復活祭前の聖金曜日に当たる4月18日に、パリ北郊アルジャントゥイユのサンドニ大聖堂で聖遺物「キリストの衣」の特別公開が始まる。5月11日まで公開される。
キリスト本人や、使徒をはじめとする聖人にゆかりの物品は聖遺物と呼ばれ、中世期まで、さらにはそれ以降も、奇跡を起こす霊験あらたかな物体として、強い信仰の対象となった。「キリストの衣」は、受難に至る聖金曜日の道程においてキリストが着せられていたとされる服で、9世紀にローマ帝国のカール大帝が現在の仏アルジャントゥイユにある僧院に出家した娘に贈ったものであることが知られている。大革命期には奇特な僧侶が分解して隠したおかげで散逸を免れたというエピソードもある。その際には失われた部分もあり、現在残っているのは、一部を補って再構成されたものだという。
現代のカトリック教会は聖遺物の真贋性については慎重だが、「キリストの衣」は原則として50年に一度のみ公開される秘宝扱いとなっている。最後に公開されたのは2016年で、この時は、所有しているポントワーズ司教区の働きかけがあり、特別公開が実現した。司教区は熱心にこの聖遺物について広報を展開しており、現在では注目度も高まっている。イスラム原理主義の台頭が端的に示すように、このところは宗教的狂信があらゆる方面で高まっており、聖遺物の動員力は再び高まっている。警察は200人の警官をアルジャントゥイユ市中心街に配置して警戒態勢を敷いている。