報道によると、アルティス・フランス(通信SFR親会社)を保有するパトリック・ドライ氏と、主要債権者団との間で、債務再編に関する基本合意が成立した。ドライ氏は45%株式の譲渡に応じて、債務の大幅削減を得た。
ドライ氏は、CATV事業者の買収を起点として巨額の資産を築いた。デットファイナンスを柱とする手法で買収を繰り返して帝国を拡大したが、債務の膨張で返済の展望が苦しくなっていた。ポルトガル事業の経営者の不祥事にまつわる疑惑が国内事業にも波及しており、ドライ氏は一連の資産売却を行うとともに、債権者団と厳しい折衝を続けていた。それがようやくまとまった。
報道によると、アルティス・フランスの債務(総額240億ユーロ)の半分強を占める17者の債権者が基本合意に応じた。ドライ氏は45%株式を譲り渡し、債権者団は60億ユーロの債務を放棄する。ドライ氏は現金での返済も行い、債務残高は155億ユーロまで下がる。資産売却も実施し、債務残高は130億ユーロまで圧縮される。その一方で、返済期限を調整するため、平均利率7.125%にて債務の借り換えも実施し、返済期限の山場が来る時期を、2027/28年から2030年へと先送りにする。
フランスにおける携帯キャリア4社のうちの1社である通信大手のSFR(従業員数8000人)は、2014年にドライ氏の傘下に入った。この数年間は債務問題などで営業面でも厳しい状況が続いていた。債権者団との合意により一息ついた格好だが、株主となるファンド系の債権者らがいつまでもとどまるとは限らず、そうなると、最弱のSFRが今後に通信業界再編における標的となる可能性も否定できない。