総選挙後の政局混迷が続いている。いずれの陣営も政権樹立に向けた展望が開けていない。
保守野党の共和党では、下院議員団の団長となったボキエ氏の下で、「政策協定」を提案して打開の可能性を探っている。共和党は、中道勢力と共に上院では過半数を握っており、下院における勢力は小さいものの、政策運営に注文を付けて一定の言質をとった上で、閣外から法案の可決に協力するとの方針を示している。具体的には、憲法評議会により削除を命じられた移民法における共和党提案の諸条項(一部の社会給付について、外国人への支給においては一定の正規滞在実績を条件として求める、など)の採択を要求。また、各種社会給付の支給総額への上限設定(法定最低賃金SMICの70%まで)、失業保険制度改正の実行、社会保険料の減免措置と残業手当の所得税非課税化を通じた手取り給与の増額を要求し、勤労インセンティブを高める制度作りを求めた。これらの点については、アタル内閣の政策目標と重なる部分もある。共和党はまた、増税と年金支給額の引き下げをせずに財政の立て直しを図ることを、譲れないポイントとして掲げ、2025年予算法案において250億ユーロの節減の実現も要求した。旧連立与党との間で接点を見出すことは不可能ではないが、それだけでは過半数には足りず、左派の一部を切り崩すとなると、およそ妥協点を見いだせるような内容ではない。
他方、合計して最大勢力となった左派連合は、いまだに首相候補の一本化ができていない。候補に挙がっていたチュビアナ氏が22日に立候補を断念すると発表し、協議は再び振り出しに戻った。チュビアナ氏は社会党・共産党・環境派が推したが、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」が承知しなかった。続いて、共産党のシャセーニュ下院議員、オックスファム・フランス代表のデュフロ元環境相、社会党のアモン元教育相の名前が挙がっているというが、一本化は望めない情勢とみられている。
KSM News and Research