26日発表のINSEE速報によると、2023年の仏財政赤字は1540億ユーロとなり、対GDP比で5.5%に拡大した。同比率は、コロナ危機直後の2021年に6.6%と高めにとどまった後、2022年には4.8%まで縮小していたが、2023年には再び拡大に転じた。財政収支の悪化は歳入の不振によるところが大きい。歳入の増加率は2023年に2.0%となり、前年の7.4%増と比べて明確に鈍化した。国民負担率(対GDP比)は43.5%となり、前年の45.2%から低下し。コロナ危機前の水準(2019年に43.9%)近くまで戻った。他方、歳出の増加率は3.7%となり、こちらは前年の4.0%増からわずかに鈍化した。対GDP比での歳出は、2023年に57.3%となり、2021年の59.6%、2022年の58.8%と比べて縮小しているが、コロナ危機前(2019年に55.2%)と比べるとかなり高い水準にとどまっている。公的債務残高の対GDP比は2023年末時点で110.6%となり、1年前の111.9%と比べて低下した。2019年の97.9%と比べると大きい。
財政赤字の内訳をみると、国で1553億ユーロ、各種政府機関で16億ユーロ、地方自治体で99億ユーロの赤字をそれぞれ記録。社会保障会計では129億ユーロの黒字を記録した(速報値につき全体の合計は総額と完全には一致しない)。社会保障会計の黒字はCADES(同会計の累積債務返済基金)によるところが大きく(180億ユーロの黒字)、社会保障会計の本体の収支は優れなかった。
財政赤字の拡大を受けて、連立与党内には増税による財政健全化を求める声もあるが、マクロン政権は減税を柱とする税制運営を維持する構えを見せている。ルメール経済相は26日、増税は経済成長の勢いを削ぎ、経済成長による税収拡大の芽を摘むとの主張を展開。法人対象の特別税の導入についても、企業の課税水準は既に高いと述べて、安易な増税論には屈しないとする姿勢を示した。同相は、増税によらずに2027年に財政赤字の対GDP比を3%まで圧縮する方針を再確認した。