下院は3日、欧州防衛に関する審議を行った。ウクライナ情勢に鑑みて、政府は急遽、下院に意見を諮るための審議を求めた。決議案の投票などは行われなかった。 トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の間の前代未聞の口論が全世界に公表されるに及んで、欧州諸国は、ウクライナ支援と欧州防衛の主体性強化の方向に進んでいる。そうした方向を積極的に後押しする意向の仏政府は、下院で全政治勢力に見解を表明する機会を与えた。マクロン大統領はこれより前、2月28日の時点で、欧州における核保有国であるフランスと英国が、欧州諸国と核抑止力の点で協力する構想を披露しており、これも、審議における争点の一つとなった。バイルー首相は審議の際に、欧州連合(EU)に英国を加えると、職業的兵員数は250万人超とロシアより25%多く、戦闘機の数は3000機と、こちらは米国よりも多い、などと指摘。力を合わせれば欧州は強いとして、欧州防衛の構築を訴えた。議会においては、欧州防衛にほとんどの勢力が積極的であり、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」でさえも、従来からの反米主義の立場もあって、欧州防衛に賛意を表明した。社会党は、5000億ユーロの欧州共同債の起債による財源確保を提案した。半面、極右勢力は基本的にトランプ米大統領寄りであり、極右政党RNのマリーヌ・ルペン下院議員団団長は、ロシアのウクライナ侵攻を改めて非難したものの、欧州諸国のロシアに対する譲歩のない態度を批判し、さらに、「欧州防衛」のごとき幻を支持することはできない、と言明。各国が防衛の主権を維持するべきだとの主張を展開した。