フランスでは今夏の休暇期にEV 充電器の利用が目に見えて活発化した。EVは航続距離や充電設備の不足に不安があるとされ、長距離走行が必要なことが多い休暇旅行での使用を躊躇う向きも強かったが、航続距離の改善や充電設備の整備の進展により、こうした不安が解消されつつあることがうかがわれる。エコロジー移行省と電動モビリティ推進団体Avereの調査によると、今年に入ってから高速道路などの幹線道路と都市周辺を中心に、1万4000基超の超急速充電器(150kW以上)が新規設置され、充電器の利用促進に貢献している。
充電器を運営する事業者はいずれも今夏に充電回数と充電電力量が急増したことを明らかにしている。トタルエネルジー(仏エネルギー大手)は幹線道路沿いの高圧充電器設置数を過去1年間に2倍に増やしており、この7月には充電回数が前年同月比で127%増加したとしている。また8月1-18日にも充電回数は前年同期比で倍増し、充電電力量は110%の増加を記録した。これは1回当たりの充電電力量も増えたことを意味している。利用者がより大型のバッテリーを搭載したEVを運転しているか、より長距離の走行に備えているなどの可能性が推定される。Ionity(ドイツに本社があるEV充電事業者)も今夏の一連の週末に、南北を結ぶ高速道路(A6、A7、A9)などを中心に、充電回数が前年同期比で70%増えたとしている。
充電器網が拡大し、利用頻度が高まったことは、EVの普及には朗報だが、料金が割高なことや不透明なことが問題点として指摘されている。Avereによると、今年1-6月期の超急速充電器の平均利用料金(40kWhの充電量、サービス料金込)は21.35ユーロだったという。またこの半年間に1kWh 当たりの平均料金は6.77%の上昇を記録した。ただし、事業者によっては、充電量だけでなく、利用時間(分単位)に応じた課金も適用しているケースがあり、その場合は、40kWhの充電料金は26.4ユーロに上る。逆に、サブスクなどを利用する定期的利用者であれば、17ユーロですむという。ただし、サブスク利用者向けの料金も、充電器と運営事業者およびサブスク事業者などにより大きく異なる(最大で2倍の差)。競争当局は6月、料金体系を充電量に応じた従量課金に統一し、充電時間に応じた課金を撤廃することや、充電スタンドや高速道路の入口で料金表を明示すると共に、充電スタンド毎の料金をオンラインで表示し、それをリアルタイムで更新することにより、消費者が費用を比較できるようにすることなどを、事業者に対して勧告した。
KSM News and Research