた。また、会社により騒音問題が正しく対処されていないと答えた人は51%と過半数を占めた。年齢別では、就労状況などから、34才以下の若い世代で騒音への暴露がより大きいが、25才未満の人では、騒音への暴露が大きくても18%の人が気にならないと回答しており、ほかの年齢層に比べて割合が大きい。これは、若い世代が騒音慣れしていることを示しており、将来的な聴覚障害を引き起こす要因になりうることが懸念される。リモート就労関係では、職場での就労時に音が気になると答えた人が全体の25%程度に上った。騒音レベルがより大きい職場復帰にストレスを感じる人がいることを示唆している。 KSM News and Research -
2023.10.24
アマゾン、欧州で2023年に再生可能エネルギープロジェクト39件を開始
米IT大手アマゾンは、欧州において2023年に入り再生可能エネルギープロジェクト39件を開始したと発表した。これらのプロジェクトの合計容量は1GW超。アマゾンの保有する施設15ヵ所(ベルギー、フランス、イタリア、スペイン、英国)に屋根設置型太陽光発電施設を新設するほか、ユーティリティースケールの風力発電及び太陽光発電プロジェクト24件(フィンランド、ドイツ、ギリシャ、スペイン、スウェーデン、英国)を開始した。ユーティリティースケールのプロジェクトには、ギリシャにおいて同社初となるソーラーファームが含まれる。これらを含めて、アマゾンは欧州において、13ヵ国で160件の風力と太陽光発電プロジェクトを進めている。これらの合計容量は5.8GWに達する。 KSM News and Research -
2023.10.24
エアバス、空中給油機のグレードアップでフランス軍から受注
エアバスは23日、フランス軍より2件の契約を獲得した。空中給油機の改修と保守を請け負った。契約の総額規模は12億ユーロ。次世代戦闘機システムの開発計画に関連した契約となる。エアバスはフランス軍から空中給油機A330MRTTを15機受注しており、うち12機が既に就役中となっている。新たな契約では、これを軍用通信システム「スタンダード2」に対応する装備を搭載する形に改修する。最後の15機目に引き渡しの機体に導入し、2028年にも軍の認証を得る。次いで残りの14機の改修を順次行う。空中給油機には衛星通信システムMELISSAが搭載される。妨害電波の環境下や極端な気象条件においても衛星通信が確保できる。エアバスは、空中給油機の自己防御システムの供給も請け負った。一連の装備の保守に関する契約は最低期間が10年間に設定されている。エアバスによると、この契約は、独仏スペインが共同開発を進める次世代戦闘機システムFCAS/SCAFを構成する機体群に空中給油機が統合される上での第1段階となる。FCASにおいては、軍用通信システムにより相互に接続された機体群の協働が主眼の一つとなり、主力戦闘機にドローンを組み合わせた運用などが想定されている。 KSM News and Research -
2023.10.23
仏医薬品庁、血管収縮作用を利用した鼻づまり薬のリスクを警告
仏ANSM(医薬品庁)は10月23日、プソイドエフェドリンを用いた、鼻づまり解消用の経口薬(Actifed、Dolirhume、Nurofen Rhume、Humex、Rhinadvilなど)のリスクを警告し、市民に対して使用しないよう呼びかけた。これらの薬は血管を収縮させることで鼻づまりを解消するが、稀ながら心筋梗塞や脳卒中を引き起こす恐れがあり、鼻づまりを治すためだけに摂取するにはリスクが大きすぎるとの指摘がなされている。プソイドエフェドリンを用いた医薬品の危険性は以前から指摘されており、2017年以降は広告が禁止されるなど規制が強化されてきた。しかし、これらの経口薬は処方箋なしで販売されており、仏国内での販売量は減少傾向にあるものの、2021年には300万箱が販売され、相変わらず風邪薬のベストセラーとも言える存在となっている。これらの医薬品の販売を制限または禁止するには、欧州連合(EU)の決定が必要となるが、EUは今年に入り、その危険性に関する調査を開始している。ANSMは、医療関係者とも協議した上で、EUの結論を待たずに警告を発することとした。なお、これらの医薬品にはスプレーも存在するが、こちらは処方箋が必要となっているため、今回の警告の対象とはなっていない。 KSM News and Research -
2023.10.23
ムーディーズ、フランスの長期債務格付けを維持
格付け会社大手のムーディーズは20日、フランスの長期債務格付けをAa2のまま据え置くことを決めた。格付け見通しは「安定」とした。格下げの懸念もあったがひとまずそれを回避できた。ルメール経済相はこの決定を歓迎。フランス国債の信頼性を物語るものだとコメントした。長期金利は世界的にも上昇局面を迎えており、仏10年物長期金利も、2021年初頭以来で最高の3.5%台に乗った。政府は2023年末に3.4%と予測して予算を組んでおり、それを既に超えている。その分予算運営は苦しくなる。ドイツとの長期金利スプレッドも60ベーシスポイントまで拡大。数年来で最大になっており、これは市場がフランスの予算運営に懸念を抱き、債務管理が困難になるとする見方を強めていることを示唆している。ルメール経済相は、市場の信頼維持を目的に、2025年に120億ユーロの節減を実現する方針を表明。国会審議中の2024年予算法案においても、追加で10億ユーロの節減を達成するための調整を開始しているが、その実現は困難であるともみられている。大手格付け会社では、フィッチが27日に、S&Pが12月初頭にそれぞれ仏長期債務の格付け更新について発表することになっている。 KSM News and Research -
2023.10.23
賞金を月々支給の宝くじ「ユーロドリームス」、フランスなど欧州8ヵ国で導入
仏FDJをはじめとする欧州8ヵ国の宝くじ事業者が共同で新たなロト(数字選択式宝くじ)を開始することを決めた。20日にパリ・エッフェル塔を会場に発表式が行われた。新商品「ユーロドリームス(EuroDreams)」は、やはり欧州諸国の事業者が共同で運営する「ユーロミリオンズ(EuroMillions)」の弟分という位置づけだが、賞金が一括ではなく、年金型の支給である点が新しい。掛け金2.5ユーロで、40個から6個の数字を選び、また、5個から1個の数字を選ぶ。すべてを的中すると、最高で30年間に渡り毎月2万ユーロの賞金の支給を受けられる。当選者が支給の途中で死亡した場合には、残金が相続人に支払われる。ほかに金額が小さく、期間も短い賞があり、その下には、2.5-100ユーロ程度の賞(一括支給)がある。全体として、最高賞の金額は720万ユーロで、ユーロミリオンズの2億4000万ユーロよりはるかに少ないが、何らかの賞金が得られる確率は4.66分の1と高い。10月30日に発売し、週2回の抽選を行う。ユーロドリームスは、フランス、スペイン、ベルギー、オーストリア、ポルトガル、アイルランド、スイス、ルクセンブルクの8ヵ国の事業者が共同で販売する。ユーロミリオンズに加わっている英国は、同種の宝くじを以前から販売していることもあり、合流を見合わせた。仏FDJは、新商品を、25-40才の若い世代に食い込む商品として位置づけている。 KSM News and Research -
2023.10.20
予算法案国会審議:一連の改正が準備
2024年社会保障会計予算法案の下院小委員会審議を通じて、一連の改正の採択が進められている。まず、高めの給与水準の給与所得者を対象にした社会保険料の減免措置の削減が準備されている。法定最低賃金(SMIC)の2.5倍から3.5倍までの給与所得者の家族手当公庫保険料(料率1.8%)の減免措置を縮小する方向で改正がなされる。SMICに対する倍率で示されている限度額を絶対額で示すことにより小幅な削減を進める方針だという。他方、加糖飲料を対象にした課税については、強化を盛り込んだ修正案が採択された。さらに、加工食品に添加される砂糖を対象にした新税の導入に関する修正案も採択された。これらは肥満予防を目的とする措置で、加糖飲料課税については、2012年に導入され、2018年に改正されたものの、効果が低いことを踏まえて課税強化の方針が決められた。これとは別に、採択強制措置(「49.3」)を利用して下院を通過した2024年予算法案には、断熱リフォーム向けの無利子融資制度の適用拡大に関する修正条項が追加される。区分所有住宅の管理組合も融資の対象として認められるようになる。 KSM News and Research -
2023.10.20
ルーブル美術館で拡張現実の新サービス、古代エジプトが現代に蘇る
ルーブル美術館で拡張現実の新サービスが始まった。古代エジプト関連の展示品3点について、1年間の予定でコンテンツを提供する。提供されるコンテンツは、スナップの仏子会社ARスタジオが開発した。展示品の脇に表示されたQRコードをスマホで読み取るとSnapchat上にコンテンツが表示される。このうち、紀元前6世紀に作られた「アモシス2世のナオス(神像安置所)」では、今はなくなった扉を含めて、見えにくくなった壁面のモチーフ等を製作当時の様子を再現して拡張現実の形で画面上に表示。もとはオシリスの神像を収めていたもので、神像は現在では残っていないが、画面上のボタンを押すと、やはり今は存在していない扉が開き、中に神像が収められていた様子が再現される。長い年月を隔てて鑑賞が困難になった作品の理解を助けるために拡張現実が活躍する。コンテンツは同じ展示室の他の2点で提供される。また、ルーブル美術館の中庭にもQRコードがあり、中庭にオベリスクが置かれた際の情景を見ることができる。象形文字を解読したシャンポリオン(1790-1832)が、今はコンコルド広場にあるオベリスクをこの場所に設置することを望んでいたのにちなんで、拡張現実でシャンポリオンの願いを実現した。 KSM News and Research -
2023.10.20
欧州委、メタとTikTokに関する調査を開始
欧州委員会は、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に関する偽情報や違法コンテンツの拡散を取り締まるため、今夏に欧州連合(EU)が定めたデジタルサービス法(DSA)の遵守を大手プラットフォームに徹底させる対策を進めている。その一環として、10月12日に米X(旧ツイッター)に対する調査を開始していたが、19日には、米メタ(フェイスブックやインスタグラムなどのSNSを運営)および中国TikTokに対する調査を開始した。欧州委員会はこれらの企業に宛てた書簡で、偽情報や違法コンテンツの拡散を防ぐためにどのような対策を講じているかについて詳細な情報の提供を請求した。Xは18日までに欧州委員会に回答することを求められていたが、期限内に回答があったかどうかに関する仏ルフィガロ紙の問い合わせに対して欧州委員会はコメントを控えた。メタとTikTokの回答の期限は25日に設定されている。なお、Xは12日の時点で、ハマスの攻撃に関連した数万通のメッセージを削除または通報したと発表し、テロ組織や過激暴力グループによる利用は認めないと言明して、不適切なアカウントを停止する対応策を継続すると約束していた。 KSM News and Research -
2023.10.19
住宅購入向け無利子融資制度、2027年末まで延長に
ルメール経済相は18日、住宅購入向けの無利子融資制度(PTZ)の適用延長を予告した。年末で終了の予定だったが、2027年末日まで延長した。2024年年頭に施行する一連の手直しも予告した。金利上昇に伴い、家計による住宅購入が冷え込んでおり、住宅建設の勢いも鈍っている。政府はそのテコ入れを図り、無利子融資制度の延長を決めた。適用範囲も拡大され、住宅の需給がひっ迫している地区のうち、A、B1及びB2分類までの新築アパートがPTZの適用対象として認められることになった。中古アパートについては、改修工事を経たものについて、受給がひっ迫していない地区(C分類)において対象となる。その一方で、一戸建ては対象から除外される。政府はその理由として、土地利用の拡大を制限する環境政策上の目標に合致しないためと説明している。適用を受けられる世帯の所得上限も地区により7-30%引き上げられる。これで、適用可能な世帯の数は、2300万から2900万に増えるという。融資限度額は8万ユーロから10万ユーロへ引き上げられ、住宅ローン全体に占めるPTZの上限も、低所得世帯の場合で40%から50%へ引き上げられる。PTZに伴い国が負担する費用は、年間で8億ユーロとなる見込みで、従来の12億ユーロよりも少ない。これは一戸建てが除外されることの影響による。 KSM News and Research -
2023.10.19
エールフランス、パリ・オルリー空港から撤退へ
エールフランスはパリ・オルリー空港を拠点とする事業を打ち切る。会社側が18日に従業員代表に通知した。エールフランスはパリ・シャルルドゴール空港をハブとして利用。オルリー空港は、仏海外県アンティル諸島向けの便と、コルシカ島を結ぶ便(国土連絡の公共サービス受託事業)、さらに、マルセイユ、ニース、トゥールーズを結ぶシャトル便を運航する拠点としており、12機を配置している。報道によれば、コルシカ島便を除くこれらの事業がすべてシャルルドゴール空港に移され、オルリー発着の運航便はエールフランス名義としては打ち切る。オルリー空港における発着枠は、LCC子会社のトランサビアに順次移管する。トランサビアの体制を整えるには時間が必要であるため、2年間をかけて段階的に移管し、エールフランス名義の事業を打ち切る。割り当てられた発着枠を競合他社にとられないようにするため、トランサビアへの移管を選んだ。たとえばマルセイユ便は、乗り継ぎにより中長距離路線の旅客を集める目的で、シャルルドゴール空港発着にて既に1日5往復が運航されている。オルリー空港からは1日7往復が運航されているが、移行後もすべてが維持されるとは限らない。エールフランスにとっては経費節減が今回の決定の主な目的であり、労組の側では事業の縮小による雇用への影響を懸念している。オルリー空港(従業員数500人)だけでなく、マルセイユ(同300人)、トゥールーズ(同300人)、ニース(同400人)にも事業縮小の影響が広がる恐れがある。 KSM News and Research -
2023.10.19
ドカポスト、生成AIの医療機関向けソリューションを開発
ラポスト・グループ(郵便)傘下のドカポスト(Docaposte)は17日、自社開発の生成AI(人工知能)のボット・システムを公開した。データ主権の条件を満たしたサービスとして、この10月からひとまず医療機関向けに売り込む。ドカポストは、大規模言語モデルを開発のLightOn、AIのSaaSプラットフォームを運営するAleia、ソブリンクラウドのNumSpot(ドカポストやブイグ・テレコム、ダッソーシステムズなどが出資の合弁企業)の協力を得て、チャットボット「MedAssistance」を開発した。生成AIのインターフェースを通じて、医療関係者による患者の情報へのアクセスと、情報の取捨選択・綜合をサポートする。ドカポストは、医療部門向けのソフトウェアを開発のMaincareを去る3月に買収しており、同社などを入口に取引先の医療機関などにこの新ソリューションを売り込む。データ主権上の制約をクリアしたソリューションであることから、採用に踏み切りやすいことを武器とする。サブスク方式での提供と、オーダーメイドでの実装の両方を手掛ける。同社は今後も、省庁や健保公庫、職業安定所などの公的機関の事務職をサポートする生成AIソリューションの開発を進める。 KSM News and Research -
2023.10.18
ブリュッセルのテロ事件容疑者、17日に警察が射殺
ベルギーの首都ブリュッセルで16日夜に起きたテロ襲撃事件の容疑者は17日朝、スカールベーク地区(ブリュッセル首都圏)のカフェで、警察により射殺された。容疑者は動画による犯行声明をSNSに投稿しており、捜査当局による容疑者特定は早かったが、行方を突き止めるまで12時間を要した。報道によると、容疑者の名前はアブデサレム・ラスエド。チュニジア国籍の45才の不法滞在者で、スカールベーク地区の集合住宅に居住していた。2019年に難民申請を行ったが2020年に却下され、国外退去命令を受けていたが従っていなかった。デクロー首相は、記者会見で、国外退去命令の強制執行が必要だとし、難民申請を却下された不法滞在者の国外追放処分をより効果的に実施する対策を検討する方針を示した。容疑者は犯行声明で「イスラム国」に所属するとしていたが、ベルギーの捜査当局は一匹狼的な犯行とみて、ブリュッセル首都圏におけるテロ警戒のレベルを16日の4(最高)から17日には3に引き下げた。容疑者はまた、SNSに投稿した動画で、コーランを燃やす示威行動が繰り返されたスウェーデンの出身者を標的とする意志を明確にしていた。スウェーデンのクリステション首相は17日の記者会見で、スウェーデンとその市民に対するテロ襲撃だと考えられると認めた上で、容疑者が2012年から2014年にかけて別名を用いてスウェーデンに滞在し、この期間中に刑務所に服役したことを明らかにした。2014年に欧州の他の国に追放されたという。クリステション首相は、テロに屈せず、開かれた民主社会を保護する意志を表明すると同時に、国外退去命令を受けている2万7000人の不法滞在者の追放、国境検査の改善、警察と情報機関の権限強化などの対策により安全の確保を最優先する方針を掲げた。コーランを燃やすなどの反イスラム抗議行動について、現行法では禁止できないため、スウェーデン政府は今夏からこれを抑制するための改革を検討しているが、法律の専門家らは、その実現可能性は薄いと判断している。現政権に閣外協力する極右政党「スウェーデン民主党」は改革に対する全面的な反対を表明している。なお、10月24-25日に予定されていたマクロン仏大統領のストックホルム訪問は延期されることが決まった。 KSM News and Research -
2023.10.18
シトロエン、手頃な価格の小型フルEVを公表
仏自動車ブランド「シトロエン」(ステランティス傘下)は17日、小型フルEVの新モデル「e-C3」を公表した。2024年春に引き渡しを開始する。2万3300ユーロからという手頃な価格を設定した。フルEVが本格的な普及期を迎える中で、中国の競合に打ち勝つためには、低価格の大衆的なモデルの投入が不可欠になっている。シトロエンは仏市場で競合するルノーや独フォルクスワーゲンなどに先行して今回の発表に踏み切った。仏市場では、ダチア(ルノー・グループ)のスプリングが2万800ユーロという手頃な価格で既に成功を収めているが、これは中国で組み立てのモデルであり、2024年年頭にエコカー奨励金制度(1台5000ユーロ、低所得者の場合は7000ユーロ)が見直され、上流段階での炭素負荷が大きいモデルが除外されれば、スプリングも除外対象となる可能性が高い。これに対してe-C3は、バッテリーは中国製だが、組み立てはスロバキア工場で行い、上流の炭素負荷を抑える工夫をする。生産性が高いスロバキア工場での組み立てにより低価格も実現する。航続距離は320kmを達成(スプリングは230km)。シトロエンはさらに、2025年初頭からは1万9900ユーロからというより低価格のバージョンも発売。こちらは航続距離を200kmに抑えてさらに安値を実現する。 KSM News and Research -
2023.10.18
仏プロサッカー1部リーグの放送権入札、不調に終わる
仏プロサッカー連盟(LPF)は17日、プロサッカー1部リーグ「リーグ・アン」の試合の放送権入札(2024-29年が対象)が不成立に終わったと発表した。これから放送権の付与に向けた相対方式の交渉が始まる。連盟は、事業部門子会社LFPメディアを通じて、5つのロットに分けて入札を実施した。目玉のロットは、試合のある日の最良の2試合と4番目の試合の放送権が対象で、連盟側は年間5億3000万ユーロの最低価格を設定していた。第2のロットは残り6試合の放送権で、最低価格は2億7000万ユーロだった。残りの3つのロットはハイライト場面の配信やニュース番組向けの映像利用権などが対象だった。いずれのロットも条件が満たず、落札者が決まらなかった。リーグ・アンの放送権はバブル崩壊に見舞われた感がある。前回期間の入札で高値にて落札したメディアプロ社が倒産し、その放送権(1日8試合)はアマゾンが年間2億5000万ユーロという安値で買い入れた。同じ期間に1日2試合の放送権を年間3億3200万ユーロで買い入れていた有料テレビ大手カナルプリュス(ビベンディ傘下)はこれに反発。その軋轢から今回の入札にはカナルプリュスが不参加を宣言。これで競争圧力が低まったこともあり、入札は不調に終わった。入札潰しがカナルプリュスの狙いだったとしたら、相対取引でカナルプリュスが戻ってくる可能性もある。 KSM News and Research -
2023.10.17
ベルギー・ブリュッセルでテロ事件、スウェーデン人2名が死亡
ベルギーの首都ブリュッセルで16日夜、スウェーデン人を狙った銃撃事件が発生した。2人が死亡、1人が重傷を負った。犯人は逃走したが、犯人とみられる人物による犯行声明がネット上で出回っており、当局はテロ事件として捜査を開始した。容疑者は17日未明時点でまだ逮捕されていない。事件は16日19時15分頃、ブリュッセル北部のサンクトレット広場付近で発生。同日にはブリュッセルのボードワン・スタジアムでスウェーデン対ベルギーのサッカー欧州選手権2024の予選が行われることになっており、スウェーデンチームのシャツを着ていた人たちが銃撃を受けた。犯人は自動小銃で銃撃し、自動二輪車に乗って逃走した。犯人はオレンジ色の蛍光ベストを着ていたが、同じ服装の男による犯行声明の動画数点がその後にネット上で流布。男はこの中で、アラビア語で、「イスラム国」に所属すると名乗り、「イスラム教徒の復讐をする」ためにスウェーデン人を狙撃したと言明していた。スタジアムでの試合はその後に開始されたが、途中で打ち切られ、3万5000人に上る観客は安全確保を目的に足止めを受けた。深夜前に退去が行われ、目立った混乱はなかった。当局はブリュッセル首都圏におけるテロ警戒を最高のレベル4に引き上げ、スウェーデン人コミュニティの立ち回り先などを含めた重要施設の警備を強化した。17日未明にデクロー首相は記者会見を開いて状況を説明。これによると、容疑者の男はチュニジア国籍の不法滞在者で、難民申請中の人物だった。首相は事件を「卑劣なテロ事件」と形容して糾弾した。容疑者の行方はまだ掴めておらず、フランス政府はベルギーとの国境警備を強化することを決めた。フランスでは13日にイスラム過激派による学校襲撃事件があり、教員1名が死亡したばかりで、今回の事件もそれに触発された可能性がある。また、スウェーデン人が標的になったのは、スウェーデン国内でコーランを燃やすなどの事案がよく発生し、これが一部で反スウェーデン感情を引き起こしていることが背景にあると考えられる。 KSM News and Research -
2023.10.17
アトスのムニエ会長が辞任:再編計画巡る反対派の株主らの説得が課題に
仏アトス(情報処理)は16日、ムニエ会長の解任を発表した。後任には、5月に独立系取締役に就任したばかりのミュスティエ氏が就任した。また、副会長には、やはり昨春に取締役に就任したコレビヨン氏が就任した。市場はこの発表を歓迎し、同社株価は同日の取引開始直後に21%の大幅上昇を記録した。アトスは、有望事業のサイバーセキュリティ及びスパコン事業を新会社Evidenとして継続事業とし、情報処理事業は別の子会社Tech Fondationsに束ねた上で売却するという再編計画を進めている。去る8月1日には、Tech Fondationsをチェコの実業家クレティンスキー氏に売却する計画を発表し、独占交渉を開始したが、これには、売却の条件が悪いことに不満を抱いたファンド系の一部株主が反発していた。会社側はこうした反発に配慮し、人事を見直した上で株主らの説得に当たることにした。売却計画では、売却に伴う現金対価が1億400万ユーロと小さく、アトス側はさらに10億ユーロの運転資金を負担することを約束している。18億ユーロの債務はクレティンスキー氏側が負担するが、全体として割に合わないとする不満の声が株主から上がっている。クレティンスキー氏はまた、Evidenの7.5%株式を取得して筆頭株主となるが、これには、野党の国会議員グループが、重要技術を有するEvidenへの外国資本の出資を問題視している。 KSM News and Research -
2023.10.17
公共交通機関の無料化に取り組む自治体増える
全国の自治体で公共交通機関の無料化に踏み切るところが増えている。2020年の前回市町村選挙で公約に掲げた自治体が導入を進めている。国内の大都市では、モンペリエが初めて完全無料化に踏み切る。12月21日19時より実施される。モンペリエはフランスで第7位の都市であり、完全無料化の自治体として、欧州で最大規模になるという。仏国内では、パリ北郊のコンピエーニュがパイオニアで、1975年に無料化を決めた。現在では、ダンケルク市など40程度の都市が完全無料化を実施している。このほか、土曜や週末などに限定して無料開放している自治体も15程度を数える。無料化の効果は大きく、例えばノジャンルロトルー市の場合、無料化から6ヵ月間で56%の旅客増加を記録した。とはいえ、どの程度のドライバーが公共交通機関に切り替えたのかの把握は難しい。マイカーの利用制限などを並行して導入しない限り、排ガス削減や温室効果ガス排出削減といった政策目標達成の切り札にはなりえないという見方もある。無料化には収入源を失うというデメリットもある。ブルジュ市の場合は、運賃収入(250万ユーロ)は全体の財源の15%を占めるに過ぎず、収支均衡を確保できることから大きな問題はなかったというが、それでも収入が減ることにはかわりない。同市は、企業対象の拠出金を増額して財源を確保することを決めた。 KSM News and Research -
2023.10.16
欧州連合(EU)、グリホサート販売許可継続で合意得られず
欧州連合(EU)理事会は13日、除草剤グリホサートの販売許可継続の是非を検討した。特定過半数の賛成が得られず、決定は11月に先送りとなった。グリホサートは米モンサント(現在は独バイエル傘下)が開発した除草剤で、「ラウンドアップ」などの商品名で広く農業部門で用いられてきた。発がん性の疑いがあり、数々の訴訟で会社側が賠償責任の認定を受けたことも多い。EUの加盟国の中には禁止を求める動きもあるが、EUは2017年に5年間の期限付きで暫定的に販売許可を延長。暫定期間の終了に伴い今後の取り扱いをどうするかが議論の対象となっていた。EUの専門機関が先に、危険性を相対的に捉える報告書を提出し、欧州委員会は10年間の販売延長を認める内容の提案を示していた。決定は特定過半数(EU人口の65%以上を占める55%以上の加盟国の賛成が必要)で下されるが、採決においては、独仏が棄権したことにより要件が満たされず、決着がつかなかった。11月半ばに再度投票が行われるが、ここでも同じ結果になった場合は、欧州委の提案がそのまま採択されることになる。うちフランスは、2030年までの延長と使用制限の導入を提案しているといい、妥協案を探る努力が続けられることになる。Le Monde 2023-10-1 KSM News and Research -
2023.10.16
フランス、アスベストが原因のがんを職業病に認定
フランスで、アスベスト粉塵吸入が原因の喉頭がんと卵巣がんを職業病と認定するデクレ(2023年10月14日付け政令)が10月15日の官報で公布された。アスベストにさらされて咽頭がん・卵巣がんに罹患した労働者には、より充実した保障と支援を受ける道が開ける。今回の認定は、昨年ANSES(食品環境労働衛生安全庁)が実施した科学的評価を基にした、COCT(労働条件指針審議会)の職業疾病特別委員会の働きによるもの。ANSESは報告書の中で、アスベストにさらされた職場に関わる咽頭がん・卵巣がんは、過少申告で過少認定だと指摘した。アスベストと咽頭がん・卵巣がんとの関連性は、フランス衛生監視研究所(現公衆保健庁)やIARC(国際がん研究機関)など複数の機関が数年前から認めていた。アスベストは、フランスにおける職業病の原因の第2位で、職業病としてのがんの原因としては第1位。フランスでは1997年に使用が禁止されたが、アスベスト吸入に起因する呼吸器系がんで2009年から2050年までの間に6万8000人から10万人が死亡すると推定される。 KSM News and Research -
2023.10.16
イスラム過激派による襲撃事件:教員1人が死亡、犯人は逮捕
13日に学校が刃物を持った男性により襲撃される事件があった。教員1人が死亡し、数人の教職員が負傷した。犯人は急行した警官隊により逮捕された。事件があったのは北仏アラス市(パドカレー県)の公立ガンベッタ中学・高校で、刃物を持った若い男が10時55分頃に押し入ろうとした。男は警備員を負傷させ、その場に居合わせた中学校の国語教師ドミニック・ベルナールさん(57)を刺殺した。その後、犯人を確保しようとした教職員ら数人を負傷させたが、学校建物内には入れず、通報を受けて急行した警官隊により逮捕された。逮捕されたのは、この学校で数ヵ月間前まで学んでいたモハメド・モグシュコフ容疑者(20)。同容疑者はロシア南部のカフカス地方イングーシ出身で、2008年に両親と共にフランスに入り、難民認定を申請したが却下され、2014年に国外退去処分を受けるところだったが、人権団体等による反対運動もあり取りやめとなり、フランスに残ったという経緯がある。父親はその後に本国に送還され、容疑者の兄は2019年に大統領府を狙ったテロ計画に関係した容疑で逮捕され、今年4月に有罪判決を受けて現在は服役中となっている。容疑者本人もイスラム過激派として当局によりマークされており、通称「Sファイル」に登録されていた。犯行前日の12日にも当局は容疑者とその家族などを対象にした検査を実施したが、身柄は拘束されなかった。この検査が犯行の引き金になった可能性もあるが、当局は、検査に前後して、こうした襲撃がなされる可能性をうかがわせる材料はなかったと説明している。目撃者らの証言によれば、容疑者は犯行時に「アッラーアクバル」と叫んでおり、標的として地理・歴史の教員を探していたといわれる。ちょうど3年ほど前の2020年10月16日にも、パリ郊外で、地理・歴史の教員サミュエル・パティさんがイスラム過激派の男性に斬首されるという事件が発生しており、これを念頭に置いた犯行である可能性が指摘されている。犯行はいずれも金曜日に発生しており、3年前の事件でも、犯人がイングーシの東に接するチェチェンの出身だったというつながりがある。足元のパレスチナ・イスラエル紛争が犯行の呼び水になった可能性もある。政府はこの襲撃事件の発生などを踏まえて、13日夜の時点でテロ警戒プラン「ビジピラット」の最高段階である「テロ緊急警報」を発動。最大で7000人の軍人が16日夜までに国内の治安維持活動に動員され、当面の間、配備が継続される。国内では緊張が高まっており、14日には、爆弾テロの予告などを受けて、ルーブル美術館やベルサイユ宮殿等で一時、訪問客を退避させる騒ぎがあった。いずれも虚偽の予告や誤報であり、被害は出ていない。 KSM News and Research -
2023.10.13
ロジコール、パリ首都圏に物流拠点を整備
物流倉庫のプロモーターとして欧州最大手のロジコール(Logicor)が、パリ首都圏コンフランサントノリーヌ市に倉庫面積1万平方メートルの物流拠点を整備する。2024年4-6月期中の完成を予定する。コンフランサントノリーヌ市はパリ西方のセーヌ川下流に位置する。高速道路A15から至近距離にあり、RER(郊外連絡急行)A線などにも連絡している。交通の便が良好で、大消費地に隣接する場所が選ばれた。建物はアトリエM3社が設計。3000平方メートル強の3つの区画に分けて、3者までの需要家をテナントとして迎える。ECサイトやラストワンマイルの輸送業者、さらに、製造業(製薬、食品加工など)の顧客を想定する。ロジコールはフランス国内では合計で400万平方メートルを超える倉庫を保有する。パリ首都圏で特に強く、パリ北方の高速道路A1とA3が交差する地点に位置する「Garonor」物流拠点内に30万平方メートルなどを確保している。現在は全国で合計10万平方メートル強が建設中となっている。 KSM News and Research -
2023.10.13
CNIL、AI学習のデータ使用に関する指針案を公表
仏CNIL(個人情報保護機関)は11日、人工知能(AI)の学習用データベースの構築に関する指針案を公表した。欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)に照らして認められるデータの処理及び利用のあり方を規定する文書案として提示。11月16日までパブコメの募集を行う。AIを育てるために膨大なデータが利用されるが、個人情報保護の兼ね合いで、どのような利用方法であればデータの使用が認められるのか明確化する必要が生じていた。CNILは指針案の中で、使用に当たっての条件を提示している。CNILはこの中で、アルゴリズムの学習段階において、将来的な用途の全体を開発者が予見して定義することはできないと認めた上で、開発されるシステムの種類と、予定される主要な諸機能についてはあらかじめ定義されていることを要すると指摘した。大量のデータの投入については、アルゴリズムの学習を最適化する形でデータを選別し、不要な個人情報の使用を回避することが必要だとした。公開されているデータの使用については、明らかに違法なやり方で収集されたものではなく、また、当初の収集と再利用の目的が合致している限りにおいて可能とした。データ保存の期間については、それが科学的及び金銭的に多大の投資がなされるなどの理由で正当化される限り、長期にわたることが認められるとした。CNILはパブコメの結果を踏まえて、2024年初頭に最終的な指針を公表する。 KSM News and Research -
2023.10.13
Evolyn、パリ・ロンドン間の高速鉄道事業参入を計画
スペイン資本のEvolyn社が、パリ・ロンドン間の高速鉄道事業への参入を計画している。実現すれば、ユーロスターに対抗する競合の初参入となる。Evolynは、スペイン資産家のコスメン一族を主力とするコンソーシアム。同一族はモビコ(旧ブリティッシュ・ナショナル・エクスプレス)の主要株主。他の出資者の名前は明らかにされていないが、10億ポンドがEvolynに出資されたという。Evolynは仏アルストム(鉄道機器)に対して、新鋭の高速鉄道車両12本を発注(16本に引き上げるオプション付き)。識者によると、10本あればパリ・ロンドン間を1日20往復する運行が可能だという。2025年に英仏海峡トンネルにおける試験運転を行う計画で、2026年の開業を目指している。同社はまた、将来的に英国と欧州大陸の他の都市にも乗り入れる計画としており、旅客数1100万人の達成を目標に掲げた。英仏海峡を経由する高速鉄道事業への参入では、10年前にドイツ鉄道(DB)が計画を発表したことがあるが、その後に断念した。2021年には、スペイン鉄道(RENFE)が参入意欲を表明したが、その後は発表がなされていない。今のところ唯一の事業者であるユーロスターは、ベルギー・オランダ・ドイツを結ぶタリスを最近に吸収して統合、仏国鉄SNCFの55%子会社となった。新型コロナウイルス危機中には苦しい状況に陥り、2020年と2021年に合計で4億8000万ユーロの損失を記録。2022年にEBITDAで3億3200万ユーロの黒字に復帰していた。 KSM News and Research -
2023.10.12
「モナリザ」の顔料の分析、ダ・ヴィンチが利用した技法を解明=CNRS研究チーム
フランス国立科学研究センター(CNRS)の研究チームはこのほど、レオナルド・ダ・ヴィンチが「モナリザ」などに利用した材料と技法を解明する研究の成果を、米専門誌「Journal of The American Chemical Society」に発表した。ダ・ヴィンチが油絵を早く乾かすために、酸化鉛を利用していた可能性が示された。研究チームのゴンザレス氏はもともと、顔料として使われる鉛白の研究を行っていた。同氏はレンブラントが使用していた鉛白の中に、「Plombonacrite」という珍しい酸化鉛の化合物を発見、それ以前にサンプルとして採取していたルーブル美術館所蔵の絵画の断片を再度分析したところ、「モナリザ」からも同じものが発見されたという。「モナリザ」については、額縁に隠されて見えない部分から採取した0.5ミリメートルに満たない断片を、仏グルノーブルにある研究機関ESRFのシンクロトロンを用いて解析。モナリザから採取された絵の具のサンプルには2つの異なる層があり、白い下地層に多くの酸化鉛が含まれていることが明らかになった。油絵は乾くのが遅いという特徴があるが、研究チームは、「モナリザ」の創作にあたってダ・ヴィンチが、酸化鉛を含む材料で厚めの下地を作り、上部層の絵の具の乗りと乾燥の促進を図ったと思われると結論している。研究チームはさらに、皮膚と髪の治療に関して書かれたダ・ヴィンチの手稿の中に酸化鉛を表す「letargirio di pionbo」という言葉を発見、ダ・ヴィンチには酸化鉛の機能に関する知識があり、また酸化鉛が当時に入手可能であったことわかるとしている。なお酸化鉛は伊ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会所蔵の「最後の晩餐」からも検出されている。 KSM News and Research -
2023.10.12
政府、断熱リフォーム向け支援制度を改正へ
仏政府は、断熱リフォーム向け援助金制度「MaPrimeRenov’」の制度改正を2024年年頭より施行する。低所得層向けの援助を強化し、利用促進を図る。政府は同制度の年間予算を16億ユーロ増額し、50億ユーロに引き上げる。制度改正ではまず、援助の費用対効果を最大化する目的で、1項目のみのリフォームは原則的に援助対象から外すことを決定。唯一、既に一定のエネルギー効率を達成している一戸建て住宅(評価診断DPEでF又はGには入らないもの)について、脱炭素型暖房の導入に限り、支給対象とする。支給額は1000ユーロから2000ユーロに増額される。それ以外では、複数項目のリフォームのみを対象とし、支援を強化する。低所得層の利用の場合の上限は、現行の3万5000ユーロから7万ユーロ(DPEで4段階向上の場合)へと2倍に引き上げられる。工事費に占める援助金の割合も80%まで引き上げられる(DPEでDまで改善される場合には90%)。冷房の導入など夏季を過ごしやすくする項目を追加することも一定の条件下で認める。申請・審査の手続きも簡素化される。建物のエネルギー効率の低さに由来する温室効果ガスの排出量は、国内全体の18%を占めており、政府はその対策を重要課題に設定している。支援措置の強化で、2024年には20万件(2022年には6万7000件)の断熱リフォーム(複数項目)の実現を目標に掲げており、2030年には90万件の実現を目指す。 KSM News and Research -
2023.10.12
労組連合、13日(金)にストを呼びかけ
労組連合が13日(金)にストを行う。16日にボルヌ首相が招集した政労使の全体会議を前に、購買力増強策の実現などを要求する機会とする。全体会議では、低賃金雇用の報酬見直しが主要なテーマとなる。全労組が合流した労組連合の側では、賃金、年金、生活保護手当の幅広い増額を要求。企業側にもあらゆるレベルでの交渉に応じるよう求めている。13日にはストとデモ行進が行われ、各方面で影響が出ることが予想される。全体的な抗議行動に加えて、部門別の要求も重なる。輸送部門では、航空管制官の組合(少数派)がストを行う。当局の要請により、パリ・オルリー空港では40%、マルセイユ・ブロバンス空港では20%、ボーベー空港では15%の欠航が既に決まっている。国鉄SNCFでは、3労組(CGT、SUD-Rail、CFDT)がストを予定。当日の運行状況は前日の17時にならないと判明しないが、経営側は11日の時点で、高速鉄道(TGV)についてはほぼ平常通りの運行が確保されるとの予測を示している。RATP(パリ交通公団)ではCGTがストを呼びかけているが、経営側は運行に影響はないと説明している。教育部門では多数派労組がストを呼びかけている。どの程度の規模になるかはまだ判明していない。高等教育・研究部門でもストが行われる模様。医療部門では、開業医組合が揃って13日に無期限ストを開始する。4月に決まった診察料の引き上げが不十分だと主張し、追加の引き上げを要求している。エネルギー部門では、最大労組のCGTが電力・ガス分野で11日夜からストを行う予定。産別賃金交渉の枠内でストを開始する。他の3労組はストに合流していない。 KSM News and Research -
2023.10.12
パレスチナ・イスラエル情勢を受けて仏国内でも混乱に懸念
パレスチナ・ガザ地区のハマスによるイスラエル攻撃開始を受けて、仏政府は紛争が国内に飛び火することを警戒している。治安当局は1万人の警察官・憲兵隊員を動員し、ユダヤ人学校やユダヤ教会などの施設の警備を強化。ダルマナン内相とアタル教育相は11日にはユダヤ人学校を訪問して、治安確保に向けた決意を確認する。内相はまた、インターネット上の脅迫的な言動なども含めて、監視の目を光らせる姿勢を強調している。フランスでは、ユダヤ人コミュニティとアラブ系コミュニティのいずれも規模が大きく、国内に対立が持ち込まれる恐れがある。ボルヌ首相は10日に下院で行った演説の中で、ガザ地区への人道援助について、テロ組織にフランスの援助が1ユーロたりとも渡らないようにするための検査体制を強化すると言明。監視を強めつつ、人道援助は継続する考えを確認した。イスラエル軍によるガザ地区の封鎖と攻撃が長期化すれば、住民らの悲惨な状況を伝える動画が拡散するなどして、国内でも対立が一段と先鋭化するリスクがあり、政府として、人道援助に尽力してパレスチナに配慮しつつ、イスラエルを支持するというバランスのある対応を進めることを目指している。今回の紛争を巡っては、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」のみが、ハマスとその攻撃について「テロ」という言葉で形容するのを拒否しており、浮き上がった存在になっている。ボルヌ首相は10日の演説で、ハマスをテロ集団と呼び、ハマスによる攻撃をテロ攻撃として糾弾した上で、インフレ亢進などでフランス社会が既に厳しい状況にある中で、各勢力に責任ある対応を呼びかけており、名指しは避けたが、LFIを念頭に置いた発言と考えられる。LFIを主軸とする左派連合NUPES内にもLFI批判が広がっており、社会党は10日、NUPES枠内の予算法案関連の対応協議から撤退することを決め、LFIに対して距離を置く姿勢を示した。ただし、今のところ、NUPESの解消にまで至る展開にはなっていない。 KSM News and Research -
2023.10.12
刑事施設にドローン配達の被害
全国の刑事施設でドローンを利用した密売品の配達事件が増えている。去る9月末には、配達で暗躍する犯罪団がロワール・アトランティック県内で摘発され、4人が逮捕された。実際の規模がどの程度であるのか明らかではないが、2023年にはこれまでで600件のドローン飛来の事案が発生。これは前年の28件と比べて大きく増えている。把捉されずにドローン配達が成功したケースも多いと想像されるため、被害の規模ははるかに大きいと考えられる。手口は、夜間にドローンを飛ばして、受取人が隙間などから手を出して回収するという単純なもので、配達品の重量は500グラム以下が主流という。密売品としては、携帯電話とSIMカードなどその関連品、そして大麻などの麻薬が多い。携帯電話を利用して、塀の中から麻薬配達を手配し、希少性を売り物にして市価の3倍から4倍で売り捌く収監者もいるという。9月末に摘発された配達団は、3兄弟を核に、ドローン操縦技術と刑務所の状況に関するノウハウを売り物として、複数の刑事施設を仕事場として手広く稼いでいたという。かつては、投擲物で届けるというやり方が多かったが、ドローン時代となってそちらは影を潜めているらしい。武器の搬入や爆発物による攻撃などに至った場合のリスクは大きいため、法務省はドローンの操縦の電波妨害による対策の準備を進めている。 KSM News and Research -
2023.10.11
デジタル・サービスの炭素負荷軽減、基準書案のパブコメ開始
デジタル・サービスの環境負荷軽減を目的とする基準書案を対象とするパブコメの募集が始まった。任意制度として導入を予定する。パブコメは、ARCEP(郵便・電子通信規制機関)とARCOM(放送行政監督機関)が共同で1ヵ月に渡り実施する。基準書は、デジタル・サービスの優良業者が達成すべき一連の条件を定める内容で、デバイスだけでなく、サービスの運用段階で生じる温室効果ガスを抑制することを目的として、ADEME(環境・省エネ庁)などの協力を得て策定された。デジタル・サービス部門は今のところ温室効果ガスの発生の2.5%を占めるのみだが、通信量の大幅な増大が見込まれる中で、温室効果ガスの全排出量に占めるその比重は増大することが予想される。特に、ストリーミング配信は通信容量全体の60-65%を占めており、温室効果ガス発生量の抑制に向けて果たすべき役割は大きい。基準書には、ユーザーに動画画質を抑制させる工夫をするようプラットフォーム側に求めるなどの措置が提案されている。パブコメの募集は11月9日で締め切られる。その内容を考慮した上で、最終的な基準書が2024年年頭までに公表される。 KSM News and Research -
2023.10.10
独仏首脳、イスラエルへの支援を表明
ドイツのハンブルクで10月9日から10日にかけて独仏政府の会合が開催されている。初日には製造業部門企業の動向が焦点となり、ショルツ首相とマクロン大統領が一緒に航空機大手エアバスのハンブルク工場を訪問して、省エネ型の「A321neo」などを見学した。直前の8日のバイエルン州とヘッセン州での州議会選挙では国政与党が惨敗を喫しており、ショルツ政権は弱体化している。これまでもフランス政府は、ショルツ首相が連立与党間の調整に時間とエネルギーをとられて、欧州レベルでの協力への取り組みが疎かになりがちだと懸念してきたが、選挙での敗北を経て連立与党間の足並みの乱れがいっそう強まるリスクがある。特に自由民主党(FDP)を率いるリントナー財務相は10日、連立からの離脱も視野に入れた検討を進める方針を示唆した。その一方で、州議会選挙では極右勢力の対応も鮮明になったが、これはフランスも含めた欧州全体に共通の現象でもあり、独仏政府が協力して欧州における極右の台頭に対抗するという形での協力強化を促す要因になり得るとの見方もある。また、両国首脳は7日のハマスによる奇襲を機に戦争状態に入ったイスラエル情勢についても協議し、ハマスによる攻撃と民間人の拉致を批判し、イスラエルへの連帯を表明した。両首脳はさらに、バイデン米大統領、スナク英首相、メローニ伊首相とも電話で協議し、共同声明で、テロリズムはいかなる場合も正当化されえないと宣言、イスラエルへの支援を表明した。さらに、イスラエルに敵対的な他の勢力がこの状況に乗じてイスラエルを攻撃することを強く牽制した。なお10日にはヒズボラが、イスラエル軍によるレバノン南部への砲撃でメンバー3人が死亡したことへの報復として、イスラエル軍の兵舎を砲撃したと発表した。これに対して米国は、イスラエルと新たな戦線を開かないようヒズボラに警告した。 KSM News and Research -
2023.10.10
ベルギー消費者、フランスで越境ショッピング:価格差拡大が背景に
フランスで買い物をするベルギーの消費者が増えている。大きな価格差が生じているのが背景にある。ベルギーの小売業団体Comeosによると、ベルギーの消費者がフランスで購入する食料品は年間に17億ユーロに上っており、これは2019年比で40%増に相当する。フランスとの国境沿いの地方に限ると、増加率は83%に上る。Comeosによると、ベルギー国民の4割近くがフランスをはじめとする外国で買い物をしている。価格差は大きく、同じ買い物でフランスの方が平均で9%安く、主要ブランドの製品に限るとその差は19%に達する。洗剤では27%、冷凍食品では34.7%、ペットフードでは32.8%、赤ワインでは21.4%といった格差も見受けられる。フランスの小売業者の方が価格交渉力で勝っていることや、仏政府による基本的製品やエネルギー価格の抑制措置が価格差を生じさせる一因になっている。ただ、それだけではなく、例えばベルギーでは、レジ係の給与水準がフランスよりも2割高く、人件費の負担が大きい。税負担も大きく、Comeosによると、プラスチック課税で3億5000万ユーロ、容器包装課税で6000万ユーロの負担が小売業者に発生している。小売業者側はこのままでは立ち行かないと懸念を強めている。左翼勢力は食料品に係る付加価値税(VAT)を撤廃するよう要求している。 KSM News and Research -
2023.10.10
文豪が描いた景観保護を理由に風力発電禁止、行政最高裁の判例が確定
行政最高裁(コンセイユデタ)は4日付で、ウールエロワール県内の風力発電施設の建設計画を最終的に禁止する決定を下した。文化的景観の保護を理由として禁止した。国内の陸上風力発電の整備計画を妨げる判例となる可能性がある。建設計画はJPエネルジー・アンビロヌマン社が推進。高さ150メートルの発電機8基を建設する計画だった。この現場は、文豪マルセル・プルーストが20世紀初頭に著した作品の中で描写したイリエ・コンブレー町から5kmに位置することから、作中の風景が保護されなくなると主張する市民団体等が計画に反対。同県県庁は反対派の主張を認めて建設許可の付与を拒否し、これを不服とする計画主体が行政訴訟を起こしていた。2022年にベルサイユ高等行政裁は計画主体側の訴えを退けており、上告審で行政最高裁も下級審の判決を支持し、建設を禁止した。行政最高裁は判決の中で、イリエ・コンブレーの教会尖塔や、プルーストの伯父が造園した庭園が歴史的建造物に指定されていることを挙げつつ、作品に密接にかかわる景観の保護の公益性を認めて、計画禁止の根拠とした。風力発電業界側は、この判例により、建設禁止の理由が増えることを警戒している。 KSM News and Research -
2023.10.09
仏経済省、原子力分野のサプライヤー2社の米社による買収を禁止
仏経済省は5日、原子力分野にバルブを供給する仏2社の買収計画を禁止する決定を下した。戦略的に重要な企業として米社による買収案件を審査の上で禁止した。買収が禁止されたのは、SegaultとVelan SASの2社。前者は仏海軍の原子力潜水艦と原子力空母向けにバルブを供給。後者は、EDF(仏電力)の原子炉向けにバルブを供給している。両社とも、カナダ・ケベック州のVelan社(産業用バルブ)の完全子会社だが、米同業フローサーブ(Flowserve)社が去る2月にVelan社の完全買収(2億4500万ドル)を提案。買収が実現すると、傘下の仏2社の所有権もフローサーブ社に移転することになるため、仏経済省が審査することを決めていた。今回、最終的に買収を禁止することを決めた。SegaultとVelan SASの両社の年商は合計で1億ユーロ(前者が1500万ユーロ、後者が8500万ユーロ)に上り、Velanグループ全体の3分の1を占めている。グループ全体では世界に12工場を展開、1660人を雇用している。フローサーブは禁止決定に失望の念を表明した上で、買収計画を断念すると発表。適切な保障措置を提案したのに禁止されたのは残念であるとし、仏経済省の決定は、外資による直接投資を誘致する仏政府の目標にそぐわないともコメントした。今後にVelan社がどのような反応を示すかが注目される。 KSM News and Research -
2023.10.09
固定通信料金が上昇
固定通信料金が上昇傾向を示している。エネルギー価格の高騰を背景に、携帯に続いて料金引き上げが固定にも波及した。規制機関ARCEPの集計によると、固定サービス(高速及び超高速)の月額平均料金は直近四半期に34.50ユーロ(諸税抜き)となり、前年同期比で1.20ユーロ増加した。10月初めに公表された別の調査(Zone ADSL&Fibre)によると、フリーを除くすべての事業者で料金引き上げがみられた。RED(SFRの格安ブランド)では年額で60ユーロ増と特に値上げ幅が大きく、ブイグ・テレコムでは18ユーロ増、オレンジでは16ユーロ増、SOSH(オレンジの格安ブランド)でも12ユーロ増を記録。SFRの場合は、SFR名義では3%の値上げにとどめたが、REDで21.7%と大幅な値上げを決めた。ただし、ユーザーの料金に対する意識は高く、オリバー・ワイマンの調査によると、フランス人の場合、事業者を切り替えようと思っている人の数は全体の半数を超えており、うち30%は格安ブランドへの切り替えを検討している。料金は最大の関心項目であり、ネットワークの信頼性や付帯的なサービスなどの項目よりも重視されている。 KSM News and Research -
2023.10.09
ノンアルコール・ワインのフレンチ・ブルーム、800万ユーロを調達
ノンアルコール・ワインの普及が目立っている。この分野で先駆的なベンチャー企業フレンチ・ブルーム(French Bloom)はこのほど、800万ユーロの資金調達を完了した。従来の株主に加えて、百貨店大手ギャラリー・ラファイエットを所有するムーラン・ウゼ一族や、レミー・コアントローの創業者の子孫で、シャンパン分野のエキスパートとして活躍するベアトリス・コアントロー氏などが出資した。ノンアルコール飲料の市場規模は2021年に推定で110億ドルに上る(IWSR調査)。ノンアルコール飲料はビールでは浸透しているが、ワイン・スピリッツでは世界市場の2%程度を占めるに過ぎない。フランスではこのところ需要が大きく伸びており、量販店における販売量は、2020年の1億4000万リットルが2021年には2億7750万リットルに増えた。フレンチ・ブルームは当初、妊産婦や何らかの理由でアルコールを飲めない又は飲まない人をターゲットに据えたが、消費の裾野は当初のターゲットを上回る広がりを見せているという。同社は、ノンアルコールのスパークリング・ワイン(白及びロゼ)を生産。グランド・エピスリー(食品小売)と契約を結んでいる。平均価格は29-35ユーロ程度で、高い品質を売り物とする。昨年には10万本を出荷、今年は30万本、2025年には100万本の出荷を目指す。調達資金は増産体制を整えるために充当。日米や中東の市場開拓も目指す。報道によれば、2025年の売上高は3000万ユーロに達する見込みで、同年にはEBITDAベースでの黒字化も目指す。 KSM News and Research -
2023.10.06
補足年金金庫の労使交渉が妥結:国庫への拠出を拒否
民間部門の補足年金金庫Agirc-Arrcoを共同運営する労使は5日、2026年までの期間を対象とする運営方針を巡る交渉で基本合意に達した。支給額の増額等について合意した。合意は、11日深夜を期限として、労使双方の最終承認を経て正式に成立する。Agirc-Arrcoでは一時、赤字収支が続いていたが、立て直し努力が実を結んで現在は黒字収支に復帰している。基本合意では、11月1日付で4.9%の支給額引上げを実施することで合意。インフレ並みの改定に復帰する。これに加えて、立て直しを目的に導入されていた支給額の減額措置を廃止することを決定。これは、満額受給が可能な退職者に2019年から適用されている措置で、退職から3年間に渡り支給額に10%の減額を適用するという内容だった。これを回避するには、1年間にわたり退職時期を遅らせて就労を継続するのを受け入れなければならなかった。この制度が12月1日付で新たな退職者から廃止され、適用中の人については2024年の4月1日付で廃止される。政府は、Agirc-Arrcoに対して、年金改革(定年年限を2才引き上げて64才とする)の「恩恵」により生じる収支改善分を国庫に納めるよう求めていたが、労使はこれには応じなかった。政府は年間10億ユーロの拠出を求めて働きかけていたという。政府は、社会保障会計予算法案に盛り込む形でこの拠出を強制することができるが、その場合は、労使共同運営という原則を尊重しなかったという印象を与えかねず、難しい決断を迫られることになる。 KSM News and Research -
2023.10.06
ミシュランガイドが「鍵(Clef)」マークでホテルをセレクション
星付きレストランのランキングで知られるミシュランガイドが、今度は「鍵(Clef)」マークを使った「最高の滞在経験を提供するホテル」のセレクションに乗り出す。ミシュランガイドはすでに、世界120ヵ国のホテル5000軒超をオンラインで公表している。これは、2018年にミシュランガイドが買収したニューヨークのオンライン旅行代理店Tablet Hotelsのセレクションがベースとなっているが、この5000軒超の中から、現在各地に派遣中の覆面調査員が実地で評価した結果を基に、第1回目の「鍵(Clef)」付きホテルのセレクションを2024年上半期に発表する。この「鍵(Clef)」付きホテルのセレクションは、5つ星ホテルやパラスホテルを網羅するものではなく、「ローカルな滞在経験」、「優れた建築とインテリアデザイン」、「サービス・快適性・メンテの質と安定度」、「他に類のない独自性」、「滞在経験と料金との間の整合性」の5項目を基準に選択されるもので、リゾートやスタンダードホテルは除外され、料金も100ユーロ未満から数千ユーロまで幅広いものとなる見通しだ。ミシュランガイドは現在、ペーパー版ミシュランガイドの売上減少をその他のさまざまなアプローチでカバーする戦略を展開しており、その一環として、「鍵(Clef)」付きホテルのセレクションはミシュランガイドのHPまたはアプリでのみアクセス可能とし、広告の入らないデジタルページで予約サービスを提供して24時間態勢で顧客の要望に対応、予約一泊当たり10-15%のコミッションを徴収する予定(レストランの場合は、予約一件当たり1ユーロ)。 KSM News and Research -
2023.10.06
アルストムの株価急落、キャッシュフローの大幅マイナスを市場が嫌気
仏アルストム(鉄道機器)は5日、4-9月期(2024年3月期の上半期)の業績見通しを発表した。キャッシュフローが大幅なマイナスに転じたのを嫌気し、同社株価は終値で37.58%の急落を記録した。発表によると、4-9月期のキャッシュフローは11億5000万ユーロのマイナスとなった。2024年3月期の通年ではマイナス7億5000万-マイナス5億ユーロとの予測を示した。従来予測は「明確な黒字」だったが、これが大幅に下方修正された。アルストムはその理由として、車両製造事業を中心に、買収を経て引き継いだプロジェクトの日程が重なり、製造の増強に資金が必要となったことを挙げている。4-9月期の11億5000万ユーロのキャッシュフロー赤字のうち、半額は、生産途絶を回避するための在庫の積み増しに由来しており、また、3分の1は、買収したボンバルディア・トランスポートから引き継いだ英国における契約(Aventra)に伴い発生したという。アナリストの中には、この数字について、急激にキャッシュフローが大幅赤字に転じるのは考えにくく、何らかの問題が生じている可能性があると指摘する向きもある。アルストムのデルピCFOは、市場の失望に理解を示した上で、好機があれば資産の売却も検討すると言明した。アルストムは4-9月期に83億ユーロの売上高(2.7%増)を達成。新規受注は16.8%減の84億ユーロに後退したという。アルストムは4-9月期の業績を11月15日に発表する。 KSM News and Research -
2023.10.05
パリ同時テロのアブデスラム受刑者、ブリュッセル高裁が仏への移送を差し止め
ブリュッセル高裁は3日、パリ同時テロ(2015年11月)の実行犯グループの生き残りで、フランスで終身刑判決が確定したサラ・アブデスラム受刑者(34)からの訴えを認めて、フランスへの身柄移送を差し止める判決を下した。受刑者の人権問題を理由に、緊急審理で移送をひとまず差し止めた。高裁は引き続き本件審理を行って最終的な判断を下すが、判断が出るまでには場合により数年間がかかるとみられている。このまま受刑者がフランスに戻らない可能性もある。アブデスラム受刑者は、2022年7月にフランスでの裁判で「減刑不可の終身刑」というフランスで最も厳しい判決が確定していた。受刑者は、2015年11月の犯行後、土地勘のあるブリュッセル近郊に潜伏していたが、2016年3月18日に、銃撃の末に警官隊により逮捕された。その直後の3月22日にブリュッセルで同時テロが発生しており、受刑者はその準備に関与した疑いが問われていた。受刑者は、ブリュッセルで裁判がある度に、収容先のフランス国内の刑事施設から身柄が移送され、裁判が終わるとフランスに戻るという往復を何度か繰り返していた。今年7月には、ブリュッセル同時テロの控訴審裁判のため再びブリュッセルに身柄を移送されたが、裁判後に、フランスへの送還の差し止めを求める訴訟を起こした。ブリュッセル高裁はその訴えでひとまず受刑者側の主張を認めた。裁判所は、「減刑不可の終身刑」という刑罰が、社会復帰の可能性を事実上閉ざす非人間的な刑罰であり、欧州人権条約に抵触する疑いがあると判断。弁護側は裁判で、家族の住むベルギーでの収監が妥当であると主張していたが、裁判所はこの主張も認めた。なお、ブリュッセル同時テロの裁判では、検察側は終身刑を求刑したが、裁判所は、逮捕時の警察との銃撃戦に絡んで言い渡された禁固20年の有罪判決に罪を統合することを決定。アブデスラム受刑者がこのままベルギーに留まるなら、この禁固20年とフランスで下された終身刑が「減刑不可」の条件なしで執行されることになり、将来的な出所の展望も開ける。なお、受刑者は、ブリュッセル同時テロ裁判の控訴審有罪判決を上告せずに受け入れている。 KSM News and Research -
2023.10.05
BNPパリバ、「デジタル・ユーロは限度額を500ユーロに」
について、限度額を500ユーロに設定するべきだとする見解を示した。「デジタル・ユーロ」は、現金を補完する新時代の決済手段を万人に提供するという構想で、欧州委員会が去る6月に法令案を公表し、現在は政治的な協議の段階に入っている。2027年のサービス開始が目標となっている。これまでのところ、1人が保有できるデジタル・ユーロの限度額を3000ユーロに設定することが提案されているが、BNPパリバの責任者は、それでは限度額が高すぎると指摘。顧客の日常の出費を見る限り、500ユーロ程度が適正規模だと考えられると説明した。銀行側には、当座口座の一部がデジタル・ユーロにより浸食され、保有する預金額を削り取られるという危機感がある。BNPパリバの場合は、さらに、欧州諸国の16銀行と共同で、米大手のビザやマスターカードに対抗する決済システムEPI(European Payments Initiative)を「Wero」の名称で立ち上げる計画を進めているが、デジタル・ユーロはこの計画とも一部競合する格好になる。 KSM News and Research -
2023.10.05
マクロン大統領、憲法改正に向けた意欲を再確認
マクロン大統領は4日、憲法評議会で演説した機会に、憲法改正に関する見解を表明した。意欲を再確認した。憲法評議会は違憲審査と選挙管理の監督を行う機関。マクロン大統領は、現行の第5共和政憲法の施行60周年の記念式典の機会に演説した。現行憲法は1958年の制定以来でこれまでに24回の改正の対象となっている。マクロン大統領は、2017年に始まる1期目から憲法改正を通じた国家制度の改革を公約に掲げていたが、果たせずにここまで来た。大統領は今回の演説において、民主主義への期待を満たせる体制作りを目標として、改めて憲法改正への意欲を示した。大統領は具体的に、国民投票の対象を広げる方針を表明。「社会問題」に関する改革も国民投票の対象とできるようにすることを提案した。これだと、現在は対象外である移民政策に関する国民投票の実施も可能になる。大統領はまた、RIPと呼ばれる市民発議の国民投票について、条件を緩和することに前向きの姿勢を示した。現在は、国会議員の5分の1の賛成と、470万人以上の国民の署名を得なければこの方式による国民投票は実施されないが、この足切りラインは高すぎて、実際に投票が行われたことは一度もない。大統領はこのほか、人工妊娠中絶の権利を憲法上に明記する構想について、出来る限り早くに実現したいと言明。さらに、地方分権の推進のための制度改正にも意欲を示した。コルシカ島とニューカレドニアについて憲法上の規定を明確化することも予告した。 KSM News and Research -
2023.10.04
独Volocopter、パリ五輪にあわせて電動垂直離発着機「Velocity」の運航開始を計画
独ベンチャーのVolocopter(電動垂直離発着機開発・製造)は、パリ空港運営ADPとの提携の一環として、来年の五輪開催に合わせてパリで世界初の「空飛ぶタクシー」サービスを導入することを計画している。これに向けてVolocopterでは、自社で開発した電動垂直離発着機「Velocity」の認証を来夏の五輪開幕までに取得することを目指している。「Velocity」は18基の電気モーターから推進力を得る垂直離発着機(VTOL)で、パイロットと乗客用の2座席を装備する。認証を取得できれば、五輪開催期間中に、セーヌ川のオーステルリッツ河畔とパリ北郊ルブルジェ空港間、イッシー・レ・ムリノーのヘリポートとベルサイユ近郊のサンシール士官学校間、ロワシー空港とルブルジェ空港間など5路線で就航する。認証を所得できなかった場合には、乗客は乗せずにデモ飛行を行う許可を取り付ける考え。Volocopterでは今後テスト飛行を進め、パイロットの募集と研修を開始する意向で、近日中にパリに子会社を設置する。これと並行して、2億ユーロの調達を目指して公的投資銀行BPIフランスらとの交渉を進めている。調達した資金は、既存のブルッフザール(バーデン=ビュルテンベルク州カールスルーエ近郊)工場での製造加速とフランスでの工場新設にあてる。フランスの工場では、ブルッフザール工場同様に年間50機の製造を予定する。仏の3つの地域圏が工場誘致に関心を表明している。Volocopterの創業者であるホーク氏は、エアバス・ディフェンス&スペース(エアバスの防衛機器・宇宙機部門)の前CEO(2016-2021年)。同氏は、独仏協力をベースとした国際展開に意欲を示しており、将来的には米国とアジアにも組立工場を設立する意向だ。Volocopterはすでに「Velocity」の展開を希望する世界40都市と了解覚書(MoU)を締結。また、米Bristow社からは「Velocity」2機を受注し、78機のオプションも確保した。パリ五輪での就航に成功した暁には、2024年中にローマで、2025年に大阪とサウジアラビアのネオムで運航を開始する予定。さらに2025-26年からは4人乗りのVTOL開発を開始する。 KSM News and Research -
2023.10.04
マクロン大統領、憲兵隊の配置強化を予告
マクロン大統領は2日、南西地方のトナン町(ロートエガロンヌ県)を訪問した機会に、憲兵隊の配置強化について発表した。大統領に同行したダルマナン内相が大統領に代わって説明した。憲兵隊は、都市部をカバーする警察に代わり、農山漁村地域で警察活動を担当する。かつては軍隊省の管轄だったが、現在では内相の指揮下に置かれている。農山漁村地域の住民が置き去りにされているという孤立感を深めていることに配慮し、平穏に暮らす権利を保障するとの目的を掲げて今回の配置強化の計画をまとめた。具体的には、238の憲兵隊部隊を新設して全国に配置。93部隊は駐屯型、145部隊は機動隊とし、海外県・領土を含めて全国をくまなくカバーする。配置は2027年の現政権の任期切れまでの期間に完了する。配置される3500人のうち、600人の養成が既に終了した。新たに配置される部隊は、環境警察の職務を掛け持ちする形になる。またDV被害に対応するためのトレーニングも強化した。マクロン大統領の反対派からは、広く公共サービスを強化するべきであるのに、憲兵隊の配備強化を優先するのはおかしいといった批判の声も聞かれる。 KSM News and Research -
2023.10.04
エールフランスKLM、スカンジナビア航空の主要株主に
スカンジナビア航空(SAS)は3日夜、エールフランスKLMが投資会社2社と結んで自社に出資すると発表した。エールフランスKLMはスカンジナビア航空の主要株主となる。計画によると、エールフランスKLMはスカンジナビア航空の株式を最大で19.9%取得。1億4450万ドル(1億950万ドルが株式、3500万ドルが社債)を支払う。航空機リース業などを傘下に収める米キャッスルレイク(投資会社)が最大32%株式を取得。デンマークの投資会社Lind Investが8.6%を取得する。3社による合計投資額は11億7500万ドルに上る。デンマーク政府は取引後に26%株式を維持する。スカンジナビア航空は、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3ヵ国の航空会社が合併して1946年に発足した。近年は経営難が続いており、ノルウェーとスウェーデンは撤退、2022年8月に、米アポロ(投資会社)が7億ドルを融資して救済していた。この融資を株式に転換し、エールフランスKLMらがそれを引き受けることで出資がなされる。取引は2024年4-6月期中に完了する見込み。エールフランスKLMはコロナ禍の際に得た公的援助を完済し、企業買収に動く権利を取り戻していた。スカンジナビアはルフトハンザが主導するスター・アライアンスに加わっているが、買収に伴い、エールフランスKLMが所属するスカイチームに入ることになる。エールフランスKLMは、イタリアのITAエアウェイズの買収をルフトハンザに奪われており、スカンジナビアで雪辱を果たす。両社はTAPポルトガル航空の民営化でも争うことになる。 KSM News and Research -
2023.10.03
フランスでも牛が流行性出血病ウイルスに感染
フランスでも流行性出血病ウイルス(EHDV)の感染が広がっている。このウイルスは吸血昆虫が媒介するもので、欧州では従来は感染が見られなかったが、2022年10月にスペインで牛への感染が確認され、それ以来でポルトガルとイタリアでも感染が確認されている。致死率は低いが、感染した牛には食欲減退や呼吸困難、跛行などの症状が出る。ワクチンはまだ開発されていない。このウイルスは人には感染しない。他の反芻動物にも感染する可能性があるが、フランスでは今のところ感染例は報告されていない。欧州で感染が拡大した理由としては、気温上昇により媒介する吸血昆虫の活動が従来よりも長く続くようになったことが考えられる。フランスでは、スペインとの国境沿いに位置するピレネー・アトランティック県とオート・ピレネー県で感染が確認された。欧州連合(EU)の規定により、感染場所から半径150km以内の区域内から反芻動物を飼育目的で移動させることが禁止される(と畜目的では可能)。この規定により、全部で13県の一部又は全域にこの禁止措置が適用された。生きた牛のフランスからの輸入が多いアルジェリアでは、フランスからの輸入を禁止した。このほか、主な輸出先であるイタリアとスペインとの間では、既に感染地域であることもあり、輸出制限の弾力的な運用に向けて協議中だという。 KSM News and Research -
2023.10.03
ムスクテール・グループ、カジノの61店舗買収を完了
食品小売大手の仏ムスクテール・グループは2日、同業カジノより61店舗の買収を正式に決めたと発表した。買収した店舗は、ムスクテールの「アンテルマルシェ」又は「ネット」名義に改められる。カジノは高債務で経営が行き詰まっており、債務再編の一環で今回の売却を決めた。売却される店舗の価値は、併設のガソリン・スタンドを含めて2億900万ユーロに設定された。売却対象の店舗は仏東部及び南西部を中心として全国に点在しており、1日までに一時的に閉店となった。看板の取り換えなどの工事を経て、2週間後に営業を再開する予定という。両社はさらに、第2陣として同程度の規模の店舗の取引を予定している。アンテルマルシェは1億4000万ユーロをひとまず9月30日付で支払い、買収店舗の49%株式を取得。3年以内に買収を完了させて、残金を支払う。この取引が完了すると、全体で119店舗が譲渡される。これに加えて、60店舗程度を取引するオプションも設定された。両社はまた、購買に関する協力の強化も決定。カジノはムスクテールの食肉・水産品の調達力を利用できるようになる。 KSM News and Research -
2023.10.03
農地を区切る生垣の再生プラン、政府が公表
政府は9月29日、農地を区切る生垣の再生プランを発表した。フェノー農相とエルアイリ生物多様性閣外相がモルビアン県(ブルターニュ地方)を訪問した機会に発表した。農地を区切る生垣とはフランス語でhaie(エ)と呼ばれているもので、区切られた地帯をbocage(ボカージュ)といい、かつては田園の風情ある風景の一部をなしていた。降水時の水はけを確保するラインに沿って灌木が生育し、風よけなどの役割を果たしていた。しかし、大規模耕作にとって農機を入れた作業の効率を妨げる障害になると考えられるようになり、手入れにも手間がかかることから、廃止する動きが続いている。戦後以来では70%が消滅し、現在は75万km程度が残るに過ぎない。生垣は現在では、様々な観点からその意義が見直されている。生物多様性の維持においては、特に野鳥に繁殖地などを提供し、またミツバチにも活動の場を与える。大量降水時には水をとどめて被害を小さくしたり、土壌侵食を軽減する役割を果たす。二酸化炭素を吸収する効果もある。そのため政府も、生物多様性保護プランの一環として生垣の振興に乗り出した。2030年までに総延長を差し引き後で5万km増やすという目標を設定。2024年から2027年まで1億1000万ユーロの追加予算を投入し、既存の生垣の保存と、新たな生垣の整備を支援する。生垣を構成する灌木のバイオマス資源としての利用促進も目玉の一つだが、野鳥保護連盟LPOなどの環境保護団体は、灌木林の過剰な利用を抑止する保障が十分でないと問題視。また、援助を少なくとも2030年まで維持するよう求めている。 KSM News and Research -
2023.10.02
トコジラミ繁殖が政治問題に
トコジラミ(南京虫)の繁殖が目立ち、懸念が広がっている。政治問題としてクローズアップされるに至っている。この数日間で、トコジラミの発見の報告がSNS等を通じて拡散している。映画館の中や、高速鉄道(TGV)などの列車内、さらに、パリ・メトロの8号線でも、運転士により発見の報告がなされた。トコジラミの繁殖は以前から問題視されていたが、政府は2017年に、立法措置を講じるのを見合わせ、代わりに啓蒙キャンペーンと電話相談窓口の開設などを柱とする対策プランを導入した。これまでで成果は上がらず、被害は拡大している。パリにとどまらず、全国的にも繁殖が広がっている。トコジラミの問題を熱心に取り上げてきた左翼政党「不服従のフランス(LFI)」からの突き上げは大きく、与党内にも積極的な対応を求める声が上がっている。ボーヌ運輸担当相は9月29日、対策会議を10月初旬に開くと予告。すべての当事者らの協力を得て状況を正しく把握した上で、必要な対策を進める考えを示している。住宅保険の付保の対象にトコジラミ被害を加えることを求める声なども上がっている。 KSM News and Research -
2023.10.02
9月のインフレ率(前年同月比)、4.9%と前年並みに
29日発表のINSEE速報によると、インフレ率(前年同月比)は9月に4.9%となった。前月と同じ水準にとどまった。消費者物価は前月比では0.5%の低下を記録した。エネルギー価格が物価を押し上げる要因となっている。前年同月比では11.5%の上昇を記録。前月の6.8%と比べて値上がりが加速した。原油価格の上昇に連動して自動車燃料価格が上昇。電力料金も、政府による価格抑制措置の縮小を経て上昇した。半面、食料品の値上がりは沈静化の兆しが見え、前月比ではわずかな低下を記録した。前年同月比では9.6%と、依然として大幅な値上がりとなっているが、上昇率は前月の11.2%と比べて鈍化した。工業製品の物価上昇率(前年同月比)は、8月の3.0%が9月には2.8%に低下した。オドBHF証券のエコノミストは、インフレ減速のペースは当面は緩慢だと予想。年末時点のインフレ率を4-4.5%程度とみている。欧州連合(EU)基準のインフレ率は9月に5.6%となり、前月の5.7%からわずかに低下した。減速傾向を示してはいるものの、ユーロ圏全体では、9月のインフレ率が4.3%と、前月から0.9ポイントの低下を記録しており、フランスは全体の中では高めで、しかも減速の勢いは鈍い。エコノミストのジルベール・セット氏はこれについて、フランスでは給与上昇がインフレを押し上げるリスクが他国よりも高いとの見方を示している。 KSM News and Research -
2023.10.02
「49.3」を発動のボルヌ内閣、不信任案が否決に
下院で9月29日、ボルヌ内閣の不信任案の投票がなされた。不信任案の可決には過半数の289票以上が必要だが、賛成は193票にとどまり、予想通りに否決された。ボルヌ首相は、下院で審議中の中期財政計画法案(LPFP)について、採決なしに法案の採択を可能にする憲法上の措置(憲法の条文の名前をとって、俗に「49.3」と呼ばれる)を発動。この発動の場合に、続いて提出された内閣不信任案が可決されれば、法案の採択は白紙に戻るという規定があり、その規定に沿って左派連合NUPESが不信任案を提出した。不信任案には、NUPESのほかに極右RNが賛成票を投じたが、保守野党「共和党」は、左翼勢力と同調するのを拒否し、投票を棄権した。このため、過半数の賛成は得られなかった。マクロン大統領は2022年の再選後、下院で過半数を失っており、国会運営で困難が続いている。「49.3」は、予算関連の法案については無制限で行使できるが、それ以外の法案では1会期について1回のみ行使できる。LPFPは、2023-27年の財政運営の展望について定めるもので、財政健全化の道筋を示す文書という位置づけであり、欧州連合(EU)からの補助金を受け取るための前提条件となる。2022年中の可決を目指したが野党側の抵抗を受けて審議を断念したという経緯があり、今回の審議では、野党側を説得する道を探ったが成果が出せず、結局、「49.3」の行使に踏み切った。国会ではこれから予算関連法案の審議が続くが、そこでも「49..3」の行使が続く見通しであることを政府は認めている。 KSM News and Research -
2023.09.29
出生数、戦後最低の水準まで低下へ
INSEE速報によると、8月の出生数は1日当たりで1896人となり、前年同月比で8%減少した。1-8月期では、出生数は前年同期比で7.2%の減少を記録。この調子だと、2023年通年の出生数は70万人を割り込む見通しで、戦後で最低の水準まで低下する。なお、前年の2022年にも、出生数は前年比2.2%減の72万6000人まで後退していた。出生数は、ピークとなった1971年に比べると20.8%の減少を記録。フランスは2010年代には、近隣諸国と比べて高めの出生数を維持していたが、その時期と比べても12.8%の後退となる。出産可能年齢の女性の数には大きな変動はなく、出生数の減少は出生率の低下に直結している。合計特殊出生率(女性が生涯に出産する子どもの数で示す)は、2022年には1.80まで低下。10年前には、人口の維持に必要な2に近い水準にあったが、急激に低下している。2022年には、25-34才の女性で出産の減少が目立ち、逆に、40才以上の女性による出産のみが増えている。産婦の平均年齢は31.2才まで上昇した(1970年代の半ばには26才、2012年には30才)。出産の高齢化は出生数の低下と同期している。出生数が低下している原因を特定するのは困難だが、保守系日刊紙ルフィガロは、カトリック家族協会(AFC)の依頼で行われたアンケート調査(2023年7月実施)の内容を紹介している。それによると、50才未満の女性の38%が出産を諦めた(2子目以降を含む)と回答。その理由として最も多く上がったのが、託児の困難(出産を諦めた人のうち47%)であり、これに、「財政上又は雇用上の困難」(44%)が続いた。私生活と仕事の両立の困難が出産を思いとどまる動機として最も重要であることがわかる。半面、気候変動の将来を悲観して、また、気候変動に貢献しないようにする目的で子どもを持たないという選択をする人はさほど多くなく、理由としては5番目に過ぎなかった。他方、育児休暇取得の条件が改善されれば、出産を諦めるという選択を見直すかもしれないと回答した人はほぼ半数(48%)に上っている。政府もこの対策に乗り出す可能性を示唆している。 KSM News and Research -
2023.09.29
アバス、Miraklとリテールメディアで協業
仏広告大手アバス(ビベンディ傘下)はこのほど、仏Miraklとリテールメディア分野での協業で提携した。全世界を対象に両社が協力する。Miraklは、B2B及びB2Cのマーケットプレイスを構築するプラットフォーム技術を顧客企業向けに提供している。ルロワ・メルラン(DIY)、オーシャン(食品小売)、デカトロン(スポーツ用品販売)、ギャラリーラファイエット(百貨店)を含む400件のマーケットプレイスの運営に協力しており、トップ200社の月間ビジター数は13億に上る。従業員数は800人、2021年の前回資金調達時の評価額は35億ドルだった。Miraklは、顧客のマーケットプレイスの広告スペースに、2022年に買収のTarget2Sell社が開発の人工知能(AI)技術に基づく広告効果統計をリアルタイムで提供するサービスを組み入れた。アバスは、自社の顧客へのオファーにリテールメディア広告を組み入れる形で、Miraklの顧客の広告スペースに投資を呼び込む役割を果たす。協業の金銭面等の条件については公表されていない。世界のリテールメディア市場は年間20-30%の成長を記録しており、2027年には1600億ドル規模になると期待されている。 KSM News and Research -
2023.09.29
マクロン大統領、コルシカ島の自治拡大を約束
マクロン大統領は28日、コルシカ島議会で演説し、コルシカ島の自治拡大に向けた政府の見解を表明した。分離独立には応じない考えを示しつつ、島の独自性を認めて自治権を拡大する方針を示した。大統領は、第2次大戦時のコルシカ島解放から80周年を迎えるのを機にコルシカ島を訪問。コルシカ島議会での演説では、コルシカ島の地位について憲法上に規定することを提案。「国(フランス)に対立する自立や、国のない自立」は認めないとした上で、フランス共和国の中にあって十全な独自性をコルシカ島に認めると説明。そのための憲法改正を行うと約束した。具体的には、コルシカ語を共同公式言語にするという要求に対して、「多言語教育の公共サービス」の創出を提案。不動産投機対策として非島民のフランス人を対象にした「居住権」の付与制度を導入するとの構想については、不動産投機の問題の存在を認めた上で、税制上の手段を中心として対策を講じることを提案し、要求には応じなかった。民族主義勢力が「コルシカ民族」の存在を憲法の中で認めることを要求していることについては、「コルシカ島の歴史、言語、文化のコミュニティ」という表現を提案。立法権をコルシカ島議会に委譲することを求める要求については、国の規則を島に適した形に改めることをより簡単に、また実効ある形で行えるようにすることを提案した。大統領は、コルシカ島議会を構成する政治勢力に対して、6ヵ月以内に、改憲法案について政府との合意を形成するよう促し、「タブーは設けないが、共和国の理想に基づいて行う」と説明した。政府は2022年に、コルシカ島の政治勢力との間で協議を重ねており、大統領の演説はその協議のまとめという位置づけになる。コルシカ島の民族主義勢力は概ね大統領の見解表明を、開かれた姿勢を印象付けるものだとして歓迎しているが、今後に各論に入ったところで対立が鮮明になる可能性も残る。 KSM News and Research -
2023.09.28
仏政府、学校いじめ対策プランを公表
ボルヌ首相は27日、学校いじめ対策プランを公表した。このところ事件が多く発生していることを重く見て、予防、検出、制裁の3つを軸に、踏み込んだ対策を講じる姿勢を打ち出した。まず、学校だけでなく、警察・司法、ソーシャルワーカーに至る関連部門で対応力を強化するためのトレーニングを進める。スポーツクラブや医療関係者にも、いじめの予防や検出に向けた努力や協力を求める。サイバーいじめについては、中学1年生からリスクと対処法について学ぶ機会を設け、父兄を対象とした啓蒙活動も展開する。また、小学校から、「思いやりと他者の尊重」を教える授業を設ける計画で、1月から各県のモデル校で試験導入し、9月の新学年より全国で展開する。事案発生の場合には必ず提訴を行うという方針も定め、被害者や目撃者の通報の電話窓口を「3018」に一本化する。また、11月9日から、小学3年生以上を対象に自己診断票を配布し、問題の早期検出を進める。学区ごとにいじめ対策室が設置され、問題が発生した際に学校をサポートする体制を整える。サイバーいじめの場合には、加害者のアカウントを6ヵ月間(再犯の場合は1年間)停止し、スマホも没収するという制裁措置を適用する。これは裁判所により決定される処分で、そのための立法措置は現在国会審議中の法案に盛り込まれている。加害者には研修への参加が義務付けられ、父兄にも保護者としての義務の周知を徹底する。 KSM News and Research -
2023.09.28
執刀医は男性より女性の方が安全
執刀医は女性の方が男性より事故のリスクが少ない。医師の賠償責任保険大手ブランシェが26日に発表した集計結果から明らかになった。ブランシェには開業外科医の半数に相当する7000人(外科医及び麻酔医)が加入している。ブランシェの保険加入者を対象にした集計では、女性執刀医のリスクは男性に比べて43%低い。諸外国でなされた調査も同様の傾向を示している。ブランシェはその理由として、重大事故の8割では、コミュニケーション不足による人的要因が発生原因となっていることを挙げて、女性の方がコミュニケーション面のスキルが高いことが関係しているとの見方を示している。全体として、ブランシェの加入者の事故発生率は低下傾向にある。2021年には、1人につき3年に1回という頻度だったが、現在ではこれが4年に1回まで減っている。医師の若返りが進んでいることと、専門分化が進み、安全性がそれだけ高まったことがあるという。事故発生のリスクは一部の加入者に偏っており、年間に2000件程度を数える保険事故申告のうち、半分が1割の加入者に集中している。 KSM News and Research -
2023.09.28
仏政府、2024年予算法案を閣議決定
政府は27日、2024年予算法案を閣議決定した。予算法案は2024年の経済成長率を1.4%に設定。この数字はかなり高めで、楽観的過ぎるという批判の声も聞かれる。税制面では、マクロン政権が2017年の発足時より重視してきた減税が小休止したのが目立った。法人向けでは、付加価値を課税標準とする地方税CVAEの段階的な撤廃のペースが鈍化。2024年の減税額は10億ユーロと、全廃の場合と比べて4分の1の規模に縮小した。最高税率は0.375%から0.28%へ引き下げられる。その一方で、農業機械等と建機等向けの軽油の優遇税制の縮小により、通年で1億7000万ユーロの税収増を確保。また、高速道路と空港を対象にしたインフラ課税の導入(6億ユーロ)が盛り込まれた。これらは、気候変動対策を口実になされ、税収は対策費用に充当される建前となっている。この措置については、高速道路使用料等の増額を通じて、家計に負担が転嫁されることを懸念する声もある。家計向けでは、中流家庭を念頭に置いた20億ユーロの減税措置が2025年に延期された。半面、所得税課税最低限等のインフレ率並み改定が実施され、物価上昇に伴う賃上げが課税強化を招かないよう配慮がなされる。これによる国の負担分は年間60億ユーロに上る。他方、物価上昇に連動する形で、付加価値税(VAT)税収は前年比で100億ユーロ増えて2190億ユーロとなる。インフレで国が太っているとの批判の声に対して、ルメール経済相は、所得税課税最低限等のインフレ率並み改定に加えて、年金を含む各種の社会給付の支給額の増額による国の負担増が、VAT増収の2倍を超える規模に達していると指摘し、儲け過ぎという批判は当たらないと反論している。支出面では、大幅な節減は見送られた。財政赤字の対GDP比は、2023年の4.9%(予定)に対して、2024年には4.4%まで縮小し、支出の増加率は実質(物価変動の影響を除外)で0.5%増にとどまる。ただし、エネルギー価格の抑制措置等の特別措置を除外して比較すると、支出は実質で2.2%の増加を記録しており、支出を十分に絞り込んでいないとする批判の声が内外で聞かれる。ちなみに、エネルギー価格の抑制措置の段階的な廃止だけで、2024年中の支出削減効果は150億ユーロに上るという。他方、支出項目をみると、気候変動対策関連で70億ユーロ、教育省予算(教職員の待遇改善など)で39億ユーロ、国家主権にかかわる省庁(法務省、軍隊省、内務省)で50億ユーロの増額が認められるなど、予算増の項目も多い。また、金利上昇に伴い、国債費は100億ユーロから480億ユーロへ膨張する。国家公務員の数は、2023年の1万790人増に続いて、2024年にも8273人の増加を記録する見込みで、構造的な改革努力の効果は薄い。 KSM News and Research -
2023.09.27
仏政府とパリ首都圏、公共交通機関の財源巡り合意:Navigoは月額86.3ユーロに値上げ
仏政府とイルドフランス地域圏(パリ首都圏)は9月26日、公共交通機関の財源に関する多年次合意を結んだ。2024-31年を対象とする合意を結び、財源の安定化を図った。合意には、次期大統領選が行われる2027年に再検討を行う旨も盛り込まれている。合意には、企業を対象とする公共交通拠出金の増額が盛り込まれた。0.25ポイントの引き上げが対象期間を通じてなされる。現金給与総額の3.2%(パリ市内の場合)相当が徴収される。収入増は年間で3億8000万ユーロに相当する。さらに、イルドフランス地域圏は宿泊税の増税も実施。パリ市内の3つ星ホテルの場合で、宿泊税は1泊・1人当たりで1.9ユーロから5.7ユーロへと大幅に引き上げられる。年間で2億ユーロの増収が見込まれる。他方、関係する自治体(地域圏、県、パリ市)は、向こう5年間について、公共交通関連の予算を「インフレ率+2」%増額することを約束。その後は2031年までインフレ率並みの増額を実施する。これは、この予算の51%に貢献するイルドフランス地域圏では、5年間で4億6000万ユーロの拠出増に相当する。パリ首都圏の公共交通機関の定期券Navigoの料金は、2024年年頭より月額86.3ユーロに引き上げられる。現在の84.1ユーロからインフレ率並み(2024年通年インフレ率は2.6%の見込み)の引き上げが実施される。引き上げ幅は2023年に比べるとわずかに小さくなる。 KSM News and Research -
2023.09.27
イリアッド、生成AIに2億ユーロを投資
イリアッド(通信フリーの親会社)を設立した大物実業家のグザビエ・ニエル氏は、人工知能(AI)分野に2億ユーロを投資することを明らかにした。フランスに生成AIのエコシステムを構築する意欲を示した。イリアッドはこのためにスパコンなどを導入。クラウドサービス子会社のScalewayを足場に、AI開発に必要な計算力を確保する。また、パリ市内に生成AIの開発に当たる研究機関(コードネーム「Sphere」)を設置し、1億ユーロの予算を投入する。ニエル氏は、「多くはインターネット大手出身の国際的に知られた」人材を招致すると言明。フランスの強みとして、優れた公的教育・研究機関があり、人材が豊富であることを挙げた。イリアッドはまた、ニエル氏のインキュベーター「ステーションF」を会場に、11月17日にAI分野の欧州規模のカンファレンスを開催すると予告した。ニエル氏はまた、AI分野で活発に仏ベンチャー企業に対して投資をしており、これまでの投資額は累積で1000万ユーロを大きく超えるとみられている。大規模言語モデルを開発のミストラルAIなど数社に投資している。合計で2億ユーロという投資額については1桁足りないという声も聞かれるが、ニエル氏はこれを最初の一歩であるとし、これから追い上げることに意欲を示した。 KSM News and Research -
2023.09.27
パリの老朽化住宅事情
日刊紙ルパリジャンは26日付で、パリ市の老朽化住宅対策について報じた。老朽化した建物が突然倒壊する事件は、全国でも散発的に発生している。マルセイユ市(2018年)やリール市(2022年)の事案が記憶に新しい。パリでも、民間部門の集合住宅はその81%が築100年以上を経過しており、適正に保守がなされていない場合には、重大な事故が発生するリスクをはらんでいる。パリ市では、パリ市が設立した非営利団体APURが協力して、2008年以来、住宅建物の老朽化予防を目的とした監視制度が運営されている。水道料金未納、消防の出動、建物内に小面積の賃貸物件が占める割合といった10項目程度のデータを突き合わせて、住宅管理組合の機能不全が疑われる「破綻建物」の予備軍を洗い出す。その上で、実際に建物を検査するなどして、要注意の建物を特定し、改善のための対策に乗り出す。2022年時点では監視対象の建物が264棟に上っており、これは、市内の民間部門の住宅建物(4万9000棟)の0.5%に相当する。パリ市は、住民からの通報も受け付けており、年間で4000-6000件の通報が寄せられるが、すべての通報案件について、例外なく調査を実施している。即時退去命令が出るケースは、稀ではあるか数年に1件発生している。APURがリストアップした物件の4分の3は18区に集中している。2000年代に進められた整備計画の成果で、サブスタンダードの建物が密集した場所などは姿を消しているが、個々の建物では、区分所有が破綻して老朽化が急速に進んでいるものも見受けられる。パリ市は、公的援助により営繕を支援したり、悪意のある所有者からは建物を徴用して社会住宅に鞍替えするなどの対応を進めている。 KSM News and Research -
2023.09.26
高校生のいじめ死事件:ベルサイユ学区の問題書簡、55件に上っていたことが判明
アタル教育相は9月25日、ベルサイユ学区を訪問し、いじめを経て自殺した高校生に絡んだ件で、調査結果の一部を発表した。2022年度にベルサイユ学区がいじめ関連で父兄に送付した120件の書簡のうち、55件に問題があったと明らかにした。この事件では、いじめ問題で苦しんでいた高校生の両親が学校側に相談したところ、両親を非難する内容の書簡を学区から受け取っていたことが自殺事件を経て明らかにされ、物議を醸していた。この書簡は、「今後は敬意のある建設的な態度で臨む」よう両親に促し、虚偽の訴えは刑法による処罰の対象になる、などと指摘して、両親側に圧力をかける内容だった。教育相はこれを「恥ずべき書簡」と形容し、真相究明のための内部調査を行わせていた。調査の結果は10月初旬に提出される予定。問題の書簡は、ベルサイユ学区の法務部が作成したもので、学区のナンバー2である人事担当責任者が署名していた。「敬意ある建設的な態度で臨む」よう求めるといった文言は、学区側が特定の場合を想定して作成した書式集の一部であり、これが不適切な状況で用いられていた件数が55件を数えていたという。ベルサイユ学区は、生徒と父兄による虚偽の告発がきっかけとなって、イスラム過激派により中学校教諭が斬首される事件が発生したところでもあり、学区側がモンスターペアレントを想定して準備した書式が暴走した可能性もある。その一方で、生徒等から告発を受けたため学区側に法務支援を求めた教員らからは、両成敗的な譴責の言葉を伴う法務支援決定の通知を受け取ったとする証言が多く寄せられており、学区側が、教員と父兄の両方に背を向けて保身を図っていた疑いもある。関係者の責任追及を含めて、調査の結果が注目されている。 KSM News and Research -
2023.09.26
マクロン大統領、気候変動等の対策プランを説明
マクロン大統領は25日、「エコロジー企画評議会」を招集して、気候変動等の対策プランについて協議した。会合後に基本方針と一連の施策について説明した。大統領は、2期目の任期の目玉の一つとして、首相府下に「エコロジー企画局(SGPE)」を設置し、首相の指揮の下でプラン策定を進めさせていた。今回、広く関連閣僚らを集めた「エコロジー企画評議会」の会合を開き、具体的な取り組みの起点とした。大統領は会合後に、気候変動の現実を見据えて、国としてしかるべき対策を主導すると宣言。同時に、「アクセス可能で公正な」エコロジーの理念を打ち出し、低所得層への援助を通じて、万人が気候変動対策に貢献できるようにすると約束。気候変動対策が市民と景観を守るものであることも強調した。大統領は、具体的なプランの内容については、10月に生物多様性戦略を、12月に気候変動対応プランを公表するとして、詳細な内容には踏み込まず、発表済みのものを含めたいくつかの措置を説明するにとどめた。その中には、エコカー購入奨励金制度の見直し(生産段階の二酸化炭素発生量などを加味)、国内のバッテリー製造工場4ヵ所の整備、国内のヒートポンプ製造部門の整備などが含まれる。ガス焚きボイラは新設禁止対象から外し、ヒートポンプ設置を奨励する制度を整える方針も示した。国内の地下資源(コバルト、リチウム、天然水素など)の洗い出しと活用を通じた自立性の強化の展望を示し、また、石炭焚き発電所をバイオマス焚きに転換する計画も再確認した。大統領はさらに、電力料金の統制権を取り戻すとも言明した。モビリティ関連では、RER(郊外連絡急行列車)を13都市に整備する計画を再確認し、鉄道インフラ関連予算として7億ユーロを確保すると説明した。EVを月額100ユーロでリースするサービスの開始も予告した。 KSM News and Research -
2023.09.26
エールフランスKLM、エアバスA350を50機発注
エールフランスKLMはこのほど、エアバスに対して、長距離旅客機A350シリーズを50機、確定発注した。40機のオプションも設定した。エールフランスKLMは、スミスCEOの着任以来で、ボーイングよりエアバスを優先する姿勢を強めている。2021年12月には中距離旅客機100機の発注を決めていた。今回は、長距離旅客機A350-900とA350-1000を発注。2026-30年にかけて引き渡される予定で、推定によると、50%の値引きがあると仮定しても100億ドルを超える大型発注となる。エールフランスKLMはA350-900をこれまでに41機発注しており、うち21機は就役中となっている。新たな発注を経て、エールフランスはA350の保有機数で世界最大の航空会社となる。A350は、古いエアバスA330と、とりわけボーイング777を後継することになる。燃料消費が20-25%少なくて済み、2030年までに2019年比で人km当たりの二酸化炭素排出量を30%削減するという目標達成の切り札となる。A350は航続距離も長いことから、中国、日本、韓国向けの長距離便で活躍できるという利点もある。ロシア上空の飛行が封じられているため、東アジア向けの直行便は飛行距離が以前よりも長くなった。 KSM News and Research -
2023.09.25
ローマ教皇フランシスコ、マルセイユを訪問
ローマ教皇フランシスコが22日と23日の両日、南仏マルセイユ市を訪問した。移民流入問題で人間的な対応を各国に求めるなど、政治色の強い訪問となった。フランシスコは22日、マルセイユにある船員や移民など海難犠牲者の慰霊モニュメントの前で演説を行った。他の宗教のマルセイユにおける代表者や、難民支援団体の代表者らの列席を得て、フランシスコは、海難事件が相次ぐ中で、言葉よりも行動を訴え、文明の十字路である地中海が血で汚されてはならないとし、悲劇を避けるために、移民に対する連帯と人道的な対応を選ぶよう、各国に対して呼びかけた。フランシスコは23日にはマルセイユの競技場ベロドロームでミサを挙行。信者ら6万人近くが参加した。ミサにはマクロン大統領夫妻をはじめとする政府要人らも列席。大統領はこれより前、23日午前にフランシスコと会談したが、フランシスコはこの機会に、フランスで準備中の尊厳死法案について触れて、安楽死に反対するカトリック教会の立場を再表明するなど、ここでも政治的な主張を緩めなかった。 KSM News and Research -
2023.09.25
上院選挙:保守・中道勢力が過半数を維持
上院選挙の投開票が24日に行われた。保守野党「共和党」と中道勢力が引き続き過半数を確保した。上院選挙は、地方議員らを主な有権者とする間接選挙制で行われ、3年ごとにほぼ半数ずつが改選される。今回は全348議席中、170議席が改選された。開票速報によると、共和党と中道勢力は合計で77議席を確保。左派は61議席を確保した。マクロン大統領派は23議席を獲得した。極右RNは3議席を獲得し、上院への復帰を果たした。全体として、共和党・中道勢力は全348議席中200議席程度を確保し、過半数を維持した。共和党所属のラルシェ議長も議員として再選を果たし、議長職の続投を確実にした。マクロン大統領派では、フィリップ元首相が率いる「オリゾン(地平)」党が勢力を伸ばしたが、狭義のマクロン大統領派は振るわず、議員団の議員数は、24から「20以上」へ後退する見通しとなった。特に、現職閣僚として唯一立候補したバケス市民権閣外相が、海外領土ニューカレドニアで独立派候補に敗退したのが痛手となった。マクロン大統領派は地方自治体における足場が不十分で、それが上院選での苦戦につながっている。左派陣営では、社会党が現状維持(上院全議席中の64議席)、共産党(15議席から17議席へ)と環境派EELV(12議席から15議席へ)が勢力を伸ばした。これら3党の協力に締め出される形で、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」は議席の獲得に失敗した。 KSM News and Research -
2023.09.25
「警察による暴力」反対デモ、全国で3万人強が参加
23日に全国で「警察による暴力」に反対するデモ行進が行われた。パリでのデモには9000人が参加、全国では合計で3万1300人が参加した(警察集計)。今回のデモは、去る6月に発生した警察官による少年射殺事件などを背景に計画された。政党では主に左翼政党「不服従のフランス(LFI)」と環境政党EELVが呼びかけた。「警察による暴力」と「組織的な人種差別」への反対、「公共の場における自由」の擁護などを訴え、警察官による暴力事件に対して厳正な法的処罰を要求した。デモに伴う被害はさほど大きくなかったが、それでも、パリでのデモでは、沿道の銀行が破壊行為の対象になるなどの被害があった。特に、パトカーが数十人の暴徒に襲撃を受け、乗っていた警官が外へ出て、拳銃を構えて解散を命じるという緊張した一幕もあった。政府の側ではこの一件を材料に、警察に対する暴力が度を越した水準にあると改めて糾弾した。これとは別に、23日にはパリで「テクノパレード」が開催された。今年で25年目を迎えたエレクトロポップの音楽パレードで、バスティーユ広場からナシオン広場までのコースを練り歩いた。20万人が参加した。 KSM News and Research -
2023.09.22
会計検査院の賭博報告書:仏国民の半数近くがギャンブラー
会計検査院が21日に発表した賭博に関する調査報告書によると、フランス国民の半数近くが賭博に参加している。参加者の93%が宝くじを購入。賭け事を行う人は25%程度に上っている。掛け金総額は2021年に432億ユーロとなり、2010年以来で42%増加した。主催者収入(掛け金収入から賞金を控除後の金額)は、2022年に129億ユーロとなり、新型コロナウイルス危機前の2019年の111億ユーロを上回った。うち83%がオンライン以外で達成されており、この割合は、2016年以来で7ポイント低下した。主催者収入が最も多いのが宝くじで、55億5000万ユーロと全体のほぼ半分に上る。以下、カジノ・賭博クラブ(26億ユーロ)、スポーツ賭博(22億5000万ユーロ)、競馬(20億6000万ユーロ)、オンラインポーカー(4億4200万ユーロ)の順だった。主催者別では、FDJ(宝くじ)の主催者収入が65億ユーロ(前年比9%)で最も多い。FDJは2019年に上場を経て民営化されたが、宝くじ事業と、実店舗におけるスポーツ賭博の独占を認められている。この独占権については2021年より欧州委員会による本格調査の対象となっている。オンライン賭博(宝くじ除く)の主催者収入は、2022年に21億8000万ユーロとなり、前年比で0.8%の微増にとどまった。オンライン賭博は、新型コロナウイルス危機時に、ロックダウンの影響で大幅に成長しており、年間22-24%の成長が続いていたが、2022年には一段落した。全部で17社が参入している。 KSM News and Research -
2023.09.22
仏国鉄SNCF、高速鉄道の耐用年数延長に着手
報道によると、仏国鉄SNCFは、高速鉄道(TGV)車両の耐用年数延長に着手する。車両により2-10年間の延長を実現し、2025年年頭以降に引き渡される予定の100本の次世代車両(アルストム製)ともあわせて、2032年時点で10-15%の輸送能力増強を図る。フランスでは、高速鉄道の車両の耐用年数は40年間に設定されており、これは諸外国の例と比べると既にかなり長いという。延命計画は社内で「ボトックス」のコードネームで呼ばれており、2026-33年の期間に、200万時間の工事を社内で行い、数億ユーロをこのために支出するという。現有の高速列車用車両は全部で363本(すべてアルストム社製)を数えるが、うち104本で事前調査が行われた。それによると、10年の耐用年数延長が可能であるのは、2階建ての新しい世代の車両23本だけだといい、これらについては、3年間の調査を経て、1本につき4-6ヵ月の工事を行い、10年間の延長を可能にする計画。残りについては、状態により2-4年の延長を目指し、それぞれ2週間から1ヵ月の工事が必要になるという。なお、SNCFは、耐用年数40年を達成するため、毎年、車両の修理に6億2000万ユーロ程度を支出している。 KSM News and Research -
2023.09.22
太陽光パネルの価格が低下:欧州メーカーが苦境に
欧州太陽光発電事業者のSolarPower Europeは、欧州委員会および欧州議会に宛てた書簡の中で、太陽光パネルの価格が新型コロナ禍以前のレベルにまで低下しており、わずかに残る欧州メーカーが苦境に陥っているとして、緊急の支援を求めた。欧州委員会は、グリーンディールの一環である「ネットゼロ産業法案」の中で欧州に30GW規模の太陽光パネル生産能力を取り戻すことを目標としており、SolarPowerはこれを実行に移すことを呼びかけると共に、欧州製の太陽光パネルを中国製パネルの攻勢から保護するような措置(入札において価格以外の基準を考慮し、欧州製パネルを優先するなど)の実施を求めた。太陽光パネルの価格は、原料価格の高騰を受け、2022年には50%近く上昇し、1ワットあたり35ユーロセントにまで上昇。しかし2023年に入り、エネルギー危機にともなって太陽光発電市場が活気づく中で、中国メーカーが製造能力強化に動いたことから、製造能力過剰が生じて価格が低下。現在は中国で1ワットあたり14ユーロセント、欧州で17ユーロセントにまで落ち込んでいる。欧州のメーカーは、エネルギー価格の高騰に苦しんでおり、8月末にはノルウェーのインゴット(シリコン単結晶ブロック)製造企業Norwegian Crystalsが倒産。また同じノルウェーのNorSunも、年末まで生産を停止すると発表している。 KSM News and Research -
2023.09.21
英国国王夫妻、フランス公式訪問を開始
英国のチャールズ国王夫妻は9月20日、3日間の日程でフランスの公式訪問を開始した。国賓待遇で訪問する。国王夫妻は20日朝、オルリー空港に到着。ボルヌ首相が出迎えた。続いてシャンゼリゼを経由して凱旋門に赴き、マクロン大統領夫妻と共に無名戦士の墓所を訪問した。夜にはベルサイユ宮殿で晩餐会が開催され、160人に上る招待客が国王夫妻の訪問を祝った。チャールズ国王は、即位後の初の外国訪問先としてフランスを選び、去る3月に訪問する予定だったが、フランスは当時、年金改革反対の抗議行動で揺れており、警備体制上の理由から訪問が延期されていた。チャールズ国王はこの際、フランスに続いて予定していたドイツの公式訪問は行っており、ドイツが初の訪問先となっていた。フランスと英国の双方は、今回の訪問を、英国の欧州連合(EU)離脱を経てぎくしゃくした二国間関係の改善をアピールする機会として捉えており、マクロン大統領も、信条とする外国元首との親しい関係の構築を目指し、「ブロマンス」風の物理的接触が多めの交流が目立った。 KSM News and Research -
2023.09.21
高額給与の社会保険料減免措置、廃止を求める議員報告書が提出に
高額給与所得者に対する企業負担の社会保険料の減免措置の有用性を疑問視する下院議員作成の報告書が19日に公表された。予算法案の審議の際に廃止の議論が浮上する可能性がある。この報告書は、与党ルネサンス所属のフェラシ下院議員と、左派野党の社会党所属のゲジ下院議員が共同でまとめた。超党派の報告書であるだけに、その提案内容の注目度は高い。雇用促進の観点から、企業負担の社会保険料の減免措置は、低賃金雇用からはじまり、近年では対象が広がっている。現在では、法定最低賃金(SMIC)の3.5倍の給与所得者までが対象となっており、その総額規模は、2022年に736億ユーロに上る。対GDP比でみると、2004年の1.1%に対して、現在では2.8%にまで拡大している。減免措置は社会保障会計に財源縮小をもたらすが、基本的にその全額を国が補填する形となっており、財源浸食はそのまま国に移転されている。報告書は、従来の調査研究を引用しつつ、SMICの2.5倍から3.5倍までに適用されている家族手当関連保険料の減免措置について、雇用創出や競争力向上の効果がほぼゼロか、ごく薄いと指摘。減免措置はSMICの2.5倍までにとどめるべきだと提言した。2.5倍超の減免措置を廃止した場合、年間で15億ユーロの節減が実現するが、その使い道については、SMICの1.6倍までの減免措置の増強(ルネサンスのフェラシ議員)とするか、医療部門等への予算の増額(社会党のゲジ議員)とするかで意見が分かれている。 KSM News and Research -
2023.09.21
ニームの「メゾン・カレ」、世界遺産に登録
ユネスコ世界遺産委員会は18日、サウジアラビアで開いた第45回会合において、南仏ニーム市(ガール県)の「メゾン・カレ(四角い家)」の世界遺産登録を承認した。メゾン・カレは、ローマ帝国のアウグストゥス帝時代に建設された神殿で、正面は長さ26メートル、幅15メートル、高さ17メートル。柱廊の上に三角形のペディメント(破風)を備え、全体の形は直方体をした典型的なローマ帝国時代の建築で、現在まで完全な形で保存されているものは珍しい。これまでの長い歴史の中で、教会や公共施設、私有の施設などとして利用されてきたが、それが建物の保存に貢献した。現在は博物館として一般に公開されている。構造的部分は、屋根材などを除いて、2000年ほど前からそのままの形で残っており、代表的な建築様式が変わらずに受け継がれてきたことが特に評価された。地元のニーム市にとって、世界遺産指定は10年来の悲願の達成となった。ニーム市は、フランス政府の支援を得て、メゾン・カレと近接する円形闘技場及びその周辺地区をセットにして指定の申請を行ったが却下されたという経緯がある。世界遺産委員会からの助言に従い、メゾン・カレに絞って再び申請を行い、悲願を果たした。 KSM News and Research -
2023.09.20
仏企業の公租公課負担、他の欧州諸国と比較して依然として高め
仏経済研究所レックスコードが9月19日に発表した調査によれば、フランス企業の公租公課負担は他の欧州諸国と比較して依然として高い。マクロン政権は2017年以降に企業向けの減税を進めてきたが、フランスに拠点を置く企業の公租公課負担は2019年時点で、これらの企業が創出する付加価値の23%を占めていた。この数字は現在では約21%にまで低下しているが、イタリア(20%)、スペイン(17%)、ドイツ(14%)といった近隣諸国のレベルまでは下がっていない。中でも「生産に係る税」がフランスの競争力の足かせとなっている。フランス企業の「生産に係る税」負担額は、企業が創出する付加価値の6.3%に相当するが、ドイツではこれが0.8%にとどまる。「生産に係る税」は主に地方税収となり、フランスは欧州諸国の中でも「生産に係る税」の地方税収分の対GDP比率が最も高い。仏政府は「生産に係る地方税」の中でもとりわけ負担が大きいCVAEを、2027年までに段階的に全廃すると予告しているが、CVAEが全廃されても、「生産に係る税」負担額は依然、企業が創出する付加価値の4.9%に相当する見通しであり、オランダ(1.6%)やフィンランド(0.5%)よりも高い。これは、他の地方税の課税圧力が大きくなっていることに起因し、例えば地方税の一つである固定資産税はインフレ率にスライドするため、最近のインフレ亢進で2023年は大幅な増税となった。仏政府は新型コロナ危機後の景気刺激策の一部として「生産に係る税」を引き下げた。レックスコードによれば、この引き下げにより2030年の経済成長率は0.6ポイント上昇する。レックスコードに本調査を依頼した中堅企業連合会METIは、近年の減税措置によってフランスの競争力が改善されていることを歓迎しつつ、誘致力のさらなる強化に向け、企業に対する課税率を欧州の近隣国並みとすべきとの見解を示した。 KSM News and Research -
2023.09.20
ワイン生産量、イタリアが後退でフランスが再び世界一に
気候変動を背景に、ワイン生産量で世界一のイタリアは今年、フランスに抜かれて第2位に転落する見通し。天候不良の影響はフランスでも目立ったが、イタリアではさらに大きかった。現時点での予想では、フランスのワイン生産量は2023年に4500万ヘクトリットルとなり、前年比で2%の減少を記録する見込み。これは平年並みの量だという。これに対して、イタリアの生産量は14%減の4300万ヘクトリットル以下になる見通しで、こちらは、2007年や2017年と同程度の不作になる。夏季の猛暑の影響に加えて、収穫期の降水日数が70-75%増となり、病害が広がったのが響いた。人気の発泡酒プロセッコは、糖分不足によるアルコール度数の低下と、労働力確保の困難に祟られた。地域別では、特に中部・南部での不作が目立ち、40-45%の減少を記録する産地もあった。政府は100万ユーロの緊急支援を決めている。イタリアワインは国内の消費減退で苦境にあり、その事情はフランスでも似通っている。イタリアワインの在庫は4900万ヘクトリットル(60億本強に相当)に上り、1年分を超える在庫が積み上がっている。フランスでも、特に消費後退の打撃が大きいボルドーの一部の区画では減反が計画されており、過剰在庫を蒸留により転換・処分する取り組みも始まっている。 KSM News and Research -
2023.09.20
政府、貧困対策プランを公表
政府は18日、貧困対策プランを公表した。困窮者支援団体など市民社会からは失望の声が聞かれる。インフレ亢進の中で、政府がどのような対策プランを提示するかが注目されていた。政府は、団体側から要望があった生活保障諸手当の一律増額を盛り込むのを断念。これに市民社会は強く失望している。20万3000人分の緊急住居の確保については、現状のまま維持されることが決まり、団体側はこれには安堵の念を示しているが、もっと踏み込んだ支援を求める声は根強くある。発表された対策プランは、子どもの貧困化の防止、就業による社会復帰、社会からの疎外の対策、エコロジー移行と連帯の両立の4つを主要な柱に設定。具体的に25項目の措置を盛り込んだ。その中には、学校での朝食の提供の拡大(特に海外県)、1食1ユーロの学校給食の提供、また、既に発表済みの、貧困世帯の子どもがサマーキャンプに行けるよう支援する制度の導入などが含まれる。ソーシャルワーカーの育成拡大(3倍増)の方針も盛り込まれた。貧困対策プランの予算については、従来比で50%増という方針が示されたが、ベルジェ連帯相は19日の時点で、5年間で200億ユーロという金額を提示した。 KSM News and Research -
2023.09.19
仏政府、EV購入補助金の新たなルールを発表へ:中国製EVを対象から排除
仏政府は9月19日、電気自動車(EV)購入補助金の新たなルールに関するデクレ(政令)を官報で発表する。2024年から適用される。新たなルールでは製造にあたってのCO2排出量が考慮される。実質的に、中国の工場で生産されたEVを排除する内容となる。新ルールはADEME(仏省エネ庁)が準備した。鉄鋼やアルミなど原料の製造段階、組み立て時、バッテリー製造、生産地からフランスまでの輸送のそれぞれに係り発生するCO2を考慮に入れる。補助金対象となるEVの製造にあたっての合計排出量は、小型車で9トン(CO2換算)、より大型のEVで14.75トン未満であることを要する。これにより、SAIC(上海汽車)傘下のMG、BYDといった中国メーカーに加え、中国で製造するテスラのようなメーカーのEVは補助金対象から排除される見込み。報道によると、政府は新ルールを通じて、同時に、発電方式の脱炭素化がそれほど進んでいない中東欧を含めた欧州で製造されたEVの保護を目指している。中東欧にEV製造工場を保有している仏ルノーやステランティスを想定した措置と見られる。ただし、ルノーは2024年9月の投入を予定する「R5」において、2025年3月まで中国製のバッテリーを使用するほか、プジョーが来年初頭の投入を予定する「3008」EVバージョンもBYDのバッテリーを使用するなどの複雑な事情もあり、現段階ではどのモデルが補助金対象となるかは定かではない。今後、自動車メーカーは10月10日よりADEMEにEVに関する説明書類を提出。ADEMEはこれを検討した上で、12月15日に補助金対象となるモデルのリストを発表する。ただし、12月15日までに発注され、その後3ヵ月の間に納入されたEVには、従来の補助金ルール(4万7000ユーロ未満のモデルの購入に5000ユーロを支給)が適用される。 KSM News and Research -
2023.09.19
フランス中銀、2024年の仏経済成長率を0.9%と予測
フランス中銀は18日、経済成長予測を発表した。フランスの経済成長率は、2022年に2.5%を記録した後、2023年には0.9%にまで減速し、2024年にも0.9%の成長率が持続すると予想した。2025年には1.3%まで上昇する。2023年の成長率は、仏政府の公式予想(1.0%)とほぼ同じ水準に達する。半面、2024年については、仏政府は先に予測を1.6%から1.4%へ下方修正したばかりだが、中銀はさらに低い0.9%という数字を採用した。中銀は、世界経済の停滞を受けた外需の減速を挙げて、この予測を正当化している。仏政府の公式予測との間には大きな開きがあり、政府が今後、再度下方修正を迫られることも考えられる。インフレ率(EU基準)については、中銀は、2023年に5.8%と、前年の5.9%と比べて高止まりが続くと予想。10-12月期のインフレ率は前年同期比で4.5%まで減速し、次いで2024年には2.6%まで低下すると予想した。2025年には2.1%まで低下する。この予測は政府の公式予想と比べて大差はない。半面、中銀は雇用市場については厳しい見方を提示。失業率が、2023年の7.2%に対して、2024年に7.5%、2025年には7.8%と、拡大傾向に転じると予想した。2024年には雇用数が6万人程度の純減を記録すると予想。2027年に完全雇用の実現(失業率5%程度)を目指す政府にとって厳しい予測となった。 KSM News and Research -
2023.09.19
新型コロナウイルスのワクチン接種キャンペーン、10月2日から
新型コロナウイルスワクチンの接種キャンペーンの時期が繰り上げられた。10月17日の開始予定が10月2日に繰り上げられた。9月15日にルソー保健相が明らかにした。政府は諮問機関の意見を踏まえて繰り上げを決めた。感染力の強い新変異株のEG.5.1(通称エリス)と、とりわけBA.2.86の感染拡大を防止する目的で、早めのキャンペーン開始に踏み切る。足元で感染率が30%の大幅上昇を記録しているという現実があり、従来のワクチンでは効力が低い新変異株に対応する新開発ワクチンによる接種を急ぐ。感染拡大でも重症化は目立っていないこともあり、キャンペーンは、健康上のリスクのある人(高齢者、慢性疾患のある人など)と、そのような人々に接する機会が多い人(医療スタッフ含む)を対象とする。対象者は1200万人から1800万人と想定されている。10月2日の開始時には対象者が優先だが、対象者以外の希望者も接種を受けられる。ただし、従来のように無償接種が維持されるかどうかはまだ決まっていない。新変異種に対応したワクチンは、ビオンテック・ファイザーとモデルナによるmRNAワクチン2種が認可を受けている。仏政府はビオンテック・ファイザーに1350万回分を発注済みで、うち250万回分が既に引き渡されている。11月までにはすべての発注分が納入される見通し。 KSM News and Research -
2023.09.18
いじめで自殺の高校生:アタル教育相、学区側が両親に送付の書簡の内容を糾弾
いじめを受けていた高校生が新学年に自殺した件で、この高校生の両親と学校側の間で過去に交わされた書簡の内容が公表された。学校側が両親に対して脅しともとれる通知を行っていたことが明らかとなった。アタル教育相はこの書簡の内容を強く糾弾し、いじめ対策に全力をあげて取り組む考えを確認した。自殺した15才の少年はパリ首都圏ポワシー市(イブリーヌ県)の高校に通っていた。いじめを受けて通学先をパリに変更したが、新学年を迎えた矢先の5日に自殺した。事件の全容を究明するため教育省監察局による調査が進められているが、そうした中で、去る5月4日に、ベルサイユ学区が両親に宛てて送付した書簡の内容が公開された。両親はベルサイユ学区に宛てて、学校側の無策を問題視し、提訴も辞さないと書簡で通知していたが、これに対する回答として、「学校のスタッフの態度を問題視する」両親の言葉を「許しがたい」と形容。「建設的で敬意ある態度」で臨むよう促し、「虚偽の告発」は重い刑事罰の対象になる、などと付け加えていた。少年の葬儀は15日に行われ、アタル教育相らはこれに参列していた。教育相は16日、ベルサイユ学区が送付した書簡について、「恥ずべき書簡」であると糾弾。いじめへの対応が不十分であることを白日の下にさらすものだと言明し、その改善に向けて全力で取り組む決意を表明した。 KSM News and Research -
2023.09.18
フィリップ元首相が表舞台に、地元ルアーブルでは告訴案件も
フィリップ元首相が積極的にメディア露出を強めている。2027年の次期大統領選挙をにらんだ動きとみられる。フィリップ元首相は、もとは保守野党の共和党の出身で、2017年の大統領選挙から、この選挙で大統領となるマクロン候補の支持に回った。現在は、古巣のルアーブル市の市長に復帰すると共に、連立与党を構成する「オリゾン(地平)」党を率いている。この数日間で、著書を刊行して複数のインタビューに応じたほか、15日に開かれたオリゾンの国会議員・市長らを集めた会合に出席した機会には、中流階級の貧困化防止に軸足を置いた政策を掲げ、ポピュリズムに対抗する形で親欧州派の立場を明確に打ち出した。これと関連して、フィリップ元首相が議長を務めるルアーブル都市圏の元幹部が、元首相らを相手取った刑事告訴を14日に全国管区金融犯罪検事局(PNF)に対して起こした。この元幹部は、ルアーブル市の助役が率いる団体に都市圏が運営を委託したスタートアップ支援組織の案件を担当していたが、乱脈経営や利益相反等を問われる可能性があることを上層部に報告したら、冷遇されて職を失ったと主張。元首相をはじめとする関係者らを、不正利益の取得、着服、モラルハラスメントなどの疑いで告訴した。 KSM News and Research -
2023.09.18
マクロン大統領、教会営繕の募金運動を開始
マクロン大統領は15日、ブルゴーニュ地方を訪問した機会に、小規模な教会の営繕費用を確保するため、募金運動を開始することを明らかにした。16日と17日に行われる「文化遺産の日」のイベントに先立って発表した。フランスでは、大革命を経て教会施設が国有化されたこともあり、1905年の政教分離法が定められる前に建設された教会施設は公共部門に所有権がある。それ以降に建設された施設は宗教団体側に所有権があるという形になっている。このため10万ヵ所程度を数える宗教施設のうち、4万施設余りの所有権が市町村に帰属しており、その保守・営繕の費用も市町村が負担している。ちなみに、全国に154を数える大聖堂(カテドラル)については、87が国の所有で、残りの67のうち大部分は地元市町村の所有となっている。マクロン大統領は、人口1万人未満の市町村による地元の教会の保守・営繕を支援する目的で、4年間に2億ユーロを募金で集める方針を発表。1000ユーロまでの募金について、募金額の75%までを所得税から控除することを認めて、国として拠出を後押しする。この75%という率は、パリのノートルダム寺院火災の義援金集めの際に適用されたのと同じ水準となる。政府は全国の教会施設のうち2500-3000ヵ所について、工事費用の不足に直面している施設としてリストアップしており、まずこれらの施設が支援の対象となる。今回の発表は、23日に予定されるローマ教皇フランシスコの訪仏を意識したものとも考えられる。マクロン大統領はフランシスコがマルセイユで挙行するミサに列席するが、これには政教分離の原則に反するとの批判の声もある。大統領はこの批判について、大統領として列席し、教皇からの祝福は受けないと反論している。 KSM News and Research -
2023.09.15
欧州中銀(ECB)、再利上げを決定:そろそろ打ち止めか
欧州中銀(ECB)は14日に定例理事会を開き、再利上げを決定した。リファイナンス金利が4.5%、上限金利が4.75%、下限金利の中銀預金金利が4.0%に、それぞれ0.25ポイント引き上げられた。中銀預金金利が4%台に達するのはユーロ圏の発足以来でこれが初めて。2022年7月に利上げが始まって以来で、10回の理事会で合計4.5ポイントの利上げがなされた。ユーロ圏の経済環境が悪化する中で、欧州中銀がどのような判断を下すかが注目されていたが、景気対策よりもインフレ対策を優先する形で再利上げを決定した。ラガルド総裁は、「大多数」による決定だと説明しており、理事の間でかなり激しい議論があったことをうかがわせている。ユーロ圏のインフレ率は8月に前月並みの5.3%を記録。物価が高止まりする懸念も生じていた。ラガルド総裁は、「インフレ率は低下を続けているが、まだあまりに長い間、高すぎる水準にとどまるものと予想される」と言明し、利上げを正当化した。欧州中銀は新たなインフレ予測値として、2023年に5.6%、2024年に3.2%とし、2%という目標に近づくのは2025年になるとの見方を示している。ただし、ラガルド総裁は同時に、「現在の金利の水準は、十分に長く維持されるなら、適切な期間内にインフレ率の目標値を達成するのに実質的に貢献しうるものとなる」とも言明し、このあたりで利上げを打ち止めにする可能性を示唆した。 KSM News and Research -
2023.09.15
自治体向け保険Smacl、暴動被害で親会社による救済仰ぐ
6月末に郊外地区を中心に発生した暴動で、自治体向け保険のSmaclは大きな打撃を受けた。親会社のMaif(保険)による救済を仰ぐことを決めた。暴動事件は、警察官による未成年者の射殺事件をきっかけに全国に広がった。市役所や学校などの公共施設が放火や破壊の被害を多く受けた。公共施設の保険を多く引き受けるSmaclでは、損害保険で6300万ユーロ強、自動車保険で150万ユーロの保険金の支払いを迫られた。これは、当初懸念された1億ユーロよりは小さいが、それでも多額の支出を迫られたことで、同社の収支には重大な影響が生じた。破綻を回避する目的で、親会社のMaifは5600万ユーロの劣後債を引き受けることを約束した。次いで、他の株主も加わり、4500万-6500万ユーロの増資が実施される。Maifの出資率は、現在の86%が将来的に90%へ上昇するという。Smaclは2026年の黒字復帰を目指し、人員削減(退職者の補充見合わせにより実施)と契約条件の厳格化を通じたコスト削減を推進する。補償の縮小や自己負担枠の拡大が予定されており、保険加入者の自治体にとって状況は厳しくなる。 KSM News and Research -
2023.09.15
ベルコール、大規模バッテリー工場の建設で20億ユーロ超の資金調達にめど
北仏ダンケルク市に大規模バッテリー工場の建設を計画するベルコール(Verkor)が、新たに8億5000万ユーロ以上の資金調達のめどをつけた。先に取り付けた融資及び補助金を合わせて、総額で20億ユーロを超える巨額の調達が実現する。今回の調達では、新たにオーストラリアの金融大手マッコーリーと、仏Meridiam(資産運用)が出資する。両者は、現在の筆頭株主である自動車大手ルノー(20%)を上回り、新たに筆頭株主となる。このほか、海運大手のCMA-CGMや、大手保険会社が作る戦略投資ファンドが投資を決めているといい、自動車メーカー数社が加わる可能性もあるという。ベルコールは、各社の出資比率等の詳細は明らかにしていない。ベルコールはこれより前、欧州投資銀行(EIB)より6億ユーロの融資を取り付け、さらに仏政府から6億5900万ユーロの補助金の約束を取り付けている。ベルコールは2020年にグルノーブル市で発足。建設を予定する大規模工場では手始めに年間16GWh相当が生産される予定で、うち12GWh相当は出資者であるルノーから予約を得ている。この秋に着工を予定し、将来的に1200人の直接雇用と3000人の間接雇用が創出される見込み。 KSM News and Research -
2023.09.14
ボルドーのワインバーでボツリヌス菌中毒、1人が死亡
ボルドー市内のワインバーでボツリヌス菌中毒が発生した。これまでに12人に症状が発生、1人が死亡し、9人が入院した。早期治療により悪化を食い止めることができるため、当局は顧客探しを進めている。問題の店舗は、ボルドーの中心街にある「Tchin Tchin Wine Bar」で、店舗側が加工したイワシのマリネにボツリヌス菌が繁殖していた。9月4日から10日にかけて顧客に供されたといい、当局ではこの時期に同店に立ち寄った人を、カード決済の記録などから追跡して洗い出す作業を進めている。心当たりのある人には名乗り出るよう呼びかけている。ボツリヌス菌中毒は致死率が5-10%に上る。フランスでは年間20-30件程度と数が少なく、治療薬は戦略的備蓄として軍が管理している。当局の調べでは、店舗側の加工手段に滅菌が不十分であるなどの手落ちがあった。ボルドーでは9日にラグビーW杯のアイルランド・ルーマニア戦が行われたこともあり国際客が多く、被害者の確認が難しくなる恐れもある。 KSM News and Research -
2023.09.14
移民法案巡り左右両陣営が綱引き、マクロン政権は板挟みに
移民法案を巡る対立が厳しさを増している。マクロン政権にとって、対立する要求の間で妥協点を見出すのが困難になっている。左翼系日刊紙リベラシオンは12日付で、移民法案第3条の擁護を求める国会議員らの共同宣言を掲載した。政府がまとめた移民法案の第3条には、人材確保が困難な部門において、就労実績がある不法滞在者の身分の正規化を促進するための措置が盛り込まれているが、共同宣言はその擁護を求めた。左派野党(左翼政党「不服従のフランス」を除く)の20人程度の議員に加えて、与党議員12人が署名している。法案の国会審議に向けた準備では、保守野党「共和党」の協力を取り付けられるかどうかが焦点となるが、共和党はこの第3条について、移民流入の呼び水になるとして強く反発しており、政府がそれに譲歩して内容の修正に応じる可能性がある。左派野党はこれを警戒して今回の共同宣言の発表に踏み切ったが、これに与党議員も賛同していることは、与党と政権の内部でこの問題を巡る対応に足並みの乱れがあることを示している。ダルマナン内相は、身分正規化を認める際の条件を法律でなく政令で定めることとして、原案よりも厳格な条件を設定する姿勢を示し、共和党から協力を取り付けることを狙っているが、共和党の側は、それでは不十分だとして、法律による規定を要求している。左右の野党勢力から出された真逆の要求の間に挟まれて、下院で過半数を持たない少数政権であるマクロン政権の政局運営は一段と厳しさを増している。 KSM News and Research -
2023.09.14
仏当局、iPhone 12の販売を禁止:電磁波の基準超過で
仏全国周波数庁(ANFR)は12日、アップルのiPhone 12の販売を暫定的に禁止した。電磁波の強度が基準を上回っていることを問題視した。ANFRはアップルに対して、遠隔で実行可能なソフトウェアのアップデートを通じて、基準値を達成するよう催告した。欧州連合(EU)では、発せられる電波がどの程度、人体に熱として吸収されるかを示す比吸収率(SAR)の基準値を4W/kgと定めている。計測の結果、iPhone 12では、この値が5.7W/kgに上ることが判明した。ANFRの処分について、バロ・デジタル担当相は、EUの基準は十分に低く、この程度の超過が健康障害を引き起こすとは考えられないと説明し、使用を続けたとしても問題はないとした上で、大手企業といえども規則に従うのは当然であり、所管の当局が手心を加えずに処分を決めたものだと説明。アップルが修正に応じないなら、市中のiPhone 12の回収を命じることも辞さないとも付け加えた。この処分は、ちょうどアップルが新型iPhone 15をリリースするのに前後して下された。iPhone 15は、欧州連合(EU)が決めた規制にも適合する形で、USB-Cを採用したことが新味の一つで、iPadはもとより、他社のスマホ等ともケーブルの共用が可能になった。 KSM News and Research -
2023.09.13
労組CFDTのベルジェ前書記長、クレディミュチュエルでシンクタンクを指揮へ
主要労組CFDTのローラン・ベルジェ前書記長が、大手銀行CMAF(クレディミュチュエル全国連合会)に入ることが決まった。新設の環境・気候シンクタンクを率いる。12日に発表された。ベルジェ氏は54才。10年間に渡り改革派労組CFDTの書記長を務め、去る6月21日にマリリーズ・レオン氏(女性)に書記長職を譲り、退任していた。その去就が注目されていたが、本人は、「インパクトのある職」に就きたいとの希望を表明しており、今回、環境・気候問題に携わる職務に転職した。クレディミュチュエルは共済型の金融機関で、地方金庫を統括するCMAFのテリ会長もCFDT出身と縁があった。新設のシンクタンクは、「クレディミュチュエル全国連合会研究所」との名称で、取締役会に直属の組織となる。ベルジェ氏は15日付で入社し、新組織の立ち上げを指揮する。研究所は、社内及び社外に鑑定力を提供し、クレディミュチュエルの豊富なデータを活用し、提言力のある調査・研究機関となることを目指す。 KSM News and Research -
2023.09.13
CVAEは零細企業について2024年より全廃、ルメール経済相が予告
ルメール経済相は12日、ニュース専門地デジ局LCIとのインタビューの機会に、準備中の2024年予算法案の枠で、企業の付加価値を課税標準とする地方税CVAEについて、零細・中小企業に限り全廃すると予告した。CVAEは、「生産に係る税」の一部として、経営者団体より早期廃止を要求する声が上がっている。政府は2年間で全廃することを約束し、2023年には40億ユーロ相当の減税を実施。2024年に残りの40億ユーロ相当を廃止して全廃する予定だったが、財政健全化を優先するために日程を延期する方針を決めていた。ルメール経済相は今回、再譲歩の形で、零細企業等に限り全廃する方針を明らかにした。CVAEは、年商50万ユーロ以下の企業については、年額63ユーロの定額納税の対象となるが、経済相はこの63ユーロの納税企業について、2024年よりCVAEを全廃すると予告した。これで30万社程度の小規模な企業が課税対象から外れることになる。これはCVAEの課税対象企業のほぼ半数に相当する。この廃止に伴う政府の負担は年間1900万ユーロとわずかだが、負担の割には減税効果をアピールできる利点がある。全体としては2024年中に10億ユーロ相当のCVAEの課税分の削減がなされる見通し。KSM News and Research -
2023.09.13
伊ベネチア市、オーバーツーリズム対策の入市料を導入へ
伊ベネチア市議会は9月12日、オーバーツーリズム対策として、日帰りで訪れる観光客を対象に2024年から5ユーロの入市料を導入することを決定した。支払いはオンラインで可能な仕組みとする。ユネスコは7月末、オーバーツーリズムや気候変動の影響が、世界遺産に登録されているベネチアのたぐいまれな普遍的価値に回復不能の損傷をもたらす危険があるとの理由から、存続が危ぶまれる「危機遺産」への指定を勧告。保全に関する共通の包括的な戦略ビジョンの欠如や、市当局と国の調整不足などを批判していた。なお、ベネチアは2021年にいったん危機遺産リスト登録を免れていた。今回ベネチアを危機遺産リストに登録するかどうかは、今年9月の世界遺産委員会で決定される。市議会はこの入市料の導入により、日帰りで訪れる観光客の数を制限できると期待している。ただし、適用するのは、観光客が特に多い時期(祝日と週末が重なって連休が多い春季、夏季休暇など)に限定し、年間に30日以内とする方針(正確なスケジュールは後日に発表)。また14才未満は対象外とする。ベネチア市のブルニャーロ市長は、これは最初の1歩であり、試験的な対策だとしているが、野党陣営からは、ユネスコの警告に対する場当たり的な対応に過ぎず、5ユーロの徴収でベネチア見学を諦める観光客はいないと批判している。 KSM News and Research -
2023.09.12
バカラ、買収者探しに着手
クリスタルガラスで知られる仏バカラが買収者探しに着手した。2020年にバカラを買収した香港の2ファンド(Tor Investment、Sammasan Capital)が、仏投資銀行メシエ&アソシエに依頼して売却先探しに着手したという。仏経済紙レゼコーが9月12日付で報じた。バカラは1754年、当時のルイ15世国王の命を受けて設立された老舗で、ロレーヌ地方に伝統工房を有する。2005年に米スターウッドの傘下に入り、2017年には中国のFortune Fountain Capitalに1億6400万ユーロで売却されたが、同社は経営を放棄して2020年に姿を消し、バカラが自ら会社更生法の適用を申請して、香港の2ファンドが買収者になったという経緯がある。レゼコー紙によると、香港の2ファンドは売却額を4億ユーロ超とすることを望んでいるが、フランス勢はこれを高すぎると判断し、いずれも買収を見合わせたという。現時点では、アジアと湾岸諸国の投資家数社、北欧の工業部門企業1社、スイスのファンド1社と北アフリカのファンド1社が買収に関心を示しているという。バカラは2022年に3500万ユーロの営業利益を達成したが、関係筋によると、長年の投資不足が祟っており、買収者は、買収金額に加えて、5000万ユーロ程度の追加投資を行う必要があるという。 KSM News and Research -
2023.09.12
ソシエテジェネラル、PDファンドを設立へ
仏大手銀行ソシエテジェネラルはこのほど、カナダのブルックフィールド(PEファンド)との提携で、エネルギー・インフラ部門に投資するプライベートデットファンドを設立すると発表した。4年後までに100億ユーロを運用する計画。プライベートデットファンドは企業向けの直接融資を行うファンドで、リスクが高めの投資案件を対象とすることが多い。新設のファンドは、電力、再生可能エネルギー、データ、エネルギーの貯蔵及び輸送、運輸の各分野の企業向けの資金供給を行う方針で、ソシエテジェネラルとブルックフィールドは自ら25億ユーロの直接融資を行って投資家を募る呼び水とする。両社はまた、新設ファンドに自ら一定額を出資する。ブルックフィールドは運用資産額が8億5000万カナダドル(5億8000万ユーロ)。フランスでは、TDF(放送電波送信)やData4(データセンター)などへの投資実績がある。ソシエテジェネラルでは、投資銀行部門出身のクルパ氏が先頃CEOに就任。クルパCEOは近く、新戦略プランを公表するが、プライベートデットファンドの設立は、CEOの新たな経営方針を象徴する決定と受け取られている。 KSM News and Research -
2023.09.12
100%電動航空機、フランスで普及
100%電動の航空機がフランスで普及している。飛行クラブが積極的に導入した。スロベニア籍のPipistrel社(2022年以来、米Textronの傘下)が開発した2人乗りの電動航空機「Velis Electro」は3年前に欧州当局の型式承認を取得。世界で就役中の100%電動航空機は現在までこれが唯一のモデルとなっている。Velis Electroの就役中の機体のうち、3分の1はフランス登録となっており、フランスでの普及が最も進んでいる。飛行クラブの連合会FFAと、ブルターニュ地方のGreen Aerolease社(航空機リース)が協力して採用を後押ししたのが奏功した。FFAは自ら6機を購入。Green Aeroleaseは20機程度を飛行クラブにリースしている。Velis Electroは重量が428kg、飛行速度は時速160kmで、1時間程度の連続飛行が可能。1機の価格は26万ユーロで、Green Aeroleaseは50機を発注して普及を支えた。同社は現在、35機をフランスのほか、欧州数ヵ国に展開。騒音がなく、近隣住民との関係が良好になることに加えて、燃料費や保険料、整備費などを合算した費用総額が、1時間の飛行当たりで130ユーロと、エンジン機の160ユーロに比べて安いという利点がある。充電も通常のEV用の充電器を利用できる。近く投入されるバッテリーでは、航続距離が延び、1時間30分までの飛行が可能になるという。大手企業がスポンサー契約で援助したり、地元自治体が助成金を出したことも、導入を後押しした。 KSM News and Research -
2023.09.11
政府、所得税課税最低限等のインフレ率並み改定決める
経済紙レゼコーによると、仏政府は準備中の2024年予算法案において、所得税課税最低限等をインフレ率並みに改定する方針を固めた。不人気な実質増税を回避することを決めた。2023年の通年インフレ率はもとよりまだ確定していないが、4.9%程度と高めの水準が続くことが予想されている。2022年には、所得税課税最低限等がインフレ率並みの5.4%と大幅に引き上げられていたが、それよりは小幅でもやはりかなり大きな引き上げになる見通し。ちなみに、この改定幅は2021年に1.4%で、それ以前も10年近くに渡りほぼそれ以下の改定幅が続いていたが、インフレ亢進を背景に、2022年を境にして大幅な改定に転じた。2023年には、所得税課税対象となる最低所得額は独身者の場合で年間1万778ユーロだった(前年の所得額が対象)。所得税課税率は、11%、30%、41%、45%となっており、所得額によりそれぞれの税率の適用区分が定められているが、それらが一律に引き上げられる。この引き上げがなされない場合には、賃金上昇に応じて、それまで非課税だった納税者に課税がなされるなどのケースが生じ、実質増税がもたらされることになる。試算によれば、年間50億-60億ユーロの増税になるといい、増税はしないとの公約を掲げる政府にとって、課税最低限等の据え置きはできない相談だった。 KSM News and Research -
2023.09.11
仏政府、都市郊外の商業地区の再開発を支援
政府は11日、都市郊外の商業地区の再開発計画向けの支援措置を発表する。住宅やオフィスを整備し、緑地化も進める。都市郊外には大規模店舗が集まる商業地区が発達しているが、時代遅れとなり、客足が遠のいているところも多い。景観が優れないという不満の声も根強くある。政府はその一方で、土地の新たな人工被覆化を差し引き後でゼロにするとの野心的な目標を設定しており、そのためには、既存の土地の再活用が重要となる。政府はそうした目的から、自治体と不動産開発業者が主導する再開発計画を後押しすることを決めた。環境配慮型の住宅やオフィスを整備し、商業地区を混成型の活力ある街に生まれ変わらせるという趣旨で、一部の土地は緑地化される。政府は、自前で2400万ユーロの補助金を、調査・立案向けに支給する予定で、支給先となるプロジェクト募集を開始する。公的金融機関のバンクデテリトワールも合計で1500万ユーロを援助する。政府はまた、許認可の手続きの簡素化や迅速化を通じて、プロジェクトの実現を側面から支援する計画。 KSM News and Research -
2023.09.11
仏ケリング(高級ブランド)のピノー一族、米CAAを買収へ
仏高級ブランド大手ケリングを保有するピノー一族の持ち株会社アルテミスは7日、米大手タレント事務所のクリエイティブ・アーティスツ・エイジェンシー(CAA)を買収すると発表した。米投資ファンドのTPGより保有株式を買収する。買収額は公表されていないが、報道によれば、企業評価額を70億ドル程度(負債含む)に設定して買収は行われるという。CAAは1975年の設立。本社を米ロサンゼルスに置き、ロンドン、北京、ジュネーブ、ミュンヘン、トロント、ストックホルムなどに事務所を開いている。ブリットニー・スピアーズ、ビヨンセ、アリアナ・グランデなどの著名歌手、トム・ハンクスやブラッド・ピットなどの有名俳優など、多数のスターのマネジメントを手掛けている。ケリングのCEOを務めるフランソワアンリ・ピノー氏の伴侶である女優のサルマ・ハエックの契約先でもある。アルテミスは、ケリングのほか、プーマ(スポーツ用品)、クリスティーズ(オークションハウス)などの資産を保有しているが、ハリウッドの映画・ショービジネス関連の資産に出資するのは今回が初めて。保有資産の地理上・事業内容上の多角化という戦略に沿って、高い利益率に惹かれて出資を決めた模様。 KSM News and Research -
2023.09.08
仏経済成長、今年後半には減速
INSEEは7日、2023年後半のマクロ経済予測を公表した。景気減速が鮮明になると予想した。経済成長率(前の期比)は1-3月期にゼロ成長まで減速した後、4-6月期には0.5%と大幅な増加を記録していた。ただ、これから年末にかけては成長の勢いは衰え、成長率は7-9月期に0.1%、10-12月期にも0.2%にとどまる見込みという。2023年通年の経済成長率は0.9%となる。政府の公式予測である1.0%に近い水準の成長率が確保される。半面、今年後半の景気減速により、2024年の経済成長の展望は暗くなった。2023年末の生産水準がそのまま続くと仮定した場合で、2024年通年の経済成長率は0.3%となる。政府は公式予測を1.6%に設定しているが、これを実現するには、四半期ごとに0.5%の成長率を達成する必要があり、現状ではかなり難しい。政府が2024年予算法案の策定において、成長率の下方修正を迫られるのは必至で、レゼコー紙は、1.4%とする方向で政府部内で調整が進んでいると報じている。他方、INSEEは、12月時点のインフレ率を4.2%と予測。6月時点の4.4%から緩やかに低下する。インフレ減速は個人消費の下支えとなることが期待できるが、物価の推移の正確な予測は不確定要因も多いため困難だという。KSM News and Research -
2023.09.08
私立託児所の内幕を告発の暴露本が刊行に
私立託児所の内幕を探る調査ジャーナリストの2作がこのほど、同時に刊行された。利潤追求で子どもの福祉が犠牲にされている現状を糾弾する内容となった。託児所大手のPeople&Babyのリヨン市内の施設で、2022年6月に子どもが死亡する事件が発生。事件当日にこの施設を一人で担当していた女性保育士が精神衰弱に陥り、子どもに家庭用洗剤を飲ませるなどして殺したことが判明し、事件は大きな衝撃をもたらした。それから1年余りが経過し、今回出版された暴露本は、具体的な事例に取材しつつ、民間業者が利潤を追求して人員を削り、資材の購入を抑えるなどしていると糾弾。食費を削って十分に食事を与えないといった事例を挙げて、子どもの福祉が犠牲になっているとする主張を展開している。福祉分野では、高齢者施設における同様の入居者虐待の内幕を糾弾する暴露本が先に出版され、業界に大きな打撃と変動をもたらしたという前例もある。託児所を巡っては、上述の殺人事件を経て当局機関が官民の託児所を広く対象に実施した調査でも、問題事案が報告されていた。民間の託児部門は、公共サービスの後退を背景にこのところ急成長を遂げており、Babilou、Les Petits Chaperons rouges、People&Baby、La Maison bleueの4社が特に強い。業界団体は今回の暴露本出版について、内容を精査しなければコメントできないが、業界全体に不正がまん延していると安易に考えるべきではないと説明している。政府はこの件を重く受け止めて、民間施設の検査体制を強化する方針を明らかにした。託児サービスを民間に委ねること自体が悪という論調もある。KSM News and Research -
2023.09.08
アルティス、通信SFRの株式の部分的譲渡を検討か
ルモンド紙によると、アルティス・グループは仏通信大手SFRの株式の一部を譲渡する方向で検討を開始した。ラザード銀行(投資銀行)と仏BNPパリバ銀行に依頼して検討作業に着手したという。アルティスと銀行2社はいずれもこの報道に対するコメントを拒否している。アルティスは、仏イスラエル籍の実業家パトリック・ドライ氏が率いるグループで、フランス事業のアルティス・フランスと、ポルトガル事業をはじめとする外国事業のアルティス・インターナショナルにより構成される。アルティスはデットファイナンスによる企業買収で成長を続けてきたが、金利が上昇局面に入り、債務返済に向けた展望が厳しくなっている。ドライ氏の片腕として活躍したポルトガル人のペレイラ氏を中心人物とする汚職疑惑も浮上しており、ドライ氏としては、財務の健全化が急務となっている。SFRはフランス第2位の通信会社で、携帯加入者数は2050万人、固定サービスの加入者数は650万人に上る。6月末日時点で238億ユーロの債務を抱えるが、足元では年頭以来で携帯加入者数の23万5000人減に見舞われるなど業績が傾いている。ルモンド紙によれば、投資ファンドなど数社が、安定した現金収入の展望にひかれて出資を希望しているというが、競合のキャリア3社は競争規則上の問題から及び腰であるという。アルティスはこのほか、Teads(デジタル広告)やポルトガル・テレコムなど一連の資産の株式譲渡の可能性を検討している模様。逆に、アルティス・フランス傘下のBFM TV(テレビ局)などメディア資産については売却の可能性を否定している。 KSM News and Research -
2023.09.07
フランスの55-64才の就業率、2022年に56.9%
労働省統計機関DARESによると、55-64才の就業率は2022年に56.9%となった。欧州連合(EU)加盟国平均の62.4%を下回る数字で、EU加盟27ヵ国中で17位となった。就業率は長期的に改善する傾向を示しているが、他国と比べると低めの水準にとどまっている。「模範的」とされるスウェーデンでは、55-64才の就業率は77.3%に上る。フランスの55-64才の失業率は5.7%と比較的低い。就業率は、25-49才の層では82.5%に上る。55-64才の層でも年齢により状況はかなり異なり、55-59才の就業率は76.4%と、この層のEU平均と違いはない。しかし、60-64才では36.2%へ急降下し、EU平均と比べると12ポイント低い。フランスでは、1990年代末まで、定年年限が60才と低かった。2000年以降に定年年限が60才から62才に段階的に引き上げられ、年金拠出期間も延長されたことで、60才以上の層の就業率も上昇する傾向にある。定年年限を62才から64才に段階的に引き上げる改革がこの9月1日に導入されており、今後にその効果が現れるものと予想される。 KSM News and Research -
2023.09.07
金利上昇で住宅購入が冷え込み
金利上昇局面の中で、住宅購入が冷え込んでいる。与信を得られない家計が増えた。フランス中銀が4日に発表した統計によると、住宅ローンの新規与信額は7月に120億ユーロとなり、前年同月比で45%の大幅減を記録した。2014年以来で最低の水準に下がった。2年足らず前までは、住宅ローン金利は1%をわずかに上回る程度だったが、現在では償還期間20年で4%を超える状況となっている。25年ローンで月額2000ユーロを返済するという条件だと、2022年9月には53万ユーロを借りられたが、現在は38万ユーロに過ぎない。中古住宅の取引価格も低下傾向にあるものの、住宅購入の購買力が目減りする中で、取引が成立しにくい状況が生じている。政府は融資の冷え込みの対策として、上限金利の改定を毎月実施する形に改めた。これは、欧州中銀(ECB)による利上げが相次ぐ中で、上限金利の改定の頻度を高めることで、銀行側が金利を引き上げて融資をしやすい環境を整えるのが目的だが、貸付金利の上昇はそれ自体、家計にとって打撃となる。その一方で当局機関は、収入対返済額の比率の上限を35%とし、25年以上の融資は行わないようにする方向で銀行側を指導しており、これは銀行側が融資を渋る要因になっている。 KSM News and Research -
2023.09.07
万引きに罰金刑、経営者団体CPMEが歓迎
法務省は去る7月6日、万引きのような盗難に略式手続きで罰金処分を適用する方針を決め、そのための通達を発出した。中小企業が多く加盟する経営者団体CPMEがこのほど、これを歓迎するコメントを発表したことで、一般にも知られるようになった。通達によれば、被害額が300ユーロを超えない盗難案件について、300ユーロの罰金刑が略式手続きにて適用される。万引き等の盗難は、最高刑が禁固3年、4万5000ユーロの罰金だが、軽度の盗難の場合に処罰が決まることはほとんどなく、店舗側も提訴を見合わせることが多いという。略式手続きにおいては、警察官が店舗側の証言やビデオカメラの映像等で確認した上で、容疑者が犯行を認め、盗品を返還した場合について、裁判官の判断を仰ぐことなく、その場で罰金処分を決めて適用することができる。CPMEは、十分に抑止力のある制裁が組織的に適用されれば状況は改善するとして歓迎している。内務省の集計によると、万引きは2022年に前年比で14.7%の増加を記録している。インフレ亢進で購買力を失った人が万引きに走るケースがあるとの見方がある。ただし、万引きの発生件数は、コロナ危機前の2019年と比べると17%少ないという。 KSM News and Research -
2023.09.06
フランス製テレビ番組輸出、2022年に新記録
コンテンツ輸出振興団体のユニフランスが4日に発表した集計によると、フランス製テレビ番組の輸出額は2022年に2億1500万ユーロとなり、前年比で15.4%増加した。2017年の過去最高記録を4.7%上回り、新記録を樹立した。内訳をみると、フィクション・ドラマが8100万ユーロとなり、前年比で40.9%の大幅増を記録した。刑事物連ドラの「HPI」、歴史物連ドラの「マリーアントワネット」、社会派学園物の「Chair Tendre」などのヒット作が牽引力となった。ドキュメンタリーも32.1%増の4900万ユーロを記録。昨年の大幅後退から大幅増に転じた。新型コロナウイルス危機の影響で遅れていた納品がここへ来て立て込んだ影響もある。逆にアニメーションは5.3%減の5760万ユーロに後退、息切れが見られた。ただし、販売の前渡金収入は前年比で50.3%の大幅減を記録。共同制作に係る外国からの資金流入も38.4%減を記録した。これらは、今後にコンテンツの供給が後退する前触れとなっている。前渡金・共同制作分を含めた輸出総額は2022年に3億2000万ユーロとなり、前年比で15%減少した。KSM News and Research -
2023.09.06
ロクシタン、オーナーによる完全買収を断念
自然派化粧品・香水で知られる仏ロクシタン・グループは4日、オーナーであるガイガーCEOによる残り株式の買収計画が撤回されたと発表した。同社株式が上場されている香港株式市場で同日、同社株は一時、29%近くの急落を記録。終値は17.27%安の23香港ドルとなった。ガイガーCEOはオーストリアの資産家。完全買収の噂を背景に、株価は7月末以来で40%の上昇を記録していたが、買収計画の断念で株価は目立って低下した。同社は断念の理由については明らかにしていない。ロクシタン・グループは、中国市場での展開をにらんで2010年に香港市場にて上場した。上場時には7億ドル(6億4800万ユーロ)余りを調達していた。グループはルクセンブルクとジュネーブ(スイス)に本社を置く。南仏プロバンス地方のイメージを前面に打ち出した「ロクシタン」ブランドのほか、Melvita(フランス)、Erborian(韓国)、Elemis(英国)の各ブランドを展開する。ガイガーCEOによる完全買収のほかに、欧州市場で来年にも新たに上場する計画も噂されていたが、こちらについてグループは一切コメントをしていない。KSM News and Research -
2023.09.06
極右RNとマリーヌ・ルペン氏への警戒感が風化=世論調査
左翼系日刊紙リベラシオンがViavoiceに依頼して行った世論調査(8月18日から21日まで層別抽出の1001人を対象に実施)によると、極右政党RNを率いるマリーヌ・ルペン下院議員について、「肯定的に評価している」と答えた人は全体の37%に上った。2年ほど前に行われた前回調査と比べて10ポイント上昇した。「否定的に評価している」と答えた人は51%と過半数を占めたが、この割合はやはり前回調査時より13ポイント低下している。マリーヌ・ルペン氏の資質について尋ねたところでは、「国民に有益な解決策をもたらすことができる」が8ポイント上昇の44%、「大統領にふさわしい人物である」が14ポイント上昇の42%、「普通の人々を代表している」が10ポイント上昇の37%、「フランスを現在の危機から脱出させる能力がある」が8ポイント上昇の35%となっており、いずれの項目でも評価が高まっている。マリーヌ・ルペン氏の政治的な立ち位置についての質問では、「極右である」と答えた人が57%で最も多いが、「右派である」も19%となり、イメージが多少ソフトになってきたことがわかる。他方、RNと左翼政党「不服従のフランス(LFI)」との比較においては、「RNの方が信頼性がある」が36%(「信頼性がない」は19%)、「RNの方が能力がある」が35%(「能力がない」は18%)と、RNの方が肯定的な評価を得ており、逆に、「RNの方が急進的である」は25%(「急進的でない」は27%)、「RNの方が暴力的である」は22%(「暴力的でない」は32%)、「RNの方が危険である」は18%(「危険でない」は36%)と、否定的な項目では、LFIの方がはるかに評判が悪くなっている。これは、マリーヌ・ルペン氏が進めてきた「普通の政党」として認知されることを目指す戦略が奏功していることを示している。LFIとの比較で評価が良好なのは、LFI自体にも問題があるはずだが、リベラシオン紙は、マクロン政権などが極右の主張ににじり寄っているのが一因だなどと分析している。 KSM News and Research -
2023.09.05
仏補足年金金庫(Agirc-Arrco)、共同運営の労使が制度改正の交渉を開始へ
民間部門の補足年金金庫(Agirc-Arrco)を共同運営する労使は5日、制度改正に向けた一連の交渉を開始する。年金改革に対応した制度の手直しを協議する。補足年金金庫は、民間部門の2600万人の給与所得者から保険料を徴収し、1300万人に年金を支給している。基礎部分となる公的年金では、9月1日付で施行された年金改革により、定年年限が62才から64才へと段階的に引き上げられることが決まっており、これに対応して補足年金でも制度を改める必要が生じている。特に、2019年年頭に導入された支給額の増減制度の廃止が焦点になる。これは、補足年金金庫の収支改善を目的に導入された制度で、退職年齢が低いほど、比例して支給額を一定期間に渡り減額するという趣旨。定年年限そのものが引き上げられることから、早期退職の抑止というこの制度の必要性は薄れている。また、補足年金金庫の収支はそれ以来で改善している(2022年には50億ユーロの黒字を記録する見通し)ことを踏まえて、労使は制度の廃止を決めるものとみられている。他方、補足年金金庫の準備金は680億ユーロに上り、その「活用」を求める圧力も高まっている。特に、受給額の低い人を対象にした支援制度への拠出を求める声がある。支給額の増額の是非も協議の対象となる。 KSM News and Research -
2023.09.05
レストデュクール、インフレ亢進で窮地に
困窮者救済団体レストデュクールのドゥレ会長は9月3日、テレビインタビューに答えた機会に、インフレ亢進で収支が悪化していると語り、各方面に支援を要請した。レストデュクールは、人気コメディアンのコリュッシュ(故人)が1985年に設立。困窮者向けの食糧援助に取り組んでいる。インフレ亢進を背景に、食糧援助を必要としている人は増えており、2023年には、前年比で20万人増の130万人に支援を行った。しかし、同じくインフレ亢進により団体のコストも大きく増加しており、収支は悪化している。会長はこのままでは3年後には事業が破綻すると説明。この冬の次期キャンペーン期間中には、受益者数を15万人程度絞り込むことが不可避だとし、政府を含めた各方面に支援を求めた。この呼びかけに対して、食品小売大手のムスクテール(アンテルマルシェ)とカルフールは、新たな贈与を行い、寄付集めにも協力すると約束。ベルジェ連帯相は同日中に、政府の食糧援助総額を今年は1億5600万ユーロに増額することを決めたと説明した上で、レストデュクールには数日中に1500万ユーロの支援を行うと予告した。ドゥレ会長は、この発表を歓迎したが、同時に、3月までの会計年度を収支均衡で終えるためには3500万ユーロが必要だとも説明。1500万ユーロの支援には既定の金額も含まれていることを挙げて、十分な支援とは言えないとの見解を示した。 KSM News and Research -
2023.09.05
仏乗用車新車登録台数、8月に伸びが拡大
仏自動車業界団体PFAによると、フランスの8月の乗用車新車登録台数は11万3599台となり、前年同月比で24.28%増を記録した。納車遅延の問題が解消されつつあり、8月の伸びは、それ以前の各月の伸び(前年同月比で5月が16%増、6月が15%増、7月が20%増)を上回ったが、新型コロナウイルス危機前の2019年8月の水準(12万9300台)には回復していない。なお、8月のEV(BEVとFCV)のシェアは17%、PHEVのシェアは8%だった。1-8月では乗用車新車登録台数は113万2321台となり、前年同期比で16.62%増を記録した。EV(BEVとFCV)のシェアは15%、PHEVのシェアは9%で、いずれも前年同期(それぞれ13%と8%)を上回った。8月のグループ別販売台数は、仏伊ステランティスが8.03%増の3万3156%(シェアは29.17%)、仏ルノー・グループが37.24%増の2万7214台(23.94%)、独フォルクスワーゲン・グループが23.01%増の1万3678台(12.03%)、トヨタ・グループが10.85%増の8155台(7.17%)などとなった。伸びが大きかったルノー・グループでは、特に主力ブランド「ルノー」が51.84%増の1万6508台を記録し、競合のプジョー(ステランティス傘下、11.37%増の1万5911台)を上回った。 KSM News and Research -
2023.09.04
ボルヌ首相、使い捨て電子たばこ「パフ」の販売禁止を予告
ボルヌ首相は3日、ラジオ局RTLとのインタビューの機会に、「パフ」と呼ばれる使い捨て電子たばこの販売を禁止する方針を予告した。近く公表する新たな禁煙対策に折り込む形で禁止すると説明した。「パフ」は、カラフルなスティック型のデバイスで、主に甘口のフレーバー(マシュマロ、わたあめなど)がついている。ニコチンが含まれていないものもあるが、未成年者への販売は既に禁止されている。それでも、調査によると、13-16才のうち13%が吸ったことがあると答えており、ボルヌ首相は、習慣をつけさせて喫煙へと誘い込む手段とパフを位置付けて、その全面禁止に踏み切る考えを明らかにした。欧州ではパフを禁止する動きがあり、ドイツ、アイルランド、ベルギーなど数ヵ国は既に禁止の方針を予告している。フランスでは、電子たばこ(年間市場規模は推定で10億ユーロ超)の販売量の10-15%を占めており、紙巻きたばこ(1箱8-12ユーロ)よりも低い値段で売られている。インフルエンサーによる広報もさかんで、電子たばこ専門店やインターネット販売を通じたあらゆるチャネルで販売されている。その販売の20-25%を占め、2022年には1億ユーロを売り上げたとみられるたばこ販売店では、全面禁止は特に痛手となるが、業界側は、抜け道がないように、すべてのチャネルで禁止を徹底するよう、政府に対して求めている。その一方で、ボルヌ首相は、たばこ税の増税による値上げは予定していないと言明。これは、パフ禁止で業界を説得するための交換条件である可能性もある。 KSM News and Research -
2023.09.04
新型コロナの予防接種、10月17日に再開
政府は10月17日に新型コロナウイルスのワクチン接種キャンペーンを再開する。新たな変異株に対応するワクチンが投与される見込み。対象となるのは、健康上のリスクが高い人(65才以上、子ども、疾患のある大人、妊婦など)と、健康上のリスクが高い人に接する機会がある人(医療スタッフを含む)。季節性インフルエンザの予防接種キャンペーンの開始にあわせて接種を行う。この夏に新型コロナウイルスの感染は拡大する傾向にあり、高齢者施設(EHPAD)の入居者の間でも感染者は増えている。予防接種キャンペーンが10月17日からで間に合うのか疑問もある。その一方で、コロナウイルスはかなりの変異を遂げており、従来のワクチンの効力はある程度低下している。今秋には、ファイザー/ビオンテックやモデルナなど各社がオミクロンXBB.1.5に対応した新製品を投入する予定で、これらは現在主流となっているEG.5.1(通称エリス)にも効果があるものと期待されている。改良を経た新ワクチンが初めて使用される機会となる。 KSM News and Research -
2023.09.04
フランス中銀、2023年経済成長率予測を上方修正へ
フランス中銀は近く、2023年通年の経済成長率予測を上方修正する。ビルロワドガロー総裁が1日に記者団との懇談の際に明らかにした。中銀は2023年通年の経済成長率を0.7%と予想している。ドイツをはじめとする近隣諸国と比べて景気の推移が良好であることから、18日に予定される予測修正の際に上方修正する方針を固めた。政府の公式予測は1.0%となっているが、これまでよりも政府予測に近い数字が採用されることになる。INSEEはこれより前、4-6月期の経済成長率の確報を発表。速報の前の期比0.5%をそのまま確報とした。この成長率だと、下半期の成長率がゼロになったと仮定した場合の通年成長率は0.8%となる。INSEEは翌週に下半期の経済成長予測を公表する予定だが、タベルニエ局長は1日、テレビ局BFM Businessとのインタビューに答えて、4-6月期に高めの経済成長率が達成されたからといって過度の楽観主義に陥るべきではないとし、経済成長率は7-9月期に減速し、10-12月期も格別の成長にはならないとの展望を示した。7-9月期以降にマイナス成長に陥る可能性については、まだわからないとした。 KSM News and Research -
2023.09.01
ナフナフ、会社更生法の適用下に
アパレルチェーンのナフナフ(Naf Naf)が会社更生法の適用下に入った。事業を継続しながら買収者探しを含む再建プランに着手する。ナフナフは1973年にパリアント兄弟が設立。中級どころのアパレルチェーンで、国内に131店舗を展開、従業員数は660人。スペイン(従業員数124人)とベルギー及びイタリアにも進出しているが、これら外国事業は今回の会社更生法の適用対象には含まれていない。ナフナフは2020年初頭にも会社更生法の適用下に入ったが、この時は仏・トルコ資本のSYコーポレーション社による買収を経て救済されていた。2022年には売上高が1億4100万ユーロまで回復したが、新型コロナウイルス危機時に積み上がった店舗テナント料の未払い分に対応するめどが立たず、再び会社更生法の適用に追い込まれた。衣料や靴などのチェーン店舗は同様の理由で経営が厳しく、企業倒産も相次いでいる。足元では、インフレ亢進を背景に、家計が衣料購入の支出を切り詰める動きがあり、格安ブランドに顧客を奪われる展開ともなっている。 KSM News and Research -
2023.09.01
カルセラ、3750万ユーロを調達
医療ベンチャーの仏カルセラ(Carthera)がこのほど、3750万ユーロの調達を完了した。新開発の医療機器「SonoCloud」の第III相臨床試験を行うための資金を確保した。SonoCloudは、厚さ数ミリメートルの小型のインプラントで、脳腫瘍の患者の治療を助ける役割を果たす。デバイスは、手術により脳に接触する形で埋め込まれ、完全埋め込みで自立的に15ヵ月程度に渡り機能する。低出力の超音波を発することで、脳血管関門の機能を一時的に低下させることができ、脳血管関門のせいで投薬がターゲットに到達することが妨げられることがなくなる。効果的なデリバリーが可能になるため、治療効果が向上すると共に、副反応を最小化することができる。膠芽腫の治療のために開発され、第II相治験では、患者の生存率を40-50%高める成果が得られた。第III相治験を経て、2026年にも認可取得を目指す。アルツハイマー型認知症などへの応用にも期待がかかる。カルセラは、ソルボンヌ大学発のベンチャー企業で、発明者のカルパンティエ教授が設立した。今回はシリーズBの資金調達で、名前が明かされていない新たな投資家が1500万ユーロを出資、欧州連合(EU)のEIC(欧州イノベーション評議会)も1050万ユーロを拠出した。残りは既存株主(Panakes Partners、Relyens Innovation Sante、Supernova Invest)などが追加で拠出した。これら既存株主とカルパンティエ氏が資本の75%を維持する。 KSM News and Research -
2023.09.01
政府、輸出振興プランを公表:主に中小企業向けに支援
政府は8月31日、13項目からなる輸出振興プランを公表した。中小企業・中堅企業を中心に、輸出市場の開拓などの動きを支援する。2023-26年の期間に総額1億2500万ユーロの予算を設定した。13項目の措置は、ほとんどが既存の制度の適用拡大や強化を通じて実行される。うち、見習い研修生(デュアルシステム)や新卒者の採用を支援する制度VTEは、輸出プロジェクトを担当する者を採用する場合にも対象となるように改正される。この制度による支援額は、企業にとって年間1万2000ユーロに上る。政府は目標について明らかにしていないが、1億2500万ユーロという総額の3割から4割がこの措置に充当される見込みという。このほか、「フランス2030」投資プランで採用された企業(工業部門を中心とする)への支援額が5000万ユーロに上る。また、1000社の経営者を対象に、輸出支援の1年間余りのプログラムを提供する。戦略的部門(保健、脱炭素エネルギー、半導体など)の200社には特に手厚い支援プログラムを提供、その費用は最大6割まで国が負担する。外国で開かれる見本市出展には、費用の最大3割に相当する助成金が支給される。輸出企業数は2022年末時点で14万5700社を数えたが、政府は2030年までにこの数を20万社に引き上げることを目指している。フランスの貿易収支は2002年以来で赤字が続いており、この1-6月期の貿易赤字も540億ユーロと、過去最大となった前年の890億ユーロと比べて改善したものの、大幅な赤字が続いている。 KSM News and Research -
2023.08.31
仏ソシエテジェネラル銀行、ラグビーW杯記念クレジットカードを発行
仏ソシエテジェネラル銀行は6月初めから、9月8日にフランスで開幕するラグビーW杯のスポンサーとして、記念クレジットカードを発行している。同じく大会スポンサーのマスターカードとの提携により、W杯閉幕まで期間限定で発行する。ソシエテジェネラル銀行は、子会社クレディデュノール銀行とのリテール部門の完全統合を経て、年初から地方単位の編成という形にリテール部門を再編しており、今回の記念カード発行は新体制をアピールする狙いもある。記念カードの前面にはW杯のロゴとともに、マスターカードのロゴが大きくプリントされている。マスターカードは仏市場において競合のビザに遅れをとっており、この機会にフランスでのプレゼンス強化を図る。片や、フランスの全銀行が加盟するカード決済協力団体カルト・バンケールの「CB」ロゴは背面にしかない。カルト・バンケールはビザやマスターカードによる仏市場でのシェア拡大を警戒しており、「CB」ブランドのプロモーション強化でこれに対抗する意向を示している。カルト・バンケールの会長でクレディ・アグリコル銀行副社長でもあるマゾワイエ氏は、今夏初めに「フランスの銀行はすべてCBの発展に共同で責任を負っており、CBロゴを表示していないカードの存在は、この発展を妨げる」と苦言を呈していた。 KSM News and Research -
2023.08.31
メンタルヘルスの仏ベンチャー企業Teale、1000万ユーロを調達
メンタルヘルス管理のサービスを法人向けに提供する仏ベンチャー企業Tealeがこのほど、1000万ユーロの資金調達を終えた。以前からの株主を含む、Alter Equity、Digital Venture(BPIフランス)、Isai、Evolemが資金供給に応じた。ベンチャー企業への資金供給が冷え込む中で調達に成功した。Tealeは、カウンセラーとの相談の手配や、メンタルヘルス向上のための日常的な練習や、定期的な自己診断といったツールをアプリ経由で提供。顧客である法人が、福利厚生を目的に同社のサービスを従業員向けに提供している。Tealeの創業者であるネエルビズ氏は、フランスでは従業員のメンタルヘルス管理に1人当たりで年間3000ユーロがかかっているとの数字を挙げつつ、そうした費用を上流から軽減すると共に、病欠の予防や従業員の維持などの点でもサービスが有益であることを強調する。同氏によると、Tealeの売上高は2022年初頭から2023年初頭にかけて7倍増を記録。この数ヵ月間では収支は黒字を達成しているという。顧客としては、サノフィ(製薬)、カルフール(食品小売)、EY(コンサル)など大手企業も名を連ねる。フランスでは、この分野ではMoka.CareやAlan(インシュアテック)なども進出しているが、同社ではマーケットの規模が十分に大きく、複数の企業が共存できるとみている。 KSM News and Research -
2023.08.31
エアバスとエールフランス、A350の整備事業で協業へ
日刊紙ルフィガロによると、エアバスとエールフランスは、エアバスA350XWBの整備を専門とする折半出資合弁の設立を計画している。計画はコードネームを「Cyrus」といい、欧州委員会や関係各国の競争当局に許可を得るため通知がなされた段階だという。2024年初頭にも事業開始を目指す。合弁会社は、主に機械・電子系統の検査と修理を専門とする。A350XWBはワイドボディの大型長距離機で、現在は550機が世界で就航中であり、受注残は1030機近くを数える。A350XWBの整備事業では、ルフトハンザ・グループが市場シェア40%を握りトップで、エールフランスとエアバス(協力会社を通じて事業を展開)のシェアは各20%となっている。両社が合弁を設立すれば、ルフトハンザと並ぶ規模に躍進できる。エールフランスKLMは、年商140億ユーロのうち10億ユーロ超を整備事業により達成している。グループ内の需要にとどまらず、他社の整備も請け負っている。この事業の営業利益率は4.4%に上るという。両社は合弁化により、主にコスト面でのシナジー効果に期待。エールフランスは10年間で1億ユーロを超える節減効果を達成できると見込んでいる。 KSM News and Research -
2023.08.30
この夏の観光シーズン、フランスは好況
フランスのこの夏の観光シーズンは全体として予想以上の好況を迎えている。公的機関アトゥ・フランス(フランス観光局)が速報を公表した。外国人観光客の回復が需要を押し上げている。米国人観光客は前年比で22%の増加を記録。日本人観光客は140%の大幅増を記録したが、危機前の水準と比べるとまだ45%少ない。欧州諸国の観光客は危機前の水準に復帰した。全体として、インバウンド観光客に由来する収入は2023年通年で640億-670億ユーロに上る見込みで、前年の580億ユーロを大きく上回り、過去最高記録を更新する見通し。国内客の動向も堅調で、国民の67%が7月と8月に休暇旅行・週末旅行に出発した。うち88%が国内観光となっている。ただ、前年と比べるとわずかに後退しており、また、危機前の2019年の水準までは回復していない。収入の増加は料金の増加により支えられており、消費の拡大は実現していない。宿泊料以外の支出は削られる傾向も見受けられ、インフレ亢進が旅行客の行動を束縛している可能性がある。国内の観光地では、やはり南仏の人気が高いものの、フランスの北半分で客足が増える傾向がある。海浜から山間部や田園地方へと旅行客がシフトしつつある様子もうかがえるという。コルシカ島では観光客数が4.5%の減少を記録した。 KSM News and Research -
2023.08.30
Valgo、PFASの回収技術を開発
仏Valgoは、「永遠の化学物質」などと呼ばれるPFAS(有機フッ素化合物)の除去技術をこのほど開発した。INPI(仏産業財産庁)を通じて欧州特許を取得した。PFASは、焦げ付き等を防止するコーティング剤や、水を避けるための撥水剤、消火用の泡消火剤などとして利用され、容器包装や家電などを含めて幅広く使用されている。発がん性や生殖異常誘発、突然変異誘発の疑いがあるが、安定性が高く分解しにくいため、極めて長期間にわたり環境を汚染する懸念が指摘されるに至っている。Valgo社は、産業施設の除染などを行う専門企業で、従業員数は700人、2022年の年商は1億3000万ユーロ。ルーアン市近郊に本社を置くが、この地で2019年に発生した産業用施設の火災(リュブリゾル社)の際に用いられた消火剤の保管を国から要請され、それを機に、PFASを除去する手法の開発に着手した。同社は、PFASを「吸い取る」添加剤を開発。添加剤を水に混ぜ、PFASとの反応により生じる化合物を回収することでPFASを除去する。従来の浸透膜を用いる除去装置と比べて安価でエネルギー消費が少ない点が売り物となる。排水・下水処理施設の需要をターゲットに、2023年末から2024年初頭にかけて商用化に着手する予定。 KSM News and Research -
2023.08.30
伊ENI、仏国内での料金取り過ぎ問題で5000万ユーロを返金へ
パニエリュナシェ・エネルギー仏移行相は8月29日、イタリアのENIが仏国内で展開する電力小売事業における請求額の誤りに関して、ENIが総額5000万ユーロの返金を開始すると発表した。返金の対象となる顧客は約10万人。ENIは、2022年下半期中に契約を更新した顧客について、仏政府の電力小売価格抑制策を請求額に反映させていなかった件で、仏政府から是正措置を求められていた。今週中に3400万ユーロの返金がなされ、残りが後日に返金される予定。エネルギー移行相は同時に、エネルギー価格の上昇を背景にした電力小売業者による便乗値上げの監視を行なっているとし、今のところは便乗値上げの事例は確認されていないと述べた。 KSM News and Research -
2023.08.29
学校での「伝統衣装」アバヤの着用が禁止に
アタル教育相は27日、学校関連の一連の改正を発表した。その中で、アバヤと呼ばれる「伝統衣装」の着用禁止も予告し、注目された。教育相は28日に記者会見を開き、具体的な対応について明らかにした。アバヤは、女性用の丈の長い衣服で、イスラム教世界に関係している。フランスでは、政教分離の建前から、宗教的シンボルを学校において着用することが禁止されており、ヒジャブ(イスラム教徒の女性がまとうスカーフ)等の着用は禁止対象となっている。しかし、近年では、宗教的衣装ではなく、民族・伝統衣装であるという口実で、アバヤを着用する女子生徒が増えており、教育の現場で問題となっていた。教育省はこれまで、学校側に対して、案件ごとに宗教的な意図があるかどうかを吟味して諾否を決めるよう指示してきたが、もっとわかりやすい規則を定めるよう求める声も各方面から上がっていた。政府はそれに配慮し、今回、アバヤやカミス(男性が着用するイスラム教世界に関係する衣服)の学校での着用を一律禁止することを決定。これらを禁止対象のリストに追加した。教職員等はこの決定をおおむね歓迎している。学校側では、9月の新学年に向けて広報ができるよう、早めに細則を定めるよう求めている。 KSM News and Research -
2023.08.29
オーガニック製品、後退続く
オーガニック製品の失速が続いている。インフレ亢進を背景に家計が購買力を失い、オーガニック製品が裁定における最大の犠牲になっているのが響いている。オーガニック食品は従来品と比べて50%ほど割高であり、客足が遠のいている。調査会社Circanaによると、1-7月期では、量販店における販売が数量ベースで13%減を記録。金額ベースでは2%減となっているが、これは価格引き上げの効果が大きい。値上げで客足がさらに遠のく恐れもある。オーガニック製品の販売後退は2022年にも鮮明になっており、今年に入って歯止めがかかっていない。業界組織のアジャンス・ビオによると、2022年の市場規模は120億ユーロで、前年比で4.6%の減少を記録していた。オーガニック製品が全体に占める割合を見ると、この7月時点で3.9%となり、前年の4.6%から後退し、4%台を割り込んだ。3%台は2017年(3.4%)に遡り、オーガニック製品市場は2022年(5.2%)を境に地盤沈下が続いている。業界では、一時のブームで水膨れした製品ラインナップの整理を進めており、供給面の整理が消費をしぼませるという状況が生じている。業界では、そうした動きが一段落すれば、再び成長局面に乗ることも期待できるとみている。 KSM News and Research -
2023.08.29
ミシェル欧州理事会議長、EU拡大の展望を提示
欧州理事会のミシェル議長は8月28日、スロベニア政府主催の恒例の国際会議「ブレッド戦略フォーラム」で講演し、欧州連合(EU)は次の戦略アジェンダを準備するにあたって、拡大に関する明確な目標を定める必要があり、2030年までに新規加盟国を迎え入れる用意を整えなければならないとの見解を披露した。現時点でEUの加盟候補国と認定されているのは、西バルカン諸国(アルバニア、ボスニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア)とウクライナおよびモルドバで、このうち、ウクライナとモルドバは2022年にロシアがウクライナに侵攻した直後の6月に加盟候補国の地位を獲得したという事情がある。EUは今後の欧州理事会会合(EU首脳会議)で拡大問題を協議するが、ウクライナおよびモルドバとの加盟交渉を開始するかどうかが焦点の1つとなる。欧州委員会は秋にこの問題に関する提案を行う予定。西バルカンの5ヵ国はすでに加盟交渉に着手しているが、10年以上も前から交渉している国もあって、待ち時間の長さにしびれを切らし始めている。ミシェル議長はこれらの候補国の加盟受け入れについて、野心的だが必要だと積極的な姿勢を示した。フォーラムに出席していたアルバニアのラマ首相は、議長の発表を歓迎しつつ、近いうちに加盟への前進として具体化することを望むと発言。後発のウクライナの加盟は欧州の和平という見地から「当然」と理解を示した上で、それが西バルカン諸国の加盟を遅らせることになってはならないと釘をさした。またセルビアのブルナビッチ首相は、自国をはじめとする西バルカン諸国が地理的、文化的、経済的に欧州に所属する国々であることを強調しつつ、加盟までの待ち時間の長さに不満を表明、加盟がなかなか認められないために国内で欧州懐疑主義が強まったことを指摘した。ミシェル議長も拡大の遅さが、候補国でも、EU内でも、大きな失望感を招いていると認めた。その上で、EUの新たな「段階的統合」のアプローチにより、加盟候補国が、全ての条件を満たす前でも、防衛や安全保障に関するEUの政策に部分的に参加する可能性が開かれると示唆した。なお、トルコもEU加盟候補国だが、加盟交渉は2018年に凍結されたままとなっている。 KSM News and Research -
2023.08.28
住民税の追加課税、新たに2000市で可能に
政府は26日付の官報に、住民税の追加課税が認められる自治体のリストを公示した。従来のリストに2000市を追加した。住民税は本宅については全廃されており、居住者のいない住宅とセカンドハウスに限り課税が継続されている。人口5万人超の市については、住民税の追加課税(納税額を5-60%の幅で増額することが可能)が認められているが、政府は今回、別荘需要が多い海浜の観光地をはじめとして、住宅の需給がひっ迫する地域を対象に拡大することを決め、26日付で施行した。増税は自動的には実施されず、自治体がそれぞれ、追加課税の導入を議決する必要がある。これまでは全国の1150市が追加課税を決める権限を付与されていたが、うち実際に導入したのは300弱となっており、税率も所定の範囲内で自治体側に決定する権限がある。自治体の財政状況は厳しくなっているため、今後は導入が増えるものと予想される。本宅の住民税が全廃されたことで、国による補填措置はあるものの、自治体の税収は目減りしており、既に、不動産資産課税は強化される傾向にある(人口4万人超の自治体では19%が2023年に不動産資産税の税率を引き上げ)。これに加えて住民税追加課税の適用を決める自治体が増えるものと予想される。 KSM News and Research -
2023.08.28
ワインの余剰在庫処分、政府が助成金をかさ上げ
政府は困難が続くワイン業界向けに追加支援を決定した。余剰在庫を処分するための蒸留に助成金を追加支給する。余剰在庫は蒸留を経て非食用のアルコールに転用される。赤及びロゼワインが主な対象となる。政府は年頭に1億6000万ユーロを、この在庫処分で損失を被る業者向けの補償に充当する方針を明らかにしていたが、これを2億ユーロにかさ上げする。資金は政府予算と欧州連合(EU)からの補助金で賄う。年頭時点では300万ヘクトリットルの処分が予定されていたが、応募が多かったため、処分量の拡大に踏み切った。国内のワイン消費量は、1975年には住民1人当たりで年間100リットルに上っていたが、現在では45リットルとその半分未満にまで減少している。若い世代のワイン離れが目立つ。蒸留化による在庫処分は2020年にも実施された。一部の産地では減反の取り組みも進められている。 KSM News and Research -
2023.08.28
ロワイヤル氏、左派統一候補リストを率いる意欲を表明
左派連合NUPESの主軸である左翼政党「不服従のフランス(LFI)」は27日まで、シャトーヌフシュルイゼール(ドローム県)で夏季集会を開いた。25日に会場を訪れたセゴレーヌ・ロワイヤル元環境相は、2024年の欧州議会選挙に自らが筆頭候補として左派統一候補リストを率いる用意がある旨を表明した。LFIのリーダーであるメランション氏はこれを歓迎したが、NUPESに加わる他の政党は比較的に冷ややかな反応を示している。ロワイヤル氏は2007年の大統領選挙に社会党の公認候補として出馬し、右派のサルコジ候補に敗れたという過去がある。現在は社会党には所属していないが、左派の大物政治家として遇されている。NUPESは寄り合い所帯で求心力が低く、LFIのメランション氏の呼びかけに反して、各党は欧州議会選などで統一候補の擁立に応じていない。ロワイヤル氏の出馬で各党の足並みが揃うことに期待し、メランション氏はロワイヤル氏の統一リストを支持し、各党に合流を呼びかけた。ただ、スタンドプレーが目立つロワイヤル氏はおよそコンセンサスを得られる人物ではなく、古巣の社会党の党員らはむしろ冷ややかな反応を示している。共産党や環境政党EELVもそれぞれ独自リストを擁立する構えを崩していない。 KSM News and Research -
2023.08.25
欧州連合(EU)、デジタルサービス法(DSA)を施行
欧州連合(EU)が定めたデジタルサービス法(DSA)が25日付で施行された。ひとまず19の大手プラットフォームが対象となる。来春には対象範囲が広げられる。25日から対象となるのは、4500万人以上の月間ユーザーを持つプラットフォームで、グーグル(検索、ユーチューブ、地図、ショッピング、グーグルプレイ)、メタ(フェイスブック、インスタグラム)、リンクトイン、ピンタレスト、TikTok、X(旧ツイッター)のほか、マーケットプレイス(AliExpress、アマゾン、Booking.com、Zalando)と、AppStore、ウィキペディア、Bing。対象となるプラットフォームは、違法コンテンツの通報を受け付けるボタンの設置を義務付けられ、コンテンツを維持する場合には、その根拠を示し、また、異議申し立てが可能であることを通知しなければならない。アルゴリズムを利用したレコメンドについては、似た者同士が集まり閉じ込められてしまうリスクがあることを踏まえて、代替的なレコメンドの手段を提供することが義務付けられる。モデレートの手段については、年次報告書における自己評価の提示と、専門家・研究者へのデータの開示義務等を通じて、ガラス張りの体制を整える。広告については、未成年者へのターゲティング広告の禁止、宗教や性的傾向等の重要データを使用した広告の禁止などが導入された。マーケットプレイスには出店者の信頼性を確認する義務が導入された。規則の順守状況は外部監査等を通じて定期的にチェックされる。違反行為は最大で世界売上高の6%までの罰金を科され、再度の違反の場合にはアクセス禁止措置が適用される可能性がある。 KSM News and Research -
2023.08.25
Hugging Face、2億3500万ドルを調達
フランス人が起業した人工知能(AI)ベンチャーの米Hugging Faceは24日、2億3500万ドルの資金調達を完了した。大手企業が新たに資金提供に応じた。Hugging Faceは、AIのオープンソース・プラットフォームを運営。1万社に上る企業ユーザーが利用しており、50万に上るAIモデルがプラットフォーム上で公開されている。ユーザーが追加するデータも共有され、オープンソースの枠組みの中でモデルの精緻化が進められる。セールスフォース、グーグル、アマゾン、エヌビディア、インテル、AMD、クアルコム、IBMなど大手企業がプラットフォームを利用しており、オープンソースには、OpenAI(ChatGPT)のようなプロプライエタリーモデルを追い越す期待がある。Hugging Faceは2022年に1億ドルを調達したが、今回はその2倍を超える金額を調達した。ユーザーでもあるグーグル、アマゾン、エヌビディアなどが資金提供に応じた。同社の従業員数は現在170人(うち80人がフランス)だが、増員を図ると共にプラットフォームの拡充を進める。 KSM News and Research -
2023.08.25
仏政府、ENIの電力小売事業を指導:10万人の顧客から料金取り過ぎ
仏政府は24日、イタリアのエネルギー大手ENIに対して、仏国内の電力小売事業における請求額の誤りの問題で対処を求めた。パニエリュナシェ・エネルギー移行相がENIのフランス事業責任者を呼んで厳正な対処を求めた。ENIは、2022年下半期中に契約を更新した顧客10万人程度について、政府の電力小売価格抑制策の2023年の適用分を反映させていなかった。この件で、ENIの顧客はSNS上にグループを作るなどして結集し、CRE(エネルギー市場規制委員会)に通報を行っており、政府はこれに対応した。ENIは政府に対して、問題のあった顧客について、料金上の補正措置を実施し、小売価格抑制策の効果を全面的に反映させると約束した。政府によれば、補正措置の対象になる顧客数は1万人程度に上る。政府は小売価格抑制措置の段階的な縮小に着手しており、2024年末には完全に撤廃される見通しとなっている。エネルギー移行相は、エネルギー小売業者の不正行為の疑いに目を光らせるよう、CREとDGCCRF(消費者保護と詐欺行為の摘発に当たる経済省下の部署)に指示したことを明らかにした。主要労組CGTのエネルギー部門はこの件について、わかりにくい料金体系と虚偽の論拠を用いて新規参入の小売事業者が攻撃的な攻勢をかけていることを浮き彫りにするものだとコメントしている。 KSM News and Research -
2023.08.24
政府、中期予算計画法案の9月中の可決目指す
報道によると、政府は中期予算計画法案をこの9月の臨時国会で成立させる方針を固めた。採決なしに法案を可決させる強行措置である通称「49.3」を行使する可能性がある。2027年までの中期予算計画法案が9月下旬の臨時国会に提出されるという。中期予算計画法は、中期的な予算運営の展望を示す文書で、拘束力には乏しいが、欧州連合(EU)との関係において特に重要な意味を持っている。政府は同法案を昨年末に国会に提出したが、下院で与党が過半数を失っていることもあって、審議は見送りとなっていた。政府はその後の新たな情報を追加して法案を修正した上で、9月20日より下院審議を始める方針という。予算計画法案の成立は、EUの補助金を獲得する上で前提条件となり、政府が成立に意欲を見せているのもそれが直接の理由と考えられる。400億ユーロの補助金が宙に浮いており、予算の編成難の中で、この財源をなしで済ませる余裕はない。ただ、野党側はそれぞれの理由で予算計画法案に批判的で、妥協成立の可能性が最も大きい保守野党の共和党も、財政健全化の努力が不十分だとの理由を挙げて、法案に反対する姿勢を示している。そうなると、採決をせずに法案を採択させる強行措置(憲法上の条文の名前をとって「49.3」と呼ばれる)の出番となるが、この措置は、一つの国会期間中で1つの法案にしか使えない(予算法案は除く)という縛りがある。予算計画法案は予算法案としては認められないため、通常国会で使用するとあとがなくなるという事情があり、臨時国会でカードを切り、続く通常国会ではリセットしてやり直しという戦法と考えられる。 KSM News and Research -
2023.08.24
ダッソーの「ファルコン6X」、欧米で型式証明を取得
仏ダッソー・アビエーションの新型ビジネスジェット「ファルコン6X」が22日に欧州航空安全機関(EASA)より型式証明を取得した。2年越しの検査を経て取得に至った。就役開始に向けて大きく前進した。相互承認により、米国の連邦航空局(FAA)の型式証明も取得した。これにより世界各国の当局機関からの証明の取得にも弾みがつく。ダッソーは、サフラン社のエンジン開発遅れを理由に「ファルコン5X」の開発計画を2017年末に打ち切った。その後を受けて「6X」の開発を決定、こちらでは米プラット&ホイットニーのエンジンを採用した。2022年中の就役開始を予定していたが、1年遅れで就役開始のめどをつけた。ファルコン6Xは乗員3名、乗客8名で、ゆったりした機内スペースなど高級路線を追求した。航続距離は1万200kmと長い。環境配慮では、燃料の50%まで代替燃料を混合することが可能であることを売り物とする。開発中の「10X」では、100%を代替燃料とすることが可能になるという。6Xの価格は5000万ドル前後。ダッソーにとってビジネスジェットは年商の3割から5割を稼ぎ、戦闘機ラファールと並ぶ2本柱の一つ。 KSM News and Research -
2023.08.24
仏国内で自家消費用太陽光発電が増加(エネディス)
仏国内で、自家消費用太陽光発電施設の数が増加している。エネルギー危機に伴うエネルギー価格の高騰が背景にあると見られる。仏電力大手EDFの配電子会社エネディスのデータによると、自家消費用太陽光発電施設の数は2023年6月末時点で32万5939基、容量合計は1629MWに達した。1年前に比べ、数では77%、容量では88%増加した。国内の太陽光発電施設の合計容量は17.2GWで、このうち11%が自家消費用となっている。また、1万201基が蓄電と組み合わせられている。他方、複数の発電者およびユーザーを束ねた集団的な自家消費用太陽光発電施設の数も増加傾向にある。こうした施設の数は、2018年時点では6ヵ所に過ぎなかったが、2023年6月末時点では224ヵ所にまで増えた(合計容量は14MW強)。一つのプロジェクトが、平均で2の発電者、13のユーザーを含む計算となる。プロジェクトのうち、6割が自治体主導によるものとなっている。地域別に見ると、容量が大きいトップ3の県は、オートガロンヌ県(59MW)、イゼール県、ブーシュデュローヌ県(51MW)となっている。 KSM News and Research -
2023.08.23
ユービーアイソフト、アクティビジョンのクラウドゲーム権益を買収へ
マイクロソフトは22日、アクティビジョン(ゲームソフト)の買収を計画している件で、仏ゲームソフト大手ユービーアイソフトに対して、アクティビジョンのクラウドゲーム事業の権益を譲渡する基本合意を結んだと発表した。英国のCMA(競争・市場庁)からの許可を取り付けるための切り札とするために合意をまとめた。ユービーアイソフトは、アクティビジョンのクラウドゲーム配信権を、EEA(欧州経済領域)を除く全世界を対象として独占的に確保する。既存の全カタログに加えて、今後15年間に新たにリリースされるタイトルが対象となり、権益は無期限で譲渡される。ユービーアイソフトは権益取得に係り一括金をマイクロソフトに支払い、これ以外に、業績に応じて追加の支払いもなされる。ユービーアイソフトは、自前のクラウドサービスにアクティビジョンのタイトルを加えることができ、マイクロソフトを含む第3者のプラットフォーム上の配信にライセンスを与えて収入を得ることもできる。市場はこの発表を歓迎し、ユービーアイソフトの株価は同日に一時10%を超える上昇を記録した。もちろん、合意の履行は、英CMAが買収案件に許可を与えることが条件になる。CMAは新たな要素を踏まえて10月18日を新たな回答期限に設定した。 KSM News and Research -
2023.08.23
レボリュート、フランスで貯蓄口座型の新商品を投入
英レボリュート(ネオバンク)はフランスで貯蓄口座型の新商品の取り扱いを開始した。利息非課税の貯蓄口座リブレAなどを意識し、貯蓄資金の取り込みと集客力の向上を図る。レボリュートは以前から、株式投資や暗号資産、金銀などの投資商品を取り扱っている。顧客の需要に細かく対応し、メインバンクとして選ばれるようになることを目指して、新たな商品の提供に踏み切った。新商品は、アカウントを通じて、短期公社債により運用される各種マネーファンドを選んで投資するというもので、ユーロ、ドル、英ポンドの3種で運用できる。1ユーロからアカウントを開ける。現在の市況なら、ユーロ建てで3.73%、ドル建てで5.32%の利回りが提供できる。諸税控除後でリブレAの利回り(3%)を超える運用実績を確保することが可能になる。利息が年1回ではなく月々支払われるのも利点となる。ただし、商品の性質上、元本保証はなく、また、外貨建てでの運用を選んだ場合には為替リスクも発生する。銀行各社はこのところ預金資金の獲得にしのぎを削っており、期間限定でリブレAより高めの利回りを設定した貯蓄口座を提供するなど競争が激化している。レボリュートの新商品もそうした全体的な傾向の中に位置づけられる。 KSM News and Research -
2023.08.23
パリ市、電動キックスケーターのシェアリングサービスを廃止
パリ市の電動キックスケーターのシェアリングサービスが8月末で廃止される。去る4月2日に行われたパリ市主催の住民投票で、同サービス継続への反対票が89%を占めたことを受けて決定された。同サービスの事業者3社(米Lime、独Tier、蘭Dott)は、8月31日までに市内に配置の合計1万5000台の電動キックスケーターを撤去しなければならない。3社とも、引き揚げた電動キックスケーターを数週間かけて整備し、ヨーロッパの他の都市でのシェアリングサービスに転用する予定。パリ市は電動キックスケーターに代わって自転車のシェアリングサービスを増やす方針で、これまでキックスケーター用だったスペースを9月以降は自転車用に転換する。Limeは1万台、TierとDottはそれぞれ5000台の電動アシスト付き自転車のシェアリングサービスをパリ市で展開しているが、料金が45分間で10ユーロ以上と、パリ市の自転車シェアリングサービス「ベリブ」(Velib)の45分間3ユーロに比べて高いため、利用者の急増は見込めない。また、自転車はキックスケーターよりも維持管理に手間がかかる。パリ市のサービス廃止に伴い、Dottは8月16日に労働省から従業員51人の削減計画の認可を得た。Tierはパリ勤務の従業員100人の処遇をまだ決めていない。Limeだけがキックスケーターから自転車シェアリングサービスへの転換に楽観的な見通しで、解雇はないと断言した。 KSM News and Research -
2023.08.22
政府、節水プランの支援対象として12ヵ所の工業施設を選定
政府は21日、節水対策を推進する工業施設を対象に支援を与える計画で、最初の12ヵ所の支援対象施設のリストを公表した。全部で50ヵ所を選定する予定で、そのうちの12ヵ所をひとまず選定した。選定されたのは、アルセロールミタル(鉄鋼)の3工場(ダンケルク、フロランジュ工場、フォスシュルメール)、コンステリウム(アルミ)のアルザス工場、半導体ファウンドリのX-Fabのパリ首都圏の工場、サンゴバンPAMの配管工場、トタルエネルジーのドンジュ製油所、ノルマンディ地方イシニーサントメールにある乳業工場、ケムワンの化学工場、Ugitechの金属工場、Eurencoの化学工場、Seqensの医薬品原料工場。ベシュ・エコロジー移行相らは同日、このうちケムワンのバラン市(アン県)にある化学工場を訪問し、水不足が目立つローヌ川流域地域に位置する同工場における節水の取り組みについて見学した。また、水の消費が多い19の経済部門が産別の取り組みをこの秋に政府に提示することになっている。工業部門は国内の水の消費の4%を占めるが、水不足のため制限措置が導入されると最初に貢献を求められる。制限は生産減に直結するため、上流から対策を整えることは企業側にも利益となる。 KSM News and Research -
2023.08.22
2024年予算法案:政府、「生産に係る税」の減税幅を縮小か
政府が準備中の2024年予算法案で、「生産に係る税」の減税幅が縮小される可能性がある。経営者団体MEDEFが警戒している。マクロン大統領は2022年の大統領選の際に、企業の付加価値を課税標準とする地方税CVAEの廃止を公約に掲げていた。同税の税収は80億ユーロ程度で、2023年にはその半分の40億ユーロの減税がなされた。残る40億ユーロは2024年中に減税の対象となるはずだったが、政府は2024年予算において赤字削減を優先したい考えで、この残りの分の減税については実現可能性が危ぶまれている。経済紙レゼコーによると、2024年から2027年にかけての4年間で1億ユーロずつ段階的に削減するとの案が政府部内で浮上しているらしい。レゼコー紙の取材に対して、経営者団体MEDEFのマルタン会長は、政府がサプライサイドに重点を置いた政策を放棄することを危惧する、と言明して、予定通りにCVAEの廃止に踏み切るよう、政府に対して注文を付けた。政府筋では、まだ決定は下っていないとした上で、減税だけでなく財政赤字削減もMEDEFの要求事項の一つであるとし、全体のバランスを見て最善の対応を決めると説明している。 KSM News and Research -
2023.08.22
クレジットカードをIC乗車券に、パリ首都圏が導入を予定
パリ首都圏は、2024年のパリ五輪を念頭に、クレジットカードを公共交通機関の乗車券として利用できるサービスを提供する準備を進めている。会場への移動に活用されるメトロ14号線の延伸部分に専用の改札口を設置する計画。この計画には、タレス(防衛電子)とワールドライン(決済サービス)が協力する。延伸される14号線の終点となるオルリー(空港)駅と、もう一方の終点で会場に近いサンドニ駅に専用改札を設置する。改札を入る時と出る時にカードをかざし、出る時に課金される形となる。手続き不要の利便性を訪問者に提供する。タレスとワールドラインは、「グランパリ・エクスプレス」として整備中の大環状地下鉄網の70駅にこの専用改札を順次整備することを計画している。クレジットカード利用のIC乗車券サービスは、リヨン、ディジョン、リールで導入済みで、最近ではアミアンでも導入がなされた。パリ首都圏は、「ナビゴ」と呼ばれるIC定期券・乗車券を展開している手前、既存の施設への導入は消極的であり、スマホ利用のサービスを優先する構え。 KSM News and Research -
2023.08.21
政府、いじめ対策を公表
政府は17日、いじめ対策の政令を官報上に公示した。加害者を引き離すため転校をさせる強制措置の実施を可能にする内容。先の内閣改造で就任したアタル教育相は、いじめ問題に優先課題として取り組む姿勢を示している。新たな対策政令は、小学校から高校に至るまでの全学年を対象に、被害者ではなく加害者を転校させる措置を、加害者の保護者の同意を得ずに実施することを可能にすると共に、他校の生徒に対するサイバーいじめを主導した者を制裁することも可能としている。学校の校長が、クラスを全体として管理するだけではなく、各生徒の学校生活に至る管理を行うことができるようにする環境が整備される。新措置について、いじめの被害者の両親らからは、よい措置だと歓迎する声が上がっているが、これだけでは不十分だとする意見も多く聞かれる。特に、加害者の生徒が、転校先で再びいじめを行ったり、また逆に、いじめの被害を受けるリスクもあるとし、ただ遠ざけるだけでは問題の解決にはならないとの指摘もある。調査によると、いじめの23%が小学校で発生しており、新たな措置の適用対象を小学1年生からとした点は広く評価されている。被害者救済の支援団体は、新たな措置の導入により、いじめの被害者が名乗り出ることがより容易な環境ができ、報復を受ける恐怖心が軽減されると歓迎。その上で、小学校を運営する主体である市町村に小学校が一つしかなかった場合の対応など、細部においては柔軟に対策を運用できるようにすることが必要だとも指摘している。 KSM News and Research -
2023.08.21
エレベーターのSIMカード盗難が相次ぐ
エレベーターのSIMカードを狙った盗難が相次いでいる。高層住宅の住人らが多大な迷惑を被っている。エレベーターには、非常時の連絡手段を確保するためにSIMカードが必ず搭載されており、非常時の通報ボタンを押すと、このSIMカードを起点に、携帯通信網を経由してセンターの係員と会話ができるという形になる。SIMカードがなくてもエレベーターの昇降の機能そのものに影響はないが、非常時の連絡手段がなくなることから、SIMカードなしでのエレベーターの運営は法律により禁止されている。こうした盗難事件は、数ヵ月前にパリ西郊のオードセーヌ県、特にナンテール市の高層団地街で発生したのを皮切りに、パリ首都圏の全域やノルマンディ地域圏などに広がっている。さらに全国に拡大する兆候もある。SIMカードを狙う動機は、犯罪目的での悪用が目的であると考えられている。大量にフィッシングのSMSを送付する手段に用いられている模様で、ダークウェブ経由でSIMカードを詐欺団に転売している可能性がある。盗難の被害を受けているオーベルビリエ市の住宅公団では、6万2000ユーロ程度の請求が電話会社から来たカードもあるという。対策として、この公団は、一定数のSMSが発信されたり、利用機種が変更されると自動的に使用が停止される契約への切り替えを進めている。悪用の商品価値をなくすことにより、盗難する意味を失わせるという対策となる。 KSM News and Research -
2023.08.21
4-6月期の仏失業率、わずかに上昇
17日発表のINSEE統計によると、4-6月期の失業者数(ILO基準)は220万人となり、3ヵ月間で2万人増加した。失業率は7.2%となり、0.1ポイントの微増を記録した。わずかな増加は予想通りだった。現行の失業率は1982年4-6月期以来で最も低い部類に入る。1年以上の長期失業者数は56万4000人、労働力人口に占めるその割合は1.8%と、わずかな増加を記録した。他方、全体の就業率は68.6%となり、1975年以来で最も高い部類の数字を記録。50-64才の層では0.3ポイント上昇の66.8%と、こちらは1975年以来の最高記録を更新した。ING銀行のエコノミスト、ドモンプリエ氏は、フランスの労働市場は減速傾向を示しており、失業率はこのあたりで底を打ったとの見方を示しており、今後数ヵ月間で失業率がさらに低下することは見込めないと説明している。マクロン政権は、任期が満了する2027年の時点で完全雇用を達成することを目標に掲げている。失業率を5%程度にまで引き下げることが必要になる。景気減速の流れの中で、これ以上の失業率の引き下げには努力が必要で、政府は、設立予定の新組織「フランス・トラバイユ」の下でのテコ入れに期待している。その一方で、ベビーブーマーの退職と人口ピラミッドの変化により、このままのペースで失業率は5%程度にまで低下するとの見方もある。 KSM News and Research -
2023.08.11
水不足は解消されず、72%の地下水系が平年並みに達せず
水不足が相変わらず続いている。10日の政府発表によると、8月初頭時点では全国の地下水系の72%で、水位がこの季節の平年並みを下回った。20%では水位が極めて低かった。7月にかけては北西地方を中心に温度が低く、雨も多く降ったが、この季節の降水は、地表の植生に吸い取られて地下水系を満たす効果が薄いため、改善の効果は乏しい。72%という割合は、前月の68%よりも多くなっているが、厳しい少雨に見舞われた前年夏の75%に比較するとわずかに低い。今年の夏は、地域的なばらつきが大きく、深刻な水不足は、地中海沿岸とローヌ川流域地方に集中。32県に警報が発令中(前年夏は最大で75県)となっている。全国では85の市町村で飲料水の供給が止まっており、ボトルウォーターの配布やタンク車による給水でしのいでいる(前年は700近く)。秋季から冬季にかけての降水が十分に得られないと、厳しい状態は今後も続くことになる。 -
2023.08.11
雇用関連の政策費用が大きく拡大、見直しの議論も
雇用関連の政策費用が大きく拡大している。財政健全化の流れの中で見直し議論が浮上する可能性がある。雇用関連の社会保険料減免措置の規模は、2023年に879億ユーロに上る見通しとなっている。このままだと2024年には900億ユーロを超えるのが確実視される。特に、法定最低賃金(SMIC)の1.6倍までの給与所得者を対象とする逓減型の減免措置と、使用者負担の健保保険料と家族公庫保険料の減免措置(それぞれSMICの2.5倍と3.5倍までの給与所得が対象)の規模が大きい。インフレ率に連動する形でSMICが大きく上昇する中で、減免額は自動的に大きくなり、また、対象者の数も拡大する傾向にある。雇用関連政策では、見習い研修制度と呼ばれるいわゆるデュアルシステム(就労と学業を並行して行って資格を取得する制度)の費用負担も大きく拡大している。政府は若年者の就業支援を目的に同制度の利用を積極的に後押ししており、2022年の利用者数は83万7000人と、2017年の30万5000人に対して大きく増加している。見習い研修生を受け入れる企業向けの手厚い支援が利用拡大に貢献しているが、制度の費用負担全体で2022年に168億ユーロと大きい。政府はその部分的な見直しに着手しており、見習い研修制度の教育機関側への支給金の段階的な減額を開始した。その節減額は5億ユーロ程度とさほど大きくない。 KSM News and Research -
2023.08.11
建物外壁をカラフルに、モンルージュ市が奨励
パリの南側に隣接するモンルージュ市では、住宅の塗り替え時に新しい色を用いるよう奨励している。明るく個性的な街並みにする狙いがある。フランスでは、建物の外壁を補修する際に、色を変える場合には、市町村に事前に申請を行う必要がある。市町村にはそれ以外にも、使用可能な色を制限するなど、調和の維持を目的としてそれぞれ独自の規則を定める権限がある。モンルージュ市は7月より、外壁塗り替えの際に別な色を選ぶよう奨励するキャンペーン「Osez la couleur !」(思い切って色を変えよう)を開始。際立った色を選んだ市内の20軒程度の住宅の例を示しつつ、同じ色で改修を行う必要はないことを説明し、積極的に色の変更の申請を行うよう促している。同市のランジュロー市長(中道政党UDI所属)は、「あらゆる方面から公共スペースの美化を進める」ことを目的に、オランダの街並みに着想を得て、このイニシアチブに着手したと説明している。今のところは選ばれた色はいずれも落ち着いたもので、周囲にもよく溶け込んでいるが、専門家らは、一定の枠組みを設けて行き過ぎを防ぐ必要があるとの見方を示している。 KSM News and Research -
2023.08.10
フランス:インフレで世帯の食品購入が激減
8月10日付の仏レゼコー紙は、INSEEの統計などに依拠しつつ、インフレの影響でフランスの世帯による食品の購入に異例の減少が起きていると報じた。2年ほど前から加速したインフレはまずエネルギー価格の上昇という形で現れたが、その後、食品価格にも波及した。INSEEの調べによると、2021年末から2023年6月末にかけての18ヵ月で、食品小売価格は18.4%の上昇を記録したが、同期間の家計の食品支出の伸び率は4.2%にとどまり、実質的な購入量は11.4%減少した。経済研究所OFCEのエコノミストは、INSEEが1980年に食品消費の統計を開始して以来で最大の減少だと強調した。7月末に発表されたニールセンの世論調査によると、フランス人の3分の1が食品や必需品の購入を抑えているという。また、以前と比べて、より安価な製品、PB商品、特売品などを選択したり、価格設定を基準に商店を選んで買い物するなど、消費者の行動にも変化がみらえる。燃料価格も上昇している折から、自動車の利用を抑えて、自宅に近い店舗での買い物を優先する消費者も16%以上に上るという。社会学者のジュリアン・ダルモン氏は、インフレショックで一番強い影響を被っているのは、こうした消費習慣の変更を強いられた中間所得層だと指摘している。 KSM News and Research -
2023.08.10
新型コロナウイルスの感染が再拡大
新型コロナウイルスの感染がフランスでも再び拡大している。新変異株の出現と、夏季に人が集まる機会が増えたことが背景にある。オミクロン株の亜種であるEG.5.1(XBB.1.9.2.5.1)、通称「エリス」が米国やアジア諸国で広がっており、これが欧州とフランスでも拡大している。制限措置が撤廃され、コロナは過去のことだという意識が広がる中で、予防行動も風化しており、感染が拡大しやすくなっている。帰省で家族が集まったり、各種の催事が行われることもあり、人の間の接触が増えたことも感染拡大の要因となる。新型コロナウイルスのサーベイランス体制もかなり後退しており、感染の現状を把握するのは難しいが、10万人当たりの感染発生数は1週間で11から19へと大きく増加している。組織的に検査が行われていないことから、実際の感染はさらに多いものと考えられる。今のところ医療機関の受け入れ態勢に問題はないが、新型コロナウイルス感染症の疑いで緊急外来を訪れる人の数は、全国で34%増(大人の場合)を記録している。地域により増加率はさらに大きく、ペイドラロワール地域圏では210%増を記録。ただし、数では21人増と、対応可能な範囲にとどまっている。 KSM News and Research -
2023.08.10
パリ株式市場CAC40指数の構成企業、1-6月期に業績好調
パリ株式市場CAC40指数の構成企業の半期業績がほぼ出揃った。全体として業績好調が目立った。純益の合計額は、集計により850億-890億ユーロに上った。前年同期比で12.7%の増加を記録した。売上高の合計額は9000億ユーロを超えた(7.4%増)。純利益トップはステランティス(自動車)の109億ユーロで、これにトタルエネルジー(石油)の89億ユーロ、LVMH(高級ブランド)の85億ユーロ、BNPパリバ(銀行)の72億ユーロが続いた。増収率でトップはブイグ(建設)の41%(売上高260億ユーロ)で、エンジー(エネルギー)からサービス部門(Equans)を買収したのが貢献した。サフラン(航空機エンジンなど)は28%の増収を記録、航空輸送需要の回復が追い風となった。自動車大手ルノーは、前年同期の17億ユーロの赤字から21億ユーロの黒字に復帰。自動車部門は全体に復調が目立ち、ミシュラン(タイヤ)も44.7%増の12億ユーロの利益を達成した。営業利益は平均で8%増を記録。全体の半数余りの企業で、営業利益の伸びが売上高の伸びを上回り、営業利益率の改善が実現された。インフレ亢進の中で企業が利益率を引き上げていることについては、過剰な利益を達成しているとする批判の声も一部にある。ただ、下半期にかけては、消費のぐずつきなどの要因から、価格を引き上げる余力が小さくなる可能性がある。 KSM News and Research -
2023.08.09
OverSoc、380万ユーロを調達
サイバーセキュリティの仏ベンチャー企業OverSocはこのほど、380万ユーロの調達を完了した。人員数(現在は22人)を年内に2倍に増やし、研究開発を強化する。OverSocは2020年1月にリールで起業。リールのインキュベーター「アラクリテ」とFinovam gestionから75万ユーロの初回調達を行っていた。今回の調達には、両株主のほかに、サイバーセキュリティ専門のファンドであるCyberK1とAuriga Cyberが出資。調達額の20-25%は借入(公的投資銀行BPIフランスと銀行プール)により確保した。OverSocは、サイバーセキュリティの分析を行う30種程度の各種ツールを統合するソフトウェアを開発。吸い上げられたデータを分析し、3Dグラフィックの形でわかりやすく分析結果を表示し、脅威と攻撃の現状を迅速に把握し、対策の立案を支援する。フランスと欧州でオンリーワンのソリューションと自認する。市町村や病院など、このところサイバー攻撃の標的となっている組織や機関の需要の開拓を狙う。OverSocは現在、リールのインキュベーター「EuraTechnologies」内に入居。仏軍隊省が開始した技術アクセラレーション・プログラム「サイバー・ディフェンス・ファクトリー」にも今年から加わっている。 KSM News and Research -
2023.08.09
ダルマナン内相、カトリック原理主義団体Civitasの解散を予告
ダルマナン内相は8月8日、カトリック原理主義団体Civitasの解散に向けた手続きを開始したと発表した。同団体の集会時になされたユダヤ人排斥主義的な主張の展開を問題視し、検察当局に解散に向けた調査を行うよう求めた。Civitasは1999年の設立。カトリック原理主義の聖ピオ十世会に近く、同性婚反対の抗議行動などを積極的に展開してきた。2016年以来政党としても活動している。政治的には「王党派」で、政教分離の廃止とカトリック国教の回復を掲げている。内相が問題とした集会では、陰謀論者として活躍するピエール・イラール氏が論壇に立ち、「1791年(大革命期)にユダヤ人の帰化を認めたことが移民流入の発端になった」などと述べ、ユダヤ人の国籍をはく奪すべきだとする論を展開した。イラール氏は、ユダヤ人による陰謀説で知られ、「キリスト教会までも陰で支配しようとするユダヤ人から教会と国を防衛する」ことを呼びかけている。 Civitasは最近では、旧教会施設を含めて、教会にゆかりの場所で開催される文化イベントへの反対運動などを展開。社会の右傾化も手伝って、圧力的な示威行動がクローズアップされる機会も増えていた。左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏は内相の決定を歓迎するコメントを発表した。 KSM News and Research -
2023.08.09
仏貿易赤字、1-6月期に540億ユーロへ縮小
8日発表の公式統計によると、仏貿易収支は1-6月期に540億ユーロの赤字となった。赤字額は前年同期比と比べて450億ユーロ減り、収支は大きく改善した。フランスの貿易収支は20年来赤字が続いているが、赤字幅はロシアのウクライナ侵攻以来で一段と拡大していた。エネルギー価格の高騰が貿易赤字を押し上げていた。価格が一時に比べると落ち着いたことで、エネルギー製品の貿易赤字は360億ユーロまで縮小し、貿易赤字の改善に貢献した。ただ、以前のエネルギー製品の貿易赤字の水準は250億-270億ユーロ程度であり、それと比べるとまだかなり大きい。足元で価格上昇の傾向がみられることから、今後とも警戒が必要となる。以前から輸出をけん引する部門である航空宇宙は、輸出が12%増を記録し、収支の黒字は160億ユーロを記録した。香水・化粧品も7%の輸出増と80億ユーロの黒字を達成した。輸出増は自動車(8%増)や繊維(3%増)でも目立った。エネルギー及び軍用品を除くと、貿易収支は73億ユーロの改善を記録した。 KSM News and Research -
2023.08.08
病欠期間中に有給休暇の権利が発生しないのは欧州指令違反=ベルサイユ高等行政裁判決
ベルサイユ高等行政裁判所は7月18日、政府が労働法規に欧州連合(EU)の指令を反映させていないのは不当とする労組側の訴えを認める形で、国に損害賠償の支払いを命じる判決を下した。訴えた3労組(CGT、FO、ソリデール)に1万ユーロずつを支払うよう、国に対して命じた。フランスの労働法規は、病欠期間中について、有給休暇の権利を発生させる実績にならないと定めている。また、有給休暇中に病欠となった場合には、有給休暇は繰り越されず、消費された扱いとなる。労組側は、これらの規定が、2003年のEU指令に違反すると主張し、権利を侵害された従業員を代表する形で国を相手取る訴訟を起こした。ベルサイユ高等行政裁は、この問題に関する欧州司法裁判所の判断を参照しつつ、下級審であるモントルイユ地方行政裁の判決を支持し、賠償金額を5万ユーロから3万ユーロに減額したものの、国の責任を認める判決を下した。政府は2ヵ月以内に上告が可能だが、労組CGTは、高裁での裁判の際に国は弁明を放棄しており、欧州指令違反の事実を自ら認めているようにみえると指摘している。判例が確定した場合、公務員部門については、立法措置を必要とせず、指令の内容が直接に適用されるというが、民間部門については、改正がされるまで現行法令の適用が継続されるため、使用者側が拒否する場合に、従業員側が権利を行使するには訴訟を起こす必要がある。また、欧州指令は有給休暇を年間4週間と定めており、フランスの5週間よりも少ないため、指令は比例相応分(5分の4)に適用されることになる。労組側は、最高裁の過去の勧告に即して、政府に対して早期に法令を改正し、欧州指令の内容を反映させるよう促している。 KSM News and Research -
2023.08.08
ジャガイモの品薄と値上がり目立つ
足元でジャガイモの品薄と価格の高騰が目立っている。公的機関フランスアグリメールの集計によると、国産品の小売価格は7月に、5kg売りで1kg当たり1.30ユーロにまで上昇。これは、年頭と比較すると42.8%の大幅な値上がりに相当する。ジャガイモは2022年に12%減という大幅な不作を記録。業界団体UNPTによると、これはほぼ20年ぶりの凶作であり、今年の収穫も種蒔が遅くなることから、品薄が当面は続くものと予想される。生産の6割強が集中する北仏オードフランス地域圏でこのところ多雨が続いていたため、種蒔の時期が遅れるのだという。ジャガイモの場合、低温で保存して一年中出荷を続けるが、エネルギー価格の高騰に伴い保存のコストは上昇しており、これも価格上昇を招く要因になっている。また、冷凍ポテトやチップスなど加工品向けの需要も多く、小売に回るジャガイモが減っているという事情もある。現在、収穫の43%が食品加工向けとなっており、外見等に関する要求度が低いことから、生産者として加工向け需要は好都合であるのだという。その一方で、季節の果物・野菜の小売価格は大幅に低下している。アプリコットは7月に前年同月比で11%の大幅低下を記録。トマトも25%の値下がりを記録した。フランスの北半分では冷夏のため、夏野菜や果物の消費が目立って減っており、これが価格にも影響しているという。 KSM News and Research -
2023.08.08
仏研究所、ミルク繊維の新製法と亜麻廃棄物からの繊維生産手法を開発
北仏トゥルコワン市(ノール県)にある民間研究所CETIはこのほど、ミルク繊維の新製法と、亜麻仁油用の亜麻の茎を原料とする繊維の生産方法を確立したと発表した。量産の準備に移行する。ミルク繊維は、牛乳に含まれるカゼイン(たんぱく質)を原料とする繊維で、滑らかな肌触りで知られる。1930年代に発明されたが、製造には重度な化学的工程を必要とするため、現在はほとんど生産されていない。CETIは、食用には適さずに廃棄される牛乳を原料として、環境負荷が小さい生産方法を開発。フランスでは年間の牛乳廃棄量は700万リットルに過ぎず、大衆的な製品にするには適さないが、高級品としての需要は期待できる。乳業組合CNIELは、主要な牛乳生産地のいずれか(ブルターニュ、ノルマンディ、オードフランス)にパイロット工場を整備する計画に着手する。亜麻仁油は亜麻の種から抽出されるが、繊維用の亜麻とは異なり、採油用の亜麻の茎は廃棄されている。CETIはこの廃棄される茎からセルロース繊維を生産する手法を開発。生産過程で二硫化炭素を用い、また、原料の炭素負荷という点でも疑念があるビスコースを代替する製品として需要の開拓を目指す。廃棄物の有効利用となり、原材料を国内で潤沢に確保できることから、大衆的な用途にも適している。CETIは実証プラントを整備するため250万ユーロの資金を必要としており、デカトロン(スポーツ用品販売)などによるコンソーシアムが製品化を支援している。 KSM News and Research -
2023.08.07
仏国鉄SNCF、在来線格安列車サービスを拡大へ
仏国鉄SNCFは、在来線の格安列車サービスの拡大を計画している。国際列車を含む3路線の運行開始に向けて、7月17日に仏当局機関ARTに申請を行った。2024年末の運行開始を予定する。SNCFは、高速鉄道の格安列車サービス「Ouigo」を在来線にも広げる形で、2022年春にパリ・ナント間とパリ・リヨン間の2路線で、格安列車のサービス(料金を10-30ユーロに設定)を開始している。その成果が良好だったのを踏まえて、新たに、パリ・ブリュッセル、パリ・ボルドー、パリ・レンヌの3路線に格安サービスを拡大することを決めた。パリ・ブリュッセル路線は、ベルギー国鉄SNCBと協力して運行される。座席数600-700の列車を1日5往復運行する計画。途中駅に停車し、所要時間は3時間程度(高速鉄道だと1時間22分)。パリ・ボルドー路線はパリ・オーステルリッツ駅かパリ・ベルシー駅からの出発とし、多数の途中駅に停車、所要時間は4時間55分から5時間39分。座席数720席の列車を1日2往復運航する計画という。パリ・レンヌ路線は1日1-2往復で運行され、やはりオーステルリッツ駅かベルシー駅を起点とする。所要時間は3時間50分から4時間20分。 KSM News and Research -
2023.08.07
雇用数増加の勢い鈍る:賃金上昇率はインフレ率上回る
4日発表のINSEE速報によると、民間部門の給与所得者数は6月末に2116万人となり、3ヵ月前から1万9700人、率にして0.1%増加した。増加数は1-3月では8万6800人(0.4%増)に上っており、増加の勢いはかなり鈍化した。雇用数は、新型コロナウイルス危機前と比べると120万人増えているが、足元で勢いは鈍っている。INSEEは2023通年では、公共部門も含めて雇用数が17万5000人増加すると予想しているが、増加数は前年の44万5000人に比べてかなり少なくなる。なお、政府は2027年時点での完全雇用の実現を目標に掲げている。これとは別に、労働省統計機関DARESが4日に発表した速報によると、月額基本給与指数(SMB)は4-6月期に1%、前年同期比では4.6%上昇した。同期のインフレ率(たばこ除く)は4.4%となっており、給与水準の伸びがインフレ率を0.2ポイント上回った。賃上げの勢いは賃金が低めの層で特に目立ち、ワーカー・従業員に限ると上昇率は5.1%に達する。物価上昇がインフレを上回る局面を迎えたことになり、インフレが二巡目に入るリスクも懸念されるが、仏中銀は、賃金上昇は7-12月期中に峠を越すとみており、景気の減速を背景に、2024年には賃金はより落ち着いた推移を示すと予測している。 -
2023.08.07
屋上緑地化、環境保護の効果に期待
日刊紙ルパリジャンは5日付で、屋上緑地化の事例を紹介する記事を掲載した。パリ18区のボーブナルグ通り17番地にある集合住宅(430戸)では、5年越しのプロジェクトの末に、屋上の緑地化を完了した。屋上の緑地化には、都市部のヒートアイランド現象の緩和に加えて、降水時に雨水を留めることにより、雨水がそのまま河川に流れ込んで水質汚染を引き起こすのを妨げることができる利点がある。断熱効果も利点の一つで、特に冬季に効果が大きい。ただし、目立った効果があるのは、外部の温度に影響を受けやすい最上階に限られるという。このプロジェクトの予算総額は10万ユーロ程度に上り、パリ市からのものを含めて複数の補助金を得て実行された。屋上の緑地化には、1平方メートルにつき40-250ユーロの費用がかかる。基層となる土壌には、10cm未満、12-15cm、30cmまでと複数のカテゴリーがあり、厚くすればするほど、根が深く張り、気温を引き下げる効果が大きい植物を育てることができる。いずれにしても、屋根の防水性を強化する必要があり、また、水を含んだ重い土を支えることができる強い構造が必要になる。屋上緑地化に先立っては、建物の構造に関する調査が必要であり、それだけプロジェクトには時間が必要になる。傾斜が20度以上の建物や旧建築には適さないが、新建築では緑地化の余地は大きい。 KSM News and Research -
2023.08.04
Sensorion、3500万ユーロを調達
先天性難聴の治療薬を開発する仏Sensorionがこのほど、3500万ユーロの資金調達を行った。2024年にも開始を予定する遺伝子治療の治験に向けて資金を確保した。Sensorionは上場企業で、今回は私募増資により資金調達を行った。増資後で流通株が占める割合は25.5%から10%に下がる。この機会に米ファンドのRedmileが1800万ユーロを出資して31.4%株式を確保。従来の株主であるInvus(30.4%)やSofinnova(19.7%)と共に取締役を派遣する。新株発行は15%安で行われ、発行価額をもとにした評価額は5700万ユーロに下がった。Sensorionは、先天性難聴の遺伝子治療薬2種の開発を進めている。うち、Otoferlinと呼ばれるたんぱく質に対応した治療薬「OTOF-GT」は、生後6-31ヵ月の子どもの内耳に注入する形で試験がなされる。2024年半ばから2025年初頭にかけて試験を行う計画。Otoferlinに関係する先天性難聴は全体の10%以下といい、Sensorionは、全体の50%を占めるGJB2遺伝子の異常に対処する治療薬「GJB2-GT」の開発も進めている。2025年初頭以降に治験第I相の開始を目指す。 KSM News and Research -
2023.08.04
マクロン大統領、「大規模な政治的イニシアチブ」を予告
マクロン大統領は休暇先の南仏ブレガンソン要塞でルフィガロ・マガジンの取材に答えた。8月末に「大規模な政治的イニシアチブ」に着手すると予告した。マクロン政権は下院で過半数を失っており、政局運営の困難が続いている。大統領は、「単純明快なプロジェクト」に賛同する共和国擁護派の勢力の結集を図ると説明。極右政党RNと左翼政党LFI(不服従のフランス)を除く左右の政治勢力を案件ごとに結集させる考えを示唆したが、同時に、連立の結成を目指したものではないとも付け加えた。大統領がこの種の展望を示したのはこれが初めてではないが、実現の可能性はさほど大きいとはいえない。大統領は、「2027年5月まで」、つまり、自らの任期が満了するまでを視野に、政局運営を確保する条件を整える意欲を示したが、具体的な内容には踏み込んでおらず、不明な点も多い。大統領は、フランスで今秋に開催のラグビーW杯と、1年後に迫った2024年のパリ五輪にも言及したが、そうしたイベントにおける国民結集の効果に期待しているなら、成果はあまり期待できないという厳しい声も聞かれる。大統領はその一方で、夏休み明け以降に審議される移民法案について、議会による採決なしに可決させる強行措置(いわゆる「49.3」)を発動する可能性を否定せず、強い姿勢で臨む選択肢も手元に残す考えを示している。 KSM News and Research -
2023.08.04
所得申告の修正受付が開始に
所得申告の修正受付が8月2日に始まった。12月7日まで修正が可能。2022年所得に対応した2023年の徴税請求書は8月4日までに各人の税務アカウント(impots.gouv.fr)上で通知される。請求書の内容に誤りがあり、それが所得申告上の誤りに由来する場合には、申告内容を修正することができる。アカウントからのオンラインでの修正は、オンラインで申告を行った人に限られ、紙で申告した人は、税務署に請求しなければならない。ほとんどの内容が修正可能だが、世帯の成員の異動など戸籍に関わる情報や住所変更など一部の内容はオンラインでは実行できない。修正により徴税請求額が大きくなる場合には、10%の増額が適用されることがある。ただし、2018年の法改正により、悪意のない誤りを自発的に修正する場合には、「誤りを犯す権利」が認められ、増額が免除されることがある。いずれにせよ、税務調査を経て追徴課税が決まるとさらに大きな額が請求されるため、誤りは修正した方がよい。また、遅延金は修正がなされるまで発生するので、修正するなら早めにした方が得だという。 KSM News and Research -
2023.08.03
アルティス、ペレイラ重役の逮捕を経て乱気流に突入
8月の7日と8日に行われるアルティス・フランスとアルティス・インターナショナルの業績発表にあわせて開かれる電話カンファレンスの機会に、創業者のパトリック・ドライ氏が自ら投資家向けに状況を説明する。ポルトガル人のアルマンド・ペレイラ重役が逮捕された件で自ら異例の報告を行い、投資家の信頼感維持に努める。アルティス・フランスはSFR(通信)とBFM TV(メディア)を傘下に収めている。アルティス・インターナショナルはポルトガル事業を主力とする会社。逮捕されたペレイラ氏はドライ氏の友人であり片腕として、ポルトガル事業とフランス事業の両方で強い権限を行使していた。ポルトガルの捜査当局は7月13日にペレイラ氏を含む3人を、汚職、脱税、資金洗浄など11の容疑で逮捕。24日に保釈し、身柄を監視下に置いている。ペレイラ氏は主に、契約先の納入業者等に水増し請求をさせて、その利益を自ら吸い上げていた疑いをもたれており、契約先の業者と表向きは直接の関係はないものの、実質的につながりがある会社を契約先として選ばせていた疑いがある。アルティス・フランスの社内には、ペレイラ氏の行状をドライ氏が知らなかったとは考えにくいという声もあるが、ドライ氏に近い筋は、一切の関与を否定している。ドライ氏はデットファイナンスで世界的に展開する一大帝国を築き上げた。アルティスの債務は240億ユーロに上り、2027年から2029年にかけてはうち206億ユーロの償還期限が来ることになっており、返済とリファイナンスを迫られる。投資家の信頼を失うとほころびが拡大するリスクをはらんでいる。 KSM News and Research -
2023.08.03
フランス漫画市場、狂喜の時代は終焉
調査会社GfK の調べによると、2023年1月から5月までのフランスでの漫画の販売数は1620万部で、前年同期比で18%減少し、販売額は1億3010万ユーロで、同14%減少した。8月3日にレゼコー紙が報じた。なお、フランスでは、日本の漫画(の翻訳)を「Manga」と呼んで、伝統的バンド・デシネ(BD)と区別しており、この調査は「Manga」を対象としたもの。しかし同紙は「狂喜の時代」は終焉したものの、大局的に見ると、さほど悲観する必要はないとも指摘している。フランスの漫画市場はここ数年2桁の成長を遂げており、特に2021年には3桁の成長を記録して市場が2倍に拡大した。フランスは世界でも日本に次ぐ漫画大国で、2022年にはフランス書籍産業において漫画部門が売上の10%近くを占めるまでに成長した。今年の漫画市場の停滞を業界関係者は次のように分析している。まず、日本の漫画出版がエアポケットに入ったため、コンテンツを依存しているフランス市場もその影響を受けている。次に、紙の値上がりを受けて、数年前は1冊5ユーロ前後だった単価が徐々に10ユーロに迫っている。そして生産過剰。業界が好調と見て出版数が急増したため、書店の売り場に置かれる期間が短くなり、新刊漫画が消費者の目に止まりにくくなった。業界の二極化も進んでおり、「NARUTO -ナルト-」「ワンピース」「僕のヒーローアカデミア」といったメガヒット作品がある一方、販売数が1万部に達しない作品も多い。しかし、メガヒット作品は連載終了後も売れ続けるロングセラーになりつつあるし、今後アニメ化される作品には販売の大幅増を期待できる。フランスの漫画市場は依然堅調である。 KSM News and Research -
2023.08.03
夏季バーゲンセール、予想よりは良好な成績
夏のバーゲンセール期間が1日で終了した。今年の売上は懸念されていたよりは良好だった。大手チェーン店が作る業界団体アリアンスデュコメルスによると、客足は前年よりも15%ほど多かった。売上高では前年比で1%減となったが、後退幅は予想よりも小さかった。インフレ亢進で家計の購買力が削られる中で、バーゲンセールへの関心が復活した可能性がある。特に、男性向け衣料とインテリア用品の需要が好調だった。パリ商工会議所(CCIP)の調査によると、前年よりも好況だったと回答した商店主は全体の54%となり、評価がほぼ2つに分かれている。政府は、全国的には、最初の2週間が特に活況だったが、その後は勢いが衰えたと指摘している。商店主らが作る業界団体「フランス商店主連合会」では、海浜のリゾート地やショッピングセンターにおいては好況だったが、中心街の商店は振るわなかったと分析。小規模の商店主が作る業界団体SDIでは、前年比で15-20%の客足減を記録したと説明している。なお、今年は、警察官による少年射殺事件に続いて暴動が発生し、商店が打撃を受けたことに配慮し、バーゲンセール期間が1週間延長され、全体で5週間続けられた。 KSM News and Research -
2023.08.02
英国、18分野についてCEマークの有効性を恒久化
英国政府は8月1日、ビジネス・通商省の管轄下にある18分野について、欧州連合(EU)の基準に適合していることを表示するCEマークの有効性を恒久的に認めると発表した。これらの分野には、玩具、花火、プレジャーボート、簡易圧力容器、電磁両立性関連機器、非自動はかり、測定器具、エレベーター、爆発性雰囲気下で用いられる機器、無線機器、加圧機器、個人防護具、ガス機器、機械類、屋外用機器、エアロゾル、低電圧機器などが含まれる。これらの分野に含まれる製品に関して、英国企業は今後、英国のEU離脱後に新設されたUKCAマークかCEマークのいずれかを選択できることになる。今回発表された分野に含まれない医療器具や建設資材などの品目については、管轄の政府機関が決定を下すことになる。英国のEU離脱に伴い、イングランド、ウェールズ、スコットランドにおいて販売される商品に関しては、2024年12月から、CEマークの代わりにUKCAマークが用いられることが予定されていた(北アイルランドでは、特別な合意によりCEマークの使用が認められた)。従って、英国とEUの両方で製品を販売するメーカーにとっては、両マークへの適合が必要となり、追加コストがかかるほか、両マークが時間と共に異なっていく恐れも指摘されていた。政府は産業界の声に応える形で、CEマークの使用継続を認めた。英商工会議所(BCC)は、「CEマークの使用禁止により、企業にとって英国市場内でも大きな追加コストがかかる恐れがあった」と政府の決定に歓迎を表明した。 KSM News and Research -
2023.08.02
Eqwin、競馬の新たなエクスペリエンスを提供
競馬の新たなエクスペリエンスを提供するベンチャー企業Eqwinが同名のアプリのサービスを6月30日に開始した。開始から1ヵ月でユーザー数は4500人を超え、これまでに8000件を超える取引がなされた。Eqwinでは、実際の競走馬の持分をバーチャルに保有し、その売買を行うという形で取引が行われる。1頭の馬について、100枚の持分が発行される。持分の価額はその馬の実際の戦績によりリアルタイムで変動する。Eqwinは持分の取引を行う二次市場を運営。取引代金から10%の手数料を徴収して収入としており、その収入のうち1%は権利料として競馬主催団体に納付される。団体側とは1万頭の競走馬について契約を結んだ。正式サービスの開始前に、1年間に渡りベータテストが行われたが、これには3000人近くが参加。15万件の取引がなされた。取引はユーロ建てで行うことができ、Eqwinでは、幅広い層に向けて、馬券とは違う観点から競馬の楽しさを体験してもらうことを目指している。Eqwinによると、ユーザーのうち1割は当業者、8割が競馬ファン、1割が初心者であるという。 KSM News and Research -
2023.08.02
アトスの情報処理事業、クレティンスキー氏が買収へ
アトスは1日、再建計画の一環として、従来の本業である情報処理サービスを束ねた「テック・ファウンデーションズ」の売却に向けた独占交渉をEPエクイティ・インベストメントと開始することを決めたと発表した。アトスはこの売却を経て、今後の主力と見定めるサイバーセキュリティ等の事業を束ねた子会社Evidenの社名をそのまま自社の社名として採用し、再編を完了する。アトスは臨時株主総会を招集し、増資を含む再編計画の承認を諮る。取引は10-12月期中か、2024年3月末までの実現を目指す。EPエクイティ・インベストメントはチェコの実業家クレティンスキー氏の投資会社。同社は1億ユーロを支払ってテック・ファウンデーションズの100%株式を確保する。19億ユーロの債務も引き受け、アトスの運転資金には10億ユーロ程度の余裕が生じる。テック・ファウンデーションズは年商が54億ユーロ、従業員は世界に5万2000人を数える。アトスはこれに続いて9億ユーロの増資を行い、事業発展のための基盤を確保する。クレティンスキー氏は増資に加わり2億1750万ユーロを投資し、7.5%株式を取得して新生アトス(Eviden)の筆頭株主となる。クレティンスキー氏には、仏大物実業家のラドレドラシャリエール氏が協力。なお、両氏のタッグは、食品小売大手カジノの救済買収でも実現していた。クレティンスキー氏は本国のエネルギー部門で財産を築き、フランスにも最初は石炭発電所の買収などで進出。その後はメディア部門などに資産を広げている。カジノへの出資に続いてアトスからの買収案件により、出資先の部門がさらに広がる。ただ、テック・ファウンデーションズの立て直しは容易ではない。アトスは、2022年6月の時点で、立て直しのために2026年までに11億ユーロの投資が必要であり(うち7億5000万ユーロは再編費用)、キャッシュフローの黒字化は2026年になるとの展望を示していた。 KSM News and Research -
2023.08.01
ソラーレ、通常通貨による決済受け入れを開始
NFTサッカーゲームの仏ソラーレ(Solare)は、通常の通貨(ユーロ、ドル、英ポンド)による決済を受け入れる新サービス「キャッシュ・ウォレット」の提供を8月初頭より開始する。ユーザーを増やす狙いがある。ソラーレはこれまで、決済手段を暗号資産に限定してきた。新サービスは、Mangopay(フィンテック)の協力を得て開発した。スポーツゲームの愛好者は裾野が広く、暗号資産に抵抗感を持つ人も少なくないことから、そうした層への浸透を図る目的で、通常通貨による決済の受け入れに踏み切った。NFTの狭い枠を飛び越えていわば全国区のプレイヤーとなるのが課題となる。もちろん、従来通りに暗号資産による決済の受け入れも継続する。ソラーレは専用アプリの運用も年末に開始する予定。その後に大規模なマーケティングキャンペーンを展開し、認知度を高めて成長力の確保を目指す。ソラーレのユーザー数は現在500万人程度。スポーツゲームの世界大手になるとの目標を掲げている。 KSM News and Research -
2023.08.01
仏政府、工業施設の節水を後押し:50ヵ所程度をリストアップ
レゼコー紙の報道によると、仏政府は、節水の余地が大きい50程度の工業施設をリストアップした。企業側の節水努力を後押しする計画。気候変動を背景として国内の水不足が目立っており、政府はその対策として、2030年までに取水量を10%削減することを柱とする水資源の有効活用プランを公表している。その一環で、水の消費量が多い産業部門(鉱業・冶金、化学・材料、食品加工、電子)を対象にした産別の対策が10月半ばにまとめられる予定だが、それと並行して、水不足が目立つ地域にあり、かつ、節水の余地が大きい工業施設に的を絞った支援を行う方針を決め、対象施設のリストアップを行った。エネルギー部門を除外し、製造業(製紙・段ボール、自動車、化学など)を対象とした。地域的には、対象施設は北西地方とローヌ川流域地方に多く分布している。対象施設のうち40程度は既に協力を約束しており、残る10社程度が交渉中であるという。概要が固まった後に企業名等が公表される見通し。 KSM News and Research -
2023.08.01
7月の観光業、南仏では期待外れ
書入れ時の観光業で、南仏でこの7月の業況は振るわなかったとする証言が聞かれる。UMIH(宿泊・外食業界団体)によると、7月初めにランド県(南西地方)とコートダジュール(地中海岸)の一部では、海浜のリゾート地で予約が20-25%減を記録した。近年では、9月に休暇旅行に出る人が増え、逆に7月には減るという傾向がうかがわれるといい、例えばパリでは住民がいなくなるのが7月20日以降とかなり遅くなっている。そのため、リゾート地の出足が遅れている可能性があり、これには、国内旅行を優先していた人々が外国旅行に向かうようになったという事情も重なる。ただ、「週末に人出は多いが、消費額が小さくなっている」(南西地方ヌーベルアキテーヌ地域圏のUMIH代表)という証言もあり、インフレ亢進を背景に、全体に出費に気をつける人が増えて、観光業の収入がそれだけ少なくなっているらしい。キャンプ場の業界団体によると、単価が高いトレーラーハウスは需要が減り、逆に、安上がりなテントを張る用地の需要が増えているという。南仏は客足が減っており、例えばプロバンス・アルプ・コートダジュール地域圏の宿泊施設の客室稼働率は78%と、前年シーズンの80%から後退。北半分の海浜のリゾート地では逆に客足が増えている。直前に予約を入れる人を中心に、猛暑を敬遠して行く先を切り替える動きが出た可能性がある。ただし、7月下旬に北西地方は秋並みの気温と雨模様の天気が続いており、せっかくの人気がまた下火になる可能性もある。外国人観光客はかなり戻ってきており、スペイン人は前年比で11.4%増(空路での旅行者のみ集計)、カナダ人は20.6%増、米国人も5.9%増を記録した。パリでは、日本人や中国人の姿が徐々に戻りつつある。 KSM News and Research -
2023.07.31
主要な年金特殊制度、9月1日付で廃止へ
政府は30日、官報上で年金特殊制度の廃止に関する政令を公示した。9月1日付で廃止される。年金特殊制度は、公社の職員等に適用される制度で、以前からその廃止と一般制度への統合が課題となっていた。国鉄SNCFの特殊制度は2020年に廃止されており、今回は、先の年金改革の一環として、RATP(パリ交通公団)、電力・ガス部門、仏中銀、公証人部門について、特殊制度を廃止した。SNCFの特殊制度廃止に倣い、俗に「祖父条項」と呼ばれる規定が採用され、2023年9月1日以降に採用される職員について、年金一般制度を適用することとし、それまでに在籍する職員には従来の特殊制度が継続して適用される。ただし、今回の年金改革の柱である定年年齢の段階的な引上げ(62才から64才へ)については、従来職員についても、それぞれの制度で同じ幅(2年間)での引き上げが適用される。拠出期間の延長については、一般制度(2023年9月1日から)より遅れて、2025年1月1日から、従来職員を対象に適用される。一連の関連政令が9月1日までに公示される。一部の小規模な特殊制度は今後とも維持される。船員、パリ・オペラ座、コメディフランセーズ(国立劇団)がそれに当たる。 KSM News and Research -
2023.07.31
ニジェールのクーデター:仏政府はニジェール向け支援を中断
ニジェールでクーデターが発生した件で、マクロン仏大統領は7月29日、国防・治安評議会を招集して対応を協議した。政府はこの機会に、バズム大統領の下で憲法に依拠した秩序の回復を直ちに実現するようニジェールに対して求めることを決定。さしあたり、ニジェールに対する開発援助と予算支援を一切中断すると発表した。ニジェールでは、26日に軍人らのグループがバズム大統領を拘束するクーデターを実行。28日になり、チアニ将軍が「救国国家評議会」を率いて権限を掌握する旨の発表を行った。チアニ将軍はイスフ大統領(2011年から2021年まで在任)に近く、バズム大統領との関係は悪かったという。特に最近はチアニ将軍が率いる大統領親衛隊の再編が検討されていたと言われ、チアニ将軍が先手を打ってクーデターを起こした可能性がある。軍は表向きはクーデターを支持しているが、チアニ将軍に対して批判的な勢力も多いとされ、一枚岩ではない。今後の状況はまだ流動的とみられる。サヘル地方では、フランスの旧植民地諸国においてクーデターが相次いでおり、ブルキナファソとマリに続いて、ニジェールにもクーデターの動きが広がった。ブルキナファソとマリでは、反仏の動きと共に、ロシアとその傭兵派遣会社ワグナーが勢力を伸ばしており、本国ロシアでプーチン大統領とワグナーの対立が表面化する中ではあるが、今回のニジェールのクーデターにもロシアの影が感じられる。「クーデター支持」のデモでは、ロシアの旗を振る者たちも参加。30日にはフランス軍の撤退などを要求する反仏デモが行われ、フランス大使館の表札が破壊されるなどの逸脱行為も発生した。仏政府はこれに対して、フランス国家や軍、フランス市民に対する攻撃があれば、直ちに厳しく対処すると発表してけん制した。また、憲法に基づいた体制への復帰を目的とする地域のあらゆるイニシアチブを支援するとも発表し、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が準備する調停作業などへの期待を表明した。フランスは、マリの軍事政権がテロ対策作戦のフランス軍の駐留を拒否して以来、ニジェールに1500人の兵員を配備している。また、ニジェールには仏国籍人500-600人程度が居住している。 KSM News and Research -
2023.07.31
仏経済成長率、4-6月期に0.5%(前の期比)
28日発表のINSEE統計によると、フランスの経済成長率は4-6月期に前の期比で0.5%となった。1-3月期の成長率は速報の0.2%が0.1%へ下方修正されたが、4-6月期の成長率はその分も含めて予想以上に大きくなった。7月以降がゼロ成長となった場合の2023年通年成長率は0.8%となっており、政府の通年成長率予測である1%に近い水準に既に達したことになる。ただ、2022年の成長率(2.5%)に比べると減速することになる。4-6月期には輸出が2.6%と顕著な増加を記録し、外需が経済成長を支えた。外需のGDP成長率への貢献は0.7ポイント分となった。ただ、これは、原子力発電の回復によるエネルギー製品貿易収支の改善などの特殊要因に支えられており、長続きはしない可能性がある。半面、個人消費支出は、1-3月期に横ばいとなった後、4-6月期には0.4%の後退を記録。内需の先行きにも懸念が残る。その一方で、企業設備投資は、前の期の0.4%減から、0.1%とわずかながら増加に転じた。鉱工業生産は4-6月に0.8%の増加を記録し、前の期の0.4%増と比べると大きく増加した。INSEEが同日に発表した物価統計速報値によると、7月のインフレ率は4.3%となり、前月の4.5%からさらに減速した。エネルギー価格の低下が続き、食料品価格も4ヵ月連続で上昇の勢いが鈍った。 KSM News and Research -
2023.07.28
マクロン大統領、バヌアツを訪問
マクロン大統領は7月27日、オセアニア諸国訪問の一環でバヌアツを訪問した。大統領は前日まで仏領ニューカレドニアを訪問。29日にはパプアニューギニアを訪問する。この地域では、中国が勢力の拡大を目指して動いており、米国もこれに対抗する姿勢を示している。マクロン大統領はそうした構図の中で、均衡をもたらす大国としての地位を売り込むことを狙って、今回の歴訪を計画した。フランスは、アジア太平洋地域に人口160万人と900万平方キロメートルの排他的経済水域を有する欧州では唯一の国であり、地域における存在感の確保を目指している。フランスはバヌアツの旧宗主国で、仏海外領土を除くと地域で唯一のフランス語圏国でもある。大統領は訪問の機会に、植民地時代のフランスによる搾取と人身売買の過去に言及した上で、新たな帝国主義が主権を脅かす脅威になっていると言明。条件が厳しい融資のせいで、最も脆弱な諸国は「文字通り首を絞められている」と述べて、名指しは避けたものの、中国による途上国への攻勢を批判した。バヌアツは、水没への危機感から、気候変動対策の推進を要求する急先鋒でもあり、各国が負う気候変動対策上の義務を定めるよう求める国連決議を先に採択させることに成功した。フランスは共同声明においてこのイニシアチブへの支持を表明。マクロン大統領はまた、5年間でAFD(フランス開発庁)を通じて地域に2億ユーロの支援(うち半分が無償援助)を行うと予告。前5年比で5倍の増額になると強調した。 KSM News and Research -
2023.07.28
新石器時代の人骨のDNA鑑定、7代に渡る家系図の作成に成功
仏オーセール市(ヨンヌ県)近くのギュルジ村で発掘された新石器時代の人骨のDNA鑑定結果がこのほど科学誌ネイチャーに掲載された。7代にわたる血縁関係を跡付けることに成功した。研究論文はRivollat(ヘント大学)らが執筆した。2004年から2007年にかけて発掘された128体の人骨について、母系を推定できるミトコンドリアDNA鑑定と、父系を推定できるY染色体のDNA鑑定を実施。同一の系統に属し、7世代に及ぶ64体と、別の家系に属する5世代に及ぶ12体を同定した。これらの人々は紀元前4850-4500年にかけて生きていた。これは、農耕の開始に伴い始まった新石器時代に相当する。系統を調べたところ、女性は子どもを除いていずれも外部から来ており、これは、外部世界との人的往来があったことと、意識的に外部との間で女性が「交換」されていたことを示唆している。外部から来た女性の間に血縁関係はなく、「交換」は、同族結婚を避けるための工夫だったと考えられる。また、父又は母が異なる兄弟・姉妹はなく、これは、一夫多妻制や再婚などがここでは行われていなかったことを示している。これはまた、「婚外交渉」が見受けられないということでもあるが、この点については、婚外子が社会から排除されたり、同じ場所に埋葬を認められなかったりした可能性もあり、本当のところはわからない。歯に残るストロンチウムの痕跡の有無から、初代の人物がここではない別の場所で生きていたことも判明しており、これは、子どもの代が親の人骨を携えて当地に根を下ろし、埋葬をしたことを示している。また、7代目はいずれも子どもの人骨であり、これは、死んだ子どもを埋葬した上で、一族がどこか別の場所へと再び旅立ったことを示している。こうした移動の理由についてははっきりしたことはわかっていない。こうしたことを考え合わせると、7代のうち、実際に同地に定住していたのは3-4世代だけであり、その期間は84-112年と比較的短かったと研究者は推定している。 KSM News and Research -
2023.07.28
郵便料金、2024年年頭に平均8.3%引き上げへ
ラポスト(郵便)は27日、2024年1月1日付で実施する料金引き上げについて発表した。平均8.3%の引き上げを実施する。ラポストの郵便事業は需要低下で後退が続いている。郵便ユニバーサルサービスの恒久化を確保するとの目的を挙げて、値上げが必要になったと説明した。標準的な「緑切手」の料金(20gまで)は、1.16ユーロから1.29ユーロへ11.20%の大幅な値上げとなる。ラポストは、「緑切手」については2年ぶりの値上げであるとし、値上げ幅を正当化している。書留郵便の料金は11%増の5.36ユーロ、国際郵便(20gまで)も16ユーロセント増の1.96ユーロに引き上げられる。個人による小包(コリッシモ)の料金も、行く先や重量を問わず、全体で平均5.6%の引き上げが実施される。法人向けサービスも、大量送付の各種契約で6.8%、ダイレクトメールのサービスで5.2%の値上げがなされる。ラポストは値上げにより、最大で4億ユーロの収支改善を見込んでいる。ラポスト・グループにおける郵便事業の比重は、売上高ベースで17%程度にまで後退しており、10年間で同事業の年商は60億ユーロの減少を記録している。 KSM News and Research -
2023.07.27
アラン・ドロンさん事件、これまでのあらすじ
俳優のアラン・ドロン(87)さんを巡る争いで、捜査当局は26日、ドロンさんの「伴侶」の日本人女性ヒロミ・ロランさん(60)のパリ西郊シュレーヌ市(オードセーヌ県)にある自宅を捜索した。ヒロミさん本人の事情聴取も同日に開始され、同日夜時点で継続されている。報道では、ヒロミ・ロランさんは過去に映画制作助手を務め、「日本人アーティスト」とされている。ドロンさんとは以前から交友関係にあり、ドロンさん本人により「伴侶」として取材等の際に紹介されたこともある。事件は、ドロンさんの3人の実子が7月初めに、ヒロミさんを対象に2件の刑事告訴を行い、これを公表したことにより浮上。実子側は、ドロンさんが脳梗塞を起こした2019年以来で、ヒロミさんのドロンさんとその家族に対する態度が、尊厳を傷つける攻撃的なものに変わったと主張し、モラルハラスメント、信書の傍受、脆弱な者に対する暴力、脆弱な者の弱みに付け入る不正、動物虐待の容疑で訴えた。ヒロミさん側は捜査当局に提出した覚書の中で、「将来的にドロンさんからヒロミさんが金銭的な恩恵を受けることを阻止するため」の訴えではないか、とし、自らは「高齢となった父の日々の世話をしなかった実子らとは異なり」ドロンさんの世話をしたと主張していた。報道によれば、新たな家宅捜索と事情聴取は、実子側が捜査当局に提示した「新事実」に基づいている。実子側は、ヒロミさんがドロンさんに知られずに、そのクレジットカードを用いて数万ユーロの現金を引き出したとし、写真や思い出の品などの私物もなくなったと主張しているという。 KSM News and Research -
2023.07.27
仏武器輸出、2022年に過去最大の270億ユーロ
政府が国会に提出した年次報告書によると、フランスの武器輸出(契約獲得分)は2022年に270億ユーロとなった。前年の117億ユーロを大きく上回り、2015年の169億ユーロを抜いて過去最高記録を達成した。ダッソー・アビエーション社製のラファール戦闘機が輸出拡大を支えた。2022年には、アラブ首長国連邦への80機の輸出(160億ユーロ超)が決まった。このほか、インドネシアからは6機、ギリシャからは6機の受注があった。全体で、輸出の65%を航空宇宙部門が占め、ミサイル・航空機用装備は14%を占めた。エアバス・スペースはポーランド向けの偵察衛星2基の契約を獲得したが、ポーランドへのこの種の装備の供給は異例であり、契約獲得はフランスの兵器産業にとって格別の成功を意味する。また、ギリシャへの3隻のフリゲート艦の輸出契約(ナバル・グループ)も実現した。地域別では、中東向けが全体の64%を占めて最も多く、これに欧州(23%)とアジア(8%)が続いた。2013-22年の10年間でみると、最大の輸出先はアラブ首長国連邦で、以下、エジプト、カタール、インド、サウジアラビア、ギリシャが続いた。ウクライナ情勢を背景に、世界の武器輸入は大きく増加している。ストックホルム平和研究所(SIPRI)の報告によれば、2022年の世界の軍備支出は2兆2400億ドルに上り、これは世界のGDPの2.2%に相当する。 KSM News and Research -
2023.07.27
仏失業者数、4-6月期にも減少続く
雇用省が26日に発表した統計によると、仏失業者数(マヨット除く)は4-6月期の平均で301万1100人となり、前の期比で0.2%、前年同期比では5.0%、それぞれ減少した。景気の停滞が続く中でも失業者数の減少傾向は続いた。当該月に一定の就労実績がある求職者を含めた失業者総数は534万3200人となり、前の期比で0.5%、前年同期比で1.9%。それぞれ減少した。本土に限ると、失業者数は279万9500人となり、前の期比での減少幅は1900人(0.1%)と小さかった。当該月に一定の就労実績のある求職者を含めた失業者総数は506万7700人となり、前の期比で0.4%の減少(2万1900人減)を記録。前年同期比では1.9%の減少を記録した。なお、フランスの経済成長率は、仏中銀によると4-6月期に0.1%となった模様で、前の期の0.2%からわずかに減速した。INSEEも同様の推計を示している。中銀は通年成長率を0.7%と予想し、4-6月期の推移を予想の範囲内と位置付けている。中銀の通年成長率予測は、政府の公式予測である1.0%より低い。 KSM News and Research -
2023.07.26
バゲットの食塩含有量、2015年比で20%減
農業省が食生活観測機関Opaliの分析結果として7月24日に発表したところによると、バゲット等のパン(全粒粉パン・シリアルパンと食パンを除く)の平均塩分含有量(100g当たり)は、2015年の1.7gに対して、2022年には1.34gまで減少した。20%を超える減塩が達成された。フランスの製パン業会は2022年の農業見本市の機会に、2025年をメドにすべての種類のパンを対象に減塩を約束していた。バゲット等については、2022年7月時点で1.5gまで減らすとの目標を掲げていた。地域や販売経路にかかわらず、今回の分析の対象となったバゲット等の82.5%で含有量が1.5gを下回っており、農業省は、目標達成へ向けた全業界関係者の努力をたたえた。業界では次の中間目標として、2023年10月をメドに、バゲット等で1.4g、全粒粉パン・シリアルパンで1.3g、食パンで1.2gの達成を目指す。2025年10月にはすべての種類のパンについて1.1gの達成を目指す。フランスをはじめとするWHO(世界保健機関)加盟諸国は、2025年までに塩分消費量を30%減らすとの目標を掲げている。 KSM News and Research -
2023.07.26
BNPパリバ、ファンドの目標利回り未達で処分
仏AMF(金融市場監督機関)は24日、大手銀行BNPパリバの資産運用子会社BNPP AMに対して60万ユーロの罰金処分を通知した。BNPパリバは処分を受け入れた。処分は傘下の5つのファンドを対象としている。問題のファンドは、Stoxx Europe 600指数よりも高い利回りを達成することを謳っていたが、2016年から2021年にかけて、年平均の運用利回りは基準比で0.78%から3.11%低い水準で推移していた(手数料控除後)。AMFはまた、顧客への明確で誠実な情報提供の義務に違反があったと判断。2020年12月にBNPP AMは顧客に「運用目標に関する文書に関する注記」と題する書簡を送付したが、文書の内容が顧客に不利な修正を目標に施すものであることは明示せず、また、目標が達成されていないことを正しく通知していなかった。運用目標達成の管理体制も十分でなかったと指摘した。BNPパリバの側では、問題のファンドがすべて清算済みか、他のファンドに統合済みであり、顧客からは一切の苦情を受けていないと弁明。ただし、目標未達に伴い顧客に生じた損失を補填する目的で、手数料率を事後的に見直すことを受け入れた。対象となる顧客には16ヵ月後に差額が支払われる。その総額は775万ユーロに上るという。BNPパリバはまた、60万ユーロの罰金を15日以内に国庫に納付することを受け入れた。 KSM News and Research -
2023.07.26
レシート発行のオプトイン化、8月1日付で施行に
商店におけるレシート発行のオプトイン化が8月1日付で実施される。レシートは請求しないと発行されなくなる。この措置は、各種ロス防止法の枠内で、資源の浪費を回避することを目的に導入された。既にスーパーマーケット等では多くの店が実質的に導入しているが、義務化はされていなかった。当初はより早いタイミングで導入されるはずだったが、インフレ亢進の中で消費者の保護を図ることを目的に正式導入が8月1日まで延期されていた。再延期はせずに8月1日付で導入される。店舗側は、メールを利用したり、QRコードを通じてサーバー上のレシートを参照できるようにするなどの方法で、代替手段を提供することができる。保証期間のある家電等の製品販売については引き続き、保証書として有効の紙のレシートの発行が継続される。レシート用紙は感熱紙でリサイクルが難しく、製造にはパルプや水など原材料が多大に投入されることから、廃止できれば資源の節約になる。半面、二酸化炭素の排出削減ということになると効果には疑問がある。レシート1枚当たりの排出量は2.5グラム(二酸化炭素換算)だが、サーバーを利用したデジタルレシートの保存ややり取りには1通当たり3.8グラムから19グラムの排出量が発生する。すべてのレシートがメールでやり取りされるとしたら年間7万5000トンの二酸化炭素が余分に発生することになる。59%の人が紙のレシートを受け取り、残りの人の半分(20.5%)がデジタルレシートを選択、残りの半分がレシートを一切受け取らないという形になった場合で、炭素負荷はようやく現状維持になるという。 KSM News and Research -
2023.07.25
LVMH、パリオリンピック・パラリンピックのプレミアムパートナーに
高級ブランド大手LVMHグループは7月24日、2024年開催のパリオリンピック・パラリンピックのプレミアムパートナーとなることを発表した。契約額は未公表だが、報道によると1億5000万-2億ユーロ程度と見られる。これまでにプレミアムパートナーとなることを表明しているのはオレンジ(通信)、EDF(電力)、サノフィ(製薬)、BPCE(銀行)、カルフール(食品小売)。LVMHは、これまで各ブランドを通じてスポーツのスポンサー活動を行ったことはあったが、グループ全体でスポンサーとなるのはこれが初めて。同社は、オリンピック・パラリンピックにおいてフランスの職人芸のノウハウを活用する予定で、ショーメ(ジュエリー)がメダルのデザインを担当するほか、モエ・ヘネシー(ワイン、スピリッツ)がホスピタリティのスペースを提供するなどの形で協力する。セフォラ(化粧品・香水販売)は聖火リレーのパートナーとなり、これに伴い聖火リレーはルイヴィトン財団などLVMH関連の施設を経由する。ルイヴィトン、クリスチャンディオール、ベルルッティといったモード系ブランドの役割については今後発表がなされる予定だが、フランス選手団の開会式のユニフォームの提供などが予想されている。パリオリンピック・パラリンピック組織委員会がLVMHを含めた民間パートナーから確保した協賛額は12億ユーロに達する。 KSM News and Research -
2023.07.25
マクロン大統領のテレビインタビュー:秩序の維持を優先課題に
マクロン大統領は24日、ニューカレドニアの訪問を開始した。ニューカレドニアでは、独立派を含めた関係当事者らとの協議に加えて、海面上昇の脅威など、気候変動の影響にさらされる当地における対策推進が主なテーマとなる。大統領は24日、ニューカレドニア到着後に、民放TF1及び国営フランス2とのテレビインタビューに応じた。大統領は年金改革直後に、「100日間で再スタートを切る」ことを予告し、100日間の期間の締めくくりに国民向けに報告を行うと約束していた。予定より遅れてその約束が実現した。大統領はこの機会に、具体的な決定は示さず、夏休み明けに取り組む重要課題を列挙。大統領は特に、中流層向けの20億ユーロの減税を中期予算計画中に盛り込む方針を確認。「均衡ある」移民改正法案の可決の展望にも自信を示したが、採択強制措置(いわゆる「49.3」)を行使する可能性を否定しなかった。学校教育(欠勤教員を組織的に補充する、など)も重要政策に位置付けた。警察官による少年の射殺事件をきっかけに発生した暴動については、秩序の維持が最優先課題だとした上で、問題の根本として、一部の地区に困難が集中する状況が長らく続いていることがあるとし、均衡のとれた発展を実現するため、自治体と協力を進める方針を確認した。また、子どもの両親に責任ある対応を促すようにする考えも示した。暴動制圧時にマルセイユで警察官らが不当な暴力を行使した疑いで追及を受け、容疑者として警察官1人の勾留継続が決まったことで、マルセイユの警察官らが抗議行動を続けている件については、警察官らの不満に理解を示した上で、「誰も法律の上に立つことはできない」として、警察官の勾留を不当であるとは認めなかった。なお、この件では、警察庁のボー長官が、「警察官を刑事施設に収容するべきではない」と発言し、これが野党側などから強い批判を受けていた。 KSM News and Research -
2023.07.25
仏国民の14%が「欠乏」状態に
20日発表のINSEE調査によると、「物質的・社会的な欠乏」状態にある人は2022年初頭時点で900万人に上った。これは全国民の14%に相当する。2013年にこの調査が開始されて以来で最高の水準に達した。「物質的・社会的な欠乏」状態とは、日常生活における13の基準のうち5つ以上を満たしていない状態のことを指す。13の基準とは、「1000ユーロの予期せぬ出費に対応できる」、「壊れた家具を買い換えられる」、「1年間に1週間の旅行ができる」、「定期的に有料のレジャー活動ができる」、「自由に少額の支出ができる」、「住居の暖房を十分にできる」、「新品の衣類を購入できる」、「家賃、ローン、公共料金等を即時に払える」、「2日に1回、肉、魚又は植物性の同等物を食べられる」、「定期的に友人や家族と会食等ができる」、「靴を2組持っている」、「自動車を購入できる」、「自宅でインターネットが利用できる」で、これらの基準のうちの5つ以上を金銭的な理由により満たせない人が「欠乏状態」に分類される。足元でこうした人が増えた最大の要因がエネルギー価格の高騰で、住居の暖房が金銭的により十分に確保できない人は全体の10.2%となり、前年比で4.1ポイントの上昇を記録した。脆弱な家計は暖房用燃料に重油を使用していることが多く、その値上がりが特に響いていると考えられる。8月1日付では電力規制料金が10%引き上げられることになっており、状況はさらに悪化する可能性がある。このほか、26.4%の家計が「家具の買い替えができない」と回答した(4.3ポイント上昇)。地域別では、農山漁村地方で欠乏者が占める割合が1.8ポイント上昇の11.2%に達した。地方では重油暖房が多く、自動車への依存も大きいことから、燃料価格の上昇が打撃になったと考えられる。ただし、欠乏者が占める割合は都市部(人口密度により15.4-15.6%)の方が高い。 KSM News and Research -
2023.07.24
PSG、エムパベに「日本旅行なし」のお仕置き
仏大手サッカーチームPSG(パリ・サンジェルマン)は21日、日本遠征に主力選手のキリアン・エムバペを参加させないことを決めたと発表した。契約問題を巡る対立が新たな局面を迎えた。エムパベは2024年夏まであと1年間、PSGとの契約を残している。エムバペは契約を1年間延長するオプションを有しているが、先頃、これを行使しないことをPSG側に伝えた。エムバペは以前からスペインのレアルマドリードへの移籍を希望しており、1年後の契約満了を経て移籍する約束をレアル側と結んだ可能性がある。契約満了なら、レアルはPSGに移籍金を支払う必要はなくなり、安上がりになる。PSGの側としては、オプションも含めてエムパベから2015年夏まで残留する約束を取り付けたと考えていたため、エムバペからのオプション非行使の通告を裏切り行為とみて反発している。とはいえ、オプションの行使の是非を決める権利はエムバペ側にあり、PSGとして打てる手は限られている。来季を通じてエムバペを「塩漬け」にして試合に出さないという嫌がらせが最大の切り札となり、「日本遠征に連れてゆかない」決定は、PSGが「本気」であることをエムパベに伝えるのが狙いなのだろう。オプション行使の正式期限は7月31日に切れるが、エムバペがそれまでに翻意しないなら、「塩漬け」をちらつかせてトレード期限の8月31日までにエムバペを売り払いたい考えとみられる。エムバペ側がどう反応するか注目される。 KSM News and Research -
2023.07.24
水素燃料電池車を開発のHopium、会社更生法の適用下に
水素燃料電池の高級車を開発していた仏Hopiumが21日、会社更生法の適用下に入った。パリ商事裁判所が決定した。6ヵ月間の期限で事業を継続しながら再建を目指す。この期間は1回延長が可能だという。Hopiumは2019年に発足。水素燃料電池の高級車「Machina」の開発を進め、注目されていた。時速230km、航続距離1000km、充填時間は3分の高級車を12万ユーロで発売する計画で、去る10月にそのプロトタイプを公表していた。2025年にはベルノン市(ノルマンディ地方)に工場を開き、将来的に1500人を雇用し、2026年から2000台を生産するとの計画も公表、クレディアグリコル銀行からは1万台の予約も得ていた。しかし、それ以来で風向きは変わり、収入確保の展望が立たないまま、損失額は2021年の800万ユーロが2022年には2390万ユーロに拡大。2022年には116人を採用していたが、今年に入って数十人を削減。CEOも交代となった。2022年5月に鳴り物入りで取締役となり、会長に就任していたジェバリ元運輸担当相も3月の時点で退社した。同社はパリ株式市場の上場企業だが、株価は2021年中頃の42ユーロに対して、21日には75ユーロセントを割り込むまで低下している。同社は、水素燃料電池の特許25件余りの活用に力点を移し、自動車や船舶向けの燃料電池供給で巻き返しを図る意向だが、1年以内に量産化の道筋をつけることが存続の条件になる。 KSM News and Research -
2023.07.24
サフラン、RTXから飛行制御事業を買収
仏サフラン(航空機エンジンなど製造)は21日、米RTX(レイセオン・テクノロジーズ)よりコリンズ・エアロスペースの飛行制御・アクチュエーター事業を買収することで合意したと発表した。評価額を18億ドルに設定して買収する。RTXは防衛・航空宇宙部門を事業とする大手企業で、プラット・アンド・ホイットニー(航空機エンジン製造)等も傘下に収める。サフランが買収する事業は、2024年に売上高が15億ドル、EBITDAが1億3000万ユーロに上る見込みで、買収額のEBITDA倍率は14と高い。8ヵ所の工場(うち7ヵ所が英仏伊など欧州、1ヵ所がアジア)を保有し、従業員数は3700人に上る。顧客部門は、63%が商用機、25%が軍用機(F-35含む)、12%がヘリコプター。サフランは、自前の事業ともあわせて、この買収により飛行制御部門で世界最大手になるという。買収の実現には各国の競争当局の許可が必要で、12-18ヵ月がかかるとみられる。サフランにとっては、2018年のゾディアック買収以来の大規模な買収で、新型コロナ危機を挟んでサフランが再び買収攻勢に転じたことを印象付けた。買収は手元の現預金で賄い、債務水準にほとんど影響は出ないという。2028年までに5000万ドルのシナジー効果達成も見込む。 KSM News and Research -
2023.07.21
EU、トルコとの関係見直しを検討
欧州連合(EU)は7月20日、ブリュッセルで外相理事会の会合を開催し、トルコとの関係について協議した。トルコはEU加盟候補国であり、また、北大西洋条約機構(NATO)の重要な加盟国でもあるが、ロシアによるウクライナ侵攻に際して、EUやNATOとは一線を画し、ロシアとも友好的な関係を維持しつつ、黒海を経由したウクライナ産穀物の輸出に関する合意を仲介するなど、独自の役割を演じている。トルコはロシアが制裁を迂回する上でも一役買っており、EUはこうしたトルコの姿勢に苛立ちを示しつつも、同国の地勢戦略的な影響力が強まったことを考慮し、6月の首脳会議(欧州理事会)において、トルコとの関係見直しに向けた報告書の作成をボレル外務・安全保障政策上級代表に要請していた。さらに、7月に入ってから、懸案となっていたスウェーデンのNATO加盟について、トルコは加盟を認める交換条件として、凍結されたままとなっているEU加盟交渉の再開を要求。これを受けて、EUはトルコとの関係強化に向けた検討を加速せざるを得ない状況に置かれた。トルコは現在、深刻な経済危機に見舞われており、最大の経済パートナーであるEUとの貿易を強化し、EUからの投資を引き出す必要に迫られている。こうした状況も考慮して、EU外相理事会では、1995年に締結した関税同盟の強化、難民合意の見直し、ビザ規制の緩和、エネルギーや気候分野での協力強化などを検討。また、トルコが人権や法の支配に関する問題で具体的な改革を行う必要があるとの見方でも一致した。ただし、EUは現状ではトルコとの加盟交渉の再開に応じることは想定していない。交渉は2005年に開始したが、2016年にクーデター未遂事件が発生し、エルドアン政権が反対派の政治家やジャーナリストに対する弾圧を行ったことを機に、停止されたままとなっている。EUとしてはトルコが強権を改め、民主化への移行を目に見える形で実行しない限りは交渉を再開しない立場を貫いている。なお、トルコの加盟には、北キプロスを巡るキプロスやギリシャとの対立も障害となっているが、これについては、緊張緩和に向けた動きが進んだと評価されている。 KSM News and Research -
2023.07.21
タレス・グループ、位置情報システム「ガリレオ」で契約獲得
仏防衛電子大手のタレス・グループはこのほど、欧州連合(EU)諸機関より、位置情報システム「ガリレオ」関連の契約2件を獲得した。ガリレオのアップグレードに協力する。まず、タレスが67%を、伊レオナルドが33%を出資する子会社タレス・アレニア・スペースが、次世代ガリレオの地上施設整備に関する3億ユーロ強の契約を獲得した。ガリレオは2016年に運用を開始、現在は衛星22基体制で、あと12基(独OHBが建造)が打ち上げられることになっているが、欧州の次世代ロケット「アリアン6」の開発遅れの影響で配備が遅れている。これらは第1世代の衛星だが、第2世代の衛星の開発が既に端緒についており、タレス・アレニア・スペースとエアバスが12基の次世代衛星を2021年に受注している(14億7000万ユーロ)。12基の配備は2028年までに完了する予定で、第2世代においては、10cmの精度で位置情報を取り扱えることになる。タレス・アレニア・スペースは今回、そのための地上設備の整備事業を請け負った。これに加えて、親会社のタレスも、ガリレオのサイバーセキュリティ確保のための量子暗号技術の開発を請け負った。こちらは6000万ユーロの契約となった。 KSM News and Research -
2023.07.21
内閣改造人事が発表に
内閣改造に関する20日付の政令が同日に公表された。ボルヌ首相が続投し、小幅な改造がなされた。8人の閣僚が内閣を離れ、代わって8人が入閣した。同時に4人の閣僚が転任となった。2022年7月のボルヌ内閣発足時に市民社会の代表という形で入閣した非政治家のンディアイ教育相とブロン保健相が内閣を離れることが決まった。「マリアンヌ基金」を巡る不祥事で責任を追及されていたシアパ社会連帯経済閣外相も退任となった。このほか、コンブ連帯・自立・身障者相、クラン都市・住宅担当相、ダリューセック身障者担当相、ローム男女平等担当相、カランコ海外県・領土担当相の退任が決まった。教育相の後任にはアタル予算担当相が転任する。保健相の後任には、数日前までボルヌ首相の官房長を務めていたルソー氏が就任する。また、与党ルネサンスの下院議員団団長を務めていたベルジェ氏(女性)が連帯・家族相として入閣した。海外県・領土担当相には、中道与党MODEM所属のビジエ氏が入閣。都市・住宅担当相の役職は2つに分割され、住宅担当相として、ダンケルク市市長を務める左派諸派所属のベルグリエット氏が入閣、都市担当相には、マクロン大統領夫妻に近しいことで知られるルネサンス所属のアグレスティルバシュ下院議員(マルセイユ選出)が入閣する。この役職の分割は、先に郊外地区を中心に発生した暴動騒ぎへの対応であると考えられる。他方、教育相に転任となったアタル予算担当相の後任には、古くからのマクロン派として知られるカズナーブ下院議員が入閣を果たした。身障者担当相にはカタビ下院議員(女性)が入閣。若年者・国民役務担当相にはプリスカ・テブノ下院議員(女性)が就任する。他方、エルアイリ国民役務担当相は、生物多様性担当相に転任、クイヤール生物多様性担当相は、男女平等・ダイバーシティ・機会均等担当相に転任する。全体として、政治家としての経験が深く、マクロン大統領の信任も厚い人材が要職に起用された。下院で過半数を失った厳しい状況が続く中で、今後の国会運営に万全を尽くすことを狙った布陣となった。野党側からは、大同小異の無意義な改造であるとか、身内で固めてますます閉鎖的な陣容になったなどとする批判の声が上がっている。 KSM News and Research -
2023.07.20
父親の育児休暇、利用が拡大
父親のための育児休暇制度の利用率が少しずつ上昇している。保健省の統計部であるDREESの最新統計によると、育児休暇取得資格のある父親のうち、休暇を取得したのは2013年には68%だったが、2021年には71%まで上昇した(母親の育児休暇利用率は93%)。父親の育児休暇制度はフランスでは2002年に導入され、当初は日数11日までの休暇だったが、2021年には25日間に延長された。また、育児休暇とは別に、子どもの出生時に3日間の特別休暇を取得できる。しかし、仕事や雇用のタイプによって取得率にはバラツキがあり、自営業では46%、非正規雇用では51%であるのに対して、民間の正規雇用の従業員は82%、公務員・公共部門の正規雇用職員では91%に達している。ただ、自営業においても2013年の32%と比べて取得率は増加傾向にある。年齢別では、年齢が高く、仕事で責任ある地位を持つ父親では育児休暇の取得が少ない。また、母親が専業主婦であるか、失業者である場合にも、父親の育児休暇取得率は大きく低下する。父親の育児休暇取得は子どもの出生から6ヵ月以内に取得できるが、出生から1週間以内に休暇に入る父親の割合が、2013年の49%に対して、2021年には72%まで上昇した。DREESでは、「新生児のそばで父親が時間を過ごせることが神聖視されるようになったことを示しており、大きな変化である」と分析している。さらに、育児休暇を取得した父親の5人にほぼ2人が、RTT(時短に伴う追加有休)、無償休暇、労働協約の枠内で導入されているその他の休暇を組み合わせて取得している。こうした他の休暇の取得の有無も、育児休暇と同様に、父親の職場における地位により大きく左右される。のみならず、家事の平等な分担について高い意識を持つ父親ほど、休暇を多く取得する傾向がある。 KSM News and Research -
2023.07.20
SG-Forge、デジタル資産サービス業者(PSAN)認定を取得
仏大手銀行ソシエテジェネラルの子会社SG-Forgeは19日、デジタル資産サービス業者(PSAN)の認定を仏AMF(金融市場監督機関)から取得したと発表した。PSANの認定を得たのは同社が初めて。顧客に信頼性をアピールする材料となる。暗号資産の売買仲介を提供するにはPSANの登録業者となることが義務付けられる。SG-Forgeもこれまで、登録業者として役務を提供してきた。PSANには任意制度として認定業者という分類があり、こちらはより厳しい審査の対象となる。利益相反の排除や情報システムの強靭性などの点で、通常の銀行・金融機関並みの仕組みを整えることが求められ、さらに、賠償責任保険への加入が義務付けられる。これまでPSANの認定を得た業者はなく、SG-Forgeが初めての取得となった。SG-Forgeは去る4月に、ユーロに裏付けられたステーブルコイン「CoinVertible」(イーサリアムトークン)のサービスを開始している。PSAN認定業者として機関投資家向けに信頼性の高い暗号資産のサービスを売り込むことを目指す。なお、規制変更に伴い、2024年からは、新規業者はPSAN認定業者に準じる新認定を得ることが義務付けられることになっており、PSAN認定取得は新規制への適合という意味でも意義がある。 KSM News and Research -
2023.07.20
世帯の1割強にトコジラミ被害
仏ANSES(食品環境労働衛生安全庁)は19日、トコジラミ(南京虫)の被害に関する鑑定報告書を公表した。トコジラミの被害は、2017年から2022年にかけて、フランスの世帯の11%で発生したと推定されている。トコジラミの被害拡大は世界的な現象で、旅行する機会が増えたことが伝播の一因となっている。薬剤耐性を強めたトコジラミの出現で駆除が難しくなったことも影響している。中古品ブームや民泊の拡大も伝播に一役買っていると考えられる。被害は家計の所得水準に関係なく生じており、清潔さなどとは関係がないが、所得水準が低いほど、有効な駆除の対策を講じにくく、心身両面で被害が大きくなるという問題点がある。駆除には1世帯平均で866ユーロの費用がかかるといい、ANSESでは、低所得世帯向けに援助を行う必要性を指摘。また、被害発生の場合の当局への申告を義務付けて、伝播を食い止めるための有効な対策を講じることも勧告した。ANSESによると、2017年以来でトコジラミの被害額は年間2億3000万ユーロを超えている。医療面での費用は、精神的なケアが7900万ユーロ、身体的な治療が300万ユーロ、傷病手当金が100万ユーロに上る。駆除の方法としては、高温スチームクリーナー(部屋、寝具)と冷凍(衣服)が有効であるという。 KSM News and Research -
2023.07.19
暴動被害の復興法案、国会で近く可決へ
暴動で被害を受けた自治体の復興を加速する目的で政府が提出した緊急法案で、上院は18日、本会議での審議を開始した。国会会期が終了する今週中に可決される見通し。暴動では自治体の公共施設等が破壊や放火などの標的になった。政府の集計によると、750を超える公共の建物が被害を受け、うち50は完全に破壊された。法案は、政府が行政命令(オルドナンス)を通じて、再建の手続きを加速するための時限的な法的措置を講じることができるようにする内容で、具体的には、▽都市計画上の認可が付与されるのに先立って準備作業の工事を開始することを可能にする、▽請負業者の選定に当たっては、競争的な手続きは必要だが、事前の公示を経ずに手続きを開始することを認める、▽国が最大で自治体の工事の支出の100%を負担することを可能にする、などの措置が盛り込まれた。これとは別に、政府は、破壊行為の被害を受けて営業を再開できない商店主向けに、最大で6000ユーロの援助金を支給することを決めた。従業員には一時帰休の適用を受けて収入確保の道が開けているが、従業員身分ではない商店主は援助が得られないことを踏まえて、特別救済措置を準備した。具体的には、7日間の休業の場合は3000ユーロ、14日間までなら5000ユーロ、15日以上なら6000ユーロが支給される。申請は被害の証明を添えてURSSAF(社会保険料徴収機関)に行う。政府は申請から10日以内の支給を約束している。援助金には租税・社会保険料がかからない。政府はこれと並行して、保険会社との交渉を支援する調停人を任命した。 KSM News and Research -
2023.07.19
国会調査委報告、マクロン大統領とウーバーの不透明な関係を糾弾
国会調査委員会は18日、「ウーバー・ファイル」事件の調査報告書を公表した。マクロン大統領がウーバーとの間で不透明な関係を築いていたと糾弾する内容になった。「ウーバー・ファイル」とは、2022年7月に公表された調査報道案件で、フランスではルモンド紙などが、ウーバーの各国進出にまつわる攻撃的なロビー活動について内部情報をもとに報じていた。調査委はこの報道を受けて、野党側の要求により設置された。争点となったのは、マクロン大統領がオランド政権下で経済相を務めた2014年から2016年にかけての政府の対応で、ウーバーはこの頃、非業者による「相乗り」提供を建前とする「Uber Pop」アプリ(2014年2月から2015年7月まで)を提供していたが、その禁止に応じるのと引き換えに、政府から、契約先業者に義務付けられているトレーニング時間の短縮など有利な条件を取り付けた疑いがあると報じられていた。マクロン大統領は当時、経済相としてウーバーの責任者との会合に臨んでいたが、それは公表日程に含まれていなかった。報告書は、マクロン大統領が就任後に、2018年から2022年にかけて、大統領府スタッフとウーバーの間で34回にわたる意見交換がなされていることなどを挙げて、大統領とウーバーの間に不透明な関係が築かれていると問題視した。報告書は、左翼政党LFI(不服従のフランス)所属のシモネ下院議員が作成担当者を務めた。報告書は、12人の野党議員の賛成票により承認されたが、連立与党所属の10議員と、保守野党「共和党」所属の1議員は投票を棄権した。調査委のアダド委員長(与党ルネサンス所属)は、秘密合意などは存在しておらず、報告書の結論には賛同できないとコメントしている。 KSM News and Research -
2023.07.19
イルドフランス地域圏、2024年の公共交通料金値上げを予告
パリ首都圏の公共交通機関を統括するIDFM(イルドフランス・モビリテ)の理事会は、2024年の公共交通料金引き上げ案を可決した。値上げ幅は12月のIDFM理事会で決定されるが、2023年1月に定期券Navigoを値上げした際の12%増よりは低く抑えられる見通し。IDFMは、パリ郊外を周回する新たな地下鉄網整備計画グランパリ・エクプレスによる路線延長工事のため、2024年には8億ユーロの資金を必要とし、原則として政府が52.5%を、残りの47.5%を地方自治体と利用者が負担する。IDFMのペクレス会長(イルドフランス地域圏議会議長)は、利用者の負担になる値上げ幅を抑えるためには別の収入源が必要だとして、移動手段税(versement mobilité、従業員11人以上の企業が対象)の税率の0.2%引き上げや宿泊税の増額を政府に求める方針である。また、2024年のパリ五輪を観覧に来る短期滞在者用に割増料金を設定することも提案している。 KSM News and Research -
2023.07.18
カジノ、クレティンスキー氏による買収提案を承認
仏食品小売大手カジノは17日に取締役会を開き、チェコの実業家クレティンスキー氏が提示した出資提案について交渉を継続することを決めた。今月中の合意成立を目指す。カジノは64億ユーロの債務を抱えて経営が行き詰まっている。カジノの立て直しには、実業家ズアリ氏(冷食大手ピカールなど経営)が大物実業家のニエル、ピガスの両氏の協力を得て名乗りを挙げていたが、クレティンスキー氏の攻勢を受けて16日までに提案を取り下げており、候補はクレティンスキー氏のみとなっていた。同氏は、仏実業家ラドレドラシャリエール氏の協力を得て、カジノ救済の出資を提案。具体的には、両氏が9億ユーロの現金を注入し、債権者団からの支援も得て総額で12億ユーロを注入する。この現金資金を含めて、総額で60億ユーロの債務削減を実現する。クレティンスキーはこの取引後にカジノの経営権を獲得する。クレティンスキー氏はエネルギー部門で成功した実業家で、保有資産額は推定で97億ドル(86億ユーロ)に上る。フランスでも、石炭火力発電所などの資産を安値で買い集めて足場を作り、その後、メディア界にも出資。フナック・ダルティ(家電、書籍など販売)の筆頭株主ともなっている。ビベンディがラガルデール買収の許可を得る条件として売却するエディティス(出版)も買収する予定で、カジノ買収も実現すれば、フランス実業界の大物の地位がさらに固まる。 KSM News and Research -
2023.07.18
ボルヌ首相、交通安全対策を公表:首相続投も決まる
ボルヌ首相は17日、交通安全省間委員会(CISR)の会合を開き、新たな交通安全対策について決定した。会合後に政府は、薬物摂取のドライバーについて、自動的に免許停止処分とする方針を示した。適正検査を経て運転可能と認められるまで、停止処分を継続するという。政府はこの措置を導入する理由として、国内の自動車事故の2割が薬物摂取により発生していることを挙げた。政府はまた、飲酒・薬物摂取のドライバーが死亡事故を起こした場合に「交通事故殺人」という新たな罪状を適用する方針を発表した。従来、死亡事故の刑事責任は「過失致死(意図せざる殺人)」の罪状にて問われてきたが、近年、「意図せざる」という表現が被害者にとって侮辱的だとする議論が遺族から出されており、政府もこれに配慮した。ただし、名称の変更は象徴的なものにとどまり、量刑には変更は加えられない。名称の変更には、統計上で飲酒・薬物摂取のドライバーによる被害が見える化するという利点がある。このほか、2024年4月1日より、自動車保険加入のステッカーを廃止することも予告。警察官がナンバーから直接に保険加入の有無を照会できるようになるという。これとは別に、マクロン大統領は17日、ボルヌ首相を続投させる方針を固めた。ボルヌ首相は21日までに閣僚人事を提出する見通し。小幅な改造になると見られる。首相はまた、官房長にジャンドニ・コンブレクセル氏を任命。ルソー官房長の後任として17日付で就任した。コンブレクセル氏は69才、労働法規のエキスパートとして知られ、これまで法相官房長を務めていた。 KSM News and Research -
2023.07.18
フランスで電動トラックの走行中充電の試験が実施に
仏国内で、電動トラックの走行中の充電の試験が行われる。アスファルトの中に埋め込まれたコイルを利用して電磁誘導を通じて充電するシステムと、アスファルトに埋め込まれたレール式の充電器を利用したシステムの2種類を試験する。まず、今年9月に公的研究機関Ceremaが保有する施設内で試験を行った上で、パリ南郊の高速道路A10の4キロにわたる区間で3年間にわたり試験を実施する。予算は2600万ユーロ。これらのシステムを利用できるのは、特製の電動トラックのみとなっている。電磁誘導を利用するシステムはイスラエルのElectreonが供給する。同社はすでにイスラエルのほか、スウェーデン、米国、イタリアにおいてプロジェクトを進めている。一方、レール式のシステムはスウェーデンのElonroadが率いるコンソーシアムが供給する。同社はスウェーデン南部で同システムを2019年以来試験している。こうしたシステムを通じ、バッテリーのサイズを大幅に縮小することが期待できる。充電器の出力が弱い点や高コストなどが克服すべき課題となっている。 KSM News and Research -
2023.07.13
インドのモディ首相、革命記念日にフランスを公式訪問
インドのモディ首相は7月14日のフランス革命記念日の祝典に名誉ゲストとして招待され、13日から14日にかけてフランスを公式訪問する。14日の夜には、首相はマクロン大統領とともにルーブル美術館で開催される盛大な晩餐会に出席する。首相は訪問に先駆けて、仏レゼコー紙とのインタビューに応じ、米中対立で緊張が強まっているインド太平洋地域の安定と平和には、インド洋の大国であるインドとフランスの協力が必須だと述べた。インドとフランスは25年前に戦略パートナーシップを結んでおり、首相は、インドが欧米諸国と戦略パートナーシップを締結した最初の相手がフランスであり、インドとフランスは強固で一貫した信頼関係で結ばれており、相互信頼の度合いは比類がないとした。首相はインドの国際的な役割について、「グローバルサウス」のリーダーというよりも、新興国・途上国の地位向上と躍進を支える「力強い踏み台」であり、南北間の架け橋と位置づけ、G20議長国として1月に主催した「グローバルサウスの声サミット2023」に125ヵ国が参加して、インドがグローバルサウスの意見を擁護するべきだとの強いコンセンサスが得られたと強調。グローバルサウスの名において語ることで、南北を対立させたいわけではなく、逆に南北の結束を求めているとし、マクロン大統領も同じビジョンを共有しており、それがパリで6月に開催された「新グローバル金融協定のためのサミット」の精神でもあったと指摘した。首相はまた、インドは国連安全保障理事会の常任理事国に就任すべきであり、国連安全保障理事会の信用を維持するために必要だと主張した。首相はさらに、西洋と東洋の思想や哲学に優劣はなく、世界各地の良い部分を受け入れ、採用すべきだと述べた。またインドには古い文明から受け継いだ多彩なソフトパワーがあり、インドは世界に戦争や隷属を押し付けず、ヨガやアーユルベーダ(インドの伝統的医学)、独自の映画、料理、音楽、ダンスなどを提供してきたと強調した。 KSM News and Research -
2023.07.13
衣類の修繕に奨励金、10月にスタート
衣類の修繕に奨励金を支給する新制度が10月にスタートする。2023-28年に1億5400万ユーロの予算が計上される。政府は、各種の浪費を抑止する法令を制定し、リユースの奨励を進めている。家電については修理に奨励金を出す制度が既に始まっており、衣類にも同様の制度が導入される。衣類部門のリサイクル機関Refashionが運営する基金が設立され、制度は国の依頼を受けて同機関が運営する。ラベル認定を受けた修繕業者のサービス料金を基金が一部肩代わりする形で奨励金が支給される。案件により6ユーロから25ユーロの奨励金が支給され、例えば、靴のかかと直しなら7ユーロが支給される。フランスでは、2022年に衣類・靴・リネンの販売点数が33億に上った。前年から50万点増えている。年間に70万トンの衣類が廃棄されており、うち3分の2はリサイクルされずに最終処分の対象となっている。新制度の運営に当たっては、業者が奨励金の分を便乗値上げで着服するのを防ぐため、機関側が詳細な申告を業者側に求めてチェックを行うことになっている。業者の側からは、集客効果が期待できるものの、手続きが煩雑で、基金から奨励金が支給されるのが1ヵ月後になることから、資金繰りの点で問題があるとの意見も聞かれる。 KSM News and Research -
2023.07.13
仏企業倒産件数、4-6月期に大幅増:コロナ前の水準超える
調査会社アルタレスが12日に発表した集計によると、仏企業倒産件数(清算、会社更生法適用、民事再生)は4-6月期に1万3266件となり、前年同期比で35%の大幅増を記録した。2019年同期(1万2347件)を上回り、新型コロナウイルス危機前の水準を初めて超えた。部門別では、建設部門がまだ危機前の水準を下回っているものの、他の部門では倒産の増加が顕著で、特に、消費者と直接に関係がある分野(衣料、理髪店・美容室など)で目立っている。倒産件数の9割余りが零細企業(従業員数10人未満)で、その3分の4は即時に清算が決まった。中小企業・中堅企業の倒産件数は1100件を超えており、前年同期比で55%増を記録した。半面、設立3年以内の企業の倒産件数は1657件と、コロナ前の2000件程度と比べて低めにとどまった。倒産企業に関係する雇用数は5万5700人となり、こちらは前年同期比で82.3%の大幅増を記録している。四半期平均の平年値である4万2609人を大きく上回っており、2014年4-6月期以来で最大となった。倒産が雇用に及ぼす影響も懸念される。先に発表された中銀統計では、2023年6月までの12ヵ月間の倒産件数は4万8673件となり、その前の12ヵ月間の3万3750件と比べてやはり大きく増加している。こちらの統計では、コロナ前の平均値である年間5万9342件にはまだ届いていない。 KSM News and Research -
2023.07.12
水道料金を見直す自治体増える、水不足が背景に
水不足が常態化する中で、水道料金に工夫をする自治体が増えている。節約につながる消費行動を促す狙いがある。香水のメッカとして知られる南仏グラス市(アルプ・マリティム県)では、水の確保が難しくなる夏季を対象にした割り増し料金制の導入を決めた。6月から9月までの期間について、料金を20%引き上げた。逆に、10月から5月までの期間については、消費量により7.5-30%の料金引き下げを適用する。メリハリのある料金体系により、需給逼迫期に節水を促す効果を期待する。グラス市では、1年を通じて生活する人なら、全体として水道料金はむしろ安くなる(年間80立方メートルの消費なら1.8%安)と説明。セカンドハウスとして夏季にだけ滞在する人などの場合は割高になり、そうした層には、節水を促す効果もその分大きくなると見込まれる。北東部ムーズ県のルグランベルダン都市圏では、2018年から段階的に節水を促す料金体系の導入を始めた。その成果もあり、年間で20万立方メートルの節減が実現したという。雨水利用の集水・貯蔵設備(1000リットル)を、上水事業者ヴェオリア(環境サービス)の協力を得て住民に提供するキャンペーンも展開している。なお、11日に発表された最新集計によると、7月1日の時点で、全国の地下水系の68%で水位が平年を下回る状態にある。前月時点の66%と比べて状況はむしろ悪化した。フランスの南3分の1の地域では、降水量がところにより多く、地下水系の水位が現状維持又は上昇したところもあるが、全体として水位の低下が目立った。ローヌ川流域と、地中海岸の一部地域では特に厳しい状況が続いている。 KSM News and Research -
2023.07.12
車両乗り入れ制限地区ZFE、政府が設定義務の緩和に応じる
市街地に車両乗り入れ制限地区ZFEを設定する義務について、政府が依頼した報告書が10日に提出された。義務の緩和を進言する内容となった。政府は、乗り入れ制限強化を続ける義務を、大気汚染水準が基準を超えている都市圏に限定して適用することをひとまず決定。報告書の提言を検討することを約束した。報告書は、トゥールーズ市のムーダン市長をまとめ役として、各方面との協議を経た上でまとめられた。報告書は、乗り入れ制限について、クリーンカーを購入する余裕がない低所得層にとって打撃となり、不公平を助長する恐れがあるとし、制限強化に伴い格差是正のための支援措置を講じるよう求めている。ZFEは、人口15万人超の43ヵ所の都市圏において、2025年までに設定することが義務付けられている。これまででは11都市圏が導入を終えている。車両の乗り入れ制限は、「Crit’Air」と呼ばれる車両の汚染度分類(汚染度が最小のものを「Crit’Air1」として6段階に分類)に基づいてなされるが、大都市では、「Crit’Air 3」までを制限の対象に広げる段階に差し掛かっており、一部では反対運動なども生じている。政府は、大気汚染水準が基準を超えている5都市圏(パリ、リヨン、マルセイユ、ストラスブール、ルーアン)でのみ厳格化の日程を維持し、その他の都市圏では各自の判断に委ねることを認めた。 KSM News and Research -
2023.07.12
ビールとワインが力を合わせて「ヴィエール」に
ビールとワインを合体させたアルコール飲料が静かなブームを迎えている。涼し気でさわやかな飲み口は夏にもよく合っている。この種の飲料はフランスではワイン(vin)とビール(biere)を重ね合わせてヴィエール(viere)などとも呼ばれる。アイデアは欧州各地で見受けられ、ベルギー・ビールのトロワ・フォンテーヌやティルカン、チェコのWild Creatures(ビール)などにも試みがある。イタリアで2000年代に現れた「グレープ・エール」が起源という見方もある。フランスでは、クラフトビールのGalliaなどが熱心に取り組んでいる。麦芽とぶどうの発酵を同時進行で行い、6ヵ月以上というビールとしては長い熟成期間を必要とする。アルコール度数は7-11%と、ワインとしては軽めの数字となる。フルーティーで酸味があり、滑らかな舌触りの発泡酒が仕上がる。ボルドーのジョスラン・シャゼルでは、メルロ種のぶどうを用いて、麦芽9、ぶどう1という比率で発酵を行う。ワインに用いてきた樫の樽で、8ヵ月から数年間という長期に渡り熟成させる。樽の個性もあって一期一会の仕上がりになるという。フランスでは、ビールをよく飲む人が全体の56%、ワインが好きな人が55%を占めており、両者の人気は拮抗している。どちらも好き、という人にアピールする余地がある。小売では1本15ユーロ程度が相場という。 KSM News and Research -
2023.07.11
2022年夏季、猛暑のため欧州では6万1672人が死亡
欧州では、2022年夏季(5月30日から9月4日まで)に、猛暑のために6万1672人が死亡したものと推定される。研究機関のINSERM(フランス)とISGlobal(スペイン)が共同でまとめた推計を専門誌「Nature Medicine」上で公表した。この推計では、2015-22年の機関の欧州35ヵ国の823地域について、気温の推移と死亡者数の推移のデータを踏まえて、気温上昇に伴い増えた死亡者数の把握を試みた。2022年には、対象となったすべての期間(週単位で把握)において、気温が平均よりも高めで推移した。特に7月11日から8月14日までの期間は温度が高く、この時期に3万8881人が死亡している。高温がピークを迎えた7月18-24日に限ると1万1637人が死亡した。フランスでは、1991-2020年の期間の平均比で、気温が2.43度高い水準で推移。この上昇幅は対象国の中で最も大きく、これに、スイス(2.30度)、イタリア(2.28度)、ハンガリー(2.13度)、スペイン(2.11度)が続いた。半面、死亡者数が最も多かったのはイタリア(1万8010人)で、これにスペイン(1万1324人)、ドイツ(8173人)が続いた。フランスは4807人だが、公的機関サンテ・ピュブリック・フランスは別の根拠に基づいて、夏季の猛暑による死亡者数を7000人とする推計値を示している。 KSM News and Research -
2023.07.11
パリ市内のセーヌ川に水浴場3ヵ所、2025年夏にオープンへ
パリ市のイダルゴ市長は9日、2025年夏に市内を流れるセーヌ川の3ヵ所に水浴場を開く計画を明らかにした。2024年のパリ五輪でセーヌ川はトライアスロンなどの競技場として利用されるが、開催にあわせて続けてきた水質改善の努力の成果として、恒常的な水浴場をオープンする。サンルイ島の右岸寄りの区間(4区)、「白鳥の遊歩道」と左岸(グルネル港)の間の区間(15区)、国立図書館に臨む右岸側のベルシー河岸(12区)の3ヵ所が整備される。セーヌ川では、かつては水浴が盛んに行われており、1900年の五輪ではパリとその郊外のセーヌ川で多くの競技が行われた。1923年に水浴が禁止されるまでは広く楽しまれたレジャーだった。水浴再開は長年の課題で、故シラク大統領は、パリ市長を務めていた30年ほど前に、「3年後には私が自分で水浴をしてみせる」と豪語したものだが、その約束を果たさないまま亡くなった。それがようやく実現することになる。政府は2016年より大規模な設備投資を行い、セーヌ川の水質改善を進めてきた。総額で14億ユーロ(うち半額程度を国が負担)を投資し、セーヌ川とその上流の支流であるマルヌ川沿いの汚水処理場の近代化をはじめとする取り組みを進めてきた。セーヌ川に係留されている船舶(260隻)の下水網への接続は半数が終了しており、五輪前にすべての接続が終了する。上流で生活排水が直接に川に流れ込んでいる問題では、違法状態の25%がこれまでに解消され、五輪開催前の時点でこの割合が50%に引き上げられる見通し。大量の雨が降った際に、雨水が川に流れ込んで水質を一時的に悪化させる問題では、オーステルリッツ駅近くに5万立方メートルの地下貯水施設を整備するなどして影響を軽減する体制を整える。 KSM News and Research -
2023.07.11
エアバス、トゥールーズにA321の組み立てラインを開所
エアバスは10日、本社がある仏トゥールーズ近郊のブラニャック市の工場で、A321の組み立てラインの開所式を行った。ルメール経済相ら閣僚4人が列席、1000人程度が招待された。A321は、エアバスの主力となっているナローボディ機「A320シリーズ」の一つで、エアバスの現受注残約8000機のうち半分程度を占める。A320シリーズの受注残の中では6割程度がA321となっている。エアバスは、A320シリーズの生産ペースを、2022年末の月産45機に対して、2026年には75機まで引き上げる計画で、ブラニャック工場は増産の一翼を担うことになる。ブラニャック工場では、生産が打ち切られた超大型機A380が組み立てられていた。その跡に、自動化技術を突き進めた新鋭生産ラインを整備した。2022年末に稼働を開始しており、同ラインの初号機の組み立てが進んでいる。A320シリーズの組み立てラインは現在、独ハンブルクに4本、トゥールーズに2本、米モービルに1本、中国の天津に1本、合計で8本を数える。米中の拠点はそれぞれ2025年に新たなラインを1本ずつ追加することになっている。ブラニャック工場の新生産ラインは、トゥールーズの別工場の生産ラインの事業を段階的に引き継ぐことになる。これにより、シリーズの組み立てラインは世界で10本、すべてがA321に対応可能となる。長胴型・長距離機A321XLRの組み立ては現在ハンブルクで行われているが、ブラニャック工場でも対応が可能で、将来的に組み立ては分散して行われる。 KSM News and Research -
2023.07.10
夏季休暇始まる:政府は在来線乗車券の割引を特別導入
7日で学校が終業し、夏季休暇が始まった。ボーヌ運輸担当相は同日、帰省シーズンの開始にあわせてパリのオーステルリッツ駅を訪問したが、この際に、在来線乗車券の割引販売について発表した。「アンテルシテ」に分類される在来線長距離列車について、8月31日までの予約・乗車券20万枚を19ユーロで販売する。予約受付は同日に開始され、15日(土)で終了する。国が補助金を支給して低料金を実現する。パリ・トゥールーズ、ボルドー・マルセイユ、ナント・リヨン、パリ・ブリアンソン(夜行)など、休暇先に行くのに利用できる長距離路線が対象となる。高速鉄道(TGV)よりも時間がかかるが、運輸担当相は、今回のキャンペーンについて、料金が半分になるサービスだと説明、成功したらさらに続けるとも約束した。最近では、鉄道料金の高さを問題視する声が高まっている。去る4月に発表された世論調査によると、57%の人が、鉄道利用を拡大するには何よりもまず有利な料金を設定すべきだと回答している。運輸担当相は料金面で国鉄SNCFと国が共に努力すると言明、来年の夏までに、若年者を対象にローカル線の列車に乗車できる統一パスを導入する計画などを明かした。 KSM News and Research -
2023.07.10
バカロレア試験、合格率は90.9%に
教育省は8日、バカロレア(高校卒業資格)試験の暫定結果(追試後、異議申請の審査前)を発表した。前年よりもわずかに合格率が低下した。バカロレアは高校卒業時に行われる国家試験で、合格者には高等教育機関への進学が約束される建前になっている。今年の受験者数は73万9500人となり、うち67万2400人が合格した。合格者数は前年より8000人増えた。合格率は90.9%で、前年に比べて0.2ポイントのわずかな低下を記録した。種類別では、普通バカロレアが0.4ポイント低下の95.7%、技術員バカロレアでは0.8ポイント低下の89.8%、職業バカロレアでは0.3ポイント上昇の82.7%となった。同じ世代全体のバカロレア取得率は79.3%となった(高校に進学しない人や、中途退学者があるため、バカロレア合格率よりも低くなる)。その内訳は、普通バカロレアが43.6%、技術員バカロレアが15.7%、職業バカロレアが20.0%だった。バカロレア試験はマクロン政権下で大幅な改革の対象となった。内申点の比重を6割、試験の比重を4割とし、口頭での表現力を問う口頭試問を導入してその結果を特に重視する形に改められた。改革は2019年に決定されたものの、新型コロナウイルス危機による混乱のため、施行が延期され、この2023年度の試験が改革完全実施の初年となった。バカロレア改革については、大衆化し、陳腐化したバカロレアが本来の重みを取り戻すことに期待する向きもあったが、合格率に大きな変化は見られなかった。 KSM News and Research -
2023.07.10
政府、市町村長への暴力対策を公表
フォール地方自治体担当相は8日付のルモンド紙とのインタビューの中で、暴力行為の標的となる市町村長らを支援するための措置について説明した。500万ユーロ規模の支援を約束した。警官による少年射殺事件をきっかけとして発生した暴動では、市役所など公共施設が標的になる場合も多かった。また、ライレローズ市では、市長の自宅が襲撃を受けて、市長とその家族が負傷する事件も発生し、広く衝撃を与えた。それ以前から、市町村長が脅迫や暴行などの標的となる事件が増えており、社会問題としてクローズアップされていた。政府は、市町村長らの間で広がる懸念の払しょくに向けて、一連の支援措置を準備した。まず、市町村長らが法務支援を必要とする場合、市町村議会の議決を経ずに、ただちに支援が認められる形とすることを決定。法務支援の費用については、人口1万人未満の自治体について、国が全額を負担する(現在は3500人未満の自治体が対象)。暴行の被害を受けた市町村長らについては、家族を含めてメンタルケアを提供する(費用は100万ユーロ)。また、危険な状況に遭遇した場合に救助を要請するための通信装置が支給される。さらに、監視カメラの設置に300万ユーロが投じられ、また、必要に応じて、市町村庁舎や市町村長の自宅の安全確保のために必要な手段が、検事正の許可を得た上で講じられる。暴力行為に対する処罰の強化については、制服警官等への暴力行為並みの処罰を適用する旨を定める法令改正が今秋にも提案される。これとは別に、警官の暴力に反対するデモ行進がパリで8日に行われた。警官による暴力で死亡した疑いがあるトラオレさんの遺族らの呼びかけで行われたデモ行進で、当局は時節柄危険だと判断して開催を禁止したが、主催者らは禁止に従わずにデモを実行した。2000人程度が参加したが、懸念されたような大規模な騒乱や破壊行為は発生しなかった。 KSM News and Research -
2023.07.06
フランス軍による戦車ルクレールの改修、時代遅れのリスクも
フランス軍保有の戦車ルクレールの改修が進められている。2015年に開始され、段階的に200台が2029年までに改修される。ルクレールは1993年に配備が始まった。本格的な改修を経て、就役期間の延長を図る。改修は、独仏の2社が合併して発足したKNDS社が請け負い、「ルクレールXLR」として近代化された改修モデル2台がこれまでに引き渡された。改修では、主にアフガニスタンでの戦闘の経験を踏まえた改良がなされる。軍事通信システム「Scorpion」の配備により、ドローンなどとも連携した作戦行動が展開できるようになる。対地雷や、ロケット弾による側面の攻撃への耐性を強めるための装甲強化も行われる。遠隔操作の爆弾の起爆を阻止する電波かく乱システム「Barage」(タレス社製)も配備される。半面、装甲の強化などで重量が増大し、砲弾の搭載量を減らすことが必要になった。また、ウクライナにおける戦闘でドローンによる攻撃に備える重要性が認識されるに至ったものの、今回の改修はそれ以前に設計が決まったこともあって、ドローンへの対応(上部からの攻撃への対応が弱い、搭載されている機銃は空に向かっては発射できない)が弱いことも問題視されている。独仏共同の後継戦車の開発計画が進められているものの、その実現は2035年以降になる。それまではルクレールXLRが頼みの綱となる。 KSM News and Research -
2023.07.06
ネットフリックス、2022年にも仏でのトラヒックでトップ
ARCEP(仏電子通信・郵便規制機関)によると、米ネットフリックスは2022年に仏でのインターネット・トラヒックの19.7%を占め、トップを維持した。2位は米グーグルで10.7%。次いで、米アカマイ(コンテンツデリバリーネットワーク)が8.9%、米メタ(8.2%)、米アマゾン(7%)で続く。この5社だけで、仏トラヒックの54%を占める。2021年にも、この5社だけで51%を占めていた。仏でのトラヒックに占める米インターネット大手の比重は依然として大きい。ただし、アップルとマイクロソフトは、それぞれ1.3%と1%に留まっている。 KSM News and Research -
2023.07.06
仏資産家トップ500の合計資産額、過去最高の1兆1700億ユーロに
週刊誌シャランジュがまとめたフランスの「職業人資産家トップ500」によると、500人の合計資産額は2023年に1兆1700億ユーロに上った。前年の1兆20億ユーロを上回り、過去最高を記録した。これはフランスの国内総生産(GDP)の45%に相当する。同誌がこの集計を始めた2009年には、この比率は10%に過ぎず、年を追うごとに資産額は増大している。資産額の増大は、やはり高級ブランド部門の企業の時価総額の増大によるところが大きい。LVMHのアルノーCEOの資産額は540億ユーロ増加し、2000億ユーロに達した。アルノー氏は世界最大の資産家にもなった。上位は高級ブランド部門が占めており、2位はエルメスの創業者一族(591億ユーロ増)、3位はシャネルを所有するWertheimer兄弟(200億ユーロ増)、4位はロレアル大株主のベタンクールメイエール氏(148億ユーロ増)と続く。ベタンクールメイエール氏は女性として世界トップの資産家となっている。この4者だけで増分は1500億ユーロ近くとなり、これは、トップ500の資産額の増分合計(1680億ユーロ)の大部分を占めていることになる。トップ500の資産額最低ラインは2億3500万ユーロとなり、前年の2億ユーロを大きく上回った。これは前例のないペースの上昇であるという。 KSM News and Research -
2023.07.05
ビベンディ、パリの老舗書店を買収へ:週刊誌ガラはルフィガロ・グループに売却へ
仏メディア大手ビベンディは7月4日、パリ・サンジェルマンデプレ地区にある老舗書店「レキュームデパージュ(L’Ecume des Pages)」を保有するESF社の買収に向け独占交渉を開始したと発表した。2ヵ月の期限で交渉を行う。報道によれば、ビベンディは、所有者であるブザンソン一族に対して450万ユーロでの買収を提案。象徴的な文化施設の発展に貢献するという方針からの投資であり、オランピア(コンサートホール)や制作座(劇場)への投資と同様の考えに基づいていると説明している。ESFは2016年の売上高が430万ユーロ。サンジェルマンデプレ地区では老舗の書店が相次いで姿を消しており、ビベンディはこの投資でレキュームデパージュの存続をアピールする。また、ビベンディは同日、子会社のプリスマ・メディア社が資産売却に向けて日刊紙大手ルフィガロ・グループと独占交渉を開始したと発表した。プリスマ傘下の芸能週刊誌「ガラ(Gala)」を売却する。ビベンディは、ラガルデール・グループの買収で欧州委員会から許可を取り付ける上で、一連の保有資産の売却を約束しており、ガラもその中に含まれる。ガラは、年商が3200万ユーロ、営業利益は1000万ユーロ。2022年の有料発行部数は平均で12万8000部弱で、前年比で4.7%減少していた。報道によると、売却額は6000万-8000万ユーロ程度の見込み。ビベンディはこのほか、出版子会社のエディティスを、チェコ人実業家クレティンスキー氏に売却する方向で交渉を進めている。ビベンディは、ラガルデール傘下の出版大手アシェットを手元に残すため、これらの資産売却を約束した。 KSM News and Research -
2023.07.05
マクロン大統領、暴動被害の自治体に復興加速を約束
マクロン大統領は4日、大統領府に全国の市町村長302人を集めて会合を開いた。警官による少年射殺事件をきっかけに全国で暴動騒ぎが発生したのを受けて、対策を協議した。暴動騒ぎは3日夜にはかなり下火となり、4日夜には鎮静化した。今回の暴動では、ライレローズ市で市長自宅が襲撃の対象となったのをはじめとして、市役所や学校など公共施設が破壊や放火の標的となることも多かった。大統領は、被害が特に大きかった500の市町村の首長を招待し、うち302人が出席した。大統領は会合の際に、公共施設の再建加速のための立法措置を講じると約束。2018年に郊外地区振興プラン(いわゆるボルロー・プラン)の策定を依頼しておきながら、これを採用しなかったことを、拙いやり方だったとして謝罪した。大統領はその上で、今回の事件の教訓を踏まえて取り組むべき課題として、国と自治体の間の関係の改善と本格的な政策の推進、未成年者に対する司法制度の改善、騒ぎを煽る役割を果たしたSNSへの対応、未成年者の暴動への参加を抑止しなかった保護者らの責任追及(金銭面での制裁に言及)、などを挙げた。左派系の参加者からは、郊外問題への政府の積年の無策を追及する声が目立った。右派系の参加者からは、大統領の言葉が行動を伴うかを注視するという慎重な意見が聞かれた。マクロン大統領は9月下旬までに再び会合を開き、成果を報告すると約束した。 KSM News and Research -
2023.07.05
商業・法人登記のオンライン窓口、稼働を再開
経済省はこのほど、商業・法人登記のオンライン窓口「全国法人登記所(registre.entreprises.gouv.fr)」の運用を再開した。このサービスは年頭に開始されていたが、不具合が続出し、一時的に閉鎖されていた。オンライン窓口は、商人や企業、農業経営体など事業者の種類によって分かれていた窓口を一本化し、ユーザーにとっての利便性を高め、集積・公表されるデータの質やアクセス可能性を高めることを目的としていた。登記の手続きや、財務諸表の提出など関連するすべての手続きを一括して行える窓口となり、その開設に伴い、オンライン手続きが義務化され、紙による申請や提出は廃止された。窓口の運営はINPI(フランス産業財産庁)に委任された。しかし、その規模の大きさもあって、技術的な不具合が続発し、一時的なサービス停止に追い込まれた。当局はテコ入れを経て徐々にサービスを再開し、6月30日付ですべての機能の提供を再開した。ただ、単一窓口の利用は義務付けず、従来通りに商事裁判所が運営する「Infogreffe」の利用も認め、また、紙による提出も年内までは受け付けることにした。負荷の分散により体制を整えて本格運用への移行を目指す。 KSM News and Research -
2023.07.04
スペイン、EU議長国としての優先課題はウクライナ支援
7月1日から年末まで欧州連合(EU)理事会の議長国(加盟国が半年毎の輪番制で担当)を務めるスペインは、ウクライナへの支援を優先課題に掲げた。サンチェス首相は1日、早速キーウを訪問してゼレンスキー大統領と会談したほか、議会で「ウクライナほどEU加盟候補として相応しい国はない」と強調した上で、戦争が続いている状況での加盟手続きは簡単ではないとも説明した。ただし、サンチェス首相は、先ごろの地方選挙で与党が惨敗した後、解散総選挙を7月23日に実施することを決めており、政権を維持できる見込みは薄い。中道右派野党・国民党(PP)が選挙で第一党となり、過半数を確保するために極右政党VOXとの連立政権を樹立した場合には、議長国としてスペインの方針を変更する可能性もあるとみられている。 KSM News and Research -
2023.07.04
ルトラン、800万ユーロを調達
西部地方で地方都市間の高速鉄道路線の運行を目指す民間企業ルトラン(Le Train)が3日、800万ユーロの資金調達を完了したと発表した。2025年にも営業運転の開始を目指す。今回の資金調達には、Aquiti Gestion(資産運用)、Charente Perigord Expansion(地元自治体の投資組織)、NACO(地元ヌーベルアキテーヌ地域圏等の投資会社)と、クラウドファンディングのTudigoが加わった。ルトランは2020年の設立で、2022年の資金調達では、クレディミュチュエル・アルケアとクレディアグリコル・シャラントペリゴール地方金庫(いずれもリテール銀行)から出資を得た。2022年12月には鉄道会社として認可を取得し、開業に向けた準備を進めている。今回調達した資金は、情報処理システムの開発と、運転士、乗務員、営業担当のトレーニングに充当される。年内には再度資金調達を行い、試験運転の開始準備と人員の採用を進める。車両の調達では既にスペインのタルゴ(スペイン国鉄RENFE傘下)に10本の発注で合意を結んでいる。ルトランは、ボルドー、レンヌ、ナント、トゥールを結ぶ西部地方の高速鉄道5路線を運行する計画で、ポワティエ、アングレーム、アンジェ、ラロシェル、アルカションにも乗り入れる。1日につき50列車を運行する計画で、年間の旅客数は300万人超を見込む。 KSM News and Research -
2023.07.04
暴動の企業への被害額、10億ユーロ超か
警官に少年が射殺された事件をきっかけに発生した暴動は、1週間近く続き、商店が襲撃や略奪の対象となる事案も多く発生した。7月1日まででは、全国の10ヵ所余りのショッピングセンターと、200を超える大手チェーン店等が襲撃と略奪の被害を受けた。放火を受けた店舗は15に上った。たばこ販売店も250店が被害を受け、銀行支店も250ヵ所が被害を受けた。外食店舗等の被害も多い。被害額の推計は今のところ出ていないが、「黄色蛍光ベスト」の抗議行動(2018年から2019年にかけて2億4900万ユーロ)や、2005年に発生した都市郊外の暴動事件(警官隊に追われた少年が変電施設に逃げ込み、感電して死亡した)の際の2億400万ユーロをさらに上回るものと予想されている。経営者団体MEDEFのルードベジュー会長は、4日に公表されたルパリジャン紙とのインタビューの中で、「観光業への影響を除いて10億ユーロ超」とする数字を示している。ルメール経済相は1日の時点で、保険会社に対して迅速な保険金の支払いに応じるよう呼びかけると共に、自己負担額を極力縮小することに応じるよう求めた。保険業界団体の側では、自己負担額の縮小については言及しておらず、被害を受けた商店の側では懸念を強めている。フランスのイメージ低下に伴う観光業への影響も懸念されている。パリ市の観光局では、外国客の予約のうち20-25%程度がキャンセルされたとの推計を示している。うち米国人観光客の予約取り消しは15%程度であるという。 KSM News and Research -
2023.07.03
少年射殺事件に伴う暴動騒ぎ:マクロン大統領、ドイツ公式訪問を延期
パリ西郊ナンテール市で6月27日に発生した警官による少年射殺事件をきっかけに、全国で暴動騒ぎが続いている。7月1日から2日にかけての夜にも、前日までよりは下火になったものの、5日連続で騒乱が発生した。当初は、事件があったパリ郊外に騒乱が集中していたが、その後は大都市を中心に全国に広がった。花火を投擲物代わりに使う治安部隊への攻撃や、警察署のほか、市役所や学校などの公共施設を狙った破壊や放火、公共交通機関(バス、トラムウェイ)を狙った放火、さらに、商店を狙った破壊や略奪などの被害が相次いだ。暴動に加わっているのは主に若年者で、中学生のような低年齢の子どもも多い。逮捕者の3分の1は、低年齢層を含む未成年者だといい、政府や市民団体等は、保護者らに対して、未成年者を夜間に外出させないようにして、保護者としての責任を全うするよう呼びかけている。SNS上で破壊や略奪の動画を投稿する若者も多く、この一連の騒動が「祭り」として捉えられていることをうかがわせている。暴動騒ぎは政治的な論争も引き起こしている。左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏は、鎮静化を呼びかけているものの、暴動騒ぎを非難することは拒否しており、そうしたメランション氏の態度を疑問視する声は、左派勢力内からも上がっている。その一方で、極右政党RNは、非常事態宣言の発令や軍隊の投入などを声高に要求し、マクロン政権の対応に欠陥があると攻撃している。マクロン大統領は、7月2日よりドイツを国賓として公式訪問する予定だったが、状況の重大性を踏まえてこれを延期することを決めた。3ヵ月前にも、英国のチャールズ国王の訪仏が、年金改革反対のストの余波で延期になっており、今回も再び、重要な外国訪問が国内情勢により実行できなくなった。マクロン大統領は、年金改革に伴う混乱を経て、「100日間で再スタートを切る」と宣言したが、その100日間が終わり、総括の段階に差し掛かる中で、ちょうどこの暴動騒ぎに見舞われた。対外的な評判の低下に加えて、国民の支持回復に向けた取り組みが足場を掘り崩されたことになり、打撃は大きい。 KSM News and Research -
2023.07.03
住宅ローン上限金利、5%台に
7月1日付で法定上限金利が再び引き上げられた。償還期限20年以上の住宅ローンでは上限金利が5.09%となり、前月より41ベーシスポイント引き上げられた。上限金利が5%台に乗るのは2012年以来で初めて。金利上昇に伴い、上限金利と政策金利の差が縮まり、銀行が与信をしにくくなっていることに配慮し、最近では法定上限金利の改定が毎月実施される形に改められていた。法定上限金利の引き上げが始まる直前の2022年4月以来では、実に270ベーシスポイント近くの引き上げがなされたことになる。償還期限10年以上20年未満の上限金利も4.84%まで引き上げられた。業界関係者は、この調子だと年末には上限金利は6%を超えると予想している。これにつられて、銀行が設定する実効金利も、今夏には4%に、また2024年初頭には5%にまで上昇するものとみられる。銀行がこれで融資をしやすくなり、住宅ローンから締め出されていた層の利用が増えることも期待できるが、与信が拡大するのは10月以降になるという見方もある。また、金利上昇により住宅購入の購買力はそれだけ目減りすることになり、大きく価格が低下しない限りは、住宅投資が活性化する可能性は薄い。 KSM News and Research -
2023.07.03
仏公的債務残高、3兆ユーロを初めて突破
6月30日発表のINSEE速報によると、3月末時点の仏公的債務残高は3兆134億ユーロとなり、3ヵ月間で634億ユーロ増加した。初めて3兆ユーロの大台に乗った。1-3月の3ヵ月間では、国の債務が486億ユーロの純増を記録。社会保障会計の債務も174億ユーロの純増を記録した。地方自治体はほぼ横ばい(2億ユーロ増)で、各種行政機関の債務は28億ユーロの純減を記録した。コロナ禍への対応に続いて、エネルギー価格上昇等への対応が債務を押し上げている。公的債務残高の対GDP比は3月末時点で112.5%となり、3ヵ月前の111.9%から目立って上昇した。政府はそれでも2023年末には109.6%まで低下すると予想。なお、年頭は国債発行が立て込む時期でもあり、例年、この時期に公的債務残高が上昇し、年末にかけて低下するという推移を辿るのが通例となっている。公的債務残高の3兆ユーロ突破は予想されていた事態であり、それ自体に驚きはないが、格付け会社S&Pによる国債格下げを逃れたばかりの政府にとって、イメージの悪化は避けられない。政府は2027年時点で公的債務残高の対GDP比を108.3%にまで引き下げることを目標に掲げているが、会計検査院がその達成に厳しい努力が必要であることを指摘したばかりだった。 KSM News and Research -
2023.06.30
グリボー氏のわいせつ動画事件公判:被告人2人に禁固6ヵ月が求刑に
バンジャマン・グリボー氏を政界からの引退に追い込んだわいせつ動画事件で、動画を流布した2人の被告人の公判が28日にパリ地裁で行われた。グリボー氏はマクロン政権で報道官を務め、上り調子の若手政治家だった。パリ市議会選挙への出馬を進めていた2020年2月に、自身のわいせつ動画がネット上で出回り、同氏は出馬を取り下げ、政界から引退していた。問題の動画は、2018年にグリボー氏が自ら、婚外交渉の相手だったアレクサンドラ・ドタデオ氏(現在32才)に送付したもので、ドタデオ氏の交際相手であるロシア人「アーティスト」のピョートル・パブレンスキ氏(39)がネット上で公開した。グリボー氏の提訴を受けて、検察はドタデオとパブレンスキの両氏を「プライバシー侵害」と「わいせつ動画の流布」の容疑で起訴した。両被告人は遅れて法廷に到着。アレクサンドラ・ドタデオ被告人は、人魚を思わせる水色のつややかなドレスを着て、近著を表紙が見えるように抱えて登場。なるほどこの女性に見据えられたら仕方がないなと思わせずにはいないオーラがあった。パブレンスキ被告人は法廷で、すべては政治家の偽善を暴く芸術作品であるとの主張を展開した。ドタデオ被告人は、伴侶であるパブレンスキ被告人を称賛した上で、動画が公開されることは知らなかったと言明した。検察側は、両者に結託があったのは明らかだとした上で、論告求刑において、パブレンスキ被告人には禁固6ヵ月の実刑を、ドタデオ被告人には同じく禁固6ヵ月だが執行猶予付きの判決を請求した。判決は10月11日に下される予定。 KSM News and Research -
2023.06.30
サノフィ、mRNAワクチン技術で巻き返し図る
仏製薬大手サノフィは29日に投資家向け説明会を開き、ワクチン事業に関する発表を行った。新型コロナウイルスワクチン開発で出遅れたmRNAワクチンを中心にテコ入れを図る展望を示した。サノフィはこの機会に、2025年までに、革新的なワクチン5種以上の臨床試験III相を開始するとの目標を設定。次世代mRNAワクチン技術をベースに開発を加速すると説明した。サノフィは、2022年に70億ユーロの売上高をワクチン関連で達成した(全体の売上高は430億ユーロ)が、2030年にはこれを100億ユーロ超に引き上げるとの目標を設定した。肺炎レンサ球菌感染症の小児用予防ワクチンの開発では、世界最多の21変種に対応というワクチンの開発が臨床試験第II相をクリアした。2024年に第III相が開始される。アストラゼネカと共同開発の新生児の気管支炎予防ワクチン「Beyfortus」はフランス政府との薬価交渉が続いており、今冬に発売される見通し。RSウイルス感染症予防ワクチン(5才まで)の開発では、吸入型ワクチンが第II相治験で良好な結果を得た。高齢者向けのRSウイルスワクチンも第II相治験が終了した。サノフィは、複数の気管支疾患に対応するワクチンをmRNA技術により開発する計画で、その第I-II相治験を近く開始する。2024年にも第III相治験に進めることを目指す。なお、サノフィの株価は29日終値で1.07%の低下を記録した。 KSM News and Research -
2023.06.30
行政最高裁、サッカー選手のヒジャブ着用禁止措置を適法と認定
行政最高裁(コンセイユデタ)は29日、仏サッカー連盟(FFF)が定めるヒジャブ着用禁止措置の廃止を求める訴えを退ける判決を下した。連盟の禁止措置は比例原則に基づいた適切なものであると認めた。この訴えは、イスラム教徒の女性サッカー選手らが作る団体「ヒジャブーズ」が連盟を相手取って起こしていた。連盟は2016年以来、規約の第1条により「政治的、哲学的、宗教的、組合的な帰属を誇示する印や衣服」の着用を公式試合において一切禁じる旨を定めているが、団体側は、国際サッカー連盟(FIFA)が2014年以来、国際試合で女子選手がヒジャブを着用することを許可していることを根拠に、禁止規定を廃止するよう求めて訴えを起こしていた。刑事訴訟における検察に相当する法務官は、ヒジャブを着用するだけでは宗教的勧誘には当たらないとして、国を代表するナショナルチームの選手は別として、女子選手のヒジャブ着用を認める方向で規約を改正するよう、連盟に命じるべきだとする意見(刑事訴訟の論告求刑に相当)を提示していた。裁判所はこれには従わず、サッカー選手は公共サービスのユーザーであり、その限りで公共サービスの当事者に求められる着用禁止と中立性維持の義務は確かにサッカー選手には適用されない、と認めた上で、連盟には試合を行う良好な条件を確保する上で必要な規則を定める権利があるとも認め、本件の禁止措置は、比例原則に則った適正規模のものであると認定した。 KSM News and Research -
2023.06.29
AIによる仕事への恩恵、仏国民は特に楽観せず
PwCが6月29日に発表した報告書によると、仏国民は、他国民と比べて、人工知能(AI)が仕事にもたらす恩恵についてそれほど楽観的でないと同時に、雇用への悪影響についてもそれほど懸念していない。報告書は、5年間という短期的展望に関してAIが仕事の領域に与える影響について調査したもので、仏回答者(2000人)のうち19%が、AIが生産性の向上につながると回答した。世界レベル(回答者数:5万4000人)では、この割合は31%に達している。AIのおかげで新たな能力を獲得できるという見方をする回答者の割合はフランスでは17%に過ぎず、世界レベルの27%を大きく下回った。AIが新たなビジネスチャンスを生み出すという回答の割合も14%と、世界レベルの21%を下回った。ハイテク業界、メディア業界及び電子通信業界の関係者を除くと、仏では、AIによる仕事へのプラスの影響については期待感が小さい。一方、AIの雇用への悪影響に関しては、AIにより自らの雇用が失われるという回答の割合は9%(公共部門では5%)に過ぎず、世界レベルの13%を下回った。AIにより自らの雇用の在り方が悪化するという回答も12%で、世界レベルの14%を下回った。今後5年間にはAIの仕事への影響はないと予想する回答も27%に達した。この割合は、世界レベルでは22%だった。 KSM News and Research -
2023.06.29
パリ市、電動スクーターシェアリングで3社を選定
パリ市は28日、電動スクーターのシェアリングサービス事業者を選定する入札の結果を発表した。Cityscoot、Yego、Cooltraの3社を選定した。パリ市はこの入札を2021年末に開始していた。10社が応札し、3社のみが選定された。契約期間は2028年末までの5年間で、10月2日にサービス開始が認められる。最初の2年間には合計で7500台(1社につき2500台)の配備が認められる。続いて9000台(1社につき3000台)までの拡張を認める。各社は、1台につき67ユーロの年間料金を市に納め、また、収入に対する歩合制の料金も納めることになる。パリ市の試算によると、2024年通年で市の収入は92万ユーロ程度に上る。入札においては、経済的な存続可能性、公共スペースとユーザーへの配慮、従業者の労働条件への配慮といった基準に加えて、炭素予算の評価が重視された。選定された3社のうち、Cityscootはフランス企業で、早くからパリで事業を展開しているが、新型コロナウイルス危機が打撃となり、RATP(パリ交通公団)などの出資を仰いで立て直しを図っていた。Yegoは2016年にスペイン・バルセロナでフランス人起業家が設立した企業で、フランスではボルドーとトゥールーズでの事業を成功させた実績がある。Cooltraは同じくスペイン企業で、この分野の欧州大手。バルセロナ、マドリード、バレンシア、セビーリャ、ローマ、ミラノ、トリノ、リスボン、パリと大都市に展開している。 KSM News and Research -
2023.06.29
ナンテールで警官による少年射殺事件:暴動騒ぎに発展
パリ西郊ナンテール市で27日朝、警官により17才の少年が射殺される事件があった。この事件をきっかけに、ナンテール市があるオードセーヌ県を中心として各所で若者らによる暴動騒ぎが発生した。死亡したナエルさんは、借用した自動車に乗って、仕事に赴くために走行中に警官隊に制止された。しばらく会話があった後に、ナエルさんは警官らの停車命令に従わずに発進し、銃を構えていた警官が発砲してナエルさんは死亡した。警官は当初、自分に向かって車が進んできたことから身を守るために発砲したと説明していたが、付近にいた人が事件を撮影した動画は、発砲した警官が車の脇に立っていたことを示しており、切迫した危険はなかったように見える。なお、ナエルさんは無免許で、過去にも停車命令に従わなかった件で有罪判決を受けた前歴がある。発砲した警官は38才で、これまでの勤務評定は良好だったという。動画の浮上を経て逮捕の上で取り調べを受けており、警察の内部調査と司法当局による殺人容疑の捜査の2件が開始されている。事件を受けて、27日夜にはナンテール市をはじめとする各所で若者らによる暴動が発生。自動車の放火や、バス停等の施設の破壊、治安部隊に対する花火を用いた攻撃などの事案が相次いだ。マントラジョリ市(エソンヌ県)では市役所の施設が放火される被害もあった。全体で30人余りが逮捕され、治安部隊の側に負傷者も出た。今回の事件で、警察による暴力に関する論争が再燃した。マクロン大統領は28日の時点で、ナエルさんの死を「説明できず、許され得ない」と言明。遺族への哀悼の念を表明した。政府は厳正な対処を約束しつつ、鎮静化を呼びかけたが、28日夜にも再び暴動騒ぎが起こるリスクに備えて治安部隊の投入を増強すると予告した。警察労組と極右政党RNはマクロン大統領の発言に反発し、RNのマリーヌ・ルペン下院議員団団長は、捜査が終了する前から責任があると決めつけるのは誤りだなどと攻撃した。 KSM News and Research -
2023.06.28
パリ・ベルリン間高速鉄道、ストラスブールを経由する可能性は希薄
仏国鉄SNCFはドイツ鉄道(DB)との提携により、2024年12月にパリ・ベルリン間の高速鉄道の運行を開始することを計画しているが、その経路を巡って仏政府と両社の間で対立が発生している。ボーヌ仏運輸担当相はSNCFに対して、欧州議会の本会議場があるストラスブール(仏)を通過する経路を要求しているが、同社のファランドゥCEOは同相への回答で「欧州連合(EU)においてストラスブールが占める独特の象徴的位置は十分承知しているが、ザールブリュッケン(独)を経由するパリ・フランクフルト路線の延長だけが技術的・経済的に実現可能であることを確認済み」と説明し、政府の要求を拒否した。パリ・ベルリン間高速鉄道はDBのフランクフルト・ベルリン高速鉄道路線の運行開始に連動して開始することを予定しており、パリ・フランクフルト路線を整備して、フランクフルト・ベルリン路線に接続することになる。現在、パリ・フランクフルト路線はストラスブール経由、ザールブリュッケン経由の両方が存在する。仏政府案では、ストラスブールとカールスルーエ(独)を通過する南回りの路線が構想されているが、SNCFとDBはメッス(仏)及びザールブリュッケン(独)を経由する北回りの路線を計画している。どちらの路線でも、パリ・ベルリン間の所要時間に大差はないが、DBによると、ザールブリュッケン経由の方が長距離路線の鉄道運行が多く、ストラスブール経由よりも整備がはるかに容易であるという。ちなみに、既存のパリ・フランクフルト路線では「ICE」以外に、SNCFの高速列車「TGV INOUI」も用いられているが、「ICE」がフランクフルト・ベルリン間に新たに整備された線路区間にも、フランスの線路にも適応できるのに対して、「TGV INOUI」は現状ではフランクフルト・ベルリン間の新路線に適応できていない。なお、これとは別に、2023年12月にはパリ・ベルリン間で夜行列車が運行を開始する見通しであり、これは高速鉄道ではないが、ストラスブールを経由する。 KSM News and Research -
2023.06.28
マクロン大統領、学校休暇期間の見直しを予告
マクロン大統領は27日、訪問先のマルセイユで、学校休暇期間の見直しに言及した。休みが長すぎるとの見解を示した。大統領はこの機会に、夏休みが2ヵ月半から、場合により3ヵ月というケースもある、と言明。十分に資金がある世帯は、旅行に出かけたり、子どもに語学研修をさせる余裕があるが、恵まれない世帯は長い休暇期間を無為に過ごすことになり、獲得した学力の後退を招き、不平等を助長する要因になると言明した。1年後の新学年から導入するには時間が足りないが、将来の見直しに向けて協議を進めたいと述べた。フランスの夏休みは、今年の場合は正式には7月7日から9月4日までの8週間だが、大統領が2ヵ月半から3ヵ月と言ったのは、バカロレア(高校卒業資格)試験のために高校では全学級の授業が6月中にほぼ終了することを指していると考えられる。バカンスを神聖視する国柄もあり、大統領の発言は波紋を呼んでいる。大統領はこのほか、中学校において、ZEPと呼ばれる教育重点地区内の学校については8時から18時まで生徒を受け入れる体制を整える方針を示した。大統領はここでも、無為に過ごす時間を与えることが不平等の助長につながるとの見方を示し、その対策としてこれを正当化した。 KSM News and Research -
2023.06.28
フランスで極超音速機の初飛行
フランスが極超音速機の初飛行を行った。DGA(兵器総局)が27日に認めた。極超音速機は新世代のミサイルとして各国が開発を競っている。DGAは南西地方のランド県ビスカロスにある試験場で6月26日の22時に、極超音速機「V-Max」の飛行試験を行った。目撃者らによると、巨大な爆音がして、空には奇妙な煙が残っていたという。大西洋上を飛翔したものとみられ、スペイン北部にかけて幅広い地域で目撃証言があった。試験の実施については、22日付の省令により許可されていたが、その内容については明らかにされていなかった。DGAの発表によると、同日にはロケットにV-Maxの実証機を取り付ける形で打上げられ、ロケットから切り離されて飛翔した。DGAは、「数多くの革新的技術を搭載した初の実証機」だと説明している。V-Maxはアリアングループが開発した。巡行速度は時速4000km、最高速度は7000km(マッハ5)に上る。専門家らによれば、この種の機体の試験が行われるのはフランスでは初めて。DGAは、飛行で得られた数多くのデータを分析し、次回以降の試験に役立てると説明している。極超音速ミサイルは、防空網をかいくぐって攻撃をする能力があると考えられており、各国が開発を進めている。 KSM News and Research -
2023.06.27
マクロン大統領、マルセイユ訪問を開始
マクロン大統領は26日、マルセイユ訪問を開始した。3日間の日程で訪問する。マクロン大統領は2年ほど前に、マルセイユ振興プランを公表していた。マルセイユでは、麻薬密売団の抗争を背景に銃撃事件が頻発しており、多数の死亡者を出している。大統領は、治安対策と振興策を組み合わせて組織犯罪の温床を一掃することを目指して、総額150億ユーロ(うち50億ユーロを国が負担)という大規模なプランを公表していた。今回の訪問はその成果を確かめる機会となる。大統領は、麻薬取引の被害が大きい北部地区や、劣悪な環境のボーメット刑務所などを訪問。同刑務所では740人収容の新施設の建設工事が進んでいる。大統領はまた、麻薬取引がよく行われている県内のポイントの4割に相当する70ヵ所も排除がなされたとして、プランの成果を強調した。大統領はこの訪問に先立って、地方紙とのインタビューに応じ、麻薬購入者に対する罰金処分について、処分の3割程度しか実際の徴収がなされていないことを遺憾とし、警察官に決済端末を配備し、その場でクレジットカード等により罰金を納付させるようにする考えを明らかにした。大統領はまた、今回の訪問の機会に、大麻解禁を求める地元の左派勢力の主張を退け、取り締まりと治安確保を強化する方針を確認した。大統領にとって今回の訪問は、年金改革後の混乱を収拾する目的で、4月17日に発表した「100日間で再スタートを切る」という取り組みの仕上げとなる。内閣改造の行方が特に注目されているが、大統領は今回の訪問に先立つ地方紙とのインタビューの中で、ボルヌ首相について、「決意と勇気がある」と評価し、首相への信頼の念を表明した。 KSM News and Research -
2023.06.27
ボッシュ、仏ロデーズ工場の水素燃料電池生産プロジェクトを停止
ドイツの自動車部品大手ボッシュが、仏ロデーズ市(アベイロン県)近郊の工場で予定していた多角化事業を停止した。労組と地元は工場閉鎖に至る懸念を強めている。この工場はディーゼルエンジンの関連部品を製造している。ボッシュは、2028年までの工場の存続を保障した上で、長期的な展望を確保するため、工場の事業多角化を進めると予告。具体的には、冷凍トレーラー向けの水素燃料電池の生産を同工場で行う計画「FresH2」を提示し、2025年時点で130人、2028年時点で230人の従業員をこの事業に振り向ける計画だった。この約束を条件に、労使は2021年12月に合意を結び、労組側は従業員数の750人削減(513人の雇用を維持)を受け入れていた。しかし、経営側は21日の時点で、計画の対象となる製品の需要の立ち上がりが遅れていることを理由に、計画を撤回した。経営側は、水素関連のソリューションの需要の将来性は確かだとして、年内に代替のプロジェクトを特定すると説明している。ボッシュは、仏モンドビル工場(カルバドス県)を2028年に閉鎖する方針を明らかにしたばかりで、労組と地元はロデーズ工場も同じ運命をたどるのではないかと懸念を強めている。ボッシュの側では、両工場は状況がまったく異なると強調している。 KSM News and Research -
2023.06.27
フランスで景気見通しが後退、下半期にはマイナス成長のリスクも
フランスでも景気見通しが悪化している。2023年下半期にマイナス成長に転じるという見方もある。政府は2023年の経済成長率予測を1%に保っているが、9月に見直す可能性を示唆している。経済研究所の多くは、7-9月期と10-12月期に0.1%又は0.2%程度の小幅な成長率にとどまると予想。これだと2023年通年の経済成長率は0.6-0.7%程度となる。オドBHFは2023年に0.6%の成長率を予測。エネルギー価格の高騰は一段落し、サプライチェーンも回復したため、景気後退のリスクは低いとみている。物価上昇の勢いが鎮静化し、個人消費が回復に向かい、景気を支える期待もある。その一方で、金利上昇に伴い、家計の不動産投資が冷え込み、建設業を中心に業況が悪化するリスクは大きい。企業の設備投資も冷え込む恐れがある。経済界寄りの経済研究所レックスコードは、資金繰りが悪化した企業が在庫水準の削減を進めると予想。2022年には在庫変動が経済成長率に0.8ポイント分の貢献をもたらしていたが、2023年には逆に0.5ポイント分のマイナス貢献になると予想し、7-9月期と10-12月期の経済成長率はわずかなマイナスとなり、2023年通年の経済成長率は0.3%にとどまると予想している。また、ドイツ経済の不振によりユーロ圏全体が2四半期連続のマイナス成長に陥る中で、フランスにも景気後退が波及する恐れがある。 KSM News and Research -
2023.06.26
汚職糾弾NGOのアンティコール、認可取り消しを裁判所が決定
パリ行政地裁は23日、汚職糾弾NGOのアンティコール(Anticor)に政府が与えた認可を取り消す判決を下した。アンティコールは判決を不服としてパリ行政高裁に控訴すると共に、政府に対して新たな認可を緊急に発行するよう要求した。政府は、一連のNGOに対して、特定の範囲の案件について、被害者を代表する形で告訴し、原告として訴追の手続きに関与することを認めており、アンティコールは2015年以来、その認可を受けている。今回の判決では、その認可が取り消された。この訴えは、アンティコールの元職員らが2020年に起こしたもので、2021年4月に政府が定めた認可付与の省令(3年期限)について、手続き上の理由を挙げてその取り消しを求めていた。裁判所も訴えを認めて、省令を取り消した。認可が取り消されると、現在進行中の汚職等の事件の訴追において、アンティコールは権限を行使できなくなり、捜査が立ち消えになるなどの問題が生じる恐れがある。この裁判所の決定については、左翼政党LFIと保守野党の共和党が共に影響を懸念するコメントを発表。政府が認可を与える現行制度は利益相反の排除という点で問題があるため、独立行政機関のHATVP(閣僚の資産申告の審査などの権限を有する)が認可を与える形に制度を改正するよう呼びかけた。 KSM News and Research -
2023.06.26
日曜紙JDD、右翼系のルジューヌ氏の編集長就任に反対してスト
ラガルデール・グループは23日、傘下の日曜紙JDDの編集長にジョフロワ・ルジューヌ氏(34)を任命すると発表した。ベグレ編集長は、グループ傘下の写真誌パリ・マッチの編集長に就任する。ルジューヌ氏は、右翼系の週刊誌バルール・アクチュエルの編集長を務めていたが、偏向報道を理由に解任されたばかりだった。ルジューヌ氏はカトリック伝統派に属し、2011年にバルール・アクチュエルに入社。2016年に同誌を買い取ったレバノン系実業家イスカンダル・サファ氏により、編集長に任命された。一時はマクロン政権にも接近し、2019年10月には、マクロン大統領のインタビュー(移民問題とイスラム教に関するインタビュー)を掲載するほどだったが、2022年の大統領選挙に向けてエリック・ゼムール氏が出馬を決めるのに前後して、ゼムール氏の擁護とマクロン政権批判を熱心に展開。ルジューヌ氏は、ゼムール氏支持に転じたマリオン・マレシャル氏(極右政党RNの創設者ジャンマリー・ルペン氏の孫にあたる)とも以前から近しい関係にあった。ゼムール氏支持の方針がバルール・アクチュエル誌の経営陣との対立を招き、解任されるに至ったが、JDDの編集長として早くも返り咲きを果たす。ルジューヌ氏は、実業家バンサン・ボロレ氏が所有するビベンディ傘下のニュース専門地デジ局CNewsなどを通じてメディア露出も大きい。そのビベンディは、ラガルデール・グループの買収に向けて欧州委員会からの許可を取り付けたばかりで、今回の任命はボロレ氏の意向が反映したものと考えられている。JDDのジャーナリストらはこの人選に強く反発しており、正式発表前の時点でスト開始を決定。JDDの25日号は刊行されなかった。ジャーナリストらは続いて29日までストを継続することを決めた。 KSM News and Research -
2023.06.26
パリのドゥ・マゴ、国際進出を加速
パリ、サンジェルマン・デ・プレ地区の老舗カフェ「レ・ドゥ・マゴ」が国際進出を加速する。ドゥ・マゴは著名な作家やアーティストが集まったことで有名な老舗カフェで、パリの常連客だけではなく、外国人観光客が連日多数訪れる。最近まで国外では東京に「ドゥ マゴ パリ」(1989年開店)を出しているだけだったが、今年5月にはサウジアラビアの首都リヤドに進出し、ブラジルのサンパウロにもまもなく出店する。世界各地の12-15程度の大都市に出店する計画だが、同一フォーマットのチェーン店舗ではなく、それぞれのドゥ・マゴに各都市に応じた独自性をもたせる。同時に、パリ店の雰囲気も再現すべく、ドゥ・マゴの象徴である「二人のマゴ(中国の高官)」の像や、クロック・ムッシュー、タルタルステーキといった看板商品は提供する。パリ店の外国人客の30%がアメリカ人であることから、特に北米進出に期待をかける。パリ店についても、MOF(国家最優秀職人)の称号を持ったシェフの起用によるレストランとしての強化、ジャズや文学関連のイベント(年間50ほど)の企画など、時代の変化に合わせた集客努力を続けており、数年前に800-850万ユーロだった売上は、2022年には1500万ユーロまで増えた。その他に、高級テイクアウトスタンドも、空港を含めて各首都に4-5店というペースでの展開が計画されている。手始めに2024年のパリ五輪に合わせてパリに試験店舗を開店する予定。 KSM News and Research -
2023.06.23
モエ・ヘネシーがパリにカクテルバーをオープン
LVMHグループのワイン・スピリッツ部門モエ・ヘネシーは6月23日、パリのサンジェルマン・デ・プレ地区へのカルテルバーのオープンを発表した。場所はパリ6区のドラゴン通りとサンジェルマン大通りが交わる角、「リップ」や「ドゥマゴ」など界隈の歴史的カフェから至近距離にある17世紀築の建物で、内部を全面改装し、五階建の300平米の全フロアを使って各フロアで異なる雰囲気を演出する。市内を一望できる屋上には亭を置く。このプロジェクトでモエ・ヘネシーはパリ16区のバー「Cravan」(パリで活躍した詩人・ボクサーのArthur Cravanに因む)と提携しており、カクテルバーの呼称も「Cravan」とする。米国やアジアからの観光客だけでなく、地元の顧客もターゲットとし、多くの作家や芸術家が集まったサンジェルマン・デ・プレの雰囲気にちなんで、店内には各種の図書を置いて閲覧できるようにする。軽食もとれ、価格は飲み物が16-18ユーロ、軽食が12-15ユーロと比較的手頃に設定されている。モエ・ヘネシーでは、顧客に「体験」を提供すると同時に、社員にとっても、自分たちが販売するワインやスピリッツを消費する顧客と直接にコンタクトできる貴重な場であるとしている。LVMHは今年に入ってメンズの新しいデザイナーとしてファレル・ウィリアムス(米国の歌手・音楽プロデューサー・デザイナー)を迎えたところだが、ファッションウィーク等の機会にカクテルバーでのイベントも企画する。 KSM News and Research -
2023.06.23
政府、容器包装廃棄物の回収・デポジット制度について方針示す
クイヤール・エコロジー閣外相は22日、容器包装廃棄物の回収とデポジット制度に関する関係各方面との協議の結果と政府の方針について発表した。懸案となっていたプラスチック容器のデポジット制導入については、決定が9月末に先送りとなった。デポジット制の導入により、廃棄物回収事業による収入が失われることを懸念する自治体などが反発しており、協議がまとまらなかった。ガラス容器のリユースを目的とするデポジット制の導入については、食品小売店におけるデポジット制を義務付ける方針を示した。年内に法令の枠組みを定めて、試験導入に着手し、2年後をめどに義務化するとの展望を示した。このほか、リサイクルができない一部の容器包装(黒色プラスチック容器等)を2025年以降に禁止する方針を予告。2024年初頭からは、プラスチック容器包装を一括して廃棄できる形にして、回収率を高める方針も決めた。現状では、プラスチック容器包装の23%が回収・リサイクルされているに過ぎない。2025年にはこの割合を50%まで引き上げると同時に、20%の消費削減も目指す。プラスチックボトルに限ると、回収・リサイクル率を90%に高めて、消費を50%削減するのが2029年時点の目標だが、リサイクル率は60%にとどまっており、消費量は2022年に前年比で4%増加している。 KSM News and Research -
2023.06.23
欧州諸国の消費者団体、航空会社17社をグリーンウォッシングで欧州委に提訴
欧州諸国の消費者団体が作る連合組織BEUCに加入する18ヵ国の団体が揃って、大手航空会社をグリーンウォッシングの疑いで欧州委員会に提訴した。提訴の対象となったのは、エア・バルティック(ラトビア)、エア・ドロミティ(イタリア)、エールフランス、オーストリア航空、ブリュッセル航空、ユーロウィングス(ドイツ)、フィンエアー、KLM、ルフトハンザ、ノルウェー・エアシャトル、ライアンエアー、SAS、スイス国際航空、TAPポルトガル航空、ボロテア(スペイン)、ブエリング航空(スペイン)、ウィズエアー(ハンガリー)の17社。パリ航空ショーの開催にあわせて提訴を決めた。消費者団体側は、どの航空会社も温室効果ガスの排出を削減することが現状ではできないのに、あたかもそれができるかのように、環境責任や持続可能性、グリーンといったイメージを売り込む広告活動などを展開していると主張。グリーンウォッシングと欺瞞的な商行為に該当するとして訴えている。特に、各社が二酸化炭素オフセットのオプションを高額で提供している点を問題視。二酸化炭素排出による効果を相殺できるかどうか大いに議論の余地があるサービスをそれとわからないようにして売りつけており、消費者の利益に反すると主張している。代替燃料SAFの利用を謳って高額のオプション料を課金している点についても、配合率がごくわずかであることを考えると、欺瞞的な商行為であると主張している。団体側は欧州委に対して、断固とした処分を決めるよう求めている。 KSM News and Research -
2023.06.22
「金融新協定のためのサミット」、マクロン仏大統領の呼びかけでパリで開催
マクロン仏大統領の呼びかけで、「金融新協定のためのサミット」が6月22日にパリで開幕する。23日まで開催される。気候変動や貧困の打撃が大きい途上国への支援を拡大するための方法が協議の対象となる。サミットには、40ヵ国余りの首脳が出席する予定で、その中には、ブラジルのルラ大統領、ドイツのショルツ首相、南アフリカのラマポーザ大統領、中国の李首相などが含まれる。NGOの代表などの出席も予定されている。大統領府筋によると、貧困・不平等対策を推進しつつエネルギー移行を支援するには、年間1兆ドルという巨額の資金が必要になるという。革新的なファイナンスの導入と、国際金融機関(IMF、世銀)の改革が対策の柱になる。ただし、サミットにも出席する米国のイエレン財務長官は、IMF・世銀の改革に消極的な姿勢を示しており、具体的な前進が近い将来に得られる可能性は低い。今回のサミットは協議を目的としたもので、具体的な決定がなされる場ではない。フランス政府としては、気候変動対策に力を入れる姿勢を内外に示し、また、それにより、途上国に非民主主義勢力の影響力が広がるのを避けたいという期待がある。新たなファイナンスの方法としては、フランス政府は、海運に対する炭素課税の導入(年間200億-300億ユーロの収入確保が可能)、金融取引税(いわゆるトービン税)の国際的な導入などを提案する見通し。 KSM News and Research -
2023.06.22
パリ5区で爆発事件、37人が負傷
パリ左岸のカルティエ・ラタンで21日午後に爆発があった。建物1棟が全壊し、37人が負傷、うち4人が重篤な状態にある。警察は過失傷害の容疑で捜査を開始。ガス爆発が原因である可能性が高いが、当局は今のところ原因を特定していない。爆発は16時55分に発生。パリ5区のバルドグラース病院に面したサンジャック通り271番地から277番地までの一つながりの建物で爆発があり、続いて火災が発生した。付近の500メートル以内では建物のガラスが衝撃で割れるなどの被害が生じた。爆発があった建物には、モード学院の「パリ・アメリカン・アカデミー」とカトリック教育機関の事務所などが入居していた。277番地に位置する建物は全壊した。火災は18時までには鎮火した。負傷者37人のほかに、2人が捜索の対象になっている。2人が事故時に現場にいたかどうかは判然としていないという。損傷した付近の建物の住民らも避難する騒ぎになった。事件の直前にガスの匂いがしたという証言も多数あり、ガス爆発が原因である可能性が高いが、ダルマナン内相は、事件前に通報はなかったと説明し、原因について慎重な見方を示している。最近では、ガスが原因とみられる爆発事件がマルセイユで発生したばかりで、パリ市内では4年前にトレビズ通り(9区)で大規模なガス爆発事件が発生した(4人が死亡、66人が負傷)したのが記憶に新しい。 KSM News and Research -
2023.06.22
政府、過激な環境団体「スレーブマンドラテール」の解散処分を決定
政府は20日の閣議で、過激な環境保護運動を展開する「スレーブマンドラテール(大地の蜂起)」の解散処分を決定した。団体側は決定を不服として行政最高裁(コンセイユデタ)に提訴する。スレーブマンドラテールは、2021年に、かつてのナント新空港建設反対の占拠運動に加わった活動家らにより結成された。環境保護と気候変動阻止を理由に掲げた占拠などの抗議行動や、時にはサボタージュや破壊行動などを展開する環境過激派として知られる。ATTAC(グローバル化反対団体)や左翼系の農民団体「農民連合」、さらに環境急進派の「エクステンション・レベリオン」などが活動に協力している。政府は以前から同団体の動きを注視していた。去る3月には、サントソリーヌの農業用貯水池の整備計画に反対する抗議行動が行われ、この時には治安部隊との衝突で負傷者が多数出て、騒ぎとなった。昨週末には、リヨン・トリノ間の高速鉄道整備計画に反対する抗議行動が、当局の禁止命令の中で実行され、当局側発表では治安部隊員に12人の負傷者が出た。団体側は、治安部隊の不当な暴力行使が原因だと主張、負傷者はデモ隊側で50人に上ったなどとも発表している。ダルマナン内相は、この事件を最後の理由として、同団体の解散に踏み切ることを決定、21日の閣議でこれが了承された。ベラン政府報道官は21日の閣議後の記者会見で、「抗議行動を行い、法律改正を要求することは認められるが、暴力の行使が正当だという主張の展開には対処が必要だ」と述べて、解散命令を正当化した。環境政党EELVのトンドリエ代表は、「過剰な抑圧と脅しの手段」にほかならないと政府の決定を批判し、法的なあらゆる手段を用いて団体の解散に反対すると予告した。 KSM News and Research -
2023.06.21
ボルドーでぶどう畑減反、生産過剰対策で
ボルドーでぶどう畑の減反がこの秋に開始される。供給過剰を背景に業者は前例のない危機に直面している。ジロンド県の農業会議所が行ったアンケートによると、1371の製造業者が経済的な困難に直面していると回答。これはぶどう畑の面積にして3万5000ヘクタールに相当する。ドルドーニュ川とガロンヌ川に挟まれた「ラントルドゥーメール」や「コート」と呼ばれる地区、メドック(ジロンド川下流の左岸地区)の一部で困難が特に目立ち、不況知らずの高級ワインは除いて、ランクが低めのぶどう畑が厳しい状況に置かれている。国内では量販店では1本6ユーロ前後という価格帯のワインが売れ行き不振で、2022年には前年比で8%減を記録。10年間では44%減を記録しており、背景には、消費者のワイン離れという構造的な要因がある。ワインの販売後退は2018年以来、赤で特に目立つが、ボルドーの場合は85%が赤という構成であることが禍している。ボルドー・ワインが頼みにしていた中国市場は新型コロナウイルス危機の影響が特に大きく、需要が一気に冷え込み、抱えきれないほど在庫が増えた。これが価格を押し下げる要因になっている。現状では、販売実績は年間370万-380万ヘクトリットルとなり、生産量はこれをはるかに上回っている。余剰生産は80万ヘクトリットルから100万ヘクトリットルに上るとみられている。減反支援では、国が3800万ユーロの助成金を約束。業界団体や地元も含めて総額で5700万ユーロの予算が確保された。9500ヘクタールを対象に、1ヘクタールにつき6000ユーロの助成金が支給されるが、国の拠出分については、支給に当たり20年間の休耕地化又は30年間の森林化という厳しい条件がついており、業者の間には、助成金額が低めであることもあり、不満の声がある。 KSM News and Research -
2023.06.21
大統領の任期制限撤廃論が浮上、物議に
大統領の任期制限撤廃論が浮上、物議に大統領の任期制限が論争の対象となっている。マクロン大統領に近いフェラン元下院議長の発言が発端になった。フェラン元下院議長はインタビューの機会に、個人的な見解として、国民が自由に主権を行使することを制限するのには反対だと述べて、大統領の任期制限があるのは望ましくないとし、その改正を呼びかけた。大統領の任期制限は、サルコジ右派政権下で2008年に追加されたもので、憲法第6条に「連続2期を超える就任を禁じる」旨が明文化されている。フェラン氏のこの発言は、2期目を迎えて次の再出馬ができないマクロン大統領が再選の意欲を人づてに示したものと受け取られて、野党勢力による攻撃対象となった。「最後に任期制限を撤廃したのは、中国の習国家主席とロシアのプーチン大統領の2人だ。これがマクロン大統領の民主主義というものなのか」(共和党のウペール上院議員)などの批判のコメントが出されている。マクロン大統領はこれまでに、大統領任期を5年から7年に戻し、中間選挙(総選挙)で国民の信を問う形にする可能性に言及したことがある。大統領任期の短縮は、シラク大統領(故人)が、再選を狙う2002年の大統領選に向けて決定したもので、シラク大統領はこの時、極右候補との初対決というハプニングが追い風になったこともあるが、実際に再選を果たしている。フェラン氏は批判を受けて、次の選挙に向けて制度を改正せよという呼びかけではなく、一般論として個人的な意見を表明しただけだと釈明している。 KSM News and Research -
2023.06.21
主要労組CFDT、新書記長にレオン副書記長を選出へ
主要労組CFDTは21日にパリ・ゼニットで特別組合員大会を開き、次期書記長にマリリーズ・レオン副書記長を選出する。ベルジェ書記長が予告通りに任期途中で退任を決め、後任にレオン副書記長を指名した。2700人に上る組合員が出席、選出は確実視されている。レオン新書記長は46才。2003年にCFDTの化学・エネルギー部門に入り、2014年には組合の執行部入りを果たした。2018年以来副書記長を務めている。女性がCFDTの書記長に就任するのは、3代前のニコール・ノタ氏以来2人目となる。CFDTの組合員数は2022年末時点で61万人余り。主要労組の中で「穏健派」又は「現実派」の立ち位置で、強硬派のCGTと主導権を争っている。ベルジェ書記長は、年金改革反対運動ではCGTを含む他の労組との共闘を選んだが、政府に改革を押し切られて成果を上げることができなかった。騒ぎが一段落したところで次期書記長へのバトンタッチとなる。組合内では、マクロン政権に対する反発が強まっており、新書記長は組合の求心力を維持しつつ、現実路線を継続することが課題になる。 KSM News and Research -
2023.06.20
ナチスに銃殺されたマヌシアン氏、パンテオン入り決まる
マクロン大統領は18日、レジスタンスの闘士でナチスドイツにより銃殺されたミサク・マヌシアン氏とその夫人のメリネ・マヌシアン氏をパンテオンに改葬することを決めたと発表した。銃殺された日からちょうど80年目を迎える2024年2月21日に式典が行われる。パンテオンは、共和国の偉人を祀る霊廟。外国系で共産党員のレジスタンス闘士がパンテオン入りするのはこれが初めて。マヌシアン氏はアルメニア系で1906年生まれ。アルメニア人大虐殺を生き残り、1925年にフランスに移住した。詩人を志す傍ら、労組CGTの組合員から共産党に入り、1943年にレジスタンスの活動を始めた。夫人が連絡役を務め、FTP-MOI(移民労働者スナイパー・パルチザン)と名乗るグループに加わり、ナチスドイツを狙ったサボタージュを展開した。1943年11月に捕えられ、23人の闘士(うち21人はFTP-MOI所属)と共に、パリ西郊外モンバレリアンの丘で1944年2月21日に銃殺された。マクロン大統領は18日、シャルル・ド・ゴールが抵抗政府の樹立を宣言した「6月18日のアピール」(1940年)の記念式典をモンバレリアンで行い、この機会を利用してマヌシアン氏のパンテオン入りを発表した。FTP-MOIに加わっていたロベール・ビランボム氏(97)へのレジオンドヌール勲章授与も同日に行われた。移民問題が何かとクローズアップされる中で、外国系のレジスタンス闘士のパンテオン入り決定には、開かれた姿勢を強調する政治的な意図がある。この決定には、右翼の論客エリック・ゼムール氏が、「外国人だけがフランスのために戦ったかのような偽りの印象を与える操作だ」と非難したほかは、おおむね賛同の念が表明されている。 KSM News and Research -
2023.06.20
西レンフェが仏国内区間の高速鉄道サービスに進出
スペイン国鉄レンフェ(Renfe)が初めて単独で仏国内の高速鉄道運行サービスに進出する。レンフェのラウル・ビアンコ総裁が6月19日にバルセロナで発表した。レンフェが運行するのはリヨンとバルセロナ、マルセイユとマドリードを結ぶ2つの路線での高速鉄道サービス(AVE)で、運行開始はそれぞれ7月13日と28日。6月21日からチケットを販売する。今夏は金曜から月曜にかけての週末のみ片道2本/日で計8本、2路線では計16本の運行となるが、秋以降、平日を含めて計28本/週まで増発する。目玉はモンペリエ・バルセロナ間が19ユーロ、マルセイユ・マドリード間が29ユーロという低料金。これらは開業時の特別低価格料金で今後値上げされることになるとはいえ、基本的には低価格路線を維持する方針。今回開業する2路線は、2013年から2022年まで仏SNCFとレンフェが合弁エリプソス(Elipsos)の枠組みで列車を運行していた2路線と同じ。SNCFは、自社の低料金TGVサービス子会社ウイゴ(Ouigo)がスペインでの運行許可を取得したことでこの合弁に終止符を打ち、2023年からはパリ・バルセロナ間について単独でTGV運行を開始した。レンフェ側も今回、単独での仏国内区間単独運行進出を果たす。フランスのドル箱路線であるパリ・リヨン間のTGV路線については、すでに伊トレニタリア(Trenialita)が進出済みだが、トレニタリア参入後(往復5本/日)も仏SNCF(往復23本/日以上)のペースは落ちておらず、まだまだ満たされていない需要があるとして、レンフェも将来的にはパリ・リヨン区間高速鉄道サービスへの進出を狙う。 KSM News and Research -
2023.06.20
ルメール経済相、100億ユーロの節減を予告
ルメール経済相は19日、財政に関する全体会議を招集した。経済相は開会に当たり、財政健全化に向けた展望を示した。仏政府は、新型コロナウイルス危機を通じて、費用にいとめをつけずに経済を支援するとの方針を掲げ、財政赤字の拡大を招いた。その方針は既に修正の途上にあるが、ルメール経済相は今回、平常に復帰する中で、拡大財政は正当化されないと述べて、健全化を指針とする考えを明確に示した。経済相はそれに関係して、2027年までの財政の健全化に貢献する100億ユーロの節減の可能性を既に見出したと説明し、今後の財政運営への自信を示した。政府は、エネルギー価格抑制策の終了、年金と失業保険の制度改革の成果、雇用拡大の恩恵などに期待している模様で、同時に、一部の部門(農業、建設など)を対象にした燃料に係る税制優遇措置の廃止や、医療支出の削減などが進められる見通し。経済相は、傷病手当金の支出急増の対策と、医薬品の支出膨張の対策に言及している。また、住宅援助と雇用援助にも20億ユーロ程度の節減がなされる模様だという。これらの節減には抵抗も予想され、実現に困難が伴う恐れがある。政府は、多年次財政計画を9月に策定する予定で、節減措置はそれに盛り込まれる。政府は、2027年時点で公的債務残高の対GDP比を108.3%にまで引き下げ、財政赤字の対GDP比については、3%以内という欧州連合(EU)の規則を達成することを目指している。金利上昇に伴う国債費の拡大への対処も課題となる。 KSM News and Research -
2023.06.19
極右RN、支持の裾野広がる
週刊紙JDDなどの依頼で行われた極右政党RNに関する意識調査の結果がこのほど発表された。支持の裾野が広がっていることが確認された。RNは、ジャンマリー・ルペン氏らが1972年に創設した極右政党「国民戦線(FN)」を前身とする。2代目となるマリーヌ・ルペン現下院議員団団長の下で、2011年より「普通の政党」となることを目指した戦略が進められ、党名も2018年にRNに改称された。「反極右」の封じ込めをかいくぐって政権獲得を狙える足場を確保するのが狙いで、2022年6月の総選挙では89議席という前例のない規模の勢力となることに成功。かねてよりの野望である大統領選挙での勝利(次回大統領選挙は2027年)が次なる標的となっている。今回の世論調査では、全体の42%が「RNに投票したことがある」と回答。この割合は2017年に30%、2021年に35%と順次拡大していたが、短期間で大きく上昇した。従来の支持層とは異なる年金受給者(34%)、上級管理職(35%)、学卒者(30%)、富裕者(35%)にも投票したことがある人が広がっている。ただ、RNに投票したことがある人のうち、61%は投票の理由として「他の政党を拒否する」ことを挙げており、「RNを支持する」ことを理由に挙げた人は39%にとどまった。「次回の大統領選挙でマリーヌ・ルペン候補の勝利を望むか」との問いには、「望む」が41%となり、2021年の前回調査時に比べて7ポイント上昇、「望まない」(59%)との差が縮まった。その一方で、「ルペン候補が勝利すると思うか」との問いには、「思う」が37%(前回より9ポイント上昇)、「思わない」が63%となっており、RN政権の発足が必ずしも現実的な展望として捉えられていないこともうかがわれる。 KSM News and Research -
2023.06.19
南西地方でマグニチュード5.5程度の地震、一部の建物に被害
南西地方で16日の18時頃、マグニチュード5.5程度の地震があった。一部の地区で住宅等の建物が損壊するなどの被害が生じた。マグニチュード5を超える地震はフランスでは珍しく、前回は2002年にブルターニュ地方で発生した5.4の地震に遡る。今回は、そのブルターニュ地方の南側に位置するシャラント・マリティム県の北部を震源とし、同県と隣のドゥーセーブル県南部で物的被害が生じた。人的被害は軽傷者1人のみと軽微だった。この地方には古い断層があり、プレートの動きに反応して地震が発生することがあるという。地震のリスクの度合いでは、5段階の分類中で3となっており、ピレネー山脈やアルプス山脈、イゼール川流域地方、アルザス南部(いずれも4)と比べると低いが、国内では高めの部類に属する。今回の地震の被害はシャラント・マリティム県のラレーニュ町で特に大きく、教会を含む建物に亀裂が入り、一部が崩落するなどの被害が出た。同県全体では、71の建物の135世帯が居住不可となり、171人が住居を失った。 KSM News and Research -
2023.06.19
リヨン・トリノ間高速鉄道整備、反対派が抗議行動を展開
リヨン・トリノ間の高速鉄道整備計画に反対する抗議行動が17日に行われた。治安部隊と衝突する場面もあった。仏伊間を結ぶ高速鉄道整備計画ではアルプス山脈を通過する新たなトンネルの建設などが予定されている。環境派はこれに反対し、今回の抗議行動を計画した。このところ過激な抗議行動を展開している団体「スレーブマンドラテール(大地蜂起)」などが呼びかけており、地元のサボワ県県庁は、建設現場に近い区域における集会を禁止し、治安部隊を配置して警戒に当たった。反対派らは、ラシャペル村から発して、禁止区域に向かうデモ行進を行い、これに3500人程度が参加した。デモ行進の起点となった場所には、グルノーブル市のピオル市長(環境派)や左翼政党LFIのパノ下院議員団団長なども姿を見せて、反対運動に賛意を表明した。デモ行進では、禁止区域を防衛する治安部隊とデモ隊の間で衝突が発生した。デモ隊の一部は、付近の高速道路を封鎖するため、川を渡って現場に向かおうとしたが、治安部隊に制止されるという場面もあった。サボワ県庁は、治安部隊員7人とデモ隊の1人が軽傷を負ったと発表したが、主催団体側はデモ隊の50人程度が負傷し、6人が入院したと主張している。 KSM News and Research -
2023.06.16
政府、航空機ゼロエミッション化を支援
パリ北郊ルブルジェで19日に航空宇宙ショーが開幕するのを前に、マクロン大統領は16日、パリ首都圏にあるサフラン(航空機エンジン製造)の工場を訪問する。この機会に、航空機のゼロエミッション化に向けた支援策を公表する。航空機はフランスにとって重要な輸出品目だが、米国に加えて中国との競争も熾烈になっている。ゼロエミッション化で先進して技術的な優位を確保することを目指す。具体的には、2024年より年間3億ユーロを投じて業界の研究開発(エアバス、タレス、ダッソー、サフラン、下請け企業等)を支援する。新エンジンの開発、水素の利用、機体の空気抵抗の改善、代替燃料の開発などを後押しする。エアバスA320を後継する、100%代替燃料(SAF)で航行可能な新モデルの開発が目標となる。このほかに、電動小型機を開発するベンチャー企業向けに2億ユーロの支援が行われる。国内にSAFの大規模な製造工場を建設する計画「BioTJet」も発表される。かつてガス採掘が行われたラック・オルテーズ自治体連合(ピレネー・アトランティック県)に年産7万5000トンの工場が整備される。700人を雇用し、2027年の操業開始を予定する。 KSM News and Research -
2023.06.16
欧州中銀(ECB)、再利上げを決定
欧州中銀(ECB)は15日に定例理事会を開き、0.25ポイントの利上げを決定した。8回連続で利上げを決めた。下限金利は3.5%、上限金利は4.25%、リファイナンス金利は4%となった。2001年5月以来で最高の水準に達した。米連邦準備制度理事会(FRB)はその前日に金利の据え置きを決めていたが、年内に再利上げを行う可能性を示唆していた。欧州中銀は利上げを決めたが、FRBと欧州中銀の決定はいずれも予想通りだった。欧州中銀は、インフレ率が5月に減速したとはいえ、コア物価の上昇率が減速に向かうとは判断できないとし、賃金上昇がインフレを押し上げるスパイラルの発生を抑止することを利上げの理由として挙げた。欧州中銀のラガルド総裁は、小休止をするつもりはないとし、7月にも利上げを継続する可能性がごく高いと言明した。欧州中銀はマクロ経済予測を修正。ユーロ圏の経済成長率は、2023年に0.9%、2024年に1.5%、2025年に1.6%として、従来の予測をわずかに引き下げた。インフレ率は2023年に5.4%、2024年に3%、2025年に2.2%と予測。コア物価上昇率は2023年に5.1%、2024年に3%として、従来予測(4.6%と2.5%)をかなり上方修正した。欧州中銀はまた、予定通り、資産買い入れプログラム(APP)で買い入れた債券の再投資を終了することを決定。この再投資は既に月間150億ユーロまで縮小しているが、これを打ち切る。これにより、9兆ユーロ近くまで膨らんだ資産額を縮小し、月間で300億ユーロの流動性を市中から回収する。TLTRO(長期資金供給オペ)も延長しない。 KSM News and Research -
2023.06.16
ボルヌ首相、農山漁村の支援策を公表
ボルヌ首相は15日、ビエンヌ県を関係閣僚らと訪問し、農山漁村地域の支援に関する「フランス田園プラン」を公表した。農山漁村地域には2200万人が居住しており、市町村の数では88%が農山漁村に相当する。政府は、2017年に着手した国土均衡の取り組みの業績を評価した上で、新たなプランを策定した。具体的には、100人の「プロジェクト・リーダー」を県庁に任命し、農山漁村地域のプロジェクト推進を支援するプログラム「未来の村(Villages d’Avenir)」を開始する。2-8程度の市町村のグループから、住宅、輸送、保健、文化・自然資産等のプロジェクトを募集し、その実現を支援する。また、生物多様性の保護や様々な資源(森林、水、土壌など)の保護への農山漁村の貢献を奨励する目的で1億ユーロの援助金を支給する。政府はこのほか、医療を提供する巡回バス100台の展開を予告。農山漁村地域における商店等の支援を目的とする基金の恒久化(3年間で6000万ユーロの予算を設定)に加えて、ラストワンマイルのモビリティ開発(自転車、オンデマンド輸送サービス、連帯モビリティなど)に3年間で9000万ユーロの支援を行うことも決めた。企業や医療関係者の進出を支援する目的で設定されたZRR(田園活性化ゾーン)の制度も恒久化される。 KSM News and Research -
2023.06.15
ベンチャー企業向けに70億ユーロの資金供給、マクロン大統領が発表
マクロン大統領は14日、パリで開催のスタートアップイベント「ビバテック」を訪問した機会に、ベンチャー企業への資金供給に関する「ティビ」イニシアティブの第2期を開始すると発表した。70億ユーロの資金を機関投資家から集めたと説明した。「ティビ」イニシアティブは2019年に開始された。第1期分として国内の23の機関投資家から総額60億ユーロを集め、ファンドオブファンズとしてレイターステージ向けのファンド等に出資した。これが呼び水となり、2020-22年の期間には総額で300億ユーロ近くの投資が実現した。第2期では28の機関投資家が総額70億ユーロ程度の拠出を約束。グリーン経済振興、脱炭素化の推進、先端技術の開発などに優先的に資金を供給する予定。マクロン大統領はこれとは別に、人工知能(AI)分野のテコ入れ策も公表。同分野における人材育成の規模を2倍に拡大し、国内に5、6ヵ所のクラスターを整備するため5億ユーロの追加資金を確保する。さらに、BPIフランス(公的投資銀行)が運用する5000万ユーロのシーズファンドを立ち上げて、同分野の起業を支援する。 KSM News and Research -
2023.06.15
地下水系の水位は回復せず、今夏には厳しい干ばつも
当局機関BRGM(鉱山局)は14日、地下水系の状況に関する月報を公表した。6月1日時点で、全国の66%にて水位が低いという状況になっている。今夏は昨年以上の干ばつ被害が広がる恐れがある。フランスは昨年夏に記録的な干ばつに見舞われた。その後も少雨の傾向が続き、地下水系の水位が上昇しないまま、夏季の需要期を迎える。この2ヵ月弱でまとまった降水があり、一部では集中豪雨による水害も発生したが、この時期の降水は植物の生育に吸い取られ、地下水系までは達しにくいという問題があり、地下水系の水位の回復にはほとんど効果がなかった。水位が低い地方が占める割合は、4月の時点では68%にまで上っていたが、引き続き66%と多かった。地域別では、ブルターニュからナント以南にかけての地域と北仏の海岸地方で通常より高めであるほかは、通常程度か、それを下回る水準にとどまっている。特に、リヨン市以北のソーヌ川流域地方(ディジョン地方、ブレス地方など)、ベルフォールからアルザス南部、ローヌ川の東側、マルセイユから東側の地中海沿岸、ペルピニャンなどスペインに近い地中海沿岸地区では地下水系の水位が極めて低下している。15程度の県では既に水の厳しい利用制限が敷かれている。 KSM News and Research -
2023.06.15
市街地の車両乗り入れ制限地区ZFE、上院が導入延期を勧告
市街地の車両乗り入れ制限地区ZFEの設定について、上院は14日に報告書を公表した。導入日程が厳しいと指摘し、延期等を勧告した。ZFEの内部では、汚染度が高い車両の乗り入れが原則的に禁止される。2021年の気候・強靭性法により、人口15万人超の43の都市圏を対象に、2024年末日までにZFEの設定が義務付けられた。ただ、住民が激しい反対運動を展開しているところもあり、根強い反発がある。上院が行った世論調査(5万1000人が対象)によると、個人では86%、事業者では79%がZFEの設定に反対すると回答している。報告書は、ZFEの設定により乗り入れ不可となる車両は全体の3分の1余り、台数にして1300万台に上ると指摘。これをあと1年半で締め出すということになると、地域や社会各層間の不平等を助長することになると問題視し、2030年年頭まで導入期限を延長することを提案。さらに、政策目標をより迅速に、また効率的に達成することが可能な代替措置の導入に切り替える自由を自治体側に付与することも提案した。報告書はまた、乗り入れが認められるEVなどへの買い替えをするにも、価格が高いことから、そうした買い替えが必要となる低所得層ほど困難が大きくなると指摘し、低所得層に的を絞った奨励金支給等の施策を展開するよう勧告。特に、支給の手続きをやりやすくすることが大切だと指摘した。公共交通機関など代替的なモビリティ手段の確保と、地域間の協調体制の構築も必要だとした。 KSM News and Research -
2023.06.14
マクロン大統領、医薬品の国内生産奨励策を公表
マクロン大統領は13日、アルデッシュ県内の製薬工場を訪問した機会に、基本的医薬品の国内生産奨励策について説明した。大統領は13日より、工業部門の振興と国内生産還流をテーマに全国を訪問する予定。医薬品の不足は近年に深刻化しており、2022年には1602件の供給中断が発生した。これは前年比で67%増に相当する。品薄リスクの通知も2159件に上り、こちらは79%増を記録している。マクロン大統領はその対策として、450品目の基本的医薬品のリストを策定したことを明らかにした。リストは随時更新され、対象品目については、生産の国内還流や、調達先の多様化、イノベーションの推進などの手段で確保を図るとした。当局機関のANSMには在庫確保の義務等の違反を処罰する権限を付与するとも説明した。大統領は、リスト中で国内生産還流が特に必要であるものが50品目程度に上ると説明。うち25品目については、数週間中に具体的なプロジェクト(国内還流又は増産)がまとまると予告した。国は、公共投資計画「フランス2030」の枠内で8件の国内還流プロジェクト(総額1億6000万ユーロ)を援助するという。品目としては、クラーレ、モルヒネ、アモキシシリン(小児用調剤)と抗がん剤6品目などが含まれる。大統領はさらに、重要医薬品の生産の国内還流と革新的な製造法、脱炭素化を支援するための窓口を設けると予告、5000万ユーロの予算を第1期分として設けるとした。大統領の発表に呼応する形で、Euroapi社は同日、国内ベルトレ拠点(ピュイドドーム県)に研究開発投資を行い、モルヒネとその派生品の増産を2027年までに実現することを目指すと発表した。 KSM News and Research -
2023.06.14
中古車市場で根強いエンジン車の人気
年初以来の5ヵ月間のフランスの乗用車市場では、新車販売においてフルEVが15%、ハイブリッド車(PHEVも含む)が30%超のシェアを占めて電動化が進みつつあるが、中古車市場ではエンジン車が相変わらず根強い人気を保っている。販売台数で比べると、中古車市場は新車市場の2.5倍の規模があり、年初以来の5ヵ月間で210万台が販売されたが、このうちフルEVのシェアは1%、ハイブリッド車(PHEVも含む)のシェアは5.6%に過ぎない。対照的に、ディーゼル車は新車市場でのシェアは16%強に縮小したが、中古車市場では52%と過半数を占め続けている。今後に大都市圏では排ガス規制が強化されて、低排出区域が増設され、都市の中心部からはディーゼル車をはじめとするエンジン車が締め出される可能性が強いが、こうした展望が中古車市場には必ずしも反映されない理由について、自動車市場調査会社AAADataでは、「フランスは広く、中古ディーゼル車の購入者は大都市住人とはものの見方が異なる」と、主に田園部住人が中古ディーゼル車を購入していることを示唆している。同社はさらに、車齢の高い中古車の販売割合が毎年のように拡大しており、車齢10年以上の中古車のシェアが2020年1-5月期の43%から2023年1-5月期には48%に上昇したとし、旧型車のシェア拡大で低排出化は進まないと指摘している。中古車市場のこうした傾向は価格の急激な上昇に起因している模様。オンライン中古車売買サイト「ラサントラルデパルティキュリエ(La Centrale des Particuliers)」によると、2020年1月から2022年12月までの2年間に中古車全体の平均価格は43.7%上昇したといい、いま買い替えの際に同じクラスのモデルを購入しようとすると、2020年の価格と比べて、車齢が8年未満なら5000-8000ユーロ、8年以上なら3000ユーロを上乗せする必要があるという。現在の価格中央値は2万2000ユーロだが、車齢が2年未満なら3万ユーロに近く、8-15年なら1万ユーロ、15年を超えると6500ユーロと差が大きい。予算が限られたドライバーは車齢の高い中古車を選択せざるを得ない状況が生じている。2020年からの新型コロナウイルス危機の影響で、半導体不足などによる新車の供給減が起き、中古車の需要が高まったことや、インフレで購買力が低下したドライバーが従来よりも長期にわたり同じ自動車を使用する傾向を強めて、車齢の低い中古車が品薄になったことなど、複数の要因が中古車価格の上昇を招いたとみられている。 KSM News and Research -
2023.06.14
「飲みすぎ」の人、全体の22.0%:減少傾向に
保健分野の公的機関サンテ・ピュブリック・フランスが13日に発表した調査結果によると、2021年に勧告水準を超える飲酒をしている人が全体に占める割合は22.0%となり、前年の23.7%から低下した。同機関はこれを期待の持てる推移だと歓迎している。仏政府は2017年に飲酒抑制を目的として「低リスクの飲酒」の定義を「1週間に最大10杯、1日に最大2杯(1週間に2日間は飲酒しない)」と定め、それを超える飲酒をしないよう呼びかけている。ちなみに、ここでアルコール「1杯」とは、純粋なアルコールに換算して10gを指し、酒類を提供する飲食店では、どの種類の酒であっても、純粋アルコール換算量がほぼ同じになるように給仕する規定になっている。この定義に照らして飲みすぎの人が占める割合は、キャンペーンが始まった2017年から2020年までほとんど変化がなかったが、2021年には明確に低下した。2021年にはコロナ危機が小康状態に入り、飲酒も拡大する懸念があったが、懸念に反して減少傾向を示した。性別では男性で、年齢層では、若い層と高齢層で減少が目立ち、高学歴・高収入の層でも減少を示している。地域別では、飲みすぎの人はブルターニュ、ペイドラロワール、オーベルニュ・ローヌアルプの各地域圏で多い。逆に、パリ首都圏(イルドフランス地域圏)、ブルゴーニュ・フランシュコンテ地域圏、そして海外県では平均よりも低い。 KSM News and Research -
2023.06.13
下院、ボルヌ内閣の不信任案を否決
下院で6月12日、ボルヌ内閣の不信任案の審議が行われた。反対多数で否決された。不信任案は左派連合NUPESが提出した。定年年齢を62才から64才に引き上げる年金改革法の規定の廃止を求める議員立法法案の採択を政府が妨害したと主張し、ボルヌ内閣に退陣を要求していた。連立与党は下院で過半数を失っており、ボルヌ内閣の不信任案が提出されるのはこれが17回目となったが、今回は、賛成が239票(可決に必要なのは289票)と、かなり少数にとどまった。保守野党の共和党(62議席)も不信任案に賛成しなかった。今後は内閣改造の行方が政局の焦点となる。マクロン大統領は、小幅な内閣改造にとどめるか、共和党の少なくとも一部を取り込む形で本格的な改造を行うか、いずれにするかを決めかねているといい、その選択によってボルヌ首相の続投の是非も変わってくる。共和党は、踏み込んだ内容の移民改正法案を提出しており、これに対する政府の態度によっては、内閣不信任案に合流する可能性もあると示唆している。共和党は移民改正法案の採択を条件として、マクロン政権との協力路線に転じる可能性もあるが、共和党の内部には方針を巡る重大な対立もあり、行方は判然としない。連立与党内にも温度差があり、右寄りに舵を切れば求心力が低下する可能性もある。 KSM News and Research -
2023.06.13
政府、公務員部門の賃上げに応じる
政府は12日、公務員部門(国家公務員、地方公務員、公共病院)の賃上げを決定し、労組に通知した。公務員の報酬はポイント制を採用している。役職や勤続年数等に応じて各人にポイントが付与され、1ポイントは一定の報酬額に対応している。政府は今回、ポイントに対応した報酬額を一律1.5%引き上げることに応じた。7月1日付で適用される。それに加えて、すべての公務員に5ポイントが追加で付与された。また、月給(現金給与総額ベース)が3250ユーロ以下の公務員について、逓減型の賞与(800-300ユーロ)を年内に支給することも約束した。国家公務員では50%、公共病院部門では70%の職員が支給対象になるという。これ以外に一連の措置が約束された。すべての措置を合算すると、報酬額は2023年に6.8%引き上げられる計算になるという。労組CGTは、2010年以来に公務員の購買力は16%低下していると主張し、10%の賃上げを要求していたが、政府の決定について、大いに不十分な引上げだと批判している。政府は1年前にも3.5%の引き上げを決定しており、今回の引き上げは、通年ベースで75億ユーロの費用増につながるとみられている。国の財政が悪化する懸念もある。 KSM News and Research -
2023.06.13
ラ・グランド・レクレ、ジュエクラブによる買収決まる
玩具販売のラ・グランド・レクレの買収者が同業ジュエクラブに決まった。パリ商事裁判所が9日に決定した。ラ・グランド・レクレは、実業家ミシェル・オアヨン氏の傘下だったが、オアヨン氏の保有資産のうち各種小売業はこのところ倒産が相次いでいる。ラ・グランド・レクレは去る4月の時点で、自ら買収者を探すのを容易にする目的で、パリ商事裁に会社清算を申請。事業を継続しながら買収者を探していた。数社が関心を表明していたとされるが、ジュエクラブが順当に選定された。ジュエクラブは独立系の玩具販売店の連合組織の形態を採用している。買収案は、101の直営店のうち89店舗を買収するという内容で、770人の従業員のうち750人を引き取る。内外のフランチャイズ事業(48契約)も買収の対象となった。ジュエクラブによると、直接・間接に1100人の雇用が維持される。買収額は5000万ユーロに上るという。買収後もラ・グランド・レクレは商標を保って事業を展開。ラ・グランド・レクレは都市部を中心に子ども向けを主力とし、ジュエクラブは都市郊外を中心に家族向けを主力にするというカラーを維持して差別化を図る。 KSM News and Research -
2023.06.13
医療砂漠対策の議員立法法案、開業医らはストで抗議
下院は12日、医療砂漠対策の議員立法法案を審議する。開業医らはこれに反発して一部でストを開始した。法案は、連立与党に加わる「オリゾン(地平)」所属のバルトゥー議員が提出し、与党議員200名程度が賛同している。法案は、開業医に対して夜間等の医療への協力を義務付けており、新規開業に当たって地方の保健出先機関に許可申請をすることも義務付けている。法案はまた、廃業時には6ヵ月前に予告をすることを義務付け、さらに、4年間を超える開業医の派遣勤務を禁止することも盛り込んだ。バルトゥー議員は、開業場所を自由に選択する権利を制限するつもりはないと説明しているが、野党勢力は修正案として、開業医が多い地区における開業を禁止する措置などを提案しており、開業医組合側は、締め付けが一段と強まるとみて法案に反発している。これとは別に、病院勤務医の3組合は7月4日にストを予告。就労条件の悪化などに抗議し、保健省との交渉の即時開始を要求している。 KSM News and Research -
2023.06.13
スコールのケスレール会長が死去
仏再保険大手スコールのドニ・ケスレール会長が病死した。71才だった。9日に発表された。ケスレール会長は、研究・教育部門から金融業界に転身し、1998年から2002年まで経営者団体MEDEF(就任時にはCNPF)の副会長を務めた。自由主義的な立場で知られ、この頃に、ジョスパン左派内閣が導入した週35時間労働制に強く反対し、抵抗する姿勢を示して広く知られるようになった。2002年には、米同時テロ(2001年9月)の影響で経営難に陥ったスコールの会長兼CEOとなり、同社の立て直しに手腕を振るった。2021年6月にCEO職から退き、会長専任となったが、コロナ危機を経て同社が再び経営難に陥る中で、後任のCEOが3度も交代するという混乱を招き、経営の行方に懸念が集まっていた。その一方で病状も悪化し、後任の人選が決まらないまま在職中に死去した。会長死去の報を受けて、スコールの株価は9日終値で6.13%の大幅上昇を記録した。ケスレール会長はスコールの身売りを拒否し、激しい戦いの末に、仏保険大手コベアと「停戦条約」(コベアは2024年まで出資率を10%未満にとどめると約束)を結んでいたが、会長の死去に伴い、スコールが買収の標的になる可能性が再浮上すると市場は見ている。スコールの株価は24.93ユーロと、このところ回復はしてきたが、株式時価総額は45億ユーロ弱で、世界最大手のミュンヘン再保険と比べると10分の1に過ぎず、買収の手頃な標的となりうる。経営のかじ取りは今後、5月1日に就任したばかりのティエリー・レジェCEO(同業スイス・リー出身)に委ねられる。会長職は、次期会長が選任されるまで、ドロマネ副会長が臨時に務める。後任の人選は7月中にも決まるとの報道もあるが、スコールはこれを確認していない。 KSM News and Research -
2023.06.12
エデンレッドがパリ株式市場CAC40入り
バウチャー発行サービスのエデンレッド(Edenred)がパリ株式市場CAC40指数入りすることが決まった。メディア大手ビベンディと入れ替わりで指数入りする。19日付でCAC40指数入りを果たす。エデンレッドの前身は1962年に発足。社員食堂のない企業の従業員向けに、街中の飲食店の支払いに使えるバウチャーを発行する事業に乗り出した。この「チケットレストラン」(これはエデンレッド社の登録商標で、フランスにおける法的な総称は「ティットルレストラン」)は今日に至るまでエデンレッドの主力事業で、世界進出も進んでいる。その他の各種バウチャー事業も含めて、南米諸国を中心に日本を含めた世界45ヵ国で事業を展開しており、従業員数は1万2000人に上る。デジタル化・ペーパーレス化には2000年代から取り組み、デジタル事業の先進性も競合に対する強みとなっている。エデンレッドの社名は2010年の上場に遡る。同社は1983年にホテル大手アコーの傘下に入り、2010年に上場された。時価総額は当時、30億ユーロ強だったが、現在はその5倍の150億ユーロに上っており、時価総額では既にCAC40企業中で32位となっている。エデンレッドの2022年の年商は20億ユーロ強。営業利益率は34%弱。 KSM News and Research -
2023.06.09
アヌシー市で子どもたちを狙った襲撃事件、6人が重軽傷
アヌシー市内の公園の遊技場で8日の午前中に刃物を持った男性が子どもたちを襲撃する事件があった。大人を含む6人が負傷し、うち22ヵ月から36ヵ月の子ども4人が10日朝の時点で重篤な状態にある。犯人のシリア人男性(31)は逮捕された。犯人の男性は8日の9時45分に、アヌシー市の湖畔に位置する公園の遊技場を襲撃した。一人で犯行に及んだ。男性は「シリアのキリスト教徒」を自称し、犯行時に「イエスキリスの名の下に」と数度にわたり英語で叫んだという。この男性は、2013年以来スウェーデンに居住し、同国で難民認定を得ていた。スウェーデンで帰化を認められなかったことから、2022年11月末よりフランスに移住し、フランスで難民申請を行っていた。内務省によると、この申請は4日前に、スウェーデンで難民認定を既に受けていることを理由に却下されており、これが犯行の引き金となった可能性もある。男性は精神疾患の既往症はなく、当局の監視対象にもなっていなかった。警察では、犯行にテロの背景がある可能性はないとみているが、犯人は極めて興奮しており、今のところ取り調べや精神鑑定ができる状況ではないという。ボルヌ首相とダルマナン内相は相次いで現地を訪問し、犯行を糾弾した。子どもを狙った犯行だけに、国民に与えた衝撃は大きく、政界では左右のいずれの陣営も犯行を強く糾弾するコメントを発表している。 KSM News and Research -
2023.06.09
高速道路各社、帰省客向けの割引制度を導入
高速道路運営会社が8日までに相次いで夏季帰省客向けの割引制度の適用を予告した。7日には、ボーヌ運輸担当相が、高速道路運営各社に対して、インフレ抑制のための貢献を求める考えを表明しており、これに呼応して一部の企業が割引制度を予告した。バンシ・オートルートは、「バカンス小切手」(行楽や文化活動等の支払いに充てることができるバウチャー。企業が福利厚生を目的に任意で従業員に支給する)によりプリペイド式のETCタグへのチャージがなされた場合、20%を上乗せするという形で割引を適用する。6月15日から7月31日までになされた20ユーロから250ユーロまでのチャージに適用される。課金した分は夏季休暇期を過ぎても使用できる。これに続いて、APRRとAREAも同様の割引制度を予告した。6-8月にかけて25%の割引を適用する。高速道路の運営委託のコンセッションを巡っては、業者側の儲け過ぎを批判する声が根強くあり、政府も制度の見直しの可能性を検討している。インフレ亢進の中で業者への風当たりは強い。政府からの圧力には逆らいにくい雰囲気があり、即時の自主的割引措置の導入発表が相次いだ。ただ、「バカンス小切手」の保有者は500万人程度で、受益者はある程度限られている。 KSM News and Research -
2023.06.09
カルナックの巨石群、店舗建設のため破壊で物議
ブルターニュ地方カルナック市の巨石群の一部が店舗建設のために破壊されたことが報じられ、物議を醸している。地元の郷土史家が2日にSNS上でこの件を糾弾したのがきっかけで騒ぎが大きくなった。問題の土地は、以前から廃棄物の投棄がよく行われていた場所で、ホームセンター「Mr Bricolage」のフランチャイジーが2022年8月にカルナック市より建築許可を取得していた。この場所には、39体の小型の石が列をなして設置されていたというが、それでも建築許可が発行された。これについて、極右を含む様々な勢力が、文化遺産の破壊だとして一斉に批判を展開している。カルナックは、メンヒルと呼ばれる大きな石を一列に並べた「列石」で特に有名で、年代決定は困難だが、新石器時代に遡ると考えられている。今回の事件の現場近くで2010年に行われた炭素14による年代決定は、約7000年前のものとする結果を示しており、専門家の中には、小型の列石は年代がより古い可能性があるとして、破壊に至ったことを問題視する声もある。この建設計画は2014年12月に遡り、その時は遺跡問題とは別の理由で許可申請は却下となっていた。その際に、文化遺産を担当する出先機関は、予備調査により2組の列石のうち一方は過去に移動を経てここに置かれた可能性が高いと判断、もう一方について発掘調査を行う予定だったが、許可申請が却下となったために立ち消えとなっていた。新たな申請においては、発掘調査が行われないままに許可が付与された。出先機関の側では、価値ある遺跡であることは立証されていないとコメントしている。 KSM News and Research -
2023.06.08
美術品を資産とする企業の上場・取引市場Artexが発足
美術品を資産とする企業の上場・取引を行うユニークな市場が発足した。Artex社が先頃、初の上場企業を発表した。Artexはリヒテンシュタインで認可を受け、新市場の運営を行う。決済・精算ではスイスのSIX(株式市場運営)の協力を得る。取引の情報はブルームバーグ等を通じて配信される。去る5月30日には、初のIPO案件として、フランシス・ベーコンの3枚続きの絵画「ジョージ・ダイヤーズの肖像のための3つの習作」(1963年)を資産とする企業(ルクセンブルク籍)の設立がロンドンのビクトリア&アルバート博物館を会場に発表された。この作品の評価額は5500万ユーロで、同市場のIPO案件の規定により、100ドルを額面とする株式が発行される(この案件だと55万枚)。所有者にとって上場には、競売時に競売所がとる35%の手数料を払わなくて済む(Artexがとる手数料は3%)という利点がある。他方、資産である美術品は無料で貸与され、公開される規定になっており、投資した株主は配当金を一切得られない。将来の資産売却時には譲渡益を期待できるが、Artexは特に、価値が安定し、将来の値上がりを見込める美術品への投資をしやすくして、資産価値の保全を狙う投資家を呼び込むことを目指している。そのために株式の取引市場とその流動性の確保が課題だが、Artexは、マーケットメイカーによる流動性確保を手配している点を強調している。リヒテンシュタインは欧州連合(EU)加盟国ではないが、協定により同国の金融業者には、EU全域で事業展開が可能ないわゆるEUパスポートが与えられる。ただ、株式市場の監督実績はリヒテンシュタインにはなく、信頼のある監督体制が得られるのか、疑問視する見方もある。 KSM News and Research -
2023.06.08
政府、完全雇用法案を閣議決定
政府は7日、デュソプト労相が提出した「完全雇用法案」を閣議決定した。法案は、2027年に失業率を5%前後まで引き下げ(現在は7.1%)、完全雇用を達成することを目標に掲げている。このため、ポールアンプロワ(ハローワーク)を新設機関「フランス・トラバイユ」に発展的に解消し、新機関が就職活動の支援と各種給付の支給を一元的に扱うことで、援助と就業が直結するような制度作りを進める方針が盛り込まれた。特に、RSA(生活保護手当の一種)の受給者については、自動的に失業者登録を行い、週に最大20時間のトレーニングを受けることが義務付けられる。この措置は、マクロン大統領が大統領選挙時に公約として掲げたものだが、困窮者に義務を課すのは不当だとする批判の声が一部の野党側から上がっている。デュソプト労相は、RSAの受給者のうち4割に当たる35万人がいかなる就業支援も受けていないとし、そのような人をわずかな給付金を与えて放っておくほうがはるかに不当だと主張し、制度改正を正当化した。制度改正により失業登録者数は跳ね上がることになるが、労相は、それによって政府が依拠しているILO基準の失業率の数値が大きく変わることはないとの見方も示した。デュソプト労相は11月に、過去のアノネー市市長時代の不正疑惑で被告人として裁判を受けることになっている。野党側がこれを攻撃材料にするのは必至で、法案の国会審議は、労相が担当した年金改革法案に続いて、再び荒れ模様となることが予想される。 KSM News and Research -
2023.06.08
ボルヌ首相の官房長、近く退任か
報道によると、ボルヌ首相の官房長を務めるオーレリアン・ルソー氏が近く退任する。7月1日付で古巣の行政最高裁(コンセイユデタ)に戻り、その後、政府系金融機関CDC(預金供託金庫)の副CEOの候補になるという。マクロン大統領とボルヌ首相の間の対立が取り沙汰される中であるだけに、この人事の噂は憶測を呼んでいる。ルソー氏は46才で、マクロン大統領の提案により、2022年5月のボルヌ首相の就任と共に首相官房の官房長に就任した。そのルソー氏の退任は、内閣改造の前触れではないかとの見方もある。ルソー氏退任の噂は、3月にも取り沙汰されたが、この時は本人がこれを明確に否定していた。今回の報道について、首相府に近い筋では、日程や期日は決まっていないとコメントしているが、1年間の充実した国会運営と年金改革法の可決を経て、進退の問題が浮上するのは異例のことではない、とも付け加えており、退任の可能性を否定していない。与党が下院で過半数を失い、荒れ模様の政局運営が続く中で、もともと激務である首相官房長は日々大きな重圧にさらされているとする声も聞かれる。 KSM News and Research -
2023.06.07
年金改革反対デモ、動員は下火
6月6日、年金改革に反対する14回目の抗議行動が実施されたが、警察発表によると、デモ行進の参加者数は全国で28万1000人にとどまり、動員力の低下が鮮明になった。1月19日に開始した抗議行動は、一時は120万人以上を集める盛り上がりを見せたが、メーデー(5月1日)の統一デモでは参加者はすでに78万2000人に低下していた。なお、毎回警察発表と大きくかけ離れた大規模な動員数を発表する労組CGTは、5月1日の動員数を230万人、6月6日の動員数を90万人以上としている。下院では8日の本会議で、年金改革の撤廃を求める議員立法法案の審議が予定されており、これを控えて諸労組のリーダーは6日の抗議行動では下院議事堂の前に集結した。同法案は中道野党の小グループ「LIOT」が提出したものだが、その肝となる第1条(定年年齢を62才から64才へ引き上げるとする年金改革法の規定を撤廃する内容)は小委員会のレベルですでに削除されており、本会議での審議で同条項の復活が認められる可能性もほぼないため、改革反対派の希望は潰えつつある。労組CFDTのベルジェ書記長は「不本意ながら試合は終わりつつある」と認め、8日の審議についても「未知数の部分はあるが、見通しは良くない」と予想。今後の対応についても、主要労組が一丸となって主導する全国抗議デモは今回が最後だと述べた。CGTのビネ書記長のほうは、8日の下院審議にまだ期待を託す姿勢を示し、抗議デモを今後も続ける可能性を示唆するなど、両者の態度には温度差が感じられる。ただし両書記長はともに、今後も重要な労働問題に関しては労組間の協力を維持する方針を表明した。 KSM News and Research -
2023.06.07
最富裕層で実効課税率は目立って低下
パリ経済学校附属の研究機関IPPはこのほど、富裕層の実効税率に関する調査結果を公表した。極めて富裕な層においては実効税率が顕著に低下していることを突き止めた。この調査は、2016年(連帯富裕税ISFの廃止前)のデータをもとに行われた。個人所得だけでなく、個人が所有する企業の所得等に関するデータも利用し、実質的な収入と課税水準の把握を試みた。これによると、所得上位0.1%の世帯(3万7800世帯)においては、実効税率は46%に上るが、最上位0.0002%(75世帯)に限ると同税率は26%まで下がる。これは、極めて所得が高い世帯においては、個人所得よりも、保有する企業の所得が占める割合が格段に大きくなるが、企業所得は法人税課税(税率25%)が適用されることから、全体として実効税率が低くなることにより説明される。この調査結果について、経済省は、税法上の区分が別の資金を合算しているという問題点があると指摘。個人が保有する企業の社内留保は、当の個人が自由に処分できるわけではないとし、同列に扱うことはできないとした。その上で、所得課税の累進性が最上位0.1%を除く99.9%の世帯で機能していることを確認する結果だと指摘し、調査内容を歓迎した。 KSM News and Research -
2023.06.07
クイックコマースのFlink、フランス子会社が倒産
クイックコマースの独Flinkのフランス子会社が5日、パリ商事裁判所に会社更生法の適用を申請した。親会社がフランス事業からの撤退を決めたことを受けて、申請に踏み切った。買収者を探して事業の継続を目指すクイックコマースは新型コロナウイルス危機を追い風に急成長を遂げたが、危機の終息に伴い、逆に業況が悪化している。Flinkの倒産により、仏市場はトルコのGetir(Gorillasの買収を通じて事業を拡大した)の独壇場となるが、そのGetirも、フランス子会社が3週間前に会社更生法の適用下に入っており、900人の削減を含む厳しい合理化に着手している。需要の冷え込みに加えて、国内の規制強化も逆風となった。いわゆるダークストアを市街地内において設置が禁止される倉庫扱いとする法令が固まり、各社とも手詰まりの状態となった。それにも増して、クイックコマースのビジネスモデルには大きな難点がある。顧客獲得のために必要な投資が特に大きいが、事業規模は、1回の買い物につきせいぜい30ユーロ程度と小さく、ボリュームを活かして納入業者と価格交渉を行う自由度は限られている。細々した配達を束ねてコスト節減を図る余地もほとんどない。市内に拠点を置けないとなると、費用はさらに増大する。フードデリバリーなら、製品の梱包まで飲食店側が行い、いわば人の褌で相撲をとるような形にできるが、クイックコマースの場合はそれができない。食品小売大手とフードデリバリーがタッグを組むような形でなら、クイックコマースが切り開いた需要を、収益性を確保しつつ取り入れることが可能になるという見方もある。 KSM News and Research -
2023.06.06
マクロン大統領、モンサンミッシェルを訪問
マクロン仏大統領は6月5日、モンサンミッシェル修道院創立1000周年記念行事の一環として同修道院を訪問し、演説した。大統領は演説のなかで、「自然を構成する要素の制御、自然の一層の美化、歴史の継承における、フランスの恒常性とレジリエンス」を称揚した。大統領のモンサンミッシェル訪問には、年金改革により低落した支持率を回復させると同時に、伝統的要素を強調することによって野党の共和党(中道右派)の支持者への訴求効果を上げ、少数与党という議会における困難な状況を打開しようとする目論見もあるのではないかと見られる。 KSM News and Research -
2023.06.06
仏政府、住宅難解消の政策を公表
ボルヌ首相は5日、住宅難の解消を目指す政策を公表した。住宅購入の支援では、金利上昇により与信を得られにくい状況になっていることに配慮し、上限金利を毎月柔軟に改定できる現行制度を年内は維持することを決定。PTZと呼ばれる無利子融資制度(所得上限有り)については、2023年末で廃止される予定だったものを、2027年まで延長することを決めた。ただし、適用条件はより絞り込まれ、住宅難が目立つ地区においては新築のアパートのみ、それ以外の地区では、断熱リノベーションを経た中古アパートのみに対象が限定される。既存のBRS制度(住宅難が目立つ地区において適用される制度で、土地と住居の所有権を分離し、住居の所有権のみを購入者が取得する)では、適用条件の緩和などを通じて支援の増強を図る。さらに、低家賃住宅(HLM)と民間部門の賃貸住宅の中間に位置する住宅の整備に向けて市町村を支援することも決めた。賃貸住宅への投資促進を目的とした税制優遇措置(ピネル税制)については2025年末までの期限を延長しないことを決定し、それに代わる措置の導入を検討すると約束した。住宅建設業界はこの発表について、住宅建設の資金供給の拡大につながる措置がないと反発している。 KSM News and Research -
2023.06.06
CSW、ソリッドセイルの製造工場をサンナゼール港に開設へ
仏CSW(Computed Wing Sail)は1日、自社開発のソリッドセイルの製造工場をサンナゼール港内に開くと予告した。商船の脱炭素化に貢献する新技術のセイルを量産する。工場は、サンナゼール港の岸壁に沿った1万平方メートルの青果ターミナル跡の建物に入居する。2024年の操業開始を予定し、2025年時点で200-250人の雇用創出を目指す。投資額は1000万ユーロ強。同社のソリッドセイルは、高さが36メートル、面積324平方メートルで、逆風時に大きな推進力を得られる形状を採用した。入港時にはセイルを真ん中から半分に折りたたむことができる。同社は2014年に最初の特許を取得。アリアン・ロケットを仏領ギアナのクールー宇宙基地まで輸送するための帆船貨物船を運用する仏Zephyr&Boree社が推進する「Mervent 2025」プロジェクト向けに、2025年中に6基のセイルを納入することになっており、その生産がサンナゼールの新工場で行われる。2025年時点では年間60基の生産ペースの達成を目指しており、今年中に資金調達を行う計画。 KSM News and Research -
2023.06.05
アシェット、子ども向けメタバースを無料公開
仏出版最大手のアシェット・グループと、教育ゲーム開発のスタートアップPowerZは6月1日、共同で開発した子ども向けメタバース「オ・ドゥラ・デ・パージュ」(本のページの向こうに)を発表した。皮切りとして6月3日と4日の週末に一般公開した。アシェットは2021年、バイヤール出版と並んでPowerZに出資していた。「オ・ドゥラ・デ・パージュ」の仮想空間は、アシェットの出版物をもとに構築された複数のテーマ別小空間から構成されており、ユーザーのアバターはこれらテーマ別空間を自由に動き回ることができる。アシェットは、このメタバースを無料で提供する方針で、課金により短期的に投資を回収するのではなく、将来的に出版業界の顧客となるような若い読者を広範に開拓することを目的に掲げている。また、グループ内外を問わず広く出版業界、さらには美術館やコンサート等の参加も募る開かれたエコシステムを構想している。 KSM News and Research -
2023.06.05
S&P、フランス国債の格付けを維持
格付け会社S&Pは2日夜の時点で、フランス国債の格付けを「AA」に維持すると発表した。格付け見通しは引き続き「ネガティブ」とした。格付け会社のフィッチは4月末の時点で、フランス国債の格付けを「AAマイナス」に引き下げていた。S&Pはそれに先立ち、12月の時点で仏国債の格付け見通しを「ネガティブ」としており、今回の発表で格下げがあるかどうかが注目されていた。格下げが決まると長期金利の上昇とそれに伴う国債費の負担増も予想されることから、仏政府は格下げ回避に向けた熱意をこのところ繰り返し表明しており、その努力が実った格好になった。S&Pは、仏政府が中期的な財務健全化の戦略を見直した点を評価。仏経済が好況で推移している点も挙げた。最近に決まった年金改革と、エネルギー危機に絡んだ支援措置の終了の展望も肯定的に評価したが、設定された目標の達成に向けた信頼性にまつわるリスクも指摘した。ルメール経済相は格付け維持の決定について、「ポジティブなサイン」だとし、財務面でのフランスの戦略は明確であり、野心的であり、信頼性がある、と強調した。政府は最近に、2026年時点で財政赤字の対GDP比を3.2%まで圧縮する方針を示し、数日前には、2023年予算を100億ユーロ相当凍結することを決定。2024年に予算の5%節減を実現する方針も明らかにしている。 KSM News and Research -
2023.06.05
大統領府に地熱利用のヒートポンプ、工事が開始に
大統領府で地熱利用のヒートポンプ設備の建設工事が始まった。9月中に掘削工事を終えて、2024年春からの稼働を目指す。大統領府の建物は、18世紀にポンパドゥール夫人のために建てられたもので、風格はあるが古い建物の常としてエネルギー効率は極めて悪い。冷暖房の費用は大きく、二酸化炭素排出量の点でも模範的とは言えなかった。ヒートポンプの設置により汚名返上を図る。工事では、敷地内に65メートルの井戸を2本掘り、3層下の帯水層より水をくみ上げる。1年中を通じて15度と温度が安定した水を用いてヒートポンプを稼働し、季節により熱と冷気を生産する。1時間に45立方メートルの水をくみ上げるが、水はもう一方の井戸を通じて帯水層にすべて戻す。設置費用は掘削だけで70万ユーロ、施設をすべて含めて500万ユーロに上るが、導入により、暖房需要の6割をヒートポンプにより賄うことが可能になり、エネルギー費用は半分以下に削減できる。二酸化炭素排出量は8割減を達成できるという。 KSM News and Research -
2023.06.02
ボルヌ首相、託児支援プランを公表
ボルヌ首相は1日、託児支援プランを公表した。2030年までに20万人分の託児サービスを追加で提供することを約束した。政府は、託児先を見つけられずに就職を断念する女性が多いことを踏まえて、就業支援の一環としてこのプランをまとめた。マクロン大統領は、選挙公約において、託児先を得る権利を国が保障する制度作りを約束していたが、ボルヌ首相は、託児の公共サービスの整備に言及したものの、権利の保障にまでは踏み込まなかった。20万人分の追加のうち、2027年にかけては10万人分が達成される。政府はこのために55億ユーロの予算を約束した。具体的には、AVIPと呼ばれる、求職者向けに優先的にサービスを提供する託児所を2027年までに1000ヵ所増やす。また、人口3500人以上の自治体(市)に、託児公共サービスを組織する任務を託し、地元の需要と供給の状況について把握してユーザーに状況を通知するなどの役割を通じて、利用がしやすい体制を作る。自治体側は、家庭的保育事業の活用などを通じて、供給の活性化も図る。政府の発表について、託児所の業界団体側は、求人の49%が満たされていないという業界の求人難への対応がない限り、問題の解決にはつながらないと主張し、政府に踏み込んだ対応を要求している。 KSM News and Research -
2023.06.02
洗濯機からのマイクロファイバーが牡蠣の新陳代謝に影響
洗濯機の排水に含まれる衣類由来のマイクロファイバーが海洋生物の新陳代謝に影響を与えるとする内容の研究結果が、Environmental Pollution誌の5月26日号に発表された。フランスのIfremer(国立海洋開発研究所)、西ブルターニュ大学、CNRS(国立科学研究センター)、ルマン大学が共同で調査を行った。この調査は、海洋に放出されるのと同じ衣類由来のマイクロファイバーを96時間にわたって牡蠣に投与し、これを吸収した牡蠣の反応を調べたもので、マイクロファイバーの吸収によって牡蠣の消化器内に炎症が生じるなどの現象が確認された。汚染度を、1リットル当たり10個と、同1万個として比較したが、影響の度合いに違いがなく、少量でも影響が出ることが観察された。その一方で、自然繊維(ウール、綿)のほうが合成繊維(アクリル、ナイロン、ポリエステル)より炎症が起きやすいこともわかった。これは、自然繊維は表面のざらつきが多いためであると考えられる。ただし、影響度に関しては、自然繊維のマイクロファイバーが数週間から数ヵ月で消滅するのに対して、合成繊維の場合は数十年かかる点も考慮する必要がある。また、繊維・衣料の製造に使われる化学物質による汚染も考慮する必要がある。調査を実施した研究機関・大学は引き続き長期的な研究を進めるが、新しい衣類ほど洗濯によるマイクロファイバーの放出量が多いことを踏まえ、一つの衣類を長く使うスローファッションを推奨している。 KSM News and Research -
2023.06.02
ペンはキーボードより弱し
デジタルに押されて、文字を紙の上に書く人が減っている。世論調査会社のIFOPが調査結果を1日に発表した。この調査は、層別抽出の1003人(18才以上)を対象に、オンラインで5月15日と16日の両日に行われた。これによると、全体の78%の人が、10年前と比べて手書きの機会が減ったと回答した。また、55%の人が、日常生活でペンよりもキーボードを使って文字を書くと回答。「キーボードよりもペンを使う」は11%にとどまった(「どちらも同じように使う」は25%)。ペンにこだわる人は全体としてより低学歴者に多く、ワーカー・従業員においては14%とより多い。管理職はむしろデジタルに偏っている(「ペンをよく使う」は9%)。2022年に私信を郵便で送った人は全体の41%にとどまり、絵葉書を書いたと答えた人はわずか32%に過ぎなかった。その一方で、「紙に書くほうが好き」と答えた人は全体の26%となり、「キーボードで書く方が好き」の25%を上回った(40%が「どちらも好き」と回答)。この結果は、実際の状況とは別に、フランス人が手書きに愛着を持ち続けていることを示している。 KSM News and Research -
2023.06.01
仏政府、季節労働力確保の支援措置を公表
仏政府は5月30日、夏季シーズンの季節労働力確保のための措置を公表した。観光業界を中心に深刻化している人手不足の軽減を図る。政府によると、昨年の夏季シーズンには、15万人の季節労働力の需要があったが、実際に確保できたのはその半数にとどまったという。新型コロナウイルス危機が一段落し、観光客が目立って増加する中で、外食・宿泊業の人手不足は深刻化している。今年は昨年よりも3万人から4万人相当の労働力の需要増が見込まれ、政府は支援に乗り出した。具体的には、3年間の期間を対象に、トレーニングと季節労働者の住居確保支援を中心とするプランを策定し、状況を見ながら随時、柔軟に改めるという方式を採用。トレーニングでは、35-150時間という短期の研修をポールアンプロワ(ハローワーク)の下で行い、業界に通じていない労働力も呼び込める体制を準備する。このために1000万ユーロの補助金を提供し、特に需給がひっ迫する労働力の確保を支援する。就業者のシーズンオフにおける雇用やトレーニングを確保するのも課題で、この点では、海浜の観光地を選んで支援のパイロットプロジェクトを推進する。季節労働者の住居確保では、6月に斡旋のための官製プラットフォームを立ち上げ、公共部門を中心とした住居の活用を図り、学生寮や寄宿舎を開放して2000人分の収容能力を確保するなどの取り組みを進める。より長期的には、季節労働者への住居賃貸に係る税制優遇措置の適用等により、民間部門の住居の活用も図る。 KSM News and Research -
2023.06.01
仏:オーディオコンテンツ聴取の半分以上がデジタルに
調査会社メディアメトリが5月31日に発表した報告書(対象年齢:15歳から80歳)によると、仏では、デジタル媒体(主にスマホ)上でのオーディオコンテンツ(インターネット・ラジオ、ポッドキャスト、デジタル・オーディオブック、音楽ストリーミング配信)聴取が、オーディオコンテンツ聴取全体の半分以上に達した。調査の対象年齢(15歳以上)が多少違うものの、デジタル・オーディオコンテンツ聴取は2022年に既に全体の48%に達していた。オーディオコンテンツのデジタル化はオーディオコンテンツ聴取量全体の増大を招いているが、これは主に音楽ストリーミング配信(ミュージックビデオを含む)の普及が背景にある。音楽ストリーミング配信のユーザー数は毎月3500万人に達し、15歳から80歳の層の69%がそのユーザーとなっている。音楽ストリーミング配信は、1日当たりオーディオコンテンツ聴取量平均の31%に達しており、35歳以下の層では59%に達している。ポッドキャストも大きな成功を収めており、月平均ユーザー数(15歳から80歳)は2000万人に達した(2022年には1760万人)。ただし、オーディオコンテンツ聴取では依然ラジオが一位を占めており、全体の52%(スマホ上での聴取も含む)に達する。ただし、ラジオのユーザー数は、2022年1-3月の平均4020万人(聴取時間平均2時間38分)から、2023年1-3月には3970万人(同2時間36分)へと減少しており、ラジオ業界はデジタル移行加速を迫られている。 KSM News and Research -
2023.06.01
5月の仏インフレ率、5.1%に:物価上昇の勢いは目立って鈍化
5月31日発表のINSEE速報によると、5月のインフレ率(前年同月比)は5.1%となり、前月の5.9%から顕著に鈍化した。INSEEは5日の時点で、インフレ率が5月に5.7%、6月に5.5%へと徐々に鈍化するとの予測を示していたが、予想外の勢いで物価は沈静化した。5月の消費者物価は、前月比では0.1%の低下を記録。4月に0.6%の上昇を記録していたのと比べると沈静化が目立つ。インフレ減速はやはりエネルギー製品で顕著で、その上昇率(前年同月比)は5月に2%となり、ロシアのウクライナ侵攻前の2021年末以来の低い伸び率となった。サービス料金の上昇率も前月の3.2%から3%にまで鈍化した。食料品の値上がり幅は14.1%となり、まだ極めて高いものの、これも前月の14.9%と比べると減速した。ルメール経済相はこれについて、食品小売大手が約束した自主的な抑制策が効果を表したものだと歓迎。なお、この措置は当初は6月15日に終了する予定だったが、これが3ヵ月間延長されることが決まっている。その一方で、物価上昇に伴い個人消費には冷え込みが生じている。INSEE統計によると、4月の個人消費支出は前月比で1%減少。食料品に限ると減少率は1.8%に上っている。エネルギー消費も1.9%後退した。 KSM News and Research -
2023.05.31
グランパリ・エクプレスの北東2路線、ケオリスが運行契約獲得
パリ首都圏の公共交通組織機関IDFM(イルドフランス・モビリテ)は5月30日、パリ郊外を周回する新たな地下鉄網整備計画グランパリ・エクプレスに関して、2つの新路線(16、17号線)の運営事業者としてケオリス(SNCFの70%子会社)を選定した。同2路線の入札には、ケオリスのほか、RATP(パリ交通公団)の子会社RATP DEV、ミランATMが参加するコンソーシアムATEMISが応募していた。パリ首都圏の地下鉄運行はこれまでRATPが独占しており、ケオリスがこれを担当するのは初めて。ケオリスは国内ではリール、レンヌ、リヨン、国外ではドバイ、上海などで無人地下鉄運行実績がある。16、17号線はセーヌ・サンドニ・プレイエル駅からパリの北東郊外へそれぞれ全長29km(10駅)、26.5km(9駅)延びる無人の自動地下鉄路線。運行契約期間は7年で、路線延伸の可能性を含めて最長10年までの延長が可能、3億ユーロの料金収入が期待される。開通は2026年末と2028年の二段階となる。営業速度が時速55-65km(車両を納入するアルストムによると最大時速110km)と速く、また、パリ市内の地下鉄始発・終電との接続のため朝は午前5時から、週末は午前2時15分までの運行が計画されている。なお、ケオリスが担当するのは車両の運行のみで、レール、トンネル、転轍、プラットホームドアといったインフラは、2010年のグランパリ関連法に則り、RATPがこれを管理することになっている。パリ南郊に敷設が予定される15号線でも5月10日に応札企業による最終案が提出済みで、7月18日にIDFMの決定が発表される。 KSM News and Research -
2023.05.31
中古住宅の取引価格、全国的に低下
不動産価格の低下が目立っている。金利上昇に伴い、家計が住宅購入の購買力を失ったことが背景にある。中古住宅の取引件数は、2023年3月までの12ヵ月間で106万9000件となり、ピークを記録した2021年9月までの12ヵ月間の120万件と比べて10%程度の後退を記録した。金利上昇に伴い、20年ローンで家計が借りられる平均金額は、20万ユーロから15万ユーロへと目減りしており、住宅購入に踏み切れない世帯が増えたことが影響している。取引件数の後退に伴い、パリで始まった取引価格の低下も全国に広がりつつある。パリ首都圏(イルドフランス地域圏)では、1-3月期に前の期比で1%程度の取引価格の低下(アパート、一戸建てとも)を記録した。これまでは、新型コロナウイルス危機に伴い、都会から地方に移住する人が増え、その需要が地方の住宅価格を押し上げていたが、ここへ来て流れが変わった。ペイドラロワール、グランテスト、オードフランスの各地域圏では、取引価格が0.2-0.8%の低下を記録。一戸建ての取引価格の低下はさらに目立ち、オードフランス地域圏では1.2%の低下を記録した。 KSM News and Research -
2023.05.31
不法投棄の監視カメラを開発のVizzia、340万ユーロを調達
不法投棄の検出を行う監視カメラのソリューションを開発した仏ベンチャー企業Vizziaがこのほど、340万ユーロの調達を完了した。自治体による採用の拡大に備えて資金を調達した。女性起業家を支援するSista Fundやファミリーオフィス、ビジネスエンジェルなどが出資した。Vizziaは、ビジネススクールHEC出身の女性起業家ディミトロバ氏らにより2021年5月に設立された。同社の監視カメラ「Vizzia Cam」は、不法投棄の廃棄物の出現を検出し、その前後の摘発等に必要なデータのみを保存し、設置主体に提供する。1日当たりで数分の動画を見るだけで済み、手間と費用を削減できる。国内の不法投棄は年間で100万トンを超える量に上るとみられている。最近の法改正で処罰が強化され、不法投棄には15万ユーロに上る罰金処分を下せるようになったが、監視と摘発の十分な手段を持たない自治体等の当事者にとって、打つ手は限られていた。Vizziaのソリューションはそうした自治体の需要に即しており、これまでに、ガルジュレゴネス市(バルドワーズ県)、ポルトベッキオ(コルシカ島)、モンテリマール(ドローム県)、ドゥルダンの森(森林庁が管理)などに採用されている。パリ市とも導入に向けて協議中という。 KSM News and Research -
2023.05.26
仏経営者景況感、5月にも後退
5月25日発表のINSEE統計によると、経営者景況感総合指数は5月に100ポイントとなり、前月から2ポイント低下した。3ヵ月連続での低下となり、2021年4月以来では初めて、長期の平均である100ポイントまで下がった。部門別では、工業部門で2ポイント低下の99、建設部門で3ポイント低下の108ポイント、サービス部門で2ポイント低下の101ポイント、小売部門で1ポイント低下の100ポイントと、いずれの部門でも景況感が後退した。1ヵ月おきに調査が実施される卸売部門でも、前回調査から4ポイント低下の94ポイントとなった。同部門では、これまでの事業に関する判断と外国からの仕入れに関する判断について特に後退が目立った。企業の採用意欲が反映される雇用関連の指数も、5月には105.5ポイントとなり、前月から4ポイントの後退を記録した。2021年9月以来で最低の水準まで下がったが、長期の平均である100をまだ上回っている。サービス部門での将来の雇用の推移に関する見方が悪化したことなどが響いた。 KSM News and Research -
2023.05.26
マクロン大統領の「文明後退」発言が物議に
マクロン大統領は24日の閣議の際に、暴力的な事件が増えていることについて、いかなる暴力も正当ではないとし、「文明の後退という流れに対抗すべく、掘り下げた努力をしなければならない」と言明した。「文明の後退」という言葉は、極右系の勢力がよく用いるものでもあり、大統領の発言は物議を醸している。大統領は25日には、警官3人が職務中に逆走自動車にはねられて死亡するという事件が起きた北仏ルーベー市を訪問し、追悼の念を表明した。最近ではこのほか、ランス大学病院で精神異常者に看護師が刺殺される事件が発生。また、極右勢力により脅迫を受けたサンブレバンレパン市の市長が辞任するという事件もあり、市長のような地方議員に対する暴力事件が増えていることが問題視されていた。これらは背景や原因が異なる事件ではあるが、大統領はこれらを、社会の暴力化が進んでいることの現れとしてまとめて、「文明の後退」への対策に努める考えを確認した。「文明の後退」という言葉は、移民の大量流入により文明と民族アイデンティティが浸食されるという文脈で、極右勢力がよく用いてきたものであり、極右系の作家ルノー・カミュ氏は2011年に刊行した著作のタイトルにも用いている。大統領に近い筋では、暴力事件の頻発を移民と結びつけるという趣旨でこの言葉が使われたのではないと釈明している。 KSM News and Research -
2023.05.26
シャネル、2022年にも販売好調
高級ブランドのシャネルは、2021年に続いて2022年も順調な販売拡大を記録し、モード、香水・化粧品、時計、ジュエリーの全部門、および世界の全地域で、コロナ禍前の2019年の水準を上回った。総売上高は172億2000万ユーロと、前年比で17%増(有機的成長率)を記録。特に、全体の27%を占める欧州でほぼ30%の増収を記録した。2022年には、ロシアの店舗閉鎖とシャネル財団への投資増強の影響で、営業利益(57億ユーロ)の伸び率は増収率に及ばなかったが、営業利益率は33%を超える水準を維持した。2022年11月以降、米国での販売に景気低迷の影響が出ているが、欧州とアジアでの販売好調がこれを十二分に補っているという。 高級ブランドセクターのアナリストによると、ルイ・ヴィトンとディオール(いずれもLVMH傘下)、エルメス、そしてシャネルの4ブランドは、クリエーティブなイメージ維持に成功したことでグッチ等の他の高級ブランド群に水を空け、世界のトップ4を形成している。これらトップブランドの基本戦略の一つは価格設定で、通常からの超高級路線のおかげで、インフレ亢進下でも一層の値上げをする余地があることが大きい。シャネルの場合、2022年の増収の半分は平均価格の上昇によって確保されており、2023年3月にも新たに8%の値上げを実施した。また、ブランドイメージ維持のための流通網の厳格なコントロールも基本戦略であり、販路を限定することで顧客との特権的な関係を維持し、経済の動向に左右されない強い販売構造になっているという。シャネルは2022年にモードと時計部門で3店舗、香水・化粧品部門で39店舗を新たに開設し、2023年に入ってからもビバリーヒルズにある米国最大規模の店舗をリニューアルオープンした。なお、シャネルは従来EC販売には慎重な姿勢を保ってきたが、現在、香水・化粧品部門の販売の20%はEC販売で上げている。 KSM News and Research -
2023.05.25
欧州委、個人投資家保護の法令案を公表
欧州委員会は5月24日、個人投資家の保護に関する欧州連合(EU)法令案を公表した。法令案は今後、EU理事会と欧州議会において審議される。EUでは、家計資産の17%のみが証券投資となっており、この割合は米国の43%と比べて低い。欧州委は、証券投資の振興につながる個人投資家の信頼感醸成を目的として、今回の法令案を策定した。個人投資家への情報開示の徹底や不適切な商行為の排除などを目的とする一連の措置が盛り込まれた。このうち、金融商品を製造する運用会社に金融商品を販売する販売業者が支払う手数料については、助言が伴わない販売方法による場合にのみ禁止の対象となる。この手数料については、販売業者にとって儲けが大きいが、投資家にとってはむしろ不利な商品の販売が優先されるという弊害を招くことが問題視されていたが、全面禁止は業界に大きな影響をもたらすことに配慮し、制限付きでの禁止に落ち着いた。この手数料額に関する開示義務もあわせて導入される。それと並行して、投資家にとって利益が小さすぎる商品の排除に関する各国の規制機関の権限も強化される。このほかインフルエンサーによる金融商品の宣伝についても規制を強化し、違反行為があった場合に、インフルエンサーに依頼を行った業者に対しても罰金処分を科すことができるように法令が改正される。法令の施行から3年後に、欧州委は影響調査を行った上で、より厳しい規制の導入の是非について検討する。 KSM News and Research -
2023.05.25
仏政府、2023年に歳出1%を追加凍結
仏政府が追加の歳出凍結を計画している。ルメール経済相が23日に認めた。2023年予算における歳出の1%相当が凍結される。人件費を除くすべての予算が1%凍結の対象となる。金額では18億ユーロに相当する。政府はこれより前に、5%の予算凍結を決定していた。追加分も含めて合計で100億ユーロ相当が凍結される計算になる。ルメール経済相はこの凍結について、2023年の財政赤字の対GDP比が確実に5%未満にとどまるようにするための措置だと説明した。経済成長が低めで推移する中で、財政健全化の行方には黄信号が灯っている。フランスの財政赤字の対GDP比は、2022年に4.7%まで低下した後、2023年には4.9%にまで上昇する見通しとなっている。政府は中期財政見通しの中で、2027年までに同比率を段階的に引き下げ、2.7%にまで戻して欧州連合(EU)の基準である「3%以内」を達成するとの展望を示しているが、その実現可能性について疑問視する向きもある。格付け会社のフィッチは去る4月末に、年金改革の反対運動に伴う社会的な緊張の高まりを理由に、仏国債の格下げを決定。S&Pが6月5日に発表する格付け見直しでどのような判断を示すかが当面の注目ポイントとなっている。長期金利上昇の圧力の中で、政府として堅実な財政運営の方針を示すことが求められており、歳出の追加凍結の決定は信頼回復の狙いが込められている。 KSM News and Research -
2023.05.25
スイスとフランスの研究チーム、下肢運動麻痺の患者の歩行に成功
スイスとフランスの研究チームの協力により、下肢運動麻痺の患者が再び歩行することに成功した。24日に成果が発表された。スイスのNeuroRestore(ローザンヌ連邦工科大学など)と仏Clinatec(原子力庁CEAなど)が協力し、オランダ人の患者(40才男性)が被検者となった。この患者は10年ほど前に自転車事故で下肢運動麻痺となっていた。NeuroRestoreは、脊髄に電極を埋め込み、適切な刺激を送ることで運動を生じさせる研究を進めていた。一方のClinatecは、脳の運動野付近に電極を埋め込み、脳波でロボットスーツを操作して運動麻痺の患者に歩行させるという技術を開発していた。両者の協力により、患者の脳波の情報を脊髄の電極に送り、そこから下肢を動かすという世界初の試みが成功した。事故による負傷のために損傷し、情報が伝達されなくなった脊髄に、バイパス経由で信号を送るという形になる。情報の処理には機械学習のアルゴリズムを用いたサポートがなされる。動かせるようになるには訓練が必要だが、被験者は30分間に渡って歩行を続けることが可能になっている。今後は、デバイスの小型化とレイテンシーの改善が開発の課題となる。他方、この技術を悪用すれば、将来的には「他人の体に安来節を踊らせる」といった類の悪ふざけも不可能ではなくなるわけで、倫理的な側面からの配慮も必要になる。 KSM News and Research -
2023.05.24
COBOLプログラマーの不足、銀行・保険業界で深刻に
プログラミング言語COBOLを扱える技術者が不足している。特に銀行・保険業界ではCOBOLで作成されたソフトウェアが広く用いられており、開発や保守ができる人材が必要だが、近年では他の言語に押されて教育が後退しており、退職する技術者の補充が困難になっている。COBOLは1959年に開発された事務処理用のプログラムで、国際標準規格となり広く普及した。帳票などの機能に優れていることから、銀行の現金出納や決済管理、保険事故の申告情報管理や各種発券業務など、導入が早かった分野においては、COBOLで開発されたソフトウェアが現役で広く用いられている。しかし、フランスでは、今世紀に入って以降、COBOLは学校における教育課程からは除外されており、新たな人材は育っていない。その一方で、COBOL専門家として育成された世代の技術者が定年退職する時期を迎え、銀行・保険業界を中心に、人手不足が深刻化している。ラ・バンク・ポスタル(銀行)、コベア(保険)、BPCE銀行などは、「COBOL技能者求む」の求人広告を頻繁に出している。2年前に退職したCOBOLプログラマーのロンジェさんも、「定期的に求人の誘いが来る」と証言している。より新しい言語で作成されたソフトウェアへのマイグレーションということになると、費用がかかる上に、正しく機能するという保証はない。「COBOLがないならJAVAにすればいいじゃないの」を実践した英TSB銀行の場合は、2018年に巨大な不具合が発生し、賠償で3270万ポンド、当局による罰金で4860万ポンドという巨額費用負担を強いられた。各社とも古い言語から離れられないまま、COBOL職人を探すという状況が続いている。 KSM News and Research -
2023.05.24
仏政府、企業の利益分配法案を閣議決定へ
仏政府は24日、企業における利益分配に関する法案を閣議決定する。労使合意の内容を立法化する。利益分配に関する労使合意は今年初頭に成立していた。政府はこのタイミングでその立法化に着手することで、年金改革を巡り悪化した労組との関係改善を図る考え。労使合意の内容は、5年間の試験導入の形で立法化される。具体的には、従業員数11-49人の企業について、売上高の1%以上の純利益が3年連続で達成された場合に、各種の利益分配制度の導入が義務付けられる。政府はこれにより、150万人強の従業員が新たに利益分配制度の対象に加わるものと予想している。また、この種の制度の導入義務が既に適用されている従業員数50人以上の企業については、「特別利益」があった場合に、その分配に関する労使交渉を行うことが義務付けられる。「特別利益」の定義が国会審議における争点になるものと予想されるが、政府案は、労使交渉により決める旨を定めている。下院審議は6月下旬に開始される予定。 KSM News and Research -
2023.05.24
パリ・メトロ構内のPM2.5汚染、高い濃度を確認
国営フランス・テレビジョンが行ったパリ・メトロのPM2.5汚染状況の調査結果がこのほど発表された。汚染が外気に比べて高いことが確認された。この調査は、CNRS(国立科学研究センター)のルナール研究部長の監修の下で、ジャーナリストがメトロの駅でサンプルを採取することにより行われた。全体で、1立方メートル当たりのPM2.5濃度は24マイクログラムとなり、世界保健機関(WHO)の勧告である5マイクログラムより5倍ほども高かった。計測は外気中でも行われたが、それとメトロ駅における濃度の差は平均で10.5マイクログラムと大きかった。この差が20マイクログラムに上った駅は全部で68駅あり、ベルビル(2番線)で差は60マイクログラムと最大で、ラデファンス(RER A線)が57マイクログラムでこれに続いた。路線全体でみると、外気との差が最も大きかったのは5号線(差が18マイクログラム)で、RER A線が17マイクログラムでこれに続いた。全体として、外気における濃度が高いほど、構内の濃度も高く、これは汚染が連動していることを示している。構内の濃度がさらに高いのは、ブレーキ時に線路との摩擦により粒子が発生することにより説明される。発生の程度は走行する車両の古さや方式により異なる。換気施設の性能や深度なども、駅による濃度の差を生じさせる要因となっている。基準値よりも高い汚染度について、パリのビシャ病院のクレスタニ教授(呼吸器疾患専門)は、通勤などで定期的に利用する人についてはさほど懸念はないが、1日の滞留時間が長く、それが長期に渡り続く職員らについては注意が必要だと指摘。パリ・メトロを運営するRATP(パリ交通公団)は、職員の健康障害については恒常的に調査をしているが、人口全体と比べて高いということはないと指摘した上で、汚染度が低い新型車両への更新をはじめとする設備投資を行い、改善に努めていると説明している。 KSM News and Research -
2023.05.23
マクロン大統領、モンゴルを公式訪問
マクロン大統領は5月21日、モンゴルを公式訪問した。フランスの大統領がモンゴルを公式訪問するのはこれが初めて。マクロン大統領は、G7広島サミットの帰路に立ち寄る形でモンゴルを訪問した。大統領周辺はこの公式訪問を、「戦略地理的」な訪問と形容しており、中国とロシアに挟まれ、両国の影響が大きいモンゴルとの協力関係の強化を目的に訪問を決めたとみられる。モンゴルは中国産の石炭への依存が大きいが、新型コロナウイルス危機時には国境封鎖で大きな打撃を受けた。モンゴルはまた電力の半分以上をロシアに依存している。モンゴル政府はこうした依存を軽減することを望んでおり、フランスは、再生可能エネルギーの展開に協力するなどして、モンゴルとの関係を強化する余地があるとみている。フランス側は、レアアースを含むモンゴルの地下資源にも注目している。仏オラノ(核燃料)はモンゴル国営モンアトムとの協業で、モンゴル国内のゴビ砂漠地方でウラン採掘を計画しており、オラノはモンゴルにおけるフランス最大の投資者となっているが、マクロン大統領とフレルスフ大統領は共同声明の中で、このプロジェクトの実施を加速する方針を確認した。現在は許認可取得の手続きが進められている。フレルスフ大統領はマクロン大統領を国賓待遇で迎え、大統領府での会談後に国立美術館を揃って見学、次いで晩餐会が開催された。同美術館は、10月に仏ナント歴史博物館で開かれるモンゴル展に所蔵品の一部を貸与することになっており、マクロン大統領は、その機会にあわせてフランスを訪問するようフレルスフ大統領を招待した。 KSM News and Research -
2023.05.23
仏政府、温室効果ガス削減の新方針を公表
ボルヌ首相は22日、温室効果ガス削減の新方針を公表した。目標をかさ上げし、実現に向けた方向性を示した。仏政府はこれまで、1990年比で2030年までに温室効果ガスの排出量を40%削減するとの目標を設定してきたが、これを、欧州連合(EU)の方針にあわせて55%削減にまでかさ上げした。総量では、二酸化炭素換算で2022年の4億800万トンに対して、2億7000万トンまで削減する。部門別では、建物で6400万トンから3000万トンへ、輸送で1億2900万トンから9200万トンへ、工業部門で7200万トンから4500万トンへ、農業で8100万トンから6800万トンへ、エネルギーで4700万トンから2700万トンへ、それぞれ削減する。首相府では、削減努力の半分は企業に、4分の1は家計に、4分の1は公共部門・自治体がそれぞれ引き受けることになると説明している。ボルヌ首相は、「小さな者には小さな努力を、大きな者には大きな努力を」求めると説明した。試算によると、住宅や公共施設のリフォーム、クリーンカーへのシフト、脱炭素のための工業部門の投資など、様々な取り組みの費用は、2030年時点で年間660億ユーロに上り、うち340億ユーロは国庫が負担する見通しとなっている。財源としては、公的債務の増大のほかに、気候変動対策に逆行する各種税制優遇措置の見直しで年間100億ユーロの確保が可能とみられている。また、政府に提出の報告書は、家計の金融資産を対象にした特別課税を通じて、上位10%の最富裕層を対象にした特別課税を期間限定で行うことも提案している。政府が今回示したのは、主に様々な取り組みによる削減の目安であり、強制力の伴う内容ではない。政府は具体的に、EVへのシフトで11%削減、リモート就労の振興で3%削減などの目安を示したが、その実現のための措置については明示しておらず、環境保護団体などからは、あいまいな内容だとする批判の声も上がっている。 KSM News and Research -
2023.05.23
シテ島の再開発計画、コンシエルジュリとサントシャペルを連結か
パリの中心にあるシテ島の再開発計画が再び持ち上がっている。コンシエルジュリとサントシャペルをつなぐ観光コースの整備などが検討されているという。シテ島の東側には、かつての王宮だったコンシエルジュリと呼ばれる建物があり、マリーアントワネットが投獄されていた場所として名高い。同じ一群の建物には、最高裁判所とパリ高等裁判所があり、かつてはパリ地裁も入っていたが、こちらは17区のバティニョル地区にある新施設に移転した。左岸に面した部分は、有名な司法警察の庁舎だったが、こちらもバティニョルに移転している。中央には、13世紀に建立のステンドグラスが美しい教会「サントシャペル」があり、同じシテ島にあるノートルダム寺院と並ぶ観光名所となっている。シテ島の再開発計画は、オランド政権下の2016年に、歴史的建造物センターの所長を務めていたベラバル氏らが報告書を提出して提言したが、その後は忘れ去られていた。しかし、そのベラバル氏が去る1月にマクロン大統領の文化顧問に就任したのがきっかけとなり復活した。具体的なプランは明らかになっていないが、シテ島の地下にあり、現在は使われていない通路を利用して、ノートルダム寺院の方から、コンシエルジュリやサントシャペルなどをつなぐ通路の整備などが検討されているという。その一方で、空いたスペースを狙う最高裁とパリ高裁の陣取り合戦も繰り広げられているといい、これら一群の建物の将来像はまだ固まっていない。再開発計画はおよそ2030年までの日程で準備される。 KSM News and Research -
2023.05.22
学校教育におけるダイバーシティー向上策、最小限の内容に
ンディアイ教育相は17日、学校教育におけるダイバーシティー向上に関する方針を公表した。カトリック系の私立学校連合会とも協力合意を結んだ。これは何かと物議を招きやすい案件であり、政府の対応も迷走気味だったが、結局、最小限の内容に落ち着いた。発表された方針は、2027年までに公立学校における社会階層ごとの生徒の分布の格差を20%軽減するとの目標を設定。この実現のために、地域ごとに必要なツールを整備し、今夏までに協議機関を設置することを決めた。私立学校についてはそうした目標は設けず、連合会側は、「家族の所得水準に応じた学費調整制度を導入している学校の数を5年間で50%増やす」ことと、「家族が社会給付を受けられる学校について、5年間で奨学生が占める割合を2倍に増やす」ことを約束した。私立学校において奨学生が占める割合は現時点では平均で10%だが、「社会給付を受けられる」という条件にはかなり重要な意味がある。私立学校は運営予算が助成の対象となっているが、学校給食などは運営予算には入らず、これは助成の対象となっていない。これを助成の対象として認めるというのは、連合会側の以前からの要求の一つであり、連合会はこの条件を付けることで、努力の代償として要求を認めさせたことになる。助成の大部分は地元の自治体からのものであり、どの程度の自治体がこれに応じるかは不明だが、一部の自治体からは、教育内容に関与する権限が一切ないまま現状でも多大の助成を行っているのに、さらに助成をしなければならないのはおかしいと反発する声も上がっている。 KSM News and Research -
2023.05.22
政府、SNUを学校教育内で提供する計画
政府はSNUと呼ばれる若年者対象の研修制度について、学校教育内で実施する形でその利用拡大を図る方針を固めた。関係各方面と協議を開始した。SNUはマクロン政権下で2019年に創設された。過去に廃止された兵役を念頭に置いて、15-17才を対象に、国民の結束の醸成につながる活動をさせるという趣旨で創設された。12日間の合宿と、84時間の公益奉仕からなり、軍などが主な主催者となっている。参加は任意で、現在は学校休暇中に組織されている。マクロン大統領は選挙公約として、このSNUを全員参加に改める方針を掲げていた。なお、2022年には、SNUの参加者数は3万2000人となり、目標の5万人とは隔たりが大きい(ちなみに、高校1年生の生徒数は80万人に上る)。ただ、全員参加ということになると費用も大きく(試算によると年間20億ユーロ超とも)、政府は即時に公約を実施するのは断念し、段階的に参加者を増やす方針を固めた。具体的には、現場の教員らからプロジェクトを募集し、学校教育の一部として、授業の代わりにSNUを実施するとの構想を提示。参加は任意とするが、参加実績は、進学先決定の選考において評価の対象となる。SNUを組織する教員(こちらも任意)には、特定のミッション遂行に対する報奨金を支払うなどして処遇する。教員組合の側では、授業時間が少なくなるのは教育の後退だなどとする反発の声が上がっている。 KSM News and Research -
2023.05.22
帆船貨物輸送のVela、1000万ユーロの調達を計画
フランス人ヨットレーサーのフランソワ・ガバール氏が立ち上げた帆船貨物輸送ベンチャー「Vela」が年内に1000万ユーロの資金調達を計画している。米仏間を結ぶ定期便輸送の開始を目指す。ガバール氏は世界一周単独ヨットレース「バンデ・グローブ」で優勝経験があり、世界記録の保持者でもある。2022年に仲間の実業家らと共にVela社を立ち上げた。全長65メートルの三胴船により一度に560パレット(400トン超)の貨物を輸送する計画で、3隻の建造を予定する。去る12月には米仏間で試験航行を行い、事業化の感触を探った。2025年より、バイヨンヌ、ボルドー、ラロシェル、ロシュフォールと米国を結ぶ貨物輸送を行う計画で、バッグ、蒸留酒、化粧品、美術品など高付加価値の製品をターゲットに、双方向で輸送する事業を展開する。炭素負荷の低さに加えて、輸送の柔軟性(生産地と消費地に近い小規模の港湾からの輸送が可能)と、それに伴う迅速さ(ドアツードアで15日間)をセールスポイントとする。運賃は当初、空輸と海運の中間に位置する水準に設定し、数年間に渡り据え置くことを約束する予定。 KSM News and Research -
2023.05.19
国内の水不足は解消されず、28県で干ばつの「高いリスク」
仏国内の水不足は依然として厳しい状況にある。当局機関のBRGM(鉱山局)が5月17日に発表した最新の予測によると、今夏までに干ばつが生じるリスクの高い県は、全国の約100県のうち28県に上る。リスクが高い県は主に、パリ盆地の大部分と、ローヌ川流域地域、さらに地中海沿岸地域に分布している。このところは降水量が多く、一部の地域では、農地の状況が優れないために種蒔きの時期を決めかねる状況に陥っているものの、全体としてみると、この時期の降水は、生育中の植物に吸い取られて地下水系までは達せず、昨年夏の干ばつで低下した地下水系の水位の回復効果には乏しいという。地下水系の68%では、水位が「低い」又は「極めて低い」となっており、この割合は、1年前の58%に比べてさらに深刻となっている。リスクが高い28県に加えて、50県程度が「かなりのリスクがある」に分類されている。ブルターニュ地方とその周辺、そして東北地方を除く国土の大部分がリスクに見舞われている。既に、地中海沿岸地方の20県では危機的な状況にあり、水の利用制限が導入されている。政府はこれを受けて、干ばつへの対応のガイドラインの改訂版を公表した。2021年6月に公表した前回バージョンをより厳しい内容に見直した。個別的な例外措置の適用の制限などを盛り込み、導入のタイミングも従来より繰り上げることを指示した。利用制限も厳格化され、例えばゴルフ場の散水量は80%にまで制限される。 KSM News and Research -
2023.05.19
仏失業率、1-3月期に7.1%:1982年以来で最低の水準に
17日発表のINSEE統計によると、仏失業率(ILO基準、マヨット海外県除く)は1-3月期に7.1%となり、前の期並みを維持した。失業者数は7000人の微減を記録した。失業率は1982年以来で最低の水準に下がった。インフレ亢進と低成長の中でも雇用情勢は比較的に良好な推移を続けている。1-3月期には、若年層の失業率が前の期比で0.2ポイント低下の16.6%に改善(前年同期からでは0.1ポイント低下)。50才以上の層では、前年同期より0.2ポイント増の5.2%となったが、前年同期と比べると0.3ポイントの低下を記録した。15-64才の就業率は68.6%となり、前の期から0.3ポイントの上昇を記録。1975年の現行統計の開始以来で最高の水準に達した。15-24才の層では0.2ポイント上昇の35.3%となり、1990年以来で最高を記録。50-64才では0.3ポイント上昇の66.5%(前年同期比では1ポイント上昇)となり、こちらは1975年の統計開始以来で最高となった。その一方で、ILO基準では失業者に算入されない「失業者予備軍」は1-3月期に6万2000人増を記録。前の期の4万9000人増の後で増加を続けた。マクロン政権は任期が満了する2027年時点で完全雇用の実現(失業率5%前後)を目標に掲げているが、足元の経済情勢を踏まえて一部にはより厳しい見方も広がっている。景況機関OFCEは、失業率が2024年末には7.9%まで上昇すると予想。フランス中銀も2024年中に8.2%まで上昇すると予想している。 KSM News and Research -
2023.05.19
サルコジ元大統領、実刑部分の伴う禁固3年の有罪判決受ける
パリ高裁は17日、サルコジ元大統領ら3人の被告人に対して禁固3年(うち1年間は実刑部分)の有罪判決を言い渡した。贈収賄の約束があったと認定した。被告人らはそれぞれ上告すると予告した。調べによると、サルコジ元大統領と顧問弁護士のエルゾーグ氏は2014年に、元大統領が当時追及を受けていた2件の刑事事件に絡んで、捜査情報の入手を目的に、最高検察庁の検事を務めていたアジベール氏に接近。アジベール氏の昇進に手を貸すことを約束して捜査情報の取得を手配していた。パリ高裁は今回の控訴審において、第1審と同じ実刑部分が伴う有罪判決を言い渡した。検察側求刑は実刑部分の伴わない禁固3年だったが、それよりも厳しい判決を下した。また、サルコジ元大統領とアジベール被告人には、3年間の公民権停止を、エルゾーグ被告人には3年間の弁護士職の遂行禁止を言い渡した。上告により刑の執行は中断される。また、実刑部分が1年間であれば、刑事施設への収監はなされず、移動制限の代替刑が適用される。とはいえ、大統領経験者が禁固の実刑判決を受けた前例はない。この事件は、サルコジ元大統領とエルゾーグ氏の間の電話盗聴から浮上した。エルゾーグ氏は、「ビスミュート」という変名で携帯回線を開き、サルコジ元大統領と秘密の通信を行っていたが、捜査当局はこの回線の存在を突き止めて、盗聴の対象としていた。元大統領らはまず、電話盗聴を違法と主張して起訴取り消しを求めて争い、起訴されて以降は、実際の便宜供与がなされていないことを挙げて、違法行為が存在しないと主張して争った。パリ高裁は下級審と同様に、約束の存在のみで贈収賄が成立していると判断し、有罪判決を言い渡した。 KSM News and Research -
2023.05.17
大統領公約の「月額100ユーロでのEVリース」、リーシング企業に委託へ
マクロン仏大統領は2022年の大統領選挙の公約の1つとして、低所得世帯向けに月額100ユーロでのEVリースサービスを提供することを掲げ、ボルヌ首相はこれを2023年の秋に導入することを予告しているが、レゼコー紙によると、政府はその具体的な手段として、入札で選定した大手のリーシング企業に事業を委託し、リーシング企業が自動車メーカーと交渉の上でEVを購入し、それを低所得世帯向けに提供するという形を考えている。一部では公営の事業体を立ち上げることを提案する声もあったが、政府はすでにノウハウを備えた民間のリーシング企業に委託することを選択し、近く関係企業を集めた会合を開く予定。ただし、月額100ユーロという料金でのリースは、EV価格の上昇や金利の上昇を考慮すると採算を確保することが難しいと懸念されている。すでにEVの購入には7000ユーロの補助金が支給されているものの、これだけでは不十分で、国が何らかの追加的な補助金を提供する必要があると考えられる。政府の計画では使用されるEVが欧州製に限定されるが、これもコスト増を招く。現状で、このレベルの料金でのリースの対象となっているのは、仏ルノー傘下の低価格車ブランド「ダチア」が販売している小型EV「ダチア・スプリング」だけだが(月額120ユーロ)、同車も生産は中国で行われているために、政府の基準には合致しない。また、ルノーの小型EV「ゾエ」の中古車なら月額120-130ユーロでのリースが行われているものの、在庫が不十分だという欠点がある。ただし、秋にはルノーやシトロエンが低価格の小型EVの新型車を発売するため、何らかの解決策が見出される可能性がある。メーカー側では、一定以上の受注規模が保証されることを協力に応じる条件としている。 KSM News and Research -
2023.05.17
仏小学生の読書力、低下に歯止め
IEA(国際教育到達度評価学会)が5年おきに実施する国際読書力調査(PIRLS)の結果が16日に発表された。フランスは、低下傾向に歯止めをかけることができたが、依然として低い水準にとどまった。PIRLSは参加国57ヵ国で行われ、小学4年生修了時の生徒40万人が対象となった。ただし、新型コロナウイルス危機の影響で、所定のタイミングで実施できた国は37ヵ国にとどまった。フランスの得点は514点で、2016年の前回調査時の511からわずかに上昇。今世紀に入って以降で初めて上昇に転じたものの、2001年の525はもとより、2011年の水準(520)も下回った。また、37ヵ国中の順位は23位で、トップのシンガポール(587)との差は大きい。欧州連合(EU)加盟国の平均である527にも及ばなかった。フランスは、前回並みの得点を維持できた8ヵ国のうちに入り、後退した国が21ヵ国と最も多い(上昇が3ヵ国)中で、成果を上げることができた。新型コロナウイルス危機中も学校教育を継続する決定を下したことが奏功したと考えられる。他方、読書力の向上は専ら女子生徒(得点は前回比6ポイント上昇の521)に負っており、男子生徒は前回並みの507ポイントだった。女子の方が能力で勝っているのは世界的な傾向であり、その格差は平均で19ポイントに上っている。フランスでは、進んだ生徒と劣った生徒の間の格差も前回と同程度に大きく、全体の6%が「劣っている」、22%が「低い」、40%が「中間」、27%が「高い」、5%が「進んでいる」という分布だった。最低と最高の点数差は91ポイントで、これは2年分の学習に相当する。 KSM News and Research -
2023.05.17
インターネット決済詐欺、銀行各社が救済巡り合意
インターネット詐欺による決済被害の救済を容易にする合意がこのほど成立した。中銀と銀行、消費者団体が作るOSMP(決済手段安全性観察局)の勧告を銀行各行が受け入れた。インターネット決済では、欧州連合(EU)の指令「DSP2」に基づいて、「強い認証」が2022年までに導入された。スマホなどを利用した本人確認を経て決済が完了する仕組みが採用されたが、それ以降、銀行側が、「強い認証」を経た決済については詐欺と認めず、返金に応じないという事案が増えている。詐欺団の側では、いわゆるスプーフィング(表示電話番号の偽装)を行って、銀行の担当者を装って電話をかけて、決済の完了を促すという巧妙な手口の詐欺を展開しているが、この種の詐欺においては、形式的に本人が認証したことになるため、銀行側は詐欺と認めずに、返金を拒否することが多いという。OSMPは今回の勧告の中で、顧客からの通報を受けてから24時間以内に銀行が調査を行い、顧客自身による詐欺であるか、顧客側の重大な怠慢に由来することを証明できない限りは、即時に返金に応じるとの規則を設定した。 KSM News and Research -
2023.05.16
マクロン大統領、「中流階級」向けの減税を予告
マクロン大統領は5月15日、民放テレビ局TF1のインタビューに応じた。この中で、「中流階級」向けの20億ユーロの減税を予告した。大統領は、「子どもを育てるために一生懸命働いているのに、生活費の高騰や、賃金上昇が不十分で月末の支払いに窮している人々」のために減税を行うと予告。先に欧州委員会に提出した2027年までの中期財政計画においては20億ユーロの減税の余地が盛り込まれており、これをそうした「中流階級」向けの減税に充当するよう、政府に指示したと説明した。2027年の任期満了までに実施する方針を示したことになるが、具体的な日程や、また減税の方法などの詳細については触れなかった。年金改革を巡る軋轢でマクロン大統領への国民の支持は後退しており、大統領は挽回を期してこの減税予告をしたものと考えられる。マクロン政権による家計向けの減税措置はこれまでにも数が多く、住民税の廃止や公共放送受信料の廃止、「黄色蛍光ベスト」の抗議行動を受けて2019年に決めた所得税減税(40億ユーロ)などがあるが、国民の間でこれらの措置に関して政府に感謝する気配はない。報道によれば、新たな措置の内容は、法定最低賃金(SMIC)の1.5倍から2.5倍程度の給与所得者がターゲットになる。その一方で、マクロン大統領は再選を決めた選挙キャンペーンにおいて、相続税減税を行うと約束していたが、報道によれば、こちらは「中流階級」向け減税に押しのけられる形で、実現が見送られるという。 KSM News and Research -
2023.05.16
HHC、近く禁止か
HHC(ヘキサヒドロカンナビノール)と呼ばれる合成化合物が市販され、問題視されている。大麻の麻薬成分THC(テトラヒドロカンビノール)と似た薬物効果があり、普及が進むことが懸念されている。HHCを含む製品は、精油、グミ、電子たばこ型の吸引剤、乾燥花などの形で、昨年夏ごろから、合法CBD(カンナビジオール)製品の販売店の一部で売られるようになった。HHCの発明は1940年代に遡るが、出回るようになったのが最近であるため、製品の物性等の特定が遅れており、フランスでは法的に規制されないまま今日に至っている。麻薬効果が高いことから「合法ドラッグ」のように受け取られて人気が高まっており、一部のCBD販売店では、HHCが売上高の半分以上を占めているという。欧州では、2022年5月にデンマーク税関が押収した貨物中に発見されたのが最初で、米国、オランダ、スペインからの貨物に多いという。専門家によると、大麻系の麻薬物質の既存の規制の枠組み内で禁止は可能だが、物性の特定が十分になされておらず、既存規制のどのあたりに落とし込むのかが定まっていないだけであるのだという。欧州諸国では、オーストリア、フィランド、ポーランド、スイスが、新規物質としてHHCを禁止対象に指定。フランス当局は、禁止対象とするための鑑定作業を継続中と説明しており、対応が遅れたということはなく、6月にも鑑定結果が出揃う見通しとしている。ただ、新たな誘導体も続々と出現しており、それぞれについて、イタチごっごが続く可能性もある。 KSM News and Research -
2023.05.16
対仏投資誘致イベント「チューズ・フランス」、投資計画が発表に
マクロン大統領は15日、ベルサイユ宮殿で対仏投資誘致イベント「チューズ・フランス」を開催した。世界の大手企業の代表が集まった。大統領はこの機会を利用して、米ディズニー、ファイザー、デンマークのノボノルディスク(製薬)、ベルギーのソルベイ(化学)など大手企業のトップと会談。米テスラのマスクCEOも大統領府でマクロン大統領と会談した。この機会に、合計130億ユーロの投資計画が発表された。この金額は、昨年(106億ユーロ)と一昨年(36億ユーロ)を上回った。雇用効果は8000人相当という。具体的な投資案件には、発表済みの台湾のプロロジウムテクノロジーによる全固体電池バッテリーの製造工場整備(52億ユーロ)、中国のXTCと仏オラノ(核燃料)によるバッテリー電極材料の製造・リサイクル工場の整備(15億ユーロ)が含まれる。このほか、モゼル県内に太陽電池(セル及びパネル)工場を建設する欧州コンソーシアムHolosolisの投資計画(7億1000万ユーロ)、イタリア発のベンチャー企業Newcleoによる小型モジュール炉の開発・製造・設置のプロジェクト(30億ユーロ)、伊イヴェコのモビリティ関連投資(1億1500万ユーロ)、ポルトガルのPowerdotによるEV充電スタンド網整備計画(1億4000万ユーロ)、米ファイザー(製薬)による5億ユーロの追加投資計画、英グラクソスミスクラインによる4億ユーロの投資計画、イタリアのSapio(バイオテク)による2億ユーロの投資計画、フィンランドのノキア(通信機器)による研究開発投資計画、スウェーデンのイケア(家具販売)による新規出店・物流拠点整備計画などが発表された。 KSM News and Research -
2023.05.15
鉄道車輪を製造のバルデューンが経営難、中国親会社が支援打ち切り決める
鉄道車両の車輪・車軸等を製造する仏バルデューン(Valdunes)が経営難に陥っている。同社を保有する中国の馬鞍山鋼鉄(MA Steel)が支援を打ち切る方針を確認した。従業員らは抗議行動を開始した。バルデューンは、北仏ダンケルク近郊とバランシエンヌ近郊に工場を保有。前者で95人、後者で245人を雇用している。2014年に馬鞍山鋼鉄の傘下に入ったが、それ以来で業績は傾いている。仏国鉄SNCFからの受注も、かつては車輪が年間4万5000体に上っていたが、現在では3500まで後退しているという。馬鞍山鋼鉄は5日に資金の追加投入は行わないと通告。労組は工場前にピケを張るなどの抗議行動を開始した。11日にはレスキュール工業担当相が労組代表との会談に応じ、信頼できる買収者を探す支援を約束したが、労組側は懐疑的な見方を崩していない。地元の自治体連合のロバン議長(共産党)は、「馬鞍山鋼鉄は吸血鬼。ノウハウや生産装備を略奪するのが目的だった」と非難。同じく地元選出の下院議員で共産党の全国書記を務めるルーセル議員は、SNCFやRATP(パリ交通公団)やアルストムといった需要家が、イタリア、チェコ、スペインなどの競合企業からの調達を優先したことがバルデューンの苦境の背景にあるとし、国内生産の擁護を呼びかけた。 KSM News and Research -
2023.05.15
ウクライナのゼレンスキー大統領、伊独仏を歴訪
ウクライナのゼレンスキー大統領は5月13日から14日にかけてイタリア、ドイツ、フランスを歴訪した。ロシアがウクライナに侵攻して以後で、イタリアとドイツへの訪問は初めて、フランス訪問は2023年2月8日以来の2度目となった。13日のローマ訪問ではメローニ首相やマッタレッラ大統領と会談したほか、ローマ教皇フランシスコと会見した。メローニ首相はウクライナの勝利に賭けると述べ、必要な限り全面的な支援を行うと約束した。ゼレンスキー大統領は14日にはベルリンとアーヘンを訪問し、ショルツ首相やシュタインマイヤー大統領などと会談した。独政府はこの機会に、27億ユーロの新たなウクライナ支援計画を発表した。これには、30台の主力戦車「レオパルト1A5」、20台の装甲車、200機の監視用ドローン、4基のIRIS-T防空システム、多数の弾薬などが含まれ、ウクライナへの支援額で、ドイツは米国に次ぐ2位に浮上した。なお、ウクライナ政府は、米国の大統領選挙でトランプ前大統領が政権に復帰した場合に、ウクライナへの支援を縮小することを懸念しており、ゼレンスキー大統領はドイツの追加支援に感謝するとともに、ドイツが支援規模で1位になることを期待する旨を表明した。なお独ラインメタル(軍需・防衛大手)はウクライナで戦車の修理、弾薬の製造、防空の3部門における合弁会社の設立に着手している。ショルツ首相はウクライナが要請している戦闘機の供与などについては態度を明らかにしなかったが、停戦合意の可能性については、ロシア軍の無条件での即時撤退が前提条件となるとの立場を言明し、ロシア軍がウクライナ領内に残留したまま現状を凍結する形で停戦が成立することを懸念するウクライナ政府に寄り添う姿勢を明確にした。14日のパリ訪問では、マクロン大統領がゼレンスキー大統領を大統領府に迎えて会談した。フランスはAMX-10RCを含む装甲車などの提供を発表したが、それ以上に両大統領の協議は「戦後」のウクライナの安全保障構築などを巡る政治的なテーマが中心だった模様。マクロン大統領は当初から、外交による和平の必要性を考慮する必要性を指摘しており、ロシアへの対抗に前のめりになっているポーランドなど東欧諸国の強硬姿勢が和平のチャンスを潰すことを警戒している。 KSM News and Research -
2023.05.15
ボルヌ首相、労使代表と会談へ:雇用促進策を協議
ボルヌ首相は13日、訪問先の海外県ラレユニオン島で、雇用促進策の一環として、RSA(生活保障手当の一種)の受給者を対象にした制裁制度を導入する考えであることを明らかにした。雇用促進策では、ポール・アンプロワ(ハローワーク)を改組して新機関「フランス・トラバイユ」を設置し、関係各方面が一丸となって失業者の就労支援に取り組む体制を整えることが焦点となる。労使との協議を経て関連法案が今夏にも策定される予定。RSAは、就労努力に応じて支給額を調整することが可能な手当だが、ボルヌ首相は、本格的な就労を準備する目的で、週に15-20時間の就労機会を受給者に提供する制度の導入を予告しており、今回、同制度に伴い生じる義務を履行しない人を対象にした制裁措置を定める考えであることを確認した。首相はこれについて、就労を妨げる要因(託児手段の確保の困難等)への対応を整えた上で制裁措置を講じると約束した。首相は16日と17日の両日、雇用促進策を巡り労使代表と個別会談を行う。政府はこの会談で、年金改革を巡り鮮明になった対立関係を緩和することを狙うが、強硬派労組CGTのビネ書記長は、RSAの支給制限の導入を「対立ポイントの一つ」だと見定めており、事態の鎮静化の展望はまだ開けていない。 KSM News and Research -
2023.05.12
行政最高裁、温室効果ガス排出削減を巡り政府に改善を命令
行政最高裁(コンセイユデタ)は10日、温室効果ガス排出量削減における政府の努力が不十分とする判断を示した。2023年末と、2024年6月末日を期日として、目標に沿った排出量削減ペースの実現に向けて進んでいることの証拠を示すよう、政府に命じた。この決定は、北仏グランドサント市が2019年に起こした行政訴訟に端を発している。海浜に位置する同市は、温室効果ガス削減に向けて政府が適切な対処をしていないと主張し、国を相手取って提訴。この案件で国を相手取った行政訴訟がなされるのはこれが初めてで、複数の環境保護団体も提訴に加わった。行政最高裁は2020年11月に原告の主張を認める判決を下し、次いで2021年7月には、目標を達成するための努力(2030年に1990年比で40%削減など)を国に対して命じる決定を下した。原告側は、国が命令に反してしかるべき対処をしていないと主張して再度訴え、行政最高裁は今回の判決で、国に対して、期限を定めて挙証をするよう命令した。原告側は、国が違反状態を放置していることを理由に、命令が実行されるまで6ヵ月ごとに5000万ユーロの制裁金を課すよう求めていたが、裁判所はこの請求には従わなかった。排気ガス規制の目標未達については、行政最高裁はこれまでに政府の非を認めて、2回に渡り合計1000万ユーロの制裁金を課している。温室効果ガスについては、基準超過を容易に確認できる排気ガスと異なり、一定期間後の目標の達成に向けた進捗状況を判断するのは難しいが、原告側は、裁判所が期日を示して挙証を国に対して求めたことを、目標達成に向けて国に強く働きかけるものだとして歓迎している。 KSM News and Research -
2023.05.12
マクロン大統領、国内工業部門の振興策を公表:グリーン産業の国内生産を支援
マクロン大統領は11日、大統領府に産業界代表や議員らを集めて会合を開き、国内工業部門の振興策を公表した。グリーン経済振興の流れの中で、環境配慮の製品でも対外依存に陥らないようにすることを目的に、国内生産を奨励する枠組みを整えると約束した。米国のインフレ抑制法(IRA)や中国の攻勢を明確に意識した対策を打ち出した。大統領はまず、グリーン産業部門向けの税額控除(タックスクレジット)を導入すると予告。生産投資又は無体資産(特許、ライセンス等)への投資に係り20-45%相当の税額控除を適用するという趣旨で、既存の研究税額控除(CIR)に上乗せする形で適用する。大統領は、2030年までの期間に200億ユーロの投資実現の呼び水になると説明した。この措置は、16日に閣議に提出されるグリーン産業法案に盛り込まれる。適用対象の詳細については明らかにされていない。大統領はまた、国内で必要な人材を育成する必要性を強調し、1万5000人の育成に「フランス2030」(公共投資プラン)の枠内で着手すると予告。7億ユーロを投じて、人材不足が鮮明な職種について、総合的な対策を進めると説明した。大統領はさらに、EV購入奨励金について、支給に当たり製造時の炭素負荷に関する条件を追加する方針を示した。名指しはしなかったが、中国製EVを支給対象から外すことを目的にした措置だと考えられる。新たな制度は2024年年頭にも施行される見通しだが、大統領は技術的な詳細は明らかにしなかった。国内生産の振興については、重点地区を選定して支援する現行の取り組みを強化する方針を示した。今年には1億ユーロがこのために投入される。大統領はこれに絡んで、環境規制を当面はこれ以上追加せず、投資家が安定した見通しを得られるようにすると約束したが、これについては、環境派から批判の声が上がっている。 KSM News and Research -
2023.05.12
欧州議会、AI規制規則を制定へ
欧州議会の委員会審議において、AI(人工知能)規制に向けた規制案が賛成多数で採択された。規制案は、欧州委が2021年に提案したものだが、2000件以上の修正案の対象となった。規制案は、AIをリスクのレベル別に分類した上で規制するという内容。医療診断から自動運転、履歴書の選別、与信審査、証拠評価に到るまで、AIは様々な分野で活用され、ユーザーの基本的人権に関わる重大な問題を引き起こすリスクがあることから、規制案は、活発な議論を引き起こした。審議では、ChatGPTのような生成AIの飛躍的進歩を受け、特に生成AIに関する条項が付け加えられた。それらの条項によると、生成AIは、市場に投入される前に特有のルールに従わねばならないとされている。また、違法コンテンツ対策や、著作権で保護されたデータがアルゴリズム開発に用いられた場合にそれを公表することも盛り込まれた。これにより、著作権者は著作権料の支払いを求めることが可能となるとされる。加えて、採択された規制案では「高リスク」と見なされるAIの対象が拡大され、健康、セキュリティ、基本的人権及び環境への影響が懸念されるAIに加え、有権者の投票行動に影響を与え得るAI、ユーザーが4500万人を超えるSNSのレコメンド機能に用いられるAIも含められた。これらのAIは、より厳しい透明性及びガバナンス義務の下に置かれる。一方、禁止される行為としては、議論となった市民評価や大衆監視に加え、仕事場や教育現場及び移民管理の場における感情認識の使用、公共の場における顔認識などバイオメトリクスによる遠隔人物特定も含まれているが、後者に関しては、重大犯罪の場合には、裁判所の許可の下、事後でなら利用可能とされている。また、警察によるAIを利用した犯罪予測や、顔認識技術向けデータベース構築のためのインターネット上での画像の大量収集も禁止されている。 KSM News and Research -
2023.05.11
Vianova、パリのバス交通改善に向けてRATPと提携
5月11日付のレゼコー紙は、仏スタートアップ企業のVianovaについて報道した。同社は、自治体や企業、公共機関向けにモビリティ関連のデータを収集・分析し、交通の改善に役立てるサービスを提供している。同社はRATP(パリ交通公団)と提携し、試験的にパリ市内・郊外でのバス交通の改善に向けた作業を行っている。RATPの運営するバスの平均速度は低下傾向にあり、これが利用者数の減少につながる恐れがある。Vianovaはパリ市内を走る路線のバスにカメラを搭載し、バスレーンや、停留所、その近辺の歩道を撮影。その映像を分析して、バスの余計な減速が引き起こされる理由を調べたところ、自転車や、違法にバスレーンを利用する大型車などが障害となっていることが判明したという。RATPは、こうしたデータを元に、パリ市当局に対してサービス改善につながるような整備を要請することになる。なおRATPは、ベンチャーキャピタルRATP Capital Innovationを通じてVianovaに出資している。Vianovaは2019年の創業で、2022年の年商は100万ユーロ超。2025年に黒字達成を目指している。2022年末には600万ユーロの資金調達を行った。 KSM News and Research -
2023.05.11
仏政府、重要金属確保の投資基金を設立へ
仏政府はこのほど、リチウム、ニッケル、コバルトなどEX(エネルギー・トランスフォーメーション)に不可欠な重要金属の確保を目的とする投資基金の設立に向けて、仏InfraVia(投資会社)のプロジェクトを選定した。官民協力で世界の資源開発に投資する計画。InfraViaは、インフラ及びテクノロジーを対象とする投資会社で、100億ユーロ相当の資産を運用している。政府は入札を経て同社のプロジェクトを選定した。計画によると、同社が運営するファンドが設立され、国がこれに5億ユーロを拠出。需要家となる仏及び欧州の民間企業(自動車、航空宇宙、防衛等)と機関投資家が手始めに5億ユーロを拠出し、年内に10億ユーロの規模とする。2年後には合計で20億ユーロを集める計画。ファンドは、仏及び欧州の企業による資源確保のプロジェクト(鉱山開発、リサイクル、精製)に少数出資を行い、オフテイク契約を結んで資源を確保し、出資者に分配する。欧州外のラテンアメリカ、東南アジア、オセアニア、アフリカなどのプロジェクトを主な投資対象とする。環境・社会責任上の基準を設定して選別を図る方針という。 KSM News and Research -
2023.05.11
仏貿易収支、3月に改善:赤字幅は84億ユーロまで圧縮
9日発表の税関統計によると、3月の貿易収支は84億ユーロの赤字となった。赤字額は、1年半余りの間で最低の水準に下がった。前月の赤字額は99億ユーロだが、この数字も、速報時の110億ユーロから大幅に下方修正された。1-3月期の貿易赤字は298億ユーロとなり、前の期と比べて119億ユーロと大幅な縮小が実現した。輸出額は1512億ユーロで、前の期から1.6%減少したが、輸入額は1809億ユーロで、前の期比7.4%減と、輸出を上回る勢いで後退し、収支の改善に貢献した。輸入の減少には、やはりエネルギー価格の後退が大きく影響している。原油価格は同じ時期に13%の低下を記録、ガス価格も低下しており、輸入量も減った。また、原子炉の稼働率が段階的に上昇し、電力輸入も減ったことから、エネルギー製品の貿易赤字は1-3月期に前の期比で103億ユーロの縮小を記録。これは、貿易赤字全体の縮小幅とほぼ一致する額である。貿易赤字は2022年通年では1642億ユーロ(前年比769億ユーロ増)と、過去最大規模に達していたが、3月までの12ヵ月間の貿易赤字は1605億ユーロまで縮小した。 KSM News and Research -
2023.05.10
保険業界、「経済グリーン化への資金供給」プランに難色示す
政府が準備中の経済グリーン化法案について、生命保険の業界団体が難色を示している。強制的な措置の導入に反対している。反対意見を表明しているのは、保険業界団体のFFAと共済保険連合会の2団体。政府原案では、中小企業・中堅企業の生産事業のグリーン化に資金を供給する目的で、生保・積立年金の資金の一部を振り向けることが計画されているが、業界側はその内容に難色を示している。変額生保の資金の一部をPEファンドに組み入れ、投資対象ファンドのプロフィールを設定してグリーン化への資金供給を支援するとのスキームについて、業界団体側は、貯蓄者の自由を奪うことになると反発。特に、流動性の低いファンドへの投資について、解約の制限を設けるという案について、解約制限はいわば最終兵器であり、軽々しく口にするのは危険だとする批判の声が上がっている。また、業界団体側では、投資対象の選定に関する圧力が強まると、変額生保商品の標準化を招き、独自商品を開発する競争が薄れるとも問題視している。 KSM News and Research -
2023.05.10
国語辞典の新語、「餅」もエントリー
国語辞典が更新の時期を迎える。ルフィガロ紙は9日付で、代表的な国語辞典「プチ・ラルース」の最新版に収録された新語について報じた。国語辞典は毎年、9月に始まる新学年に向けて最新版を刊行するのが通例となっている。「2024年版」として刊行される「プチ・ラルース」の最新版には150の新語が収録される。その中には、やはり世相を反映した言葉が多く、グリーンウォッシングなど英語由来の言葉や、「インスタ映えする」という意味の形容詞「instagrammable」、自転車へのシフトを唱道する国際的な運動を意味する「Velorution」(自転車を意味する「ベロ」と革命「レボリューション」の合成語)、エコ不安症(Ecoanxiete)などがエントリーした。食べ物関係では日本の「mochi」が収録されたが、その定義を見ると、いわゆる「餅」とは少々異なる。定義は「もち米のペーストを材料とする球形の小さなお菓子で、香りがついていたり、小豆のペーストが中に入っていることが多い。西洋の料理と融合して、アイスクリームとなることもある」とあり、要は我々が「大福(餅)」と呼ぶものを、「mochi」と呼んでいるわけである。この種のアイスクリームで先駆的な製品の商品名も「雪見だいふく」であるから、それをモチと呼ぶのはやはりフランス側の事情による。異文化受容において意味や概念にズレが生じるのはいつものことで、フランスなら柔道着のことを「キモノ」と称して憚らないなど例は多いが、餅の場合は、磯辺焼きのような食べ方がほとんど紹介されてこなかったことに原因があるだろう。フランスを真の意味で餅化するにはまだまだ献身的な努力が必要ではあるまいか。 KSM News and Research -
2023.05.10
政府、脱税対策プランを公表:富裕層と大手企業をターゲットに
政府は9日に脱税対策プランを公表した。アタル予算担当相がルモンド紙とのインタビューなどを通じてその内容を説明した。対策プランは、富裕層と大手企業を主なターゲットに据えている。時価総額トップ100の上場企業については2年ごとに税務調査を実施、富裕者については、税務調査の実施件数を2027年までに25%増やすという。タックスヘイブンなどを利用した組織的な脱税の摘発を強化する方針も盛り込み、具体的には、100人程度の「精鋭税務官」のチームを編成し、外国における情報活動を含めた調査権を付与するプランを提示した。税務官は全体で2027年までに1500人の増員がなされる。また、脱税で有罪判決を受けた人に対する罰則も強化し、減税や税額控除を受ける権利や、投票権など公民権の一時停止、さらに、罰金刑と公益奉仕命令を組み合わせた処罰を可能にすることなどを提案する。これらの措置は、行政最高裁(コンセイユデタ)の法案事前審査の対象となる。アタル予算担当相はその一方で、小口の納税者への圧力を弱める方針を示唆。税務調査によらずに解決を図り、初回の誤りについては課徴金を減免すること、また、当局側の誤りである場合に、納税者に当局が罰金を支払う形にすることなどを提案した。商店主や零細企業経営者などをはじめとする小口納税者に配慮する姿勢を示したのは、極右などへの支持になびきやすい層をつなぎとめるのが目的であるとも考えられる。 KSM News and Research -
2023.05.09
政府、新たな自転車振興プランを公表
政府は5日、新たな自転車振興プランを公表した。2027年までに20億ユーロを国の予算から支出すると予告した。自転車の利用振興では、2018年に第1次プランが発表されているが、これは、7年間で3億5000万ユーロを支出するという内容だった。新たなプランはそれと比べて極めて大きな規模となる。新たなプランは、自転車専用レーンの整備促進、自転車購入支援金の支給、そして製造を含めた自転車の国内産業の育成の3つを柱とする。国が支出する金額は20億ユーロだが、自治体の支出分である40億ユーロを加えて総額で60億ユーロの支出を目指す。第1次プランの下でもかなりの成果があり、モビリティに占める自転車のシェアは、新型コロナウイルス危機を経て大きく増加し、2021年から2022年にかけて8%の増加を記録した。国内の自転車専用レーンは、2017年以来で1万7000km増加し、現在は5万7000kmに上っているが、新プランの下では全長8万kmまで拡張することが目標となる。ただし、既存の専用レーンは、歩道に白線を引いただけのものなども多く、拡張だけでなく改修等の課題も多い。 KSM News and Research -
2023.05.09
海運大手CMA CGM、ボロレの物流事業買収を決定
仏海運大手CMA CGMは8日、仏ボロレ・グループから物流事業「ボロレ・ロジスティクス」を買収する合意を結んだ。企業価値を50億ユーロとして買収する。2024年初頭の買収完了を見込む。CMA CGMは4月18日に、この買収に向けた独占交渉を開始していた。CMA CGMはコンテナ海運を主力事業とするが、新型コロナウイルス危機に伴う用船レートの急上昇を受けて、2021年に180億ドル、2022年にも250億ドルという記録的な利益を達成しており、その一部を再投資して事業を拡大することを決めた。ロジスティクス業を強化し、輸送のすべてのバリューチェーンを自らカバーできる体制を整える。ボロレ・ロジスティクスは、従業員数が1万4000人。世界に350ヵ所の事務所を展開し、90万平方メートルの倉庫を保有する。2022年には、前年比36%増の売上高71億ユーロ(うち26億ユーロがアフリカ大陸)に対して、4億3700万ユーロの営業利益(71%増)を達成した。CMA CGMの物流部門は年商が150億ユーロ(グループ全体の売上高は745億ユーロ)に上るが、今回の買収を含めて、売上高は240億ユーロ近くと、物流部門でも世界大手に入る。ボロレはこの売却により、メディア大手ビベンディを最大資産とするグループに変貌する。売却で得た資金の使いどころが注目される。 KSM News and Research -
2023.05.09
SHEIN、パリにポップアップストアを開設
中国のアパレルブランド「SHEIN(シーイン)」が5日より8日まで、パリ4区にポップアップストアを開いた。10代から20代後半までの女性を中心に多数の来店があり、一時は50メートルを超える行列ができる盛況だった。SHEINはネット専業のアパレルブランドで、2022年の売上高は300億ユーロ。毎日8000品目の新製品を投入するというサイクルの速さと大量生産による廉価の実現を売り物とするいわゆるファストファッションの代表格として人気を博している。フランスでは、昨年9月にパリで初めてポップアップストアを開設、次いでモンペリエとリヨンで開設しており、今回は再びパリに戻って開設した。ファストファッションには、炭素負荷が大きいとする環境上の批判があるが、SHEINの場合は特に、それに加えて新疆ウイグル自治区における強制労働問題が批判の対象となっている。今回の開設においてもそうした批判の声は根強く聞かれたが、人気は衰えることはなかった。SHEINフランスは一連の批判について、散発的な事案があったのは確かだが、対策には万全を尽くしているとした上で、安さの秘密は、実店舗を持たず、オンデマンドの生産体制により在庫をなくせるビジネスモデルにあり、搾取により安値を実現しているというイメージは正しくないと反論している。 KSM News and Research -
2023.05.05
大統領支持率は5月も低迷、再選後で最低
レゼコー紙が毎月発表する世論調査(調査機関エラブ実施)によると、マクロン大統領の支持率は5月に、再選後で最低に落ち込んだ4月と同じ25%にとどまった。支持率は3月と比べて7ポイント低下しており、「大統領を信頼しない」と答えた人も70%に上った。支持率低迷が長期化することを避けるため、大統領は、地方遊説などで国民との接触を増やしているが、その効果はこの調査には現れていない。国民の多くが反対する年金改革法を無理やり成立させたことへの不満は大きく、年金改革反対派の左派支持者の間では81%が、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏の支持者に限ると実に91%が、「大統領を信頼しない」と回答した。大統領の支持層でも後退が目立ち、年金受給者における支持率は、4月に前月比で18ポイント低下し、5月にも27%にとどまっている。一方、2022年の大統領選挙決選投票でマクロン大統領に投票した有権者では、前月を大きく上回る54%が支持を表明したが、それでも「大統領は人の意見に耳を貸さない」と答えた人が多かった。また、マクロン大統領への支持が根強い管理職以上の社会階層でも、大統領の支持率は3ヵ月連続で合計18ポイント低下し、28%にまで落ち込んだ。ボルヌ首相の支持率も大統領と同じく低迷しており、4月は前月並みの22%にとどまった。年金改革を巡る混乱の収拾を図って「100日間で再スタートを切る」との政府の取り組みも、大統領の遊説作戦も、国民の不信感を払拭するには至っておらず、長期化する恐れがある。ただし今のところ、大統領の支持率は2018年の「黄色蛍光ベスト」抗議運動中に記録された23%よりは若干高めを維持している。 KSM News and Research -
2023.05.05
憲法評議会、年金改革反対の国民投票請求を却下
憲法評議会は3日、年金改革反対派による国民投票請求を退ける決定を下した。決定は予想されてはいたが、野党勢力や労組は決定に遺憾の念を表明した。国民投票請求制度はRIPと呼ばれ、サルコジ右派政権下で2010年代前半に導入された。今回、年金改革に反対する左派勢力と中道野党勢力(院内会派LIOT)が揃って議員立法法案を提出し、これを国民投票にかけるよう請求した。しかし、憲法評議会は法案が規定外の内容だとの理由を挙げて、請求を退けた。具体的には、「定年年齢は62才を超えてはならない」とする第1条について、定年年齢の64才への引き上げを決めた年金改革法が公示される以前に提出された法案につき、不適格な請求であると認定。譲渡益等に係るCSG(社会保障会計の財源となる目的税)の税率引き上げを盛り込んだ第2条についても、税率の調整という措置は、RIP実施の対象として適格の「社会的措置」には含まれないと認定した。RIPは実現までのハードルが高く、これまで国民投票の実施にまで至った案件はない。今回の憲法評議会の判断については、RIPが無益であることを改めて証明するものだとする批判の声が、左派勢力を中心に出されている。労組も失望を表明。年金改革関連では、LIOTが提出した改革廃止法案の下院審議が6月8日に行われることになっており、労組は揃って6月6日に14回目の抗議行動を行って圧力をかけることを決めている。 KSM News and Research -
2023.05.05
マクロン大統領、職業高校の改革案を公表
マクロン大統領は4日、職業高校の改革案を公表した。9月の新学年開始より段階的に施行する。職業高校の制度改革は、しばらく前からマクロン大統領が特に前面に打ち出している取り組みだった。大統領は、年金改革で悪化した国民との関係を改善する足場の一つとする考えとみられる。立法措置によらずに実施が可能であるため、過半数を持たず、年金改革を巡る混乱を経て国会運営が一段と厳しくなる中で、改革継続の姿勢をアピールできるという効果もある。職業高校の生徒数は62万1000人を数えるが、普通科高校に比べて低く見られがちであるのに加えて、企業と国民経済の必要に密接した技能者を育成することに失敗しているという批判の声も根強くある。他方、職業高校の生徒に奨学生が占める割合は4割程度に上っており、これは、生徒が低所得層に偏っていることを示唆している。管理職の子どもが占める割合も3%と低い(普通科高校などでは26%)。政府はこうした状況に配慮し、改革の目玉として、教育の一環で企業において行われる研修に、国が給金を支払う(1週間に50ユーロ程度となる模様)ことを提案。研修期間も、現在の22週間(3年間の就学期間の合計)を、50%程度増やすことが計画されている(1月より実施)。さらに、企業や経済界の人材需要を反映する形で、地域ごとに職業高校の専門課程の見直しを進める方針も示した。マクロン大統領はまた、生徒への支援などの新たなミッションを教員に託す任意制度の導入を予告。これに応じる教員には年間で7500ユーロの増給(現金給与総額ベース)を認めると約束した。年間10億ユーロの費用増に相当するという。現場の教員からは、研修強化で教育の主導権を奪われることへの反発や、見直しにより職が失われることへの不安の声などが上がっている。 KSM News and Research -
2023.05.04
SNCFのローコスト高速鉄道サービス「Ouigo」、誕生から10年
仏鉄道SNCFのローコスト高速鉄道サービス「Ouigo」が、2013年の誕生から10年を迎えた。航空部門などで始まったローコストサービス人気を背景に成長し、これまでに運んだ旅客数は1億1000万人、2020年以来では6000万人に達している。乗車率は平日で80%、週末では90%と高い。パリ郊外のマルヌラバレと仏南部のマルセイユ、モンペリエをつなぐ路線からスタートし、路線数は現在約60程度まで増加している。「Ouigo」のチケット価格は、最低で10ユーロ。販売数の半分程度が25ユーロ未満、50ユーロを超えるのは15%のみと、通常の高速鉄道TGVに比べてかなり割安に設定されている。その代わり、▽1等車や食堂車がない、▽基本料金に含まれるのは小型の荷物持ち込みのみで、大型の荷物持ち込みはオプション、▽コンセント付きの席の選択や、チケットの変更などもオプション、といった点が通常のTGVとは異なる。価格を抑えられる理由としては、▽TGVに比べてスペースの利用効率を上げ、座席数を増やしている、▽保守作業を夜間に行う、▽製造から約15年程度を経た車両を用いる、▽TGVに比べて車両の稼働率が高い(1本あたりの年間走行距離は70万キロで、TGVの2倍に達する)といった点が挙げられる。SNCFによると、Ouigo事業のEBITDAは黒字を計上し、新たな投資が可能なだけの利益を確保できているという。Ouigoの年間旅客数は2022年に2400万人。SNCFは、これを2025年に5000万人に引き上げることを目指す。これに向けて、編成数を現在の38本から2027年に50本に引き上げる。また、自転車の持ち込みを可能にするなど新たなオプションの導入も検討中。 KSM News and Research -
2023.05.04
欧州委員会、砲弾生産能力強化計画を提示
ウクライナのゼレンスキー大統領らが近く反転攻勢に出ることを予告した中で、欧州委員会は5月3日、欧州連合(EU)の砲弾生産能力強化支援計画を提示した。EUは3月末に、100万発以上の155mm砲弾をウクライナに提供することを決定し、加盟国の在庫からの供給を進めているが、同時に域内で砲弾を生産して在庫を再構築する必要がある。ブルトン欧州委員(域内市場・産業政策担当)は、12ヵ月以内にEUの年間生産能力を100万発にまで増強することを目標として、EU予算から5億ユーロを拠出することを提案した。このうち2億6000万ユーロは欧州防衛基金から拠出し、2億4000万ユーロは欧州委員会が2022年7月に提案したEDIRPA(共同調達を通じた欧州防衛産業強化法)の基金から捻出する方針。さらに加盟国にも結束基金や復興基金などからの拠出を求め、総額で10億ユーロを投じることを見込んでいる。EUでは11ヵ国の15社前後の企業が砲弾を生産しており、欧州委員会はこれらの企業の生産能力増強を支援することで、ウクライナへの供給で低下する在庫を復元することを計画。各々の増産プロジェクトの資金の40%をEUが負担し、さらに複数国の企業が協働する場合には10%を上乗せし、また、ウクライナ向けの供給を優先する場合にも10%を追加する。さらに、危険物質を扱う産業施設に関する環境関連規制(セベソ指令など)の適用などに関しても、2025年まで特例として免除するなど、規制緩和を通じても域内の砲弾生産を促進する方針。欧州委員会の提案は欧州議会とEU理事会による承認を必要としており、ブルトン委員は早期の承認を呼びかけた。 KSM News and Research -
2023.05.04
仏保健相、使い捨て電子タバコ禁止を望む
フランソワ・ブロン保健相は、使い捨て電子タバコ禁止に積極的という立場を明らかにした。フランスでは、使い捨て電子タバコは2021年に市場投入されたが、若者の一部に喫煙を促すリスクが指摘されている。使い捨て電子タバコは、ポップな色と甘い匂いにより、特に若い層に人気がある上、500回の「喫煙」が可能であり、価格も8-12ユーロと手頃である。また、約20社ほどの使い捨てタバコ・メーカーは、使い捨てタバコの人気を高めるため、SNSとインフルエンサーを利用している。使い捨てタバコの禁止を働きかけている団体「アリアンス・コントル・タバ」では、このような戦略により、若者は使い捨てタバコにポジティブかつ無害というイメージを持っていると指摘している。「アリアンス・コントル・タバ」が2022年に発表した報告書によると、若者の13%が使い捨て電子タバコを消費したと回答しているが、使い捨てタバコには最大で20mg/mlのニコチンが含まれている。使い捨てタバコはまた、環境への悪影響も大きい。使い捨てタバコのプラスチック・チューブは取り外しのできないバッテリーを備えており、その廃棄物は土壌汚染を引き起こす。これらの理由から使い捨てタバコは、独、ベルギー、アイルランドなどでは既に禁止されようとしている。 KSM News and Research -
2023.05.03
仏領ポリネシアの議会選、独立派が勝利
4月30日に投開票が行われた仏領ポリネシアの議会選で、テマル氏が率いる独立支持政党「Tavini」が得票率44.3%で勝利を納めた。57席中38席を確保して多数派となった。自治政府のフリッチ現大統領が率いる「TAPURA」は得票率38.5%、議席16席を確保するにとどまった。これにより「Tavini」のナンバー2であるジェロス氏が自治議会の議長に、左派連合NUPESのブロザーソン氏が自治政府大統領に就任する。フリッチ大統領には最近、新型コロナ危機への対応や、社会保障の財源とするための新課税の導入などで、批判が集中していた。仏領ポリネシアは、ジニ係数が0.4と米国並みに高く、所得格差が大きい。また住民の25%が貧困線以下で生活しているにもかかわらず、物価はフランス本土よりも30%程度高い。失業保険制度や生活保護もないに等しく、自治政府への不満が高まっているのを背景に、独立派は生活水準の改善や格差是正を選挙キャンペーンの中核に据えた。今回の選挙の争点は、独立是非よりもむしろ経済・社会政策にあり、独立派も「早急な独立実現」は掲げず、独立に関しては10-15年後を目指す意向を示唆していた。とはいえフランス政府は、インド・太平洋における自国の軍事・経済戦略の足場であるポリネシアで独立派が勝利したことで、これら戦略の修正を余儀なくされることになろう。5月3日付けのルモンド紙は、独立派と中国の関係を指摘した。ルモンド紙によると、今回の議員選において仏政府は、中国の介入を確認できなかったが、中国はインド太平洋地域での独立運動を密かに支援することで、同地域での影響力拡大を図っている。 KSM News and Research -
2023.05.03
仏バイオテクMedinCellの皮下注射型統合失調症治療薬、FDAの認証を獲得
イスラエルの製薬大手テバファーマスーティカルと仏バイオテク企業MedinCell(本社はモンペリエ所在)が共同開発した統合失調症治療薬「UZEDY」が米食品医薬品局(FDA)の認証を獲得し、米国での販売が可能になった。同薬は、皮下注射型の統合失調症治療薬で、「BEPO」と呼ばれるMedinCellの技術を用いて、コーポリマーを組み合わせることで、皮下組織にデポーを形成し、持続放出を行うことで、薬効が数週間から数ヵ月にわたり長期的に持続するのが特徴。従来型の統合失調症治療薬は経口薬が普通で、患者が服用を怠るリスクなどの欠点があり、「UZEDY」はこうした難点を解決する利点がある。なお、効果が持続する注射型の抗精神病薬もすでに存在し、米国では年商40億ドルの市場を形成しており、毎年2桁の成長を記録している。米国で統合失調症の治療を受けている患者は160万人に上り、その13%程度が注射型の治療薬を使用していて、この分野ではヤンセン(ジョンソン・エンド・ジョンソングループ傘下)がリーダー格。ただし、MedinCellのドゥアCEOによると、既存技術は筋肉内注射であるため痛みを伴う上に、効果発現までに数週間を要するのに対して、同社の技術は皮下注射で痛みが軽く、効果が即座に発現し、また、薬液充填済み注射器を使用できるので、取り扱いも簡単だという長所があるという。MedinCellの技術が商業化されるのはこれが初めてで、同社の株価はパリ市場で12%以上急騰した。「UZEDY」の販売はテバが担当するが、ブロックバスターになる可能性があり、米国で10億ドルの売上が見込まれるという。MedinCellは1億500万ドルの商業マイルストーン支払いと販売ロイヤリティを受け取る。ドゥアCEO は、潜在的なブロックバスターに関するFDAの認証をフランスのバイオテク企業が確保したのは過去20年間で初めてだと強調している。 KSM News and Research -
2023.05.03
IBM、AIにより置き換え可能な職種での新規採用を凍結へ
米IBMのアービンド・クリシュナCEOは、米通信社ブルームバーグに対し、人工知能(AI)により置き換え可能な職種、特にバックオフィス業務での新規採用を凍結、あるいは減速させると明らかにした。CEOによると、同社では、顧客との接触のない職種では、雇用の30%が、今後5年間にAIにより置き換え可能となる見込み。置き換え可能となる雇用数は約7800人とされる。例えば、履歴書のチェックや配置転換・異動に関する手続は100%自動化が可能とされる。しかし、CEOは、人事評価や生産性評価は、今後10年間は自動化されることはないと言明した。人間を機械によって置き換えるという考えは新しいものではないが、ChatGPTのような生成AIの登場により、事務職の置き換えが加速した。米銀行ゴールドマン・サックスでは、生成AIにより、世界で約3億人の雇用に影響が出ると見ている。 KSM News and Research -
2023.05.02
フランス:インフレが4月に加速、1-3月期のGDP成長率は0.2%に
仏国立統計経済研究所(INSEE)は4月28日に2023年第1四半期(1-3月)の国内総生産(GDP)が前の期と比べて0.2%上昇したと発表した。なお、2022年第4四半期(10-12月)のGDPは前の期比でゼロ成長にとどまった。2月の速報では0.1%の成長と発表されていたが、下方修正された。2022年通年の経済成長率は2.6%で修正はない。第1四半期には内需(在庫変動除く)はGDP成長率に0.1ポイントのマイナス貢献を記録した(第4四半期には0.4ポイントのマイナス貢献)。家計消費支出は前の期並(第4四半期には1.0%減)、固定資本形成は前の期比で0.2%減(第4四半期には前の期並)だった。貿易収支はGDPに0.6ポイントのプラス貢献をもたらした(第4四半期には0.2ポイントのプラス貢献)。前の期比で輸入は0.6%減(第4四半期には0.1%増)、輸出は1.1%増(第4四半期には0.9%増)を記録した。在庫変動はGDPに0.3ポイントのマイナス貢献となった(第4四半期には0.2ポイントのプラス貢献)。またINSEEは28日、4月の消費者物価上昇率(前年同月比)を5.9%と発表した。3月の5.7%を上回り、インフレの加速が見られた。食料品価格の上昇率は14.9%と相変わらず高いが、3月の15.9%を下回った。タバコは9.4%(3月は7.8%)、エネルギーは7.0%(3月は4.9)、サービスは3.2%(3月は2.9%)の上昇を記録し、インフレの加速を招いた。工業製品価格は4.7%上昇した(3月は4.8%)。 KSM News and Research -
2023.05.02
AIを使ったコンテンツファームが相次いで出現
米スタートアップ企業ニューズガード(フェイクニュース対策開発)は、5月1日に発表した報告書において、人工知能(AI)を使った49のコンテンツファームを7つの言語(英語、中国語、仏語、ポルトガル語、タガログ語、タイ語、チェコ語)において特定したと発表した。これらのコンテンツファームでは、コンテンツのすべてあるいは大半が、人間により生成されたニュースに似せて、AIによって生成されている。数百の記事が多くのテーマの下に生成されているが、フェイクニュースが紛れ込むことがしばしばあるという。またこれらコンテンツファームの記事は内容が薄く、質が悪いもので、広告収入を得ることを主な目的としていると指摘。ニューズガードは、AIにより記事が生成されているかチェックするために、AIに特徴的な表現や言い回しが存在するかどうかを調べた。それによると、AIにより生成された記事の多くは、他のニュースソースの記事を要約したり、書き換えただけにすぎない。報告書では、その例として、米ニュース専門局CNNのコンテンツだけを利用しているコンテンツファームを挙げている。これらのコンテンツファームは、オーナーの名を明らかにしていない。ニューズガードは、アドレスを明らかにしていた29のコンテンツファームに取材を試みたが、AI利用を認めたのは2つに過ぎず、残りは回答しなかった。ニューズガードでは、AIが作成したニュースのすべてがフェイクニュースではないが、ユーザーは警戒すべきと指摘している。 KSM News and Research -
2023.05.02
メーデーに年金改革反対デモ:参加者数は労組発表で230万人、警察発表で78万人
メーデー(5月1日)の祝日に、フランスでは年金改革に反対する労組の統一デモが実施された。年金改革への反対デモとしては13回目、年金改革法が4月15日に公示されて以来では初めての反対デモとなった。労組CGTは首都パリで55万人、全国では230万人が参加する歴史的なデモになったと主張し、労組CFDTも100万人以上が参加したと発表した。警察(内務省)の集計では参加者数は全国で78万2000人、首都では11万2000人で、相変わらず主催者側発表と警察側発表の乖離は大きい。複数のメディアが集計を依頼した調査会社Occurrenceによると、首都でのデモ参加者数は9万4000人だったという。動員数が大きかったことは確かだが、労組が期待していたような圧倒的な規模には達しなかった。労組は2日、14回目の反対デモを実施するかどうかを決める。政府は、年金改革法成立後の社会労働政策に向けた協議を労組に呼びかけており、それに対する諸労組の対応には相違が見られ始めた。強硬派のCGTは、政府が年金改革を撤回しない限り、話し合いには一切応じない姿勢を堅持しているが、FOやCFDTは改革に反対する立場を基本的に維持しつつも、首相との対話には応じる可能性を示唆しており、労組の統一行動が今後も続くかどうかは不確か。なお、1日のデモは全体として平和裏に実施されたが、パリ、リヨン、グルノーブル、ナントなどの都市では暴力行動も発生し、ダルマナン内相によると、108人の警察官・憲兵が負傷した。特に警察官1人が火炎瓶の投擲で重度の火傷を負った。内相は警察官への攻撃を目的してデモに参加する過激分子の行動を改めて批判した。なお、当局は今回のデモを監視する手段として初めてドローンを利用した。ドローンの利用は人権と自由の侵害にあたるとして複数の団体が利用の差止めを請求する提訴を行っていたが、ルーアンの行政裁判所が使用の対象地区と時間帯を制限する決定を下した一方で、リヨン、ボルドー、パリの裁判所は提訴を却下した。 KSM News and Research -
2023.04.28
仏航空宇宙・防衛部門の売上、2022年に前年比で13.6%増
フランスの航空宇宙・防衛部門の売上高は2022年に627億ユーロに達して、前年比で13.6%増を記録した。業界団体GIFASが4月27日の会合で明らかにした。同部門の輸出額は409億ユーロ(12%増)、貿易収支は260億ユーロの黒字で、高級品や食料品を上回り最大の貿易黒字部門としての地位を維持した。売上高の内訳は、民間部門が22.8%増の435億ユーロで全体の69%を占め、防衛部門は1.7%減の192億ユーロ。売上高は新型コロナウイルス危機前の2019年に達成した743億ユーロを下回ったものの、受注額は658億ユーロにのぼり、2019年の619億ユーロを上回った。2020年には309億ユーロに低迷していた。2022年には特に防衛部門の受注が好調で、前年比44%増の396億ユーロを記録。受注全体に占める割合が60%に達して、民間部門(18.2%増、全体の40%)を上回った。2019年には防衛部門のシェアは26%、民間部門が74%だったが、関係が逆転した。GIFASのフォーリー会長(航空機大手エアバスのCEO)は、2022年を回復の年だったと形容し、中国のゼロコロナ政策の終了などが追い風となって航空輸送が回復したことも手伝い、受注が2019年並に回復したことを歓迎しつつも、サプライチェーンの混乱による生産面の困難はまだ続いており、供給が需要に追いついていない状態だと総括した。会長は、原材料の調達難、エネルギー価格の高騰、物流の混乱などが生産を圧迫する状況は2024年まで持続し、新型コロナウイルス危機からの完全な回復には5年近くを要すると判断している。なお、人手不足を解消するため、GIFASの加盟企業は2023年に合計で1万8000人を無期雇用契約で新規採用する予定。これは前年並み。7000人の非正規雇用も含めると2万5000人ほどを新規採用する見通しで、業界全体の従業員数は20万人に達し、2019年並に回復する。 KSM News and Research -
2023.04.28
仏の鈴蘭市場、1億ユーロ規模
フランスでは、5月1日に愛する人々やお世話になった人々に鈴蘭を贈る習慣があり、鈴蘭栽培業界によると、栽培本数は毎年6000万本に達する。これに野生の鈴蘭を加えると、市場規模は約1億ユーロに達する。鈴蘭栽培業者の従業員数は2000人に、季節労働者数は4000人に達する。仏での栽培シェア20%を占める種苗業者のペピニエール・バルブレ(バール県所在)は、売上の3分の1を5月1日だけで上げている。仏消費者は、鈴蘭にうるさく、香りを楽しむことができるように、花は十分に開いていなければならないが、数日間は香りを楽しむことができるように、開いてない蕾も十分になければならない。そのため、同社の従業員達(25人)は、鈴蘭の開花具合を、毎日2回ずつチェックするなど非常に注意深く見守る。天気によっては、開花をうまく調節するため、鈴蘭を温室に移したり、冷暗所に移したりせねばならない。開花具合を監視するためのセンサーなどはなく、すべては経験がものをいう。ペピニエール・バルブレでも40年来、人の目による監視を続けてきた。同社の創業者の息子であるメルキオール・ド・バルブレ氏は、5月1日に間に合わせねばならないという制約から、「鈴蘭栽培は非常にストレスがかかる仕事だ」と語る。 KSM News and Research -
2023.04.28
独北西部で水素インフラを接続する計画、7社が合意
独北西部で水素インフラを接続する計画に関し、ガス輸送網運営事業者のThyssengas、Gasunie(オランダ)、Nowega、英石油BP、独鉄鋼ザルツギッター、独石油パイプライン運営NWO、独エネルギー大手ユニパーの7社が趣意書に署名した。お互いに計画する水素関連プロジェクトを接続する。BPとユニパーは、ヴィルヘルムスハーフェン(ニーダーザクセン州)においてアンモニア輸入ターミナル建設およびグリーン水素生産施設建設プロジェクトを実施中。一方で、Gasunie、Nowega、NOW、Thyssengasは、既存のパイプラインを水素輸送用に転換することを計画している。また生産された水素は、BPやザルツギッターがライン・ルール地方やニーダーザクセン州に展開する拠点に供給される。 KSM News and Research -
2023.04.27
テレパフォーマンス、マジョレルを30億ユーロで買収へ
コールセンターアウトソーシング業務で世界最大手の仏テレパフォーマンス(Teleperformance)はルクセンブルクのマジョレル(Majorel)に買収を提案した。マジョレルは2019年に独メディア大手ベルテルスマンとモロッコの保険大手サハム(Saham)のカスタマーサービス事業統合で誕生した企業で、カスタマーエクスペリエンス(CX)やビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)などの事業を45ヵ国で展開し、従業員数は8万2000人、2022年の売上高は20億8000万ユーロ。テレパフォーマンスの買収提案額は1株あたり30ユーロ、総額では30億ユーロとなる。マジョレルの直近の株価は20.95ユーロで、テレパフォーマンスの提案額はこれを50%近く上回っている。テレパフォーマンスはマジョレルの全株式を取得する方針で、マジョレルの株主は、マジョレルの1株に対してテレパフォーマンスの0.1382株の株式交換を選択する可能性を提供された(テレパフォーマンスの10億株までが上限)。マジョレルの株式の79%を保有するベルテルスマンとサハムはすでに、テレパフォーマンスとの株式交換を優先する方針を表明。マジョレルの執行役会と監査役会も買収提案に賛成している。テレパフォーマンスとマジョレルが合併すると年商120億ドル(110億ユーロ弱)の企業向けデジタルサービスグループが誕生する。テレパフォーマンスのジュリアンCEOはこれを弾みに年商150億ドルを目指す意欲を表明した。CEOによると、テレパフォーマンスとマジョレルは地理的な補完性も大きいという。なお、テレパフォーマンスは同時に1-3月期の売上高を20億ユーロ超と発表し、通年の業績見通しを修正した。売上高の伸び率を10%超から8-10%に下方修正し、有機成長率も7%以上を7%前後に修正した一方で、EBITDA率を15.7%から16%へと上方修正した。26日のパリ株式市場でテレパフォーマンスの株価は14%低下して175.15ユーロで引け、アムステルダム市場でマジョレルの株価は38.2%急伸して28.95ユーロの終値をつけた。 KSM News and Research -
2023.04.27
仏政府、移民法案の提出を来秋に先送り
マクロン仏大統領は4月22-23日の週末に夏前に移民法案を提出すると言明したが、ボルヌ仏首相は25日、提出を来秋に先送りすると発表した。先送りの理由は、法案成立に必要な多数派形成が困難なこととされている。ボルヌ首相は、この点について、特に野党の共和党(中道右派)内での移民問題に関する対立を指摘した。共和党内では、主に「求人難の職種に関する措置」に関して対立がある。この措置は、求人難が激しい職種において、不法移民の正規化を可能とするものだが、共和党内には、仏への移民の呼び水になりかねないとの慎重論が根強い。これに対し、ボルヌ首相は、求人難の職種における滞在許可証発行に積極的な姿勢を見せており、移民法案に関する多数派形成が困難な理由は共和党にあるとの見方を示した。一方、共和党のオリビエ・マルレ下院議員団代表は、27日付けの仏レゼコー紙におけるインタビューで、「共和党独自の移民法案を提出する」意欲を示した。これに対し、共和党のエリック・シオティ党首は26日、移民問題については国民投票を実施すべきだという考えを示し、同党独自の移民法案提出には消極的な姿勢を見せた。 KSM News and Research -
2023.04.27
航空燃料のグリーン化:欧州議会とEU理事会が合意
欧州議会と欧州連合(EU)理事会は、航空燃料の温室効果ガス排出量削減に関する法案に合意した。欧州議会、EU理事会での正式な採択を経て発効する。この法案は、EUが温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で55%を削減し、2050年に気候ニュートラルを達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一部で、内容は以下の通り。▽EUの空港において航空燃料を供給する事業者に、再生可能代替航空燃料(SAF)を一定割合混合することを義務化する。2025年にこの割合を2%、2030年に6%と段階的に引き上げ、2050年に70%に引き上げる。SAFには、水素および二酸化炭素由来の合成燃料、再生可能水素に加え、廃プラスチックや、バイオマス、廃油由来の燃料などが含まれる。2050年の混合割合の目標として、欧州議会は85%、欧州委員会は63%を提案しており、今回の合意ではその中間となる70%が採用された。また、SAFに含まれる合成燃料の混合割合についても、2030-2031年に1.2%、2032-2034年に2%、2035年5%、2050年に35%という目標が設定された。再生可能エネルギーだけでなく、原子力発電由来の「低炭素合成燃料」もSAFに含められる。▽EU空港から出発する航空事業者が、一回のフライトに必要な燃料のみを給油することを義務付ける。コストの高いSAFの給油を避け、燃料費の安い国で往復分を給油する、いわゆる「タンカリング」を避ける。▽空港が、SAF供給のためのインフラを整備することを義務付ける。なお航空部門からの温室効果ガス排出量は、EUの温室効果ガス排出量全体の4%程度を占めている。 KSM News and Research -
2023.04.26
マヨット海外県で開始の不法移民摘発作戦に暗雲
ダルマナン仏内相は21日、コモロ諸島に属するマヨット海外県で、24日に始まる週から、大規模な不法移民の摘発とスラム街の撤去を実施すると発表した。この作戦は「Wuambushu」と命名され、発表を受けて現地は不安と期待に包まれた。摘発と撤去に向けて治安部隊は1800人への増員がなされ、マヨット第一の都市マムズの郊外では23日の夜から治安部隊と若者グループの衝突が発生した。24日には摘発された不法移民を乗せた船がコモロ連合のアンジュアン島へと出航したが、フランス政府の独断的な作戦に不快感を示したコモロ連合は船の接岸を許さず、26日まで同島への人の往来を停止すると発表した。スラム街の撤去は本島(グランド・テール)の北部にある「Talus 2」にて25日から開始される予定であったが、マルズの裁判所は24日、「Talus 2」に居住する約20人からの提訴を受け、急速審理にて、同地区での摘発や住宅撤去は住民の安全を危険にさらす行為であるとの判断を下した。裁判所は、マヨット県知事(官選)に「Talus 2」におけるあらゆる摘発・撤去作業を停止するよう命じ、作戦の実行は急遽延期された。県知事は直ちに控訴の手続きを開始した。マイヨット海外県はフランスでもパリ首都圏(イルドフランス地域圏)に続く人口密集地域であるが、6万軒強の住宅の40%はトタン外装の粗末なもので、飲料水や電力の供給がないところも多い。ダルマナン内相は、こういった脆弱な住宅1000軒を2ヵ月以内に撤去すると言明していた。またスラム街の住民の多くはコモロ連合からの不法移民で、こうした不法移民はマヨット海外県の人口の30%を占めている。マヨット島は、フランスからの独立の是非が問われた1970年代に、旧仏植民地のコモロ諸島の中で唯一、フランスの海外県として残ることを選んだ。今日、独立を選んだコモロ連合からの移民は、マヨット海外県の発展と治安維持の障害になっているとの見方が同県の住民の間で一定のコンセンサスを得ており、地元の政治家の多くは「Wuambushu」を支持している。ちなみに、内相の派手な発表により注目を浴びた「Wuambushu」であるが、実際には同様の措置は過去にも実施されており、2022年には住宅500軒が撤去され、2万5380人の不法移民が本国に送還された。2021年にも1600軒が撤去、2万4000人が送還されている。 KSM News and Research -
2023.04.26
フランス、スーダンからの退避作戦を終了
スーダンで4月15日から正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が続く中で、フランス軍の参謀本部は4月25日、空路によるフランス人の退避が24日夜に終了したと発表した。フランス政府は18日から、同盟国でありフランス軍が常駐しているジブチを拠点として自国民の退避を行うために、増援を派遣し、「絶対的中立」の立場を表明して正規軍とRSFと交渉した上で、「サジテール」と呼ばれる退避作戦を展開した。当初は陸路での退避も検討されたが、より迅速な空路での退避が優先され、参謀本部によると21日夜から22日にかけて数機の軍用輸送機が首都ハルツームに車両、医療物資、食料などを輸送。150人程度の兵士が派遣されて作戦を実施した。22日から24日夜にかけてハルツームとジブチの間で軍用輸送機による9回のピストン輸送が行われ、作戦が終了した後に、在スーダン仏大使館は閉鎖され、仏軍はスーダンから撤退した。なお、ハルツームでの作戦において、23日に輸送車が攻撃を受けるという事態が発生し、特殊部隊の兵士1人が負傷した。正規軍とRSFは互いに相手の責任だと批判しあっており、どちらが攻撃したのかは不明。フランスは自国民以外の退避にも協力、マクロン大統領によると、「サジテール」作戦により209人のフランス人を含む538人が退避した。またフランスの介入により、スペイン、イタリア、ノルウェー、韓国などの退避作戦も可能になったという。米国の仲介で72時間の停戦合意が成立したため、複数の国がこれを利用して25日以後も自国民の退避活動を展開している。なお、英国は週末に外交官のみを優先的に避難させ、25日になってようやく2000人の英市民を軍用機でキプロスに避難させる方針を発表。この対応は論議を招いており、英国のジャーナリストは、英国大使館による指示がないまま、仏大使館の助けで避難できた英市民の感謝の声を伝えている。 KSM News and Research -
2023.04.26
欧州委、デジタルサービス法により特別な義務が課されるネット大手・検索エンジン19社を発表
欧州委は4月25日、デジタルサービス法(DSA)の枠内で、特別な義務が課されるインターネット大手・検索エンジン19社のリストを発表した。内訳は中国アリババ、米アマゾン・マーケットプレイス、米AppStore、蘭Booking.com、米フェイスブック、米グーグル傘下の一連のサービス(Google Play、米Google Maps、米Google Shopping、Google Search)、米インスタグラム(フェイスブック傘下)、米LinkedIn、米Pinterest、米Snapchat、中国TikTok、米ツイッター、ウィキペディア、YouTube、独Zalando、米Bing(米マイクロソフト傘下)で、欧州連合(EU)域内でのユーザー数が4500万人を超えているプラットフォームがリストアップされた。DSAは、インターネット大手企業に対し、これらの企業が用いるアルゴリズムから発生する可能性があるリスク(ネット上での未成年者保護、違法コンテンツ、フェイクニュースなど)を評価・管理する義務を課しており、指定されたプラットフォームは、第三者による監査を行わねばならず、その結果は、4月にセビリアに設立された欧州アルゴリズム透明性確保センター(Ecat)により詳細にチェックされる。また、プラットフォームは、これらのリスクの軽減措置を導入しなければならない。域内市場担当のブルトン欧州委員は特に、世論の形成に重要な役割を果たしているとして、フェイスブックによるコンテンツのモデレーション・システムに懸念を表明した。 KSM News and Research -
2023.04.25
開業医の診察料、25ユーロから26.5ユーロへの引き上げで決着
開業医組合と健康保険公庫の間の5年毎の協定改正交渉が2月末に決裂し、政府が指名する調停人(社会問題監察総局の監察官)が調停作業を行っていたが、監査官のモレル氏が24日、調停案を政府に提出した。今回の協定改正交渉における最大の争点は診察料の引き上げで、開業医組合側は現行の25ユーロから最低でも30ユーロへの引き上げを要求していたが、健康保険公庫側は1.5ユーロの引き上げ(開業医は25ユーロから26.5ユーロへ、専門医は30ユーロから31.5ユーロへ)を提示、開業医側はこれを拒否した。また公庫の提案には、医療砂漠問題の緩和に向けて、開業医が少ない地域で就労する医師に追加報酬を付与する措置が盛り込まれたが、この点に関しても、開業医側は受け入れ難い条件だとこれを却下した。交渉決裂を受けたモレル氏の調停案では、就労する地域によって報酬に格差をつける案は除外されたが、通常の診察料の引き上げに関しては公庫側の提案が維持された。また調停案には、長期的な疾病を患う患者のかかりつけ医登録に際しての初診料を60ユーロに設定する措置、医療事務などを担当する医療スタッフの採用支援、救急患者を受け入れる医師の診察料の引き上げ(2022年夏に導入された措置を恒常化)といった措置も盛り込まれた。調停案は、3週間以内に保健相がこれを承認することで6ヵ月後に発効し、向こう5年間にわたり施行されることになる。次の交渉は2年後に開始される予定。 KSM News and Research -
2023.04.25
財政難のカジノに新たに2件の提案
60億ユーロの債務を抱える仏食品・日用品小売大手カジノ・グループ(傘下にモノプリ、フランプリ、カジノ、ジェアンなど)をめぐる動きが活発化している。すでにオーガニック食品等販売の仏テラクト(Teract、農業生産者の協同組合InVivoの流通事業子会社)との資本提携に向けた独占交渉が3月から進められてきたが、4月24日、この交渉に同業の仏アンテルマルシェ(ムスクテール・グループ)が参加した。なお、フランスの食品・日用品小売部門でカジノは7位、アンテルマルシェは3位につけている。カジノとテラクトは両社の国内の小売業を束ねた会社と、地産地消の購買センターを束ねた会社の2社を設立し、カジノとテラクトが共同で保有することを検討している。かねてよりカジノと購買で協力関係にあるアンテルマルシェは、カジノとテラクトが設立する新組織に少数出資(1億ユーロ)するとともに、売上高にして11億ユーロに相当するカジノの100店舗ほどを買収し、また購買に関する協力をさらに強化することを提案した。これにより、3社は食品流通の上流から下流までをカバーする垂直統合型のビジネスモデルを構築することができ、アンテルマルシェが保有する強力な購買システムを利用できる。またアンテルマルシェによる店舗買収は、カジノに数億ユーロをもたらす(アンテルマルシェは2億ユーロの前払いを約束)。テラクトによる2億ユーロの追加出資なども合わせて、この計画では、(店舗譲渡の収入以外に)5億ユーロ程度の資金がカジノにもたらされる見通し。アンテルマルシェの側も店舗を増やす利点があるほかに、InVivoから生鮮食品や地産地消に関するノウハウを得ることを期待している。しかし、これとは別に、同じく24日、フランスで積極的な企業買収を展開するチェコの実業家ダニエル・クレティンスキー氏が、大型の増資計画をカジノに提案した。同氏はすでにカジノの資本の10%を保有し、オーナーのナウリ氏に次ぐ大株主になっているが、3番目の株主(2.6%を保有)であるフィマラック(大物実業家のラドレドラシャリエール氏が経営)と組んで、総額11億ユーロの増資を提案。このうち、クレティンスキー氏が7億5000万ユーロ、フィマラックが1億5000万ユーロを出資し、残りの2億ユーロは他の株主がもたらすという構想で、カジノの現在の株式時価総額(6億9100万ユーロ)と比べて、極めて規模の大きい増資となる。クレティンスキー氏の提案には一連の条件が付与されており、特に劣後債を保有する債権者がその譲渡に応じることなどが条件となる。カジノは2件の提案を並行して検討する方針で、双方の提案は両立も可能だとしている。増資が実現すれば、テラクトとの交渉でもより有利な立場を得られ、一石二鳥だとの計算も働いている模様。ただし、クレティンスキー氏の提案では、同氏とフィマラックが合わせて資本の55%を取得することになり(40%と15%)、現在51%を保持するナウリ氏からクレティンスキー氏へと経営権が移動する見通しで、その場合には、テラクト側が交渉を停止する可能性が強い。 KSM News and Research -
2023.04.25
仏政府、住宅ローンの与信条件緩和を望む:仏中銀は反対
仏政府は、仏中銀の反対にもかかわらず、住宅ローンの与信条件を緩和する意向。ルメール経済相は4月23日、テレビ局フランス2で、住宅ローンへのアクセスがますます困難となっているとの認識を示し、仏金融安定化高等評議会(HCSF)が2022年以来住宅ローンに適用している規則への例外措置を強化するとの目標を示した。フランスでは3月に、14年ぶりに住宅ローンの平均金利が3%を突破したが、業界関係者の間では、金利の上昇に加えて、HCSFの規則が住宅ローン与信にとってのさらなる制約になっているとの見方が強い。HCSFの規則によると、住宅ローンの借り手の月返済額は月収の35%を上回ってはならず、ローン年数は、未着工物件の購入の場合の27年以外は、25年を越えてはならない。貸し手の銀行は、月毎の与信額の20%に関しては、この規則の例外とすることができるとされているものの、この20%分のうち、80%は本宅の購入に充当されねばならないとされており、それが貸し手の銀行にとっては制約となっている。仏レゼコー紙によると、仏政府は、この条件を撤廃し、セカンドハウス、あるいは賃貸目的の住宅の購入の場合でも、HCSF規則の例外とする道を開くことを目指している模様。 KSM News and Research -
2023.04.24
フランスの同性婚解禁法、23日で10年に
フランスで同性婚解禁法が採択されてから、この4月23日でちょうど10年が経過した。ルモンド紙はこの機会に、同法の成立に深く関わった関係者の声を紹介するとともに、当時を振りかえる記事を掲載した。同性婚解禁は当時のオランド大統領(社会党)の公約の一つであり、エロー首相(当時)は2012年7月3日、「2013年1-3月期に同性婚を解禁する」という政府の意向を発表した。これにカトリック教会や保守支持派が強く反対、市中では、子供を守るという大義のもとに、反対派が結成する団体「みんなのデモ」を中心に抗議行動が展開された。2013年1月13日に実施の最大のデモには、34万人(主催者側発表では100万人)が参加した。フランスを二分しての大議論になったように思われる同性婚の是非であるが、法案の報告者であったビネ元下院議員(社会党)は、同性婚解禁に関する提案について、当初は予想以上に一般的な国民の関心が得られなかったと回想する。社会学者のテリー氏によると「実際には当時の社会はすでに同性婚を受け入れる用意があった」。しかし、カトリック教会などは「同性婚」そのものよりも、むしろ、同姓カップルが子供を持ち家庭を形成することに反発した。テリー氏は、議論の焦点がずれてしまったことと、カトリック教会を含む宗教勢力の大規模な動員により議論のトーンが変わってしまったと分析、他の関係者からは「強い反発に対するオランド大統領の曖昧な態度が無駄に論議を長引かせた」といった声も寄せられた。最終的に、国会での合計136時間56分の審議を経て成立した同法からは、LGBT擁護団体が大きな期待を寄せていた「同性カップルにも体外受精の権利を保障する」、「同性カップルによる養子縁組を認める」といった措置は除外された。同性カップルへの体外受精や養子縁組の権利付与は、8年後の2021年8月2日に公布される「バイオエシックス法」を待つことになる。とはいえ、リエステル国会関係担当相は、賛成331人対反対225人にて法案が可決された時のことを、「人々の人生を変えることに貢献したという感慨に満たされた」と振り返る。同相は同性愛者であることを公言しており、当時のUMP(現共和党)の中で法案を支持した下院議員は同相とアパリュ元住宅相だけだった。ルモンド紙によると、ここ10年で7万件の同性婚が成立した。 KSM News and Research -
2023.04.24
仏政府、駐仏中国大使の発言に「愕然」
仏政府は4月22日夕、旧ソ連諸国の主権を否定し、クリミア半島がウクライナに属していることに疑義を呈した駐仏中国大使の発言に「愕然とした」とのコメントを発表した。盧沙野中国大使は、仏ニュース専門テレビ局LCI上でのインタビューにおいて、「旧ソ連諸国は、国際法上で有効な地位を持たない。なぜなら、彼らの主権国家としての地位を具体化する国際的合意がないからだ」との主張を展開した。2014年からロシアに占領されているクリミア半島に関しては、「それは、この問題をどのような視点から見るかによる。歴史上は、クリミア半島は、当初はロシアのものだった。クリミア半島をウクライナに譲ったのは、旧ソ連のフルシチョフ書記長だ」と主張した。これに関して、仏外務省は、コミュニケを発表し、「(大使の発言に)愕然としており、中国に対し、大使の発言が公式見解なのか確認を求めたが、そうではないことを望んでいる」との立場を明らかにすると共に、「ウクライナは、ソ連崩壊後の1991年に、新たな国連加盟国として、クリミア半島を含む国境が、中国を含む国際社会全体により承認された」と指摘、「2014年のロシアによるクリミア併合は、国際法違反だ」と強調した。一方、ウクライナ政府は4月23日、「数千年に渡る自国の歴史については細心の注意を払うある国の大使が、クリミア半島の歴史に関して馬鹿げた話をするのは奇妙なことだ」と強く批判した。中国は、ウクライナ戦争に関しては、表向きは中立の立場だが、習主席は、ロシアによるウクライナ侵攻を非難したことはなく、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話でも会談したこともない。その一方で、習主席は先にロシアを訪問し、ロシアとの連携を再確認したばかり。 KSM News and Research -
2023.04.24
リブレA、1-3月の純流入、2009年以来で最高を記録
リブレA(利息非課税の貯蓄口座)資金は3月に41億7000万ユーロの純流入(引出し額を控除後)を記録した。記録的な流入を記録した1月(113億ユーロの純流入)、2月(62億7000万ユーロの純流入)に続き、3月としては2009年以来で最高を記録した。1-3月の純流入は約200億ユーロとなり、こちらも第1四半期として2009年以来で最高となった。リブレAの預金残高は3月末時点で3951億ユーロに達している。同じく利息非課税の貯蓄口座であるLDDSは3月に18億2000万ユーロの純流入を記録。純流入額は1月に19億5000万ユーロ、2月に19億ユーロだった。1-3月の数字は、いずれも2020年以来で月あたりの純流入額として最高水準となっている。LDDSの預金残高は3月末時点で1400億ユーロ。リブレAおよびLDDSの利率は、インフレ昂進を理由に2月に3%へ引き上げられ、これが大幅な純流入を呼んでいる。また消費者は、インフレへの不安から、消費を控えて手堅く貯蓄する傾向があると見られる。Cercle de l’Epargneなどが4月17日の週に実施したアンケート調査によると、市民の65%がリブレAを魅力的な資金運用先と回答し、この割合は不動産投資(60%)、生保(56%)を上回った。2022年時点では、この割合はわずか34%だった。なお、Cercle de l’Epargneの予測によると、リブレAの利率は今年8月1日に4%近くに引き上げられる可能性がある。4月22日付仏レゼコー紙の報道によると、リブレA利率引き上げによる財務への影響が大きいBPCE、ラ・バンク・ポスタル、クレディミュチュエルをはじめとする銀行は、利率の3%の維持を強く望んでおり、「ここ数か月にリブレAへの貯蓄金額を増やしたのは主に富裕層で、多くの市民は利率引上げの恩恵を受けていない」、と主張し政府を説得したい構え。リブレAの利率は、インフレ率やユーロ短期金利(ESTR)を元に計算された上で、フランス中銀の勧告に受けて政府が決定する。 KSM News and Research -
2023.04.21
仏国内のヘルスケア製品および大衆薬の価格、最近に大きく上昇
21日のルモンド紙は、ヘルスケア製品および大衆薬の過去1年の大きな価格上昇について取り上げた。この価格上昇は、メーカーと薬局チェーン店の間での価格交渉が3月1日に終了して以来、特に加速しているという。薬局112店を集める「ファルマベスト」のアバンアイム会長は、今回の価格交渉では、メーカー側より過去30年に例をみない値上げ率を提示されたと証言する。価格交渉時にメーカーが求める値上げはこれまで年間2-2.5%程度であったが、今回はその3-4倍の値上げ率が提示されたという。薬局チェーン「ファルマシー・ラファイエット」のフォンテーヌ販売部長も、今回の交渉当初には10%を超える値上げ率を提示されたという。同社は、300件に上る交渉事案のうち、大部分では3-4%の引き上げに抑えることで合意できたが、子供用栄養強化剤を製造するIneldea一社との間でのみ合意が成立せず、同社製品の取り扱いを停止することにした。ファルマベストでも、プロクター&ギャンブルから紙おむつ「パンパース」について30%、ダノン傘下ブランド「ガリア」から乳児用ミルクについて18%の値上げを求められ、これらの製品の取り扱い停止を決めた。消費者はここ数ヵ月のインフレを受け、必需品以外の製品を買い控える、あるいは、より廉価な製品を選ぶ傾向を強めており、薬局は、卸価格の上昇の一部を、マージンを削ることで吸収せざるをえない。薬局側は3月1日以降、費用対効果の高い製品をプロモーション品として販売したり、PB製品の販売増を目指すといった戦略で現状に対抗している。 KSM News and Research -
2023.04.21
仏ラクタリス、食品部門で仏1位・世界10位に躍進
乳製品大手の仏ラクタリスは2022年の売上高が前年比28.4%増の283億ユーロに達し、同業の仏ダノン(13.9%増の277億ユーロ)を抜いて、フランスの食品部門で首位に躍進し、世界の食品部門でも10位につけた。なおダノンは世界11位。世界首位はスイスのネスレで、売上高は950億ユーロ。ラクタリスの増収は、原材料価格の高騰に伴う価格の引き上げに負うところもあるが、企業買収の成果でもある。仏西部ラバルでベニエ家による一族経営のチーズ生産会社として1933年に創業した同社は、当初から積極的な企業買収で事業を拡大してきた歴史があり、創業者の孫であるエマニュエル・ベニエ現CEOが2000年に就任して以後も事業の拡大と国際化を継続し、最近の20年間に120件もの企業買収を実施し、売上高を2000年の5倍に引き上げた。2022年は売上で競合ダノンを凌いで仏最大手に躍り出た飛躍の年ではあったが、ベニエCEOはむしろ、牛乳、包装、エネルギーなどのコストが大きく増大したにもかかわらず、これを全面的には製品価格に転嫁できなかったために利益幅が縮小した「難しい年だった」と評価している。営業利益は0.4%減の13億ユーロ、純利益は14%減の3億8400万ユーロにとどまり、営業利益率は前年の5%から4.6%へと低下した。利益率ではダノンと比べて見劣りする。ラクタリスは世界51ヵ国に270ヵ所の生産拠点を展開し、従業員数は8万5000人。150ヵ国で製品を販売している。しかし、非上場企業であり、また社名は製品には表示されていないため、一般消費者の間での認知度は比較的低い。これは目立つことを意図的に避けてきたベニエ家の方針にもよるものだが、2017年から2018年にかけて同社製の粉ミルクがサルモネラ菌汚染問題が発生したことを機に、同社の経営の不透明性が批判を浴びたため、政府からの圧力もあってベニエCEOが初めて記者会見を開き、また、以後は毎年業績も公表している。牛乳の買取価格を引き上げて生産者との関係改善にも努めている。なお、他の乳製品メーカーが植物性乳代替品に事業を広げている中で、ベニエCEOは本来の乳製品にこだわる姿勢を貫いている。 KSM News and Research -
2023.04.21
フランスにおける電力先物価格、欧州で最高水準に
フランスにおける電力先物価格が高騰している。現在、2023年10-12月期渡しの先物価格は1MWhあたり303ユーロ、2024年渡しの先物価格は1MWhあたり213ユーロとなり、欧州でも最高水準に達している。2023年10-12月期渡しの価格は、隣国のドイツで1MWhあたり150ユーロ、イタリアやオランダでも145-180ユーロ程度にとどまっており、その差が大きく開いている。フランスにおける電力先物価格の高騰の背景には、原子力発電量への不安がある。パンリー原子力発電所(セーヌマリティム県)、カットノン原子力発電所(モゼル県)の原子炉において最近新たな亀裂が検出されたことに加え、年金改革に対するストによって原子力発電量が低下。更に、ストの影響で原子炉の保守作業が遅れ、今冬から来年にかけて発電量が減少する恐れが指摘されている。EDFは、ストが発電量に与える影響は小さく、2023年通年の原子力発電量目標「300-330TWh」を維持すると説明している。なお、国内原子炉の応力腐食割れの問題の悪影響が特に心配されていた昨年夏には、やはりフランスにおける電力先物価格が隣国を大きく上回った。その後、無事に冬季を乗り切ったことでこの差は大きく縮小。今年3月の第1週には、フランスの先物価格(2024年渡し)は1MWhあたり148ユーロまで低下し、ほぼドイツと同じ水準となっていた。 KSM News and Research -
2023.04.20
ベルギー政府、「現金お断り」の禁止を計画
ベルギー政府は、現金決済の受け入れを商店に義務付ける内容の法案を準備している。デルマーニュ経済相(副首相)が今夏にも法令をまとめることを望んでいる。ベルギーでは、2022年より、キャッシュレス決済の受け入れが商店に義務付けられた。それ以来で、商店の中には、現金決済の受け入れを拒否するところも出始めており、最近では、ベルギー国鉄が車内精算における現金受け入れを廃止することを決定し、社会問題としてクローズアップされるに至っていた。政府報道官は、子どもや高齢者、情報弱者などが締め出されることがないように、現金を使用する権利を保障すると説明。現金決済を拒否する商店に対する罰則の導入も法案に盛り込む方針。政府は、資金洗浄や脱税等の対策として、キャッシュレス決済の受け入れを義務付けた。現金決済の上限額は3000ユーロに設定されている。その一方で、衛生危機を経て現金決済の後退は加速しており、それと並行して、銀行によるATM網の整理も進んだ。10年間でATMの台数は半分に減少しており、それがキャッシュレス決済の利用をさらに押し上げるというループが生じている。政府は3月に、銀行業界との間で、ATMの維持に関する合意を結んだが、合意には拘束力がなく、しかも、2025年までには45%のATMがさらに削減される見通しとなっている。 KSM News and Research -
2023.04.20
「マリアンヌ」基金の不正疑惑、シアパ閣外相が批判の矢面に
「マリアンヌ」基金を巡る疑惑が拡大している。提訴や国会調査委の設置申請の動きが相次いだ。「マリアンヌ」基金は、中学教諭サミュエル・パティさんが2020年10月にイスラム過激派により斬首される事件が発生したのをきっかけに、政府が設立した。シアパ現社会連帯経済閣外相(当時は市民権担当相)が担当した案件で、250万ユーロを原資として、市民団体による過激化防止の対策を支援するため補助金を支給するという計画だった。この基金を巡っては、支援先が不透明だとする報道が去る3月末頃から出始めていたが、ニュース専門サイトのメディアパルトによる新たな報道で疑惑が一段と深まった。この報道によると、「マリアンヌ」基金は33万ユーロを設立間もない団体「Reconstruire le commun」に支給したが、同団体はその後、2022年の大統領選挙時に、マクロン大統領の対立候補であるイダルゴ氏(社会党所属、パリ市長)やメランション氏(左翼政党LFI所属)などを攻撃する動画を公表していた。公的資金を政治的目的のために流用した疑いがあるとして、当のイダルゴ氏は18日に被疑者不特定のまま提訴の手続きを取った。野党勢力は国会調査委員会の設置を請求する手続きを開始した。シアパ閣外相への風当たりは特に強い。バラン報道官は、基金の運営は閣僚からは独立する形でなされていると述べて閣外相を擁護したが、事件の進展によっては進退を問われる局面になることも考えられる。 KSM News and Research -
2023.04.20
主要労組CFDTのベルジェ書記長、退任決める
主要労組CFDTのベルジェ書記長は19日、6月21日付で退任すると予告した。後任には書記長補佐を務めるマリリーズ・レオン氏(女性)を指名した。CFDTは改革派労組として知られる。近年では強硬派のCGTを抜いて最大の労組となっており、組合員数は60万人以上で、今年に入ってから3万1000人の増加を記録した。足元の年金改革では、ベルジェ書記長はCGTをはじめとする他の労組と共闘する形で反対運動を展開し、マクロン大統領の対応を一貫して批判してきた。改革法の公示が終わり、関係正常化を探るべき局面を迎えたタイミングで退任を決めた。ベルジェ書記長は2012年にシェレック書記長の退任を受けて書記長に就任した。以来、数度にわたり再選されたが、2022年6月の最後の再選では、任期満了を待たずに途中で退任する方針を明らかにしていた。書記長はこの時期に退任を決めた理由として、足元の様々な事件とは無関係であり、熟慮を重ねた結果だと言明。前任者らと同程度の在任期間となり、後進に道を譲るべき時が来たと考えたと説明した。政界に転身するとの噂については全面的に否定した。レオン氏の昇格が決まれば、CFDTの書記長に女性が就任するのは2代前のノタ書記長(1992-2002年)に続いて2人目。CGTでも女性のビネ書記長が就任したばかりで、2大労組のトップが揃って女性となる。 KSM News and Research -
2023.04.19
CMA CGM、ボロレ・グループの物流部門に買収提案
仏海運大手CMA CGMは18日、仏ボロレ・グループに物流子会社ボロレ・ロジスティクスの買収を提案した。50億ユーロ(ボロレ・ロジスティクスの現預金は計算外)という買収額を提示した。ボロレはこれを受けて、CMA CGMと独占交渉を開始することを決定。5月8日までに確定提案を示すよう求めた。ボロレはこの買収の打診について、CMA CGMの側から自発的に持ち掛けられたものだと説明している。CMA CGMはサーデ一族が経営、コンテナ海運では世界大手。2019年のシーバ(スイス)買収を皮切りに、物流事業の強化を進めており、エールフランスKLMとの空輸業務での提携、車両輸送のジェフコ買収などを通じて網羅的な事業体制を構築しつつある。足元の事業は好調で、昨年には250億ドル近くの純利益を達成しており、資金力は潤沢にある。ボロレ・グループもボロレ一族が経営する大手企業で、現在はビベンディ(メディア)を核として、各種の事業を展開している。物流部門では、アフリカ事業を伊海運大手MSCに57億ユーロで売却することを決めたばかり。残る事業については、企業買収による増強・拡大にむしろ傾いていたとみられるが、サーデ一族とは馴染みもあり、高値がつけば売却に応じる意向とみられている。収入を懸案のビベンディの上場廃止などに投入できるという利点もある。 KSM News and Research -
2023.04.19
パリ市、環状自動車専用道の専用レーン設置等に関するパブコメ募集を開始
パリ市は17日、ペリフェリック(環状自動車専用道)の見直しに関するパブコメ募集を開始した。同日に説明会を開き、プランを示した。ペリフェリックと首都圏の一部の高速道路には、2024年のパリ五輪の機会に、大会関係者向けの専用レーンが設定されることになっている。パリ市は、ペリフェリックについて、これを恒久化して交通体制を見直すことを計画しており、そのプランを提示した。具体的には、左側の車線をペリフェリックの全体で専用レーンとして、バス、タクシー、ライドシェア等のみの通行を認める。また、全体の速度制限を時速70kmから50kmへと引き下げる。専用レーンの走行制限は、道路混雑の時間帯(6時30分から11時、15時30分から20時)に限り適用される。速度制限については、全日の適用とするか、専用レーンの制限中のみの適用とするか、2案が意見聴取の対象となる。パリ市は調査の結果として、ペリフェリックにおける実際の走行速度の中央値は、日中で約時速50km、混雑時には30-45km、夜間には60km強との数字を示し、現状で最高速度70kmは実情に即していないと指摘している。 KSM News and Research -
2023.04.19
ロッテルダム港、1GW級のグリーン水素生産施設の設置を準備
オランダ・ロッテルダム港湾局は、同港内にある産業パークのマースフラクテに、1GW級のグリーン水素生産施設を受け入れるゾーンの整備を行っている。面積は11ヘクタール。今年中に入札が実施される洋上風力発電プロジェクト「IJmuiden Ver Wind Farm Zone Beta」(設置容量2GW)に関連した動きとなる。洋上風力発電ファームとグリーン水素生産プラントはいずれも2028年頃の稼働開始が見込まれる。グリーン水素生産プラントを受け入れるゾーンは、「IJmuiden Ver Wind Farm Zone Beta」と接続される変電所の建設予定地に隣接した場所に整備される。グリーン水素を顧客に供給するための水素パイプラインも整備される。グリーン水素生産プラントを地域暖房網に接続することも検討されている。マースフラクテにおいては現在、複数の200-250MW級の電解施設が建設中または計画中となっている。 KSM News and Research -
2023.04.18
仏人口の5分の1近くが本格的な超高速ブロードバンドへのアクセスを持たず=消費者団体調べ
仏消費者団体UFC-ク・ショワジールは、4月18日に発表した調査報告において、フランスの総人口の5分の1に相当する1180万人がいまだに本格的な超高速ブロードバンド(接続速度30Mbps以上)へのアクセスを持たないと主張している。仏首相府下の調査・研究機関「フランス・ストラテジー」によると、すべての仏国民に超高速ブロードバンドへのアクセスを提供することを目的として2013年に開始された「フランスTHD(THDは超高速ブロードバンドのこと)」計画には、公的及び民間資金が10年間で約360億ユーロ投じられた。計画は光回線を中心とし、光回線が敷設困難な場所では、衛星通信や固定4G回線により補完するというもの。UFC-ク・ショワジールでは、「公式な数字では政府の目標は達成されたことになっているが、いまだに1180万人が、超高速ブロードバンドへのアクセスを、光回線ではなく、固定4G回線などの無線回線や衛星通信に依存せざるを得ない状況に置かれている」と指摘、特に田園地帯の自治体がデジタル・デバイドの犠牲となっていると主張している。ARCEP(仏電子通信・郵便規制機関)によると、2022年末時点での超高速ブロードバンド加入者世帯数は2150万で、うち1810万が光回線。仏政府は、光回線の一般化を2025年を目処に実施するという目標を掲げており、銅線による加入者回線は2030年には停止される予定。 KSM News and Research -
2023.04.18
エールフランス機墜落事故裁判:エールフランスとエアバスに無罪判決
2009年に発生したリオ発パリ行きのエールフランス機の墜落事故で、パリ地裁は17日、エールフランスと機体製造のエアバス社に対して無罪判決を言い渡した。複数の過失があったが、事故との直接の因果関係が立証されなかったと判断した。この事故では、乗客216人と乗員12人の全員が死亡した。事故原因の調査では、飛行中に高度計(ピトー管)が凍結したことに由来する混乱の中で、機体の失速に対して操縦者らが適切な対応をすることができず、そのまま大西洋上に墜落したことが判明している。事故の責任を問う過失致死容疑の捜査では、事件を担当する予審判事が、一旦は不起訴を決めたが、遺族らの要望もあり、異議申し立てを経て一転して起訴に至ったという経緯があった。ただ、裁判に至ったとはいえ、新たな証拠や論拠があるわけではないため、無罪判決が出される可能性がはじめから高く、検察側は求刑で無罪を請求していた。裁判所も判決でそれに従った。裁判所は、エアバスについては、ピトー管凍結の複数の事案をこの事故前に通知されていたのに、しかるべき対策を怠るなどの過失があったと認定。エールフランスについては、高度計の故障の際の対応を乗組員に徹底していなかったなどの過失があったと認めた。しかし、これらの過失と事故発生の間の因果関係は立証されておらず、犯罪を構成すると認めることはできないとし、無罪判決を言い渡した。ただし、裁判所が過失の存在を認めたことで、遺族に対する賠償責任が追加で発生する。金額を決めるための公判が9月4日に行われる。遺族らの団体は、無罪判決に強い失望の念を表明した。 KSM News and Research -
2023.04.18
マクロン大統領、テレビ演説で年金改革巡る混乱の収拾図る
マクロン大統領は17日夜、国民向けのテレビ演説を放送した。年金改革を巡る混乱の収拾を図り、「100日間で再スタートを切る」ことを提案した。大統領はこの中で、年金改革への抗議行動について触れて、改革が国民の理解を得られなかったのは明らかだとして、その点について自らの責任を認めた。大統領はその上で、公正な社会と民主制度の刷新に向けた要求に耳を傾ける必要があるとし、労働、正義と共和国の秩序、公共サービスの3項目を挙げて、改善のための協議に着手すると予告した。ほぼ100日後となる7月14日の革命記念日までに最初の総括を行うと約束した。大統領は具体的な内容については示さなかったが、「労働」については、年金改革を巡り悪化した労組との間の対話を再開する入口にする意向と考えられる。大統領は、限界や聖域を設けずに交渉に応じるとし、職業高校の改革、RSA(生活保護手当の一種)の制度改革に加えて、勤労者の所得改善や利益分配の強化、就労条件の改善、厳しい就労環境の勤労者への配慮、シニア雇用の拡大、転職支援などの問題を幅広く検討する考えを示した。「正義と共和国の秩序」については、治安部隊隊員や検事らの採用の継続、違法移民対策、脱税対策に言及した。「公共サービス」については学校教育と医療を挙げた。大統領は18日に大統領府に労使代表を招いて会合を開くが、これに参加するのは経営者団体のみで、労組は揃って出席を拒否している。労組側は、少なくとも5月1日のメーデーまでは政府との協議に応じない構え。なお、17日夜のテレビ演説と同時間に、全国の各所で人々が集まり、鍋を叩くなどする抗議行動が行われた。 KSM News and Research -
2023.04.17
トゥーロン市のファルコ市長、公金横領問題で有罪判決
マルセイユ地裁は14日、トゥーロン市(バール県)のユベール・ファルコ市長(75)に対して、公金横領秘匿の罪で執行猶予付き禁固3年の有罪判決を言い渡した。裁判所は、押収された5万5000ユーロの口座資金の没収と、5年間の被選挙権停止の処分も決めた。裁判所は被選挙権停止の暫定的な執行も命じており、ファルコ被告人が控訴をしても、市長とトゥーロン都市圏議長の職を解任されることになった。ファルコ氏は右派の出身で、地元のバール県における有力政治家だった。同県選出の下院・上院議員を数期にわたり務め、バール県の議長職は1994年から2002年まで務めた。シラク政権からサルコジ政権まで、保守政権で閣僚職も歴任した(2002-10年)。2021年には共和党を離れて、マクロン大統領支持に転じた。それより前、2020年の市町村選挙では、2001年に市長として初当選したトゥーロン市で4選目を果たしていた。裁判所は、バール県議会が2015年から2018年にかけて、ファルコ氏に対して無料で食事を提供し、県職員である2人の料理人を夜間及び週末・祝祭日にもファルコ氏のために斡旋していたと認定。横領総額は推定で6万4500ユーロと多くはないが、バール県議会との直接の関係が途絶えてから長い期間が経過した後も、財政の私物化を続けていた責任は重いとして、被選挙権の停止という厳しい処罰を決めた。事件当時のバール県のジロー県議会議長(71)にも、公金横領の罪で執行猶予付き禁固2年と罰金1万5000ユーロの有罪判決を言い渡した。 KSM News and Research -
2023.04.17
マクロン大統領、年金改革法を公示
憲法評議会は14日、先に国会で可決された年金改革法案の違憲審査の結果を発表した。一部の条項の削除を命じた以外は、大筋で法案を合憲と認めた。マクロン大統領は時を移さず、15日未明に年金改革法を官報上に公示した。憲法評議会は、全部で6つの条項の削除を命じたほかは、法案を全体として合憲と認めた。法案は、社会保障会計予算法への修正案という体裁をとっており、憲法評議会は、予算関連法案に相応していないことを理由にこれら6条項の削除を命じた。具体的には、定年年齢引き上げに伴うシニア雇用の促進を目的として導入される企業単位のシニア雇用評点制度の導入とシニア対象の無期雇用契約(CDI)の導入、社会保険料の徴収組織の見直し、就労条件が過酷な労働者への配慮、賦課式年金制度の広報、の6条項が削除の対象となった。定年年齢を62才から64才へ引き上げることを柱とする改革の本体はそのまま合憲と認定された。反対派からは、年金改革が補正予算法案として扱われたのはそもそも不当であり、それにより国会審議が加速化され、「49.3」(採決を経ずに法案を可決させる憲法上の規定で、予算法案については無制限に利用できる)により可決されたのは違法だとする議論が出されていたが、憲法評議会はそうした議論も退け、法案を大筋で合憲と認めた。憲法評議会は別途、RIPと呼ばれる国民投票請求の審査も行ったが、こちらも不受理とする決定を下した。左派議員らが「定年年限は62才を超えてはならない」とする法案を別途提出し、その国民審査請求を行っていたが、憲法評議会はこの請求も認めなかった。なお、同じ目的でこれとは別のRIP請求も提出されており、その審査結果は5月3日に発表される予定。マクロン大統領は、憲法評議会の審査結果が出てから数時間後には年金改革法を官報上に公示して施行した。これは、改革に関して強い姿勢で臨むことを改めて示したものとして注目され、労組や野党勢力は強い反発を示している。大統領は17日夜に国民向けのテレビ演説を行う予定。政府は、シニア雇用対策など、年金改革に伴う影響緩和措置の一部が削除されたことを踏まえて、これらの点に関する労使との協議を再開することで、年金改革を巡る対立の緩和の道を探りたい考えだが、労組側は5月1日(月)のメーデーの機会に大規模な動員を達成して一矢報いたいところで、関係の正常化は実現するとしてもそれ以降になる。 KSM News and Research -
2023.04.17
リン化アルミニウムの穀物輸出への使用制限を巡り物議
リン化アルミニウム輸出農産物への使用を巡る問題が物議を招いている。政府とANSES(国立食品・環境・労働衛生安全庁)との間で対応についての見解が対立している。この問題は、ANSESがリン化水素の使用を禁止したと報道されたことをきっかけにクローズアップされた。リン化アルミニウムは、殺虫・消毒を目的とするくん蒸のための薬剤で、ANSESが、穀物など輸出農作物に使用することを禁止したと報じられた。実際には、ANSESが許可を出さなかったのは、リン化アルミニウムの固形剤を、船倉において農作物に直接接触する形で用いる行為に限定されている。この問題は、メーカーであるUPLが、直接接触の場合に残留農薬の濃度が欧州連合(EU)の基準値を超えるリスクがあるとの調査結果を示しつつ、直接接触の特例許可の付与を請求し、ANSESがこれに応じなかったことに端を発している。UPLは、EUに対して、基準値の引き上げを求める意向も表明している。リン化アルミニウムの使用は、容器に入れて直接に接触しないような形で行うという選択肢もあり、これはANSESも禁止していないが、フランス産小麦の主な輸出先であるアフリカ諸国においては、容器を廃棄物として適正処理するインフラがなく、この方法を認めていないという。政府は11日の時点で、この問題で、穀物輸出を継続できるよう善処すると約束。ANSESに対して、販売許可を修正して直接接触を認めるよう圧力をかけている。ANSESの側では、EUの規則が認める特例措置は、販売許可の修正ではなく、政府が法令を通じて行うのが筋であり、ANSESの権限外だと主張して、政府と争っている。 KSM News and Research -
2023.04.14
カルフールとマネーグラム、提携を拡大
仏食品小売大手カルフールと米マネーグラム(送金サービス)は4月14日、提携合意の拡大を発表した。2024年までに7ヵ国の500店舗強でカルフールがマネーグラムのサービスを取り扱う。両社はルーマニアで13年前から同様の協業を続けていた。その成果を踏まえて、対象地域を拡大する。フランス、スペイン、イタリア、ベルギー、ポーランド、ブラジル、アルゼンチンの7ヵ国で、カルフールの大型店舗及び中型店舗にマネーグラムの窓口を置き、カルフールの従業員が業務を行う。カルフールの顧客向けの優遇措置の適用も予定する。フランスでは、マネーグラムと競合するウェスタンユニオンのサービスを、フランプリ(カジノ・グループ傘下)の小型スーパーの一部が2016年以来取り扱っている。カルフールも、多様化する顧客のニーズに最大限に対応することを目指し、今回の提携拡大を決めた。マネーグラムは、後発のネット専業のWiseやRemitlyに市場を蚕食されていることもあり、対抗策の一環としてこの提携に期待している。 KSM News and Research -
2023.04.14
地下水系の水量不足が深刻に
BRGM(地質・鉱山局)は13日、全国の地下水系の状況に関する報告を公表した。今夏に水不足に陥る可能性に警鐘を鳴らした。昨年は水不足と干ばつの被害が目立ったが、現在の状況は昨年以上に深刻であるという。全国の4分の3の地域で地下水系の水位は通常を下回っており、水位が極めて低い地域も全体の20%を占めた。足元では、全国的に降水がある日が多くなっているものの、乾燥した地面に吸収されて地下水系の水量増大を実現するまでには至っていない。植物の生育が本格化すると、植物に吸収される分も多くなるため、この数週間に通常よりも目立って多い降水が得られるかどうかが鍵になる。地下水系の水位と共に、地表水の水量も減っており、貯水率の低下や河川の水量の減少も目立っている。BRGMは同じ機会に、通常よりも早く、全国の県別の夏季水資源予測を公表したが、全国の半数余りに相当する50県強が、干ばつのリスクが「大きい」又は「極めて大きい」に分類された。北部地方や中央地方、南東地方でリスクが目立つ。 KSM News and Research -
2023.04.14
左翼政党LFIのメランション氏、リュファン下院議員を次期大統領候補として支持
左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏は12日、LFIに所属するフランソワ・リュファン下院議員を次期大統領候補として支持する旨をツイートで明らかにした。週刊誌ルポワンが発表した世論調査に寄せて、「フランソワの準備ができた。先へ進もう」などとコメントした。この世論調査では、一連の政治家について10点満点の評点をつけてもらう形で調査が行われた。6点以上の点をつけた回答者の割合は、極右RNのマリーヌ・ルペン下院議員が29%でトップとなり、これにフィリップ元首相が25%、メランション氏が24%で続いた。9点以上の評点をつけた回答者の割合では、ルペン下院議員が18%でトップだが、メランション氏とリュファン下院議員は15%と14%でほぼ並んだ。メランション氏は71才で、大統領選挙の常連だが、次期大統領選挙への出馬には消極的な姿勢を示していた。その一方で、LFIが主軸の左派連合NUPESの間では足並みの乱れが目立ち、また、LFI党内でも、メランション氏の指導力には陰りが見えている。リュファン氏は47才、ジャーナリストの出身で、社会派のドキュメンタリー映画の制作で有名になった。2017年より、LFIなどの公認を得てソム県選出の下院議員となったが、LFIの主流派には属しておらず、党の方針にも必ずしも従っていない。「声なき者の代弁者」が必要であり、それになるためなら立候補する可能性もあると語っていた。左派ポピュリズムの立ち位置はメランション氏とも共通性がある。 KSM News and Research -
2023.04.13
フランスでは相対的な所得水準が固定される傾向が鮮明に
2003年と2019年の16年間の間に同じ人物の所得水準の変化を調べたINSEE調査が4月12日に発表された。これによると、所得水準のスケールにおける各人の相対的な位置を、2003年時点と2019年時点で比べると、その間の相関係数は0.71と、明確な相関関係があることがわかった。これは、相対的な所得水準にかわりのない人が多いことを示している。所得下位20%だった人は、62.2%が2019年にも同じ所得区分に属していた。所得上位20%だった人も、63.4%が2019年に同じ所得区分に属していた。所得水準に変化がない人は、これら両端において多かった。当然に予想されるように、25才の人の場合は、相対的な所得水準が大きく上昇した人が7%を占めており、35才(2%)や45才(1%)と比べて高い。こうした出入りに乏しい傾向は、同様の調査がある米国に比べてフランスでは高めとなっている。米国では、20年間を経て所得上位20%の人のうち、48%の人が引き続き同じ所得区分に属していた。フランスではこの割合は上記のように63.4%だった(16年間が対象)。 KSM News and Research -
2023.04.13
キング・ロブスターズ・ノルマンディ、オマール海老の屋内養殖に挑戦
仏ベンチャー企業キング・ロブスターズ・ノルマンディがオマール海老の養殖に取り組んでいる。ヨーロッパ・オマール(青オマールとも呼ばれる)の屋内養殖は欧州でこれが初めてだという。ノルマンディ地方のブレビルシュルメール(マンシュ県)に整備した900平方メートルの施設で、孵化と幼生の養育が始まっている。ヨーロッパ・オマールの場合、自然状態では1万匹のうち生育するのは2匹という確率だが、養殖環境において生存率を30%まで高めることを目指す。若いエビを海に戻すのではなく、そのまま育てて出荷までを担う。水質や水温の管理に加えて、共食いの問題を回避するための工夫も肝心となる。欧州向け出荷は、基準に即して8.7-9cm(400-600グラム)まで成長した個体に限られる。アジアなど輸出向けは180グラム程度で出荷する計画。500グラム程度まで生育するには3-3.5年がかかる。3年後に2万匹(10トン)の出荷を目指す。起業に当たっては80万ユーロ程度のクラウドファンディングと、50万ユーロ程度の公的援助(地域圏及び欧州連合)を得た。事業拡大のために240万ユーロの新たな資金調達を計画している。 KSM News and Research -
2023.04.13
ルフィガロ・グループ、テレビ・ラジオ業に進出
大手新聞社の仏ルフィガロ・グループは17日にテレビ局を開局する。デジタルラジオ局(DAB+規格)の放送も開始する。初めてルフィガロ名義でテレビ・ラジオ放送に乗り出す。テレビ局は、パリ首都圏(イルドフランス地域圏)のローカル局として、ローカル地デジ放送(34チャンネル)の対象となる。ケーブル、衛星、IPTV経由でも配信される。ラジオ局は、パリ、ニース、マルセイユが放送エリアとなるが、順次拡大する計画。ルフィガロ・グループはダッソー・グループ(戦闘機、ビジネスジェット製造など)の傘下。オンラインメディアとしてはユニークビジター数2000万人超の大手で、動画配信サービスも以前から展開している。今回のテレビ・ラジオ局事業にはインフラ整備などを含めてひとまず650万ユーロを投資。局の運営は、出資先であるSecom社(MyZen TV、Museumなど専門テレビ局10局程度を運営)の協力を得て行う。年間予算は600万ユーロ程度(広告・マーケティング投資除く)で、100%を広告収入とするビジネスモデルで2026-27年に損益均衡を目指す。ニュースにとどまらず、文化やニュース解説、地方色の豊かなコンテンツを売り物とする計画。 KSM News and Research -
2023.04.12
IMF、ユーロ圏の成長率を0.8%に修正
国際通貨基金(IMF)は4月11日の経済見通しで、ユーロ圏の2023年のGDP成長率を0.8%と予測した。2022年10月の見通しでは0.5%としていたが、ウクライナでの戦争を背景とするエネルギー危機の影響を各国の家計・企業向け支援措置が緩和したこと、暖冬や調達先多様化などでガスをはじめとするエネルギーの需給逼迫も懸念されたほどではなかったこと、冬季にリセッション入りを回避できたことなどを考慮し、上方修正した。国別では、フランスとイタリアで0.7%、スペインで1.5%の成長を見込んでいるが、ドイツは0.1%のマイナス成長を記録すると予測。また英国については0.3%のマイナス成長を見込んでいる。ただし、独英ともに2024年には1%以上のプラス成長に転じる見通し。2023年のインフレ率については、世界全体で7%、ユーロ圏で5.3%(ドイツは6.2%、フランスは5%、イタリアは4.5%など)、英国で6.8%と予測。2024年には減速する見通しだが、それを待ちつつ、今年も高インフレが継続するとみられる。 KSM News and Research -
2023.04.12
パリ株式市場CAC40指数、昨日最高値を更新
パリ株式市場CAC40指数が11日に最高値を更新した。同日の取引中に、同指数は一時7403.67ポイントまで上昇。3月6日に記録した7401ポイントを上回り、過去最高記録を更新した。終値も7390.28ポイント(復活祭の休暇を挟んだ6日比で0.89%増)を記録し、2022年1月に記録した最高値を更新した。CAC40は2022年年頭に最高値を更新した後、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う経済の混乱を背景に低下したが、その後は回復に転じた。3月6日に取引中の最高値を記録した後、シリコンバレーバンクの破綻を材料に低下したが、その影響を克服して1ヵ月余りを経て最高値を更新した。CAC40指数の場合、インフレ亢進の中でも問題なく価格を引き上げられる高級ブランド大手の比重が大きいことが、株価回復に貢献している。そろそろ金利引き上げの局面が終了するとの読みが市場に広がっていることも株価を押し上げる要因になっているが、この点については、安易な予想を戒める見方もある。 KSM News and Research -
2023.04.12
アルク、ガラス溶解炉の稼働を再開
仏ガラス器製造大手のアルク・インターナショナルは、エネルギー価格高騰のために稼働を停止していたガス溶解炉の稼働再開を進めている。11日にはレスキュール産業担当相が北仏アルク市(パドカレー県)にある工場を訪問。1000万ユーロの融資を同社に行うことを明らかにした。アルク工場では、8つある溶解炉(いずれもガス稼働)のうち、昨年秋に5つが稼働を停止していた。同工場は年間130万MWh相当のエネルギー(うち8割近くがガス)を消費するが、2021年には1MWh当たり13ユーロだったガス価格が、昨年には200ユーロにまで高騰し、操業の中断に追い込まれていた。ガス価格が鎮静化に向かったことで、このほど操業再開に着手。現在は6基が稼働中、1基が稼働再開を準備中で、1基がメンテ中となっている。同工場は従業員が4500人で、業種を問わずにフランスで8番目の規模の工場であるという。アルク・インターナショナルは、経営難の末に、2015年に米国の投資ファンドPHPの傘下に入った。地元の雇用に及ぼす影響も配慮し、政府は新型コロナウイルス危機以来の2020年以来で、アルクのフランス事業に合計で1億3850万ユーロの融資を行った。今回、PHPによる設備投資を2倍とする目的で1000万ユーロの追加融資を行ったが、レスキュール産業担当相はこの融資について、エネルギー移行を支援するためのものだと説明している。 KSM News and Research -
2023.04.11
仏政府、完全雇用の達成を目指す法案について近く公表へ
政府は近く、完全雇用の達成を目指す法案の骨子を公表する見通し。労使との協議を経て内容を詰める方針。年金改革を巡り、政府と労組との間の関係は極めて悪化した。年金改革の反対運動はまだ終息していないが、政府は、年金改革後の労組との関係改善の起点として、雇用関連法案の協議を進める意向で、協議への参加を呼びかける。年金改革の交換条件として労組に対して譲歩を示す機会となることも考えられる。法案の具体的な内容についてはまだ明らかになっていない。これまでに報じられたところでは、従業員への利益分配の強化が一つの柱となり、この問題で結ばれた労使合意の内容を反映させる法改正が進められる見通し。ポール・アンプロワ(ハローワーク)を新機関「フランス・トラバイユ」に改組する方針も決まっており、国や自治体が失業者の就業支援で協力する足場となることなどが期待されている。週4日労働制の試験導入などのテーマも扱われる見通し。 KSM News and Research -
2023.04.11
書籍配達の送料最低限、3ユーロに引き上げへ
政府は7日付の官報上に、書籍配達の送料最低限の引き上げを盛り込んだ省令(アレテ)を公示した。10月7日以降、35ユーロ未満の注文について、送料最低限を3ユーロに引き上げる。35ユーロ以上の注文については引き続き1ユーロセントが最低限となる。政府は、電子商取引大手の攻勢から独立系の書店を保護する目的で、送料最低限の引き上げを昨年9月に予告していた。欧州委員会からの許可が去る2月に得られたことから、ようやく公示の運びとなった。最低限引上げを巡る関係者らとの協議では、独立系書店の連合会側が4.5ユーロを要求。フナックなど仏大手は2ユーロを主張した。アマゾンは「可能な限り低い」水準にすべきだと主張。政府は、足元のインフレ亢進にも配慮し、中間をとって3ユーロという額に設定した。書店連合会のSLFは、この送料引上げを「最初の重要な一歩」として歓迎したが、35ユーロ以上の注文で送料の最低限がほぼゼロのまま抑え込まれていることを問題視した。なお、フランスは独立系の書店の数が全国に3500を数え、世界でも最も密な書店網が展開されている。販売される書籍のほぼ半数が独立系書店経由だという。2022年には全国で142店が新規に開店した。 KSM News and Research -
2023.04.11
中学教諭サミュエル・パティさんの斬首事件、検事局が14人の起訴を請求
2020年10月に発生した中学教諭サミュエル・パティさんの斬首事件で、事件の捜査を進めてきた全国管区テロ事件検事局(PNAT)は7日、未成年者6人を含む14人の起訴を請求した。パティさんは、公民教育の授業の一環でイスラム教の預言者ムハンマドの戯画を扱ったが、これがSNS上で強いバッシングの対象となり、それがきっかけとなって、チェチェン出身の難民で、イスラム過激化を強めていた18才の男性により殺害された。犯人は警官隊により射殺された。事件は強い衝撃を与え、内外に波紋を招いた。PNATは、犯人の武器調達に協力したり、事件当日の移動に力を貸すなどした2人の友人について、テロ協力の容疑で起訴を請求した。SNS上のバッシングを主導していたイスラム教宣教師と、パティさんの生徒の父親、そして犯人とネット上で連絡を取り合っていた人物も起訴が請求された。これら3人は、パティさんの特定を可能にする情報を流布するなどして、犯行を可能にした点を追及されているが、罪状にテロ協力の容疑は追加されなかった。これ以外では、ネット上でテロ扇動の言説を展開していた3人の起訴が請求された。未成年者では、パティさんについて虚偽の告発をして、事件の発端をつくった女子生徒(授業当日に欠席していたにもかかわらず、「イスラム教徒は教室の外に出ろとパティ氏が命じた」などと証言)が、父親と同様に起訴を請求された。あとは、犯行当日に、校門前で、犯人に金銭をもらってパティ氏に関する情報を提供していた5人の生徒の起訴が請求された。未成年者の6人は、未成年者の特別法廷で非公開にて裁判を受けることになる。 KSM News and Research -
2023.04.07
企業倒産、目立って増加
フランス中銀が6日に発表した統計によると、3月の企業倒産件数は前年同月比で49%の大幅増を記録した。3月までの12ヵ月間の倒産件数は4万5120件となり、その前の12ヵ月の3万285件と比べて目立って増加した。新型コロナウイルス危機前の2019年通年の5万1000件に比べるとまだ少ないものの、危機に伴う援助措置により抑え込まれてきた倒産が、通常の水準に復帰しつつあることを印象付けた。企業倒産は、従業員数50人超の中小企業にも広がっており、その倒産件数は1年間でほぼ2倍に増えた。飲食・外食業、工業、商業、不動産で倒産が目立つ。援助のおかげで延命してきた企業の淘汰が進んでいることに加えて、インフレ亢進や需要の低迷といった足元の問題の影響も浸透してきた。ファイナンスの条件が厳しくなったことも影響している。危機時に公的保証の伴う銀行融資制度PGEを利用して資金を借り入れたが、その返済に行き詰まる企業が増える可能性もあり、専門家の多くは、倒産件数が危機前を上回ると予測している。アリアンツ・トレードでは、2023年通年の倒産件数を5万9000件と予想している。 KSM News and Research -
2023.04.07
マクロン大統領、中国を公式訪問
マクロン大統領は4月7日に中国の公式訪問を終了する。大統領は国賓待遇で5日より3日間に渡り中国を訪問。大統領が最後に中国を訪問したのは3年余り前に遡る。今回は、欧州委員会のフォンデアライエン委員長も大統領に同行した。マクロン大統領は、今回の訪中において、特にウクライナ問題に関する中国との協力関係の構築に意欲を示していた。大統領は訪問前に、「ロシアを正気に返らせる」上で中国の役割に期待すると言明していた。両国の首脳会談後に中国の習国家主席は記者会見で短いメッセージを読み上げたが、従来の中国の姿勢と比べて大差ない表現に終始した。「新たな状況の悪化を招きうる行為を一切控えて、和平の協議をできる限り早く行う」よう国際社会に向けて「フランスと共に呼びかける」旨を確認したのが新しい要素だったが、具体性や拘束力には乏しい表現となった。中国側はまた、ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備するとした発表を非難することにも応じなかった。両国の首脳会談後に、欧州委のフォンデアライエン委員長も交えた三者会談が行われたが、委員長は会談後の記者会見で、マクロン大統領よりも厳しい調子で、「中国が直接・間接にロシアに軍備を提供しないことを望む」と言明。中国と欧州の間の貿易不均衡や投資障壁についても是正が必要だと言明した。なお、マクロン大統領には、企業の代表らが多数同行し、訪問の機会に一連の合意や契約の締結がなされた。エアバスは、中国の航空機リース会社から160機(A320シリーズが150機、A350-900が10機)の受注を正式に獲得。中国の天津工場において組み立てラインを1つ追加することを決定した。2025年までに生産ペースが2倍に引き上げられる。仏海運大手CMA CGMは、中国におけるバイオメタノール・Eメタノール燃料の調達について上海港の運営主体などとの間で合意。仏スエズ(環境サービス)は、万華化学集団(Wahnua Chemical)との間で、淡水化水の供給に関する合意を結んだ。EDF(仏電力)は、CGN(中国広核集団)との原子力発電分野の提携合意を更新し、洋上風力発電分野で、CHN Energy(国家能源集団)及びSPIC(国家電投)と提携合意を結んだ。仏GTT(エンジニアリング)はPipeChina(国家石油天然気管網公司)との間で、メンブレンLNGタンクの製造に関して提携合意を結んだ。仏化粧品大手ロレアルは、電子商取引大手アリババとの提携合意や、上海へのインキュベーターの設立などを決定した。 KSM News and Research -
2023.04.07
長寿の秘密は高学歴
5日発表のINSEE統計によると、2023年時点で国内の100才以上の人の数は3万人に上った。1960-75年代と比べて30倍近くに増えた。100才以上の人のうち、男性は4300人のみで、これは全体の14%に相当する。100才の時点で、半数の人は自宅で生活しており、残りの半数が施設で生活している。男性の場合は配偶者と共に生活していることが多く、自宅で生活する人が占める割合も女性より高くなっている。100才になる人は高学歴者に多い。1990年に70-75才だった女性のうち、学卒者では、7%が100才まで生きたが、非学卒者で100才まで生きた人の割合は3%と低い。1980年に60才だった人のうち、2020年に100才を迎えた人の割合は2.1%だった。この割合は欧州諸国中で最も高い。この割合は今後も上昇を続ける見通しで、1940年生まれの人のうち、2040年まで生きて100才を迎える人が占める割合は、女性で6%、男性で2%に達する見込み。2040年時点の100才代の人の数は7万6000人に達する見通し。 KSM News and Research -
2023.04.06
エネルギー移行、物価・経済成長への影響は=中銀予想
フランス中銀は5日、炭素課税強化などの政策に由来する物価上昇効果と国内総生産(GDP)への影響に関する推計を公表した。5年間の推移を予想した。この推計では、エネルギー移行等の取り組みをどのように行うかについて4つのシナリオを定め、まったく取り組みをしなかったと仮定した場合との比較で、インフレ率と国内総生産がどのように推移するかの把握を試みた。これによると、将来の展望を示さずに炭素課税を急激に引き上げた場合にネガティブな影響は最も大きくなる。5年後の時点で、インフレ率は0.6ポイント分の上昇を記録し、国内総生産は1.1ポイント分押し下げられる。公共部門がグリーン投資を大幅に増やすと仮定した場合のシナリオでは、5年後の時点で、インフレ率が0.2ポイント分の上昇を記録し、国内総生産には1.6ポイント分の押し上げ効果が得られる。ただし、インフレ率の押し上げ効果は、1年3ヵ月後に1.8ポイント分近くと、短期的には物価を大きく押し上げる影響を及ぼす。技術革新を民間部門が積極的に取り入れ、同部門のグリーン投資が大幅に拡大すると仮定した場合のシナリオでは、5年後にインフレ率が0.8ポイント分押し下げられることになり、国内総生産は逆に0.8ポイント分押し上げられる。ここでは、民間投資の増大が個人消費を締め出す効果をもたらし、インフレ率を押し下げることになるという。中銀は、いずれにせよ、前もって展望を示した上で、秩序ある形で信頼性の高い政策を推進することが大切であり、そうすれば急激な影響を避けられると指摘している。 KSM News and Research -
2023.04.06
世界資産家ランキング、男女ともフランス人がトップに
米フォーブス誌が発表した世界資産家ランキングによると、2023年の世界首位は仏高級ブランド大手LVMHのアルノーCEOとなった。女性に限ると、首位はやはりフランス人のフランソワーズ・ベタンクールメイエール氏(化粧品大手ロレアルの創業一族)だった。男女ともトップがフランス人であるのはこれが初めて。アルノー氏は推定純資産額が2110億ドルとなり、イーロン・マスク氏の1800億ドル、ジェフ・ベゾス氏の1140億ドルを抜いてトップになった。ベタンクールメイエール氏は推定純資産額が805億ドルで、これが4年連続5回目の首位となった。同氏は全体では世界第11位の資産家であり、フランスではアルノー氏に次ぐ第2位。フランス人の資産家ランキングでは、第3位に、高級ブランド大手ケリングの創業者フランソワ・ピノー氏が400億ドルで続いた(世界ランキングでは28位)。4位と5位はシャネルのオーナーであるベルテメール兄弟で、トップ5までは全員がブランド関係の資産家となった。以下、6位は乳業大手ラクタリスのエマニュエル・ベスニエCEO、7位はエルメス(高級ブランド)の創業家のニコラ・ピュシュ氏、8位から10位までは海運大手CMA CGMの現ロドルフ・サーデCEOをはじめとするサーデ一族が占めた。11位のバンサン・ボロレ氏はメディア大手ビベンディなどを保有する動きが派手な資産家で、純資産額は推定で95億ユーロに上る。 KSM News and Research -
2023.04.06
フランス人が好む小売業ブランド、蘭アクションが首位に躍進
経営コンサルティング大手EYパルテノンがフランスで毎年実施している小売業ブランドの人気調査によると、2023年にはアクション(Action)が首位に躍進した。同社はオランダのディスカウントストアチェーンで、高インフレによる購買力の低下を背景に業績が急伸中。2020年には9位だったが、2021年に7位、2022年に3位と着実に消費者の支持を得てきた。なお調査は1月に9300人の消費者で構成されるパネルを対象に実施された。2位の仏デカトロン(スポーツ用品販売)と3位の仏ルロワメルラン(ホームセンター)は、このランキングの常連で、毎年首位を競ってきたが、今年は世相を反映して、ディスカウントストアが遂にトップに躍り出た。ただし、アクションは単なる安売り店ではなく、毎週のように品揃えを入れ替えて、顧客に買い物の楽しさも提供するという工夫を行っている点も評価されている。なお、外国勢ではほかに、米マクドナルド(ファーストフード)が4位、米アマゾン(オンライン販売)が6位、スウェーデンのイケア(家具)が8位にそれぞれランクされた。 KSM News and Research -
2023.04.05
管理職採用数、2023年も過去最高の前年並みを維持へ
APEC(管理職雇用協会)が発表した調査結果によると、2022年の管理職採用数(無期雇用契約又は1年以上の有期雇用契約)は30万8300人となった。新型コロナウイルス危機直前の2019年の28万1300人を上回り、ウクライナ危機やインフレ亢進などの混乱をよそに過去最高の水準に達した。2023年の同採用数は30万8800人と同程度の水準を維持する見込み。2022年には、内部昇進の管理職も6万3500人となり、前年比で14%の大幅増を記録した。その一方で、管理職の退職数(辞任、解雇等、定年退職)は29万2000人と、こちらも過去最高を記録。これが採用数を押し上げる要因ともなっている。全体として、管理職の総数は8万人余りの純増を記録したが、こちらは2001年の記録(10万人増)には及ばなかった。部門別では、情報処理、エンジニアリング、コンサルティング、法務、会計など、高付加価値のサービス業で採用が目立った。今年は特に、35才未満と1-10年程度の経験者の需要が大きいという。 KSM News and Research -
2023.04.05
ロレアル、高級化粧品ブランド「イソップ」を買収
仏化粧品大手ロレアルがオーストラリアの高級化粧品ブランド「イソップ」を買収する。ブラジルのナトゥラ&Coから25億ドルで買収する。イソップは1987年にオーストラリアで美容師のデニス・パフィティスが設立。材料を厳選して絞り込み、高い効果を売り物にしたスキンケア製品で定評がある。2013年にナトゥラ&Coが6800万ドルで買収。それ以来、国際展開を強化して今日に至っている。ナトゥラ&Coは2017年にロレアルからザ・ボディショップ(自然派化粧品)を買収しており、ロレアルとは以前から縁がある。ロレアルは従来、企業買収においては、より規模の小さな成長株の企業をターゲットとしてきたが、今回は、評価が定まった高級品ブランドの買収に動いた。2021年5月に就任したイエロニムスCEOの下での企業買収としては最大規模となった。ロレアルは、イソップの中国展開などを後押しして成長の加速を狙う。ロレアルの高級品事業「ロレアル・リュクス」は、2022年に146億ユーロの売上高(グループ全体の売上高は380億ユーロ)を挙げて、2年連続で最大の事業部門となっている。今回の買収で一段と高級品事業が強化される。 KSM News and Research -
2023.04.05
フィンランドがNATOに正式に加盟、スウェーデンはトルコとの関係がさらに悪化か
フィンランドは4月4日、北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。加盟国は31ヵ国となった。ブリュッセルのNATO本部で開催された加盟式典にはフィンランドのニーニスト大統領と、ブリンケン米国務長官をはじめとする既存加盟国の外相が出席した。なお、4月4日はNATOの設立(1949年4月4日)記念日でもあり、ストルテンベルグ事務総長は歴史的な日だと強調した。フィンランドは20世紀に2度にわたり旧ソ連による侵攻を受けた歴史があるが、冷戦終了後も中立を維持し、欧州連合(EU)には加盟したが、NATOには加盟していなかった。しかし2022年のロシアによるウクライナ侵攻を機にロシアの脅威に対する危機感を強め、スウェーデンとともにNATOに加盟を申請していた。フィンランドは隣接するロシアと長い国境を共有し、軍備も充実しているため、NATOの東進を防ぐことを課題としてきたプーチン大統領にとって、フィンランドのNATO加盟は戦略的な失策だと受け止められている。ロシアのペスコフ大統領報道官は3日、フィンランドのNATO加盟を、ロシアの安全と国益に対する攻撃だと形容し、戦術的および戦略的な対抗策を講じざるを得ないと警告した。スウェーデンの加盟については、トルコとハンガリーが承認に難色を示しているが、ストルテンベルグ事務総長とニーニスト大統領は両国に対してスウェーデンの加盟承認を呼びかけ続ける意向を表明した。なお、スウェーデンとトルコの間では、トルコがテロリストと認定するクルド人活動家の引き渡しをめぐる対立のほかに、イスラム教の扱いをめぐる対立もある。スウェーデンでコーラン(クルアーン)焚書を伴う反トルコ抗議行動が1月に実施されたこともトルコの逆鱗に触れて外交問題に発展している。スウェーデンの警察はその後、コーラン焚書がテロ襲撃を招く恐れがあるとして、これを禁止してきたが、表現の自由を侵害するものだとの異議申し立てがあり、4月4日、行政控訴院は、焚書禁止には十分な根拠がないとの理由で、これを廃止する決定を下した。今後の抗議行動で焚書が行われれば、トルコとの関係はいっそう緊張を強め、NATO加盟の実現が遅れるリスクがあるとみられている。 KSM News and Research -
2023.04.04
プーマ、メイド・イン・フランスのコレクションを展開
独スポーツ用品大手プーマは、フランスにおいて、完全メイド・イン・フランスのスポーツウェアコレクション(Tシャツ、スウェット、トレーニングウェアなど)を4月4日に発売する。アルデシュ県のChamatex(テキスタイル)と提携して、デザインから縫製・製造まで全ての工程をフランス国内で行う。地産地消型のビジネスモデルの展開により、地元産業振興への貢献とCSRへの取り組みをアピールする。販売はスポーツ用品販売大手Intersport(本社はスイス)を通じて行う。フランスでの製造はコストが嵩むが、その一部はプーマとIntersportが折半で負担し、一部は価格に転嫁されるという。今回のコレクションでは数万着の販売が予定されるが、成功すれば、さらに製品を増やしたり、販売網を拡大することも想定している。将来的にはシューズも対象とする可能性があるという。 KSM News and Research -
2023.04.04
ルメール経済相、工業部門グリーン化の法案提出を予告
ルメール経済相は3日、工業部門のグリーン化に関する会合を開いた。1月に設置した5つの作業部会がまとめた提言を公表した。経済相は、グリーン化の推進を工業部門の振興を図る好機と位置付け、提言の内容を踏まえて5月にも関連法案を閣議決定すると予告した。2024年年頭の施行を目指す。目玉となるのが、グリーン化推進のための税額控除(タックスクレジット)制度の導入で、脱炭素化のプロジェクト(電解槽、バッテリー、ヒートポンプ、風力・太陽光発電、二酸化炭素回収・貯留)と、既存産業施設へのグリーン化技術のフルターンキー方式による導入が支援の対象となる。ただし、政府は、支援措置を、財政収支の悪化を招かずに導入する方針で、財源は、「フランス2030」投資プランの按分見直し以外では、非グリーン分野への課税強化により賄われる。具体的には、燃料減税措置の制限、フリートの車体税の課税強化などが検討されている。さらに研究税額控除(CIR)の縮小も検討されているという。これ以外では、新たな施設の建設許可取得までの手続きの期間の短縮(18ヵ月から9ヵ月へ)、公共調達の拡大(環境先進性の基準制定により入札時にコスト以外の基準を重視する)、新技術分野の人材育成の強化、などの方針が提言された。 KSM News and Research -
2023.04.04
マクロン大統領、「死への対応」協議会の提言に即した法律制定を約束
マクロン大統領は3日、死への対応に関する国民協議会の報告書を受け取った。今夏にも法案を策定すると約束した。死への対応に関する国民協議会は、くじ引きで選ばれた184人の市民により構成された特別諮問機関。労使や学識経験者などにより構成され、「第3の議会」とも呼ばれる「経済・社会・環境評議会(CESE)」を運営組織として、2日まで審議を行い、報告書を策定した。国民協議会における採決では、一定の条件の下で末期的な患者の自殺ほう助又は安楽死を認めることに76%が賛意を表明しており、報告書は法令の整備を勧告していた。マクロン大統領は、上下院の議長がそれぞれ指名する議員をまとめ役として、国会議員の間で議論し、また、関係各方面と協議した上で、国民協議会の勧告に沿った形で法案の策定を進めると約束。今夏前の法案提出に向けた意欲を示した。大統領はまた、報告書が指摘したターミナルケアの対応力の不足について、10ヵ年計画の下で拡充に努めると約束した。大統領はまた、国民協議会の有用性が今回の議論で確認されたとし、同様の枠組みを他の問題を検討する上で用いる考えを示した。数週間以内に、具体的な請求を経済・社会・環境評議会(CESE)に対して行うと予告した。 KSM News and Research -
2023.04.03
次世代空母の建造計画、予定通りに推進へ
ルコルニュ軍隊相は2日、ルパリジャン紙とのインタビューの中で、次世代空母の建造計画に予定通りに着手すると予告した。2025年末から2026年初頭にかけて、建造計画を正式に開始する。軍隊相は、ウクライナにおける戦争と様々な国際的緊張が生じている世界情勢を鑑みて、次世代空母の建造は必要不可欠であると説明した。予算総額は50億ユーロ程度。7万5000トン(現行空母シャルルドゴールは4万2500トン)の規模となり、2036-37年に試運転を行い、2038年頃に就役する計画。軍隊相は、「ナバル・グループ、テクニカトム、アトランティック造船所」が建造すると言明しており、シャルルドゴールと同様に原子力空母となる。政府は4日に、2024-30年を対象とする軍事大綱法案を閣議決定する予定で、同法案には4130億ユーロの軍事予算が盛り込まれる見通し。2030年時点で軍事予算は2017年比で2倍に増額される。軍隊相は、2023年の軍事予算について、追加で15億ユーロの増額を得たと言明。既定の30億ユーロの増額幅に15億ユーロが上乗せされることになる。 KSM News and Research -
2023.04.03
主要労組CGT、新書記長にビネ氏(女性):アウトサイダーを選出
主要労組CGTは3月31日、第53回組合員大会を閉幕した。新書記長にソフィー・ビネ氏を選出した。意外な人選となった。CGTは抵抗派・強硬派の労組という立ち位置だが、運営方針を巡っては組合内で対立もあった。退任するマルティネーズ書記長が提出した活動報告は、投票で過半数の賛成が得られずに承認が拒否されるという異例の事態に発展。組合運営における民主制の欠如を批判する声や、環境派との共闘に対する反対意見が根強く、また、他の労組(FSU、ソリデール)との統合という展望にも強い反発を示す勢力があった。足元の年金改革反対運動では、現実路線の労組CFDTのベルジェ書記長が提案した「政府との調停」にマルティネーズ書記長が賛意を表明したが、組合内の強硬派はこれに強く反発していた。マルティネーズ書記長は次期書記長としてビュイソン氏を推していたが、ビュイソン氏は指名争いで脱落した。書記長の選出は執行部の人選とセットでなされることから、組合の構成組織の間の荒れ模様の交渉を経て、アウトサイダーだったビネ氏が書記長就任を果たした。ビネ氏は41才、管理職組合のトップを務め、教育省に勤務している。CGTの書記長に女性が就任するのはこれが初めて。執行部代表には、マルティネーズ書記長に批判的だった鉄道部門労組トップのブラン氏が就任。強硬派が書記長候補として推していたベルゼレティ氏(公務員部門労組のトップ)も執行部入りを果たした。ビネ新書記長は抱負として、組合内の結束を高めることと、年金改革反対運動を力強く進めることの2点を掲げた。労組連合による年金改革反対の動きにこの人選がどのような影響を及ぼすかが注目される。 KSM News and Research -
2023.04.03
1万8000年前の女性器の絵、南仏で発掘
南仏の発掘現場から、先史時代の人類が残した遺物が出土した。女性器の絵を刻んだ石板も見つかった。この発掘は、南仏ガール県のベルガルド市内で2016年に行われた。ローヌ川の西岸、ニーム市とアルル市のちょうど中間に位置する場所で、廃棄物処分場の造成に先立ち行われた考古学調査により、後期旧石器時代の石器や、絵画が描かれた石板が見つかった。女性器の石板は掌ぐらいの大きさの石灰岩で、1万8000年前のものと推定される。「山」という漢字を、曲線を多くして書き直したような形の図案と、その両側にそれぞれ2本の平行線のようなものが描かれている。平行線は左右の脚部を象ったものと考えられる。1万8000年前という時代は、ラスコー洞窟壁画とほぼ同時代といい、この時代に描かれた女性器の絵と共通性があるが、2本の脚の間に女性器を描いた例はこれが初めての発見であるという。同じ発掘現場からは、さらに古く、2万2000年前に描かれた馬など動物の石板も発見されたが、土中に突き刺すような形で見つかった石と石板の断面が一致することから、絵画を描いた石を地面に立てていたと考えられる。洞窟以外で絵画が行われた例は乏しく、新たな光を投げかける発見となった。 KSM News and Research -
2023.03.31
モーリス・ラベルの病気の真相に迫る新刊本
20世紀フランスを代表する作曲家モーリス・ラベル(1875-1937)が晩年にかかった病気について考察する新刊書「ラベルの脳」(オディル・ジャコブ社)がこのほど刊行された。限局的脳萎縮症という診断を下した。脳科学分野の専門家であるルシュバリエ、メルシエ、ブラデルの3氏が共同で執筆した。ラベルは1930年代に入り、原因不明の病気になり、それ以来、1937年に死去するまで作品を発表していない。3氏は、ラベルが残した書簡において段階的に明確になってゆく病状の進行などを分析した上で、限局的脳萎縮症のため、思考や楽想を言葉や記号として表現する能力を失っていったものと推定している。これは、晩年のラベルの頭脳の中に、我々が決して聞くことができなかった音楽が閉じ込められていたことを意味している。また、ミニマリズムの先駆のような傑作「ボレロ」(1928年)が、狂気の兆候などではなかったことも意味している。ラベルは神経学者のテオフィル・アラジョアニヌの診察を受け、失語症など脳神経学的な疾患とする診断を得ていた。この診断は、3氏による鑑定結果とも一致する。診察においてラベルは、自作の演奏の小さな誤りなどを逐一指摘することができたが、メロディを口述することなどは一切できなかった。ラベルは1937年、脳腫瘍の疑いで脳外科医クロビス・バンサンの執刀による手術を受けたが、腫瘍は発見されず、その数日後に死亡した。 KSM News and Research -
2023.03.31
ユーロ圏のインフレに減速の兆し
ドイツとスペインの3月のインフレ率が前月と比べて顕著に減速し、ユーロ圏のインフレが峠を越したとの見方が強まった。独連邦統計局(Destatis)の速報によると、ドイツのインフレ率は3月に前年同月比で7.4%となり、1月と2月の8.7%を下回った。また欧州連合(EU)の基準によるインフレ率は3月に7.8%となり、2月の9.3%をやはり下回った。3月の消費者物価動向を部門別に見ると、エネルギー価格の上昇率(年率)が3.5%にとどまり、大きく減速したことが目立つ(1月には23.1%、2月には19.1%の上昇を記録)。一方、食料品価格の上昇率は22.3%と高止まりしており(1月に20.2%、2月に21.8%)、インフレを牽引する最大の要因となっている。またスペインの国立統計局(INE)の速報によると、同国のインフレ率は3月に前年同月比で3.3%となり、1月の5.9%、2月の6.0%を大きく下回った。INEによると、2022年3月にはウクライナでの戦争の影響で電力・燃料価格が急騰し、これとの比較で、2023年3月には低下を記録したことが、インフレの減速につながった。EU基準のインフレ率は3月に3.1%となり、前月と比べて3ポイント低下した。ただし、エネルギー価格など変動の大きい要因を除外したコアインフレ率は7.5%に達しており、2月と比べて0.1ポイント低下したものの、高止まりしている。欧州中央銀行(ECB)のレーン理事(チーフエコノミスト)は3月29日、独ツァイト誌とのインタビューで、原材料などの価格圧力が製品の最終価格に転嫁されると同時に賃上げも加速しており、ユーロ圏のインフレはおそらく最も強度が大きい段階にあるとの見方を提示した上で、年末にかけてインフレは大きく減速すると予測した。ECBは2022年7月以来で3.5ポイントの利上げを実施したが、今後もインフレ抑制のための追加利上げを実施する方針を示唆している。 KSM News and Research -
2023.03.31
仏総人口の10.3%が移民=2021年統計
INSEEは3月30日、移民に関する統計を発表した。2021年の数値と、2010年の初回調査時などと比較した。これによると、移民(外国で生まれた外国人で、フランスに居住する者。帰化の有無は問わない)は2021年に700万人程度となり(うち36%はフランス国籍を取得)、全人口の10.3%を占めた。この割合は、1968年に6.5%、2011年に8.6%だった。2000年以来、人口の自然増のペースと比べて移民の流入がより大きく、移民が人口に占める割合が増大している。移民の構成では、北アフリカ系及びアフリカ系が占める割合が増大しており、女性や学卒者も増えている。移民、特に欧州連合(EU)加盟国外からの移民は、全体として雇用状況が厳しい。失業率は13%と、フランスの全体の失業率である8%よりも高い。賃金水準もより低く、低資格の雇用において採用されることが多い。生活条件や住居、健康状態も、国民全体の平均と比べて劣っている。移民の生活水準は、非移民と比べて22%低い。第2世代になるとこの格差は縮まり、両親とも移民の場合では19%、両親の片方が移民の場合で6%にまで小さくなる。なお、移民2世以降(18-59才)のうち、不平等な扱いを受けたと答えた人は25%に上る(非移民では14%)。 KSM News and Research -
2023.03.30
英国のチャールズ国王、ドイツを訪問
英国のチャールズ3世国王は3月29日、3日間の日程でドイツの公式訪問を開始した。訪問には、英国の欧州連合(EU)離脱後に冷え込んだ大陸欧州諸国との関係を修復するという狙いがある。チャールズ国王は当初、即位後の初の訪問先としてフランスを選択し、その後にドイツを訪れる予定だったが、フランスが年金改革反対の抗議行動で混乱している状況を考慮して訪仏を断念し、まずドイツを訪問した。国王はシュタインマイヤー大統領とともにベルリンのブランデンブルク門を訪れ、ウンターデンリンデン通りに集まった群衆に挨拶した。国王はまた、ベルビュー宮殿(大統領官邸)での夕食会における演説で、英独が協調して民主主義の価値を擁護し、ウクライナと連帯することを呼びかけた。30日には連邦議会での演説、ショルツ首相との会談、ウクライナ難民との会合、有機農場の見学などが予定されている。 KSM News and Research -
2023.03.30
政府、電動キックスケーターの規制強化を予告
政府は電動キックスケーターの規制強化を検討している。ボーヌ運輸担当相が29日に規制案を公表した。これによると、公道での電動キックスケーターの運転が認められる最低年齢が、12才から14才へ引き上げられる。また、禁止区域の走行と二人乗りについて、罰金額を35ユーロから135ユーロへ引き上げる。運輸担当相は、事故の2割が二人乗り時に発生しているとし、危険な行為を抑止することに努めると説明した。その一方で、ヘルメットの着用義務付けについては、コンセンサスが得られていないとして導入を見送ったが、将来的に導入する可能性は否定しなかった。同相は同時に、電動キックスケーターの利用者の2割が、汚染の伴う移動手段を放棄してキックスケーターを選んだことを挙げて、行き過ぎた規制もまた望ましくないと言明した。同相はまた、新モビリティの事故統計を作成し、原因を分析して対策を検討する目的で新機関を設置すると予告。政治家やNGO、業界などの代表に参加を求めるとした。シェアリング事業者については、改善のための取り組みへの貢献を求めるとし、ユーザーの年齢確認や違反行為の通報などを含めた努力を促す方針を示した。そのための憲章を制定し、事業者に署名を求める。 KSM News and Research -
2023.03.30
ノルマンディ地方で消えた鐘
ノルマンディ地方の町で文化財に指定されている鐘が盗難された。600kgに上る鐘が行方不明となり、住民らは困惑している。問題の鐘はマンシュ県ラエーペスネル町(人口1200人)にあった。町の所有物として、教会の前の広場に設置された台座の上に置かれていた。この鐘は大革命期に当たる1793年に、倒壊の懸念があった教会の2つの鐘を溶かして鋳造し直されたもので、革命政府時代の碑文が刻まれていた。27日の朝になくなっているのを町の職員が発見し、ナバレ町長が警察に盗難届を出した。復活祭(今年は4月9日)も近く、復活祭には鐘がローマに飛んでゆき、祭りが終わると戻ってくるという俗信もあることから、町民からは、「最初は冗談かと思った」という声も聞かれた。犯行の動機は不明だが、現在のブロンズの価格に照らすと、鐘の資源としての価値は4000ユーロ弱といい、それが目的なら、すぐに切断され、転売されてしまうだろうとナバレ町長は残念がっている。当局は捜査を開始し、ある手がかりを探っているというが、詳細は明らかにされていない。町の中心からこれだけの重量物を誰にも知られずに運び出すのは困難であり、状況には何かと謎も多い。言い伝えが本当なら、復活祭が終われば戻ってくるかもしれない。 KSM News and Research -
2023.03.29
仏政府、加工肉における亜硝酸塩の使用制限に着手
仏政府は28日、加工肉における亜硝酸塩の使用制限プランを公表した。20%の削減を国内生産品に対して求める。亜硝酸塩は保存剤として、また発色剤として、ハム・ソーセージなどの加工肉に用いられる。発がん性の疑いが以前から指摘されており、仏食品安全当局ANSESも昨年夏に使用量の削減を勧告していた。政府はそれに沿って、新たな削減プランをまとめた。具体的には、ハム(加熱食肉製品)とベーコンについて、1ヵ月以内に現行上限比で20%削減の達成を求める。対象製品は消費の50%を占めるという。その他の加工肉については、製品により6ヵ月から1年間以内に達成を求める。基準は仕様書内に規定され、国による検査の対象となる。大手メーカーは既に自主的な努力を通じて新たな規制値をほぼクリアしているという。中小企業の場合にはより厳しい対応が求められることになる。政府は続いて、新たな使用量の削減の可能性の検討に着手する計画で、5年以内に全廃する可能性も検討し、調査研究を推進する。食品安全性を確保しつつ全廃を可能にする代替的な手段を検討する。また、新たな努力を求められる中小企業のための支援措置も講じる。業界団体側は新規制を前向きに受け入れているが、欧州連合(EU)より踏み込んだ規制の導入であり、EU加盟国からの基準超えの製品の輸入を排除できない点を指摘。EUレベルでの規制とするべく働きかけるよう、政府に対して求めている。他方、環境派などは、使用量削減では不徹底であり、全廃の道筋を示せと要求している。 KSM News and Research -
2023.03.29
EUの新車ゼロエミッション化法案、最終的に採択:充電設備の整備目標でも合意
欧州連合(EU)は3月28日のエネルギー相理事会会合で2035年に新車販売をゼロエミッション化することを定めた法案を最終採択した。決議は特定多数決で行われ、27ヵ国中でポーランドのみが反対し、イタリア、ルーマニア、ブルガリアは棄権した。同案は実質的に現行のガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の新車販売を禁止するものだが、これに異議を唱えたドイツの要求をいれて、合成燃料のみを使用することを条件にエンジン車の新車販売も許可することで合意が成立、ドイツの支持を得られたことで最終的な採択にこぎつけた。新車を完全にゼロエミッション化するという基本方針に変更はなく、多くの専門家は、合成燃料は一部の高級エンジン車で使用されるのみにとどまり、広く普及する可能性は薄いと判断している。これと並行して、欧州議会とEU理事会は28日、域内のEV充電ステーションと水素ステーションの整備に向けて、最低限の義務的目標を設定することで合意した。EV充電ステーションについては、まず2026年までに域内の主要高速道路の全てにおいて400kW以上の充電ステーションを60kmごとに設置することを義務付け、他の高速道路でも2030年までに60kmごとの設置を義務付ける。トラックやバスなどの大型車むけには、やはり2026年までに主要高速道路に1400-2800kWの充電ステーションを120kmごとに設置することを義務付ける。水素ステーションについては、2031年までに、幹線道路において200kmごとに設置することを義務付ける。 KSM News and Research -
2023.03.29
仏大手銀行5行、「CumCum」脱税疑惑で捜索の対象に
仏検察当局は28日、大手銀行5行の捜索を行った。「CumCum」と呼ばれる脱税事件の捜査の一環で、大がかりな捜索を実施した。報道によれば、ソシエテジェネラル、BNPパリバ、エクサーヌ(BNPパリバ子会社)、ナティクシス(BPCE銀行傘下)、HSBCフランスの5行が対象となった。この事件は、調査報道によるリークを経て2018年に浮上した。「CumCum」とは、外国投資家には配当金課税がなされないことを悪用した節税手段で、配当金の支払い時に貸株取引等を通じて外国に株式を移転し、配当後にもとに戻すという形で納税を回避する。納税回避分は関係当事者らの間で山分けされる。PNF(全国管区金融犯罪検事局)はこの件で2021年12月に予備捜査を開始。今回、ドイツのケルン地検との捜査協力の下で大規模な捜索を実施し、大量のデータを押収した。銀行各社は「CumCum」脱税の手配に協力した疑いがもたれている模様。報道によれば、この事件に関係して、銀行各社は2021年末に追徴課税を請求されており(数千万ユーロから数億ユーロの脱税が対象とされる)、それと並行して刑事事件の捜査が進められているという。同じ2018年の調査報道では、ドイツを主な舞台とした類似の「CumEx」事件も浮上した。こちらは、配当支払い時に目まぐるしく株式の所有者を切り替えることにより納税を回避しつつ、回避した分の納税の還付を税務当局に請求して還付金を詐取するという手口で、首謀者と目されるベルガー弁護士が昨年12月に最初の有罪判決(禁固8年)を受けており、同被告人を含む別の訴追も進められている。 KSM News and Research -
2023.03.28
ブルガリアで押収の絵画、ジャクソン・ポロックの作品か
ブルガリア政府は22日、当局捜査により国内で押収された絵画がジャクソン・ポロック(1912-56)の作品である可能性が高いと発表した。これが事実なら、これまで存在がまったく知られていなかったポロックの作品が発見されたことになる。ブルガリア警察はこの絵画を、去る2月初頭に、ギリシャ警察及び欧州刑事警察機構(ユーロポール)と協力して行った捜査の一環で押収した。押収されたのは、様々な色が金色の地を背景に浮かび上がるアクション・ペインティング風の作品で、ポロックの署名があり、画布の裏には、「才能豊かな親愛なるわが友、ローレン・バコールに」と書かれ、1949年9月16日という署名がある。また、ルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスク(1918-89)の署名もあり、チャウシェスクが秘蔵していた可能性もある。絵画は現在、ソフィア国立美術館が保管しているが、ブルガリア人の専門家2人による鑑定では、その作風や作法がポロックの1945-50年頃の作品と一致しており、蛍光分析からは、色材がポロックの他の作品と類似していることが確認されたという。ただし、完全に断定するには不十分で、ブルガリア当局は国際的な協力を得て鑑定作業を進める方針。この絵画は、ギリシャ人の所有者が転売を希望し、ブルガリアの業者に預けたものだったという。捜査はまだ継続中だが、捜索を受けた業者は釈放され、容疑者認定は今のところ受けていない。 KSM News and Research -
2023.03.28
年金改革の抗議行動、商業・観光部門に打撃も
28日に年金改革反対の抗議行動が全国で行われる。抗議行動は今回で10回目を迎えた。グレゴワール観光担当相は27日、商業・観光部門に抗議行動が打撃を与えることに懸念を表明した。業界団体の集計によると、23日(木)の前回抗議行動では、パリの商店の売上高が前年同日比で20%減を記録。減少率は、トゥールーズで29%、マルセイユで31%、レンヌでは60%に達した。外食業の数値は出揃っていないが、デモ行進の沿道の店舗は休業を迫られ、その他の地区でも20-50%の予約取り消しが出ているという。宿泊業でも影響がみられるようになった。パリでは、抗議行動の日には平均で14%の減収(通常の日との比較)を記録。地方でも8%の減収を記録している。23日にはこの減少率は、パリで28%、地方で13%となった。種類別では、中堅の宿泊施設で影響が大きめであるという。パリの廃棄物回収部門のストの影響は足元では出ていないが、今後に予約の減少や取り消しとなって現れる可能性がある。外国人観光客が多い高級ホテルではその兆候が既に現れているという。 KSM News and Research -
2023.03.28
下院のインターネットサイトにサイバー攻撃、親ロシア勢力の犯行
下院のインターネットサイトが27日にDDOS攻撃を受け、接続不能に陥った。親ロシアのグループ「NoName057(16)」が同日にテレグラム上のチャンネルで犯行声明を出した。ウクライナに対するフランスの支援への反撃だと主張している。下院はこの件について、27日午後の時点で、ロシア方面からの攻撃であると確認することは今のところできないが、原因究明に鋭意努力中だと説明した。これとは別にリール市役所を狙ったサイバー攻撃で、盗難されたデータの公開が27日に始まった。この犯行は、ランサムウェアによる攻撃を得意とするグループ「Royal」が3月初頭に公表しており、盗難したデータのうち、150GB強のファイル2件(合計305GB)がダークウェブ上で公開された。グループ側の発表によると、このデータは盗難されたデータの10%に過ぎないといい、データが犯罪に悪用される恐れがある。公開されたデータの内容はまだ確認されていない。 KSM News and Research -
2023.03.27
2022年に賃金大幅上昇:インフレ率には及ばず、所得は実質減
3月24日に労働省調査機関DARESが発表した統計によると、ワーカー(ブルーカラー及びホワイトカラー)の1時間当たり基本給は2022年10-12月期に、前の期比で0.8%の上昇を記録した。前年同期比では4.5%上昇、この上昇率は前の期(7-9月期)と同じだった。民間部門の給与所得者全体では、月額給与指数が10-12月期に前の期比で0.7%上昇した。前年同期比では3.9%の上昇を記録。上昇率は前の期の3.7%を上回った。2022年通年では、消費者物価指数(たばこ除く)が6.0%上昇している。従って、物価変動を考慮した実質ベースでは、ワーカーの1時間当たり基本給は2022年通年で1.5%、給与所得者の月額給与指数は2.1%、それぞれ低下した。給与水準は、過去最大の上昇率を記録したが、インフレ亢進のために実質所得は目減りしている。政府はこのため、勤労者の所得増強に力を入れる構えを示しており、マクロン大統領も、先のテレビインタビューの際に、産別最低賃金の引き上げを呼びかけるなどして、経営者側に努力を促していた。年金改革への反対運動が長引く中で、政府は所得増強などで譲歩を示すことで、状況打開の糸口を探っている。 KSM News and Research -
2023.03.27
2035年の新車販売規制めぐる対立でドイツが勝利
2035年に欧州連合(EU)域内での新車販売をゼロエミッション車に限定する規制をめぐる対立で、3月23-24日のEU首脳会議を経て25日に合意が成立した。ドイツの要求に応じる形で、EV以外に、E燃料(合成燃料)を用いることを条件にエンジン車の販売継続も認める方針を欧州委員会が受け入れた。当初案では2035年を境に域内での新車販売をEVのみに完全に移行させることが予定され、すでに欧州委員会、EU理事会、欧州議会の合意が成立していたが、ドイツの自動車業界と政府の抵抗により土壇場で決定が覆った。2035年にエンジン車の新車販売を禁止する計画には、ドイツの主要自動車メーカー・自動車部品メーカーと自由民主党(FDP)のほかに、イタリア、チェコ、スロバキアなども異議を唱えていた。政治的にはドイツが勝利した形だが、ドイツのゴリ押しとそれに屈した形の欧州委員会の対応については、EUの制度的信頼性を貶めたとの批判がドイツ国内からも出ている。また合成燃料の使用によりエンジン車の販売を継続する構想には産業面で疑義も表明されている。特に、合成燃料の価格の高さが問題視され、今後に技術の進歩と量産化により低下することを考慮しても、十分な価格競争力を確保できる見込みは薄く、使用するとしてもポルシェ、BMW、フェラーリなどの高級車限定のニッチな範囲にとどまるとみられている。他方、環境派はこの合意に強い批判を浴びせている。EV移行にブレーキがかかり、欧州のEV技術が、EVですでに先行している中国などに遅れをとる懸念も指摘されている。なお、2035年以降に新車販売をゼロエミッション車だけに限定する方針自体には変更はなく、27日に加盟国の大使級会合で再検討された上で、28日のEUエネルギー相会合で最終採択される運びとなった。 KSM News and Research -
2023.03.27
英チャールズ国王の訪仏が延期、仏国内の抗議行動頻発で断念
3月26日から29日まで予定されていた英国のチャールズ3世国王の訪仏が延期となった。24日に両国政府が発表した。チャールズ国王は、即位後の初の外遊先としてフランスを選び、国賓待遇で公式訪問する予定だった。ベルサイユ宮殿での晩餐会や、英国とゆかりのあるボルドー市の訪問などが予定されていた。欧州連合(EU)離脱後のEUとの関係構築をにらんで、フランスとドイツを続いて訪問するはずだった。しかし、フランス国内では、年金改革反対派による抗議行動が続いており、特に28日(火)に再度、全国でデモ行進とストライキが行われることを踏まえて、仏政府は、適切な警備体制を整えることが困難だと判断し、英国側に延期を要請したという。両国政府は共同での決定として延期を発表した。マクロン大統領にとっては、国内の混乱が長引いたために外交上の失点を喫したことになり、不本意な結果となった。これと関連して、25日には、ドゥーセーブル県内で環境派による貯水池整備反対の抗議行動があり、治安部隊との大規模な衝突に発展した。環境派は、県内の大規模な農業用貯水池の整備計画について、地下水系への水の供給を断ち、環境を破壊する大規模農業を行う一握りの農業経営体のみに益する理不尽な施設だとして貯水池の整備に反対している。25日にサントソリーヌ村には当局発表で6000人程度が集結、整備予定地を防衛する治安部隊との間で大規模な衝突が発生した。デモ隊に加わった過激分子が花火や火炎瓶などで治安部隊を攻撃、治安部隊は催涙弾や、包囲を解くために用いる手りゅう弾などで応戦した。治安部隊の車両数台に放火の被害が出たほか、当局側発表では、治安部隊員に28人(うち2人は重傷)とデモ隊側に7人(うち3人は重傷)の負傷者が出た。抗議行動の主催者側は、治安当局の行き過ぎた対応が衝突の原因になったと主張、デモ隊側の負傷者は発表よりもはるかに多く、当局が救急部隊の現場到着を意図的に妨害して被害が大きくなったなどとも主張した。当局側は、安全に救急活動が展開できるようにするため全力を尽くしたと説明してこれに反論している。 KSM News and Research -
2023.03.24
クレティンスキー氏、フナック・ダルティの筆頭株主に
チェコの実業家ダニエル・クレティンスキー氏が仏フナック・ダルティ(家電、書籍・DVDなど販売)の筆頭株主となった。出資率が25%を超え、独同業Ceconomyを抜いて筆頭株主となった。クレティンスキー氏側では、今後もフナック・ダルティの株式を買い増しする可能性を否定していないが、6ヵ月以内に経営権を獲得する可能性は否定し、取締役を送り込むつもりもないと約束した。クレティンスキー氏は47才。フォーブス誌によると保有資産額は92億ドルに上る。銀行家からエネルギー企業EPHのトップになり、汚染度が高い石炭発電等の資産を安値で買い集める手法で成功を収めた。フランス通として知られ、フランスは投資事業における主要な狩場となっている。同氏の投資戦略については、価値が目減りした資産を買い集めて価値創造を狙うという日和見的なもので、目的を隠して野望を準備するというタイプではないという意見もあるが、2022年5月の大統領選挙決選投票の直前に、保有する週刊誌マリアンヌの表紙タイトルを変えさせた(マクロン大統領により好意的な印象を与えるように変えさせた)という事件もあり、クレティンスキー氏の投資行動とその真意を巡る憶測は絶えない。フナック・ダルティについては、評価が下がっている時期を選んで投資するというセオリーに即した投資でもあり、折しも、やはり10%を超える出資先である食品小売大手カジノが再編計画を迎えるタイミングであることから、流通絡みで何か仕掛けてくる可能性もある。クレティンスキー氏はこれと並行して、メディア大手ビベンディの出版子会社エディティスの買収にも乗り出しており、アトス(情報処理)にも資産買収を打診している。 KSM News and Research -
2023.03.24
垂直方向の建て増し、土地不足で脚光浴びる
リヨン都市圏は23日、建物を高くする形での増築により、低家賃住宅250-300戸を向こう2年間で整備すると予告した。土地不足の中で住宅を増やす手段として取り組む。平屋の商業施設に7階を追加し、24戸を整備する(ビルルバンヌ市)プロジェクトや、リヨン市市内の19世紀に建築の建物に2階を追加するプロジェクトなど、規模や状況が様々に異なるプロジェクトが進められる。公団組織のみが対象だが、将来的に、民間部門の開発業者の参入を呼び込む展望もある。フランスでは、人工的な土地利用のネットゼロ達成を大目標として、土地の新たな人工化を2030年までに50%減らすという目標が設定されている。そのため、農地等を宅地化することが難しくなり、土地の確保が課題として浮上している。既存の建物に階を追加する形で増築を行うことが解決法の一つとして注目されており、地方自治体による取り組みも増えている。ストラスブール都市圏では、UpFactor社に依頼して、垂直方向に建て増しが可能な建物1万6500棟を特定した。その結果を公表し、民間部門を含めて増築への取り組みを促す計画。断熱リフォームとも絡めて、不動産開発業者が増築分の所有権を確保することを条件に、リフォームの費用を負担するといったビジネスモデルが想定されている。政府機関は去る2月にこうした増築に関するガイドラインを公表。増築権の譲渡は非課税で行える点などを説明している。ただ、住民が居住している状態での施工には開発業者が消極的であるなど、実現においてはハードルも多い。 KSM News and Research -
2023.03.24
年金改革反対の抗議行動、過激化も
3月23日に全国で年金改革反対の抗議行動が行われた。一部で破壊行為や暴力的な衝突が発生した。全労組統一の抗議行動の開催はこれが9日目となった。全国のデモ行進には警察発表で108万人が参加。7日(火)と同程度の動員が達成され、政府の予測を上回る水準に達した。マクロン大統領がテレビインタビューの機会に、年金改革の実行に決意を示し、新たな譲歩を拒否したことに反感を持つ人々が多く参加したと考えられる。パリでのデモの参加者数は最大規模に上ったが、デモに乗じた破壊行動も多く発生。オペラ座広場からグラン・ブールバールと呼ばれる大通りにかけての一帯で商店破壊やキオスク、ゴミ箱等への放火といった事案が多数発生した。22時時点の集計では、全国で治安部隊員149人が負傷し、172人(うち103人がパリ)が逮捕された。ボルドー市では、市役所の扉が放火される騒ぎもあった。今後、打開の展望がないまま抗議行動が続き、過激化する懸念もある。労組側は28日(火)に統一の抗議行動を再度行う予定で、この週末にも地域単位で抗議行動を展開する。全国の製油所等のストライキでは、出荷を確保するために当局が徴用に乗り出した。ガソリンスタンドにおける燃料品切れ・品薄は、南仏とブルターニュ地方の一部で顕著で、30%を超えるガソリンスタンドが品切れ・品薄となっている。 KSM News and Research -
2023.03.23
欧州委員会、グリーンウォッシング対策を発表
欧州委員会は3月22日、企業のグリーンウォッシング対策に関する指令(グリーンクレーム指令)を提案した。2020年に実施した調査で、環境配慮をうたう広告や主張の大多数に実態が伴わないことが判明したことなどをあげて、グリーンマーケティングを行う際に科学的根拠を明示することを義務付ける方針を示した。委員会は、PETボトルをリサイクルした素材を用いたTシャツを例にあげて、実際にはリサイクル素材の割合が1%未満であることが多いと指摘し、こうした虚偽広告・宣伝を防止するため、製品のライフサイクル全体にわたる環境負荷をラベルやQRコードで表示し、ウェブサイトで根拠となるデータを消費者が確認できるように公開することを、小規模企業(従業員10人未満または年商200万ユーロ未満)を除く域内の全企業に義務付けることを予告した。またカーボン・ニュートラルに関する主張についても、CO2排出削減努力と植林などによるカーボンオフセットを峻別し、カーボンオフセットの割合や方法を消費者に明示することを、域内企業だけでなく第3国の企業にも義務付ける。環境ラベルについても、独自のラベルの乱立を規制し、透明性や信頼性に欠けるラベルを排除する。EUの基準に適合したラベル以外は公に認可しない方針であり、また、既存のEUエコラベルの利用を全企業に推奨する。なお、欧州委員会はすでに2022年3月に、「グリーン製品」とか「環境責任製品」といった曖昧な広告文言を禁止しており、新指令は、既存の規制でカバーしきれていない製品やサービスが対象となる。新指令では、違反者に対する制裁も予定されている。虚偽の広告で得られた収入の差し押さえ、公共調達市場からの一時的な排除や公的補助金の停止(最大12ヵ月間)などが見込まれる。 KSM News and Research -
2023.03.23
マクロン大統領、年金改革施行で譲らず:反対派は猛反発
マクロン大統領は22日昼に、民放TF1と国営フランス2による共同テレビインタビューに応じた。大統領はこの機会に、年金改革について、その必要性を強調し、国民から不興を買うとしても、改革を年内に施行すると言明した。大統領は、赤字を増やす以外の代案が誰からも提示されなかったとして、国会を通過した案以外の改革は考えられないと主張しつつ、同時に、改革の必要性と改革案の内容について正しい理解を共有させることができなかったのは失敗だったと認めた。大統領はその上で、就労条件が厳しい人々に対する配慮という点で検討の余地があるとし、その協議を労使代表との間で進めると予告。ボルヌ首相の下で協議を進めるとして、首相続投の方針を確認した。大統領はまた、企業の特別利益に対する課税に前向きの姿勢を示し、年金改革反対派に対して和解のシグナルを送った。大統領の発言には、労組や反対派が猛反発している。国民の現実が見えておらず、国民の声に耳を傾ける気がない、などとする非難の声が上がっている。労組は23日に9日目となる抗議行動を共同で主催し、大規模な動員を目指している。23日には公共交通機関の運行が大きく乱れる見通しで、RATP(パリ交通公団)では、路線により通常の3分の1から2分の1程度の運行にとどまり、RER(郊外連絡急行)でも、A・B線で2分の1、C線で3分の2、D線で5分の2、E線で4分の1の運行となる。国鉄SNCFでは、高速鉄道が通常の半数、ローカル線が通常の3分の1の運行となる。パリ・オルリー空港の発着便は3割が欠航になり、その他の地方空港では2割が欠航となる。パリ市の廃棄物回収部門は27日(月)までのスト継続を決定した。 KSM News and Research -
2023.03.23
ダノン、バドワの着色ボトルを廃止:環境配慮で
仏食品小売大手ダノンは22日、ボトルウォーター「バドワ」について、着色ボトルを廃止し、透明ボトルに切り替えると発表した。ボトルへの100%リサイクルを可能にする体制を整える。バドワはスパークリングウォーターで、炭酸の含有量が少ない「緑」と、多い「赤」の2種類がある。これまでPETボトルのバージョンでは緑又は赤の着色ボトルで販売されていたが、これをいずれも透明のPETボトルに切り替える。22日より新ボトルでの販売を開始し、旧ボトルは順次フェーズアウトする。新ボトルでも、ラベルとキャップは従来の色を維持し、消費者に混乱を招かないようにする。PETボトルを回収し、これをリサイクル材料として用いてPETボトルを製造するという体制が最近に確立したが、着色PETボトルではこれができず、リサイクル材料としての用途は限られていた。ダノンは去る1月に、プラスチックに関して企業の環境注意義務を果たしていないと主張する環境保護団体によりパリ地裁に提訴されており、これを受けて、バドワの着色PETボトルを全廃することを決めた。ダノンは、この決定により、容器包装の100%リサイクル化(リユース、コンポスト化含む)に向けて大きく前進すると説明している。 KSM News and Research -
2023.03.22
2022年の就業率、過去最高の68.1%に
INSEEは3月21日、2022年の雇用市場に関する調査結果を発表した。それによると、15-64才の層における就業率(ILO基準)は68.1%となり、前年比で0.9ポイント上昇した。1975年の統計開始以来で最高となった。デュアルシステム(働きながら学業を継続して資格を取得する制度)の利用増を背景に、若年層の就業率は上昇を続けた(15-24才の就業率は前年比2.6ポイント上昇の34.9%)。有期雇用契約(CDD)による就労者数が占める割合は、新型コロナウイルス危機時に大きく低下したが、その後は上昇に転じ、2022年には2年連続で上昇した。2022年には、平均で20%近くの就労者が、1週間に1日以上リモート就労を行った。リモート就労を行った人の75%強は、週当たりのリモート就労日数に満足していると回答した。2022年にはパートタイム就労が目立って減少した。パートタイム就労者が全体に占める割合は17.3%で、前年比で0.7ポイント低下した。それは特に女性において顕著だった(1.5ポイント低下)。失業率は2022年平均で7.3%となり、7年連続で低下した。2015年に比べると3.0ポイントの低下を記録した。失業者予備軍に分類される人(就業する意志はあるが能動的な就職活動を行っていない人)が労働力人口に占める割合は4.4%となり、前年から0.2ポイント低下した。 KSM News and Research -
2023.03.22
マリで誘拐の仏人記者デュボワ氏、ほぼ2年ぶりに解放
マリで2021年4月8日に誘拐されたフランス人記者のオリビエ・デュボワ氏がほぼ2年ぶりに解放された。21日に帰国した。デュボワ氏は2015年以来、フリーランスのジャーナリストとしてマリに在住し、取材を続けていた。2021年4月8日に北部のガオ市でアルカイダ系過激派組織により誘拐され、それ以来、2年近くに渡り安否が気遣われていた。デュボワ氏は20日にニジェールで解放された。米国人の人道主義活動家であるジェフリー・ウッドキー氏と共に解放された。同氏は2016年10月にニジェール国内で誘拐されていた。ニジェール政府の仲介で両氏の解放が実現し、それぞれ本国に引き渡されたが、解放の詳細については明らかにされていない。デュボワ氏は21日、フランス政府の手配でパリ近郊のビラクブレ空軍基地に到着、マクロン大統領の出迎えを受けた。大統領はこの機会に、ニジェール政府の協力に謝意を表明。デュボワ氏は、監禁されていた期間を通じて、虐待などを受けたことは一切なかったと証言した。この解放により、政府以外の組織により監禁されているフランス人はいなくなった。 KSM News and Research -
2023.03.22
ソプラ・ステリア、オランダ同業を買収
仏ソプラ・ステリア(情報処理)は21日、オランダ同業オルディナ(Ordina)を友好的TOBにより買収すると発表した。買収額は5億1800万ユーロ。TOB価格は1株5.75ユーロで、これは直近株価に比べて36%、3ヵ月間の平均比では43%高い。ソプラ・ステリアは、この買収によりベネルクス三国における情報処理コンサル事業を強化できると説明。買収費用は、現預金と既存のクレジットラインで賄えるとした。ソプラ・ステリアは積極的な企業買収で規模の拡大を図っている。去る2月末には、仏CSグループの過半数株式の取得を完了。防衛、航空宇宙、エネルギー部門向けのクリティカルシステムを構築するCSグループの連結により、サイバーセキュリティ分野でフランス第3位に躍進すると発表していた。3月初めには、ベルギーのTobania(デジタル・セキュリティ)の買収を発表。欧州における戦略市場であるベルギーにおける事業規模の2倍増を達成したと説明していた。ソプラ・ステリアは2022年に8.9%の増収(売上高51億ユーロ超)を達成、営業利益率は前年比で0.8ポイント上昇の8.9%を記録していた。 KSM News and Research -
2023.03.21
有機農家の減少に拍車
食品価格の高騰を背景にオーガニック食品の売れ行きが悪化している中で、有機農業への転換を放棄する農家が増えている。2022年には3380の農業経営体が有機農業を断念(廃業又は通常農業への復帰)したといい、この数は前年を35%上回った。2022年にはオーガニックの農業経営体の6%がオーガニックを放棄したことになる。ちなみに、通常農業を含めた全国の農業経営体の総数は39万前後となっている。有機農業の後退は特に畜産部門で顕著で、養豚では経営体の数が1年間で8%減少し、残るは800程度となった。養鶏部門でも鳥インフルエンザの影響も手伝い、有機養鶏は25%の減少を記録した。「ラベルルージュ(赤ラベル)」に切り替えたところもある。ラベルルージュは高品質であることを示す品質保証マークだが、鶏舎はオーガニックと同じであるため移行が容易で、有機飼料を使用する必要がなくなる。ただし、ラベルルージュ製品も価格が高いため、販売が後退している。畜産農家が有機農業を放棄すると、有機飼料の需要も低下するため、飼料向けの穀類を生産する農業経営体にも影響が波及する。 KSM News and Research -
2023.03.21
オリンピック関連法案の下院審議:アルゴリズムによる監視の是非が焦点に
オリンピック関連法案の下院審議が20日に始まった。アルゴリズムによる監視の導入の是非が焦点となる。オリンピック関連法案は上院を既に通過している。2024年のパリ五輪をにらんで、ドーピング検査の手段の強化や、沿道等の広告に関する許可制度などの臨時又は恒常的な法令の枠組みが整備される。焦点となる治安関連の措置では、スポーツ施設侵入への処罰の強化、ボディスキャナーによる入場検査、治安要員の採用に係り当局が身元調査等を行う権限を確保する、などの項目が盛り込まれた。中でも注目されているのが第7条で、アルゴリズムによる監視カメラ動画の解析の試験導入(2024年12月31日まで)を認める内容となっている。これには、人権団体などから、行き過ぎた監視体制の導入につながるとして反対する声が上がっている。議員の間には賛否両論があり、中国や米国、イスラエルといった外国からの技術導入を将来的に迫られるより、国内で技術主権を確立するために準備をすべきだとする賛成論と、人権侵害などを懸念する反対論が対立している。法案によれば、アルゴリズムで検出されるべきイベントの定義と、走査の対象となる範囲を政令で定めた上で、期間限定で使用が認められることになる。 KSM News and Research -
2023.03.21
仏中銀、経済成長予測を上方修正
仏中銀は20日、マクロ経済予測を上方修正した。2023年の経済成長率を0.3%から0.6%へ引き上げた。ただし、引き上げ後でも、予測値は政府の1.0%に比べて低い。中銀はインフレ率の減速も予想。これを経済成長率の上方修正の根拠とした。インフレ率を足元で押し上げている食料品価格の高騰は6月までにピークを迎えると予測。欧州連合(EU)基準のインフレ率は2023年通年で5.4%になると予想し、従来予測の6.0%を下方修正した。インフレ率はその後、2024年に2.4%、2025年には1.9%まで減速する。また、経済成長率は、2024年に1.2%に回復(従来の予想を維持)、2025年には1.7%を記録する(従来予測は1.8%)。中銀は、平均給与(残業手当・各種手当含む)が、2023年に6%、2024年に4.6%、2025年に3.7%上昇すると予測。これは個人消費支出を支えるが、インフレスパイラルを起こすような賃金上昇にはならないと予測した。失業率については、2023年と2024年に一時的に上昇するが、2025年には再び低下に向かうと予測した。 KSM News and Research -
2023.03.20
オプティカルセンター、脱税で捜索
仏捜査当局は16日、オプティカルセンター(眼鏡・補聴器販売)の本社の捜索を実施した。脱税などの疑いで捜索した。7人を逮捕した。汚職・金融犯罪捜査班OCLCIFFと税法違反行為捜査班BNRDFが2021年10月より同社を対象とする捜査を行っていた。財務省の金融犯罪調査部署TRACFINへの通報がきっかけとなり捜査が開始されたという。オプティカルセンターは、イスラエルに2005年以来在住の実業家ローラン・レビ氏が経営。報道によると、水増し請求等の手口で隠した資金を、レビ氏がイスラエルや香港に作らせた会社などに送り、課税を逃れていた疑いがある。2018年から2020年にかけて2億ユーロの不明朗資金の流れがあったという。当局は、資金洗浄、組織的な脱税、文書偽造、背任・横領などの容疑で捜査を進めている。レビ氏は、不明朗な眼鏡・補聴器部門に風穴を開け、消費者に利益を還元し、業界のイメージを向上するなどと主張して、事業を拡大していた。2030年に眼鏡販売で世界5位になるとの目標も掲げていた。 KSM News and Research -
2023.03.20
下院、内閣不信任案を審議へ
政府が年金改革法案の下院採択にいわゆる「49.3」を発動したのを受けて、2件の内閣不信任案が提出された。極右RNが提出したのに続いて、中道野党を中心とする院内会派LIOTも独自の不信任案を提出した。LIOTはこれを超党派の不信任案と位置付け、各党に合流を呼びかけており、ボルヌ内閣にとってこれがいちばん危険な不信任案になると考えられる。不信任案が採択されるには、下院の半数に相当する287票以上の賛成が必要になるが、ルフィガロ紙は18日付で投票内容を各党ごとに予想した上で、不信任案が採択される可能性は低いと報じている。同紙によると、趨勢を決するのが保守野党「共和党」の出方となるが、61議員のうち、不信任案に賛成票を投じるのは6-15程度と考えられ、賛成票は合計で多くて272と、必要な287人は及ばないという。その一方で、労組による製油所のストは拡大傾向にあり、ゴンフルビルロルシェ(ノルマンディ地方)の製油所もストに入った。燃料不足の懸念がドライバーを買い溜めに向かわせており、一部地域では燃料が品切れとなるガソリンスタンドも現れている。18日には全国で行われたデモ行進では、参加者数はさほど多くないが、若者らを中心に暴力的な衝突が発生する場面もあり、パリでは81人が逮捕された。ボルドー、リヨン、ブレスト、ナントなどでも衝突が生じた。 KSM News and Research -
2023.03.20
大都市圏からの住民の流出続く
16日発表のINSEE調査によると、大都市圏からの住民の流出が続いている。新型コロナウイルス危機を契機に本格化した住民流出がまだとまっていない。INSEEは、郵便局の転居時郵便物転送サービスの利用状況と、車体登録の転居届のデータに基づいてこの調査を行った。これによると、ブルターニュ、ヌーベルアキテーヌ、そして南仏オクシタニー、プロバンス・アルプ・コートダジュールへの人口移動が続いている。うち、特にコロナ危機で大きく伸びたブルターニュへの移住(流入が流出の2倍程度)は、2022年にはやや下火になったという。流出元としては、北東部のグランテスト、北部のオードフランス、そしてとりわけパリ首都圏が目立つ。パリ首都圏では、2022年に、流出100に対して流入が35となった。この数字は、2021年(流入が31)よりもわずかに増えたが、危機前の43と比べて顕著に低い。パリ首都圏は、危機前から10万人の純流出が続いていたが、危機を経てこの数が数万人程度増えている。このほか、人口70万人以上の大都市圏は、危機前は純流入を記録していたが、危機を境に純流出に転じている。 KSM News and Research -
2023.03.17
ドイツ:月額49ユーロのローカル線乗り放題定期券が5月より発売に
ドイツ連邦政府と州政府は、月額49ユーロの定期券「ドイチュラント・チケット」でローカル線の乗り放題を提供することで合意した。このために年間15億ユーロずつ、総額30億ユーロを、連邦政府と各州政府が折半で援助することを決めた。2025年まで援助を継続することで合意した。定期券の提供はこの5月より開始される。ローカル線乗り放題の定期券は、月額9ユーロで2022年6月1日から8月31日まで期間限定で提供され、成功を収めた。全部で5200万枚が販売され、うち1000万枚は3ヵ月間を通じての加入だった。政府はこの制度を気候変動対策の一環として、鉄道利用を奨励する目的で導入した。ただ、2022年に道路利用の二酸化炭素排出量は前年比で100万トン増を記録しており、本来の目的に照らしてどの程度の効果があったのかは明らかになっていない。また、期間中の定時運行率は89%を割り込んでおり(運行見合わせの列車は含めないで計算)、鉄道の運行状況が改善されない中での乗客増加で不満を引き起こす側面もあった。ケルン経済研究所の試算によると、公共交通機関の運行の費用は年間250億ユーロ近くに上る。月額49ユーロの「ドイチュラント・チケット」に2000万人が加入したとして、年間収入は117億ユーロで、今回決まった年間30億ユーロの公的補助を考慮に入れても賄いきれない額になる。公的補助のかなりの部分は、ローカル線の運行の3分の2を手掛けているドイツ鉄道(DB)に入るが、ドイツ鉄道はインフラ刷新に巨額の負担を強いられている中でもあり、「ドイチュラント・チケット」の導入は必ずしも朗報ではない。 KSM News and Research -
2023.03.17
仏政府、年金改革法案の採択を強行
年金改革法案の最終的な採決が16日に行われた。法案は上院を通過後、午後の下院採決において、政府がいわゆる「49.3」を発動したことにより、採決を経ずに採択された。「49.3」とは、憲法の第49条3項が定める措置で、政府はこの措置の発動を宣言することにより、法案を採決せずに採択させることができる。ただし、その後に内閣不信任案が可決されれば、法案採択は白紙に戻される。連立与党は下院で過半数を失っており、法案を採択させるには、保守野党「共和党」の協力が必要だったが、共和党内には年金改革案に反対する勢力があり、過半数を確保するには足りなかった。政府は最後まで共和党議員の説得に尽力したが、叶わないとみて最終的に「49.3」の発動を選択した。野党勢力からは今後、複数の内閣不信任案が提出される見通し。その行方がどうなるかは見極める必要があるが、共和党の協力を得た国会運営の確立を存続基盤としてボルヌ内閣が発足したことを考えると、今回の採決の失敗で、ボルヌ首相の責任が問われる事態となることも考えられる。ただし、マクロン大統領は、ボルヌ首相を温存し、内閣改造でこの場をしのぐ考えとする報道もある。他方、共和党は、投票が見送られたおかげで、内部対立が投票結果という形で白日の下にさらされることは避けられたが、足並みの乱れは隠しようもなく、今後の政局運営においてどのように存在を示してゆくべきなのか、当の本人らが決めかねているような印象がある。左派勢力は「49.3」の発動を自らの手柄と捉えており、内閣不信任案の提出に加えて、RIPと呼ばれる市民発議の国民投票請求で年金改革法を廃案に導くことも検討している。労組側は16日中に会合を開き、次回の抗議行動を23日(木)に行うことを決めた。18・19日の週末にも地域単位で抗議行動を呼びかける。労組側は、「49.3」の発動により、抗議行動への参加に弾みがつくと期待している。世論調査では、年金改革への反対が多数派を占めており、抗議行動への支持の念も広く表明されているが、同時に、法案の採択は不可避との見方が強く、抗議行動への参加は無駄と考える人も多い。労組側は、政府が強行手段を選んだことで、国民の不満が高まるものと期待している。なお、16日午後から夜にかけては暴力的な衝突も発生。パリのコンコルド広場周辺では路上での放火などの被害があり、217人の逮捕者が出た。一部の地方都市でも同様の衝突が発生した。 KSM News and Research -
2023.03.17
インフレ率、6月時点で5.4%に:経済成長率は4-6月期も0.2%と低めで推移へ
15日発表のINSEE確報によると、消費者物価指数は2月に前年同月比で6.3%上昇した。速報値の6.2%をわずかに上方に修正した。前月比では1.0%の上昇を記録。前月の0.4%と比べて物価上昇が加速した。工業製品価格が0.8%の上昇を記録。これは、前月に始まったバーゲンセールの終了により説明される。食料品価格は前月比で1.7%上昇。エネルギー価格の上昇率は1.6%に減速した(前月は3.9%)。電力価格の改定がエネルギー価格を押し上げる要因になったが、燃料価格は逆に1.2%低下した(前月は6.7%上昇)。食料品価格は前年同月比では14.8%の上昇を記録し、物価を押し上げる要因となっている。INSEEは同日に、国の経済状況に関する見解を公表。この中で、6月時点のインフレ率(前年同月比)を5.4%とする予測を示した。ただし、食料品に限ると15%の価格上昇を予測。逆にエネルギーは、1年前には既に値上がりが目立っていたこともあり、前年同月比での上昇率はゼロか、マイナスになると予想した。変動の激しい製品を除外した基礎インフレ率は6月に6.4%となり、まだ高めの数字になるという。経済成長率(前の期比)は、1-3月期に0.1%、4-6月期に0.2%と低めで推移。失業率は7.2%と現状維持を見込む。 KSM News and Research -
2023.03.16
パリの廃棄物回収部門スト、国が徴用に着手へ
パリで年金改革に反対する廃棄物回収部門のストが続いている。1週間余りにわたり回収が止まり、路上に7000トンを超える廃棄物が積み上がっている。ストを続けているのは、パリ市の直営事業部門で、同部門が担当する市内の半数の区が対象となっている。組合側は20日までのスト予告を出している。パリ東郊の焼却場でもストが行われている。状況の打開に向けて、パリ市と、パリ警視庁(県において国を代表する機関は県庁だが、パリ市においては特別にパリ警視庁がこの役割を果たしている)の間で15日に協議が行われたが、パリ市は職員徴用による解決を拒否し、パリ警視庁はパリ市に代わって徴用を行うための手続きに着手した。パリ警視庁は、路上に廃棄物が積み上がり、身障者の通行をはじめとして通行人の安全等に支障が生じていることと、ネズミが集まって公衆衛生へのリスクが高まっていることなどを挙げて、徴用を正当化している。パリ市のイダルゴ市長(社会党)は、年金改革を断行しようとしている政府の責任だとし、徴用を拒否している。パリ五輪を500日後に控えて、このストの影響でパリのイメージが低下することを恐れる声も上がっている。 KSM News and Research -
2023.03.16
年金改革:両院協議会、妥協案を策定
両院協議会は15日、年金改革法案の妥協案を策定した。妥協案は16日に上下院で一括採決される。連立与党が過半数を確保していない下院では、保守野党の共和党の協力取り付けが鍵となるが、多数派を擁立できるかは微妙な情勢。妥協案では、定年年齢を62才から64才へ引き上げる方針が維持された。2027年に国会審議を行い、見直す可能性を確保した上で年齢引き上げを盛り込んだ。懸案の就労期間が長い人への処遇では、21才以前に就労を開始した人に63才からの退職を認める方針を盛り込み、その拠出期間を44年間から43年間に引き下げることも決めた。これらの措置の費用は7億ユーロに上る。子どものいる女性については、出産・育児に係る拠出期間認定を含めて63才で退職可能となる女性について、5%の支給額増額を認めるとの措置が盛り込まれた。ただし、増額を得るためには64才での退職が必要になる。これは、出産・育児に係る拠出期間付与の恩恵を受ける女性が、定年年限引上げによりその恩恵を実質的に失うことがないようにする目的で、補償措置として導入された。定年年齢引き上げに伴いシニア層の失業者が増える懸念があるが、その対策として導入されるシニア雇用の企業評点制度については、従業員数300人以上の企業に導入義務が設定された。公表義務違反の企業には最大で年商1%の罰金が科される。シニア雇用促進を目的とするシニアCDI(無期雇用契約)の導入(60才以上、1年間の試用期間を設定)も盛り込まれた。 KSM News and Research -
2023.03.16
クレディスイスの株価急落、欧州銀行銘柄も軒並み大幅安
15日の欧州株式市場は大幅安を記録した。米シリコンバレーバンク(SVB)破綻の影響で、13日に大幅安を喫し、14日には反発していたが、15日には再び大幅安に転じた。15日には、クレディスイスの株価急落がきっかけとなり、他の銀行銘柄も軒並み後退した。クレディスイスは金融スキャンダルの後遺症が尾を引き、以前から経営不振で立て直しが遅れていたが、15日には、10%近くの株式を保有するサウジ・ナショナル・バンクの責任者が追加出資の可能性を否定する発言をしたことで、SVB破綻で神経質になっている市場が強く反応し、クレディスイス株価は同日に終値で23.88%の急落を記録した。市場は、銀行業界に打撃が広がることも懸念しており、欧州の銀行銘柄は軒並み値を下げた。仏最大手BNPパリバは10.11%、仏ソシエテジェネラルは12.18%の下落をそれぞれ終値で記録。パリ株式市場CAC40指数は終値で3.58%安を記録した。欧州市場は揃って後退、ユーロストックス指数も3.46%の低下を記録した。株安と連動する形で、ユーロをはじめとする欧州通貨は対ドルで後退。ユーロは12時25分頃に1ユーロ1.0599ドルと、1.24%の低下を記録した。ボルヌ仏首相は同日午後に、「この問題はスイス当局が解決すべき問題だ」と言明。その上で、SVBの破綻に伴うリスクへのフランスの銀行のエクスポージャーは一切ないとも言明した。 KSM News and Research -
2023.03.15
未成年者・学生の精神障害増える、新型コロナウイルス危機が引き金に
未成年者や学生が精神障害に陥るケースが増えている。新型コロナウイルス危機が引き金になった。調査によると、2021年には、18-24才の層のうち2割程度がうつ病エピソードを経験したと回答。新型コロナウイルス危機前はこの割合は1割余りであり、2倍に増えたことになる。ボルドー大学が学生向けに設けている心の病の相談窓口ESEでは、相談に来る人の数が30%増を記録。2021年2月に導入された「精神科小切手」(学生向けに支給されるバウチャー)の利用者数は、ESEにおいて初年の2440人に対して、2022年には4800人と2倍近くに増えた。新型コロナウイルス危機前の各種調査を比べると、「中度又は重度のうつ」と考える大学生が占める割合は、危機前で26%、危機後で43%、「自殺したいと思うことがある」と答えた人の割合も、20%から32%に増えている。新型コロナウイルス危機時のロックダウンが何らかの形で成長期にある若年者の精神形成に影響を及ぼしたものとみられ、その後も、気候変動やウクライナ危機、足元のインフレ亢進などが不安を増大させていると考えられる。また、全体の2割近くが向精神薬を服用していると回答したが、実際はそれよりも多い可能性がある。精神障害はより若い層にも広がっている。抗うつ剤を投与されている未成年者は、2014年から2021年にかけて63%増を記録。睡眠薬・鎮静剤も155%の増加を記録した。適切な治療法がなく、子ども用の認可を受けていない医薬品が処方されていることも多いという。 KSM News and Research -
2023.03.15
Greenerwave、衛星電波受信の高性能アンテナを開発
仏Greenerwaveは、電波反射のメタサーフェス技術を利用し、衛星からの電波を効果的に把捉する平型アンテナを開発した。3月16日まで米ワシントンで開催のサテライト・ウィークに出品した。Greenerwaveは、パリのランジュバン研究所(CNRS、ESPCI)発のスタートアップで、2016年に発足した。拡散した電波を鏡の要領で集束させて通信用に利用可能とする技術で、パッシブ設計のため投入電力が他の技術と比べて5分の1で済むという利点もある。同社の技術を導入し、NTTが5Gミリ波の屋内エリア改善のための試験を行った(2021年)実績がある。今回出品のプロトタイプは、静止衛星とコンステレーションのいずれでも、また、端末が移動する場合を含めて、良好なパフォーマンスを達成した。同社は、国防イノベーション庁の支援を得てこの新型アンテナを開発。2021年から2022年にかけて、Athena-Fidus軍事大容量通信衛星を用いた実証試験も行われた。Greenerwaveは量産への移行を目的に、近く1500万ユーロを投資家団から調達する計画。2024年秋季に量産化の開始を目指す。 KSM News and Research -
2023.03.15
ビベンディ、エディティス売却でクレティンスキー氏と独占交渉開始
仏メディア大手ビベンディは14日、傘下のエディティス(出版)の売却に向けて、チェコの実業家クレティンスキー氏が保有するIMI(インターナショナル・メディア・インベスト)と独占交渉を開始したと発表した。エディティスの100%株式を一括売却する。エディティスは、10/18、ジュリアール、ロベール・ラフォン、ナータンなどの出版社を傘下に収め、出版部門でフランス第2位。ビベンディは、同業ラガルデール・グループの買収に着手したが、ラガルデールには傘下に仏出版最大手のアシェットがあり、買収の許可を欧州委員会から取り付けるにあたって、エディティスの取り扱いをどうするかが焦点になっていた。ビベンディは、エディティスの上場による分離を提案して許可を得る算段だったが、欧州委はこれを認めず、エディティスの一括売却を求めた。ビベンディは急遽、クレティンスキー氏に一括売却する方針に切り替えた。仏出版業界は、新型コロナウイルス危機が追い風となり目立った成長を記録した後、2022年には反動で後退に転じた。エディティスも売上高が8%減(7億8900万ユーロ)、EBITDAが3100万ユーロに後退(前年は5100万ユーロ)、ビベンディはエディティスについて3億ユーロの減損処理を実施し、簿価は5億2900万ユーロにまで下がった。損を出す形でやむなく資産を売却する格好になる。一方、クレティンスキー氏はエネルギー分野の大物実業家で、数年前からフランスでメディア関連の資産を買い集めている。 KSM News and Research -
2023.03.14
慢性疾患の患者にかかりつけ医を手配、政府がキャンペーンを開始
政府は3月13日、慢性疾患の患者にかかりつけ医の登録を促すキャンペーンを開始した。すべての慢性疾患の患者に対して、年内に解決法を提案できるようにする。フランスでは近年、開業医の不足が目立ってきており、かかりつけ医を確保できない人が増えている。かかりつけ医以外の診察には健保払い戻しが少なくなるなどの不利益があり、慢性疾患の患者の場合は特に、病状の悪化を招かないようにする体制作りに不備が生じることになる。政府はその対策として、今回のキャンペーンに乗り出した。現在、国民のうち600万人程度がかかりつけ医の登録を行っていない。うち、慢性疾患の患者は70万人程度に上るとされている。政府は、健保公庫を通じて、かかりつけ医の登録がない患者に個別に接触し、それぞれの状況を踏まえて適切な解決策を提案する。開業医に対しても接触して、患者を増やす余地等を探る。人口の高齢化に伴い、医療の需要は高まることが予想されるが、引退する医師も多く、医師不足も鮮明になっている。政府は2027年の現政権の任期終了までに、望む人がすべてかかりつけ医を見つけられるようにすることを目標に掲げている。 KSM News and Research -
2023.03.14
オルセー美術館前の河岸、「ジスカールデスタン河岸」に改名へ
パリ市議会は14日、2020年12月に死去したジスカールデスタン元大統領の名前を冠した通りを市内に設けることを決定する。元大統領にゆかりのある中道政党MODEM所属のガテル市議が提出した決議案が採択される。 「ジスカールデスタン河岸」が左岸7区に設けられる。東側のボルテール河岸が終わるところからソルフェリーノ通りとの交差点までの区間が「ジスカールデスタン河岸」となる。これは現在、アナトールフランス河岸及びアンリドモンテルラン広場と呼ばれている場所で、主にオルセー美術館がある。かつてのオルセー鉄道駅を美術館として保存することを決定したのが元大統領で、その功績を讃える形でこの場所が選ばれた。アナトールフランス河岸は、ソルフェリーノ通りから西側のコンコルド橋までの区間のみの名前となり、アンリドモンテルラン広場は、オルセー美術館の西側の広場のみの名前となる。ちなみに、これらはいずれも、19世紀から20世紀にかけて活躍した文人の名前である。パリ市には、死去から5年以内の人物の名前を街路等に用いないという規定が1932年より定められているが、例外が認められることも多い。ローマ教皇ヨハネパウロ2世(2006年)、女優のアニー・ジラルド(2012年)、政治家のシモーヌ・ベイユ(2018年)が死後1年で街路等の命名の対象となっている。 KSM News and Research -
2023.03.14
パリ市、各種モビリティの通行状況をAIで把握
パリ市は自転車等の各種モビリティの通行状況を把握するために人工知能(AI)を活用している。ベンチャー企業Winticsの「シティビジョン(CityVision)」を導入した。パリ市は街路に赤外線カメラ250基を設置し、交通量の把握等を行っているが、うち要衝にある15基にシティビジョンを導入した。専用レーンなどを通過する自転車や電動キックスケーターなど各種のモビリティをカウントして場所ごとに、また時系列に即して交通量を把握することができる。パリ市では年内に50基まで導入を広げて、交通量の詳しい把握を進める方針で、データをもとに専用レーンの拡張や配置の工夫などを行い、事故軽減につなげることを目指す。また、12区の大通りでは、歩行者が横断歩道などを通行中の場合、表示板上に警告を表示する試験が行われている。シティビジョンはパリ市のほかにも、パリ首都圏の一部の市街地や南仏ニース市で導入されている。 KSM News and Research -
2023.03.13
「自然療法」のカザノバ氏が容疑者認定
「自然療法」や「生食健康法」を唱道してネットで注目されていたティエリー・カザノバ氏が「違法な医療行為」などの容疑者認定を受けた。48時間の勾留を経て、10日に予審開始通告を受けた。予審は、担当予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続き。カザノバ容疑者は保釈されたが、当局の監視下に置かれ、自然療法や健康法などの研修開催等を禁止された。カザノバ容疑者はユーチューブのチャンネルなどを通じて、陰謀論とも連動した健康理論を展開。がんは病気ではなく、害毒に対する自然の反応であるとし、絶食や生食などの健康法を守ることによって治癒すると主張し、健康法を教授する合宿や、生食用の調理器等を高額で提供するなどして活動していた。従来の医療は患者を不当に搾取するものだとし、ワクチンも同様に批判していた。カザノバ容疑者の地元のペルピニャン地検は2020年夏に予備捜査を開始。2022年2月には容疑者の自宅の家宅捜索を行い、今回、詐欺や脱税など多数の容疑で予審の開始を決定した。報道によれば、同容疑者の脱税額は270万ユーロに上っているという。 KSM News and Research -
2023.03.13
ペリカン・ヘルス、腸内細菌叢の採取用カプセルを開発
仏ペリカン・ヘルス(Pelican Health)は、腸内細菌叢の採取に用いるカプセルを開発した。製品化に取り組んでいる。 同社は2020年に、グルノーブル大学とCNRS(国立科学研究センター)の共同ラボに勤務するソランゾ氏が起業した。腸内細菌叢については、エンドスコピーによる侵襲性の高い検査が必要だが、同社が開発したカプセルは、経口摂取による検査が可能で、侵襲性がごく低い。カプセル内には3個の採取容器が封入されており、カプセルは胃を通過した後で溶解し、採取容器が腸内に放たれる。容器は吸収性の高いポリマー製で、膨張しつつ検体を取り込んで腸内を巡り、排泄される。その容器を回収して検査を行う。 このカプセルは2021年にイノベーション奨励賞「i- Lab」を受賞。2件の特許により保護されている。同社はこれを当面は食品メーカーの研究事業向けに供給する計画で、将来的には、診断薬の開発や、オーダーメイド治療にも役立てることを目指している。製薬会社からの研究提携で2024年までに数十万ユーロの年商達成を目指し、カプセルの商用化(欧州でCEマークの取得、米国でFDAの承認が必要)を経て2025年からは年商100万ユーロの達成を目指す。今秋には100万ユーロの資金調達を行う計画。 KSM News and Research -
2023.03.13
スナク英首相、フランスを訪問:5年ぶりに英仏首脳会議が実現
英国のスナク首相は10日にフランスを訪問した。マクロン大統領は大統領府に首相を迎えて会談した。スナク首相には7人の閣僚が同行。両国間で首脳会議が行われた。英仏首脳会議はこれが36回目だが、英国の欧州連合(EU)離脱を経て実に5年ぶりの開催となった。ジョンソン元首相以来で英仏関係は緊張が絶えなかったが、スナク首相は関係の再構築を期して今回の訪仏に臨み、両国首脳はこの機会に友好ムードを盛り上げることに努めた。両国首脳はこの機会に、欧州で核兵器を保有する国として、また国連安保理の常任理事国として、ロシアのウクライナ侵攻への対応で責任を全うする姿勢を確認。ウクライナ兵員のトレーニングやウクライナへの弾薬の供給などで協力することを取り決めた。2010年に両国が結んだ軍事・安全保障協定(ランカスターハウス協定)に沿った協力の推進や、次世代弾道ミサイルの開発に関する協力等も取り決めた。両国間の懸案である移民問題については、英国がフランスなどから流入する不法移民の迅速な退去強制の執行などを盛り込んだ法案を公表したばかりだが、スナク首相は、流入経由地であるフランスへの不満は口にせず、向こう3年間に、フランス側による取り締まりへの5億4300万ユーロの資金提供を約束し、友好ムードを壊さないよう努めた。ただ、この問題は今後の両国間の火種として残るものと予想される。 KSM News and Research -
2023.03.10
競馬のフランス・ギャロ、イベント業に多角化
フランス・ギャロ(競馬主催団体)はこのほど、イベント業への多角化を期して、新ブランド「フランス・ギャロ・ライブ」を立ち上げた。広報活動を開始して本格的な展開を目指す。傘下の競馬場5ヵ所(ロンシャン、オートゥイユ、シャンティイ、サンクルー、ドービル)で各種イベントを主催し、発券業務も担当する。このうち、パリ・ブーローニュの森にあるロンシャン競馬場は、2018年のリニューアルオープンを経て、各種のイベント開催に力を入れており、2022年には272件を開催、1200万ユーロの収入を達成した。新ブランドの導入でより一層認知度を高めて、事業の拡大を図る。5ヵ所の競馬場でのイベント開催数を2025年までに年間600日分(25%増)とすることを目指す。フランス・ギャロは駆歩競走の主催団体で、繋駕速歩競走の主催団体であるルトロとの共同子会社であるPMU(馬券販売)を主要な収入源としている。2022年の収入は4億6000万ユーロで、うち1万9000ユーロは競馬主催等の費用、残る2億7900万ユーロ程度を馬事産業の振興を目的に分配している。多角化収入の増大は、馬事産業界の新時代への変化への対応を支援する貴重な財源となる。 KSM News and Research -
2023.03.10
年金改革法案の重要条項、上院で採択に
上院は9日未明、年金改革法案の本会議審議で、第7条を採択した。第7条は、定年年齢を62才から64才へ引き上げる旨を定めた重要条項で、大荒れとなった下院審議ではここまで審議が到達せず、法案が政府原案のまま上院に送られたという経緯がある。上院では、保守野党「共和党」と中道勢力が合計で過半数を握っており、連立与党が過半数割れを起こし、しかも左派野党や極右勢力の数がかなり大きい下院と比べると、議会運営の状況は安定している。連立与党は共和党の助けを借りて法案の可決成立を図る構えで、上院での審議は協力の可能性を探る上で重要な意味がある。上院でも、左派野党が修正案を多数提出して抵抗しているが、上院多数派は、審議の制限を可能にする措置を発動してここまで審議を進めてきた。ただ、12日の期限までに、残りの13条のすべての採決を終えられるかどうかは微妙で、それができないと、上下院とも採決を経ないままで両院協議会に妥協案の策定が委ねられるという異例の事態になる。年金改革反対のストライキは3日目を迎えた9日も続いた。改善がみられる部門もある。国鉄SNCFの運行状況は初日に比べると改善したが、高速鉄道は通常の33%、ローカル線は同40%と、影響はまだかなり大きい。パリ首都圏では、RER(郊外連絡急行)のD線とローカル線(トランシリアン)のR線で通常時の20%の運行と、厳しい状況が続いている。RATP(パリ交通公団)では、メトロの路線の半数でほぼ平常通りの状況に回復した。製油所のストでは、エクソンモービルのノルマンディ製油所で封鎖が解かれ、燃料出荷が再開された。トタルエネルジーの製油所を含むその他の大規模施設ではストが続いている。半面、200ヵ所の小規模の貯蔵所のうち封鎖されているのは5ヵ所のみで、足元で燃料供給の顕著な問題は生じていないという。ガソリンスタンドにおける品薄は全体の4.78%(1種以上の燃料が品切れ)で、前日の5.78%に比べるとわずかに改善した。EDF(仏電力)の発電所の出力は全体で8700MWの低下を記録している。LNG(液化天然ガス)の受け入れ港と貯蔵施設でも封鎖が続いている。 KSM News and Research -
2023.03.10
フリート電動化義務、大統領府は率先して守らず
法人と政府機関等には、フリート更新に当たって電動車両の購入最低限が義務付けられている。環境NGOのT&Eはこのほど、その順守状況に関する調査結果を発表した。大統領府をはじめとして、法令最低限を守っていないところが極めて多いという結果になった。2021年までに制定された法令では、フリートの規模が小型車両100台を超える法人について、2022年における買い替え車両の10%以上をEV又はプラグイン・ハイブリッドとすることが義務付けられている。この最低限は、地方自治体と公共部門企業では30%、官公庁では50%に定められている。T&Eの調査によると、法人と地方自治体のうち3分の2はこの法令最低限を順守していない。官公庁では実に87%が順守していないという。例えば大統領府は、2022年に6台を購入したが、うち1台がディーゼル、2台がガソリン、1台がシリーズ・ハイブリッド、2台がプラグイン・ハイブリッドとなっており、50%に達していない。他の官公庁では、内務省で購入車両のうち対象車がわずか2.7%と特に低い。T&Eでは、大統領府を含めて、フルEVの導入実績が低いことも問題視しており、プラグイン・ハイブリッドを免罪符として導入し、実際はほとんど燃料で走行していることも多いと指摘している。最低限は、法人の場合で、2024年に20%、2027年に40%、2030年に70%と順次引き上げられることになっている。T&Eは、法人等のフリートが、中古車市場への供給の柱の一つであることを指摘し、電動モビリティの普及に果たす役割が大きいことを強調し、積極的な対応を促している。 KSM News and Research -
2023.03.09
ボルヌ首相、男女平等推進プランを公表
国際女性デーにあわせて、ボルヌ首相は8日、男女平等のための省間プランを公表した。2027年までの期間を対象に、男女平等の推進を目指す施策を進める。このプランでは、女性への暴力対策、女性の健康、職業上及び経済上の平等、平等の文化推進、の4つの大項目の下で、100程度の具体的な措置が講じられる。このうち、最大の項目は「女性への暴力対策」で、▽DV(20-59才の女性の1割に被害)の被害者の保護を目的として、各県に医療機関と連携したシェルターを設置し、行政手続き等を含めて被害者をサポートする体制を整える、▽DV被害について、加害者のデータベースと被害者のデータベースを構築し、警察や検察、裁判所が参照して情報共有を図り、初期段階から適切な対応を可能にして保護の取りこぼしを避ける、▽女性への暴力に対する処罰等を強化する(連続強姦の最高刑を禁固20年から30年に引き上げる、時効期間を長くする、等)、▽被害者保護決定の迅速化(24時間以内)、などの対策が盛り込まれた。「女性の健康」には、▽25才未満の女性への再利用可能な生理用品の健保払い戻し(2024年から)、▽流産の場合の待期期間の廃止、などの措置が盛り込まれた。「職業上及び経済上の平等」には、▽公務員部門への「男女平等評点制度」の適用拡大、▽出産休暇取得条件の緩和(最低就労実績を10ヵ月から6ヵ月へ引き下げ)、▽所得税源泉徴収において所得がより低い女性にも配偶者の男性と同じ税率での徴収がなされないように、個別の税率を各人に適用する、などの措置が盛り込まれた。「平等の文化推進」では、学校での教育の強化などに加えて、「女権主義博物館」を設立する方針を決めた。 KSM News and Research -
2023.03.09
Tik Tok、個人情報保護でEUに新たな譲歩
中国のショートビデオ配信プラットフォームTik Tokのアイルランド及び英国子会社は、新たな個人情報保護方針を明らかにした。Tik Tokに関しては、中国政府がTik Tokを通してユーザーの個人情報を収集しているとの疑いが持たれており、欧米諸国からの批判に晒されている。両子会社が発表した個人情報保護方針には、欧州市民の個人情報のセキュリティ管理を欧州企業に委任するという、米国で既に実施されているのと同様の措置が盛り込まれている。米国では、Tik Tokの米ユーザーの個人情報の管理は、米オラクルが担当している。オラクルはまた、Tik Tokのソースコードのチェックも担当している。Tik Tokは、欧州で同様の業務を担当する企業との交渉が進んでいると説明したが、交渉の対象となっている企業名などの詳細は明らかにしなかった。Tik Tokはまた、欧州におけるデータセンター網構築に年間12億ユーロを投資する意向。アイルランドに同国で2番目のデータセンターを開設し、また、ノルウェーにもデータセンターを開設し、これらのデータ・センターに欧州市民の個人情報を保存する予定。Tik Tokは、業務上の理由から、欧州市民の情報を、中国を含むその他の国々のデータセンターを経由させる可能性は否定していないが、個人情報の国境を越えた移転に関する欧州ルールを遵守していると強調している。しかしながら、まさにこの点が、アイルランドのDPC(個人情報保護機関)が行っているTik Tokに関する2つの調査のうちの1つの対象となっている。 KSM News and Research -
2023.03.09
政府、社会給付の不正受給対策強化を計画
政府が社会給付の不正受給対策の強化を計画している。アタル予算相が8日のインタビューで語った。同相は、各種社会給付の受給資格の一つである、年間の国内居住期間を、長い方に一本化する方針を示した。現在、高齢者生活保障手当と家族手当の受給には年間に6ヵ月以上の国内居住が条件として求められ、この期間は、APL(住宅手当)では8ヵ月間、RSA(生活保障手当)では9ヵ月間になっているが、同相は、これをすべて9ヵ月間に一本化することに賛成すると言明した。現在、年金改革法案の上院審議において、保守野党の共和党が、高齢者生活保障手当の支給条件の厳格化(上記期間を6ヵ月から9ヵ月へ)を盛り込んだ修正案を提出しており、これを支持する姿勢を示した。年金改革法案の可決には、共和党の賛成を得ることが条件になり、そのための譲歩の一つと考えられる。これと関連して、アタル予算相は数週間以内に社会給付の不正受給対策案を公表する。この7月より、欧州連合(EU)域外の銀行口座を社会給付の振り込み先として認めないなどの措置が導入される見通し。また、外国で年金受給を受ける人の生存確認を組織的に行うことや、航空会社の乗客名簿へのアクセスを得て、受給者の出入国について把握することなどが計画されている。 KSM News and Research -
2023.03.08
宇宙ベンチャーのThe Exploration Company、4000万ユーロを調達
宇宙ベンチャーのThe Exploration Companyはこのほど4000万ユーロの資金調達を行った。EQTベンチャーズとレッド・リバー・ウェストが中心となり資金を供給した。同社は2年前に、エアバス・ディフェンス&スペース出身のエレーヌ・ユビ氏(フランス人)が設立した。宇宙ステーションへの補給船「Nyx」の開発を進めており、将来的に有人カプセルに発展させることを計画している。仏ボルドーと独ミュンヘンに本拠を置く独仏籍の企業で、従業員数は50人程度、年内に2倍に増やすことを計画している。補給船は欧州の宇宙部門に欠けている要素の一つで、欧州の主体性・独立性を高める上でも開発に期待が寄せられている。同社は手始めに、「ビキニ」と名付けた小型実証機(直径60cm、40kg)のテストを行い、2024年には直径2.50メートル・重量1.6トンの中型実証機(ペイロード300kg)の軌道投入と帰還の試験を行う。2026年に最終型(4メートル、ペイロード4トン)の実証試験(6ヵ月間の軌道周回)を行う計画。今回の4000万ユーロの調達により、2024年までの実証プロジェクトと2026年までの技術開発の資金が確保された。 KSM News and Research -
2023.03.08
年金改革反対の抗議行動、これまでで最大規模に
年金改革に反対する抗議行動が7日に行われた。これまでで最大の規模に発展した。全国で行われたデモ行進には、警察集計で合計128万人が参加。1月31日のデモ行進時の127万人を上回り、今回の抗議行動が始まって以来で最大となった。ストライキの参加率も高めだったが、予想されたほどの規模にはならなかった。国鉄SNCFでは、全国平均で39%の参加率となったが、ところにより、運転士で76%、車掌で55%の参加率がみられた。SNCFのストは8日も継続され、高速鉄道(TGV)とローカル線で通常の33%程度の運行が確保される見通し。RATP(パリ交通公団)でもストが継続されるが、運行は概ね33-50%が確保される。ストへの長期的な参加は従業員にとって金銭面で痛みも伴うため、長期化に意欲的な職員はあまりいないという報道もある。その一方で、エネルギー部門では、これまで対象外だったLNG輸入ターミナルやガス貯蔵施設を封鎖する抗議行動が発生。EDF(仏電力)における抗議行動では、7日の出力低下は原子力発電所で3450MW相当、火力発電所で3165MW相当に達した。空の便では、7日から8日にかけて、パリ・シャルルドゴール空港で20%、パリ・オルリー空港と地方空港で30%が欠航となる。労組側はマクロン大統領に対して会談に応じるよう要求。11日(土)と来週に新たな抗議行動を起こす構えを見せている。政府の側では、デモ行進は大規模だったが、「経済を止める」という労組側の予告とは異なり、大きな混乱は生じなかったことに力を得て、改革法案の上院審議を予定通り進める方針を示した。 KSM News and Research -
2023.03.08
男女平等の企業評点制度、労組が問題点を指摘
男女平等の企業評点制度で2022年分の評点が公表の時期を迎えた。労組CFDTは6日にこの件で報告書を公表し、制度の問題点を指摘した。報告書は、経済研究所のIPPが依頼を受けて作成した。男女平等の企業評点制度は、2018年に制定された法律により導入された制度で、企業における賃金面をはじめとする男女平等の達成状況を評価する尺度として導入された。2019年に従業員数250人超の企業を対象に導入され、次いで2020年からは従業員数50人超の企業に適用が広げられた。評点が100点満点で75点に満たない企業には罰金処分が適用される規定となっている。報告書は、従業員数50人未満の企業に勤める従業員が民間部門全体の43.9%を占めることを指摘し、現行制度では取りこぼしが多すぎると指摘。さらに、本来は評点を公表する義務がある企業に限っても、半分余りの従業員が公表から漏れている(2020年のデータ)と指摘した。30%程度は企業側のコンプライアンス違反だが、25%近くは例外規定に基づいて公表をしていない。例えば、勤続6ヵ月未満の就労者などは対象に入らず、対象外の人が全従業員の60%を超えている場合には、意味のある比較にならないとして計算免除になるという規定があり、報告書では、例外規定が多すぎることを問題視している。また、男女の給与の差について、5%未満ならゼロとみなすという規定などもあり、結果として甘すぎる評点になるとも指摘した。なお、2022年の評点の平均値は、100点満点中86点と高い(前年は85点)。 KSM News and Research -
2023.03.07
2035年のエンジン車販売禁止、最終採択が延期に
欧州連合(EU)市場で2035年よりエンジン車新車販売を禁止する方針が3月7日にEU理事会で最終的に採択される見通しだったが、土壇場になってドイツ政府が異議を唱え、理事会での決議が急遽、無期延期されるという異例の事態が発生した。この方針についてはすでに昨年10月に欧州議会とEU理事会の間で合意が成立し、去る2月半ばに欧州議会で承認済みで、理事会の承認を待つばかりとなっていた。EU加盟国のうちでは、イタリアとポーランドが反対の立場を表明し、ブルガリアも棄権を予告していたが、理事会の決議は特定多数決で行われるため、これら3ヵ国のみでは承認を阻止できない。しかし、これに加えてドイツが不支持となった場合には承認が成立しなくなるため、加盟国の大使級会合で延期が決まった。ドイツやイタリアの要求により、2035年以後の新車販売をEVに限定せず、合成燃料を用いるエンジン車も許可する可能性について検討することが昨秋に決まっており、ドイツは欧州委員会が合成燃料の利用可能性に関する提案をまだ行っていないことを異議の理由としてあげた。ただし、これにはドイツ国内の政治力学が関わっている。連立政権の一角を担う自由民主党(FDP)が合成燃料を代替燃料として利用することでエンジン車の延命を図ることを主張し、圧力を強めている。FDPは州議会選挙での敗北が続き、政権内での存在感が薄れているため、同党所属のリントナー財務相やウィッシング運輸相は党勢の巻き返しを狙って、この問題で強硬な態度を打ち出している。なお、運輸相は3月3日に、2021年の連立合意で取り決められた鉄道網の改善よりも、道路網の強化を優先する方針を提案し、連立相手の緑の党の反発を招いており、気候中立政策をめぐる両党間の亀裂が深まっている。自動車業界からは、すでにエンジン車の2035年の廃止を織り込み済みで、電動化の促進に向かっており、今になって方針が揺れ動くのはかえって迷惑だとの反応が寄せられている。仮に合成燃料を利用することでエンジン車の販売継続が許可された場合でも、エンジン車とEVの双方を並行して開発・生産することはポートフォリオ管理を複雑にするため、EVに投資を集中するほうが得策だとの見方も表明されている。 KSM News and Research -
2023.03.07
デジタル分野の温室効果ガス排出量、2050年までに3倍増へ
仏政府は6日、デジタル分野の二酸化炭素排出量に関する予測を公表した。このままだと2050年までに同分野の温室効果ガス排出量は3倍近くに増えると予想し、対策を呼びかけた。この予測は、ADEME(環境・省エネ庁)とARCEP(郵便・電子通信規制機関)が共同でまとめた。デジタル分野の温室効果排出量は、2020年時点で1700万トン(二酸化炭素換算)に上ったが、このままの推移が続くなら、2030年時点では45%増、2050年時点ではほぼ3倍増の5000万トン近くに上るという。デジタル分野の電力消費は2050年までに80%近く増加し、また、材料・鉱物資源の消費量も60%近く増加する。現時点で、各種端末はデジタル分野のカーボン・フットプリントの70%を占めている。各種端末がライフサイクル全体で発生させる温室効果ガスは、8割近くが製造段階に集中している。バロ・デジタル移行相は、端末の更新のスパンを長くすることで温室効果ガス排出削減に貢献できると指摘、使用期間を、パソコンで5年から7年へ、ディスプレイで6年から8年へ、モバイル端末で2.5年から4.5年へと引き上げることを推奨した。設計段階から環境配慮を組み入れ、保証期間を長くし、修理可能性を高める努力を業界側に求める方針も示した。 KSM News and Research -
2023.03.07
仏政府、食品価格高騰対策を発表:食品小売大手の自主的取り組みが決まる
ルメール経済相は6日に食品小売大手の代表を集めた会合を開き、食料品価格の高騰対策を発表した。政府が調整を進めていた「低価格品バスケット」の導入義務化は見送られた。足元で食料品価格の上昇が目立っており、この傾向は、流通業者とメーカーの間の年次価格交渉を経て3月以降にさらに加速する恐れがある。政府はこれまで、50品目程度を選び、低価格での販売を食品小売大手に義務付ける方向で調整を進めていたが、食品小売大手の側はこれに反発し、独自の低価格品のラインアップを公表するなどして対抗し、政府も結局、構想を事実上断念した格好になった。経済相は会合後、業者側との合意内容として、「インフレ対策四半期」というラベルを導入し、可能な限りの低価格で製品を販売することを取り決めたと発表。品目は各業者がPB商品を中心として自由に選び、価格の設定も業者に委ねる(地域単位で異なる価格を設定可能)ことを決めた。6月末まで同じ価格を維持して販売がなされる。政府は、この措置の費用は全額を業者側が負担すると説明、その規模は「数億ユーロ」に上るとの試算を示した。ルメール経済相はまた、低所得者向けに食料品購入バウチャーを支給する方針を確認した。この措置は以前から予定されていたが、導入が遅れていた。地産地消で高品質の食料品の購入にのみ充てることができるという趣旨。 KSM News and Research -
2023.03.06
美術品取引の付加価値税(VAT)、税率20%に引き上げか
美術品の売買に係る付加価値税(VAT)が引き上げられる可能性があり、業界の間で懸念が広がっている。フランスでは、美術品の売買に係る付加価値税(VAT)には5.5%の軽減税率が適用されている。これは欧州連合(EU)加盟諸国中で格段に低く、このためにフランスがEU域外からの美術品の輸入の足場として用いられることが多い。過去20年間で世界の美術品取引に占めるフランスのシェアは、3%から7%へと上昇しており、フランスに財団組織や重要な美術品の個人コレクションが集まる要因の一つになっている。ただ、2022年4月のEU指令により、2025年年頭から、通常税率20%の適用が義務付けられる可能性があることが報じられ、業界は大きく動揺している。アタル予算担当相は急遽、業界関係者らを迎えて、「フランスの美術品市場を危険に陥れたり、購入者の意欲を妨げるようなことはしない」と約束。経済省は3日には、5.5%の税率維持を可能とするオプションを含めて検討を進めると発表。今夏までに関係者らと協議を進めて、今秋に提出する予算法案に盛り込む方針を示した。 KSM News and Research -
2023.03.06
仏政府、公務員によるTik Tok使用を禁止か
仏政府のベラン報道官は3月1日、政府が公務員によるTik Tok(中国のショートビデオ配信プラットフォーム)の使用を禁じることを検討していると明らかにした。Tik Tokを巡っては、国家安全保障上のリスクが指摘されており、米国ではすでに全面的な禁止に向けた法案が提出された。欧州連合(EU)でも懸念が強まり、欧州委員会や欧州議会が2月に職員による使用を禁止した。またByteDance(TikTokを運用する中国企業)がアイルランドの個人情報保護当局による調査の対象となっている。ベラン報道官は1日、政府メンバーの職業用携帯端末にはTik Tokなどのアプリは一切インストールされていないと言明した。また、国防省や内務省のような国家主権に関わる省庁の職業用端末では、Tik TokなどのSNSアプリはインストール不可となっているとも明言した上で、他の省庁に関しても、禁止が検討されていると付け加えた。報道官によると、中央官庁及び地方自治体でのTik Tok使用に関して、上院の調査委員会が調査を進めている。政府はまた、CNIL(仏個人情報保護機関)の意見も待って、より一般的な決定を下す意向という。3月1日に作業を開始した上院の調査委員会は、上院議員19名により構成され、6ヶ月以内に結論を下す。 KSM News and Research -
2023.03.06
ぶどう畑でブタが除草のユニークな試み
シャンパーニュ地方のぶどう畑で、ブタを除草等に用いるユニークな試みが始まった。マルヌ県クラマンにある「ボネール」ブランドのぶどう畑(シャルドネ種)が試験導入に着手した。平均体重が40kgと小型のニュージーランド原産のブタ「クネクネ」を数頭導入し、電気柵を設けた区画内で放牧している。ブタは草食につき、土壌内のミミズなど土壌の質を保つために大切な役割を果たしている虫には手を付けず、畑を除草する。土を掘り返して根を食べることから、畑を耕す効果が得られる。枯葉が畑に溜まるとべと病が発生しやすくなるが、ブタは葉が落ちるとすぐに食べてしまうので病気が起こりにくくなる。また、首が短い小型の品種なので、ぶどうの芽や実などを食べることがない。ボネールは2005年にオーガニック転換に着手し、除草剤を用いる代わりに機械的に除草を行っている。機械だと、土壌を押し固める副作用があり、しかも軽油を消費するが、ブタならそうした問題はない。ボネールによると、特に斜面に位置する手入れが難しい区画で、小回りの利くブタが威力を発揮するのだという。 KSM News and Research -
2023.03.03
市民団体が「性教育が不十分」と国を提訴
3つの市民団体が2日、国を相手取った行政訴訟をパリ行政裁判所で起こした。法定の性教育が小中高校で行われていないことを問題視し、改善を命令するよう裁判所に求めた。訴えを起こしたのは、プラニング・ファミリアル(家族計画)、SOSオモフォビー(同性愛者擁護)、シダクション(エイズ対策)の3団体。それぞれの立場から、性教育が不十分であることが、女性や同性愛者の差別、性的暴行などを助長していると主張し、足並みを揃えて今回の提訴を行った。2001年の法律は、小学校、中学校、高校のそれぞれで、年に3回の性教育の機会を設けることを義務付けている。しかし、教育省監察総局の最近の調査では、この義務が履行されているのは、小学生と高校生では全体の15%、中学生では全体の20%弱のみだといい、取り組みの成果が出ていない。予算不足や教員の不足、上からの働きかけの不足がその背景にあるという。団体側では、18-24才の女性のうち、強姦・性的暴行の被害を受けたことがある人が2割程度に上っていることや、LGBTの若者の半数が学校で差別の対象となっていることなどを挙げて、教育の現場で性の問題に向き合うことが大切だと主張している。ンディアイ教育相はこの問題で、昨年9月に通達を出し、性教育の強化を指示したが、提訴した3団体は、これまでにもこの種の対応はあったものの、成果を上げていないという現実があるとし、真剣な取り組みを促す意味もあり、提訴に踏み切ったと説明している。 KSM News and Research -
2023.03.03
「デジタル成年15才」法案、下院を通過
下院は2日、「デジタル成年」を満15才と定める内容の議員立法法案を採択した。法案は今後、上院で審議される。この法案は、連立与党に加わる「オリゾン」党の所属議員が提出した。「デジタル成年」を満15才と定め、14才以下については、両親のうち少なくとも一方の承認がなければ、SNSにアカウントを開くことが禁止される。法案を提出したマルカンジェリ議員は、サイバーいじめやネット依存症の対策として年齢制限が有効だと主張、与野党の幅広い賛成を得て法案は下院を通過した。未成年者によるSNSの利用については、業者側が「13才以上」という規定を設けていることが多いが、業者側は規定順守に熱心とはいえず、また、契約上の規定に過ぎず法的根拠はまったくない。欧州連合(EU)のレベルでは、GDPR(EU一般データ保護規則)が、各国に13-16才の間で「デジタル成年」を定めることを認めているが、フランスでは法的規定が整備されていなかった。15才という年齢を法律で明確に定めることで、業者側に年齢確認の義務を負わせることが可能になる。下院を通過した法案は、しかるべき手段で年齢確認を行う義務を事業者側に課し、違反には10万ユーロの罰金を科すことも定めている。 KSM News and Research -
2023.03.03
国内の工場、2022年は80ヵ所の純増に
調査会社トレンデオの集計によると、2022年にフランス国内で開所した工場数は150となり、同年に閉鎖の70ヵ所を上回った。差し引き後で80ヵ所の純増となった(従業員数10人超の工場が対象)。2016年以来、新型コロナウイルス危機の影響が大きかった2020年を除いて、国内の工場数は純増が続いている。2022年には、エネルギーや原材料の価格高騰など逆風が目立ったものの、純増が続いた。ただ、前年は182ヵ所の開所、59ヵ所の閉鎖で、123ヵ所の純増を記録しており、それと比べると勢いは衰えた。2022年には、閉鎖はされなかったもののデュラレックス(ガラス容器)が冬季に生産ラインを停止したり、またサフラン(航空機エンジンなど製造)がリヨン近郊の新拠点の開所を延期したりと、生産活動の減退を示す事案も多かった。さらに、10-12月期に限ると、開所が25、閉鎖が20で、純増幅は5と、急速に縮まっている。2022年の生産国内還流の事例は49件にとどまった。前年比で半分に減った。生産移転は10件だった。前年に進められた「復興プラン」による援助が終了したのが影響したと考えられる。 KSM News and Research -
2023.03.02
モバイル・ワールド・コングレスで目立った斬新な技術やプロジェクト
バルセロナで開催されているモバイル・ワールド・コングレス(通信業界イベント)では、様々な新製品が展示されている。目立った幾つかの斬新な技術やプロジェクトを紹介する:◆月面4G:フィンランド通信機器ノキアは、月面で4Gを展開するというプロジェクトについての作業を進めている。成功すれば、宇宙空間では初のモバイル・ネットワークとなる。2020年に発表されたこのプロジェクトの予算は1400万ドルで、米航空宇宙局(NASA)のイニシアティブ「Tipping Point」の一環。「Tipping Point」は、2022年に開始しており、予算は2億ドル。具体的には、ノキアは、地球上のものより小型でエネルギー消費の小さい4G基地局を、米インテュイティブ・マシーンズ(航空宇宙)の月面着陸機に設置する。この機器が、ソーラー・パネルを備えた別の月面ローバ(探査車)上のアンテナと4Gで通信する。プロジェクトは、2022年末に実現するはずだったが、2023年末までに延期された。このプロジェクトにより、月面に送られる宇宙飛行士達に、地上と同じモバイル通信環境が提供されると期待されている。◆5Gで操縦可能な小米科技(Xiaomi)のロボット犬:仏通信オレンジは、中国の小米科技製の5G装置で操縦可能なロボット犬を展示している。ロボット犬には小型5Gルーターが搭載されており、操縦者は、米マイクロソフトの複合現実ヘッドセットHoloLens2で、ロボットを操作する。HoloLens2上には、ロボットとその周囲の環境がデジタル・バージョンで表示されており、操縦者は、手を空中で動かすだけで、ロボットを操縦できる。ロボットは、例えば、ビデオを撮ったり、モノを動かすことにより、工場内をチェックするなど、反復的な作業や人間にとって危険な作業を担当できる。◆誰でも5分で部品交換が可能なスマホ:ノキア・ブランドの携帯端末のライセンスを持つHMD社は、ドライバー1本で誰でもが5分で部品を交換できるスマホ「G22」を展示している。既に販売されている「G22」は、簡単にディスプレイやバッテリー、充電ポートの交換ができるようになっている。米アップルの「セルフサービス修理プログラム」とは異なり、HMDは、スマホの内部構造に興味を持つギークだけでなく、一般ユーザーを対象としており、端末を分解した際に問題が発生した場合でも、3年間の保証期間は維持される。仏レゼコー紙が試したところ、分解・再組み立ては簡単だったという。HMDでは、ユーザーに部品交換が簡単だと納得させるため、交換可能な部品数を意図的に制限した。また、部品のオンライン販売に当たっては、米アイフィクスイット(IFixit、電子機器修理情報・パーツ提供)と提携した。 KSM News and Research -
2023.03.02
仏経済成長率、10-12月期に0.1%(前の期比)
2月28日発表のINSEE確報によると、10-12月期の仏経済成長率は0.1%(前の期比)となった。前の期の0.2%から減速したものの、プラス成長を維持した。2022年通年の経済成長率は2.6%を記録した。10-12月期には、個人消費支出が前の期比で1.2%の減少に転じた。前の期には0.4%の増加を記録していた。固定資本形成は全体で0.3%増を記録したが、増加率は前の期の2.3%から顕著に減速した。企業設投は0.6%増に減速(前の期は3.8%増)、家計による投資は0.9%減と後退が加速した(前の期は0.7%減)。GDP成長率への貢献でみると、内需(在庫変動除く)が0.4ポイント分のマイナス貢献となったが、外需(0.3ポイント分のプラス貢献)と在庫変動(0.2ポイント分のプラス貢献)がそれを補った。個人消費の後退が経済の減速を招いているのがうかがわれる。家計の可処分所得は10-12月期に前の期比で0.8%の増加を記録(ウェイト付けした家計成員1人当たり)。前の期の0.7%増に続いて拡大傾向を示した。同期には、テレビ受信料の廃止や住民税の廃止などの影響で、公租公課の徴収が3.3%減を記録。現金給与総額も1.7%増と拡大が目立った。物価上昇を吸収し、可処分所得の増加傾向が維持された。その一方で、貯蓄性向は17.8%となり、前の期の16.1%から大きく上昇した。家計が先行き懸念で貯蓄を積み増しし、消費支出を削っているのがうかがわれる。 KSM News and Research -
2023.03.02
ヒトパピローマウイルス・ワクチン、中学校で集団接種へ
マクロン大統領は2月28日、ジャルナック市(シャラント県)の中学校を訪問した機会に、ヒトパピローマウイルスの予防接種を9月の新学年以降に一般化すると予告した。中学校で組織的に無料接種を提供する。義務化はせず、両親が許可を与えることを条件に接種する。第5学年(12-13才)を対象とする(男女とも)。ヒトパピローマウイルスは性的接触を通じて感染し、稀に子宮頸がんなどがんを引き起こす。フランスでは年間2900人が発症し、1000人が死亡している。フランスでは、女子については2007年から、男子についても2021年年頭から、予防接種が推奨されている(11-14才に6ヵ月間隔で2回接種、15-19才で3回目接種も)が、接種率は女子で45.8%(1回以上接種)、男子ではわずか6%と低い。高い接種率を実現し、ヒトパピローマウイルスの感染と子宮頸がんの予防で成果を上げている諸外国の例を踏まえて、組織的な接種キャンペーンを行うことを決めた。ワクチンの費用が95-116ユーロと高く、35%を払い戻す補足健保に加入していない低所得者層で接種率が低いことに配慮し、無料キャンペーンを選択した。 KSM News and Research -
2023.03.01
ヒトパピローマウイルス・ワクチン、中学校で集団接種へ
マクロン大統領は2月28日、ジャルナック市(シャラント県)の中学校を訪問した機会に、ヒトパピローマウイルスの予防接種を9月の新学年以降に一般化すると予告した。中学校で組織的に無料接種を提供する。義務化はせず、両親が許可を与えることを条件に接種する。第5学年(12-13才)を対象とする(男女とも)。ヒトパピローマウイルスは性的接触を通じて感染し、稀に子宮頸がんなどがんを引き起こす。フランスでは年間2900人が発症し、1000人が死亡している。フランスでは、女子については2007年から、男子についても2021年年頭から、予防接種が推奨されている(11-14才に6ヵ月間隔で2回接種、15-19才で3回目接種も)が、接種率は女子で45.8%(1回以上接種)、男子ではわずか6%と低い。高い接種率を実現し、ヒトパピローマウイルスの感染と子宮頸がんの予防で成果を上げている諸外国の例を踏まえて、組織的な接種キャンペーンを行うことを決めた。ワクチンの費用が95-116ユーロと高く、35%を払い戻す補足健保に加入していない低所得者層で接種率が低いことに配慮し、無料キャンペーンを選択した。 KSM News and Research -
2023.03.01
仏サッカー連盟のルグラエト会長が辞任
仏サッカー連盟(FFF)は2月28日に執行部の会合を開いた。ルグラエト会長は会合の際に辞任を申し出て、執行部はこれを了承した。ルグラエト会長はセクハラ・モラハラ疑惑の渦中にあり、特に、ウデアカステラ・スポーツ相が会長に対する辞任圧力を強めていた。スポーツ相の依頼で教育省監察総局がまとめた報告書は、ルグラエト会長には連盟を運営するのに必要な正統性がもはやないとして、厳しくその責任を追及しており、辞任は時間の問題とみられていた。会長は既に休職扱いとなっており、今回、正式に辞任した。連盟側は、ルグラエト会長の功績を讃えた上で、報告書については一方的な内容であり、時に連盟に対する不当な非難が含まれていると反論した。会長の辞任を経て、ディアロ副会長が6月10日の次期総会まで会長代行を務め、その後のカバナンスを準備する。他方、ルグラエト氏は、国際サッカー連盟(FIFA)のパリ事務所の代表に就任すると噂されている。28日の会合では、女子代表チームのコリーヌ・ディアクル監督の問題も検討された。監督は選手らとの折り合いが悪く、去る24日に、キャプテンのウェンディ・ルナールや主力選手のマリーアントワネット・カトトなど数人が離脱を表明し、事態が急展開を遂げていた。ディアクル監督はルグラエト会長の厚い信任を受けていたが、会長の辞任により後ろ盾を失い、退任は時間の問題とみられている。 KSM News and Research -
2023.03.01
2月インフレ率、6.2%まで上昇
2月28日発表のINSEE速報によると、2月のインフレ率(前年同月比)は6.2%となり、前月の6.0%と比べて上昇した。前月比でも0.9%の上昇を記録し、前月の0.4%と比べて物価上昇が加速した。2月には、電力・ガス規制価格の引き上げがあり、インフレが一時的に亢進することは予想されていた。3月以降は、比較の対象となる前年同月が、ロシアのウクライナ侵攻以降の時期となることもあり、物価上昇の勢いは鈍るものと予想されていた(6月時点でインフレ率は5%程度の見込み)。ただ、足元で食料品の価格上昇が目立っており(2月には前年同月比で14.5%)、この2月末で小売業者と納入業者の間の年次契約が改定されると、それを反映する形で食料品価格が大きく上昇する可能性が高い。契約改定では10%程度の価格上昇が決まる見通しで、3月に一気に値上げとはならないまでも、徐々に小売価格に転嫁されてゆくことが予想される。 KSM News and Research -
2023.02.28
3月7日のスト、交通ストは無期限に
3月7日(火)に年金改革反対の抗議行動が行われる。労組側は大規模なストライキを行うことを目指している。国鉄SNCFで代表権を有する4労組は揃って無期限ストとすることを決定。CGT、UNSA、SUD-Railに加えて、改革派労組のCFDTも、組合員に諮った上で、無期限ストに合流することを決めた。これより前に、RATP(パリ交通公団)の労組連合も、7日のストを無期限ストとすることを決めている。ストの規模と運行状況の予測については、当日の48時間前に会社側から発表される。抗議行動を積極的に主導する労組CGTは、化学部門で6日より無期限ストを開始すると予告。製油所などが対象になる。ゴミ収集・清掃・廃棄物処理部門や教育部門(小・中・高校)でも大規模なストとなる可能性がある。CGTは輸送・配達部門でもストへの合流を呼びかけている。 KSM News and Research -
2023.02.28
開業医組合と健保公庫の交渉が不調に
開業医組合と健康保険公庫の間の協定改正案が承認されない見通しとなっている。合意期限は28日までだが、内科医と専門医の主要組合が揃って承認拒否を決めた。ブロン保健相も27日の時点で、協定の成立が期待薄となったことを認めた。MGフランスとアブニール・スぺの2組合が、加入医師らに諮ったうえで拒否を決めた。協定改正においては、医師側の長年の要求である診察料の引き上げについて、1.5ユーロの引き上げが盛り込まれた(開業医は25ユーロから26.5ユーロへ、専門医は30ユーロから31.5ユーロへ)が、組合側は引き上げ幅が小さすぎると反発している。組合側はそれ以上に、診察数を増やすことなどを条件として認められる新たな診察料の導入(5ユーロ増し)に不快感を示しているという。組合側は、医師らは既に過剰な労働時間で就労しているとし、仕事をいくらでも増やす余地がある怠け者のように扱われるのは心外だと反発している。このまま協定の更新が実現しない場合には、政府が指名する調停人(社会問題監察総局の監察官を務めたアニック・モレル氏)が3ヵ月以内に調停案を策定することになる。 KSM News and Research -
2023.02.28
対仏直接投資、2022年にも増加続く
ビジネス・フランス(輸出・投資振興の公的機関)の集計によると、2022年になされた対仏直接投資の決定数は1725件となり、前年から7%の増加を記録した。投資案件に対応して創出又は維持される雇用数は5万8810人となり、こちらも前年の4万5008人から大きく増加した。2022年は、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴うインフレ亢進など大荒れの一年だったが、その中でもフランスの投資誘致力は良好な推移を見せた。投資件数と雇用数とも2年連続で増加を記録し、新型コロナウイルス危機前の2019年も大きく上回った。2022年に決まった投資案件のうち、4分の1程度の457件を生産事業が占めた。雇用数でみると全体の30%を占めた。エネルギーやリサイクルの分野の投資案件が大きく増えたが、それ以外でも、電子機器、食品加工、保健の分野での外国投資家の関心が目立った。投資案件のうち394件が意思決定機能の進出案件となっており、前年に比べて大きく増えた。投資家を国別にみると、米国が280件(雇用に占める割合は29%)で最も多く、これにドイツが256件(同12%)、英国が176件(同7%)で続いた。2023年の推移は予断を許さない。フランスの誘致力の強み(地理的位置、インフラの質など)に変わりはないが、税制・法規面の先行き不透明感が投資を妨げる要因になりうるという。 KSM News and Research -
2023.02.27
「出戻り社員」が増える
辞任後に再び元の会社に就職する「出戻り社員」が増えている。会社側にも利益があって復帰に応じるケースが多いという。LinkedInの集計によると、2022年の転職者の2.38%が「出戻り社員」であるという。この割合は2019年の1.75%に対して明確に増えている。部門別では、金融(5.07%)と自治体向けサービス(4.13%)で割合が大きい。別の調査によると、出戻り社員の32%は管理職だという。古巣に戻る人の多くが、転職先の企業文化になじめずに復職を決めたと説明している。労使ともに就職を「結婚」のようなものではなく、ただの契約として考える風潮が浸透し、辞任と復職のいずれも、双方とも感情的にならずに対処できるようになったことが、出戻りが容易になった背景にある。会社側では、既に経験がある即戦力の人材を確保できることには大きな利点があり、円満退社の人材なら再雇用に応じる方が利益が大きい。待遇は昇格扱いで賃金も増額を認めるケースが多いという。ただし、ある調査によると、出戻り組の半数近くは、「再び転職するのもありだと思う」と回答しており、ブーメラン現象は、より根底的な「大退職時代」における一つの傾向ととらえるべきものかもしれない。 KSM News and Research -
2023.02.27
独Tomorrow Biostasis、人体冷凍保存を提供
ドイツのベンチャー企業Tomorrow Biostasisは、欧州では初めて、人体冷凍保存の提供を開始した。現代の医学では治癒できない人の遺体を冷凍保存し、未来の科学進歩に復活の夢を託するという趣旨。人体冷凍保存のビジネスは米国など世界では動き出しているが、欧州では同社が初めてだという。同社は、スイス北部のラフツ市に専用施設を設置し、人体を液体窒素によりマイナス196度の低温にて永久保存すると約束。法律的な制約もあり、冷凍処理は死亡の判定がなされた後に開始される。既に10体程度の冷凍保存が始まっており、予約者は数百人に上るという。同社のケントツィオラCEOによると、顧客の平均年齢は36才、ハイテク分野の就労者が多いという。脳の機能を保存できれば、同じ自分を保って機械の肉体の中に、さらには肉体をまったくもたない形で生き続けることができると期待していると考えられる。ただし、未来志向たるゆえんだが、蘇生の方法は現時点ではまったく確立されていない。いつか条件が整ったとして、蘇生を誰が、いつ決めるのかという問題も残る。 KSM News and Research -
2023.02.27
農業見本市が開幕:マクロン大統領は初日に訪問
毎年恒例のイベント「農業見本市」がパリ市内のポルトドベルサイユ見本市会場で25日に開幕した。マクロン大統領が開会式に立ち合い、そのままほぼ一日中、見学を続けた。農業見本市は政治家らが競って訪問する重要イベントだが、コロナウイルス危機の発生以来、2021年には中止になり、2022年には制限下での開催となった。今年は制限なしの本格的な開催に戻り、マクロン大統領も長時間にわたり訪問した。年金改革を巡る反対運動や、物価高騰に伴う懸念などもあり、大統領が反対派にブーイングを受けたり、詰め寄られたりする場面もあったが、大統領はこの機会に、自らの立場を擁護するべく努めた。大統領はまず、食品価格がこの3月に高騰する懸念がささやかれていることについて、費用増の中で農産品が一定の価格で販売され、農民が収入を確保できるようにすることが必要だとしつつ、努力すべきは小売業者であるとの考えを示した。少雨が続いて水不足が懸念されていることについては、エネルギー節約と同様に水資源の節約に上流から努める必要があると言明した。漁民に対しては、燃料価格の抑制措置を10月まで継続すると約束。メルコスル(南米南部共同市場)との自由貿易協定については、環境上及び衛生上の制約という点で、南米諸国が欧州諸国と同等の水準を守らない限り、現状での協定の批准はありえないと言明した。農民の側からは、このところ農薬使用の制約が厳しくなっており、このままでは農業が立ち行かなくなるとする不満の声が聞かれた。 KSM News and Research -
2023.02.24
仏国鉄SNCF、2022年に業績好調:政府は1000億ユーロの鉄道投資プランを公表
仏国鉄SNCFは23日、2022年業績を発表した。24億2500万ユーロの純利益を達成、前年比で2.7倍の大幅増益を記録した。売上高は19.3%増の414億4900万ユーロだった。新型コロナウイルス危機が一段落し、旅客需要が回復したことが追い風になった。物流部門も業績改善に貢献した。利益額のほぼすべてが鉄道システムへの投資に充当される。なお、SNCFの債務額は期末に244億ユーロとなり、期首の363億ユーロから大きく減少した。100億ユーロの債務を国が肩代わりした効果が出た。これと関連して、ボルヌ首相は24日、鉄道部門向けの1000億ユーロの投資プランを公表する。2040年までの期間に実施される。マクロン大統領が先に公表したRER(郊外連絡急行列車)の地方都市における整備事業などが推進される。具体的な投資対象は、24日に提出される「インフラ方針評議会(COI)」の報告書に基づいて、地域圏や関係各方面と協議した上で、6月までに決定する。 KSM News and Research -
2023.02.24
BFM TV、情報操作疑惑のジャーナリストを解雇
ニュース専門の地デジ局BFM TV(アルティス傘下)は23日、ジャーナリストのラシド・ムバルキ氏を解雇したことを明らかにした。情報操作の疑いで解雇した。被疑者不特定で刑事告訴を行ったことも明らかにした。ムバルキ氏については、最近の調査報道を通じて、イスラエルの情報操作組織由来の情報をニュースの中で取り上げた疑いが浮上している。BFM TVは同氏を停職とした上で、処分を検討していた。今回、報道部の承認を経ずに独断で放送していたことが明らかになったとし、規則違反で懲戒免職処分とすることを決めた。この疑惑は、複数のメディアの記者が加わる調査報道組織「Forbidden Stories」を通じて浮上した。この報道によれば、イスラエルのテルアビブに、あらゆる種類の非合法の情報操作を請け負う「チーム・ホルヘ(Team Jorge)」なるグループがあり、このグループが計画した情報操作にムバルキ氏が協力した可能性がある。例えば、ムバルキ氏は、ロシアの財閥への経済制裁がモナコのヨット産業に打撃を与えているとするニュースを昨年9月に放送したが、チーム・ホルヘはそのニュース映像を編集してツイッター経由で大量にネット上に流し、対ロ制裁に反対するキャンペーンを組織したのだという。このほかに、カタールや西サハラ問題に関する問題報道があったとされる。ムバルキ氏の側では、操作の意図がある情報とは思っていなかったとし、金品を受け取って協力した事実はないと述べている。 KSM News and Research -
2023.02.24
英国の週4日勤務制試験実施、結果は上々
英国で週4日勤務制(週休3日制)の大規模な試験が実施され、その結果が明らかにされた。これはシンクタンクAutonomyなどが様々な部門の61社の企業の2900人の従業員を対象に2022年6月から12月まで半年を費やして実施したもので、2月21日にその結果をまとめた報告書が発表された。一口に週4日勤務制といっても、様々なモデルがあり、各社に選択が委ねられた。従業員の実感としては、ストレスが軽減され(39%)、疲労が低下し(71%)、より短時間で同じ仕事をこなせるなどの効果があった。また仕事と家庭の両立が楽になり(54%)、社会生活の調和も楽になった(62%)。無駄な時間が減った反面、大企業の従業員からは同僚との雑談などがなくなったことを残念がる反応も出た。企業側にとっては、退職や欠勤が大きく減り、売上は平均で微増するという好結果が得られた。試験に参加した61社中、56社は週4日勤務制を維持する方針であり、そのうちの18社は正式な採用をすでに決定した。この試験が実施された背景には、新型コロナウイルス危機対策としてのテレワークの活用などの勤務形態の変化を経て、従業員の労働条件に対する意識が高まり、いわゆる「大退職時代」のような社会現象が起きているという状況がある。企業が人員の確保に苦労する中で、週休3日制が求人の強みとなるのではないかと期待されている。 KSM News and Research -
2023.02.23
黒崎愛海さん事件控訴審:セペダ被告人は弁護士交代決める
黒崎愛海さんの殺害事件の控訴審公判が21日にオートソーヌ県重罪院(ブズール市)で始まった。セペダ被告人(32)が弁護士を務めていたベイ氏を解任したことから、裁判はすぐに中断した。23日に再開される。ベイ弁護士は、刑事事件専門の弁護士として鳴らしたデュポンモレティ現法相のかつての同僚。セペダ被告人は、1年前の第1審で依頼先だったラフォン弁護士を解任し、ベイ氏に弁護を依頼していたが、21日の公判では最初にベイ氏の書簡が朗読された。ベイ氏はこの中で、解任されたことを明らかにし、弁護士として出廷できない旨を表明した。裁判所は国選弁護人2人を被告人に提案したが、被告人側はポルトジョワ弁護士事務所を選任し、裁判は23日に延期された。ポルトジョワ弁護士事務所は、セペダ被告人が当初から依頼していた複数の弁護士事務所の一つ。今回の解任劇の背景について、ルモンド紙は、被告人の両親の意向が反映されたものだと報じている。セペダ被告人は地元チリの資産家・名士の家柄で、両親は不名誉な裁判から息子を守ろうとあらゆる手を尽くした。第1審裁判では、不利な証拠の数々を前に、ラフォン弁護士が、量刑を軽くする目的もあり、被告人に自供を暗に促す場面があったが、被告人は泣き崩れはしたものの、罪を認めることはなかった。そこには、陪審席の最前列で常に息子を注視し、休憩時には被告人と言葉を交わす両親の姿があり、「罪を決して認めない、無実を一貫して主張する」という方針を貫くよう、息子を厳しくコントロールしている様子がうかがわれたという。ベイ弁護士の解任劇は、困難な裁判で活路を見出そうとする弁護士に対して、両親が、息子に対してと同様に決して自由を与えなかったというのが真相であるかもしれない。仏ブザンソンに留学中だった女子大生の黒崎愛海さんが2016年12月に行方不明となったこの事件では、遺体が発見されないまま、かつての交際相手だったセペダ被告人が起訴された。第1審のブザンソン重罪院は2022年4月に、被告人に対して禁固28年の有罪判決を言い渡した。被告人側が控訴し、今回の控訴審に至った。 KSM News and Research -
2023.02.23
仏民放M6、放送免許更新に成功:当局機関はニエル氏の提案退ける
仏ARCOM(放送行政監督機関)は22日、民放大手TF1とM6の放送免許を更新する方針を決めた。M6と免許を争っていた実業家グザビエ・ニエル氏の提案を退けた。TF1とM6の放送免許は5月初めに期限切れを迎える。ARCOMは規定により、入札を経て免許の交付を決める手続きを開始したが、無風と思われたこの入札にニエル氏が闖入し、行方が注目されていた。ニエル氏はフリー(通信)の創業者で、デジタル分野の大物投資家として知られる。ニエル氏は、去る15日にARCOMが行った面接などの機会を通じて、番組制作投資の拡大や広告時間の削減など、M6よりも内容面で勝る提案をアピールしたが、M6は過去の実績を強調して対抗、ARCOMは冒険をせずにM6に軍配を上げた。M6は独ベルテルスマンの傘下。TF1との合併計画が実現せずに終わった後だけに、免許の防衛は重要な課題だった。M6の地デジにおける視聴率(占拠率)は30%程度。免許は10年期限(5年間の更新可)で交付される。交付に先立ち、ARCOMとの間で放送事業に関する詳細を定めた契約を締結する必要がある。 KSM News and Research -
2023.02.23
ブルジュ市の軍需産業、需要増に対応
仏軍需産業の中心地の一つであるブルジュ(シェール県)では、関連企業が需要増への対応に追われている。シェール県では軍需産業の雇用数が5000人程度に上る。MBDA(ミサイル)やNexter(戦車)の拠点をはじめとして、関連企業や公的部門がこの地に集まっている。ロシアのウクライナ侵攻が始まる以前から、軍需産業は軍事予算増額を背景に好況が続いていた。新型コロナウイルス危機には影響されにくい業種であることも好材料だった。ウクライナ侵攻以降は関連の特別受注が入り、各社とも生産体制を強化した。MBDAの場合は、ブルジュ都市圏の2ヵ所の拠点で合計1650人程度を雇用しているが、2023年には240人程度の採用を計画している。政府からの追加受注が確定すれば、さらに体制を強化する予定。Nexterの場合はウクライナ情勢の影響がさらに大きい。同社は、CAESAR自走式りゅう弾砲18基を仏政府から昨年夏に特別受注。これは、仏政府がウクライナに提供した分を代替するための発注で、さらに、去る1月には12基を追加受注した。6基を同時に生産し、納期は従来のほぼ半分の17ヵ月に短縮した。政府からの確約が得られるなら、さらに生産ラインを1本追加し、弾薬工場にも投資する計画。新たな倉庫の建設は既に着手されている。 KSM News and Research -
2023.02.22
アルタレア、Woodeumを完全買収
仏不動産大手アルタレアは21日、50%出資先の同業Woodeumを完全買収すると発表した。買収額は公表されていないが、報道によれば、評価額は1億ユーロ前後に設定されたという。Woodeumは2014年の設立で、木造建築による住宅開発を主力業務とする。CLT(直交集成板)を用いた規模の大きい木造建築物の開発を得意とし、これまでに引き渡し済み又は着工済みの住宅が5500戸余り、計画中が3000戸余りとなっている。年商は2億7000万ユーロ。アルタレアは2019年にWoodeumの上位持ち株会社であるWO2ホールディングの50%株式を取得。今回残り株式を取得して完全買収する。買収後もWoodeumの経営陣は残留して経営を続け、ペメゼックCEOはアルタレスの執行役員を兼務する。アルタレアはこの買収により、環境配慮型の住宅開発事業を強化。新建築に適用されるエネルギー効率規制「RE2020」は今後、2031年までに次第に基準が強化されてゆくことになっているが、Woodeumは現状で2031年規制をクリアしており、コンプライアンス面で貴重な戦力になる。今後はオフィス・店舗等の開発にも木材の利用を広げる方針。 KSM News and Research -
2023.02.22
降水ゼロの連続記録、31日間に
メテオ・フランス(気象協会)は21日、前日の20日までの31日間に渡り、全国で降水がない日が続いたと発表した。2020年の3月17日から4月16日までの記録に並んだ。22日には降水があるものと予想されているが、21日にも降水がなければ、新記録の更新となる。降水ゼロとは、全国平均の降水量が1mm未満のことを指す。地域レベルで多少の降水はあったが、この定義では全国的に降水がない日が続いたことになる。冬季(12月下旬から3月下旬までを指す)に限ると、洪水ゼロの連続記録は1989年の22日間で、それを既に大きく超えている。この時期は、地下水系の水位が上昇し、夏季に向けて水資源を蓄える時期に当たる。このままだと、厳しい渇水を経験した前年の夏に続き、今年はさらに被害が大きくなる恐れがある。2020年の前回の記録時は、豊富な降水があった後だったため、夏季の渇水はさほど目立たなかったが、今回は既に地下水系の水位が通常に比べて目立って下がっている後の降水ゼロであるため、この調子で少雨が続けば、影響は一段と大きくなる恐れがある。全体として、2020年以来、降水量は低めで推移しており、気候変動の影響がフランスでは特に少雨となって現れているように見える。 KSM News and Research -
2023.02.22
パリ五輪入場券販売、不評の声も
2024年パリ五輪の入場券の販売が始まった。選択の幅が限られている、料金が高い、などの不評の声が聞かれる。仏国内では、入場券が合計で1000万枚販売されることになっている。うち300万枚が初回分として販売途上にある。抽選申し込みをした人の抽選がなされ、購入権利者が決まり、2月13日より購入受付が開始された。抽選に当たった人にはメールで通知がなされ(3月15日までの予定)、通知を受けた人はそれから48時間以内にインターネット経由で購入しなければならない。少なくとも3つの種目で同じ数だけ入場券を購入する(全部で31種目が販売対象に)のが義務で、最大で18枚を購入できる。ただし、実際に購入を開始した人々からは、自由に種目を選べない(人気種目を2つ以上選ぶことは認められない)、とりわけ、値段がとても高く(陸上だと100メートル決勝でなくても690ユーロ)、「24ユーロから」という看板に偽りがある、といった批判の声が上がっている。組織委の側では、全体の1割が24ユーロという事実に間違いはなく、現時点でもまだ一部種目で残っており、5月11日に始まる第2陣の販売においても確保されると指摘。安価な入場券の販売を可能にするためにも、料金に「メリハリをつける」必要があると説明している。組織委は、運営費用の3分の1を入場料収入で賄う計画で、12億4000万ユーロの収入確保を目指している(うち1億900万ユーロを、セーヌ川パレードを含む開会式で確保)。ただ、この見通しについて、仏会計検査院は楽観的過ぎるとして疑念を呈している。 KSM News and Research -
2023.02.21
黒トリュフ、今年は不作
黒トリュフの収穫・取引期間がほぼ終了した。気候変動の影響で例年より1ヵ月早く終了した。今年は不作で、卸売価格も大きく上昇したが、品質は低かった。黒トリュフは南仏で生産される。黒トリュフはトリュフ類の中で唯一、栽培が可能で、フランスはかつて主要な生産地だったが、現在ではスペインとイタリアに大きく差をつけられており、トップ5にも入っていない。平年の年間生産量は50トン程度、売上高は2500万ユーロ程度となっているが、この収穫期では、生育が始まる春季の少雨などにたたられて、ほとんどの産地で生産量が半減した。最大の産地はボークリューズ県で、生産量の70%が集中している。今期の卸売価格は、ボークリューズ県のリシュランシュで1kg当たり最大で1300ユーロ、トゥールーズ市では2000ユーロ近くにまで跳ね上がった。トリュフを栽培するには、1ヘクタール当たりで1万ユーロの初期投資(地代含まず)が必要で、8-10年間は収穫なしに保守作業が必要と、早期のリターンは望めない。フランスでは、栽培者の数は減る一方(1980年代から半減の7500程度)で、事業の規模も小さく、秘密主義も成長を妨げている。その一方で、温暖化によりトリュフ栽培の北上が可能になっており、サルト県などで、新規参入に成功し、付加価値向上を実現した農業経営体の事例も見られるようになっている。 KSM News and Research -
2023.02.21
仏国民の17%が肥満
公的研究機関INSERMなどが行った肥満調査の結果が発表された。仏国民の17%が肥満という結果が得られた。この調査は、層別抽出により選ばれた9598人を対象に、質問票を回収する形で2020年に行われた。これによると、ボディマス指数が30以上の肥満者が全体に占める割合は17%に上り、「太り気味」(25-30)を含めると全体で47.3%の人が過剰な体重の問題を抱えている。ちなみに、米国では過剰体重者が占める割合は70%に達する。フランスでは、過去に行われた方法が若干異なる調査で、2012年時点で、過剰体重が30%程度、肥満者は8.5%となっており、直接の比較はできないが、全体的に見て顕著な増加傾向を示していると考えられる。過剰体重では男性(全体の53.5%)の方が女性(41.3%)より多いが、肥満者に限ると女性(同17.4%)の方が男性(16.7%)より多い。年齢層別では、65才以上で肥満者の割合が19.9%、18-24才では9.2%と、年齢が上がるにつれて肥満者は増えるが、1997年以来で肥満者の占める割合は18-24才の層で4倍以上に増えており、若い世代の肥満増が目立っている。地域別では、北東地方で肥満者が占める割合が特に高く(オードフランス地域圏で22.1%、グランテスト地域圏で20.2%)、パリ首都圏(イルドフランス地域圏)では14.2%と低い。社会的身分との連動も大きく、肥満者が占める割合はワーカーでは18%(過剰体重では51.1%)、管理職では9.9%(過剰体重では35%)と大きな差がある。これは地域別の格差とも一定の連動があると考えられる。 KSM News and Research -
2023.02.21
技術系ベンチャー企業向けラベル「ネクスト40/FT120」、2023年版が公表
マクロン大統領は20日、大統領府に技術系ベンチャー企業界の代表者らを集めた会合を開いた。「ネクスト40/FT(フレンチテック)120」の認定企業の入れ替え結果の発表が行われた。「ネクスト40/FT120」は、成長株の非上場企業を網羅したラベル認定制度。増収率と資金調達の実績を基準に選定がなされる。全部で120社程度がリストアップされ、うち特に実績が高い企業が「ネクスト40」に入るという形になっている。ユニコーン企業(評価額10億ユーロ超)は自動的に「ネクスト40」に迎えられる。2023年版では、新たに27社がリスト入りし、うち6社は圏外から直接にネクスト40に入った。FT120企業の合計売上高は113億ユーロ、雇用数は4万7800人(うち3万1400人がフランス)に上る。ネクスト40企業のうち、ユニコーン企業は26社で、エコロジー移行関係の企業が10社(うち7社が2023年版でネクスト40入り)、工業部門の企業が7社(同3社)、ディープテック分野の企業は8社(同3社)を数えた(これらの分類には重複部分がある)。ネクスト40から離れた企業は11社を数え、Brut(メディア)、Ornikar(オンライン自動車教習)、Malt(フリーランス斡旋のプラットフォーム)などがFT120に後退した。Deezer(音楽ストリーミング)は上場を経てネクスト40から離れた。Meero(写真家斡旋のプラットフォーム)は、ユニコーン企業でないことが判明し、FT120から除外された。今回、ネクスト40に入った企業の中には、Safti(オンライン不動産仲介)やWifirst(WiFiネットワーク)が含まれる。 KSM News and Research -
2023.02.20
年金改革法案、下院を通過
下院は17日深夜に年金改革法案の審議を終了した。法案は続いて3月2日より上院で審議される。政府は同法案を緊急審理案件に指定。この場合は、審議期間が制限され、下院と上院の審議は1回までに制限される。下院の審議期間は17日までに設定されており、その期間終了を以て審議は打ち切られた。野党側が修正案を乱発したこともあり、定年年限を62才から64才へ引き上げる旨を定める第7条は採決されないままで審議が終了した。上院においては、もとの政府提案の法案に戻して、政府が任意に修正案を追加したバージョンが審議の対象になる。下院審議においては、野党の左派連合NUPESが多数の修正案を提出して審議に抵抗。審議妨害のみを目的とした修正案の提出には批判の声も上がり、NUPESに加わる政党は、主軸の左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を除いて修正案を取り下げた。これにより、NUPES内の足並みの乱れも露呈する格好になった。他方、保守野党「共和党」の内部でも、党のナンバー2を務めるプラディエ下院議員の行動が物議を醸し、シオティ党首が18日にプラディエ氏の役職を解く決定を下した。シオティ党首らは、早くから就労を開始した人に対する特例措置(拠出期間43年間を上限とする)の導入を取り付けることで年金改革法案の可決成立に協力する方針だが、プラディエ氏は政府に対する対決姿勢を崩さず、和を乱す存在となっていた。上院では、共和党と中道勢力が過半数を握っており、法案の審議はより円滑に進むものと政府は期待している。上院審議を経て、両院協議会が3月13日頃に召集され、妥協案の策定がなされる。妥協案を上下院がそれぞれ採択すれば法案は可決成立する。連立与党と共和党の協力が確かなら法案は可決成立するが、造反組が出た場合には覆される可能性もある。一方、労組側は、法案の上院審議にあわせて3月7日(火)に抗議行動を行う予定で、一部労組は同日より無期限ストを開始する方針をちらつかせている。 KSM News and Research -
2023.02.20
OECD、EU住民の運動不足に警鐘
経済協力開発機構(OECD)の調査報告書によると、欧州連合(EU)の成人の3分の1は運動不足であり、また人口の45%が全くスポーツをしていないという。このような運動不足は単に個人の健康に悪影響を及ぼすだけでなく、公共保健支出の増大にもつながる。OECDは、世界保健機関(WHO)が推奨する週150分の中強度の有酸素運動を行うことで、循環器系疾患、鬱病、糖尿病などの予防に大きな効果があり、平均寿命も伸びると指摘し、これによってEU諸国の保健予算を0.6%節減できると強調した。これは金額にして年間に80億ユーロ弱に相当し、リトアニアとルクセンブルクの年間保健予算の合計を上回るという。身体活動は年齢とともに衰える傾向にあり、55才以上ではスポーツなどの身体活動を週に1回以上行う人の割合は4分の1にすぎない。特に女性は男性よりも運動不足になりがち。また、高所得層と比べて低所得層で運動不足が顕著。 KSM News and Research -
2023.02.20
サンマリナが倒産、ギャラリー・ラファイエットの地方店舗も民事再生に
靴販売チェーンのサンマリナ(San Marina)が18日に閉店した。20日にマルセイユ商事裁が会社清算を決める見通し。同社は全国に163店舗を展開、従業員数は600人強。同社は、経営難にあったビバルト・グループから2020年に売却を経て独立したが、新型コロナウイルス危機を経て立て直しが進まず、去る9月に会社更生法の適用を申請していた。適切な売却先が見つからず、会社清算に追い込まれた。アパレルチェーンのカマイユが去る9月に清算になったのをはじめとして、経営難に陥るチェーン店が後を絶たない。そのカマイユを保有していた実業家オアヨン氏の関連資産は特に不振が目立ち、ゴースポール(スポーツ用品販売)が会社更生法の適用下に入ったのに続いて、ギャラリー・ラファイエットの地方店舗網が民事再生手続きの適用を申請する。オアヨン氏はボルドー地方出身の実業家で、3軒の高級ホテルを主要資産とする持株会社FIBを通じて、2018年のギャラリー・ラファイエットの地方店舗網買収を皮切りに、経営不振のリテール業者を相次いで買い取り、資産を膨らましていた。ここへ来て一大帝国が次々に瓦解している感がある。 KSM News and Research -
2023.02.17
ギャラリー・ラファイエット、BHVを売却へ
仏百貨店大手ギャラリー・ラファイエットは16日、傘下のBHVの売却に向けて、不動産開発のSGM社と独占交渉を開始したと発表した。パリの市役所そばにある本店と、ベルサイユ近郊にあるショッピングセンター「Parly2」内の店舗、そして、本店の周囲にある住宅や店舗が入居する建物、さらに、ギャラリー・ラファイエットがフランチャイジーとして経営するイタリア食材販売のイータリー(Eataly)店舗が売却対象となる。イータリーの店舗経営はギャラリー・ラファイエットが継続する。また、財団組織「ファライエット・アンティシパシオン」が入居している建物はラファイエットが維持する。合計で8万平方メートルの建物が売却の対象となり、売却額は公表されていないが、5億ユーロ程度に上るとの見方もある。ギャラリー・ラファイエットは、新型コロナウイルス危機を通じて逆風が続いたが、観光客が戻りはじめて、業績も回復に向かいつつある。資産売却を通じて資金を確保し、オスマン通りの本店のリニューアルを進める。売却されるBHVは、創業1860年の老舗百貨店だが、近年は経営が傾いていた。買収するSGMは、大型の投資を行ってテコ入れを図る計画で、定評があるDIYコーナーは維持することを約束している。SGMは2018年の設立、ギャラリー・ラファイエットから地方の7店舗の建物と営業権を2022年に買収しており、今回のBHVの買収の話もその時に持ち上がったという。なお、ギャラリー・ラファイエットの地方店舗の残りは実業家オアヨン氏が買収してフランチャイジーとして経営を続けているが、同氏の傘下の資産はこのところ経営難が相次いでおり(カマイユは清算、ゴースポールは会社更生法の適用下に)、ギャラリー・ラファイエットの地方店舗の行方にも懸念が高まっている。 KSM News and Research -
2023.02.17
フランスの電力生産、2022年は異例の低水準に
仏送電事業者RTE(仏電力大手EDFの子会社)は2022年にフランスの総発電量が前年比15%減の445.2TWhに低下し、1992年以来の最低水準に落ち込んだと発表した。原子力発電と水力発電の低迷が原因。EDFが運転する原子力発電所で、応力腐食割れ(SCC)の問題が発生し、修理や検査のために多数の原子炉の運転を停止したために、定期保守のための停止と合わせて、一時は56基の原子炉の半数が停止するという事態が生じた。原子力発電の通年での稼働率は54%にとどまり、2015-19年の平均(73%)を大きく下回った。年間の原子力発電量は279TWhで、総発電量の63%を占めたが、これは原子力発電が通常は発電の70%以上を担ってきたフランスでは異例の状況で、2021年の69%をも下回った。また、水力発電も高気温と渇水のせいで低迷し、発電量が49.7TWhにとどまって、2014-19年の平均を20%下回った。原子力と水力以外では、ガス火力発電が44.1TWh(前年は32.9TWh)、石炭火力発電が2.9TWh(前年比1TWh減)、風力発電が37.5TWh、太陽光発電が18.6TWhをもたらした。なお、2022年の電力消費量は467TWhで、前年比で1.7%低下した(天候や日数の影響を調整済み)。電力貿易収支は1980年以来で初めて入超となった。 KSM News and Research -
2023.02.17
マクロン大統領、イスラム教との協議機関としてFORIFを選定
マクロン大統領は16日、大統領府で「仏イスラムフォーラム(FORIF)」の代表者らを集めた会合を開いた。大統領はこの機会に、「仏イスラム教評議会(CFCM)」を廃止し、仏イスラムフォーラムを国とイスラム教との間の協議の窓口とする考えを示した。「仏イスラムフォーラム」は1年前に設立された。イスラム教系の団体の代表者を集めて、イスラム教導師の養成、宗教施設の警備、イスラム教教誨師の管理、過激派対策法への理解向上、の4つのテーマを中心に協議を重ねて報告書を作成、その正式な提出が大統領府において行われた。マクロン大統領は自らが全体会議に出席することで、イスラム教の問題に肩入れし、関係構築に積極的な姿勢を示した。大統領が廃止を宣言した「仏イスラム教評議会(CFCM)」は、2003年に当時のサルコジ右派政権が設置したもので、アルジェリア、モロッコ、トルコなどイスラム教国の影響下にある組織を集める形で発足したが、内部の対立が続き、運営は麻痺状態に陥っていた。大統領は、CFCMがこれまで果たした役割に一定の評価を与えた上で、協議において他国との折衝を求められるような状況を解消する必要があった、と述べて、新組織を協議の窓口に切り替えることを正当化した。ただ、大統領に、民間団体であるCFCMを廃止する権利はなく、CFCMは19日に執行部の会合を開いて対応を協議することになっている。 KSM News and Research -
2023.02.16
フランスに進出の米国企業、経済的展望に関する見方が後退
在仏米国商工会議所は2月15日、フランスに進出する米国企業を対象に毎年行っている調査結果を公表した。これによると、自社の属する部門のフランスにおける向こう2、3年の経済的展望について、「良好」と回答した企業は全体の22%にとどまり、前年の74%から大きく後退した。「安定」は40%、「否定的」は34%となり、後者は前年の4%から大きく増大した。主なマイナス材料としては、物価の推移、求人難、消費の減退が挙げられた。また、2023年に人員を増やす予定だと回答した企業は全体の27%にとどまり、この割合は前年の半分に後退した。ただし、人員を現状維持する予定だと回答した企業も56%に上っており、人員削減に向けた圧力は高まっていない。本国のフランスに関する判断も、45%が「良好」、13%が「極めて良好」となっており、フランスへの投資意欲は必ずしも衰えていない。英国の欧州連合(EU)離脱以来で、欧州へのゲートウェイとしてのフランスの評価はむしろ高まっていると考えられる。在仏米国商工会議所は、米国のインフレ抑制法(IRA)により、米国の対仏投資に陰りが出るとは考えていないとコメントした。その一方で、フランスの投資環境における問題点としては、労使関係上の困難や労働コストの高さ、行政手続きの煩雑さなど、従来から指摘されているポイントが挙げられている。 KSM News and Research -
2023.02.16
仏大手銀行3社、ATMの共同化に着手へ
仏大手銀行3社がATMの運営を共同化する。現金引き出しの利用が減る中で、運営を共同化して経費の節減を図る。3社は、顧客へのサービスはむしろ強化されると説明している。共同化に合流したのは、BNPパリバ、ソシエテジェネラル、クレディミュチュエルCMAF(子会社のCIC含む)の3社。クレディミュチュエル・アルケアは対象外。3社は共同で、「キャッシュ・セルビス(Cash Services)」の商号の下で、今年末からATMの共同運営を段階的に開始する。2025年末までに1万5000台の共同化を終える。都市部では需要を見て配置台数を削減し、農山漁村地方では維持して国土カバーはそのままに合理化を図る。他行のATMを利用した場合には手数料がかかるのが一般的だが、「キャッシュ・セルビス」名義のATMでは、3行の顧客はいずれも無課金で利用できる。他のサービス(現金預け入れ、小切手入金等)が利用可能な機種では、3行のいずれの顧客もサービスを利用可能となる。国内のATMの台数は減少を続けている。2018年から2021年にかけては10%近く減少し、4万7853台となった。 KSM News and Research -
2023.02.16
「頬に傷」自慢のチャレンジ、中学生の間で流行
TikTok上で頬に傷をつけて誇示する遊びが流行している。フランスの中学生たちの間でも広まっている。ネット上に多数出回っているチュートリアルでは、頬を指で強くつまんでうっ血の痕を作る方法が説明されている。男子と女子とも、赤い傷跡のようなものができた顔が多数、SNS上に投稿されている。なぜこのような流行が生じるのかは不明だが、この件の場合は、自傷というよりは、自己顕示欲の発露として、簡易式の刺青といった感覚でなされるのかもしれない。チャレンジのごときは、同じような投稿が大量に現れ、あっという間に陳腐化するわけだが、それでも飛び込んでゆく者が後を絶たないのは、行為自体にやはりある種の魅力があるのだろうか。「傷跡なんてかっこ悪いし、それに痛い。同じクラスの奴がやっているのを見たけど、つまんだ時に叫んでいたからね」(日本の中学2年生に相当する「第4学年」のラファエルくんとパップくん)という同世代人の証言もあるが、痛いのは見なくてもわかるだろうと思う。専門家らは、血管腫ができると長く残る可能性があり、審美的な観点からリスクがあるとして、注意を促している。 KSM News and Research -
2023.02.15
欧州議会、通信衛星コンステレーションの整備計画を承認
欧州議会は14日、通信衛星コンステレーション「Iris2」を整備する計画を承認した。プロジェクト募集の開始に向けた条件が揃った。欧州連合(EU)が整備したコンステレーションとしては、地球観測のコペルニクスと測位システムのガリレオがある。ウクライナにおいては、イーロン・マスク氏の「スターリンク」が軍用に用いられて成果を挙げたという経緯があるが、スターリンクが容量制限を計画するなどして、今後の利用が危ぶまれている。この一件で、欧州における国家主権通信サービスの確保の重要性が痛感されるに至り、今回の欧州議会における計画案の承認につながった。整備される「Iris2」は、民生用と軍・政府用のデュアルユースとなり、軍用や政府用の通信確保と、救難信号の取り扱いや災害時の通信確保、過疎地における高速インターネットのカバー等の用途に用いられる。プロジェクト募集においては、欧州企業にのみ応募を制限し、衛星運営大手や宇宙機製造大手のコンソーシアムに参加を求める。ベンチャー企業や中小企業の参加も条件として求める。欧州議会は環境配慮も基準として追加した。欧州委員会は2027年までに24億ユーロの予算を既に準備している。欧州宇宙機関(ESA)も向こう3年間で6億4200万ユーロの拠出を約束した。民生用の用途に対応して民間資本にも負担も求める。欧州議会は2024年末までの初打ち上げを期待。2027年の商用サービス開始を目指し、全体の投資額は60億ユーロ程度に上るとみられている。 KSM News and Research -
2023.02.15
ワイン・スピリッツの仏輸出額、2022年に10.8%増
ワイン・スピリッツの仏輸出業者が作る団体FEVSが14日に発表した統計によると、仏アルコール飲料の輸出額は2022年に170億ユーロに上った。前年比で10.8%増加し、新記録を更新した。アルコール飲料の仏貿易収支は157億ユーロの黒字となり、航空機・宇宙機に続く第2の貿易黒字部門としての地位を固めた。ただし、数量ベースでは輸出は前年比で3.8%減を記録しており、輸出額の増加はインフレ亢進にも由来している。輸出先では、米国が14%増の47億ユーロで最大市場の地位を固めた。第2位は英国、第3位は中国で、中国では新型コロナウイルス禍の影響で成長が振るわなかった。これにドイツとシンガポールが続いた。アフリカは市場規模がまだ4億4000万ユーロと小さいが、21%の大幅増を記録した。製品別では、シャンパンが20%増の42億ユーロに上り、過去最高記録を更新した。輸出量は8.5%増を記録した。コニャックが39億ユーロ(9.3%増)で続いたが、輸出量は3.7%減を記録した。やはり中国市場が低調なのが響いている。ワインでは、ボルドーで主力の中国市場の不振(中国の仏ワイン輸入量は25%近く減少)の打撃が大きく、輸出量が6.0%減を記録、輸出額は1.2%増の23億5900万ユーロを記録した。ブルゴーニュは2021年の不作による品薄で輸出量が13.2%の大幅減を記録したが、これは逆に価格の上昇をもたらし、輸出額は14億4800万ユーロと、12.6%の大幅増を記録した。 KSM News and Research -
2023.02.15
仏失業率、10-12月期に7.2%へ低下
14日発表のINSEE統計によると、フランス(マヨット海外県除く)の失業率は10-12月期に平均で7.2%となった(ILO基準による失業率)。前の期比で0.1ポイント低下し、新型コロナウイルス危機の関係で見かけ上の失業率が一時的に低下した2020年4-6月期を除けば、2008年1-3月期以来で最低の水準に下がった。10-12月期の失業率は、当初予測に比べて0.1ポイント低い水準となった。低下の勢いは鈍ったものの、足元の景気低迷の中でも雇用状況の改善は続いた。失業率は、前年同期比では0.3ポイント低下。新型コロナウイルス危機直前の2019年10-12月期と比べると1.0ポイントの低下を記録している。失業者数は219万5000人に上る。非就業者のうち、自主的に就業を目指していないか、目下のところ就業できない状況にある人の数は190万人で、これらの人々は失業者の予備軍とみなされる。その数は前の期比で3万8000人の微増を記録し、労働力人口に占める割合は4.5%と、1年前から大きく変化していない。 KSM News and Research -
2023.02.14
開業医が抗議行動、診察料金の引き上げなど要求
開業医らは14日に全国で抗議行動を行う。政府が計画する一連の医療改革に反対している。14日の抗議行動は、すべての開業医組合が参加する統一の抗議行動となった。デモ行進とストが行われる。このような大同団結が実現するのは異例の事態で、開業医らが政府の方針に強い不満を持っていることがうかがわれる。14日には、与党ルネサンスが準備した議員立法法案が上院で審議されるが、この法案は、医師不足を緩和する目的で、医師の権限の一部を看護師や薬剤師など医師以外の医療専門家に委譲する措置が含まれており、開業医らはこれを、医療の質の低下を招くものだと批判している。これに加えて、開業医らは健保公庫との間で、診察料金の引き上げを含む協定の改正交渉を進めているが、公庫側が25ユーロから26.5ユーロへの引き上げを提案したことに、小幅に過ぎる挑発的な提案だと反発している。医療改革では、医師不足が深刻な医療砂漠問題の緩和が重要なテーマとなっている。政府は、医師が本来の医療業務に専念できるようにする目的で、一部の職務を他の医療スタッフに委譲したり、専用の事務職を置いた診療所を整備することなどを提案しているが、医師の側では、医療体制を強化するための予算増額や、医師の所得増強を優先するよう要求している。 KSM News and Research -
2023.02.14
NGO、電子たばこの広告規制違反を糾弾
たばこ中毒の対策を訴えるNGOのCNCTは13日、電子たばこの販売状況を問題視する調査結果を発表した。電子たばこの広告規制が順守されていないことを問題視した。電子たばこの広告は、POS広告に限り認められているが、店外からは見えないようにすることが義務付けられており、広告の大きさなどに関する規制もある。CNCTが行った615店舗を対象とする調査によると、全体で1194件の電子たばこ広告があったが、うち43%は店外から見えるように配置されていた。また、75%程度は、広告の寸法に関する規制が守られていなかった。全体の84.5%の店舗でなんらかの違反があった。CNCTは特に、「パフ」と呼ばれる使い捨て電子たばこの氾濫を問題視。パフは外見がカラフルで、果物の味などが添加されているものが多い。CNCTは、遊び感覚で若い世代がニコチン摂取に誘い込まれる危険性があるとし、未成年の消費は禁止されているのに、中学生にも消費が広がっていると問題視した。SNSを通じた隠れ宣伝も増えているという。CNCTは、ニコチン入りの製品にフレーバーをつけることを禁止するよう勧告。同様の禁止は、欧州諸国ではハンガリー、フィンランド、オランダが導入している。 KSM News and Research -
2023.02.14
仏政府、ニッケル生産のSLNの救済で4000万ユーロを融資
仏経済省は13日、ニューカレドニアでニッケルを生産するSLN社に4000万ユーロの融資を行うと発表した。経営難のSLN社を支援する。SLNの株式の56%は仏資源大手エラメットが保有する。SLNはニューカレドニアでニッケル鉱石の採掘と精製を行っている。現地で2200人を直接に雇用、間接雇用は8000人に上り、地域経済を支える役割を担っているが、10年余りにわたり赤字が続いており、最近の自然災害で一段と資金繰りが厳しくなった。仏政府はエラメットと共に資金を注入して当面の事業の維持を確保する。なお、仏経済省は、ニューカレドニア自治体と日本製鉄が出資するSTCPI(SLNの34%株主)が協力しなかったことを遺憾とコメントしている。仏経済省は、この支援により数ヵ月間は事業を継続することが可能になったと指摘した上で、これ以上の資金供給は、SLNの改革が前提になると指摘し、立て直しを進める方針を示した。安価なエネルギー確保のための投資や、EVバッテリー向けのニッケル精製への転換などのシナリオが考えられるが、詳細は明らかになっていない。 KSM News and Research -
2023.02.13
年金改革反対デモ、11日に100万人近くが参加
11日に全国で年金改革反対デモ行進が行われた。内務省集計では合計で96万3000人が参加し、大規模な動員が達成された。同日には、労組が交通ストなどを断念し、デモ行進に集中する形で多数の参加が得られるよう配慮した。その成果もあり、ストライキも行われた前回7日の75万7000人を上回る参加者数を記録。ただし、1月31日の127万人には及ばなかった。その一方で、今回のデモ行進は、規模の小さい自治体でも実施され、参加者の裾野が広がった。労組側は共同で、16日(木)にも抗議行動を実施する予定だが、3月7日(火)のその次の抗議行動に特に照準を合わせており、この日には「フランス全国を停止させる」ことも辞さないと予告している。年金改革法案の下院審議は今週末(17日)に終了する予定だが、主に左派野党側が乱発した1万6000件近くの修正案の審議をまだ残している。10日までには年金特殊制度(公社等に適用される)の一部の段階的な廃止を定める第1条がようやく採択された。政府は年金改革の基本方針では譲らない姿勢を維持しており、厳しい綱引きが今後とも続くと予想される。 KSM News and Research -
2023.02.13
フリー・モバイル、ブイグ・テレコムから3億ユーロ超の賠償金を獲得
パリ商事裁判所は9日、携帯キャリアのフリー・モバイルが同業ブイグ・テレコムを相手取って起こした損害賠償請求の訴訟で、3億800万ユーロの賠償金の支払いをブイグ・テレコムに命じる判決を下した。控訴の有無によらず、即時の支払いを命じた。フリー・モバイルは2012年に4番目のキャリアとして仏携帯市場に参入した。今回の訴訟は、ブイグ・テレコムが2014年から2021年にかけて行っていたスマートフォンと24ヵ月の解約不可期間を設定した定額プランの抱き合わせ販売を巡り争われた。フリー・モバイルはこれを、競合を締め出し、顧客を囲い込むための不当競争行為だと主張、それにより自社が失ったシェアの賠償金として、7億2200万ユーロの支払いを求めていた。ブイグ・テレコムは、スマートフォン購入の顧客の定額プランの料金を、通常よりも高めに設定していたが、裁判の機会に、高めの料金は追加のサービス(新聞・雑誌の閲覧、テレビ番組の配信等)の提供に対応するものだと主張していた。パリ商事裁は、料金の明細が明示されていないという理由を挙げてこの主張を退け、この抱き合わせを割賦販売に相当するとし、割賦販売に適用される法令が順守されていないため違法だと認定した。賠償金額はフリー・モバイル側の主張した額よりも低めに設定されたが、かなりの額になった。ブイグ・テレコムは判決を不服として控訴すると発表したが、裁判所の命令により、賠償金を即時に支払わなければならない。フリー・モバイルは同様の訴訟を、同業のSFR及びオレンジを相手取って起こしている。携帯市場における競争の激しさをうかがわせる動きといえる。 KSM News and Research -
2023.02.13
暴言司会者のアヌーナ氏とC8局、350万ユーロの罰金処分に
仏ARCOM(放送行政監督機関)は9日、カナルプリュス(ビベンディ子会社)の傘下の地デジ局C8に対して、350万ユーロの罰金処分を言い渡した。シリル・アヌーナ氏が制作・司会するバラエティ番組「TPMP」において、同氏がゲストのボワイヤール下院議員(左翼政党「不服従のフランス(LFI)」所属)に対して暴言を吐くなどした件で、厳しい罰金処分を決めた。アヌーナ氏とC8の側では、処分を不服として異議申し立てを行うと予告した。この事件では、ボワイヤール下院議員が、ビベンディの主要株主であるバンサン・ボロレ氏の批判を展開しようとしたところ、アヌーナ氏が激高して「クズ野郎」などと罵倒し、言葉を遮るなどした。ARCOMはこの事件について、ゲストの権利を侵害し、その名誉と評判を損なう言動があったと認定し、厳しい罰金処分を決めた。また、下院議員によるボロレ氏への批判表明を意図的に妨げたことを、情報の誠実性と独立性の確保に関する義務への違反に相当すると指摘し、局側に改善を求める催告を行った。アヌーナ氏が問題を起こしたのはこれが初めてではなく、複数の事案で制裁も受けている。同氏はそれでも番組でポピュリズム的な意見表明を続けている。カナルプリュスの傘下局では、ニュース専門地デジ局のCNewsでも、右翼の論客エリック・ゼムール氏を重用する(同氏はその後極右政党「ルコンケット」を設立)など、右寄りの傾斜が目立つ。ビベンディを経由してカナルプリュスへの影響力を行使するボロレ氏が、アヌーナ氏をメディア戦略のキーパーソンに据えているという見方もあり、問題続きでもアヌーナ氏は安泰という状況が続いている。 KSM News and Research -
2023.02.10
ウクライナ大統領、ブリュッセル訪問で戦闘機供与とEU早期加盟を要請
ウクライナのゼレンスキー大統領は2月9日、ブリュッセルを訪問し、午前中に欧州議会で演説し、欧州委員会のメンバーと協議した後、午後には欧州連合(EU)の首脳会議(欧州理事会)に出席した。欧州委員会のフォンデアライエン委員長と欧州理事会のミシェル議長との共同記者会見において、ゼレンスキー大統領はとりわけ戦闘機の供与を要請し、公表はされてはいないが、一部のEU加盟国から前向きな反応を得たと述べた。大統領は「手ぶらで帰るわけにはいかない」とも述べて、EUに圧力をかけた。大統領はまた、ウクライナのEU加盟手続きについても、早期の決着を求め、2023年中に加盟する必要があると強調した。ミシェル議長はロシア軍の攻勢に緊急に対処する必要があることを確信していると述べたが、戦闘機の供与には言及しなかった。またフォンデアライエン委員長は、戦時にもかかわらずウクライナがEU加盟に向けて改革を進めていることを評価したが、加盟は候補国のメリットに応じて承認されると指摘した。ウクライナの場合は特に汚職対策の進展が加盟交渉開始の前提条件となる。他方で、委員長は、対ロシア制裁の第10弾を近くEU加盟国に提案すると予告し、これには100億ユーロ規模の禁輸措置が含まれると説明した。新たな制裁は、ロシアのウクライナ侵攻の1周年に当たる2月24日より前に導入される見通し。委員長は、ウクライナにおける戦争犯罪を裁くための国際法廷の設立準備も進んでいると述べた。ミシェル議長は、制裁により凍結されているロシア資産をウクライナの戦後の再建に充当することが正当だとの見解を表明した。なお、イタリアのメローニ首相は、8日にパリでマクロン仏大統領とショルツ独首相がゼレンスキー大統領と会談した際に、自らが招かれなかったことに不満を表明した。また、それとは別に、6日から7日にかけてルメール仏経済相とハーベック独経済相が一緒に訪米して、米インフレ抑制法(IRA)の欧州への影響に関する懸念を米政府に伝えたことについても、イタリアに誘いがなかったことに伊政府閣僚が遺憾の意を表明した。 KSM News and Research -
2023.02.10
パリ首都圏の公共交通機関定期券、遅延賠償で払い戻しに
パリ首都圏の公共交通機関を統括するIDFMのペクレス会長(イルドフランス地域圏議長)は8日、首都圏の公共交通機関の定期券(Navigoなど)を保有する人に対して、2022年の列車遅延の賠償金として、37.60ユーロを返済すると発表した。2022年の月額料金の半額に相当する。IDFMは、公共交通機関の運営を受託するRATP(パリ交通公団)と国鉄SNCFに対して、10-12月期に発生した遅延について、契約に基づいて賠償金を請求することを決定。その賠償金を利用者に払い戻すことにした。定期券の料金は1月に12%の引き上げがなされており、利用者の不満をかわす目的もあって、今回の払い戻しが決定された。なお、RER(郊外連絡急行)のB線及びD線を利用する人については、定時運行率が80%を下回る期間が3ヵ月以上あった区間について、1ヵ月分(6ヵ月分以上の定期券を購入した人)又は0.5ヵ月分(3ヵ月-5ヵ月分の定期券を購入した人)の料金が追加で返済される。返済を得るには3月14日に開設される専用サイトを通じて申請する必要がある。RERの追加返済については、住居証明か勤め先の所在地証明を提出する必要がある。申請の受付期間は1ヵ月間。この種のキャンペーンの際には、メールやSMSなどを通じて偽サイトに誘導するフィッシング詐欺も増えるので気をつけたい。 -
2023.02.10
仏管理職の採用、2022年に好調が持続
管理職雇用協会(APEC)は9日、四半期ごとの管理職採用状況に関する調査結果を発表した。順調な推移を示しており、2022年の管理職採用数は過去最高を記録する見込みだとした。同採用数の集計結果は4月初頭に発表される予定。10-12月期には、全体の14%の企業が、3月末までに1人以上の管理職採用を計画していると回答。この割合は4-6月期の10%から上昇を続けている。すべての規模の企業で上昇を続けているが、中堅企業・大企業では64%が採用を計画していると回答しており、特に多い。APECを経由する管理職求人は、工業部門で10%増など、部門ごとにばらつきがあるものの、良好な推移を示している。雇用市場全体でみると足元で雇用創出の勢いが鈍っているが、管理職の雇用は順調な推移を示している。人材不足が目立ち、求人難にあることを背景に、企業が積極的に採用を進めていることが背景にある。求人から採用までの平均期間は8-11週間となっており、3週間近く長くなったという。管理職全体の失業率は4.1%だが、55才以上の層に限ると6.8%と高く、年齢が高めの層の採用拡大が課題になっている。 KSM News and Research -
2023.02.09
民間部門の雇用数、10-12月期に3000人の微増:増加の勢い鈍る
8日発表のINSEE統計によると、12月末時点の民間部門雇用数は2083万7600人となり、3ヵ月前から3000人の微増を記録した。その前の7-9月期には11万9100人の純増を記録しており、増加の勢いは急速に衰えた。10-12月期には、農業部門で5300人増を記録、工業部門でも3100人増を記録した。逆に、これまで雇用増を支えてきた商業部門は4900人の減少を記録。前の期の9万9500人増から減少に転じた。うち、派遣は6500人の増加を記録したが、派遣以外が1万1400人の減少に転じたのが響いた。非商業サービス部門では500人の減少を記録した。民間部門の雇用数は、前の期まで7四半期連続で大幅な純増を記録していた。その勢いで、2022年通年では30万4900人の純増(1.5%増に相当)を記録、新型コロナウイルス危機直前の2019年末と比べても4.5%多い(88万人に相当)水準を保っている。この数四半期では、経済成長が減速に向かう中でも順調に雇用増が続いており、専門家らは首を傾げていたが、10-12月期の数字は、このような場合に予想される推移と横並びの数字になったと考えることもできる。 KSM News and Research -
2023.02.09
衛星電気推進システムを開発のExotrail、5400万ユーロを調達
宇宙ベンチャーの仏Exotrailはこのほど、5400万ユーロの資金調達(シリーズB)を完了した。商用化段階への移行と米国への進出のための資金とする。同社は2015年の創業で、今回で合計調達額は7000万ユーロ程度に上った。公的投資銀行のBPIフランス、公的投資ファンドのSPIや軍隊省のイノベーションファンドFIDなど公共部門の投資家と、民間部門の投資家(ユーラゼオ、360 Capital、Karista、Innovacomなど)が揃って出資した。Exotrailは、100-150kg程度の小型衛星用の小型電気推進システムを開発。仏トゥールーズに本社を置き、パリ首都圏のマシー(エソンヌ県)には工場を置いている。従業員数は90人。衛星・宇宙分野のパートナーであるユーテルサット、OHBシステム、エアバスを含む20社程度を顧客とする。電気推進システムの開発に加えて、宇宙空間での荷役作業をこなす小型衛星「スペースバン」(400kg程度)の開発計画にも着手した。2023年末に実証機の打ち上げを目指している。 KSM News and Research -
2023.02.09
仏経済成長率、1-3月期と4-6月期にプラス成長を確保へ
7日発表のINSEE予測によると、仏経済成長率(前の期比)は1-3月期と4-6月期にそれぞれ0.2%を記録する。プラス成長が続くと予測した。INSEEはこれまで、1-3月期の成長率を0.1%、4-6月期の成長率を0.3%と予想していた。前者を上方修正し、後者を下方修正した。仏経済成長率は、2022年10-12月期に0.1%を記録し、前の期の0.2%からさらに減速したものの、懸念されたマイナス成長に転じるのは免れていた。INSEEは、6月末までは低めながらプラス成長が続くという予測を示した。なお、7-12月にゼロ成長になったと仮定した場合の2023年の通年成長率は0.6%になる。INSEEはインフレ率については、徐々に低下に向かい、1月の6.0%に対して、6月には5.0%にまで減速するとの予想を示した。この2月には電力・ガス価格の引き上げもあり、インフレ率は6.0%のまま推移するが、その後は、比較対象がインフレ亢進期を迎えた後の時期(ロシアによるウクライナ侵攻は今からちょうど1年ほど前)になることから、インフレ率も減速を迎える。 KSM News and Research -
2023.02.08
バイオ炭による二酸化炭素回収のNetZero、1100万ユーロを調達
バイオ炭(バイオチャー)による二酸化炭素回収・貯留に取り組む仏NetZeroはこのほど、1100万ユーロのシリーズA調達を完了した。自動車大手ステランティス、化粧品大手ロレアル、海運大手CMA CGMを新たに出資者に迎え(前2社は傘下ファンドを通じた出資)、ビジネスエンジェルのグループも調達に加わった。同社は昨年には、イーロン・マスク財団より100万ドルを調達していた。バイオ炭とは、木炭を含む古くから知られている技術につけられた呼称で、燃焼しない条件下でバイオマスを炭化することで、バイオマス内の二酸化炭素が放出されないような安定した物質に変えて、長期間の貯留を可能にするという趣旨。技術そのものに先進性はなく、NetZeroの場合は、熱帯地方(ブラジル、カメルーン)で、バイオマスを原料にバイオ炭を生産する拠点を、プランテーション付近に整備することから事業を開始した。事業で得た炭素クレジットは顧客企業向けに販売される。今後、バイオ炭の製造ユニットを輸送が容易なコンテナに入れて対象諸国に展開する計画で、それぞれの分野でノウハウやネットワークを有するCMA CGMやステランティスの事業面での支援にも期待する。気候変動政府間パネルは、2050年時点で50億-100億トンの二酸化炭素回収が必要になると判断している。バイオ炭はそのうち、10億-20億トンの貢献ができるものと期待されている。 KSM News and Research -
2023.02.08
ECサイト売上高、2022年に13.8%増
仏通信販売業界団体FEVADの集計によると、仏ECサイト売上高は2022年に1470億ユーロに上った。前年比で13.8%増加した。2021年には15.1%増を記録しており、2022年にも成長が持続した。購入件数は23億件に上り、前年比で6.5%増加した。オンライン購入をする人は平均で、1週間に1回強の買い物をしており、年間の支出額は3515ユーロに上る。1回の平均額は65ユーロで、これは前年比で6.9%増加した。主にインフレ亢進が金額の増加の要因となった。支出先をみると、サービスが全体で前年比36%増を記録しており(2019年比では50%増)、特に旅行関係が55%増と大きく伸びている。これは、料金上昇も要因となっている。逆に、製品の販売は前年比で7%減を記録した。ただし、新型コロナウイルス危機直前の2019年と比べると33%伸びている。製品別にみると、美容・健康と家具・インテリアの伸び(2019年比)が目立ち、コロナ危機時によく売れた製品は相対的に苦戦した。 KSM News and Research -
2023.02.08
仏貿易赤字、2022年に1640億ユーロ:戦後最大の赤字幅に
7日発表の貿易収支統計によると、フランスの貿易赤字は2022年に1640億ユーロとなり、前年の850億ユーロの2倍近くに達した。戦後最大の赤字を記録した。輸入額が29%増を記録し、輸出額は18%増にとどまった。このため、貿易赤字の拡大を招いた。やはりエネルギー価格の高騰が輸入額を大きく押し上げる要因となった。ドル高ユーロ安もエネルギーの名目上の価格を押し上げた。その一方で、国内では原子力発電の不振から、通常は出超の電力貿易収支が入超を記録し、これも収支の悪化を招いた。全体として、エネルギー製品の貿易収支は1150億ユーロの赤字を記録、赤字幅は前年の450億ユーロを大きく上回った。全体の貿易赤字の増加分の8割強がエネルギー製品の貿易収支に由来している。2022年にはサプライチェーンの混乱も続き、航空機・宇宙機や自動車などの部門の回復も遅れた。その一方で、食料品の輸出は、ウクライナ危機が逆に追い風となり、拡大が目立った。特に北アフリカ諸国向けの小麦等の輸出増が目立った。 KSM News and Research -
2023.02.07
11日(土)の年金反対運動、鉄道ストは回避に
国鉄SNCFの各労組は、11日(土)に予定されている年金改革への抗議行動について、鉄道ストライキは行わない方針を固めた。同日のデモ行進に参加する職員の便宜を図り、ストの予告は維持するが、実際にストは行わないという。前日の10日は、一部地域における学校休暇前の最終日に当たり、11日には帰省客等で混雑が予想されることから、それに配慮してストを断念した。また、ストを行うと、そのためにデモ行進に参加できない人が出る恐れがあるが、デモ行進の動員数を稼ぐことで政府への圧力を行使することを優先し、ストは見送りとした。7日(火)は予定通りに交通ストが行われるが、前回ストと比べて勢いが持続されるのかどうかが注目点となる。翌8日には、CGTとSUD-Railの2労組のみがスト継続の予告を出しており、8日のストの規模がどの程度になるかも、抗議行動の今後を占う上で注目される。その一方で、政府は、一定の譲歩を土産に、保守野党の共和党の協力を取り付けることで、年金改革法案の議会での採択を目指しているが、共和党の内部では、協力の是非を巡り足並みが揃っていない。プラディエ副党首は、ボルヌ首相が示した譲歩(21才未満で就業を開始した人に定年年齢より1年早い退職を認める)について、共和党にとっても国民にとっても欺瞞に過ぎないと批判。多数派擁立の道がまだ険しいことをうかがわせている。 KSM News and Research -
2023.02.07
個人債務整理、2022年に申請件数が7%減
フランス中銀が6日に発表した集計によると、個人債務整理の申請件数は2022年に11万3081件となり、前年比で7%減少した。ピークを迎えた2014年と比べると実に51%減少した。ただし、2022年には、前半には減少したものの、後半には増加に転じて、ほぼ前年と同じ水準まで復帰。これは、エネルギーを中心とする物価の上昇が進んだことと関係があると考えられる。中銀は、申請書類において、通常の費用(家賃、光熱費、移動費、電気通信等)に由来する債務が増加傾向にある点を指摘。2022年にそれが債務額に占める割合は15%に上った。前年比では微増だが、2011年と比べると6ポイント上昇している。超過債務者のプロフィールに大きな変化はなく、25-54才が83%を占め(25-54才は18才以上人口の63%を占めるのみ)、女性(特にシングルマザー)、孤立者、借家人、貧困線以下で生活する人で多い。 KSM News and Research -
2023.02.07
地産地消のソルゴ(モロコシ)酒、パリ首都圏で誕生
少雨に強い作物として注目を集めているソルゴ(モロコシ)を原料に、パリ首都圏の業者がアルコール飲料の製造を開始した。近くインターネット経由などで発売する。ルワンダ出身のファイダ氏が立ち上げたP.H.C Jus社(トロピカルフルーツ等の加工製品を製造)が生産に乗り出した。エソンヌ県バランクール市にある同社が、地産地消を目指して近隣農家を探し、同県サンテスコビーユ市にあるウード・クテ氏の農園「フレールダルム」とのマッチアップが成立した。クテ氏は2020年からソルゴの栽培を開始し、これまでは粉や粒の形で販売してきたが、ソルゴ酒により販路が拡大する。P.H.C Jus社が製造するソルゴ酒はアルコール度数が15%。ハチミツを配合して口当たりをよくする工夫をした。色は黄金色で、ラム酒やコニャックなどに見た目は似ている。ウード・クテ氏は、「万人受けする味。個人的には冷やして飲むとよいと思う」と話す。今後は、ソルゴビールや加工食品などに多角化を目指す。 KSM News and Research -
2023.02.06
年金改革:7日の交通ストは大きな影響が出る見込み
年金改革反対の抗議行動が7日(火)に行われる。RATP(パリ交通公団)は7日の運行状況予想を発表した。メトロは、自動運転の1号線と14号線(工事のため22時に運転終了)、そして3bisが通常通りの運行だが、それ以外の路線は、路線により平時の33%から66%の運行となる。3、8、13号線はラッシュ時のみの運行となり、その他の路線でも運行時間帯が短縮されるところがある。RER(郊外連絡急行)では、平時の33%から50%程度の運行となるが、D線では6本に1本と特に影響が大きい。国鉄SNCFが運行するパリ首都圏のローカル線でも影響は大きく、路線により平時の20-40%の運行に留まる(U線では66%)。トラムウェイは通常の運行を確保。バスは平時の8割の運行となる。ストの影響は前日の夕方から始まり、8日にも残る恐れがある。SNCFでは、全国的にローカル線が平時の3割程度の運行にとどまり、TGV(高速鉄道)は路線により、33-50%の運行となる。国際列車も影響を受ける。ユーロスター(英国方面)は平時の75%を確保、タリス(ベルギー、オランダ、ドイツ方面)はわずかに影響がある程度だが、リリア(スイス方面)は平時の50%の運行にとどまる。その他の国際列車は平均で平時の33%の運行となる。国内の在来線長距離列車の運行は大幅に乱れる。年金改革法案の下院本会議での審議が始まるのに向けて、ボルヌ首相は5日付の日曜紙JDDとのインタビューに答えて、早くから就労を開始した人に早期退職を認める制度の適用を拡大することを提案。21才未満で就業を開始した人にも適用を広げて、63才で退職できるようにすると言明した。この譲歩は、保守野党「共和党」の協力を取り付けることを狙ったものと考えられる。 KSM News and Research -
2023.02.06
デュソプト労相、不正疑惑で検事局による捜査が継続に
金融犯罪全国管区検事局(PNF)は4日、「不当な優遇」の疑いでデュソプト労相に関する捜査を続けていることを認めた。報道を追認する形で認めた。デュソプト労相は、アノネー市の市長を務めていた時代に市が結んだ業者との契約を巡り、2020年春から捜査の対象となっている。当初は、水道事業の委託契約先であるSaur社から美術品を贈られ、その後の2017年に契約が更新されたとの報道がなされ、それがきっかけとなり捜査が開始されていた。2020年8月にはデュソプト氏の自宅が捜索の対象になった。検事局の発表によると、現在の捜査は、その時に押収された文書等を根拠に、2017年頃の問題ではなく、それより前に2009年から2010年にかけて、やはりSaur社との間に不明朗なやり取りがあった疑いを巡り、継続されているという。「汚職」などの疑いではなく、「不当な優遇」の疑いで検察は捜査を続けている。デュソプト労相は、発表の内容を認めた上で、当初取り沙汰されていた疑いが晴れ、1件のみの疑いが残ったと説明。疑いはいずれ全面的に晴れると確信しているとも述べた。政府は労相を今のところ擁護している。 -
2023.02.06
仏工業生産、10-12月期に増加
3日発表のINSEE統計によると、仏鉱工業生産は12月に前月比で1.1%増加した。前月の2.0%増と比べると減速したが、増加が続いた。ただし、10-12月期では、前の期比で0.7%減、前年同期比で0.2%の減少を記録した。これは、鉱業・エネルギー生産の後退に主に由来しており、同生産は、前の期比で6.1%減、前年同期比で14.5%の大幅減を記録している。12月に限ると、前月比で6.0%増を記録し、前月の0.3%減から増加に転じた。鉱業・エネルギーを除いた工業生産は増加傾向を示しており、10-12月期に前の期比で0.2%、前年同期比で2.6%の増加を記録した。12月に限ると前月比で0.3%増を記録した(前月は2.4%増)。10-12月期を前の期比でみると、製油等が13.5%減と後退が目立ち、これにはストの影響がある。食品加工でも0.7%減を記録した(前年同期比では1.7%減)。自動車も2.6%減を記録しているが、前年同期比では15.9%の大幅増を記録した。これは、前年同月にはサプライチェーンの混乱の大きな影響が出ており、それとの比較で、大きな回復を示したという事情がある。化学も前の期比で4.3%、前年同期比で8.2%の後退を記録した。 KSM News and Research -
2023.02.03
フランスの労働組合加入率、2019年に10.3%まで低下
仏労働省の調べによると、フランスの労働組合加入率は2019年に10.3%となった。この調査は2013年に開始したもので、2013年には加入率は11%だった。加入率は1990年代半ばまでの25年間に低下した後、安定期に入ったが、その後に再び低下に転じた。2019年の10.3%という加入率は公共部門と民間部門をあわせたものだが、公共部門のみだと18.4%に上る。ただし、2013年の19.8%と比べて、低下幅も大きい。国家公務員では23%と特に加入率が高く、公立病院職員では15.6%、地方公務員では14.1%。民間部門では2013年の8.7%が2019年には7.8%にまで低下した。ただし管理職では7.2%から7.9%への上昇がみられ、管理職労働組合CFE-CGCの影響力も強まった。職種別では、運輸部門の労組加入率が2013年の18%から2019年に16.5%に低下し、金融・保険部門では同期に12.9%から16.9%に上昇した。工業部門では12.2%から10.9%に低下。宿泊業・飲食業では加入率が伝統的に低いものの、4.1%から5.9%への上昇がみられた。建設業では4.1%から3.4%に低下した。なお、政府の年金制度改革案に反対して、抗議行動が活発化する中で、労組の活動があらためてクローズアップされ、加入者も急増しているといわれる。CFDTは1月だけで30%の加入者増を記録したとしている。 KSM News and Research -
2023.02.03
アパレルチェーンが苦戦:クーカイに会社更生法適用、ピムキーは人員削減か
アパレルチェーンのクーカイ(Kookai)は1日、パリ商事裁判所に会社更生法の適用を申請した。事業を継続しながら立て直しの可能性を探る。クーカイは1983年の設立で、1980年代から1990年代にかけて、若い世代に人気を博した。親会社だったビバルトの経営不振を経て、2017年にオーストラリアのフランチャイジーであるMagi社により買収された。仏国内に121店舗を展開、従業員数は320人に上る。同社も同業他社と同様、新型コロナウイルス危機で大きな打撃を受けた。ロックダウン期間中のテナント料の支払いなどが負担となり債務が膨張し、会社更生法の適用申請に至った。一時代前に隆盛を誇ったアパレルチェーンは軒並み苦境にあり、同業のカマイユ(Camaieu)も去る9月に会社清算となった。他方、ピムキー(Pimky)は、オーナーであるミュリエ一族(食品小売大手オーシャンなど所有)により、投資家グループに売却されることが決まったが、労組側は大量の人員削減が決まると警戒している。ピムキーは従業員数1300人、仏国内に213店舗を展開するが、労組CGTでは、400-500人が削減されるとみている。ピムキーもクーカイなどと同様、新型コロナウイルス危機で大きな打撃を受け、ターゲットの若い顧客層を、英プライマークや中国Sheinなどの競合に奪われている。 KSM News and Research -
2023.02.03
ボルヌ首相、インタビューで年金改革を擁護
ボルヌ首相は2日夜、国営テレビ局フランス2とのインタビューに応じて、年金改革について説明した。首相はこの機会に、投票を経ずに議会に法案を採択させることを可能にする憲法上の手段(いわゆる49.3)を、年金改革法案について行使する可能性を否定。また、定年年齢の引き上げ(62才から64才へ)により、高年齢層の失業が増加する可能性があることについて、高年齢層の雇用状況を企業単位で評価する指標制度をあわせて導入する予定であることを説明した上で、この指標に依拠して成績の悪い企業に対して制裁措置を適用する可能性に初めて言及した。首相はまた、早くから就労を開始した人や女性の場合には改革が不利益をもたらすケースがあることを認めて、これらの点で改革案の手直しに応じる考えを再確認した。首相はその上で、年金改革は現行の賦課型の年金制度を維持するために不可欠だと強調、段階的に就労期間を長くしてゆく改革の実現で譲らない姿勢を示した。労組側はボルヌ首相の発表について、新味のない内容だとして批判。改革派労組のCFDTのベルジェ書記長も、7日(火)に予定される次回の抗議行動の規模を拡大して政府に対して譲歩を求める必要があると言明、抗議行動への参加を呼びかけた。 KSM News and Research -
2023.02.02
就労者意識調査:77%が仕事に満足、労働負荷増大を訴える人も多数
シンクタンクのモンテーニュ研究所は2日、就労者の意識調査の結果を公表する。ルモンド紙が同日付でその内容を報じた。調査は、様々な業種の従業員及び自営業者5000人余り(官民とも)を対象にした聞き取り調査の結果を、各種の統計データ等を突き合わせる形で分析する形で行われた。これによると、過去5年間で労働負荷が増えたと答えた人は全体の60%に上り、かなり多かった。「労働負荷が過剰だ」と答えた人も、従業員で24%、自営業者で18%と高い。この割合は、「保健・社会問題・文化」部門で31%と特に高い。モンテーニュ研究所は、労働負荷が過剰だという意識は主観的なものであり、上司との関係の悪化や、裁量範囲の小さい就労状況などの不満に由来していると分析している。また、自らの仕事を、心理面で労苦が大きいとみている人の割合は47%と高かった。こちらは、健康・社会問題部門に加えて、宿泊・外食部門などで特に多かった。就労時間については、フルタイム雇用の60%が何らかの形で通常から外れた就労時間で勤務している(20時以降の就労、休日出勤)と回答。労働負荷が過剰ではないと答えた人の平均労働時間は週37時間(自営業者では40.8時間)だった。従業員の32%は、より多く労働してより多くの収入を得たいと回答。全体として、77%が自身の仕事に満足していると答えたが、就労における不満(複数回答可)では、「報酬」が46%と多く、「キャリアの展望」(41%)、「会社における承認の低さ」(38%)などが上がった。 KSM News and Research -
2023.02.02
カジノとTeract、資本提携に向けた交渉を開始
食品小売大手カジノとオーガニック食品等販売のTeractが資本提携に向けた交渉を開始した。カジノが2月1日夜に報道を認める形で発表した。報道によると、カジノとTeractは、資産を持ち寄って2つのグループを設立する。一方はカジノが過半数資本を握り、両社の小売事業を統合する。カジノ傘下のカジノ、フランプリ、モノプリ、ナチュラリアなどの店舗と、Teractのジャルディランド、ガムベール、Delard、グランマルシェ・ラマリニエールなどが統合される。もう一方では、Teractの株主が過半数資本を握り、地産地消の農作物・オーガニック食品等を卸売する企業が設立される。Teractは、農業協同組合大手InVivoの流通事業をSPAC(特別買収目的会社)が買収する形で上場した企業で、上場主体となったSPACは、実業家のズアリ氏が、大物事業家のニエル氏及びピガス氏と組んで設立していた。ズアリ氏は、フランプリ・モノプリのフランチャイジー業を展開しており、カジノと縁がある。カジノは、持ち株会社のラリーを通じて実業家ナウリ氏が経営権を握っているが、高債務の削減が課題となっている。カジノ本体の債務削減はほぼ完了したが、ラリーは2025年に20億ユーロの債務返済期限を迎えることになっており、その対応を準備する必要に迫られている。資本提携により現金が得られれば返済の展望が開ける。 KSM News and Research -
2023.02.02
英仏海峡トンネル、電力系統改善で投資:輸送力を強化
英仏海峡トンネルを運営するゲットリンクはこのほど、トンネル内の電力系統の改善を目的とする投資を完了した。輸送量の増強を目指す。ゲットリンクは、米産業大手GE製の静止型無効電力補償装置(SVC)を英国側に設置。電力供給の安定性と品質の向上を実現した。グリッドの改善のための一連の投資ともあわせて、合計で4500万ユーロをこのために投資した。英仏海峡トンネルでは現在、同時に片側で6本、両側で12本の列車が通行可能だが、今回の投資により、片側8本、両側16本の列車が通行できるようになる。ゲットリンクはまた、信号システムをERTMSの最新世代に切り替える計画で、これにより交通量を50%増やせるという。将来的には、1日300本の通過(多い時は400本)という現在の体制を、1日1000本に増やすことを目指す。貨物・車両の輸送量の増強に加えて、高速鉄道の誘致にも取り組む。現在はユーロスター(仏国鉄SNCF子会社)が乗り入れているのみだが、スペイン国鉄RENFEや伊トレニタリアなどが、仏高速鉄道事業への参入の延長線上で英国向け路線への関心を強めているものとみられ、トンネル通過に余裕が生じれば、需要には事欠かないと期待できる。 KSM News and Research -
2023.02.01
年金改革反対の抗議行動:デモ行進の参加者は増加、スト参加者は減少
1月31日に年金改革反対の抗議行動が行われた。全国のデモ行進には、内務省集計で127万2000人が参加。19日に行われた前回のデモ行進の112万人を大きく上回った。また、2010年に同様のテーマで行われたデモ行進の123万人も上回り、記録的な動員が達成された。うち、パリでは前回の8万人に対して、8万7000人が参加。マルセイユ(2万6000人が4万人へ)とモンペリエ(1万人が2万5000人へ)では特に増加が目立った。逆に、ストライキへの参加は全体的に後退。公務員部門のスト参加率は、国家公務員で28%から19.4%へ、地方公務員で11.3%から7.6%へ、公立病院部門で17.8%から13.6%へ、それぞれ後退した。このほか、国鉄SNCFでは46.3%から36.5%へ、EDF(仏電力)では44.5%から40.3%へ後退した。スト参加者が減り、デモ参加者が増えたのは、民間部門の従業員の合流が増えていることを示唆している。労組連合は31日夜に会合を開き、今後の抗議行動について協議。翌週の2月7日(火)と11日(土)に抗議行動を行うことを決定した。 KSM News and Research -
2023.02.01
カイユボットの絵画、オルセー美術館入り
印象派の画家、ギュスターヴ・カイユボット(1848-94年)の絵画「舟遊び」がパリのオルセー美術館入りした。1月31日に一般公開が始まった。カイユボットは資産家で、後に印象派と呼ばれる画家たちのメセナとして、またコレクターとして活躍した。多彩な才能を示し、自らも優れた作品を残し、1876年の第2回印象派展にはこの「舟遊び」を含む35点の絵画を出品した。45才で1894年に死去し、所有していた印象派の画家の作品は国に寄贈され、オルセー美術館の所蔵品の重要部分をなしているが、自身の作品は寄贈の対象としなかったことから、作品が人目に触れる機会も少なく、評価が遅れたという経緯がある。「舟遊び」は、カイユボットの兄弟の子孫が保有を続けていたが、2020年に数点の作品と共に売りに出された。政府は30ヵ月に及ぶ輸出の暫定禁止措置(1993年の法律に依拠する「国宝」指定措置)を発動し、国による取得に着手。高級品大手LVMHがメセナとして4300万ユーロを拠出し、このたびオルセー美術館入りが実現した。この額は、「国宝」指定措置の導入以来の171件の買収の中で最大規模。「舟遊び」は国内の複数の美術館において巡回展示が予定されており、手始めにリヨンで展示される。また、来年2024年はカイユボットの死去130周年に当たり、オルセー美術館は、米国のゲティ美術館(ロサンゼルス)及びシカゴ美術館と共同で特別展を開催する予定。 KSM News and Research -
2023.02.01
仏経済、10-12月期にプラス成長を確保:1月インフレ率は6.0%
1月31日発表のINSEE速報によると、10-12月の仏経済成長率は前の期比で0.1%となり、前の期の0.2%から後退した。ただ、事前には0.2%のマイナス成長が予想されており、それに比べると推移は良好で、プラス成長が維持された。GDP成長率への貢献を見ると、内需(在庫変動除く)が0.2ポイントのマイナス貢献(前の期には0.9ポイントのプラス貢献)に転じたのが目立った。個人消費支出が前の期比で0.9%減を記録した(前の期には0.5%増)のが響いた。固定資本形成は0.8%増となり、前の期の2.3%増から減速したものの、増加が持続した。半面、外需は0.5ポイント分のプラス貢献となり、こちらはプラス貢献に転じた。輸入が1.9%減(前の期は3.9%増)、輸出が0.3%減(同0.8%増)となり、輸入の後退が大きかったことが影響した。在庫変動は0.2ポイントのマイナス貢献となり、前の期の0.3ポイントのプラス貢献からマイナスに転じた。2022年通年の経済成長率は2.6%となり、新型コロナウイルス危機後の反動で6.8%の成長率を達成した前年に比べると減速した。2022年には、1-3月期に0.2%のマイナス成長を記録した後、4-6月期には0.5%、7-9月期にも0.2%の成長率を達成。成長は10-12月期にも減速はしたものの持続した。経済活動が2023年年頭のペースのままにとどまったと仮定した場合の2023年通年の経済成長率は0.3%となる。これとは別に、同じく31日発表のINSEE速報によると、1月のインフレ率は前年同月比で6.0%となり、前月の5.9%からわずかに上昇した。食品価格は13.2%の上昇を記録(前月は12.1%の上昇)、物価を全体として押し上げた。エネルギー価格も16.3%上昇し(前月は15.1%)、やはり物価を押し上げる要因となった。工業製品の上昇率は4.6%で前月並み、サービス料金の上昇率は前月より0.3ポイント低い2.6%に落ち着いた。欧州連合(EU)基準のインフレ率は1月に7.0%となり、前月の6.7%を上回った。 KSM News and Research -
2023.01.31
年金改革法案、下院審議始まる:国民は改革反対の抗議行動を支持
下院小委員会で30日に年金改革法案の審議が始まった。合計で7000件を超える修正案が提出されており、荒れ模様の審議となることが予想される。ボルヌ首相は30日朝にも、定年年齢(年金受給の開始を申請できる年齢)を62才から64才に引き上げるという点は既に固まっており、修正には応じないと言明。国会審議においては、改革により女性に生じうる不利益を緩和することなど、一連の修正で譲歩して、特に保守野党「共和党」の協力を取り付けることが鍵になる。その一方で、与党「ルネサンス」内でも、15人程度の議員が現状では法案に賛成できないとする立場を表明しており、自陣営を固めることも課題となっている。31日には年金改革に反対するデモ行進とストライキが行われる。経済紙レゼコーなどの依頼で行われた世論調査によると、61%の人が、改革反対の抗議行動を支持すると回答しており、かなりの水準を維持している。最初の抗議行動が行われた12日夜の時点では66%に達していた。年金制度の改革は必要だと答えた人は、全体の56%で多数派ではあるが、12日時点と比べて5ポイント低下しており、政府にとって年金改革を巡る風向きは厳しくなっている。「抗議行動を支持する」と答えた女性は、12日時点の62%が現在では69%へ上昇しており(男性では逆に54%から51%へ低下)、女性の間で年金改革への不満が広がっていることがわかる。 KSM News and Research -
2023.01.31
軽食自動販売機のBolk、企業向けに売り込み
ベンチャー企業Bolkは軽食を自動的に製造する専用販売機を開発した。企業向けに売り込んでいる。Bolkは29才のニコラ・ジャンヌ氏が立ち上げた。2平方メートルを占有する販売機内に、24種の食材が円筒形のカプセル中に収められており、外から見えるようになっている。操作パネルから選ぶと、サラダ、軽食、デザートを機械がその場で準備し、リサイクル可能な容器に入れて取り出し口に用意する。加熱する機能はなく、温かい食べ物は電子レンジで別途温めることになる。容器のサイズは大小の2種類を選べる。300を超える組み合わせが可能だという。機械の開発には3年間の研究開発を要した。現在は2代目のプロトタイプが試験運用段階にある。顧客は80%が法人といい、Qonto(フィンテック)やOpenClassrooms(オンライン教育サービス)、Veepee(ECサイト)などのベンチャー企業で導入が多い。冷蔵庫よりも衛生的で、盗難のリスクが低いのが売り物の一つで、毎週新メニューを投入するなど、サービス重視にも力を入れている。食材は最大で3日間保存され、火曜日と木曜日の15時より50%の割引を適用して食品ロスを防いでいる。Veepeeのサントゥアン事務所(パリ北郊)では、「近所に食べるところがないので便利」(従業員のクララさん)と評判だが、サラダ(大)で8.80ユーロは少し高いかなという評もある。なお、Veepeeは2ユーロを会社負担としている。 KSM News and Research -
2023.01.31
仏スマホ普及率、2022年に87%に達する
ARCEP(仏通信・郵便規制機関)、仏経済一般評議会(CGE)及び仏全国国土整合性庁(ANCT)が1月30日に発表した年次調査結果(調査対象者数:12歳以上の4184人)によると、仏におけるスマホ普及率は2022年に3ポイント上昇し、87%に達した。またスマホ所有者のうち、89%(前年から10ポイント増)がスマホ上でインスタントメッセンジャーを利用してメッセージをやり取りしたことがあると回答。さらにインスタントメッセンジャーを音声通話にも利用したという回答者は78%で、前年から11ポイント増加した。スマホ上でのウェブ閲覧は92%で、5ポイント増加した。一方、ホームオートメーションなどのIoT機器を所有しているという回答者は40%、スマートスピーカーを所有しているという回答者は27%へと増加した。これに対して、テレビ受像機を所有しているという回答者は95%で、10年前とほぼ同じ水準に留まった。なおテレビ受像機と固定インターネット・アクセスを持つという回答者中の83%が、少なくとも1台のテレビ受像機では、ISPのセットトップボックスを通してテレビを視聴している。一方、ラジオに関しては、FM及びデジタル・ラジオによる聴取が65%を占め、インターネット・ラジオの35%を大きく上回っている。 KSM News and Research -
2023.01.30
年金改革反対のストライキ、31日に:大規模になる見通し
年金改革法案の下院審議が30日(月)に始まるのにあわせて、31日(火)には公共交通機関を中心に全国で大規模な抗議ストライキが行われる。当局は、可能な限り、交通機関の利用は控えて、リモートワーク等を優先するよう呼びかけている。交通ストは30日19時から始まり、2月1日(水)の朝まで続く見通し。国鉄SNCFでは、アンテルシテ(長距離在来線)はほぼ全面的に運休、ローカル線(TER)では平時の50%の運行にとどまる見通し。高速鉄道(TGV)も、北部路線で平時の40%、東部路線で同50%、大西洋路線で同25%、リヨン・マルセイユ方面で同50%の運行にとどまる見通し。パリ首都圏の鉄道輸送では、A、B、H、Uが33%、Kが25%、J、L、N、P、Rが10%の運行となる。RATP(パリ交通公団)では、自動運転の1号線と14号線を除いて運行が大幅に乱れる見込みで、路線により、平時の25-50%の運行となる。一部の路線は、ラッシュ時(7時30分-9時30分、16時30分-19時30分)を除いて運行が全面停止される。RER(郊外連絡急行)は、A線が時間帯により25-50%、B線が33-50%、C・D・E線が10%の運行にとどまる見通し。バスとトラムウェイは平時の80%程度の運行が確保される見込み。RATPの運行状況の詳細は30日夜に発表される。オルリー空港の空の便は2割程度が欠航となる見通し。 KSM News and Research -
2023.01.30
社会党党大会:フォール第一書記の再選決める、党内に一応の和解
社会党は28日、党大会の機会に、フォール第一書記(党首)の再選を正式に決めた。19日に行われた党員による決選投票で僅差で敗れたメイエールロシニョル候補(ルーアン市市長)が妥協案を受け入れ、同日の党大会で承認された。メイエールロシニョル候補は、投票で不正があったと主張し、選挙結果に異議を申し立てていた。党を二分した争いに発展し、社会党の対外的なイメージは改めて傷ついた。最終的に、フォール第一書記は、第一書記補佐として、自らに近いロラン氏(ナント市市長)とメイエールロシニョル氏の2人を同列で任命することを提案、メイエールロシニョル氏もこれを受け入れた。信頼感の醸成とコンセンサスを探る姿勢を互いに確認し、可能な限り合議制を重んじた党の運営を行うことを取り決めた。党の空中分解という最悪の事態は回避できたものの、今後の火種は数多く残っている。左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が率いる左派連合NUPESへの対応をはじめとして、両者の対立を招いた問題はまったく決着を見ていない。党勢回復の展望もみえないまま、波乱含みの新体制の幕開けとなった。 KSM News and Research -
2023.01.30
ビベンディ、傘下のエディティス(出版)の上場計画を提示
仏メディア大手ビベンディは先頃、傘下のエディティス(出版)の従業員代表に上場計画を提示した。ルモンド紙がその内容を報じた。ビベンディは、同業ラガルデール・グループの57.35%株式を取得済みだが、ラガルデール傘下の出版大手アシェットとエディティスの統合は競争上の問題をはらんでおり、欧州委員会からの承認が得られるのを待って、議決権は22.46%のまま凍結されている。ビベンディは承認を得るため、エディティスを上場して資本関係を解消する方針を固め、その内容を従業員代表に提示した。これによると、エディティスの株式は、特別配当の形でビベンディの株主に分配され、パリ株式市場のユーロネクスト・グロース(新興企業向け市場)にて上場される。エディティスの株式は現在、29.6%を、ビベンディの親会社であるボロレ・グループが保有しており、残りのビベンディ所有の株式がビベンディ株主の間で分配されることになる。分配後でボロレはエディティスの32%近くの株式を握ることになる。この株式は、エディティスの筆頭株主となる投資家に一括売却される。この買収には、チェコの実業家ダニエル・クレティンスキー氏が正式に名乗りを挙げているが、それ以外で、Reworld(メディア)、大物実業家のグザビエ・ニエル氏、伊出版大手モンダドーリ(ベルルスコーニ一族傘下)、そしてカナダのケベコール(メディア)も関心を示しているという。欧州委は2月半ばまでにこの一括買収者の名前を明らかにするよう、ビベンディに対して求めている。 KSM News and Research -
2023.01.27
LVMH、2022年も記録的業績を達成
高級ブランド大手の仏LVMHは1月26日、2022年の売上高が792億ユーロ、経常的営業利益が211億ユーロに達して、いずれも前年比で23%増を記録したと発表した。全ての事業部門が増収を記録し、有機的成長を達成した(グループ全体の有機的成長率は17%)。特にファッション&皮革製品部門の売上高は386億4800万ユーロに達して、25%の増収と20%の有機的成長を記録した。ルイ・ヴィトンとディオールの両ブランドの好調が同部門の成長を牽引した。地域別では、最大市場の米国で15%の増収を記録し、欧州(35%増)と日本(31%)では大きな増収を達成した。一方、中国の新型コロナウイルス危機の影響で、アジアでは前年並みだった。中国の危機が収拾すればアジアでも成長が見込まれる。2022年には、世界的に経済情勢と地政学的展望が悪化する中で、高級品部門の強靭性が目立ったが、その中でもLVMHは幅広い事業展開に加えて、各事業部門に業績を牽引するリーダー的なブランドを備えていることが強みとなり、競合他社と水をあけている。なお、1月のダボス会議で、オックスファムのようなNGOからLVMHは経済的不平等のシンボルだとする批判が寄せられたが、アルノーCEOは業績発表の機会にこれに反論。LVMHが2022年にフランス国内で1万5000人以上を採用したこと(世界では4万人を採用)、仏国内で50億ユーロの設備投資を行ったこと、また仏国内で25億ユーロ弱の法人税を支払い(世界では50億ユーロ)、付加価値税や社会保険料も含めると年間45億ユーロ以上を納めていることなどを列挙し、同社を批判するのは経済が分かっていない人々だと主張した。 KSM News and Research -
2023.01.27
Latitude、小型衛星打上げ用の再利用可能エンジンの試験に成功
小型衛星打ち上げ用ロケット「Zephyr」を開発する仏ベンチャー企業Latitudeは、再点火・再利用が可能なエンジン「Navier」のプロトタイプの試験に成功した。昨年12月に数時間以内の再点火を繰り返して行い、性能や堅牢性等を実証した。2024年末の初打ち上げを目指す。プロトタイプは、ルクセンブルクのSaturne Technologyに委託し、3Dプリント技術のみを用いて製作された。計画では2022年4月に試験を行う予定だったが、提携先だったアリアン・グループのテストベンチが間に合わず、提携先をSaxa Vord社に切り替えて自前の可動式テストベンチを整備するのに手間取り、実現が遅れた。Zephyrは全長17メートル、2段式の小型ロケットで、ペイロードは70-150kg。100kgまでの小型衛星を高度700km程度の軌道に投入できる。受注から6ヵ月後の打ち上げという短期間・柔軟な運用を売り物とし、料金は1kg当たり3万5000ドルと、既に競合よりも低い料金で始めて、量産化により1万ドルにまで引き下げる計画。開発の最終段階と最終試験の実施、初号機の製造の資金を確保するため、今年に3回目の資金調達を行う予定で、これには、宇宙ベンチャーキャピタルのExpansionやクレディミュチュエルのPEファンド、公的投資銀行BPIフランスなど既存株主が参加する見通し。 KSM News and Research -
2023.01.27
SFR、2G・3Gサービスを2028年末までに打ち切りへ
通信大手SFR(アルティス傘下)は、携帯2G・3Gのサービス廃止の日程を公表した。2Gを2026年末に、3Gを2028年末にそれぞれ打ち切り、4G・5Gのサービスに一本化する。最大手のオレンジは昨年に同様の日程を公表済みで、SFRで2社目となった。2Gは1991年に、3Gは2000年に導入された規格だが、GSMアソシエーションによると、欧州における接続に占めるシェアは、前者で6%、後者でも15%に過ぎず、現在は4Gが75%と主流になっている。2025年時点では、2Gが事実上フェーズアウトとなり、3Gのシェアは5%に下がると予想されている。SFRは、現在は2Gと3Gが占有している、建物への浸透が良好な周波数を順次、4G及び5G向けに振り替えてゆくことで、通信品質の向上を目指す。また、2G・3Gは4Gよりも電力消費が大きいことから、その廃止は、重複を省くことで得られる以上の節電効果をもたらす。ただ、エレベーターの緊急呼び出し電話や店舗の決済端末、一部の自動車用GPS、防犯装置などは2G・3Gを使用しているものがあり、顧客のレベルで設備の更新を図る必要が生じる。 KSM News and Research -
2023.01.26
家計資産総額の中央値、2021年に17万7200ユーロ
1月25日発表のINSEE統計によると、家計資産総額(債務控除前)の中央値は2021年に17万7200ユーロとなった。全体の半数の世帯がこれ以上の資産を保有していることになる。全体として、家計資産総額は2018年から2021年にかけて6.7%増加した。上位10%の世帯の資産額は71万6300ユーロ以上、最上位1%の世帯の資産額は223万9000ユーロ以上となる。資産の分布の偏りは大きく、全体の上位半数の世帯が資産総額の92%を保有し、残りの半数は8%を保有するのみとなっている。また、上位5%の世帯が全体の34%の資産を保有しており、最上位1%には15%の資産が集中している。逆に、下位30%の世帯にはほとんど資産がない。こうした偏りの規模には2018年以来で大きな変化は生じていないという。資産総額の62%は不動産で、この割合には2004年以来で変化がない。2021年年頭時点で6割の世帯が自身の住居を所有していると推定され、持ち家世帯と非持ち家世帯の間には資産額(債務控除前)に8.6倍の開きがある。このほか、金融資産が21%、その他資産(車両、設備財、宝飾品・芸術品等)は6%、職業上の資産が11%をそれぞれ占める。 KSM News and Research -
2023.01.26
仏政府、公的保証の伴う銀行融資制度PGEの返済猶予の適用を延長
仏政府は25日、公的保証の伴う銀行融資制度PGEの下でなされた融資案件について、返済延期に応じる旨の協定を更新したと発表した。2022年1月に1年期限で締結された協定の期限を2023年末日まで延長した。PGEは、新型コロナウイルス危機時に、企業支援を目的に導入された制度で、政府が公的保証を与え、企業が銀行融資を受けやすいようにした。足元のウクライナ危機で困難に陥る企業もあることに配慮し、返済猶予措置の適用を延長することを決めた。具体的には、融資調停人の審査等を経て、請求を受けた個々の案件について、2-4年間の返済猶予を認め、その間に公的保証の適用が継続される。5万ユーロまでの融資が対象になる。この猶予措置の導入から1年が経過したが、これまでの申請は600件程度と、全体の0.1%にとどまっており、5%の企業に返済困難があるとする中銀の予想に比べるとかなり少ない。政府はこれについて、5%という数字は融資の全期間を対象にした推計であり、現時点で問題が顕在化している企業はそれより少ないと説明。猶予措置の存在が知られていないことにも原因があるとみて、報知を徹底すると説明した。債務再編でデフォルト扱いになることを懸念する企業が多く、利用の手控えがあるとする見方もある。PGEでは1430億ユーロ程度の融資がなされた。うち3分の1は既に返済されている。 KSM News and Research -
2023.01.26
仏失業者数、10-12月期にも減少続く
25日発表の雇用省統計によると、失業者数(カテゴリーA)は12月末時点で約305万人となり(マヨット海外県除く)、3ヵ月前から3.6%、数にして11万4000人減少した。1年前からでは9.3%(31万2100人)の減少を記録した。景気減速の中でも失業者数の減少は続いた。当該月に一定の就労実績がある求職者を含めた失業者総数は540万人となり、3ヵ月前から4万1000人減少した(0.8%減)。1年前からの減少率は5.1%となった。当該月に78時間までの就労実績がある求職者(カテゴリーB)は1年前から3万9200人増加(5.0%増)、78時間を超える就労実績がある求職者(カテゴリーC)は同3万4400人の増加(2.3%増)を記録した。カテゴリーB及びカテゴリーCが増えているのは、規則の改正により、就労実績の申告がより徹底されたことに関係して、カテゴリーAの一部の分類が他のカテゴリーに切り替わったことにも由来している。2022年には、500万件を超える無期雇用契約(CDI)が結ばれており、雇用創出の勢いは持続している。ただ、就職を理由とする失業者登録の抹消の件数が、新型コロナウイルス危機前の2019年の平均を下回るなど、雇用市場の減速を示す兆候も出始めており、好況が今後も持続するとは限らない。 KSM News and Research -
2023.01.25
ユーロスター、ブランド名「タリス」を廃止
国際高速列車のユーロスター(英仏間)とタリス(フランス、ベルギー、オランダ、ドイツを結ぶ)が合併して発足したユーロスター・グループは1月24日、ブランド名を「ユーロスター」に統一すると発表した。9月末までに統一を完了する。関係国以外で知名度が高い「ユーロスター」にブランド名を一本化し、集客効果の拡大を狙う。ユーロスターとタリスの統合計画は2019年に発表されたが、新型コロナウイルス危機を挟んで2022年5月になりようやく実現した。合併により発足したユーロスター・グループは、仏国鉄SNCFが55.75%株式を確保し、その子会社となった。残りの株式は、カナダ・ケベック州預金供託金庫と英投資ファンドHermes GPEによるコンソーシアム「Patina Rail」が25.75%を、ベルギー国鉄SNCBが18.5%株式を保有している。ユーロスターとタリスの合計の旅客数は2021年に1500万人に上った(2019年には1900万人)が、同社は2030年時点で2倍の3000万人の達成を目標に設定。9億6200万ユーロに上る債務の削減が課題だが、2022年下半期には黒字復帰を果たし、債務削減が動き出した。2023年には、統合に伴う節減効果(情報処理システムの一本化など)で数千万ユーロを見込む。経営側は人員の維持を約束しているが、労組側は今後に懸念を抱いている。 KSM News and Research -
2023.01.25
LVMH、理工科学校に隣接の研究拠点開設を断念
高級ブランド大手LVMHは23日、研究都市パリ・サクレー内に研究拠点を開設する計画を断念したと発表した。確保していた用地の取得を断念するとした。研究拠点は別の場所に開設すると説明したが、詳細については明らかにしなかった。計画では、研究都市内の理工科学校(ポリテクニク)に隣接する用地に、1億ユーロ強を投資して研究拠点を開設することになっていた。理工科学校との共同研究を通じて、持続可能な材料、人工知能(AI)、データ科学、生命科学などの分野で研究プロジェクトを推進し、300人程度の研究者を採用する計画だった。ただ、理工科学校の教員や学生らは、研究の計画に真剣味が欠けるとし、営利的な不動産開発計画に過ぎないとみて反発し、去る12月以降に2件の訴訟を起こしていた。ちょうど1年ほど前にも、石油大手トタルエネルジーとの産学協働プロジェクトが、学生らの反対運動により断念されたばかりで、理工科学校のラベ校長にとっては黒星が続いた格好になった。校長はコンサル大手のマッキンゼーの出身で、マクロン大統領にも近く、2018年に校長に起用されていた。6月に任期切れを迎え、再任を目指しているが、続投は自明ではなくなった。 KSM News and Research -
2023.01.25
実業家ニエル氏、民放大手M6と放送免許を争う
仏ARCOM(放送行政監督機関)は23日、放送免許更新の入札において、実業家のグザビエ・ニエル氏の応札書類を受理した。大手M6が占有する周波数を争うことになる。地デジ局で民放最大手のTF1とM6の放送免許がこの春に期限を迎えるため、免許更新が入札により争われる。従来はまったく無風の更新だが、今回は、通信フリーの創業者として知られる大物実業家のニエル氏が「NJJ Projet 5523」という会社を立ち上げて、放送免許の獲得をM6と争うことになった。M6は、TF1との合併計画に失敗し、親会社の独ベルテルスマンが売却の検討を続ける中というタイミングもあり、負けられない勝負となる。ニエル氏側は、M6の利益率の高さはコンテンツ制作投資を抑えていることに由来すると主張し、独立系の制作会社への発注を増やすことなどを約束して勝負に挑む。TF1出身のロンバルディニ氏の参加を得て、放送事業における経験もアピールするが、ニエル氏本人には、出資先のメディアワン傘下にテレビ局数局(AB1、RTL9など)が含まれる程度で、地デジ局の実績はなく、その辺りが泣き所になる。M6は、投資額の増額やダイバーシティ推進の努力などを約束して追撃をかわすことを望んでいる。ARCOMは2月15日に候補者を対象に聴聞を行い、これが戦いの山場になる。 KSM News and Research -
2023.01.24
コニャックの2022年出荷量、前年比4.8%減だが歴代3位の高水準
コニャックの業界団体BNICによると、2022年のコニャックの出荷量は2億1250万本で、前年比で4.8%減少した。BNICは、減少したとはいえ2022年の出荷量が歴代3位であることを強調し、過去最高を記録した2021年と歴代2位の2019年を含む数年間の例外的な時期の後に正常化しただけだと受け止めている。売上高は2022年に39億ユーロに達して、8.4%の増収を記録した。ただし、これは為替の効果に負うところも大きい。懸念点としては、主な輸出先である米国、中国、欧州のいずれに対しても出荷量が減っていることがあげられる。最大市場である米国向けは3.2%減の1億1130万本、中国向けは12.8%減の2960万本、欧州向けは5.9%減の3490万本だった。フランス国内向けの出荷量は2.8%減の590万本だった。コニャックは97%以上が輸出されており、輸出先は150ヵ国に上る。 KSM News and Research -
2023.01.24
性差別の意識、色濃く残る=政府諮問機関調査
仏政府諮問機関のHCE(平等高等評議会)は23日、性差別に関する意識調査の結果を発表した。HCEはこの中で、女性差別の意識が目立って残っていると糾弾した。これによると、女性の33%は、望まないのに性的関係に応じたことがあると回答。逆に、男性では、望まない女性に性行為を求めたことがあると回答したのは12%にとどまっており、双方の見方には大きな隔たりがある。性行為を強制された(強姦、性的暴行)ことがあると答えた女性は全体の14%に上るが、18-24才の層に限るとこの割合は22%に上っており、特に若い世代で、女性に対する差別的な行動が広がっていることを示唆している。男性では、25-34才の層で、25%近くが「自らを尊重させるには時には暴力的にならなければならない」と回答。「子どもを世話するために女性が仕事をやめるのは当然だ」と答えた人は、年齢を問わずに全体の40%に上っている。また、「女性の服装に関するコメントをするのは性差別的である」と回答した人は、女性で77%に上るのに対して、男性では57%と低い。「女性が家族のために毎日料理をする」のは問題だと答えた人は、女性で49%に対して、男性では37%と低く、HCEでは、男女平等に関する意識が男性で特に低いことの現れだと指摘している。HCEは25日にマクロン大統領に報告書を提出し、教育と啓蒙を通じて平等意識の推進を図ることなどを勧告する。 KSM News and Research -
2023.01.24
北仏オードフランス地域圏でワイン作り、2022年に初収穫
北仏オードフランス地域圏で白ワインを生産する取り組みが進められている。去る9月に最初のぶどう収穫が行われた。今日のフランスでは、ワインの生産はおおむねロワール川流域地方を北限とするが、過去には以北でもワインが生産されていた。現在でも、アルザス地方や、シャンパーニュ地方(シャンパン)ではぶどう栽培とワインの生産が行われている。温暖化を背景に、北フランスでもワインを生産する動きが広がっており、最北のオードフランス地域圏でも、農業共同組合Advitamが、ネゴシアンの子会社Ternoveoを設立し、ぶどう栽培農家の育成に着手した。シャルドネの白ワインを製造する計画で、去る9月には、数年がかりで育てたぶどう畑の最初の収穫が行われた。11農家の17ヘクタールで収穫が行われ、収穫量は1ヘクタール当たり8000kg。初年には4万本のワインが生産され、量販店「Gamme Vert」を通じて販売される。5年後には130農家・200ヘクタール体制とし、10年後には年産150万本を目指す。地産地消ブームで地元地域圏の需要の掘り起こしに期待する。 KSM News and Research -
2023.01.23
ネオライン、帆走貨物船の発注を決定
帆走貨物船を開発する仏ネオライン・デブロップマン社はこのほど、初号船の建造を決定したと発表した。6000万ユーロのファイナンスを確保し、トルコのRMKマリンに建造を発注した。9月に建造が開始される予定。ネオラインは帆走を取り入れたハイブリッド船舶を開発。設計は仏Mauricが手掛けた。建造されるのはローロー船で、コンテナ265体(5300トン)を輸送できる。2本のマストと固定セイルにより構成される推進装置「SolidSail」は、仏サンナゼールのアトランティック造船所で作製される。高さは76メートルで、73度まで傾けることが可能で、橋梁の下も通過できる。グラスファイバー製の帆はアコーデオンのように展開が可能で、最大で3000平方メートルの面積となる。速力は11ノットで、低硫黄の舶用軽油(MGO)で稼働する補助エンジンを備える。二酸化炭素排出量は8割を削減できる。セイルを含めた仏国内生産の部品が全体のコストの3割程度を占めるという。新造船は、仏サンナゼールとカナダの大西洋岸に位置する仏海外領土サンピエールミクロン、カナダのハリファックスと米ボルチモアを結ぶ定期航路で就航する予定で、既に、ルノー(自動車)、ベネトゥ(レジャーボート)、マニトウ(電動カート)、ミシュラン(タイヤ)から契約を得ている。ロンシャン(ブランド品)、クラランス(化粧品)、レミ―コアントロー(酒造)など数社との契約も近く結ばれる予定。フランスから北米向けの船腹量は80%が既に埋まっているが、北米からフランス向けが20%にとどまっており、今後に契約を確保する必要がある。ファイナンス面では、海運大手のCMA CGMが協力に応じたことが決め手となった。仏ADEME(環境・省エネ庁)傘下の投資ファンド、コルシカ・フェリーズなども出資した。公的銀行のバンクデテリトワールは社債を引き受け、380万ユーロを注入した。 KSM News and Research -
2023.01.23
社会党、フォール第一書記を再選:敗北候補は異議、党内を二分する混乱に
社会党は19日、次期第一書記(党首)を選出する決選投票を行った。投票結果は僅差となり、20日の集計審査を経て、社会党はフォール第一書記の当選を発表した。敗北したメイエールロシニョル候補(ルーアン市市長)は開票結果に異議申し立てを行った。開票結果によると、得票率はフォール第一書記が50.83%、メイエールロシニョル候補が49.17%で、393票の僅差でフォール第一書記が勝利した。第一書記は2018年に就任し、2021年末に3分の2を超える得票率にて再選を果たしていた。今回の投票結果は、党の運営方針を巡り、党内が二つに分かれて対立していることを示している。社会党は、かつては左派の盟主だったが、党勢が衰え、現在は左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が率いる左派連合NUPESに合流している。LFIとの協力の是非を巡り、党内に対立があり、投票もそうした対立の深さを改めて確認する結果となった。フォール第一書記は22日付の日曜紙JDDとのインタビューで、選挙結果は明確であり、今は党の結集を図るべき時だと言明した。社会党は22日の時点で、開票結果の見直しを経て、フォール第一書記の当選を正式に発表した。メイエールロシニョル候補はこれに納得せず、裁判所への提訴を検討すると予告した。社会党は27日から29日までマルセイユで党大会を開き、第一書記の任命を行うが、この時までに党内の和解が実現しないままだと、党大会が紛糾する恐れもある。 KSM News and Research -
2023.01.23
マクロン大統領、国防予算の大幅増額を予告
マクロン大統領は20日、軍関係者らを集めて新年恒例の訓示を行った。国防予算の大幅増額を予告した。これによると、2024-30年の7年間を対象とする次期多年次防衛計画法における予算は総額で4000億ユーロとなり、2019-25年を対象とする現行法に比べて1000億ユーロの増額となる。軍事支出総額は4130億ユーロとさらに大きく、これは、予算外の収入(インフラや周波数の譲渡収入を充当)を繰り入れることで達成される。政府は、国防予算の対GDP比を2025年に2%まで引き上げることを約束していたが、予算増額により前倒しで達成する構え。発表済みの基本方針と支出項目はすべて維持される。核抑止力の近代化、ラファール戦闘機への更新、装甲車の刷新(「スコルピオン」計画)、シャルルドゴールを後継する次世代空母の建造などの計画はいずれも維持された。ウクライナ危機を含めた新たな時代に対応する目的で、大統領は新たな重点項目を設定。まず、情報戦の重要性が高まっていることを踏まえて、軍の情報機関(DRM、DRSD)の予算を2倍に増やし、新技術の導入を進めると説明した。また、ウクライナにおける戦争の教訓を踏まえて、防空システムの重要性が高まったとし、その予算を50%増額すると予告した。ドローン対策、深海の監視(重要インフラ防衛)、宇宙戦も重要項目として挙げた。また、国防の耐性強化を目的に、予備役(現在は4万人)の2倍増を目指すことも確認した。多年次防衛計画法案は近く提出され、今夏までの可決成立を目指す。 KSM News and Research -
2023.01.20
樹上小屋などレジャー施設、環境規制で冷え込みか
樹上に設置の小屋など、一風変わった宿泊設備が近年ブームを迎えている。自然の中でレジャーを過ごせるのが売り物だが、業界では、このほど導入された宿泊施設のエネルギー効率規制が足かせとなり、需要が大幅に冷え込むとの懸念の声が広がっている。業界団体の2022年9月時点の集計によると、樹上小屋や透明ドームといった施設は、キャンピング場や個人所有のものも含めて、現在は全国に6000を超えている。この2年間で72%の大幅増を記録した。市場規模は2億6000万ユーロに上る。今年年頭に施行された、新建築に適用される規制「RE2020」は、「レジャー用簡易住居」に対してエネルギー効率に関する一連の要件(壁面や床面、天井の厚さなど規定)を定めているが、この種の設備の施工を専門とするHuttopia社によると、新規制により、ただでさえ割高な建設コストがさらに30-50%高くなる。樹上小屋等の宿泊料金は1泊平均で152ユーロだが、建設コストを反映してこれがさらに高くなり、競争力が低下する懸念がある。業界側はさらに、樹上小屋では環境配慮型の建材を用いているのに、そのような配慮に欠けるトレーラーハウスは、移動可能であるという理由だけで、「レジャー用簡易住居」の分類から外され、規制の埒外に置かれていると指摘。樹上小屋などの設備はトレーラーハウスに駆逐されて姿を消すことになると主張し、規制の見直しを求めている。 KSM News and Research -
2023.01.20
ゴースポール、会社更生法の適用下に
グルノーブル商事裁判所は19日、スポーツ用品販売の仏グループ・ゴースポール(Go Sport)を会社更生法の適用下に置くことを決定した。フランス事業を担う子会社ゴースポール・フランスには会社更生法は適用されていないが、親会社への適用決定の影響を受けることになる。グループ・ゴースポールには、管財人の下で6ヵ月間に渡る事業の継続が認められ、再建の道を探ることになる。ゴースポールの従業員数は2160人。ゴースポールは、もとは食品小売大手カジノ・グループの系列会社だったが、カジノ・グループの債務削減を目的に、2021年末に1ユーロという象徴的な金額でHPB社に売却されていた。HPBは、実業家のミシェル・オアヨン氏が率いる投資会社FIBの傘下企業で、最近では、傘下のカマイユ(アパレルチェーン)が倒産している。グルノーブル商事裁は、ゴースポールが支払い不能に陥っているとする監査法人の報告を根拠に、会社更生法の適用を決めた。同社を巡っては、地検当局が会社資産乱用の疑いでの捜査を昨年11月の時点で開始。公的保証が伴う銀行融資制度で得た資金5500万ユーロを、別の目的(カマイユの給与支払い)に流用した疑いなどがもたれている。 KSM News and Research -
2023.01.19
欧州委、仏国鉄SNCFの鉄道貨物事業への国家補助巡り調査を開始
欧州委員会は18日、仏国鉄SNCFの鉄道貨物輸送子会社フレットSNCFに対する国家補助に関する調査を開始すると発表した。2007-19年の期間を対象に、欧州連合(EU)の国家補助に関する規則への違反がなかったか調べる。調査は、SNCFが2020年1月1日付で株式会社化されるまでの10数年に及ぶ期間を対象として実施される。この間、フレットSNCFの資金繰りを支援するため、40億-43億ユーロに上る資金が注入されたとみられており、その適法性を審査する。また、2019年に行われた53億ユーロの債務帳消しと、1億7000万ユーロの増資についても、調査の対象となる。欧州委は、調査対象の期間を通じて、フレットSNCFの赤字が継続的にグループ間の資金融通の形で補填されてきたと指摘、SNCFが公社であったことから、これは公的資金の注入に等しいと指摘。本格調査によりその適法性を審査すると説明した。フランス運輸省は欧州委にしかるべく回答するため全力を尽くすとコメント。鉄道貨物輸送の振興に向けた決意も同時に示した。労組CGTは欧州委の調査開始に強く反発。調査の結果によっては、将来的に鉄道貨物部門が清算に追い込まれる可能性もあると警戒している。 KSM News and Research -
2023.01.19
エラメットとBASF、EV向けニッケルの精製工場をインドネシアに開設へ
仏エラメット(資源)と独BASF(化学)がインドネシアにおけるニッケル及びコバルト精製プロジェクトに22億-26億ドルを投資する。ダボス会議の際にインドネシアの投資相が明らかにした。エラメットがウェダ・ベイ鉱山で産出した鉱石を精製する新鋭工場を建設する。最終投資決定に向けた詰めの段階にあるといい、6月末までに決定が下る見通しだという。エラメットはこれについて、発表済みの日程でプロジェクトを進めるべく順調に準備が進んでいるとコメントした。エラメットは去る7月の時点でこのプロジェクトを発表。EV用バッテリーに適格の品質のニッケル及びコバルトを、2026年から生産開始する計画で、ニッケルは約6万7000トン、コバルトは約7000トンの生産を予定する。現在はステンレスの製造のみに用いている鉱石から高品質のニッケル及びコバルトを精製するため、HPAL技術(高圧硫酸浸出法)を導入した新鋭工場を建設する。 KSM News and Research -
2023.01.19
仏国内の電力供給:RTE、楽観的見通しを示すも2月の後半について警戒
仏電力大手EDFの送電子会社RTEのピシャルジクCEOは1月18日、仏ラジオ局フランスアンフォのインタビューに答え、今冬の電力供給について、「リスクの大半は去った」と述べた。節電努力が奏功した。直近4週間の電力消費量は、2014-19年の同時期に比べて平均で8.5%減少した。また、ガス備蓄率が80%と例年を上回っていること、水力発電用ダムが水位を回復したこと、隣国とを接続する国際送電網が順調に稼働していることも楽観的な見方を後押ししていると説明した。一方で、CEOは「リスクゼロは存在しない」とも強調し、特に2月後半に、長期的な厳冬が続いた場合に警戒が必要だと指摘した。現在、国内56原子炉(合計容量61.4GW)のうち43基が電力網に接続されている。加えて、1月末に2基、2月中にも2基が接続される見込み。ただし、保守作業のため運転を停止する原子炉もあり、2月末に運転している原子炉の合計容量は40-45GWに留まる見込みとなっている。また、1月19日からはEDFにおいて年金改革関連のストが予定されており、これが電力供給に悪影響を及ぼす恐れもある。ただしRTEは、ストが電力供給を脅かす場合、法的措置を取り、発電量の減少を防止すると予告した。なお、一部の水力発電所では18日からストが開始され、同日には合計で1.21GW分の運転が停止された。 KSM News and Research -
2023.01.18
19日に年金改革反対のスト、大きな影響が出る見通し
19日に年金改革に反対するストが行われる。大規模なストになる見通し。交通ストは18日夜に始まり、20日の朝まで続けられる見通し。パリ首都圏の公共交通機関の運行には大幅な乱れが生じる。メトロは自動運転の1号線と14号線を除いて大幅な運休となる。8、10、11号線は全面的に運休、4番線では25-50%の運転となり、残りは部分的な運転となる見通し。RER(郊外連絡急行)は、路線により通常の10-50%の運行にとどまる。国鉄SNCFが運行のローカル線では、R線が全面運休、残りは10-33%の運行に留まる。トラムウェイは平均で75%、バスは平均で66%の運行が確保される見通し。高速鉄道(TGV)の運行は、マルセイユ方面、リール方面、Ouigo(格安高速鉄道)で通常の33%、ボルドー方面・ブルターニュ方面で通常の25%にとどまる。オルリー空港発着の空の便は20%程度が欠航となる見通し。シャルルドゴール空港の発着便には影響が出ない見通し。学校でも教職員がストを予定。組合側によるとスト参加率は70%に上るという。 KSM News and Research -
2023.01.18
ダノン、牛乳生産に由来の温室効果ガス3割減を目標に
仏食品大手ダノンは17日、牛乳生産の過程で生じる温室効果ガスの削減目標を発表した。2030年までに2020年比で30%の削減を目指す。牛の反芻により発生するメタンガス(げっぷの形で排出される)は、二酸化炭素に比べて25倍も温室効果が大きい。ダノンは、2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で決まった「グローバル・メタン・プレッジ(GMP)」に沿って、自社の削減目標を設定した。30%の削減は、二酸化炭素換算で120万トンに相当する。ダノンは牛乳の調達では世界20ヵ国の5万8000に上る農業経営体と契約しており(フランスでは1600)、契約先における削減努力の支援を通じて目標達成に取り組む。ダノンの契約先のジュラ県コージュ市にある酪農農家では、3年前と比べてカーボン・フットプリントの7%削減に成功している。搾乳のストレス軽減につながる自動搾乳機械の導入を含めて、様々な取り組みを同時に進めて、発生の抑制に努めている。ダノンはまた、海藻を原料とするサプリを飼料に添加するなど、飼料の改良による削減効果に期待している。 KSM News and Research -
2023.01.18
フランスの出生数、2022年に1万9000人減
17日発表のINSEE統計によると、1月1日時点でフランスの人口は6800万人となり、1年間で0.3%の微増を記録した。増加率は前年の0.4%を下回った。出生数は72万3000人となり、前年比で1万9000人減少した。出生数は、新型コロナウイルス危機の影響で、2020年に顕著に後退していたが、2021年には反動で増えていた。2022年には後退に転じた。それ以前から出生数は後退傾向にあり、2015年から2020年にかけて後退を続けていたが、新型コロナウイルス危機に伴う混乱を経て、長期的な減少傾向が続いていることが改めて確認された。なお、2006年から2014年にかけては、年間80万人をピークとして、出生数は高めで推移していた。人口の自然増は5万6000人を記録。増加が続いたものの、増加幅は戦後で最低の水準まで下がった。移民の流出入は16万1000人の流入超(推定)を記録した。合計特殊出生率(女性が生涯で産む子どもの数で示す)は2019年の1.86に対して、2022年には1.8まで低下した。この数字は2006年から2014年にかけては2.0前後で推移していたが、それと比べて低下傾向にある。死亡数は66万7000人で、前年より5000人増加した。平均寿命は、女性が85.2才、男性が79.3才で、新型コロナウイルス危機前の2019年と比べて5ヵ月程度短くなっている。 KSM News and Research -
2023.01.17
フランスのベンチャー企業調達額、2022年に135億ユーロ:新記録を再び更新
EYの年次報告によると、フランスの技術系ベンチャー企業による資金調達額は2022年に135億ユーロとなった。過去最高を記録した前年をさらに16%上回り、2年連続で最高記録を更新した。増加率は欧州全体では18%減を記録。英国では15%減、ドイツでは38%減を記録しており、フランスの健闘が目立った。ただし、米国(30%増)には及ばなかった。アジアは39%減を記録した。ただ、フランスでは、1-6月期に前年同期比で63%の大幅増を記録した後、7-12月期には21%の減少に転じており、全体としては通年で増加したものの、前半と後半では明暗がくっきりと分かれた。1億ユーロを超える大型の29案件はその大部分が前半に集中した。2022年には新たに8社がユニコーン企業の仲間入りを果たしたが、うち7社が前半に達成となっている。部門別では、法人向けソフトウェアとクリーンテックが好調で、後者は通年で20億ユーロの調達(前年比172%増)を達成した。2023年には、クリーンテック以外の部門では環境がより厳しくなるものと予想される。 KSM News and Research -
2023.01.17
パリ市、電動キックスケーターのシェアリング廃止をにらんで住民投票を実施へ
パリ市のイダルゴ市長(社会党)はこのほど、電動キックスケーターのシェアリングサービスの存廃の是非を問う住民投票を実施すると予告した。市長は、廃止が妥当だとする自らの意見を表明した上で、住民投票で表明される市民の判断に従うと言明した。投票の方式は今後詰めるが、選挙権のある市民を対象に、4月2日に投票を行う。「電動キックスケーターのシェアリングサービスの維持を望むか」という問いに、諾否のいずれかで回答を求める。パリ市は、Dott、Lime、Tierの3社に免許を交付し、市内でのサービスの展開を認めている。現行免許は3月23日に期限切れを迎えるが、住民投票を行うことにしたため、期限を夏までひとまず延長するという。現在、シェアリングサービスの電動キックスケーターは市内に1万5000台を数え、2022年には月間のユーザー数が40万人に上った。手軽で安価な移動手段として一部には人気がある反面、二人乗りや歩道の走行といった違反行為も目立ち、安全性の問題点などを挙げて批判する向きもある。 KSM News and Research -
2023.01.17
仏音楽ストリーミングの再生数水増し、全体の1-3%の規模に=公的機関報告書
仏文化省下の専門機関CNN(国立音楽センター)はこのほど、音楽ストリーミング・サービスの再生回数不正に関する報告書を公表した。架空の再生実績を稼いで利益を上げようとする再生回数不正について、公的機関が報告書をまとめるのはこれが初めて。CNNは2019年に発足した専門機関。文化省は2021年6月にこの報告書の作成をCNNに依頼した。報告書は、フランスでストリーミング大手であるDeezer、Spotify、Qobuzの3社、そしてレコード大手5社(ワーナー、ユニバーサル、ソニー、Believe、Wagram)の協力を得て調査を行った。アップル・ミュージックとユーチューブは調査にまったく協力せず、アマゾン・ミュージックは2022年分のデータのみ提供など、大手業者はむしろ調査に非協力的だった。調査によると、2021年には10億-30億回の水増し再生回数が検出された。年間再生回数は1000億回に上り、この不正回数は全体の1-3%に相当することになる。調査に協力したプラットフォーム別では、Deezerが2.6%、Spotifyが1.1%、Qobuzが1.6%だった。実際の不正の規模はこれより大きい可能性がある。また、Deezerでは、2022年に入り、不正回数率が5%まで上昇しており、不正は拡大する傾向にある。不正は人気の音楽ジャンルにおいて多い。Spotifyの場合、人気ジャンルのラップとR&Bに不正の92%が集中していた。逆に、再生回数トップ1万曲における不正はむしろ少なく、Spotifyで0.25%、Deezerでは0.65%にとどまった。とはいえ、人気の曲に不正がないわけではなく、特にランキング上位が狙える期間に的を絞って水増しするような事案が見受けられるという。手口としては、偽アカウントを通じてボットにより稼がせる古典的な手法から、サイバー攻撃による乗っ取りアカウントを悪用する、さらに、プレイリストに無関係の楽曲を置いて、再生数を稼いでその楽曲からの利益を得るというものまで、様々ある。 KSM News and Research -
2023.01.16
プロサッカーの仏メンディ選手、強姦容疑の裁判で無罪判決
英チェスター裁判所は13日、フランス人のプロサッカー選手バンジャマン・メンディを被告人とする強姦容疑の裁判で、7件の容疑(強姦6件、強姦未遂1件)について、無罪判決を言い渡した。それぞれ原告を異にする2件の容疑(強姦及び強姦未遂)については、審判員の間で全員一致に至らず、裁判をやり直すことが決まった。新たな裁判は6月26日に開始される。 メンディ被告人は28才。2018年のサッカーW杯でフランスが優勝した際のメンバーでもあり、2017年以来、英マンチェスター・シティに所属している。事件は2021年8月に浮上。被告人は、7人の女性からの訴えを経て、2018年から2021年までの10件(強姦と同未遂、性的暴行)の容疑で起訴された。マンチェスター・シティは訴追を経てメンディを停職処分とした。契約は2023年6月まで残っているが、チーム側は、裁判がまだ終了しておらず、コメントすることはない、とのみ発表している。 裁判では、事実関係は争われず、同意の有無が争点となった。調べによると、被告人は、遊興場での饗応の後に若い女性を邸宅に招いて事に及んでいたが、被告人の弁護団は、当然に同意のある行為だったと主張。裁判の際には、被害を訴えた女性1名の行為中の動画が発掘され、検察側がこの女性に関する訴追を取り下げるという場面もあった。裁判所は被告人の論拠に従い、7件の容疑で無罪判決を言い渡したが、残りの2件については判断に至らなかった。なお、メンディ被告人に被害者を供給する協力者の役割を果たしていた疑いで起訴された友人のサハ・マチュリ被告人も、3件の強姦容疑で無罪となったが、残り6件(強姦3件、性的暴行3件)では判断に至らず、メンディ被告人と共に裁判がやり直されることが決まった。 KSM News and Research -
2023.01.16
地下水系の水位が回復せず、今夏には厳しい水不足も
BRGM(地質・鉱山研究局)が13日に発表した報告によると、地下水系の水位は全国的にみて極めて低い水準にある。このまま冬季に十分な降水量が得られなければ、夏季にかけて厳しい水不足に陥る恐れがある。 これによると、ブルターニュ地方とアルザス地方を除く全国の4分の3余りの地域では、地下水系の水位が平年並みを下回る水準にある。その程度は地域により異なるが、特に南仏ニース地方では、100年に一度という大規模な水不足が続いている。 2022年はフランスにとってこれまでで最も暑い年の一つだったが、降水量の不足でも突出しており、平年より25%程度も少なかった。このため、地下水系の水位は既に低い状況にまで下がっている。春季が訪れて、地表の植生が生育期を迎えると、降水が植生に吸い取られて、地下水系の水位上昇に貢献しなくなるため、現状では、3月末までに平年を大きく上回る降水量が確保されることが、次の夏季を大過なく乗り切る上で必要になると考えられる。それが注文通りに実現するとは限らず、一部地域では農業生産に大きな打撃が出る恐れもある。既に、ピレネー・オリアンタルなど約10県では水の利用制限の適用が継続されている。 KSM News and Research -
2023.01.16
社会党党首選:フォール第一書記とメイエールロシニョル候補の決選投票に
社会党は13日夜、次期第一書記(党首)選挙の第1回投票の結果を発表した。フォール現第一書記が49.15%の得票率を確保してトップとなり、ルーアン市の市長を務めるメイエールロシニョル候補(30.51%)との間で決選投票を争うことが決まった。19日に投票が行われる。 フォール第一書記は2018年より現職にあり、2021年に再選を果たしている。今回は3期目に挑戦する。社会党はかつては左派の大政党だったが、党勢は近年に著しく衰えている。フォール第一書記は、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」を主軸とする左派連合NUPESへの合流を主導したが、党内には、政策面で隔たりが大きいLFIににじり寄ることを望まない勢力も根強くある。決選投票を争うメイエールロシニョル候補は社会党としての独自性を強調する姿勢を示し、パリ市のイダルゴ市長など党内の一部有力者の支援も得ている。また、第1回投票で敗退したジョフロワ候補(得票率20.34%)は、NUPESからの脱退を標榜する強硬派だが、決選投票においてメイエールロシニョル候補への投票を呼びかけている。単純に合計すると、支持率は僅差でフォール第一書記を上回る計算になり、NUPESへの対応を争点として、荒れ模様の決選投票となる可能性もある。 KSM News and Research -
2023.01.13
EDFの原子力発電所、見学者増える
エネルギー問題が国民の最大の関心事となる中で、EDF(仏電力)の施設見学が目立って増えている。EDFは原子力発電所を含めて、100ヵ所程度の施設で見学者を受け入れている。2022年には50万人が訪問し、新型コロナウイルス危機前の年間平均比で28%の大幅増を記録した。うち原子力発電所の見学者は8万人を数えた。EDFはグラブリーヌ(ノール県)、フラマンビル(マンシュ県)、シボー(ビエンヌ県)の各発電所を中心として、原子力発電所に見学者を受け入れている。内容は発電所により異なるが、展示室や映写、模型等を利用した説明会、さらに、機械室やシミュレーターを含む内部の見学ツアーも用意されている。EDFは、原子力安全性をアピールし、イメージの向上を図る機会として、また、将来の人材確保を念頭に置いて様々な業務内容を紹介する機会として、こうした見学の成果に特に期待している。ただ、見学者のプロフィールには偏りがあり、男性と社会的に上位の職業に就く人が多い。年齢層が高めであることも、求人の誘致力を高めるという目的から外れる。EDFはこのため、校外見学向けに2時間のコースも用意している。 KSM News and Research -
2023.01.13
年金改革:公共交通機関や石油部門などで19日よりスト
政府が年金改革の骨子を発表したのを受けて、公共交通機関や石油部門でストの予告が相次いでいる。19日(木)に最初のストが行われ、その後に状況によっては拡大する恐れがある。国鉄SNCFでは、4労組(CGT、UNSA、SUD-Rail、CFDT)が合同で19日のストを予告した。前日18日の19時より、20日午前8時まで、ストが行われる。スト参加者は72時間前までに申告する義務があり、ストがどの程度の規模になるかは申告が出揃うまでは判明しない。RATP(パリ交通公団)では、代表権のある4労組(CGT、CGC、FO、UNSA)がそれぞれ19日に「抗議行動」を行うことを呼びかけている。うちFOはストの予告を行った。その他の労組がどのような対応を決めるかはまだ明らかになっていない。RATPの場合は、年金特殊制度の適用を受けており、今回の年金改革の適用対象ではなく、RATPの経営陣(最近にカステックス前首相がCEOに就任した)には交渉できる点がほどんとない。石油部門でもストの機運が高まっている。同部門では、昨年秋に製油所の長期ストが行われ、燃料品薄が発生して国民の生活に多大の影響を及ぼした。同部門のすべての労組(CGT、CFE-CGC、FO、CFDT)はそれぞれ19日に抗議行動を予定。うちCGTは、19日に24時間のストを予告した。CGTは続いて、26日より48時間、2月6日より72時間のストを行うとも予告しており、2月6日に始まるストは「必要なら」延長すると予告している。このほか、電力部門もストに合流する可能性がある。 KSM News and Research -
2023.01.13
公立学校での制服導入が議論に:ブリジット・マクロン大統領夫人は「賛成」
ブリジッド・マクロン大統領夫人は1月12日付のルパリジャン紙とのインタビューの中で、学校における制服の導入に賛成すると言明した。極右政党RNが提出した一連の議員立法法案が、下院本会議にて12日に審議されることになっており、その中には、公立の小学校及び中学校において制服を義務付ける法案が含まれている。ブリジット・マクロン大統領夫人は、自らも学校教諭を務めた経歴があり、ルパリジャン紙の読者からの質問に答える形で教育問題を巡る見解を表明、その中に制服に関する質問も含まれていた。大統領夫人は、自身も小学生の頃に制服を着用していたとし、服を選ぶ時間が短縮できるし、服装にかけるお金も節約できると述べて、「簡素で、陰惨ではない制服」であることを条件として、小学校における制服の着用に賛成する、と回答した。RNは制服義務化の目的として、「イスラム主義者からの圧力を回避」することと、「流行を追った高価な衣服を競って着用する」のをやめさせることを挙げている。政府は、学校単位で制服の導入を決めることは現状でも可能だとし、公立小学校・中学校のすべてに制服導入を義務付けることには反対している。半面、保守野党の共和党は法案を支持する構えを見せている。RNはこのほか、市街地においてZFE(車両乗り入れ制限地区)の設定を義務付ける法令の廃止を求める法案も提出しているが、共和党はこれも支持している。なお、下院本会議は同日に、制服義務化の法案を反対多数で否決した。 KSM News and Research -
2023.01.12
仏サッカー連盟(FFF)のルグラエト会長、失言問題などで一時休職
仏サッカー連盟(FFF)は11日に理事会の臨時会合を開いた。ノエル・ルグラエト会長(81)が一時休職を申し出て、理事会はこれを了承した。ルグラエト会長を巡っては、複数の女性職員に対するセクハラ・モラハラの疑いが取り沙汰されており、スポーツ省の依頼による監査報告書の作成が進められている。会長は、その結果が出るまでの間の暫定的な措置として、休職を申し出た。会長は先に、フランス代表チームの監督の人選(デシャン監督の続投を決定)に絡んで、かつての有力選手ジネディン・ジダンについて、「ジダンのことはどうでもいい。ジダンから電話がかかってきても出なかったろう」などと放言。この言葉は、ジダンに対する敬意のなさを示すという以上に、会長の品格を改めて疑問視させる材料となり、各方面から強い批判を浴びた。会長は発言を取り下げて謝罪し、自ら理事会を臨時招集して、今回の休職の申し出を行った。理事会は臨時会長としてディアロ副会長(59)を指名。同時に、ルグラエト会長と犬猿の仲だったフロランス・アルドゥアン事務局長(女性)の停職処分を決めた。この停職処分は、人員削減計画を巡る不手際の責任を問うものだとされているが、会長休職によりアルドゥアン派の発言権が強まるのを封じるのが目的とも考えられる。アルドゥアン氏は同日に発作を起こして入院したと報じられている。サッカー連盟内部の闇の深さを印象付ける展開となった。 KSM News and Research -
2023.01.12
PMU、NFTカードゲームを開始
仏PMU(馬券販売)は1月9日、NFTゲーム「ステーブルズ(Stables)」を公表した。PMUは専用サイト「playstables.io」を立ち上げ、競走馬のNFTカードの発行受付を開始した。NFTカードで勝負するゲーム「ファンタジー・リーグ」は2023年4-6月中に開始される。NFTカードは競走馬の実際の戦績に連動し、プレイヤーは戦略を立ててカードを効果的に用いて勝負する。PMUはこのプロジェクトで、Tezosのブロックチェーン・プラットフォームを採用。カードは数を限定して発行し、ゲーム内で取引されるが、投機的な動きが出ないよう、取引価格に制限を設ける。ゲーム開発面では仏321foundedと提携。ゲーム自体からは利益は得られないが、当局機関によりオンライン賭博の認定を受けないようにゲームの内容を整える必要がある。PMUはNFTゲームで将来的に数万人のコミュニティを形成することを目指す。特に若い世代の関心を競走馬に向けさせて、将来的に競馬人口を増やすことが目的となる。 KSM News and Research -
2023.01.12
FinX、海洋生物に倣った推進原理の船外機を発売へ
仏ベンチャー企業FinXは、海洋生物と同じ推進原理を用いた船外機を開発した。近く販売を開始する。FinXが開発した「Fin5」は、バッテリーで稼働する船外機で、出力は2kW(5馬力に相当)。プロペラはなく、代わりに円筒形の装置がついている。この円筒の端についた膜状の輪が振動し、水を取り込んでは送り出す形で動作し、推進力を得る。クラゲのような海洋生物の動きを模した新しい発想に基づいて開発された。電動ともあわせて低騒音を実現し、また、海洋生物に対するダメージが小さいという環境配慮も売り物とする。航続距離は2.7ノット(時速5km)の航行で8時間、6ノット(時速10km)の最大速力では1時間。予約受付を開始済みで、価格は3200ユーロと、エンジン船外機の同等品と比べて2倍高いが、FinX社の創業者・社長のギユマン氏は、エンジンは機械部品の交換や燃料消費があり、運用コストも含めると価格差は縮まると説明している。同社は2022年10月に600万ユーロを調達。Fin5の製造は同じノルマンディ地域圏の中小企業Calip(カーン市近郊)に委託した。2023年に800機を製造し、2025年には5000機のペースに引き上げることを目指す。作業船や河川航行の客船向けなどに、より大型の「Fin150」(110kW)も開発中で、自動車大手ルノーと受託製造に向けた交渉を進めている。成長を期して2000万ユーロの資金調達も計画している。 KSM News and Research -
2023.01.11
仏政府、ルノー・日産アライアンスの再編を支持
報道によると、マクロン仏大統領は1月9日夜に岸田首相を大統領府に迎えて会談した際に、ルノー・日産アライアンスの再編を巡る交渉についても話し合い、ルノーの主要株主である仏政府(株式の15%を保有)は再編計画に反対しない立場であることを首相に説明した。アライアンスの現行の体制では、ルノーは日産自動車の株式の43%を保有し、日産はルノーの株式の15%を保有しているが、日産には議決権はない。ルノーは、日産への出資比率を15%に引き下げ、28%の株式を信託に移して競合メーカーやアクティビスト・ファンドによる買収を防止し、また日産が保有するルノー株式に議決権を付与することで、より対等な関係に移行することを提案して日産と交渉を進めている。ルノーはこの資本提携の変更と引き換えに、EV・ソフトウェア事業の分離により設立する「アンペール」への出資などを日産に求めている。両社の交渉は当初の予想以上に難航し、2022年末までに妥結しなかった。現状では1月末に合意の成立が期待されている。日産側は、仏政府が政治的な思惑からこの再編に横槍を入れることを強く警戒しており、マクロン大統領の説明はこうした懸念を払拭する狙いがある。これは、過去に仏政府の一方的な介入により日産がルノーとの関係で煮え湯を飲まされた経緯があるためで、保有するルノー株式に議決権がないことや、2015年にフロランジュ法の制定により仏政府の議決権が2倍に強化されたことなどに日産はいまも苦々しい思いを抱いている。そのため、大統領は今回の会談で、仏政府がアライアンスの再編に政治的な介入を行わないことを首相に保証した。また報道によると、ルメール経済相も日本の経済産業省に宛てた書簡で、仏政府が再編を支持していることを伝えた。これは特に日産の側が、国同士の約束を望んでいたことに配慮した対応という。一方、「アンペール」への出資に関して、日産は自社の特許が「アンペール」の事業に参画するIT企業などに流出することを警戒しており、ルノーはこの点でも譲歩して、「アンペール」に持ち寄る特許を日産が自ら選択することを認める方針を示唆している。ルノーがエンジン・HV事業を分離して中国の自動車大手ジーリー(吉利汽車)との折半出資により設立する「ホース」のほうには、日産は出資せず、自社のHV技術も提供しない方針。日産はジーリーとの協業による知財権の侵害を警戒し、「ホース」への参加には当初から難色を示していた。なお、ルノー側ではスナール会長とデメオCEOが二人三脚で交渉にあたってきたが、合意成立が難航していることにCEOが苛立ちを強めているといい、最終的な交渉は会長が中心になって進める模様。 KSM News and Research -
2023.01.11
政府、年金改革の骨子を公表
ボルヌ首相は10日、年金改革の骨子を公表した。定年年齢を62才から64才に引き上げることを決めた。定年年齢(年金受給開始の権利が得られる年齢)は現在、満62才だが、これを2023年9月より、毎年3ヵ月ずつ引き上げる。2027年には63才と3ヵ月に、2030年には64才にまで引き上げられる(1968年生まれから64才に)。政府は当初、65才への引き上げを目指していたが、これを64才までの引き上げに緩和した。年金拠出期間の延長は加速される。現在、2014年の法改正により段階的な延長の途上にあり、2035年までに43年間(172四半期)まで延長されることになっていたが、これを2027年に前倒しで実現する。半面、拠出期間の不十分を理由にした年金支給額の減額措置が適用されない年齢は、従来のまま67才に据え置かれる。他方、年金拠出期間が十分な人の年金支給最低保証額が、法定最低賃金(SMIC)の85%に設定される。現在は月額1200ユーロ(諸税込み)ということになる。最低保証額は毎年、インフレ率並みに改定される。最低保証額は、新規の受給者だけでなく、既存の受給者にも今年から適用される。若い時から就労を開始した人を対象とした早期退職制度は適用が拡大される。現在は16才以前に就労を開始した人が対象だが、これが18才以前に就労を開始した人に拡大され、拠出期間44年を条件に、定年年齢より4才早い退職を認める。育児休暇を取得した女性には、4四半期を限度に育児休暇期間を年金拠出期間として算定する。就労条件が厳しい人については、C2Pと呼ばれるポイント制度による各種支援を受けられる対象者を増やすと共に、健康診断の機会を増やし、就労継続が困難と認められる場合には早期退職を認める。年齢層の高い従業員の雇用維持に関する評価尺度を導入し、従業員数300人超の企業についてその数値の算定と提出・公表を義務付ける。従業員数1000人超の企業については2023年より公表を義務付ける。退職者が就業を再開した場合、年金の受給額の引き上げをもたらす実績として考慮される。60才からパートタイムに移行して年金と勤労所得を両取りできる制度については、公務員部門にも適用を広げる(62才から)。ボルヌ首相が発表した改革の骨子について、労組は強い反発の念を表明。19日(木)に合同で抗議行動を展開することを明らかにした。デモとストが行われる。 KSM News and Research -
2023.01.11
エールフランスKLM、初のサステナビリティ・リンク・ボンドを起債
エールフランスKLMはこのほど、サステナビリティ・リンク・ボンドを発行し、10億ユーロを調達した。同社がこの種の社債を起債するのはこれが初めて。サステナビリティ・リンク・ボンドは、あらかじめ決めた持続可能性の業績目標の借主による達成状況に応じて金利等の条件が変動する社債で、発行等は2020年に国際資本市場協会(ICMA)が定めた自主的指針であるサステナビリティ・リンク・ボンド原則(SLBP)に従ってなされる。エールフランスKLMは今回、自社が運航する航空機からの温室効果ガスの排出量を2025年に2019年比で10%削減することを目標に設定して起債を行った。償還期限3.3年・利率7.25%と償還期限5.3年・利率8.125%の2種の社債を発行し、各5億ユーロ、合計で10億ユーロを調達した。目標は航空機隊の刷新による節減効果を通じて実現する計画。応募の倍率は2.6倍と高く、これは、目標達成の確実さ(エールフランスKLMは2030年までに30%の削減を予定)に加えて、足元の業績改善(2022年に営業収支の黒字復帰など見込む)も助けになった。エールフランスKLMは、調達した資金の全額を、新型コロナウイルス危機時に得た公的援助の伴う特別融資の返済に充当する。40億ユーロの融資総額のうち、15億ユーロは返済済みで、今回の10億ユーロを差し引くと、残高は15億ユーロまで下がる。 KSM News and Research -
2023.01.10
政府、狩猟規制措置を公表
政府は9日、狩猟の安全強化措置を公表した。懸案だった狩猟禁止日の設定は見送られた。2021-22年のシーズンには、狩猟に絡んで90件の人身事故が発生、前年の80件から増加していた。8人が死亡したが、うち2人はハンター以外のハイカー等となっており、狩猟の安全性向上と規制強化を求める声も高まっていた。政府は一時、毎日曜午後の半日間を狩猟禁止として、狩猟以外の活動との共存を図ることを計画したが、これにはハンター協会の反発が強く、政府はこれに押される形で導入を断念した。政府はその一方で、自動車の運転と同様に、酒気帯びの狩猟を法律で禁止することを決定。血中濃度0.5gを超えるアルコールの検出につき135ユーロの罰金処分を適用することを決めた。安全面でのハンターのトレーニング強化もあわせて決定。10年に1回の講習受講を義務付け、2029年までにすべてのハンターにトレーニングを受けさせると予告した。また、狩猟の日時と場所の事前申告義務を設定し、その内容をアプリで公開し(今年秋より運用開始)、ハイカー等の安全性確保に役立てることも決めた。ハンター協会は新規制の内容を歓迎。逆に、環境保護等のNGOは揃って、日曜日の狩猟禁止設定が見送られたことを批判した。 KSM News and Research -
2023.01.10
ユーロ圏の失業率、過去最低水準で安定
欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタット(Eurostat)によると、ユーロ圏の2022年11月の失業率は6.5%で、前月と同じだった。これは過去最低水準で、前年同月には7.1%を記録していた。EU全体の2022年11月の失業率も前月と同じく過去最低水準の6.0%にとどまった。11月の失業者数は、ユーロ圏で1084万9000人、EU全体では1295万人だった。ウクライナ危機が招いた欧州の経済成長の鈍化とインフレの亢進は雇用市場にも打撃を及ぼすと考えられるが、2022年11月の失業統計ではまだ明確な影響は現れていない。なお、2023年1月からクロアチアがユーロ圏に加わり、20ヵ国となったが、上記のユーロ圏の失業者数は従来の19ヵ国に関するもの。 KSM News and Research -
2023.01.10
メディアトール薬害事件、控訴審裁判が開始に
メディアトール薬害事件の控訴審裁判が1月9日、パリ地裁で始まった。6ヵ月の予定で公判が行われる。メディアトールは、セルビエ社が製造していた糖尿病治療薬だが、食欲抑制剤として広く転用されていた。同薬には、心臓弁膜症と肺動脈性肺高血圧症を併発するリスクがあり、食欲抑制剤としての乱用で、数百人程度が死亡したものと考えられている。パリ地裁は第1審で、セルビエ社が1995年より患者に死亡のリスクがあることを知っていながら、販売を継続したと認定し、セルビエ社とその子会社等に対して、業務上過失傷害及び過失致死と欺瞞的商行為で有罪判決(271万8000ユーロの罰金刑)を言い渡していた。事件当時の経営幹部であるセタ被告人も、執行猶予付き禁固4年と9万600ユーロの罰金刑を言い渡されていた。その一方で、パリ地裁は、「詐欺」(メディアトールの払い戻しに応じていた健康保険公庫に対する詐欺)と「販売許可の不正取得」の容疑については、証拠不十分と時効の成立を理由に、無罪とする判決を下していた。検察側はこれらの無罪判決を不服として、これらの点に限り控訴。これを受けて、セルビエ社とその子会社等、及びセタ被告人も、判決を不服として控訴することを決めていた。被告人らは、業務上過失傷害及び過失致死など他の罪状も含めて、控訴審の機会に争う方針を明らかにしている。 KSM News and Research -
2023.01.09
仏政府、「ディープテック」の起業支援に5億ユーロを追加投入
仏政府は9日、「ディープテック」分野の起業支援に向けて総額5億ユーロのプランを公表する。政府は2019年に、「ディープテック」分野の起業支援プランに着手。BPIフランス(公的投資銀行)による資金協力などの取り組みを進めている。2021年以降では250社の起業が実現した。政府は2030年までに年間500件の起業実現を目標に掲げている。新たな追加支援措置として、政府はまず、PUIと呼ばれる大学イノベーションセンターの整備を予告。この種の組織はこれまでに5ヵ所が実現しているが、さらに20ヵ所を追加する。研究者と経済界の間の橋渡しを行い、研究成果の応用や知財権の管理などをサポートする。既存の各種支援措置について広く研究者らに知らしめて、手続きの簡素化などを通じて起業の促進を図る。政府はまた、起業奨励金制度「Bourse French Tech Emergence Lab」の設立(最大12万ユーロ)を予告。また、ディープテック分野のプロジェクト17件を選定し、総額2億7500万ユーロの資金援助を行う予定。 KSM News and Research -
2023.01.09
ラポスト、郵便配達の頻度引き下げを試験導入
ラポスト(郵便)は、この3月より、郵便配達の頻度を引き下げる取り組みを全国の68地区で試験的に導入する。毎日の配達巡回を廃止し、都市部と農山漁村地域の両方で、それぞれの地区の実情にあわせた取り組みを進める。ソー(オードセーヌ県)、モワサック(タルヌエガロンヌ県)、ジュエレトゥール(アンドルエロワール県)、エペルネー(マルヌ県)などで行われる。ラポストはこの年頭より、翌日配達の「赤切手」サービスを廃止。代わりに、電子メールと組み合わせたハイブリッドサービス(差出人が用意した文面を名宛人の居住場所近くで印刷して書簡として配達する)を導入したが、その利用は従来の翌日配達サービスに比べて減少することが予想される。同時に、2日後配達の「緑切手」サービスは3日後配達に改められた。ラポストはこれらを踏まえて、配達を最適化する目的で、新体制を試験的に導入する。具体的には、社内開発のアプリ「Mobilia」を利用して、3日後配達を守れる限りで配達すべき郵便物をストックし、また、郵便物がある名宛人に限定した周回ルートをその都度設定することで、周回の頻度や配達人の作業負荷を減らしても約束した役務の水準を達成できるようにする。他方、速達や書留、新聞雑誌等の配達は毎日の役務が保証されるようにする。ラポストが配達する郵便物は、2008年には年間180億通に達していたが、現在では60億通にまで減少。2030年には30億通にまで減少するものと予想されている。将来的な事業規模の縮小に対応する体制を整えることに迫られているが、労組側は人員削減を懸念している。 KSM News and Research -
2023.01.09
マクロン大統領、医療部門の改革案を公表
マクロン大統領は6日、パリ南郊のコルベイユ・エソンヌ公立病院を訪問した機会に、医療部門の改革について説明した。大統領はまず、「T2A」と呼ばれる病院の収入に関する制度を廃止すると予告。「T2A」は、医療行為の件数を基準に病院の収入を保障する制度だが、これが、病院に多くの件数をこなすよう仕向ける圧力となり、現場の状況を悪化させ、利益追求のあまり医療の質そのものの悪化を招いているとする批判の声が上がっていた。大統領は、2024年社会保障会計予算法案の枠内でT2Aを廃止し、代わって、地域単位で交渉の末に定められる目標の達成状況を基準として病院の収入を保障する形に改めると約束した。大統領はまた、病院の運営において、理事と、医師の間で選出される医師代表との2頭制のガバナンスを採用し、医師の声を運営に反映させると約束した。大統領はまた、病院における労働時間の編成について見直す必要があると言明。週35時間制の適用があまりに硬直的であり、現実的な運用がなされていないとの見方を示し、各病院の部署ごとに交渉の上で新たな体制を確立するよう促した。6月1日までに新体制に移行するよう求めた。開業医部門については、開業医をサポートする事務員の配置を増強(現在の4000人を今年中に1万人に)し、医師が本来の医療行為に専念できるようにする体制を整えると約束。現在は60万人の慢性病患者にかかりつけ医師がいない状況であり、これを年内に解消することを目指すとし、一部の医療行為を医師以外の医療関係者(薬剤師、理学療法士、助産師、看護師等)に肩代わりさせる措置を、その目的の下で正当化した。大統領の発表について、公立病院部門の関係者らは、よい方向に向かうものだとしておおむね歓迎するコメントを発表している。その一方で、開業医組合は強い不満を表明。一部の開業医は前日の5日に、診察料の倍額(50ユーロへ)を求めてパリでデモを行ったばかりだが、大統領はこの引き上げについては公約に含めなかった。 KSM News and Research -
2023.01.06
パリの路線バス自由化、政府は日程延期の可能性を否定せず
ボーヌ運輸担当相はこのほど、日刊紙ラクロワに対して、パリの路線バス事業の自由化日程を延期する可能性を示唆した。パリ及び隣接する市におけるバス事業は、2025年1月1日付で自由化されることになっているが、運輸担当相は、2024年のパリ五輪に影響が出るようなら、延期の可能性を含めて開かれた姿勢で対応すると言明。そうした議論は、パリ首都圏の公共交通機関を統括するIDFMがまず提起するのが筋で、提案があれば検討すると説明した。パリ及び近接する市におけるバス事業はRATP(パリ交通公団)が独占してきたが、これが、2025年年頭より、入札で選ばれる業者との契約によりロットごとに運営される形に改める。入札の準備は既に始まっているが、数日前には、パリ首都圏の左派系の地方議員250人が連名で、政府に対して、「民営化」の断念か、その延期を要求する声明を公表していた。ボーヌ運輸担当相はこれに一定の理解を示したことになる。イルドフランス地域圏(パリ首都圏)のペクレス議長(保守野党の共和党所属)が率いるIDFMは、ボーヌ運輸担当相の発言に反発。自由化は運営の効率化をもたらし、利用客にとってサービスの向上にもつながると主張し、日程を改める考えはないと説明している。なお、RATPによる事業の独占は、2040年頃のメトロ運営の入札を経て、完全に廃止されることになっている。 KSM News and Research -
2023.01.06
デュポンモレティ法相、司法改善プランを公表
デュポンモレティ法相は5日、司法改善プランを公表した。60項目程度の措置を盛り込み、司法の機能不全の解消を進めると約束した。裁判官や書記など法曹関係者は予算不足などを訴えて改革を要求しており、政府は関係者との協議を経て、去る7月に報告書を策定させていた。その内容を踏まえて改善プランがまとめられた。法相はまず、2027年までに1万人を採用(うち1500人が裁判官、1500人が書記)すると約束。法務省予算は既に、2020年に96億ユーロと、8%増を記録しているが、これを2027年までに110億ユーロに増額すると予告した。民事訴訟部門では、判決までに長い時間がかかる(平均で2年間)ことが問題視されているが、法相は、この時間を2027年までに半分に減らすことを目標に設定。そのために、当事者間の和議を優先する新制度の導入を予告した。刑事訴訟については、過去の改正で肥大化し、整合性が薄れた刑事訴訟法典を抜本的に見直すことを約束。法令の内容は維持した上で、現在は3200ページに上っている法典を整理し、法的枠組みの風通しをよくする。法相は、国会に作業部会を設置してそのための協議を進めると説明した。刑事施設が飽和状態に達している(定員6万698人に対して収容者数が7万2836人に)ことについては、刑事施設の増設を進める方針を確認。2027年までに1万5000人分の整備を進めると約束した。 KSM News and Research -
2023.01.06
ンディアイ教育相、中学校教育改革の骨子を説明
ンディアイ教育相は4日、ニュース専門テレビ局BFM TVとのインタビューの機会に、中学校の教育改革について見解を披露した。到達度の低下を踏まえて、学力向上のための一連の取り組みを予告した。教育相はまず、中学1年生(フランスは5-4-3制のため、日本の小学校6年生に相当)の入学時に、必要な学力がない生徒が、国語で27%、数学では33%に上ると指摘。特に読み書きの基本的な学力の不足を問題視した。その対策として、小学校高学年(4・5年生)において、書き取りと作文、暗算の時間を増やすことを柱とする教育内容の修正を勧告することを決めたと説明した。中学1年においては、今年9月の新学年より、毎週1時間の補修を行うと予告。小人数に分けて、各人に必要な学力増強をサポートするとした。また、試験導入した「宿題は学校でやる」という取り組みを全国に広げるとも予告。教育相は、自宅の環境の差により生じる不平等を軽減する効果があると説明した。中学2年生以上については、協議を経て今後に改革を順次導入すると説明した。教員の待遇については、この9月より、最低保証給与を月額2000ユーロ(手取り)とすると約束した。教員組合は、補修を受け持つ教員の報酬など財源が不明なままであることなどを問題視している。 KSM News and Research -
2023.01.05
マクロン仏大統領、ウクライナに対戦車戦闘に対応の装輪装甲車提供を約束
マクロン仏大統領は4日にウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行った。両国は会談後に、フランスが対戦車任務を想定した装輪装甲車「AMX-10RC」をウクライナに提供すると発表した。欧米諸国が戦闘能力の高い車両をウクライナに提供するのはこれが初めて。AMX-10RCは1981年に就役を開始し、フランス軍は現在、247台を保有している。ウクライナとロシアの両国はロシア製の戦車を保有して戦闘に投入しているが、「古いのは確かだが、高性能」(大統領府筋)の西欧の装甲車が投入されれば、戦況を変えることも期待できるという。供与の日程と台数については明らかにされていない。フランスは同時に、兵員輸送用の装甲車「Acmat Bastion」もウクライナに提供する。これは10人乗りの装甲車で、機関銃を備えている。報道によれば10台が提供される。フランスはこれまで、クロタル(ミサイル防空システム)とカエサル自走榴弾砲、ロケット弾などをウクライナに提供してきた。新たな供与でウクライナ支援の姿勢を再確認した。 KSM News and Research -
2023.01.05
エネルギー価格高騰でベーカリーが苦境に、政府は支援を約束
個人経営のベーカリーがエネルギー価格の上昇で悲鳴を上げている。電力・ガス料金が10倍前後の上昇を記録しており、事業を維持できないとする証言が相次いでいる。政府は4日までに一連の援助を約束した。経済省は4日に発表した資料で、一連の支援措置がベーカリーを含む零細企業に適用されていると説明。まず、電力・ガス料金の今年の引き上げ幅を15%に抑制するという個人向けの措置が、従業員数10人未満・年商200万ユーロ未満の零細企業(契約が36kVA未満)に適用されるとした。それ以上の規模の中小企業には、電力料金の上昇分を吸収するための援助金制度があるとした。この措置は、電力・ガス料金が大きく上昇した企業向けの援助措置と同時に受給することが可能だという。ルメール経済相はまた、過度の料金引き上げがあった場合、ベーカリーに無料でエネルギー契約を解除する権利を認めるとも予告。この措置は、ベーカリーにのみ適用され、審査を経て適用されるという。社会保険料・租税の納付延期も認められる。外食店業界も、同じ理由から経営が困難になったと主張し、ベーカリーと同等の援助を要求している。ルメール経済相は5日に業界代表と会談するが、新型コロナウイルス危機時のように手厚い支援を幅広に与えることはせず、必要を見据えて対応を決める構えを見せている。 KSM News and Research -
2023.01.05
仏国内、「今冬の停電の脅威遠のく」(政府報道官)
仏政府のべラン報道官は1月4日、閣議後の記者会見において、今冬における停電の脅威は「遠のいたと見られる」と述べた。その理由としては、原子炉が次々と運転を再開していること、天候予測に加え、政府、企業、市民による省エネ努力が奏功していることを挙げた。報道官は、エネルギー供給の安定的確保に向け、企業および市民に対して省エネ努力の継続を呼びかけた。12月末には、CRE(エネルギー市場規制委員会)のバルゴン委員長も「1月半ばまでは停電のリスクはない」と発言していた。なお、現在のところ国内の原子炉56基のうち42基が運転している。 KSM News and Research -
2023.01.04
ボルヌ首相、失業保険と年金改革で譲歩の姿勢示す
ボルヌ首相は10日に年金改革の骨子について発表する。労使代表との最後の協議を4日に再開する。労組は改革案の内容に対する反発を強めており、この1月にはストなどの抗議行動が始まる恐れもある。政府は反発に配慮し、一連の譲歩に応じる姿勢を示している。ボルヌ首相は3日には、失業保険制度改正を巡り労組が特に反発していた項目の導入を延期する考えを表明。失業率が6%を下回った時点で、失業手当の支給期間の短縮率を40%に引き上げるとする措置の導入を、2024年年頭以降にすると予告した。ただ、単なる「延期」で労組の反発が収まるとは考えにくい。また、2月1日以降の登録者について給付期間を25%削減するという改革の本体部分に変更はない。ボルヌ首相は、年金改革については、定年年齢(年金受給開始の権利が得られる年齢)を現在の62才から65才に引き上げるという政府案について、「65才という年齢は絶対に譲れないものではない」と言明し、引き上げを64才までにとどめて、年金拠出期間の引き上げと組み合わせるという形で決着を図る可能性を示唆した。これは、保守野党の共和党が推している案であり、共和党の協力が得られれば、法案を可決させる展望が開ける。ただ、こちらについても、労組は一様に定年年齢の引き上げそのものに反対しており、反発が収まる気配はない。 KSM News and Research -
2023.01.04
2022年はフランスで観測史上最も暑い年に
この年末年始にフランスは記録的な高温に見舞われている。12月30日から31日にかけての夜は、パリから北西地方にかけて、12月としては過去最高温度を更新。12月31日の平均気温は13.9度と、12月17日から3月9日までの期間における最高記録を更新した。1月に入ってからも高温が持続している。暖冬はフランスに限らず、欧州全域で目立っている。メテオ・フランス(フランス気象協会)が11月末に発表したところによると、2022年は観測史上で最も暑い年となった。その時点の予想で、フランスの年間平均気温は14.2度以上となっており、12月が特に暑ければ、平均気温は14.6度にも上るとされていた。2022年には、冬春夏秋といずれの季節も高温が続き、温暖化の鮮明な影響が実感された。また英国気象庁MetOfficeは、2023年にも世界で高気温が続くと予想。1850-1900年の平均比で、世界の平均気温は1.08-1.32度高くなる(中心シナリオは1.20度)と予想している。 KSM News and Research -
2023.01.04
エアバスが開発の次世代旅客機、翼部の改良がポイントに
仏経済紙レゼコーは12月30日付で、エアバスが準備中の次世代旅客機の設計について報じた。2035年にカーボンニュートラルを実現できる新型機の初飛行を目指している。新型機は、翼部の改良を通じて、5-10%の燃料節減の実現を目指している。これに、省エネ型の新開発エンジンと、代替燃料の使用を組み合わせる形で、カーボンニュートラルを実現する。翼部については、省エネ型エンジンの重量増大に対応する形で、ナローボディの中距離機(A320)であれば片翼が5メートルほど長く、全体の翼幅は50メートル近く(A320は35メートル)にする必要がある。空港設備の都合もあり、また、飛行中の空気抵抗を最適化する必要もあり、先端部分をアクチュエーターにより調節可能とする設計が採用される。全体の形状も大きく見直され、また、LIDAR等で得たデータを用いて高揚力装置等を自動制御する技術も推進して、気流の乱れなどに効果的に対応しつつ、エネルギー消費の点でも最適な飛行を実現する。新設計の翼は既に風洞実験を終えており、2024年夏には自動操縦の小型機に搭載して初の飛行試験を行う予定。ただし、新型機の全体的な設計はまだ固まっていない。採用されるエンジンの仕様がまだ固まっておらず、サフラン・GEが開発するオープンファン型の省エネエンジンが採用された場合、直径4メートルと大型であることから、全体の設計を見直す必要が生じる。翼下に取り付ける場合は、スペースの都合から、高翼を採用するか、低翼なら、胴体付近で大きくせり上がるような形状の翼を採用するのが解決策になるが、いずれも空気抵抗の問題が生じる。機体後部に配置するという解もあるが、大型エンジンを後部に配置すると全体のバランスの問題も生じる。2026年に予定されているエンジンの飛行テストが次なる段階となる。 KSM News and Research -
2022.12.28
年末年始お休みのお知らせ
2022年12月28日〜1月3日まで、「今日のフランス」はお休みです。新年は4日(水)より配信を再開いたします。 -
2022.12.27
衣料の製品表示制度、2023年年頭から改正に
2023年1月1日より、衣料の製品表示制度が変更される。重要な製造工程が実行された国の表示などが義務付けられる。新制度は、ロス対策・循環経済法(AGEC)により導入され、2022年4月29日の施行令により細則が定められた。業者(販売、輸入、製造)は、主要工程の実施国について表示することを義務付けられる。衣服の場合は、織布、染色・プリント、縫製の各段階、靴の場合は、縫製、組み立て、仕上げの各段階について表示する。製品のタグか、ペーパーレス化した製品情報ファイルの形で顧客に情報を提供する。この措置は、国産品の購入振興を目的に導入される。調査結果によると、国産品は輸入品よりも、繊維1kgにつき二酸化炭素の排出量が10分の1とされる。現在は国産品のシェアは5%に過ぎない。また、リサイクル材料の使用に関する表示も義務付けられる。製品と容器包装の両方について、「リサイクル材料が何%以上」という表示がなされる。表示義務は、大手から始めて、段階的に中小企業にまで拡大される。2年後の完全施行を予定する。 KSM News and Research -
2022.12.27
リール都市圏、乗用車利用を見合わせのドライバーに奨励金を支給へ
リール都市圏は、乗用車の利用を見合わせるドライバーに対して奨励金を支給する新制度の導入を決めた。去る17日に都市圏議会が可決し、2023年春から導入に着手する。新制度は、オランダのロッテルダム市による既存の制度に倣って導入される。手始めに、通勤時間帯の渋滞が目立つ高速道路A1(パリ・リール)とA23(バランシエンヌ・リール)の都市圏内の区間を対象として、7時から9時までと、16時30分から18時30分までの時間帯の走行を見合わせた場合に、片道につき2ユーロの奨励金が支給される。受給するには専用アプリを通じて登録する必要があり、通勤ルートを登録した上で、走行をしなかった日を自ら申告する。当局は、走行車両のナンバープレートを走査して得た情報と照合して申告内容の正確さを検証した上で、月末に奨励金を一括支給する。ただし、支給額は月額で80ユーロを上限とする。導入から9ヵ月後に業績評価を行い、良好なら他の区間(A22及びA25)にも適用を広げる。対象時間帯に6%の交通量削減を目標に掲げる。当面の費用は1130万ユーロを予定し、国が55万ユーロの拠出を約束した。地元のオードフランス地域圏及び欧州連合(EU)からの助成金の獲得も目指す。この制度については、「好きで渋滞に飛び込んでゆくドライバーはいない。代替手段を整えるのにリソースを投入すべきだ」(都市圏内のモンスアンバルール市のエレゲースト市長)など、批判的な声も聞かれる。 KSM News and Research -
2022.12.27
開業医のスト始まる、診察料の2倍増など要求
開業医らが26日にストを開始した。診察料の2倍増(25ユーロから50ユーロへ)などを要求している。有志の開業医らが作る複数の団体がストを呼びかけた。同じ理由で12月初頭に行われたストには、全国の30%の開業医が合流しており、かなり大きな規模に発展した。団体側は余勢を駆って、1月2日まで1週間にわたるストを呼びかけた。政府は先に、医師不足を補う目的で、看護師等が一部の医療行為を代行して行えるようにする制度を導入した。これが開業医らの反発を招いている。団体側は、医師不足を解消するには、しかるべき所得を保障することが肝心だと主張し、診察料の倍額などを要求している。健保公庫との協定の改定(5年期限)の交渉が進められている中で、開業医側は要求を強めている。折しも、病院が飽和状態を迎えている中だけに、開業医らのストで病院がさらに厳しい状況になることが懸念されている。新型コロナウイルス感染症に加えて、子どもの細気管支炎と、高齢者のインフルエンザによる来院・入院が増えており、医療機関の受け入れ能力は限界に達している。 KSM News and Research -
2022.12.26
ファーストフード店の使い捨て容器の使用禁止、フランスで2023年年頭に施行
フランスでは2023年年頭より、ファーストフード店舗における使い捨て容器の使用が原則禁止される。大手は既に試験導入を経て準備を整えている。この措置は、廃棄物削減を目的とする法律を通じて3年前に制定された。準備期間を経て2023年年頭に施行される。具体的には、席数20以上の店舗におけるイートイン客について、リユース可能な容器の使用が義務付けられる。ただし、ハンバーガーとサンドイッチに限っては、衛生上の理由から使い捨て容器の利用が認められる。また、テイクアウトと配達には禁止措置は適用されない。ファーストフード店は使い捨てをビジネスモデルの基本としてきた。リユース容器を使用すると、洗浄の工程が必要となり、そのための設備を整えなければならず、応分の費用も発生する。大手各社は、どの程度の費用増加が生じるのかは明らかにしていないが、新規制に適合する準備を整えている。バーガーキングの場合は、50店舗で試験導入を開始済みで、1月には全国の470店で移行に乗り出す。ポリプロピレンなどの容器を採用。同社の試算によれば、1店舗当たりで年間1.9トン近くの廃棄物の減量が実現する。顧客の啓蒙も必要になり、バーガーキングでは、無線タグを利用して容器がどの程度なくなるかを計測した。最初の2ヵ月間では回収率がかなり低かったが、その後は顧客への周知が徹底し、回収率は顕著に改善したという。 KSM News and Research -
2022.12.26
パリ10区で銃撃事件、クルド人3人が死亡
パリ10区で23日に3人のクルド人が銃撃により殺害される事件が発生した。犯人は逮捕された。事件は同日の正午前に発生。ダンギアン通りにあるクルド文化センター前で銃撃があり、付近にいた3人が死亡、ほかに3人が重傷を負った。犯人は付近にいた人々により取り押さえられ、警察に引き渡された。犯人は69才の男性で、退職前には鉄道運転士を務めていた。犯行に使用された拳銃のほか、充填された弾倉数点などを所持していた。この男性は、スポーツ射撃クラブに所属し、複数の銃器を登録所持していた。その一方で、銃器を用いた暴力事件で2016年に有罪判決を受けており(上訴中)、さらに、2021年12月に発生した別の暴力事件で容疑者認定を受け、この12月12日に保釈されたばかりだった。この暴力事件は、パリ市内で、刃物により路上生活の移民2人を襲撃したというものだったという。犯人は今回の事件で、警察の取り調べに対して、人種差別的な動機で犯行に及んだと供述している。当局は25日の時点で勾留を一旦解除し、犯人の身柄を精神病棟に移した。ダルマナン内相は24日の時点で、明らかに外国人を狙った犯行だが、特にクルド人を標的にしたのかははっきりしていないと言明。犯人は、テロ関係等の監視者リストには入っておらず、極右勢力と犯人の間につながりがあったことを示す情報は得ていないとも説明した。クルド人らは同日午後にパリ市内に集まって抗議行動を展開。治安部隊と衝突する一幕もあった。24日にはレピュブリック広場に数千人が集まり、抗議集会が再度開かれ、この時にも破壊行為と暴力的な衝突が発生した。11人が逮捕された。パリのほか、マルセイユでも衝突があった。クルド人勢力は、今回の事件について、トルコが背後に介在している政治的なテロ事件であるとする主張を展開。当局に対して真相究明のための徹底的な捜査を行うよう要求している。犯罪歴があり、保釈されたばかりの犯人が、やすやすと拳銃を使用できたことも問題視されている。 KSM News and Research -
2022.12.26
仏国鉄SNCFの労使交渉、年末年始のストは回避に
仏国鉄SNCFで、年末年始に予定されていたストの回避が決まった。経営側の譲歩を受け入れ、労組がスト予告を取り下げた。SNCFでは、23日から25日までのクリスマス期間中にストが行われ、高速鉄道(TGV)の運行が大幅に乱れた。ストは、車掌らによる非公式グループの発議で行われたが、そのようなグループにはスト権の行使は認められていないことから、代表権を有する複数の労組が代わってストの予告を行い、経営側と交渉するという異例の手続きを通じてストは行われた。クリスマスの需要期におけるストに政府は反発し、SNCFの経営陣に対して、早期の打開を図るよう強く求めていた。経営側は一連の譲歩を示し、労組側もこれを受け入れた。SNCFは全職員を対象に12%の賃上げを約束しているが、車掌を対象に、720ユーロの特別賞与の支給を約束(600ユーロの前回提示を増額)。さらに、最低でも4年ごとの追加賃上げを約束した。さらに、200人の車掌を追加採用し、列車には必ず2人以上の車掌を勤務させると約束した。車掌の一部はこの提示に満足していないともいわれているが、交渉の窓口となった労組側は提示を受け入れ、スト予告を取り消した。今回の事案が前例となって、職種ごとの要求がストにまで発展する機会が増える可能性もある。 KSM News and Research -
2022.12.23
ボルヌ内閣、影が薄い閣僚多数
仏日刊紙ルフィガロは12月23日付で、閣僚の知名度に関する世論調査の結果を発表した。閣僚の認知度が極めて低いという結果が得られた。ボルヌ内閣は閣外相を含めて総勢40人を超える大所帯だが、この調査では、主な閣僚23人について、名前と役職を知っているかと質問し、その回答を集計した。その結果、知名度(「名前は知っているが、役職は知らない」との回答を合算)が80%を超えたのは、ルメール経済相(66+23%)、デュポンモレティ法相(71+17%)、ベラン報道官(65+23%)、ダルマナン内相(68+19%)、アタル予算相(50+31%)、シアパ社会連帯経済閣外相(45+23%)の8人にとどまった。人気度(「よいイメージを持っている」と回答した人の割合)は、ルメール経済相が56%で最も高く、これにルコルニュ軍隊相(52%)、ベラン報道官(50%)、アタル予算相(50%)が続いた。知名度が高い閣僚の中では、デュポンモレティ法相、ダルマナン内相、シアパ閣外相の人気度が40%前後で低かった。重要案件の発表などでは、マクロン大統領が自ら行うことも多く、これは、閣僚の知名度が低く重みがないので詮方なく自らが矢面に立っているとみることもできれば、大統領が前面に出ることで、閣僚の影が薄くなっているとみることもできる。 KSM News and Research -
2022.12.23
欧州中銀(ECB)、仏BNPパリバ銀行に自己資本増強を指示
欧州中銀(ECB)はこのほど、監督対象のユーロ圏の大手銀行の年次審査・評価プロセス(SREP)の一環で、仏BNPパリバに対して自己資本の増強を指示した。2023年1月1日付以降に、9.56%以上の自己資本比率(CET1)の確保を求めた。この最低限は現時点では9.27%に設定されていた。また、Tier2(補完的項目)について、最低限を1.32%から1.57%に引き上げた。こちらも1月1日付で適用される。BNPパリバはこの決定について、自行のCET1が9月末日時点で12.1%に上ることを挙げて、指示された自己資本の増強は既に達成されていることを強調した。BNPパリバは、資産額と時価総額で共に欧州最大手の銀行。自己資本増強の指示はほかに、イタリアのウニクレディトが受けており、同行の場合は、CET1の最低限が9.03%から9.20%へ引き上げられた。半面、仏大手銀行のクレディアグリコル・グループと、その上場主体のクレディアグリコルSAは、要件が据え置かれた(CET1の最低限が前者で8.9%、後者で7.9%、など)。欧州中銀がどのような根拠で自己資本増強の指示を出したのかは明らかではない。欧州中銀はこれまで、経済環境の不透明感が高まる中で、市中銀行に対して過度の楽観主義に陥らないよう、事あるごとに戒めていた。プライベートエクイティ案件などへのレバレッジの高い融資についても慎重になるよう求めていた。これとは別に、フランスでは、カウンターシクリカル資本バッファーの比率引き上げ(0.5%から1.0%へ)が、来年年頭に施行されることになっている。銀行への規制は厳しさを増している。 KSM News and Research -
2022.12.23
仏政府、外資出資規制の適用を延長
ルメール経済相は22日、民放ラジオ局シュド・ラジオとのインタビューの機会に、外資出資規制の適用を延長する考えを明らかにした。2023年末日まで現行規制を延長すると説明した。政府は、戦略的に重要な部門の企業を外資から防衛する目的で、事前審査制度を適用している。欧州連合(EU)域外の企業が、同部門の企業の25%以上の議決権を取得する取引を計画している場合、経済省は審査権を行使し、禁止命令を下すことができる。新型コロナウイルス危機に伴い、困難に陥った企業が外資により買いたたかれるのを防衛する目的で、政府は、時限措置として、上場企業について審査権を行使可能な議決権最低限を10%に引き下げたが、この期限が2022年末に終了することになっていた。ルメール経済相は、これをさらに1年間延長すると予告した。2021年には124件の出資案件が審査の末に許可されたが、うち67件は条件付きで許可が下された。2022年の実績についてはまだ発表されていない。ルメール経済相は、自由主義のグローバル化の時代は終わったとし、世界的に保護主義的な動きが強まる中で、フランスと欧州は防衛のための手段を確保しなければならないと説明した。 KSM News and Research -
2022.12.23
当座預金残高、10月に大幅減
仏中銀の統計によると、家計及び団体の当座預金残高は10月に147億ユーロの純減を記録した。1ヵ月間の純減幅としては2015年以来で最大を記録した。当座預金残高は久しぶりに去る8月に純減を記録していたが、10月には大幅な純減を記録した。ただし、当座預金残高は10月末時点で6440億ユーロに上り、これは1者につき9545ユーロに相当、2015年1月と比べて2倍に増えている。当座預金残高は、新型コロナウイルス危機に伴い、消費の可能性を失った資金が積み上がる形で、2020年以降に大きく増加していた。2020年には817億ユーロの純増を記録、2015-19年の平均に比べて2倍という純増幅となっていた。2021年には520億ユーロの純増を記録。これが今年に入ると、1-6月期の純増幅は150億ユーロにまで縮小し、足元では大幅な純減に転じた。こうした資金の動きは、家計がインフレ亢進に対応するために当座預金を取り崩し始めたことを示しているものとも考えられる。ただし、それだけでなく、金利上昇に伴い、より有利になった貯蓄商品に資金を移す動きが出ている可能性もある。住宅ローン金利の上昇を見越して、今のうちに住宅を購入しようと考えた家計が手元の資金を圧縮したことも考えられる。銀行にとっては、当座預金の縮小は安価な資金調達の手段を奪われることにもなり、マイナス要因になりうる。 KSM News and Research -
2022.12.22
廃棄物を「石化」、仏Neolitheが実用化
廃棄物の「石化」方法を開発した仏ベンチャー企業Neolitheが事業の拡張を進めている。1億ユーロの資金調達を実施し、新たな製造拠点を展開する。従業員数は現在の120人が2023年には230人に増員される見込み。同社は、リサイクルのできない廃棄物(危険廃棄物除く)から、骨材として利用可能な10-15mm程度の石を得る「石化」処理の手法を開発した。現在は、同社地元のメーヌエロワール県内に2ヵ所(シャロンヌシュルロワール、アブリエ)とトゥーロン(バール県)の合計3ヵ所に生産施設を展開している。具体的には、500平方メートルの施設を、廃棄物の分別・処理施設に併設。廃棄物を破砕し、500ミクロン程度の顆粒にして、これに結合剤と水を混ぜてペースト状とし、押出成形により10-15mm程度の粒を得る。日量30トン、年間1万トンの生産能力を有する。インプットと生産工程における炭素発生はわずかで、廃棄物を焼却した場合と比べると排出削減効果は大きい。骨材の販売による収入よりも、廃棄物生産者との契約に由来する収入の方が大きい。全国に25ヵ所の施設を新設する計画を進めており、投資額が大きいため収支は赤字が続いているが、同社では、事業そのものの収益性は十分だと説明している。 KSM News and Research -
2022.12.22
グランパリ・エクスプレス、2030年の全線開通予定に遅れ
大パリ圏環状地下鉄(グランパリ・エクスプレス)の整備計画では、自動運転のメトロ新線(15、16、17、18)が2030年までに開業する予定だったが、整備事業を担当する公社SGPはこのほど、15号線の西側区間が2030年までには開業できないと発表した。副都心ラデファンスを通るセーブル・クールブボワ間の区間の工事開始が遅れ、開業日程を保てなくなった。延期後の開業日程は公表されていない。遅れに伴う工事費用の膨張はないと説明した。SGPはその一方で、2024年のパリ五輪の輸送手段として期待されているメトロ14号線の延伸計画(北はサンドニまで、南はオルリー空港まで)の開業日程は維持した。 KSM News and Research -
2022.12.21
仏電力需給、1月のリスクは薄らぐ
仏送電網を管理するRTE(EDF子会社)は12月20日、電力需給予想の修正結果を発表した。1月に電力需給がひっ迫するリスクを、「高い」から「中程度」に下方修正した。RTEは、節電努力が維持されるという前提で、気候条件が著しく厳しくなる場合にはリスクが生じる可能性はあるものの、特に1月中については、これまで予想していたよりも供給の安定性に関するリスクは低くなったと説明した。「Ecowatt」予報が「赤」(節電の追加努力がなければ計画停電が避けられないとの予想)が出る回数の見込みは、「0-3回」となり、従来の「0-5回」より少なくなった。RTEはこの理由として、節電努力の効果が浸透したことを挙げている。直近4週間の電力消費量は9%の減少を記録(2014-19年の平均比)。工業部門に限ると消費量の減少率は12%とさらに大きくなった。この減少は、節電努力だけでなく、電力価格の高騰に伴い生産中断等を余儀なくされたことにも由来していると考えられ、景気動向を占う上ではマイナス要因となる。それに加えて、干ばつのために著しく低下していた水力発電所のダムの貯水量も、今秋の降雨でかなり回復。天然ガスの備蓄も、10月から11月にかけて高めの気温が続いたことから十分な水準を保っている。運転中の原子力発電所の容量合計も12日以来で40GWを超えるまでに回復した。 KSM News and Research -
2022.12.21
政府が準備の移民法案、内容が報道に
政府は移民法案を事前審査のため行政最高裁(コンセイユデタ)に提出した。ルフィガロ紙がその内容を報じた。法案は、求人難の部門における就労実績がある不法移民に対して、滞在許可証の発給を容易にする旨を盛り込んでいる。これについては、保守及び極右の野党勢力が、不法移民を呼び寄せる結果になるとして反対している。法案は具体的には、3年以上の継続した滞留実績があり、また、直近24ヵ月以内に8ヵ月以上の就労実績がある者に滞在許可証を交付することを定めている。この制度は2026年末までの時限措置として導入され、業績評価を経て継続の是非を決めるという。このほか難民申請者に対する就労制限が緩和される。申請が認められる可能性が高い者には申請時より就労が認められる。また、医療スタッフ及び薬局関係の有資格者を対象にした外国人受け入れの促進も図られる。その一方で、外国人対象の規制は一部強化される。まず、複数年次の滞在許可証の取得には、一定のフランス語能力の証明が要求されることになる。また、国内で軽犯罪及び犯罪を犯した外国人の退去強制処分の執行が容易になり、異議申し立ての手続きも簡素化・迅速化される。さらに、国家の安全に重大な脅威となる外国人については、当局が複数年次の滞在許可証の更新を拒否できるようになる。 KSM News and Research -
2022.12.21
企業ガバナンス自主憲章が改定に:気候変動の業績目標導入など勧告
仏大企業が作る団体AFEPと仏経営者団体MEDEFは20日、上場企業向けのガバナンス自主憲章の改定版を発表した。社会・環境責任をガバナンスに取り入れるよう促す内容となった。ガバナンス自主憲章は2003年に制定され、最後の改定は2020年に遡る。最後の改定では、経営陣への女性の進出を促す内容が盛り込まれていた。今回の改定は社会・環境責任がメインとなった。具体的には、企業の経営陣に対して、社会・環境責任に関するアクションプランの制定と、目標達成の日程を明示するよう求め、成果の総括を毎年、実施するようあわせて求めた。中でも、気候変動に関する取り組みを特に重視するよう求めた。さらに、気候変動に関する一つ以上の尺度を含む、社会・環境責任の複数の尺度を、経営陣の報酬決定の基準の中に組み入れるよう求めた。改定後の憲章は、2023年年頭以降に始まる会計年度の財務諸表を承認する株主総会から適用される。AFEPとMEDEFは、こうした改正は大手企業においては既に動き出していると説明している。 KSM News and Research -
2022.12.20
ローヌ川渓谷地方のワイン業者、増産に転じる
ローヌ川渓谷地方のワイン業者が作る業界団体アンテルローヌは増産に向けた戦略変更を準備している。高級化路線で成功を収めたのを踏まえて、増産に舵を切る。アンテルローヌには、ローヌ川渓谷地方の23のAOCワイン(コート・デュ・ローヌ、バントゥー、ジゴンダス、コンドリュー、コスティエール・ド・ニームなど)が加わっている。ワインの全般的な需要後退もあり、アンテルローヌも過去10年間で年平均1.9%の生産減を続けてきたが、同時に高級化を進めて単価を引き上げ、売上高では同じ期間に年平均4.1%の増収を達成した(年間売上高は6億3500万ユーロに)。今後は、高級化路線を維持しつつ、増産にも取り組む。アンテルローヌの場合、輸出が占める割合(数量ベース)は37%で、10年前からは10ポイント上昇したものの、これは国内販売の低迷に由来している分もある。2035年までに、国内出荷量の後退を食い止め(年平均2.9%減を0.9%減に)、同時に輸出も含めた全出荷量を年間3.5%増やして、国内市場と輸出市場の最良のバランスの達成を目指す。輸出市場では、米国、カナダ、シンガポール、中国、韓国への売り込みにリソースを集中させる計画で、特に、過去4年間で「ワインをよく飲む」人が31%の大幅増を記録した韓国市場に注目している。増産では、需要が後退している赤(アンテルローヌでは生産の76%が赤)に代えて、白ワインを増やすのが課題となっている。現在の生産量は2200万本相当だが、2031年にこれを3900万本に増やす(年間5.6%増に相当)ことを目指す。 KSM News and Research -
2022.12.20
仏国鉄SNCFの車掌ら、クリスマスと年末年始のスト予告を維持
仏国鉄SNCFの車掌が作るグループがクリスマスと年末年始にストを計画している件で、SUD-RailとCGTの2労組は19日、スト予告を維持することを決めた。ストへの参加の呼びかけは行わず、参加を望む人々に組合として協力すると約束した。車掌ら3500人余りがSNS上で立ち上げたグループが、待遇改善などを求めて12月初頭にストを行い、これがかなり大きな規模に発展していた。制度上、ストの実行には労組の予告が必要であり、車掌らのグループは労組に協力を求め、経営側との交渉も労組を通じて行った。経営側の提示を労組が持ち帰り、グループの依頼を受けて対応を検討したが、意見がまとまらず、SUD-RailとCGTの2労組がそれぞれ、ストには協力するが参加は呼びかけないという異例の対応で臨むことを決めた。24日と25日の週末と、続く31日と1月1日の週末にストの予告がなされており、これが維持された。どの程度の参加になり、列車運行への影響がどうなるかはまだ明確になっていない。経営側は、全社対象の2023年の賃上げのほかに、車掌について年間600ユーロの特別手当の支給などを約束した。労組のうちUNSAは16日の時点で、スト予告の解除を決定していた。 KSM News and Research -
2022.12.20
サッカーW杯決勝、フランスは惜敗
ドーハ開催のサッカーW杯で18日に決勝戦が行われた。アルゼンチンがPK戦の末にフランスを下し、3回目の優勝を飾った。フランスは2連覇と3回目の優勝をかけて決勝戦に臨んだが、届かなかった。決勝戦は前半にアルゼンチンが2ゴール(うち1ゴールはメッシのペナルティ)を決め、楽勝かと思われた。フランスチームは、準決勝まで攻守に活躍のグリーズマンが、これまでの試合でだいぶん痛めつけられたためか精細を欠き、攻撃がつながらなかった。相手チームがエムバペに気を取られている隙にグリーズマンが組み立ててゴールを決めるという方程式が機能しなかった。おそらくアルゼンチンの対策もあったのではないか。逆に、グリーズマンが下がった終盤71分以降は、気が抜けたのかアルゼンチンの選手の疲れも見え、エムバペのフェスティバル状態となり、低い姿勢からの目の覚めるようなシュート(80分)を皮切りに、やはりエムバペのペナルティ(81分)で同点に追いついた。延長戦ではメッシのゴール(108分)に再びエムパベのペナルティ(118分)で追いつき、PK戦にまでもつれ込んだ。PK戦では、ここまで何度となく名プレーでチームを救ってきたキーパーのロリスが精細を欠いたこともあり、4対2でフランスはあっさりと敗れた。エムパベは今大会8ゴールで、メッシ(7)を抜いて得点王となり、終盤の活躍で報酬の高さを正当化したが、2連覇の立役者としてレジェンドになることは叶わなかった。マクロン大統領は、準決勝戦に続いて決勝戦も観戦。試合後にはピッチに降りて、落胆しているエムバペを激励したり、ロッカールームを訪れて国民を代表して謝意を述べる姿を自ら動画で配信したりと、何かと前面に出て活躍した。野党勢力からは、場違いの行動だとマクロン大統領を批判する声も上がっている。他方、決勝戦のテレビ中継はフランスでは2410万人が観戦。視聴率(占拠率)は81%に上り、これは歴代のすべてのテレビ番組の中で最高の記録となった。W杯の無料放送の中継権はTF1が7000万ユーロ前後で独占的に獲得。全部で28試合を放送した。この種の権益獲得は、利益の達成よりも、ブランドイメージの確保を目的に行われるというが、フランスチームが決勝まで進み、視聴率記録も更新されたことから、投資の全額近くを回収できたものとみられている。 KSM News and Research -
2022.12.19
ボーアンブラン市で住宅火災、10人が死亡
リヨン市の東郊に位置するボーアンブラン市(ローヌ県)の集合住宅で16日未明に火災が発生した。子ども4人を含む10人が死亡した。火災があったのは8階建ての集合住宅で、3才から15才までの4人の子どもを含む10人が遺体で発見された。4人が重傷を負い、ほかに15人が軽傷を負った。火災があった建物は問題地区に位置し、麻薬取引のグループが入口ホールを不法に占拠する状態が続いていた。警察が17日時点で発表したところによると、出火場所はその入口ホールとみられるが、可燃物の痕跡は検出されなかった。警察は、失火と放火の両面で捜査を続けている。火災のため、38家族の100人程度が避難生活を送っている。住民らは積極的に救援物資などを寄付。17日にはボーアンブラン市の市役所前に600人程度が集まり、犠牲者に追悼を捧げると共に、問題地区の危険な状況を訴えた。 KSM News and Research -
2022.12.19
循環型シャワー「Ilya」、近く商用化へ
トゥールーズのベンチャー企業Ilyaは循環型のシャワーを開発した。快適なシャワーの利用と節水及びエネルギー節減を両立させる目的で開発した。同社は、INSA(応用科学研究所)のトゥールーズ校出身のエンジニアであるビュオロとエスカンドの両氏が2018年に設立した。社名と同じ名称の循環型シャワーは、衛生モードとウェルネスモードに切り替えることができる。体や髪を洗う時には、水はそのまま排水溝に流される(衛生モード)が、その後に「ウェルネスモード」に切り替えると、水はポンプで吸い上げられ、フィルターと紫外線による純化と滅菌の後、加熱して再びシャワー水として放出される。循環を可能にするために最初に5リットル余りの水が循環システム内に蓄積される。同社によれば、この製品は従来比で90%に上る節水を実現できる。Ilyaは年内に、15機程度を設置してベータテストを開始する。業者(宿泊、スポーツ施設、住宅デベロッパーなど)向けの予約受付は開始済みで、2023年夏にも出荷の開始を目指している。 KSM News and Research -
2022.12.19
公務員部門職員代表委員選挙:CFDTが3位に後退、首位のCGTも得票率落とす
公務員部門の職員代表委員の選挙の結果が発表された。CGTが公務員部門における筆頭労組の地位を保ったが、投票率は後退した。第2位はFOとなり、CFDTは第3位に後退した。この選挙は4年に1回行われ、前回は2018年だった。投票は1日から8日まで行われた。投票率は43.7%となり、前回より6ポイントを超える後退を記録した。510万人のうち220万人が投票するにとどまり、労組の役割への関心が低下していることをうかがわせた。投票率は、国家公務員部門で5.9ポイント低下の44.9%、地方公務員部門で6.2ポイント低下の45.6%、公立病院部門で6.4ポイント低下の37.8%となった。前回と同様、強硬派労組のCGTが首位を保ったが、得票率は20.8%で、1.1ポイントの後退を記録した。前回2位だった改革派労組のCFDTは、0.5ポイント低下の18.5%となり、FO(18.7%)に抜かれて3位に後退した。FOは特に、公立病院部門で1.9ポイント上昇の26.6%と支持を伸ばし、国家公務員部門でも首位の地位を固めた(0.7ポイント上昇の17.8%)。CFDTは、前回の選挙で、官民合計でCGTを抜いて最大労組の地位を得ていたが、改革派として政府に協力的に対応したことがマイナス要因になった可能性もある。強硬派労組のCGTも支持を落としたが、こちらは労組離れを示す投票率の低下と関係している可能性がある。他方、4位のUNSA(11.7%)と5位のFSU(9.2%)はいずれも得票率を伸ばした。 KSM News and Research -
2022.12.16
ホテル料金が大きく上昇
ホテルの料金が大きく上昇している。新型コロナウイルス危機から脱して需要が増えているのを追い風に、利益率の回復を目指して値上げが広がっている。人件費をはじめとする経費の増大も背景にある。調査会社MKGによると、1室の平均料金は2022年に107ユーロとなり、前年比で27%の大幅増を記録した。特にパリでは42%増と勢いが大きく、地方は13%増と、より小幅な値上げとなっている。新型コロナウイルス危機を通じてホテルは需要の急減に対応して料金を引き下げたが、それを取り戻す動きが加速した。既に危機前の2019年の水準と比べて13%高くなっており、これは同じ期間の物価上昇率の2倍の上昇に相当する。ホテルの料金上昇につられて、民泊の料金も上昇しており、Airbnbの物件の料金は2019年11月と比べて28%上昇している。欧州や米国からの観光客が戻っており、ビジネス客も、2019年の水準には復帰していないが、かなり戻ってきた。客室稼働率は75%で、これは2021年の35%に比べて高いが、2019年の81%までは戻っていない。それでも、需要の回復を背景に、人手不足のために引き上げた人件費(業界の賃金体系が4月1日に改定され、16%の引き上げに)やインフレ亢進に伴うコストの増分を料金に転嫁する動きが進んでいる。 KSM News and Research -
2022.12.16
小学校教諭の採用試験、受験生の国語力が顕著に低下
ルフィガロ紙は12月16日付で、2022年の小学校教諭の採用試験の講評内容を報道した。国語試験における受験生の学力の低さが特に目立ったという。国語試験においては、ビクトル・ユゴーの詩「ジョルジュとジャンヌ」が出題された。文法知識を問う設問と、内容に関する論述解答を求められる設問がなされたが、いずれも全体的な能力の低さを露呈する結果になったという。「chancelant(ぐらぐらする)」という単語の意味を問うたところ、さほど難しくない問題であるにもかかわらず、「幸運である」(chanceからの連想)など、見当外れの珍回答が目立った。文章から代名詞を選んで列挙する問題などでも成績が優れなかった。また、出題された詩のテーマである世代間の関係について例を挙げつつ論述を求める設問においては、いちばん多く上がったのが「カールじいさんの空飛ぶ家」であり、全般的な教養の欠如が浮き彫りとなった。論旨の展開の論理性も欠如し、語彙の不足も目立った。教員試験は、出題は全国共通だが、採用は各学区で行われることになっており、学区ごとに格差を生じさせる恐れもある。なお、2022年からは採用試験の制度が改正され、国語と数学の知識・能力を問う試験の比重が高められることになっており、これまでよりも国語力を磨くことが受験生には求められることになる。 KSM News and Research -
2022.12.16
10-12月期の仏経済成長率(前の期比)、マイナス0.2%の見込み
15日発表のINSEE予測によると、10-12月期の仏経済成長率(前の期比)はマイナス0.2%となる。マイナス成長はこの四半期のみで、2023年1-3月期にはプラス成長に転じるとも予想した。INSEEはこれまで、10-12月期の成長率を0%と予想していたが、これを下方修正した。工業部門の生産後退を折り込んだ。原子力発電の低迷だけで通年で0.4ポイント分のGDPを押し下げる効果が生じる。10-12月期には、ガス・電力価格の高騰に伴う大口需要家の不振と、製油所ストの影響も加わった。さらに個人消費支出も同期には0.7%の減少を記録する見込みで、これには、インフレ亢進の影響に加えて、気温が高めで推移したことに伴うエネルギー関連支出の節減の効果も大きい。2022年通年の経済成長率は2.5%となり、これは、政府の公式予測よりも0.2ポイント低くなる。続く2023年1-3月期の経済成長率は0.1%とプラスに復帰し、4-6月期には0.3%まで加速する。7-9月期以降の経済成長率をゼロと仮定した場合の2023年通年成長率は0.4%となり、政府の公式予測である通年1%の成長率を達成するには、残り2四半期に各0.8%の成長率を達成する必要があり、実現は厳しくなった。インフレ率については、11月の6.2%が12月には6.6%まで上昇し、2023年年頭には、エネルギー価格抑制策の見直しに伴いさらに上昇の勢いは加速し、1月と2月には7%に達する。3月からは減速に向かい、6月には5.5%まで低下する見通しという。 KSM News and Research -
2022.12.15
CNESが参画の地球観測衛星SWOTが打上げに
仏国立宇宙研究センター(CNES)と米航空宇宙局(NASA)の共同ミッションとして、地球観測衛星「SWOT」が15日に打ち上げられる。米カリフォルニア州よりスペースXのロケットにより打ち上げられる。地球の水面の高さとその変化をかつてない精度で把握でき、気候変動の観測などの用途に用いられる。SWOTは2.2トン、SUV程度の大きさで、890kmの高度で地球を周回する。地球のほぼすべての表面を、10日ごとに計測することができる。本体から対称的に2本のアンテナを配し、それぞれの先端に干渉計を設置する。干渉計の間の距離を10メートルとることで、三角測量の要領で観測精度を高める。120km幅の表面を一度に走査でき、地表の水面も、海洋の水面も同様の高精度で測定できる。湖沼なら周囲250メートル、河川なら幅100メートルから水量等の測定を行える。気象の変化に伴う海面の上下といった現象を細かなスケールで把握でき、気象・気候変動のモデリングに必要なデータを収集できる。水資源の管理や洪水・干ばつの対策などにも活用できる。衛星はタレス・アレニア・スペースが建造。投資額は10億ドルに上った。耐用年数は3年間だが、5-8年は運用ができると期待されている。スペースデブリ化を避けるために、自ら大気圏に突入して解体・消滅する機能を備えており、400kgに上る搭載燃料の8割近くはそのために用いられる。 KSM News and Research -
2022.12.15
無申告労働の社会保険料逸失収入、年間70億ユーロにも
社会保障会計の調査機関HCFIPSがまとめた推計によると、無申告労働による保険料収入の逸失分は、2021年に51億-64億ユーロの規模に上った。これに社会保障会計外である失業保険も合算すると、逸失額は56億-71億ユーロの規模に達する。特に、自営業者の一種である簡易登録事業者(ミクロアントルプルヌール)で収入の申告漏れや過小申告が目立つ。簡易登録事業者の全体では、17-26%程度の社会保険料を取り逃しているとみられ、これは、金額にして10億-15億ユーロに相当する。ウーバー型のプラットフォーム経由で就労する人で特に過少申告が目立ち、全体の3分の2程度(66%)で過少申告がみられ、特にそのうちの半数(32%)ではまったく申告していないという。HCFIPSは、この対策のために、プラットフォームに対して、社会保険料の前納金を支払わせることで、登録業者が納付しない場合に肩代わりさせる制度の導入を勧告した。 KSM News and Research -
2022.12.15
イケア、商品配達にセーヌ川の河川輸送利用
スウェーデンの家具販売大手イケアは12月14日、セーヌ川の河川輸送を用いた商品配達を開始した。パリ北西部のジュヌビリエ市にある倉庫からパリ市内のベルシー河川港(12区)まで船舶で輸送(所要時間3時間半から4時間)し、そこから配達先までのラストワンマイルには電動車両で輸送する。フランプリ(スーパーマーケット)がすでにパリ首都圏の300店への商品配達に船舶を利用しているが、個人への商品配達に河川輸送を利用するのはイケアが初めて。毎朝、容量18立方メートルのコンテナ35体(1体につき15点程度の商品を収納可能)がベルシー河川港まで輸送される。イケアは、仏販売に占めるオンライン販売の割合を10%から向こう3年間で20%へ引き上げる計画だが、それを、環境負荷をかけず、市内の交通渋滞の悪化を回避しつつ実現することを目指している。トラック輸送から河川輸送に切り替えることにより、二酸化炭素排出量は最大で5分の1にまで削減できる。現在は平底船1隻で輸送しているが、需要が十分に増えたら2隻体制とする。パリ首都圏のリメーに建設中の倉庫が完成すれば、河川輸送の出発地をジュヌビリエからリメーへ変更する。KSM News and Research -
2022.12.14
LFIのカテナンス下院議員、DV問題で有罪判決確定
左翼政党「不服従のフランス(LFI)」所属のカテナンス下院議員のDV問題で、リール地裁は13日、カテナンス被告人に対して執行猶予付き禁固4ヵ月の有罪判決を言い渡した。また、被害者の夫人への2000ユーロの賠償金の支払いも命じた。被告人が容疑事実を認めた上で量刑を決める手続きが採用されたため、裁判所による量刑承認は非公開で行われ、処罰はそのまま確定する。カテナンス下院議員は、LFIを率いるメランション氏が次代のリーダーとして特に目をかけていた人物で、党の幹部を務めていた。今回の裁判では、夫人に平手打ちをした件と、3日間で300通のSMSを送付し、精神的な攻撃を加えた件が処罰の対象となった。カテナンス議員側は、離婚話が持ち上がる中で双方の争いが平手打ちに発展したと説明しており、SMSについては、関係回復を図るためのものだったと主張している。LFIはこの判決を受けて、カテナンス議員を4月13日まで4ヵ月間に渡り議員団から除名処分とすることを決定。復職に当たっては、DV対策の研修を受けることを条件にする旨を定めた。LFIを主軸とする左派連合NUPESに加わる他の政党(社会党、環境派EELV、共産党)は揃って、カテナンス議員の辞職を要求している。他方、カテナンス議員は、判決後にメディアとのインタビューに応じて、議員職を辞任する考えを否定。夫人の被害届が出されて以来、節目節目で司法当局より捜査情報がリークされており、政治的な意図があるのは明らかだ、などとも主張した。カテナンス議員の発言について、ダルマナン内相は、司法当局への中傷に当たるとして告訴すると予告した。KSM News and Research -
2022.12.14
商店のレシート原則廃止、2023年年頭の施行は見送りか
商店のレシート発行のオプトイン化が2023年年頭に施行されることになっている。日刊紙ルフィガロによると、施行政令がまだ公示されておらず、年内の公示も期待薄で、来年年頭の施行は難しくなった。政府はこの措置をロス対策・循環経済法に盛り込んでいた。資源の浪費をなくし、環境負荷を軽減するという目的を掲げて、紙のレシートは基本的に発行せず、電子メール等の形での送付とすることを義務付け、顧客から請求があった場合に限り、紙のレシートを発行するというオプトイン方式が採用されることになっている。既に、スーパーマーケットなど大型店舗では一足先に導入が始まっているが、レシート廃止には法律上の問題点も多い。まず、メールアドレス等を取得するのは煩雑であり、店舗側の手間も大きい。また、レシートは証拠となり、保証や払い戻しの際に重要であって、消費者が店舗側の誤りを正させる手段が失われる恐れがある。レシート害悪論が流布し、レシートを取得しない人が増えれば、消費者の権利を後退させることにもなりかねない。中小規模の商店や、チェーン店などの場合は、レシートを持たない人が返品・返済等を要求した場合にどのような対応をすべきかが不明確であるとして、施行政令の公示を待っていたが、様々な問題点を背景に、導入が先送りされる様相が強まっている。KSM News and Research -
2022.12.14
仏ラグビー連盟(FFR)のラポルト会長、汚職で有罪判決
仏ラグビー連盟(FFR)のラポルト会長らを被告人とする贈収賄事件の裁判で、パリ地裁は13日、会長らに執行猶予付きの有罪判決を言い渡した、ラグビーW杯のフランス開催まで1年足らずというタイミングで厳しい判決が下った。ラポルト会長は贈賄罪などで執行猶予付き禁固2年の有罪判決を言い渡された。7万5000ユーロの罰金刑も受け、さらに、ラグビー関係の職務に就くことを2年間にわたり禁止された。裁判所が認定したところによると、ラポルト会長は、プロチーム「モンペリエ」を所有する実業家のアルトラド氏との間で、秘密裏に「イメージ・コンサルティング」契約を結び、内実の伴わない役務提供の名目で18万ユーロを受け取っており、モンペリエ・チームへの懲罰に係り、アルトラド氏に有利になる形で介入する(2017-18年)など便宜を図った。アルトラド氏も、贈賄などの罪で、執行猶予付き禁固18ヵ月と罰金5万ユーロの有罪判決を受け、さらに、会社の経営を2年間にわたり禁止された。これらの刑罰は、被告人が控訴すれば執行が停止される。残りの3人の被告人のうち、W杯組織委員会委員長を務めたクロード・アチェール被告人と、同被告人が経営していた会社の共同出資者であるブノワ・ロベール被告人が、背任秘匿などの罪でそれぞれ5000ユーロの罰金刑を言い渡された。仏ラグビー連盟のシモン副会長は無罪判決を受けた。ラポルト会長は判決を不服として控訴すると発表した。KSM News and Research -
2022.12.13
仏喫煙者の減少傾向が頭打ちに
12月13日発表の公式推計によると、仏国内の18-75才の層に喫煙者が占める割合は2021年に31.9%となり、2020年比で横ばいだが、2019年(30.4%)を上回った。毎日喫煙する人の割合は全体の4分の1で、こちらは2019年以来で同水準にとどまっている。喫煙者数は1500万人、うち毎日喫煙する人は1200万人に上る。毎日喫煙する女性の割合は、2019年の20.7%に対して、2021年には23.0%へ上昇した。社会的弱者において喫煙が増えているのも目につく。低学歴の人(高校卒業資格バカロレアを取得していない人)で、毎日喫煙する人が占める割合は、2019年の29.0%が32.0%へ増えた。たばこの小売価格の段階的な引上げも手伝い、喫煙者が占める割合は、2014年から2019年にかけて低下を続けていた。2020年以降はその勢いが途絶えた。新型コロナウイルス危機を経て、不安な気持ちが喫煙に向かわせるといった要因もあったものと考えられる。 KSM News and Research -
2022.12.13
政府、ライドシェア振興策を公表
政府は12日、ライドシェア振興策を公表した。14項目の措置を2023年年頭より開始する。1億5000万ユーロの予算が設定された。政府は、温室効果ガス削減を目的に、通勤・通学等の短距離(80km未満)のライドシェアの振興を目指している。2027年までにライドシェアを受け入れるドライバーの数を300万人に増やすとの目標を設定した。具体的には、まず、自治体による奨励金制度の導入(1旅程につき1ユーロ、又は1kmにつき10ユーロセント)を後押しするため、総額5000万ユーロの助成金を自治体向けに支給する。また、自治体によるインフラ整備(ライドシェア用の停留所、専用レーン、ライドシェア路線の構築)を、事業化調査を含めて支援し、このために5000万ユーロの助成金を支給する。さらに、ライドシェアを始めるドライバー向けに100ユーロの奨励金を支給。奨励金は、ライドシェア仲介のプラットフォーム(BlaBlaCarなど)を通じて新規登録者に支給され、初回に25ユーロが、3ヵ月以内に9回目までの実績があれば残りの75ユーロが支給される。政府は、カーボンフットプリントの軽減に加えて、ライドシェアによる費用節約の効果も強調。ドライバーは平均で年間2000ユーロの節減ができるとの試算を示し、積極的なライドシェアの受け入れを呼びかける。 KSM News and Research -
2022.12.13
マクロン大統領、年金改革案の発表を延期
マクロン大統領は12日、国民協議機関CNRの第2回会合を開いた機会に、年金改革案の骨子発表を、12月15日から1月10日に延期すると予告した。労使などとの協議を尽くすために時間が必要だと判断したと説明した。来年夏に施行という日程は変更せずに維持した。政府は、年金収支の均衡化を目的として、定年年齢(欠け目なしの受給が可能になる年齢)を62才から64才(又は65才)へ段階的に引き上げる内容の年金改革を準備している。大統領は、保守野党「共和党」や環境政党EELVなどでリーダーが選出されたばかりであることや、公務員部門の職場選挙が最近行われたばかりであることを挙げ、新たに選ばれた人々と協議する機会を設けることが適切だと考えたと、延期の理由を説明している。年金改革に対する労組の反発は根強く、1月には抗議行動が頻発する恐れがある。左翼政党「不服従のフランス(LFI)」も1月21日(土)にデモ行進を呼びかけており、年金問題でこの1月に混乱が生じる懸念も強い。発表延期と追加の協議で打開策が見つかるとは考えにくい。年末年始をやり過ごすためだけの延期なら無意味だとする声も聞かれる。 KSM News and Research -
2022.12.12
青果のプラスチック容器包装禁止、行政最高裁が無効決定
行政最高裁(コンセイユデタ)は9日、未加工の青果にプラスチック容器包装を用いることを禁止する法律の施行令を無効と認定する判決を下した。国に対して施行令を策定し直すよう命じた。 政府は、食品ロス対策・循環経済法に依拠し、2022年1月1日より、未加工の青果にプラスチック容器包装を用いて販売することを原則的に禁止した。ただし、法律は、品質を損なう恐れがあるものに限り、プラスチック容器包装の利用を継続することを認めており、その詳細を定めた施行令が、2021年10月8日付で制定されていた。この施行令は、一連の製品のリストと、それぞれの製品について、免除される期限を定める内容で、期限後はすべての製品について、プラスチックが禁止されることになっていた。これに対して、容器包装メーカーや食品生産者を代表する団体がそれぞれ、移行期間が短いなどの理由を挙げて、施行令の無効化を求める訴えを行政最高裁に対して起こしていた。 行政最高裁は判決の中で、法律においては、品質を損なう恐れがある製品について禁止対象から除外する旨を定めているのみであることを指摘。期限を設定して使用を認めるのは越権行為であると認めた。施行令に網羅されている製品のリストについては、品質を損なう恐れがあるという観点からは広すぎるとの判断も示した。裁判所は、施行令を無効として策定し直すよう命令。また、各2000ユーロの賠償金を、訴えを起こした団体へ支払うようあわせて命じた。施行令の無効化に伴い、プラスチック容器包装の使用を禁じた法律の条項そのものの施行が停止されることになる。政府は判決を受けて、ただちに新たな施行令を制定する準備に着手すると発表した。KSM News and Research -
2022.12.12
環境政党EELVの代表にトンドリエ氏、左翼LFIの調整役にはボンパール下院議員
環境政党EELVは10日、パリ郊外ランジス市で全国代議員総会を開き、党の代表を選出した。マリーヌ・トンドリエ氏を、90%を超える賛成票にて選出した。 バイユー前代表が夫人へのモラハラ疑惑で追及を受け、党が揺れる中での選挙となった。党員投票で半数近くの支持を得ていたトンドリエ候補が波乱なく選出された。トンドリエ新代表は前執行部の支持を得ており、極右RNが市政を握る北仏エナンボーモン市の市議として、極右に対抗する運動を続けてきたことでも知られる。新代表は、党の支持層100万人の達成を目標に掲げ、2024年の欧州議会選挙においては、左翼連合との共闘はせず、自前の候補リストで戦う方針を示した。党内には、ルソー下院議員のように、左翼共闘を主導する勢力もあり、党内の求心力の維持が新代表の課題となる。 これとは別に、左翼連合の中核を担う「不服従のフランス(LFI)」は10日にパリで代議員集会を開き、執行部調整役にマニュエル・ボンパール下院議員を指名することを決めた。LFIは、創設者のメランション氏が実権を握り、ガバナンスが不明確な組織だが、執行部の調整役がメランション氏に次ぐ地位を占めている。この職にあったカテナンス下院議員がDV問題で休職中であり、後任として、やはりメランション氏に近いボンパール氏が指名された。この人選について、党内の有力者らは、事前に相談なしに決められたとして党への不信感を強めており、争いが本格化するリスクもはらんでいる。KSM News and Research -
2022.12.12
保守野党「共和党」の党首選:シオティ下院議員が勝利、予想より僅差に
保守野党の共和党は11日、党首選決選投票の結果を発表した。エリック・シオティ下院議員が53.7%の得票率で選出された。 党首選は、ルタイヨー上院議員団団長との間で争われた。シオティ候補が優勢とみられていたが、結果は予想よりもかなりの僅差となった。党内に根深い対立があることをうかがわせる投票結果となった。 シオティとルタイヨーの両候補とも、右寄りの主張を掲げてキャンペーンを展開した。シオティ氏の場合は、厳しい移民政策の適用に加えて、減税推進の自由主義的な主張も掲げた。さらに、次期大統領候補としてボキエ元党首(オーベルニュ・ローヌアルプ地域圏議長)を早期に擁立することを呼びかけていた。この最後の点は、人選よりも政策の策定を先にすべきだと主張したルタイヨー候補と大きな差があり、選挙結果が僅差となったことは、大統領候補の人選を巡り意見の相違があることをうかがわせている。 共和党は、かつては二大政党の一つだったが、現在は下院で63議席と、改選前の112議席と比べて大きく後退。マクロン大統領派と極右RNに双方から浸食される形で党勢を落としており、挽回が至上課題となっている。シオティ次期党首は党内の結束を確保しつつ、巻き返しを探ることを迫られる。KSM News and Research -
2022.12.09
学校における政教分離の原則が後退か
12月9日の「政教分離の日」にあわせて、8日に「エクランドベイユ」誌の依頼で小中高校の教員1000人を対象に行われた調査結果が公表された。学校の教育現場における政教分離の現状について質問した。状況が厳しくなっていることをうかがわせる結果となった。 これによると、摩擦が生じるのを避けるために、宗教問題を扱わないなどの「自主規制」をしていると答えた教員は全体の56%に上った。この割合は、サミュエル・パティさんの事件(授業でイスラム教ムハンマドの戯画について扱ったところ、イスラム過激派の襲撃を受けて斬首された)以前の36%から目立って上昇している。40才未満の世代ではこの割合は60%と高い。この年齢層ではまた、「中高生はヒジャブ(イスラム教のスカーフ)着用を認めるべきだ」と答えた人が32%と多い(50才以上では8%)。公立学校の教員の60%は、「過去に宗教的理由により教育内容について抗議を受けたことがある」と回答した。公立高校に限ると、46%が「女子生徒が体育や水泳の授業を宗教的理由で欠席したのを見たことがある」と回答、「手をつなぐことを拒否したのを見たことがある」も25%に上っている。 去る10月には、パティさんの没後2年に当たり教育省が全国の学校に追悼の機会を設けるよう指示したが、教員のうち、自身の学校で機会が設けられたと答えた人は61%にとどまっている。追悼の機会が設けられた学校では、21%で追悼を巡り何らかの事案が発生した。問題地区に指定される「教育優先地区」ではこの割合は42%とさらに高かった。KSM News and Research -
2022.12.09
仏中銀、10-12月期の経済成長率予測を上方修正
フランス中銀は8日、8500人の企業経営者を対象にした定例調査の結果を発表した。その結果を踏まえて、10-12月期の経済成長率予測をわずかに上方修正した。 中銀は9月の時点で、10-12月期の経済成長率(前の期比)が0%になると予想していたが、これを0.1%のプラス成長へ上方修正した。2022年通年の成長率は2.6%と予想した。 企業経営者らは、12月の事業水準について、サービス業では成長が持続すると判断。工業部門では横ばいとなっており、後退を予測したのは建設部門のみだった。調達困難は解消に向けた道を進んでおり、エネルギー危機の影響については、10月の前回調査と同じく、打撃を懸念すると回答した企業は全体の4分の1にとどまった。半面、向こう3ヵ月間の利益率への影響を懸念する企業は、全体の55%にまで増加(前回は52%)。この懸念は工業部門で特に大きかった(4ポイント上昇の70%)。 中銀のビルロワドガロー総裁は9日、フランス・アンフォとのインタビューの中で、2023年通年の成長率はわずかなプラスになると考えていると言明した。KSM News and Research -
2022.05.24
バーガーキング、ラ・ビの植物性ベーコンを採用
バーガーキング(ハンバーガーチェーン)のフランス子会社は、ラ・ビ(La Vie)が開発した植物性ベーコンを採用して、ベジタリアンバーガー「Veggie Steakhouse」を5月24日より販売する。仏国内の440店で販売する。供給契約は6ヵ月期限で、フランスを対象に結ばれた。バーガーキングはその後、欧州諸国でも採用を広げる可能性がある。ラ・ビは1月末に、2500万ユーロの資金調達を実施した。2023年には5000万ユーロの資金調達を行う計画で、米市場への進出を目指す。同社は2023年に2000万ユーロの売上高達成を目指している。KSM News and Research -
2022.05.24
アイオン、ムーブメント国産を計画
仏アイオン(Aion)は、腕時計のムーブメントの内製化・国産を目指してスイス企業を買収した。機械設備を仏ラシオタ(マルセイユ近郊)に移送し、新工場を建設してムーブメントの量産に乗り出す計画。業界では、ムーブメントの国産化は現実的ではないとして、冷ややかな目を向けている。 アイオンは昨年に若手起業家のアントニー・シマオ氏が設立した。先頃、ファミリーオフィスやビジネスエンジェルから3000万ユーロを調達後にヌーシャテルにあるスイス企業「フェルサ・スイス」を買収。ムーブメント製造に用いられる450台の機械設備を入手した。同社によれば、従業員50人で年間40万体のムーブメントを製造できるという。 シマオ氏は2016年以来、高級腕時計の少量生産の事業を展開してきた。アイオンは、ラシオタに3万平方メートルの用地を確保。ここに大規模な工場を建設し、ムーブメントを国産化して、他社に供給するとともに、自前ブランドHegidおよびLornetの高級時計も製造する計画。2025年の操業開始を目指し、160人の採用(うち40人はスイス人技術者)を予定する。業界はこの計画について、実現可能性を疑問視している。フランスではムーブメントは長らく前に国産が打ち切られ、スイスなどからの輸入に依存している。失われたノウハウを取り戻して国産化を3年間という短期間で実現し、年間40万体という量産体制を確立するのは至難の業であるという。KSM News and Research -
2022.05.24
ミュリエ一族、ピムキーを売却へ
ミュリエ一族(食品小売大手オーシャンなど保有)は23日、傘下のアパレルチェーン「ピムキー(Pimkie)」の売却先探しに着手すると発表した。投資ファンドではなく、業界の企業から買収者を募る計画だという。ミュリエ一族は2022年末までは事業継続に必要な資金の供給を続けると約束している。 ピムキーは全国に313店舗(うち213店舗は直営店)を展開、1500人を雇用する。2020年の売上高は2億ユーロ弱だった。ピムキーは1971年に創業、いわゆるファストファッション分野でシェアを築いたが、競合に押されて10年来、苦戦が続いている。オンライン販売が弱く、特に近年ではSheinの攻勢にも苦しめられている。この1月には再建屋として実績があるフィリップ・ファーブル氏を社長に迎えてテコ入れが始まっていたが、売却の道が選択された。 ミュリエ一族の主要資産であるオーシャンとルロワ・メルラン(ホームセンター)はともにロシア事業からの撤退の是非をめぐる混乱で苦しんでいる。不振企業の売却を加速する中で、ピムキー売却を決めたものとみられる。KSM News and Research