いわゆるスプーフィング詐欺の事案について、最高裁はこのほど、大手銀行BNPパリバに被害者への補償に応じるよう命じる判決を下した。銀行側の訴えを退けた。
この事件では、BNPパリバの顧客である被害者が、銀行に補償を求めて訴えていた。事件は2019年5月に発生。この顧客の口座から、総額5万4500ユーロに上る不審な送金の試みがあり、この顧客は、銀行員を偽装した者からの電話での指示に従い、送金を完了する手続きを取った。この時に、スプーフィングと呼ばれる表示電話番号の偽装により、被害者を信用させるという手口が用いられていた。顧客は、全額の補償に応じなかったBNPパリバを相手取り、同年6月に提訴を行っていた。
銀行側は裁判で、顧客に重大な怠慢行為があった場合には銀行側の責任は問われないとする法令の規定を援用した。ポントワーズ商事裁は銀行側の主張を認めて、顧客側の訴えを退けたが、ベルサイユ高裁による控訴審判決では逆転して銀行側が敗訴。銀行側は上告して最高裁で争ったが、最高裁は控訴審の判決を追認した。最高裁は、吟味する余裕があるメールによる詐欺の場合とは異なり、スプーフィングにより顧客の注意力が弱められたのは無理からぬところだと認定。銀行側の主張を退けた。
この判決はスプーフィング詐欺に関する判例になりうる。BNPパリバはこの判決について、過去に発生した事件であり、それ以来で、各種の詐欺への注意を喚起する努力を展開していると説明。現在では当時とは状況が異なると強調している。