仏キュリー研究所はこのほど、FLASH放射線がん治療装置の開発計画「Frathea」を公表した。5月までに提携先の企業を入札により選定する。 FLASH放射線がん治療では、きわめて高い線量にて放射線を一瞬のみ照射する。従来の放射線治療と比べて健康な組織に対するダメージが小さく、治療もせいぜい数回で済むという利点がある。世界で開発が進められているが、深層に位置する患部に照射できる装置はまだなく、開発競争の主戦場となっている。キュリー研究所は、CEA(仏原子力庁)と協力して開発を進める。もとは、仏タレス(防衛電子)の参加を得て進められていたプロジェクトだが、仏政府が公的資金の投入を昨年に決定し、今回の計画発表に至った。フランスの公的資金4100万ユーロが4年間に投入され、うち3700万ユーロがキュリー研究所向け(公的投資計画「フランス2030」の枠内で3500万ユーロ、パリ首都圏が200万ユーロ)となる。公的資金を受けるプロジェクトとなったことで、入札により業者を選ぶ必要があり、タレス以外の業者が選定される可能性もある。5月に業者を決め、18ヵ月間でプロトタイプを制作、2027年末より使用を段階的に開始する。4年後に臨床試験を開始することを目標とする。 フランスでは、ギュスターヴ・ルシー研究所が、スイスとの合同プロジェクトの枠内で、Theryq社が開発のFLASH放射線治療装置を導入している。皮膚表層の治療に使用可能な装置で、深層部のがんの治療ができる新たな装置「FlashDeep」の開発が現在は進められている(2026年にスイス・ローザンヌ大学病院に初号機を納入予定、2028年に最初の臨床試験の開始を目指す)キュリー研究所もこのTheryq社を入札を経て選定する可能性がある。