高級ブランド大手の仏LVMHが10月1日付で写真誌パリマッチの買収を完了した。1億2000万ユーロを支払い、メディア大手のビベンディ・グループから買収した。LVMHはパリマッチを独立した子会社として扱うことを約束、そのテコ入れを図る。
パリマッチは長らくラガルデール・グループの傘下だったが、ビベンディによるラガルデールの買収に絡んで、2020年よりビベンディの傘下に入っていた。ビベンディを保有する実業家のバンサン・ボロレ氏は、カトリック伝統派に属し、傘下のメディアを通じて右翼の主張を伝播することに力を注いている。パリマッチでも、売却直前の最新号では右翼の政治家であるフィリップ・ドビリエ氏を表紙にするなど、機関誌のような様相を呈していた。パリマッチの編集部では、そうした上からの方針に反発して退社する職員も多かったとされ、残った80人程度の職員のほとんどは、LVMHによる買収を歓迎しているという。
パリマッチは、かつてはスターと、大統領をはじめとする有力政治家などの近況を報じる芸能・写真誌として人気を博した。ただ、近年は時代も変わり、情報配信のチャンネルも多様化したことから、写真誌の影響力は薄れていた。ボロレ氏の手中に収まる以前からパリマッチの凋落は始まっており、オーナーが変われば立て直しができるというわけでもない。高級ブランド大手のLVMHの傘下に入ることで、今度はLVMHのブランドやスターの宣伝に駆り出されるのではないかと懸念する向きもあるという。