日本人留学生の黒崎愛海さんが2016年に滞在先のブザンソン市で行方不明となった事件では、控訴審でも殺人罪で有罪判決を受けたニコラス・セペダ被告人が上告していたが、最高裁は26日、手続き上の不備を理由に、控訴審判決を破棄し、裁判のやり直しを命じる判決を下した。やり直しの控訴審は、リヨンにあるローヌ県重罪院で行われる。
セペダ被告人側は、5件の理由を挙げて控訴審判決(2023年12月)の破棄を請求した。最高裁はそのうち1件について、控訴審裁判長の対応に手続き上の違反があったと認定し、裁判のやり直しを命じた。これは、捜査官が控訴審の際に準備して用いたパワーポイントのまとめ資料に関する異議で、弁護側はこれを、被告人に知らせずに行われた「新たな捜査行為」の結果であり、公正な裁判を妨げると主張して、捜査官が行ったすべての捜査内容を無効とすることを求めた。裁判長は、弁護側が正規の請求を行わなかったことを理由として、この求めを退けて、裁判を続行したが、最高裁は、弁護側が行った所見の提出を正規の請求であるとみなすことが可能であるとし、裁判長が請求を審査せずに却下したのは不当だったと認定した。最高裁は、パワポ資料が「新たな捜査行為」に相当するか否かについては判断を下していない。 黒崎愛海さんの遺体は発見されておらず、セペダ被告人と、特にその両親は、死亡したことさえ明らかではなく、証拠のない不当な嫌疑であり、判決であると主張して法廷で争い続けている。被告人は現在34歳。2020年7月に本国チリからフランスに送還されて以来、勾留が継続されており、最高裁の今回の判決後も勾留は継続される。控訴審では第1審と同じ禁固28年の有罪判決を受けていた。