パリ市で「雨戸論争」が持ち上がっている。パリ市選出の環境派のサンドリーヌ・ルソー下院議員のツイートがきっかけとなった。ルソー下院議員は、温暖化で夏季の猛暑が目立つ中で、雨戸があれば室内を暗くして温度を下げることができるのに、備えていない住宅が多いと問題視した。同議員の事大主義を揶揄する向きもあるが、パリ市内で雨戸を整備するのが困難なのは本当なのだという。
フランスでは湿度が低いため、日光を遮ればかなりしのぎやすくなるのは事実で、「北風と太陽」のような寓話にそれなりの説得力を感じるのも、湿度の低さに一因があるだろう。雨戸が有効な断熱手段になりうる所以だが、パリ市内には歴史的建造物も多く、外部から見える部分に手を加えることに制約がある。文化省下の組織であるABFの建築専門家からの意見書取得が必要なのは、パリ市内の建物の97%(表面積ベース)に上り、うち4分の3では正式な許可手続きが適用される。業界関係者らは、専門家の個人的な趣味が意見書には反映され、可否を客観的に定める基準に乏しいことを問題視する声も上がっている。建物の屋根の色を白くして、吸熱効果を低める工夫にしても、景観保護の観点から許可されないケースが多いという。ABFの関係者らは、パリ市内の景観保護に貢献していると反論しているが、気候変動への対応と景観の保護との間で、難しい選択を迫られることも増えてきそうだ。
KSM News and Research