「フランスの街の人口分布は?」「街により教育水準は異なる?」など、ニュースを追っているだけではなかなかわからないフランス社会の現状がありませんか? ここでは私たちがアクセス可能なデータを用いて読み解いた、フランスの「いま」を紹介します。
□ この記事の前編はこちら↓
データで読み解くフランスの現状 市町村と人口分布【前編】
社会的なデータからみたフランス
フランスも学歴社会。学歴や資格は、就職やキャリアアップのために高く評価されています。しかし、フランスで特徴的なのは、機会均等(égalité des chances)が大きな文化的重要性を持っていることです。
まさにこのテーマについて、2022年10月に論争が起こり、全国紙や地方紙に多数の記事が掲載されました。国民教育省は、2016年から、生徒が学業成就に有利な家庭環境で暮らしているかどうかを判断するための指標を開発しました。社会的地位指数IPS(indice de position sociale)と呼ばれるこの指標は、両親の職業、世帯収入、家にある本の数、あるいは過去6か月間に美術館やコンサートに行ったかどうかなどのパラメータに基づいて算出されるものです。
この指数は高い信ぴょう性を持っています。例えば、ブルヴェbrevetという中学校修了試験の合格率・得点率の間に非常に強い相関があります。すなわち、学校制度における子供たちの成功を予測するものです。
この指標の目的は、優先教育ネットワークを意味するREP/REP+と認定された学校を対象に、機会均等を支援するためのさらなる公的資金の必要性を評価することです。
パリ行政裁判所の判決により、同省は10月にこの指標をオープンデータとして公開し、フランスに対する新しい観点を提示し、社会的偏在を浮き彫りにしています。これについて詳しく見ていきましょう。
第一に、パリとその西側郊外という非常に恵まれた地域についてです。パリは不動産が高く、文化が非常に濃密な街として知られています。文化省直下の国立劇場のほぼすべてがこの街にあります。パリの学校に通う子供たちは、北部の境界部分を除いて、全国でもっとも高いIPSを持っています。また、贅沢な西部近郊オー・ド・セーヌ県やイヴリーヌ県の大部分を占める西側郊外も同じ状態です。パリ日本人学校があるモンティニー・レ・ブルトンヌーという街も、IPSが描く社会的・経済的・文化的な観点から理想だと思います。逆に、貧困率の高い東北部近郊セーヌ・サン・ドニ県のほぼ全域は、パリに比べて非常に不利な状況にあります。
第二に、フランスの一部の地域、特に海外県や海外領土は非常に不利な状況にあることです。フランスは、フランス本土(フランス・メトロポリテーヌ)のほかに、海外県DOMと海外自治体COMという2種類の領土で構成されています。例外なく、海外県はすべてIPSが不利な極限状態にあり、それに比例して犯罪のレベルもはるかに高い。リール郊外の旧ノール・パ・ド・カレ鉱山地帯、リール近郊のルーベ市、リヨン近郊のヴェニシュー市、そしてマルセイユ北部の4地帯が、海外県と同レベルの不利な状況に置かれています。
第三に、中堅都市と周辺部とのギャップです。サルト県ル・マン市、ピレネー・オリエンタール県ペルピニャン市、エーヌ県サン=カンタンなどのような一部の中堅都市では、私立学校との競争が厳しいため、また経済情勢や文化供給が不十分なため、IPSの全国平均並みの教育水準を保証する公立学校は一つもありません。
恵まれない環境の子供が集中し、IPSのレベルが引き下がることで、中産階級の社会的衰退が維持され、極端な政党への投票に発展します。IFOP世論調査研究所のジェローム・フーケ氏は、その著書「L’archipel français」でこのように分析しています。
以上のように、フランスの人口分布や自治体には歴史と結びついたさまざまな違いがあり、それらをデータで明らかにすることができます。地理的には田舎町が多い一方で、人口の大半は首都圏を中心とした都市に集中しています。社会的には、文化にアクセスしやすくて、豊かな都心部と、周辺地域(中規模都市、都市周辺部、海外県)に分かれており、それぞれの自治体では強い政治的理想を持ちながらも、大きな隔たりを有する課題に面していると言えるでしょう。