仏中銀の統計によると、家計及び団体の当座預金残高は10月に147億ユーロの純減を記録した。1ヵ月間の純減幅としては2015年以来で最大を記録した。当座預金残高は久しぶりに去る8月に純減を記録していたが、10月には大幅な純減を記録した。ただし、当座預金残高は10月末時点で6440億ユーロに上り、これは1者につき9545ユーロに相当、2015年1月と比べて2倍に増えている。
当座預金残高は、新型コロナウイルス危機に伴い、消費の可能性を失った資金が積み上がる形で、2020年以降に大きく増加していた。2020年には817億ユーロの純増を記録、2015-19年の平均に比べて2倍という純増幅となっていた。2021年には520億ユーロの純増を記録。これが今年に入ると、1-6月期の純増幅は150億ユーロにまで縮小し、足元では大幅な純減に転じた。
こうした資金の動きは、家計がインフレ亢進に対応するために当座預金を取り崩し始めたことを示しているものとも考えられる。ただし、それだけでなく、金利上昇に伴い、より有利になった貯蓄商品に資金を移す動きが出ている可能性もある。住宅ローン金利の上昇を見越して、今のうちに住宅を購入しようと考えた家計が手元の資金を圧縮したことも考えられる。銀行にとっては、当座預金の縮小は安価な資金調達の手段を奪われることにもなり、マイナス要因になりうる。