7月11日発表のINSEE統計によると、フランスにおける世帯可処分所得と貧困の水準は2022年にほぼ前年並みとなった。フランス本土における相対的貧困線(月額所得1216ユーロ)以下の貧困者は910万人となり、前年比で2万8000人増加したが、人口に貧困者が占める割合は14.4%と前年比で0.1ポイント低下した。この割合は新型コロナ危機が始まった2020年を除くと2018年以来、ほぼ一定している。INSEEでは、法定最低賃金(SMIC)と老齢年金の引き上げ、政府による貧困層の購買力支援措置が奏功したと説明している。
カテゴリー別に見ると、自営業者の貧困率が2021年の14.6%から2022年の18.3%に上昇したが、これは新型コロナ危機に絡む支援措置の終了に伴うものと考えられる。また、単身世帯の貧困率も上昇したが、一方で労働市場の好調を受けて給与所得者の貧困率は低下した。
一方、2021年に拡大した貧富の格差は2022年は前年並みに落ち着いたものの、依然大きい。INSEEによると、所得上位20%の富裕層の可処分所得は下位20%の貧困層の可処分所得の4.4倍だ。ただし、インフレ対策や新年度の支援など低所得者に的を絞った支援のおかげで、所得下位10%の可処分所得は0.3%増加し、2019年と比べて2.4%改善した。
これとは別にINSEEが同日発表した物質的・社会的困窮に関する統計によると、2023年初頭時点で900万人、人口の13.1%が困窮状態にあるとされ、上記の貧困に関するデータと一致する。困窮者数はほぼ前年並みだが、10年前からは明らかに増えているという。特にひとり親家庭と子どもが3人以上いる家庭が困窮しており、農村部より都市部に困窮者が多い。この3年間で給与所得者と労働者の困窮リスクも増加している。